(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】データ処理装置によって実施される方法、およびそのような方法で試料を検査するための荷電粒子ビームデバイス
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20250311BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20250311BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
G06T1/00 500A
G06T7/00 350C
H01J37/22 502H
H01J37/22 501A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021070299
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2023-09-19
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】レムコ ショーエンマケルス
(72)【発明者】
【氏名】マウリス ペーメン
(72)【発明者】
【氏名】パヴェル ポトチェク
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-533748(JP,A)
【文献】特開2019-219804(JP,A)
【文献】特開2020-039490(JP,A)
【文献】特開2007-087346(JP,A)
【文献】特開2019-096006(JP,A)
【文献】特開2019-211912(JP,A)
【文献】特開2019-212312(JP,A)
【文献】特開2019-032773(JP,A)
【文献】特開2018-137275(JP,A)
【文献】特開2015-201819(JP,A)
【文献】特開2014-016878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 7/00
H01J 37/22
G01B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理装置によって実施される方法であって、
-画像を受信することと、
-前記画像の所望の画質パラメータの設定値を提供することと、
-前記画像の現在の画質パラメータを決定するための画像分析技術を使用して前記画像を処理することと、
-前記現在の画質パラメータを前記所望の
画質パラメータの設定値と比較し、前記比較に基づいて、画像修正技術を使用することによって修正画像を生成することであって、
-前記現在の画質パラメータが前記設定値よりも低い場合に、前記画質パラメータに関して前記画像を改善するステップと、
-前記現在の画質パラメータが前記設定値を超える場合に、前記画質パラメータに関して前記画像を劣化させるステップと、を含む、生成することと、
-前記修正画像を出力および分析することであって、前記分析することが、前記修正画像上で人工ニューラルネットワーク(ANN)および/または畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用するステップを含む、出力および分析することと、を含み、
前記画質パラメータが、画像焦点、画像ノイズからなる群から選択される1つ以上のパラメータからなる、方法。
【請求項2】
前記画像修正技術が、人工ニューラルネットワーク(ANN)および/または畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所望の画質パラメータの前記設定値が、中程度の画質パラメータ値に対応する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記画質パラメータが、解像度、色深度、ダイナミックレンジ、焦点、シャープネス、方向性ぼけ、コントラスト、ホワイトバランス、およびノイズからなる群から選択される1つ以上のパラメータを含む、請求項1~3いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記設定値が前記画質パラメータの中品質に対応する、請求項1~4いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記分析するステップが、前記画像内の1つ以上の物体の識別を含む、請求項1~5いずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記画像が、顕微鏡
によって得られる、請求項1~6いずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記画像が、荷電粒子顕微鏡によって得られる、請求項1~6いずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
データ処理装置によって実行されると、前記データ処理装置に
請求項1~8のうちの1つ以上に記載の方法を実行させるソフトウェア命令を格納した、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
試料を検査するための荷電粒子ビームデバイスであって、
-試料を保持するための試料ホルダと、
-荷電粒子ビームを生成するためのソースと、
-前記荷電粒子ビームを前記試料に集束させるための照明器と、
-前記荷電粒子ビームによる照射に応答して、前記試料から放出される放射線束を検出するための検出器と、
-データ処理装置と、を備え、
請求項1~8のうちの1つ以上で定義された方法を実行するように構成されていることを特徴とする、荷電粒子ビームデバイス。
【請求項11】
請求項1~8のうちの1つ以上で定義された方法を実行するように構成されていることを特徴とするデータ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置によって実施される方法に関する。本発明はさらに、そのような方法を使用して試料を検査するための荷電粒子ビームデバイスに関する。
【0002】
荷電粒子顕微鏡法は、特に電子顕微鏡法の形態の、微小物体を撮像するための周知の、かつますます重要な技術である。これまで、基本的なタイプの電子顕微鏡は、透過電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、および走査透型過電子顕微鏡(STEM)のような、いくつかの周知の装置類に進化してきており、また、例えば、イオンビームミリングまたはイオンビーム誘起蒸着(IBID)のような支援作業を可能にする「機械加工」集束イオンビーム(FIB)を追加的に採用する、いわゆる「デュアルビーム」装置(例えば、FIB-SEM)のような様々な補助種に進化してきている。当業者ならば、異種の荷電粒子顕微鏡法に精通しているであろう。
【0003】
SEMにおいて、走査電子ビームによるサンプルへの照射は、サンプルから2次電子、後方散乱電子、X線、ならびにカソードルミネッセンス(赤外線、可視、および/または紫外線光子)の形態の「補助」放射線の放出を促進する。この放出放射線の1つ以上の成分が、サンプル分析のために検出および使用され得る。
【0004】
TEMにおいて、ビームが試料を透過するときの電子と試料の相互作用により、電子ビームが試料を透過して画像を形成する。次に、画像は拡大され、かつ蛍光スクリーン、写真フィルムの層、または電荷結合素子(CCD)に取り付けられたシンチレータなどのセンサなどの、撮像デバイスに焦点が合わせられる。シンチレータは、顕微鏡内の1次電子を光子に変換し、CCDがそれを検出できるようにする。
【0005】
荷電粒子顕微鏡法は、調査対象のサンプルの画像を生成し得る。多くの場合、得られた画像を処理する必要がある。該処理は、取得された画像を分析および/または操作することを含み得る。例えば、脳組織の細胞膜のSEM画像では、画像に対してセグメンテーション技術が実行されることが望ましい。このタスクでは、人工ニューラルネットワーク(ANN)および/または畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用し得る。様々な撮像条件に対して適度に堅牢であるが、依然として、データにノイズが多い、焦点が合っていない、または何か他の方法で不適切な機器条件の影響を受けた場合は、セグメンテーションの品質が低下する。当然ながら、これは、誤った医学的決定を含むその後のエラーにつながることがあるため、望ましくない。
【0006】
分析および/または操作結果のこの劣化を克服する1つの方法は、これらの変動を考慮する新しい条件を使用してネットワークを再トレーニングすることである。しかしながら、これは、ネットワークが実稼働(顧客)環境にある場合、再トレーニングは計算時間のために費用がかかり、かつ適切なラベルのために専門家の入力が必要になることが多いことから、ネットワークの再トレーニングは有効なオプションではないことが多いという、重大な問題を提起する。
【0007】
したがって、画像処理で使用するANNおよびCNNの最大の課題の1つは、依然として、それが撮像条件および/または撮像パラメータの安定性に大きく依存しているということである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、画像の処理におけるANNおよび/またはCNNの使用に関して1つ以上の欠点を克服するために使用することができる方法を提供することである。
【0009】
この目的のために、データ処理装置によって実施される方法を提供する。本明細書で定義される方法は、画像を受信するステップと、該画像の所望の画質パラメータの設定値を提供するステップと、該画像の現在の画質パラメータを決定するための画像分析技術を使用して該画像を処理するステップと、を含む。次に、現在の画質パラメータを、該所望の設定値と比較する。言い換えると、画像を提供し、画像関連のパラメータを決定するために分析し、次に、それが所望の品質に一致するかどうかを確認する。該比較の結果に基づいて、画像修正技術を使用することにより、修正画像を生成する。この画像修正技術は、ANNおよび/またはCNNの使用を含み得る。
【0010】
本明細書で定義されるように、修正画像を生成する該ステップは、該現在の画質パラメータが該設定値よりも低い場合に、該画質パラメータに関して該画像を改善するステップと、該現在の画質パラメータが該設定値を超える場合に、該画質パラメータに関して該画像を劣化させるステップと、を含む。言い換えると、比較の結果に基づいて、2つのアクションの一方が可能である。1つ目のケースでは、画質は所望の値よりも低くなる。このケースでは、画像修正技術を使用して画像を改善し、修正画像の画質が確実に改善されるようにする。2つ目のケースでは、画質が所望の値よりも高くなる。このケースでは、画像修正技術を使用して意図的に画像を劣化させ、修正画像の画質が実際に低下するようにする。本明細書で定義されるように、次に、修正画像を出力し、ANNおよび/またはCNNによって分析する。上記に続き、分析に使用する対応するANNおよび/またはCNNは、画像セット上でトレーニングされ、画像セット内の各画像は、実質的に所望の画質パラメータを有することになる。
【0011】
一例として、本明細書で定義される方法は、実質的にノイズのない画像を提供するステップを含み得、本明細書で定義される方法は、該画像にノイズを加えることによって該画像を劣化させるステップを含み得る。一般に、高品質の画像と見なすことができるものに対して、次のうちの1つ以上を実行し得る。解像度を下げ得ること、色深度を下げ得ること、ダイナミックレンジを下げ得ること、焦点を劣化させ得ること、シャープネスを弱め得ること、方向性ぼけを追加し得ること、コントラストを下げ得ること、およびホワイトバランスを調整し得ること。同様に、低品質の画像と見なすことができるものに対して、次のうちの1つ以上を実行し得る。解像度を上げ得ること、色深度を上げ得ること、ダイナミックレンジを上げ得ること、焦点を向上させ得ること、シャープネスを上げ得ること、方向性ぼけを除去し得ること、コントラストを上げ得ること、およびホワイトバランスを調整し得ること。この意味で、高品質の画像は、中品質の画像へと劣化され、低品質の画像も中品質の画像へと改善される。次に、中品質の画像は、ANNおよび/またはCNNによって分析することができ、ここで、該ANNおよび/またはCNNは、最初に中品質の画像について実質的にトレーニングされている。
【0012】
方法は、複数の画像に対して実行され得る。入力画像は、事前に定義され得る目標特性を有する画像に変換され得、目標特性は、より適度な画質設定に対応する。例えば、異なる設定で作成されたために、品質が異なる入力画像は、類似した、より適度な特性を有する画像に変換される。これには、一部の画像を改善するステップと、他の画像を明示的に劣化させるステップと、が含まれる。修正画像の最終セットは、同等の画質パラメータを有し、より簡単で効果的な方法で処理することができる。これで、目的は達成される。
【0013】
本明細書で定義されるように、修正画像は、ANNおよび/またはCNNを使用してさらに分析される。本明細書で定義される方法は、すべての画像を、ANNおよび/またはCNNがトレーニングされた「中品質」の画像に変換することを可能にする。したがって、中品質の画像を提供することにより、ANNおよび/またはCNNへの異なる入力データの分散が減少する。発明者らは、受信した画像を常に改善するのではなく(例えば、ノイズを減らしたり、焦点を合わせたりするなどの点で画像を向上させることによって)、画像を「悪化」させるステップを導入する方が、画質を向上させることと比較して使用される操作が大幅に簡単になるため、実際に有利であることに気付いた。これは、トレーニングデータが可能な限り最高の画像で構成されている必要がないという有益な結果をもたらす。代わりに、ネットワークは「中品質」の画像でトレーニングすることができ、本明細書で定義されている方法を使用して、その後に取得された画像を元のネットワークがトレーニングされた既知の条件に変換することができる。上記のように、これには、画像をANNおよび/またはCNNに提供する前に画質を向上または低下させることが含まれる。このようにして、プライマリNNの再トレーニングを必要とせずに、ANNおよび/またはCNNの適切な動作が保証される。
【0014】
本明細書で定義される方法は、現場でニューラルネットワークを再トレーニングする必要性を排除する。代わりに、ニューラルネットワークは、優れた画質特性を有する画像の代わりに、より中程度の画質特性を有する画像を含み得る特定のタイプの画像でトレーニングされ得る。次に、上記の方法を使用して、入力画像を該ニューラルネットワークに適した修正画像に変換し得、ニューラルネットワークはこれらの画像を所望の方法で処理することができる。追加の利点として、変換または修正された画像がニューラルネットワークによって十分に処理されないことが判明した場合、修正画像を生成するステップで使用される画像操作技術が変更され得る。修正画像がニューラルネットワークによって処理されることを確実にするために画像操作技術を修正することは比較的簡単で効果的であり、これはニューラルネットワークを再トレーニングする必要性を軽減する。したがって、既存のANNおよび/またはCNNは、ネットワークを再トレーニングする代わりに、ANNおよび/またはCNNに入力された画像を変換することによって引き続き使用することができる。これは、新しいトレーニングデータまたはラベルを収集する必要がなく、画像を受信するNNは、非常に複雑でかつ再トレーニングが難しくなり得る組み込みシステムに配備され得るが、そのために変更されないままとなり得ることから、大きな利点である。
【0015】
本明細書で定義される方法では、変換は、入力画像を増強させることと、劣化させることとの両方を含むことに留意されたい。増強させることおよび劣化させることは、1つ以上の画像パラメータに関するものであり、これらの画像パラメータには、解像度、色深度、ダイナミックレンジ、焦点、シャープネス、方向性ぼけ、コントラスト、ホワイトバランス、およびノイズが含まれ得る。他の画質パラメータも考えられる。方法で使用される画像修正技術は、上記のパラメータのうちの1つ以上について、受信した画像を増強および劣化させることができる。当業者ならば、これらの画像修正技術で使用される適切なパラメータおよびアルゴリズムなどに精通しているであろう。
【0016】
すでに上で述べたように、該所望の画質パラメータの設定値は、中程度の画質パラメータ値に対応することが望ましい。
【0017】
方法は、修正画像を分析するさらなるステップを含み得る。該分析することは、人工ニューラルネットワーク(ANN)および/または畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用するステップを含み得る。
【0018】
分析することは、該画像内の1つ以上の物体の識別を含み得る。
【0019】
画像は、いくつかの方法でデータ処理装置に提供され得る。画像は、非一時的なコンピュータ可読媒体から取得され得る。画像は、クラウドコンピューティングネットワークから取得され得る。画像は、データ処理装置に接続されたカメラデバイスによって取得され得る。
【0020】
一実施形態では、該画像は、顕微鏡、特に荷電粒子顕微鏡によって得られる。荷電粒子顕微鏡は、電子顕微鏡であり得る。
【0021】
一態様によれば、非一時的なコンピュータ可読媒体が提供され、該非一時的なコンピュータ可読媒体は、データ処理装置によって実行されると、データ処理装置に本明細書で定義される方法を実行させるソフトウェア命令をそこに格納している。
【0022】
一態様によれば、試料の検査のための荷電粒子ビームデバイスが提供され、
-試料を保持するための試料ホルダと、
-荷電粒子ビームを生成するためのソースと、
-該荷電粒子ビームを該試料に集束させるための照明器と、
-該荷電粒子ビームによる該照射に応答して、該試料から放出される放射線束を検出するための検出器と、
-データ処理装置と、を備える。
【0023】
本明細書で定義されるように、荷電粒子ビームデバイスは、本明細書で定義される方法を実行するように構成される。
【0024】
データ処理装置は、検出器に直接接続され、直接的な方法で該検出器からデータおよび/または画像を受信し得る。例えば、検出器と処理装置との間にある追加の装置による中間接続も可能である。例えば、荷電粒子ビームデバイスは、荷電粒子ビームデバイスの少なくとも一部を操作するように構成されたコントローラを備えることが考えられる。このコントローラは、検出器およびデータ処理装置に接続され得るか、または少なくとも接続可能であり得、検出器から処理装置にデータ(を含む画像)を転送するように構成され得る。コントローラは、検出器から放出されるデータを処理するように構成され得、または生データをデータ処理装置に転送するように構成され得る。データが受信されると、データ処理装置は、本明細書で定義された方法を実行することができる。一実施形態では、コントローラは、該データ処理装置を含む。
【0025】
一態様によれば、本明細書で定義される方法を実行するように構成されたデータ処理装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明は、ここで、例示的な実施形態および添付の概略図面に基づいてより詳細に説明される。
【
図1】本発明の第1の実施形態による、荷電粒子顕微鏡の縦断面図を示す。
【
図2】本発明の第2の実施形態による、荷電粒子顕微鏡の縦断面図を示す。
【
図3】本明細書で定義される方法の第1の実施形態のフローチャートである。
【
図4】本明細書で定義される方法のさらなる実施形態のフローチャートである。
【
図5】本明細書で定義される方法で画像を分析および処理する可能な方法の図示である。
【0027】
図1(縮尺どおりではない)は、本発明の実施形態による、荷電粒子顕微鏡Mの実施形態の非常に概略的な図である。より具体的には、透過型顕微鏡M、この場合、TEM/STEMの実施形態を示している(ただし、本発明の文脈では、SEM(
図2参照)、または例えば、イオンベースの顕微鏡も同様に有効であり得る)。
図1において、真空筐体2内では、電子ソース4は、電子光軸B´に沿って伝搬し、電子光学照明器6を横断する電子ビームBを生成し、電子光学照明器6は、電子を試料Sの選択部分(例えば、(局所的に)薄化さ/平坦化され得る)に方向付ける/集束させるように機能する。偏向器8もまた図示されており、これは、(とりわけ)ビームBの走査運動をもたらすために使用することができる。
【0028】
試料Sは、ホルダHが(取り外し可能に)固定されているクレードルA´を移動させる、位置決めデバイス/ステージAにより複数の自由度で位置決めすることができる試料ホルダHに保持されており、例えば、試料ホルダHは、(とりわけ)XY平面内で移動することができるフィンガを含むことができる(示されたデカルト座標系を参照されたい。通常は、Zに平行な動きおよびX/Yについての傾きも可能である)。このような移動により、試料Sの異なる部分が、軸B´に沿って(Z方向に)進む電子ビームBによって、照明/撮像/検査されることを可能にする(および/または走査運動が、ビーム走査の代替として、実行されることを可能にする)。所望される場合、任意選択の冷却デバイス(図示せず)を、試料ホルダHと密に熱接触させて、試料ホルダH(および、その上の試料S)を、例えば、極低温度に維持することができる。
【0029】
電子ビームBは、(例えば)2次電子、後方散乱電子、X線、および光放射(カソードルミネッセンス)を含む様々なタイプの「誘導」放射線を試料Sから放出させるように、試料Sと相互作用する。所望される場合、例えば、シンチレータ/光電子増倍管またはEDXもしくはEDS(エネルギー分散型X線分光)モジュールを組み合わせたものであり得る分析デバイス22の助けを借りて、これらの放射線のタイプのうちの1つ以上を検出することができ、このような場合には、SEMと基本的に同じ原理を使用して画像を構築することができる。しかしながら、代替的にまたは補足的に、試料Sを横断(通過)し、試料Sから出射/放出され、軸線B´に沿って(実質的には、とはいえ、概して、ある程度偏向/散乱しながら)伝搬し続ける電子を調査することができる。このような透過電子束は、撮像システム(投影レンズ)24に入射し、撮像システム24は概して、様々な静電/磁気レンズ、偏向器、補正器(スティグメータなど)などを含む。通常の(非走査)TEMモードでは、この撮像システム24は、透過電子束を蛍光スクリーン26に集束させることができ、蛍光スクリーン26を、所望される場合、(矢印26´で概略的に示すように)後退させる/回収することにより、軸線B´から外れるようにすることができる。試料Sの(一部の)画像(または、ディフラクトグラム)は、撮像システム24によりスクリーン26上に形成され、この画像は、筐体2の壁の適切な部分に位置する視認ポート28を介して視認され得る。スクリーン26の後退機構は、例えば、本質的に機械的および/また電気的であり得るが、図面には示されていない。
【0030】
スクリーン26上の画像を視認することの代替として、代わりに、撮像システム24から出ていく電子束の集束深度が概して極めて深い(例えば、約1メートル)という事実を利用することができる。その結果、様々な他のタイプの分析装置(以下のような)をスクリーン26の下流で使用することができる。
-TEMカメラ30。カメラ30の位置で、電子束は、静止画像(または、ディフラクトグラム)を形成することができ、静止画像は、コントローラ/プロセッサ20により処理することができ、例えば、フラットパネル表示のような表示デバイス14に表示することができる。必要ではない場合、カメラ30は、後退/回収(矢印30´で概略的に示すように)されて、カメラを軸線B´から外れるようにすることができる。
-STEMカメラ32。カメラ32からの出力は、試料S上のビームBの(X、Y)走査位置の関数として記録することができ、X、Yの関数としてのカメラ32からの出力の「マップ」である画像を構築することができる。カメラ32は、電子顕微鏡画素アレイ検出器(EMPAD)とすることもできるが、カメラ30に特徴的に存在する画素行列とは異なり、例えば、直径が20mmの単一の画素を含むことができる。さらに、カメラ32は、概して、カメラ30(例えば、102画像/秒)よりもはるかに高い取得レート(例えば、106ポイント/秒)を有する。この場合も同じく、必要でない場合、カメラ32は、(矢印32´で概略的に示すように)後退/回収させて、カメラを軸線B´から外れるようにすることができる(このような後退は、例えば、ドーナツ形の環状暗視野カメラ32の場合には必要とされないが、このようなカメラでは、中心孔が、カメラが使用されていない場合に電子束の通過を可能にする)。
-カメラ30または32を使用して撮像を行うことの代替として、例えば、EELSモジュールとすることができる分光装置34を呼び出すこともできる。
【0031】
部品30、32、および34の順序/位置は厳密ではなく、多くの可能な変形が考えられることに留意されたい。例えば、分光装置34は、撮像システム24と一体化することもできる。
【0032】
示す実施形態では、顕微鏡Mは、参照40で概して示される、後退可能なX線コンピュータ断層撮影(CT)モジュールをさらに含む。コンピュータ断層撮影(断層画像化とも称される)では、ソースおよび(対極にある)検出器を使用して、様々な視点から試料の透過観察を取得するように、異なる視線に沿って試料を調べる。
【0033】
コントローラ(コンピュータプロセッサ)20は、図示される様々なコンポーネントに、制御線(バス)20´を介して接続されることに留意されたい。このコントローラ20は、アクションを同期させる、設定値を提供する、信号を処理する、計算を実行する、およびメッセージ/情報を表示デバイス(図示せず)に表示するなどの様々な機能を提供することができる。言うまでもなく、(概略的に図示される)コントローラ20は、筐体2の(部分的に)内側でも外側でもよく、所望に応じて、単体構造または複合構造を有することができる。コントローラは、この実施形態に示されるように、本明細書で定義される方法を実行するために配置されたデータ処理装置Pを備える。
【0034】
当業者は、筐体2の内部が厳密な真空状態に保持される必要はないことを理解するであろう。例えば、いわゆる「環境TEM/STEM」では、所与のガスの背景雰囲気が、筐体2内に意図的に導入/維持される。当業者はまた、実際には、筐体2の容積を制限することが有利であり得、それにより、可能であれば、筐体2が、軸線B´を本質的に包み込み、小径管(例えば、直径約1cm)の形態を採り、採用する電子ビームはそこを通過するが、広がってソース4、試料ホルダH、スクリーン26、カメラ30、カメラ32、分光装置34などのような構造を収容することを理解するであろう。
【0035】
ここで
図2を参照すると、本発明による装置の別の実施形態が示されている。
図2(縮尺どおりではない)は、本発明による荷電粒子顕微鏡Mの非常に概略的な描写であり、より具体的には、この場合、SEMである、非透過型顕微鏡Mの実施形態を示す(ただし、本発明の文脈では、例えば、イオンベース顕微鏡も同様に有効であり得る)。図では、
図1の項目に対応する部品は、同一の参照符号を使用して示され、ここでは別個に説明されない。(とりわけ)以下の部品が
図1に加えられる。
-2a:真空チャンバ2の内部に/内部から、項目(構成要素、試料)を導入/除去するために開放され得るか、またはその上に、例えば、補助デバイス/モジュールが装着され得る、真空ポート。顕微鏡Mは、必要に応じて、複数のそのようなポート2aを備え得る。
-10a、10b:概略的に図示された照明器6内のレンズ/光学素子。
-12:必要に応じて、試料ホルダHまたは少なくとも試料Sが、接地に対してある電位にバイアス(浮遊)されることを可能にする電圧源。
-14:FPDまたはCRTなどのディスプレイ。
-22a、22b:(ビームBの通過を可能にする)中央開口22bの周りに配設された複数の独立検出セグメント(例えば、四分円)を含む、セグメント化電子検出器22a。そのような検出器は、例えば、試料Sから発せられる出力(2次または後方散乱)電子束(の角度依存性)を調査するために使用され得る。
【0036】
ここでも、コントローラ20が存在する。コントローラは、ディスプレイ14に接続され、ディスプレイ14は、本明細書で定義される方法を実行するように配置されたデータ処理装置Pに接続可能であり得る。示される実施形態では、データ処理装置Pは、コントローラの一部を形成せず、顕微鏡Pの一部さえも形成しない別個の構造である。データ処理装置Pは、ローカルまたはクラウドベースであり得、原則として、場所に限定されない。
【0037】
ここで
図3に目を向けると、本明細書で定義される方法100のフローチャートが示されている。データ処理装置Pによって実施されるこの方法は、
-画像を受信するステップ101と、
-該画像の所望の画質パラメータに設定値を提供するステップ111と、
-該画像の現在の画質パラメータを決定する103のための画像分析技術を使用して該画像を処理するステップ102と、
-該現在の画質パラメータを該所望の設定値111と比較するステップ103と、
-該比較に基づいて、画像修正技術を使用することによって修正画像を生成するステップ104であって、
-該現在の画質パラメータが該設定値よりも低い場合に、該画質パラメータに関して該画像を改善するステップ104aと、
-該現在の画質パラメータが該設定値を超える場合、該画質パラメータに関して該画像を劣化させるステップ104bと、を含む、生成するステップ104と、
-該修正画像を出力するステップ105と、を含む。
【0038】
修正画像を生成する該ステップ104は、人工ニューラルネットワーク(ANN)および/または畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用するステップを含み得る。他の画像修正技術も同様に使用し得る。
【0039】
図4は、本明細書で定義される方法のさらなる実施形態を示す。この実施形態は、
図3に示される実施形態と同様であるが、修正画像を分析するさらなるステップ106を含む。分析することは、ANNおよび/またはCNNを使用して行うことができ、例えば、修正画像のセグメンテーション、および/または該修正画像内の1つ以上の物体を識別することを含み得る。分析には、画像再構成技術も含まれ得る。
【0040】
データ処理装置Pによって受信された画像は、
図1または
図2に示されるように、荷電粒子顕微鏡Mによって提供され得る。データ処理装置Pに画像を提供する他の方法も考えられる。
【0041】
図5は、一例として、本明細書で定義される方法がどのように動作するかの例を示している。ここでは、3つの入力画像201~203が示されている。左の画像201は低画質(低コントラスト、低シャープネス、低ディテールで示されている)であり、中央の画像202は中程度の画質(中コントラスト、中シャープネス、中ディテール)であり、右の画像203は高画質(高コントラスト、高シャープネス、高ディテール)である。本明細書で定義される方法は、入力画像201~203から1つ以上の画像パラメータを決定し、次にこれらの1つ以上の画像パラメータを所望の目標とする画質パラメータと比較することができる。本明細書で定義される方法では、所望の画質パラメータは、目標とする、より中程度の画質パラメータ値に対応する。画像201~203のそれぞれは、データ処理装置によって処理され、所望の品質と比較され、次いで、画像修正技術が適用されて、例えば、目標とする画質を有する画像が生成される。示される実施形態では、方法は、コントラスト、シャープネス、およびディテールに関して品質を向上させることによって、左の入力画像201を中程度の品質の画像211に変換するように構成されている。方法はまた、コントラスト、シャープネス、およびディテールに関して品質を劣化させることによって、右の入力画像203を中程度の品質の画像211に変換するように構成されている。決定された品質パラメータが所望の品質パラメータから大きく逸脱しないことがある中央の画像202の場合、画像変換技術が適用されていないことが考えられる。したがって、一実施形態では、方法は、決定された画質パラメータが該所望の画質パラメータに等しいか、またはその限定された閾値内にある場合に、入力画像202を出力画像211として維持するステップを含む。他の実施形態では、それにもかかわらず、中央の画像202は、該品質パラメータに関して変換され得る。いずれにせよ、入力画像201~203は処理され、改善、劣化、および/または承認され得、最終的に(実質的に)同じ画像211をもたらす。
【0042】
出力画像211が形成されると、例えば、ANNおよび/またはCNNを使用して、出力画像211に対してさらなる分析を実行し得る。
図5では、ANNおよび/またはCNNを使用して、粒子231~234および対応する領域境界241~244を識別し得る。これは、3つの入力画像201~203のそれぞれに対して行うことができることに留意されたい。結果として得られる出力画像211は、3つの入力画像201~203の平均化された画像211であると見なされるべきではない。
【0043】
本明細書で定義される方法は、画像を参照して説明されていることに留意されたい。本明細書で定義される方法は、原則として、任意の2Dまたは3D表現に適用可能である。本明細書で定義される画像は、一実施形態では、EM画像、BSE画像、EELSなどのスペクトル画像などを含む、荷電粒子顕微鏡法によって取得可能な画像に関連し得る。
【0044】
以上のように、方法をいくつかの非限定な例によって説明した。所望の保護は、添付の特許請求の範囲によって決定される。