(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】計測品質評価装置および方法ならびにプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/349 20210101AFI20250311BHJP
【FI】
A61B5/349
(21)【出願番号】P 2023552428
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2021036762
(87)【国際公開番号】W WO2023058104
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 隆行
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松浦 伸昭
(72)【発明者】
【氏名】後藤 東一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 真澄
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-525108(JP,A)
【文献】特開2021-041088(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0127960(US,A1)
【文献】特開2021-079007(JP,A)
【文献】特表2020-536693(JP,A)
【文献】特開2018-011819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/349
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電計で計測された心電図波形からR波を検出して隣り合うR波の間隔を求める第1演算回路と、
前記第1演算回路が求めた前記間隔から、R波で示される拍動毎に瞬時心拍数を求める第2演算回路と、
前記第2演算回路が算出した拍動毎の瞬時心拍数を平滑化した平滑心拍数を求める第3演算回路と、
前記瞬時心拍数および前記平滑心拍数の少なくとも1つを用いて前記心電図波形の信号対雑音比を求める第4演算回路と、
前記第4演算回路が求めた信号対雑音比を、設定されている送信先に送信する送信回路と
を備え
、
前記第3演算回路が求めた前記平滑心拍数の適切性を判定する第6演算回路をさらに備え、
前記第4演算回路は、前記第6演算回路の判定の結果を元に前記心電図波形の信号対雑音比を求める
ことを特徴とする計測品質評価装置。
【請求項2】
請求項1記載の計測品質評価装置において、
心電図情報を計測した計測期間内において、前記第4演算回路が求めた信号対雑音比が一定値を下回った期間を求めて表示装置に表示する、または、心電図情報を計測した計測期間において、この計測期間と前記第4演算回路が求めた信号対雑音比が一定値を下回った期間との比を求めて表示装置に表示する第5演算回路をさらに備えることを特徴とする計測品質評価装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の計測品質評価装置において、
前記第1演算回路においてR波が設定されている期間検出されない場合に、算出不可情報を生成する第7演算回路をさらに備え、
前記送信回路は、前記算出不可情報を送信することを特徴とする計測品質評価装置。
【請求項4】
心電計で計測された心電図波形からR波を検出して隣り合うR波の間隔を求める第1ステップと、
前記第1ステップで求めた前記間隔から、R波で示される拍動毎に瞬時心拍数を求める第2ステップと、
前記第2ステップで算出した拍動毎の瞬時心拍数を平滑化した平滑心拍数を求める第3ステップと、
前記瞬時心拍数および前記平滑心拍数を用いて前記心電図波形の信号対雑音比を求める第4ステップと、
前記第4ステップが求めた信号対雑音比を、設定されている送信先に送信する第5ステップと
を備え
、
前記第3ステップで求めた前記平滑心拍数の適切性を判定する第6ステップをさらに備え、
前記第4ステップは、前記第6ステップの判定の結果を元に、前記心電図波形の信号対雑音比を求めるステップを含む
ことを特徴とする計測品質評価方法。
【請求項5】
請求項4記載の計測品質評価方法において、
前記第1ステップにおいてR波が設定されている期間検出されない場合に、算出不可情報を生成する第7ステップをさらに備え、
前記第5ステップは、前記算出不可情報を送信するステップを含むことを特徴とする計測品質評価方法。
【請求項6】
請求項
4または5記載の計測品質評価方法をコンピュータが実行するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図における信号対雑音比を求める計測品質評価装置および方法ならびにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザ(被測定者)が装着しているセンサから、被測定者の心電図情報を検出する技術が提案されている(非特許文献1)。このような技術において、一般に心電図情報にはユーザの体動に起因するアーチファクトが混入することがあるため、計測品質、すなわち心電図の形状の明晰性が低下する場合がある。こうした計測品質の低下に対し、心電図から算出される心拍数の数値の妥当性をもって計測品質の評価を行う方法として、例えば特許文献1の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】日本電信電話株式会社、「スマートヘルスケアに向けた心電、加速度、温度・湿度の計測を可能にする低電力・小型ウェアラブルセンサを開発」、NTT持株会社ニュースリリース、2019年11月8日、[令和3年9月2日検索]、(https://www.ntt.co.jp/news2019/1911/191108a.html)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように計測品質の評価を行う場合、特許文献1の技術は心拍数の数値の妥当性を評価するものであるため、大元の心電図の品質は不明なままである。このため、どの程度の大きさのアーチファクトが心電図に混入していたかといった、心電図の品質低下に寄与したであろう情報は得られないことから、ユーザは根本的な対処に至る改善行為がとれないなどの課題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、高い品質の心電図が提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る計測品質評価装置は、心電計で計測された心電図波形からR波を検出して隣り合うR波の間隔を求める第1演算回路と、第1演算回路が求めた間隔から、R波で示される拍動毎に瞬時心拍数を求める第2演算回路と、第2演算回路が算出した拍動毎の瞬時心拍数を平滑化した平滑心拍数を求める第3演算回路と、瞬時心拍数および平滑心拍数の少なくとも1つを用いて心電図波形の信号対雑音比を求める第4演算回路と、第4演算回路が求めた信号対雑音比を、設定されている送信先に送信する送信回路とを備える。
【0008】
本発明に係る計測品質評価方法は、心電計で計測された心電図波形からR波を検出して隣り合うR波の間隔を求める第1ステップと、第1ステップで求めた間隔から、R波で示される拍動毎に瞬時心拍数を求める第2ステップと、第2ステップで算出した拍動毎の瞬時心拍数を平滑化した平滑心拍数を求める第3ステップと、瞬時心拍数および平滑心拍数を用いて心電図波形の信号対雑音比を求める第4ステップと、第4ステップが求めた信号対雑音比を、設定されている送信先に送信する第5ステップとを備える。
【0009】
本発明に係るプログラムは、上述した計測品質評価方法をコンピュータが実行するためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、瞬時心拍数および平滑心拍数を用いて心電図波形の信号対雑音比を求めるので、高い品質の心電図が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る計測品質評価装置の構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1に係る計測品質評価方法を説明するフローチャートである。
【
図3A】
図3Aは、瞬時心拍数と平滑心拍数ならびにSNRによる機械学習の学習結果により求めた(推定した)SNRと、機械学習に用いたSNRの訓練データにおけるSNRとの相関を示す相関図である。
【
図3B】
図3Bは、瞬時心拍数と平滑心拍数ならびにSNRによる機械学習の学習結果により求めた(推定した)SNRと、機械学習に用いたSNRの訓練データにおけるSNRとの相関を示す相関図である。
【
図4】
図4は、計測品質評価装置のハードウエア構成を示す構成図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1における計測品質評価装置を用いたシステムを説明するための構成図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1における計測品質評価装置を用いたシステムの構成を示す構成図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態2に係る計測品質評価装置の構成を示す構成図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る計測品質評価方法で用いる判定情報の一例を示す特性図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態3に係る計測品質評価装置の構成を示す構成図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態5に係る計測品質評価装置の構成を示す構成図である。
【
図11A】
図11Aは、SNR>24の場合のSNRとRRIとの関係を示す相関図である。
【
図11B】
図11Bは、SNR=12の場合のSNRとRRIとの関係を示す相関図である。
【
図11C】
図11Cは、SNR=-6の場合のSNRとRRIとの関係を示す相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る計測品質評価装置について説明する。
【0013】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る計測品質評価装置について、
図1を参照して説明する。この計測品質評価装置は、第1演算回路101、第2演算回路102、第3演算回路103、第4演算回路104、および送信回路111を備える。
【0014】
第1演算回路101は、心電計121で計測された心電図波形(心電図)からR波を検出して隣り合うR波の間隔(心拍間隔:RRI)を求める。第2演算回路102は、第1演算回路101が求めた間隔から、R波で示される拍動毎に瞬時心拍数を求める。第3演算回路103は、第2演算回路102が算出した拍動毎の瞬時心拍数を平滑化した平滑心拍数を求める。
【0015】
第4演算回路104は、瞬時心拍数および平滑心拍数の少なくとも1つを用いて心電図波形の信号対雑音比を求める。送信回路111は、第4演算回路104が求めた信号対雑音比を、設定されている送信先に送信する。
【0016】
また、この計測品質評価装置は、第5演算回路105を備えることができる。第5演算回路105は、心電図情報を計測した計測期間内において、第4演算回路104が求めた信号対雑音比が一定値を下回った期間を求めて表示装置112に表示する。また、第5演算回路105は、心電図情報を計測した計測期間において、この計測期間と第4演算回路104が求めた信号対雑音比が一定値を下回った期間との比を求めて表示装置112に表示する。
【0017】
次に、本発明の実施の形態1に係る計測品質評価方法(計測品質評価装置の動作)について、
図2を参照して説明する。
【0018】
まず、第1ステップS101で、第1演算回路101が、心電計121で計測された心電図波形からR波を検出して隣り合うR波の間隔を算出する。例えば、第1演算回路101は、参考文献1のピーク検出を用いることで、心電図からRRIを算出することができる。
【0019】
次に、第2ステップS102で、第2演算回路102が、第1ステップS101で求めた間隔から、R波で示される拍動毎に瞬時心拍数を算出する。例えば、RRIから瞬時心拍数を算出する方法としては、60000をRRIで割った値を瞬時心拍数とすることができる。これは、瞬時心拍数の単位が一分間あたりの拍数(bpm)であることから、瞬時心拍数[bpm(拍/分)]=60[秒/分]×1000[ミリ秒/秒]÷RRI[ミリ秒/拍]となるためである。
【0020】
次に、第3ステップS103で、第3演算回路103が、第2ステップS102で求めた拍動毎の瞬時心拍数を平滑化した平滑心拍数を算出する。例えば、直近の瞬時心拍数の数データを用いた移動平均を、平滑心拍数とすることができる。また、直近の瞬時心拍数に対してFIRフィルタやIIRフィルタを適用した値を、平滑心拍数とすることができる。
【0021】
次に、第4ステップS104で、第4演算回路104が、瞬時心拍数および平滑心拍数を用いて心電図波形の信号対雑音比を算出する。
【0022】
信号対雑音比(SNR)を算出する方法としては、例えば、機械学習を用いることができる。アーチファクトの少ない心電図データと、アーチファクトのみが記録されたノイズデータをあらかじめ用意し、それらを合成することで訓練データ作成する。
【0023】
ノイズデータは異なる振幅値で心電図データと合成することで、様々なSNRのデータセットを作成しておく。心電図データには、例えば参考文献2に開示されている一般公開データを用いればよい。ノイズデータには、例えば参考文献3に開示されている一般公開データを用いればよい。参考文献3では、様々なSNRのデータセットを作成する例として、参考文献2の心電図データとノイズデータを合成させて、SNRを-6から24dBまで変更させた6種類のデータセットが提供されているので、これをそのまま用いてSNRのデータセットとして用いてもよい。
【0024】
図3Aは、瞬時心拍数と平滑心拍数ならびにSNRによる機械学習の学習結果により求めた(推定した)SNRと、機械学習に用いたSNRの訓練データにおけるSNRとの相関を示す相関図である。データセットのSNRと予測されたSNRが正の相関関係にあり、決定係数は0.75であり、誤差(RMSE)は7.83と極めて良好にSNRを予測できる。
図3Aは、参考文献2の心電図データ、4のノイズデータを用い、機械学習の1つであるランダムフォレストを用いて学習させたものである。
【0025】
このように瞬時心拍数と平滑心拍数ならびに様々なSNRのデータセットを用いて機械学習によりあらかじめ学習を行うことで得られている判定情報を用いることで、心電図のSNRが算出可能となる。
【0026】
また、機械学習は、平滑心拍数を用いずに、瞬時心拍数とSNRのデータセットのみを用いることができる。
図3Bにこの場合の学習結果を示す。
図3Bは参考文献2の心電図データ、4のノイズデータを用い、機械学習の1つであるランダムフォレストを用いて学習させたものである。決定係数は0.79と先ほどと同様に良好であるが、誤差(RMSE)は8.00と、平滑心拍数を用いないためにやや劣化している。しかし、入力に用いる変数を1種類減らせるため、実装が容易になる利点がある。また、機械学習はランダムフォレストに限らず、サポートベクトルマシン、ニューラルネットワーク、ロジスティック回帰、アンサンブル学習などを用いることができる。また、心電図波形の信号対雑音比は、重回帰分析により求めることもできる。
【0027】
次に、第5ステップS105で、送信回路111が、第4ステップS104が求めた信号対雑音比を、設定されている送信先に送信する。また、第6ステップS106で、第5演算回路105が、心電図情報を計測した計測期間内において、求められた信号対雑音比が一定値を下回った期間を求めて表示装置112に表示する。また、第5演算回路105が、心電図情報を計測した計測期間において、この計測期間と求められて信号対雑音比が一定値を下回った期間との比を求めて表示装置112に表示する。
【0028】
このように、算出したSNRについて、心電図情報を計測した計測期間内におけるSNRが一定値を下回った期間や、心電図情報を計測した計測期間とSNRが一定値を下回った期間との比などを表示出力することなどにより、ユーザに心電図の計測品質を適切に提供することができる。
【0029】
なお、上述した計測品質評価装置は、
図4に示すように、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)301と主記憶装置302と外部記憶装置303とネットワーク接続装置304となどを備えたコンピュータ機器とし、主記憶装置302に展開されたプログラムによりCPU301が動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した各機能(計測品質評価方法)が実現されるようにすることもできる。上記プログラムは、上述した実施の形態で示した計測品質評価方法をコンピュータが実行するためのプログラムである。ネットワーク接続装置304は、ネットワーク305に接続する。また、各機能は、複数のコンピュータ機器に分散させることもできる。
【0030】
また、上述した実施の形態に係る計測品質評価装置は、FPGA(field-programmable gate array)などのプログラマブルロジックデバイス(PLD:Programmable Logic Device)により構成することも可能である。例えば、FPGAのロジックエレメントに、記憶部、第1演算回路、第2演算回路、第3演算回路、第4演算回路、送信回路を備えることで、^装置として機能させることができる。記憶回路、第1演算回路、第2演算回路、第3演算回路、第4演算回路、送信回路の各々は、所定の書き込み装置を接続してFPGAに書き込むことができる。また、FPGAに書き込まれた上記の各回路は、FPGAに接続した書き込み装置により確認することができる。
【0031】
次に、実施の形態1における計測品質評価装置を用いたシステムについて説明する。例えば、
図5に示すように、被測定者201の体幹にセンサ端末202を装着し、センサ端末202が内蔵する心電計で計測された結果を、中継端末203を中継して外部端末204に送信する。センサ端末202は、スマートフォンやタブレットなどのコンピュータ機器とすることができる。中継端末203,外部端末204は、サーバ装置などのコンピュータ機器とすることができる。
【0032】
センサ端末202は、
図6に示すように、心電計121、変換回路122、メモリ123,演算回路124、送信処理回路125,通信インタフェース126を備える。中継端末203は、通信インタフェース131、受信処理回路132、メモリ133、演算回路134、送信処理回路135、通信インタフェース136を備える。外部端末204は、通信インタフェース141、受信処理回路142、メモリ143、演算回路144、制御回路145、動作装置146を備える。
【0033】
変換回路122は、心電計121で計測されたアナログ加速度信号を所定のサンプリングレートでデジタルデータに変換して出力する。メモリ123は、変換回路122でデジタル化された心電図波形を記憶する。演算回路124は、メモリ123に記憶された心電図波形を元に、RRIを求める。また、演算回路124は、求めたRRIより、R波で示される拍動毎に瞬時心拍数を求める。また、演算回路124は、求めた拍動毎の瞬時心拍数を平滑化した平滑心拍数を求める。また、演算回路124は、瞬時心拍数および平滑心拍数を用いて心電図波形の信号対雑音比を求める。例えば、演算回路124は、第1演算回路101、第2演算回路102、第3演算回路103、第4演算回路104とすることができる。
【0034】
送信処理回路125は、演算回路124が処理した処理結果(例えばRRI)を、通信インタフェース126を通じて中継端末203へ送信する。通信インタフェース126は、例えばLTE(Long Term Evolution)、第3世代移動通信システム、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の無線データ通信規格に対応した演算インタフェースおよびアンテナから構成されている。
【0035】
中継端末203は、センサ端末202から送信されたデータを受信する通信インタフェース131と、受信処理回路132と、メモリ133と、演算回路134と、送信処理回路135と、外部端末204へデータを送信する通信インタフェース136とから構成される。
【0036】
外部端末204は、中継端末203から送信されたデータを受信する通信インタフェース141と、受信処理回路142と、メモリ143と、演算回路144と、解析されたデータに基づき動作する動作装置146へ動作命令を指示する制御回路145とを備える。
【0037】
制御回路145は、メモリ143に記憶されている情報(心電図波形、および心電図波形の信号対雑音比)を元に、動作装置146に被測定者を支援するような動作を実施させる。
【0038】
動作装置146は、映像出力装置(モニタ等)、音声出力装置(スピーカ、楽器等)、光源(LED: Light Emitting Diodeや電球)、アクチュエーター(振動子やロボットアーム、電気治療器)、温熱機器(ヒータやペルチェ素子)などである。
【0039】
演算回路124が、第1演算回路101、第2演算回路102、第3演算回路103、第4演算回路104を全て含む構成とする必要はなく、演算回路134、演算回路144に分散させることができる。
【0040】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る計測品質評価装置について、
図7を参照して説明する。この計測品質評価装置は、第1演算回路101、第2演算回路102、第3演算回路103、第4演算回路104a、送信回路111、第5演算回路105、および第6演算回路106を備える。第1演算回路101、第2演算回路102、第3演算回路103、第5演算回路105、送信回路111は、前述した実施の形態1と同様である。
【0041】
第6演算回路106は、第3演算回路103が求めた平滑心拍数の適切性を判定する。第4演算回路104aは、第6演算回路106の判定の結果を元に心電図波形の信号対雑音比を求める。
【0042】
実施の形態2に係る計測品質評価方法は、第1ステップで、第1演算回路101が、心電計121で計測された心電図波形からR波を検出して隣り合うR波の間隔を算出する。次に、第2ステップで、第2演算回路102が、第1ステップで求めた間隔から、R波で示される拍動毎に瞬時心拍数を算出する。
【0043】
次に、第3ステップで、第3演算回路103が、第2ステップS102で求めた拍動毎の瞬時心拍数を平滑化した平滑心拍数を算出する。また、第6ステップで、第6演算回路106が、第3ステップで求めた平滑心拍数の適切性を判定する。次に、第4ステップで、第4演算回路104aが、第6ステップの判定の結果を元に、心電図波形の信号対雑音比を算出する。
【0044】
平滑心拍数の適切性の判定は、例えば特許文献1の請求項1に記載の方法を用いることで実現できる。第6演算回路106からの出力(すなわち適切か不適切のいずれかの判定結果)と、前述したSNRのデータセットを用いてSNRを算出するための判定情報をあらかじめ機械学習により作成し、これを第4演算回路104aが記憶していればよい。
【0045】
図8に、判定情報の一例を示す。
図8において、縦軸はSNRであり、横軸は、適切性の判定結果における適切と判定された結果の割合である。例えば、1分あたり60個の判定結果が得られたとし、そのうちの50個が適切と判定された場合、横軸に相当する値は50/60≒0.83である。この場合、
図8の関係に従えばSNRは約8dBであることが求まる。横軸に相当する値が0.44未満もしくは0.87より大きい場合は
図8からはSNRは求まらないが、これらの場合は-24dBより小さい、24dBより大きい、とみなせる出力を与えればよい。
【0046】
このように瞬時心拍数の適切性に基づいて機械学習によりあらかじめ学習を行った判定情報をもとに、心電図波形の信号対雑音比を求めることで、特許文献1をはじめとした既存技術を有効的に活用でき、ユーザに心電図の計測品質を適切に提供する実装上の選択肢を提供することができる。また、実施の形態1では第4演算回路104に2つの入力が必要であったのに対し、実施の形態2では1つの入力で済むため、第4演算回路104aの構成を簡素化することができる。
【0047】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3に係る計測品質評価装置について、
図9を参照して説明する。この計測品質評価装置は、第1演算回路101、第2演算回路102、第3演算回路103、第4演算回路104、第5演算回路105、送信回路111a、および第7演算回路107を備える。第1演算回路101、第2演算回路102、第3演算回路103、第4演算回路104、第5演算回路105は、前述した実施の形態1と同様である。
【0048】
第7演算回路107は、第1演算回路101においてR波が設定されている期間検出されない場合に、算出不可情報を生成する。また、送信回路111aは、算出不可情報を送信する。
【0049】
実施の形態3に係る計測品質評価方法は、第1ステップで、第1演算回路101が、心電計121で計測された心電図波形からR波を検出して隣り合うR波の間隔を算出する。次に、第2ステップで、第2演算回路102が、第1ステップで求めた間隔から、R波で示される拍動毎に瞬時心拍数を算出する。
【0050】
次に、第3ステップで、第3演算回路103が、第2ステップS102で求めた拍動毎の瞬時心拍数を平滑化した平滑心拍数を算出する。また、第7ステップで、第7演算回路107が、第1ステップにおいてR波が設定されている期間検出されない場合に、算出不可情報を生成する。第4ステップで、第4演算回路104が、瞬時心拍数および平滑心拍数を用いて心電図波形の信号対雑音比を算出する。この後、第5ステップで、送信回路111が、第4ステップが求めた信号対雑音比、第7ステップで生成した算出不可情報を、設定されている送信先に送信する。
【0051】
前述した実施の形態1では、RRIが値として得られることを前提としてSNRを算出するため、R波を検出できずにRRIが得られなければSNRを算出することができない。こうした場合に対応するため、第7演算回路107は、一定時間内(例えば典型的な心拍の拍動周期を超える2秒間)にRRIが得られなかった場合は、RRIが未検出であることを示す算出不可情報を生成する。算出不可情報は、SNRが更新されない代替として通知されるものとなる。これにより、SNRが得られない状況においても、計測に問題が生じている、すなわち計測品質が良好ではないことを通知することができる。
【0052】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4に係る計測品質評価装置について説明する。この計測品質評価装置は、前述した実施の形態1~3の変形例である。実施の形態4では、中継端末もしくは外部端末における受信処理回路において、センサ端末からのデータを通信断(パケットロス)により欠損した際に、欠損情報をメモリに通知することを特徴とする。
【0053】
前述した実施の形態において求められたSNRや、実施の形態3で判定された算出不可情報は、中継端末や外部端末に転送される際にパケットロスとして欠損してしまうと、ユーザに情報が届かない。しかし、パケットロスが発生したことを記憶し、通知すれば、センサ端末のデータ検出や解析過程に問題があったと断定されなくて済む。これにより、SNRの情報がユーザに届かない状況においても、原因に関する正確な情報を提供できる。
【0054】
[実施の形態5]
次に、本発明の実施の形態5に係る計測品質評価装置について、
図10を参照して説明する。この計測品質評価装置は、第1演算回路101、第4演算回路104b、第5演算回路105、送信回路111b、および第8演算回路108を備える。第1演算回路101、第5演算回路105は、前述した実施の形態1と同様である。
【0055】
第8演算回路108は、第1演算回路101で算出されたRRIをもとにSNRを算出し、またはRRIをもとに不整脈を判定する。送信回路111bは、第8演算回路108が算出したSNRを送信する。
【0056】
図11A、
図11B、
図11Cに、SNRとRRIとの関係を示す。
図11AのSNR>24のグラフにおいて、RRIは800msを中心に推移しているが、1000msや500ms程度を示す場合があるが、これは不整脈によって変動したためである。
【0057】
しかし、
図11BのSNR=12、
図11CのSNR=-6と低下するにつれて、RRI800msから大きく外れる点が増加してゆく。これは第1演算回路101においてアーチファクトをR波として誤検出されたためである。
【0058】
この傾向に着目し、閾値を用いることによってSNRを把握することができる。例えばRRIが400<RRI<1200の範囲である場合に「SNRが高い」、1200<RRI<1700であるとき「SNRが中程度」、RRI<400または1700<RRIであるとき「SNRが小さい」とRRIからSNRの程度を推定することができる。また、RRIの値から不整脈に起因したばらつきであるか推定でき、例えば平均値から100msから200ms外れたRRIが得られた場合に、400<RRI<1200の範囲である場合に「不整脈の可能性が高い」、RRI<400または1200<RRIである場合に「アーチファクトの可能性が高い」といった不整脈とアーチファクトの識別が可能である。
【0059】
また、計測されている心電波形(心電図)が複数日にわたり記録されている場合、各日の同時間帯における心電図より求められたRRIの値同士を用いて平均の経時列を算出する平均処理回路を備え、平均処理回路は第4演算回路において算出されたSNRが一定以上である際の瞬時心拍数のみ、もしくは平滑心拍数のみを用いて平均の経時列を算出する。
【0060】
上記の平均処理回路は例えば参考文献4の技術を用いればよい。これにより、SNRが高い状況で検出された信頼性の高い瞬時心拍数もしくは平滑心拍数のみを扱え、信頼性の高い平均の経時列を算出することができる。
【0061】
以上に説明したように、本発明によれば、瞬時心拍数および平滑心拍数を用いて心電図波形の信号対雑音比を求めるので、高い品質の心電図が提供できるようになる。本発明によれば、心電図波形に混入したアーチファクトの大きさが推定可能となり、高い品質の心電図波形が提供できる。
【0062】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【0063】
[参考文献1]アナログ・デバイセズ、「心電センサを使ってストレスを可視化するヘルスケアIoTを作ろう!」、ハードウェアのプロが教えるWebエンジニアのためのIoT講座、第8回、[令和3年9月2日検索]、(https://www.analog.com/jp/education/landing-pages/003/iot_lectureship/content_08.html)。
[参考文献2]G. Moody and R. Mark, "MIT-BIH Arrhythmia Database", [令和3年9月2日検索]、(https://physionet.org/content/mitdb/1.0.0/)。
[参考文献3]G. Moody and R. Mark, "MIT-BIH Noise Stress Test Database", [令和3年9月2日検索]、(https://physionet.org/content/nstdb/1.0.0/)。
[参考文献4]特開2020-036781号公報
【符号の説明】
【0064】
101…第1演算回路、102…第2演算回路、103…第3演算回路、104…4演算回路、105…5演算回路、111…送信回路、112…表示装置、121…心電計。