(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】牛の評価装置および牛の評価方法
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20250311BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
A01K29/00 D
A61B5/107 100
(21)【出願番号】P 2021175643
(22)【出願日】2021-10-27
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 晃
(72)【発明者】
【氏名】西川 純
(72)【発明者】
【氏名】川出 哲生
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187277(JP,A)
【文献】特表2012-510278(JP,A)
【文献】特開2016-59300(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/42584(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
A61B 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立位にある牛を略真後ろまたは略正面から撮像した二次元の撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像から、前記牛の輪郭線を抽出する抽出部と、
前記輪郭線の上部の左右両側に存在する2つの山部のうち少なくとも一方の山部の前記輪郭線上の略中央の点を境に一方側に伸びる第1曲線部上に位置する第1基準点および他方側に伸びる第2曲線部上に位置する第2基準点の少なくとも一方の基準点を特定する基準点特定部と、
特定した前記基準点から前記略中央の点側に位置する前記輪郭線上の第1の点と前記基準点とを結ぶ第1線分と、前記基準点を挟んで前記輪郭線上で前記第1の点と反対側に位置する第2の点と前記基準点とを結ぶ第2線分と、の間の角度を算出する角度算出部と、
前記角度算出部が算出した前記角度を用いて、前記牛の肉付きを評価する評価部と、を備える牛の評価装置。
【請求項2】
前記基準点特定部は、前記第1基準点および前記第2基準点の両方を特定し、
前記角度算出部は、前記第1基準点および前記第2基準点それぞれにおける前記角度を算出し、
前記評価部は、前記第1基準点および前記第2基準点それぞれにおける前記角度の和または積を用いて、前記牛の肉付きを評価する、請求項1に記載の牛の評価装置。
【請求項3】
前記基準点特定部は、前記第1基準点および前記第2基準点の両方を特定し、
前記角度算出部は、前記第1基準点に対応する前記第1の点として、前記輪郭線上で前記第1基準点および前記第2基準点の間に位置する点を特定し、前記第2基準点に対応する前記第1の点として、前記輪郭線上で前記第1基準点および前記第2基準点の間に位置する点を特定する、請求項1または2に記載の牛の評価装置。
【請求項4】
前記第1基準点に対応する前記第1の点と、前記第2基準点に対応する前記第1の点は、同一の点であり、前記第1基準点および前記第2基準点から略等距離に位置する点である、請求項3に記載の牛の評価装置。
【請求項5】
前記角度算出部は、前記第1基準点に対応する前記第2の点として、前記第1基準点と該第1基準点に対応する前記第1の点との間の距離と略等距離の点を特定し、前記第2基準点に対応する前記第2の点として、前記第2基準点と該第2基準点に対応する前記第1の点との間の距離と略等距離の点を特定する、請求項3または4に記載の牛の評価装置。
【請求項6】
前記基準点特定部は、前記第1基準点を特定する場合、前記輪郭線が抽出された抽出画像内で概ね左右方向に伸びる第1直線を前記少なくとも一方の山部の上方から前記少なくとも一方の山部に向けて近づけ、前記第1直線が前記少なくとも一方の山部に最初に接した点を特定し、前記第2基準点を特定する場合、前記抽出画像内で概ね上下方向に伸びる第2直線を前記少なくとも一方の山部の側方から前記少なくとも一方の山部に向けて近づけ、前記第2直線が前記少なくとも一方の山部に最初に接した点を特定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項7】
前記第1直線は、前記抽出画像内の水平線または前記抽出画像内の水平線に対する角度が0°より大きく20°以下となって前記抽出画像の左右方向の中央側から前記少なくとも一方の山部側に向かって斜め下に傾いた直線であり、
前記第2直線は、前記抽出画像内の垂線または前記抽出画像内の水平線に対する角度が70°以上90°未満となって前記少なくとも一方の山部側から前記抽出画像の上辺の中央側に向かって傾いた直線である、請求項6に記載の牛の評価装置。
【請求項8】
前記2つの山部は前記牛の腰角に対応する部分である、請求項1から7のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項9】
前記評価部は、前記牛の肉付きの評価としてボディコンディションスコアを評価する、請求項1から8のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項10】
前記牛を撮像する撮像部を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項11】
立位にある牛を略真後ろまたは略正面から撮像した二次元の撮像画像から前記牛の輪郭線を抽出し、
前記輪郭線の上部の左右両側に存在する2つの山部のうち少なくとも一方の山部の前記輪郭線上の略中央の点を境に一方側に伸びる第1曲線部上に位置する第1基準点および他方側に伸びる第2曲線部上に位置する第2基準点の少なくとも一方の基準点を特定し、
特定した前記基準点から前記略中央の点側に位置する前記輪郭線上の第1の点と前記基準点とを結ぶ第1線分と、前記基準点を挟んで前記輪郭線上で前記第1の点と反対側に位置する第2の点と前記基準点とを結ぶ第2線分と、の間の角度を算出し、
算出した前記角度を用いて、前記牛の肉付きを評価する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする牛の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛の評価装置および牛の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛の飼養管理におけるエネルギーバランスを評価するために、牛の体脂肪の付着状態(肉付き状態)を評価することが行われている。体脂肪の付着状態を示す指標の1つとしてボディコンディションスコアがある。通常、ボディコンディションスコアの判定は獣医師や酪農の専門家によって行われるが、人が判定をするために判定基準があいまいとなり、判定にばらつきが生じてしまう。一方、牛を撮像した撮像画像を用いて身体の状態を示すスコアを評価する方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2012-510278号公報
【文献】国際公開第2004/012146号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載の評価方法は、牛を上方かつ後方から撮像した画像を用いて身体の状態を示すスコアを算出するため、牛を上方かつ後方から撮像できる設備が設置された特定の場所での撮影が必要となり、多様な飼育現場に適用することは難しい。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、多様な飼育現場に適用することが可能な牛の評価装置および牛の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の牛の評価装置は、立位にある牛を略真後ろまたは略正面から撮像した二次元の撮像画像を取得する画像取得部と、前記撮像画像から、前記牛の輪郭線を抽出する抽出部と、前記輪郭線の上部の左右両側に存在する2つの山部のうち少なくとも一方の山部の前記輪郭線上の略中央の点を境に一方側に伸びる第1曲線部上に位置する第1基準点および他方側に伸びる第2曲線部上に位置する第2基準点の少なくとも一方の基準点を特定する基準点特定部と、特定した前記基準点から前記略中央の点側に位置する前記輪郭線上の第1の点と前記基準点とを結ぶ第1線分と、前記基準点を挟んで前記輪郭線上で前記第1の点と反対側に位置する第2の点と前記基準点とを結ぶ第2線分と、の間の角度を算出する角度算出部と、前記角度算出部が算出した前記角度を用いて、前記牛の肉付きを評価する評価部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多様な飼育現場に適用することが可能な牛の評価装置および牛の評価方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る牛の評価装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、制御部の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、画像取得部が取得する画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、抽出部が実行する処理を説明するための図である。
【
図5】
図5は、基準点特定部が実行する処理を説明するための図である。
【
図6】
図6は、角度算出部が実行する処理を説明するための図(その1)である。
【
図7】
図7は、角度算出部が実行する処理を説明するための図(その2)である。
【
図8】
図8は、角度算出部が実行する処理を説明するための図(その3)である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、角度算出部が算出する角度と、牛の肉付きと、の関係を示す図(その1)である。
【
図10】
図10(a)および
図10(b)は、角度算出部が算出する角度と、牛の肉付きと、の関係を示す図(その2)である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る牛の評価装置のハードウェア構成図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る牛の肉付きの評価方法の一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、角度を算出するために用いる、輪郭線上で2つの基準点の間にある点が別々の点である場合を示す図である。
【
図17】
図17(a)は、立位にある牛を略真後ろから撮像した撮像画像であり、
図17(b)は、
図17(a)の牛を略正面から撮像した撮像画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《実施形態》
以下、実施形態に係る牛の評価装置100について、図を用いて説明する。
図1には、実施形態に係る牛の評価装置100の機能構成がブロック図にて示されている。
図2には、制御部20の機能構成がブロック図にて示されている。本実施形態では、評価装置100は、作業者が携帯して利用する携帯型情報機器であるとする。携帯型情報機器として、例えばスマートフォン、タブレット型パソコン、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートグラス等が挙げられる。評価装置100は、例えば、電話機能やメール機能、インターネット等に接続するための通信機能、およびプログラムを実行するためのデータ処理機能等を有する。
【0010】
図1に示すように、評価装置100は、表示部10と、入力部12と、通信部14と、撮像部16と、記憶部18と、制御部20と、を有する。
【0011】
表示部10は、画像や、各種情報、およびタッチ操作ボタン等の操作入力用画像等を表示する表示デバイスである。
【0012】
入力部12は、タッチパネルやスイッチ等のデバイスである。タッチパネルは、作業者が触れたことに応じて情報入力を受け付け、受け付けた情報を制御部20に送信する。タッチパネルは、例えば表示部10に組み込まれている。したがって、タッチパネルは、作業者が表示部10の表面をタッチすることに応じて、種々の情報入力を受け付ける。スイッチは、作業者から評価装置100に対する入力を受け付ける入力部材であり、受け付けた情報を制御部20に送信する。
【0013】
通信部14は、他の機器と近距離無線通信(例えばNFC(Near Field Communication))を行ったり、ネットワークに接続された他の機器と無線通信(例えば携帯電話回線や無線LAN(Local Area Network)などを用いた通信)を行ったりする通信インターフェースである。
【0014】
撮像部16は、静止画や動画等の画像を撮像するデバイスである。撮像部16は、評価装置100を携帯する作業者が入力部12を操作することに応じて撮像する。例えば、作業者は、牛の肉付きを評価する場合に、撮像部16によって立位にある牛を略真後ろから撮像する。略真後ろから撮像するとは、牛の左右の腰角周りの輪郭が写る範囲で撮像することである。したがって、作業者は、牛の肉付きを評価する場合に、例えば、牛の後方数m(例えば1m~2m)の位置から牛の足元まで入るようにして、左右の腰角周りの輪郭が写るように牛を撮像する。
【0015】
記憶部18は、牛の撮像画像や牛の輪郭線を抽出した抽出画像、牛の肉付きを評価した評価結果等、各種情報を記憶する。
【0016】
制御部20は、牛の評価装置100の各部を制御する処理部である。
図2に示すように、制御部20は、画像取得部30、抽出部32、基準点特定部34、角度算出部36、および評価部38を有する。
【0017】
図3には、画像取得部30が取得する画像の一例が示されている。
図3に示すように、例えば、画像取得部30は、立位にある牛を略真後ろから撮像した撮像画像50を取得する。取得する牛の撮像画像50は、撮像部16が撮像した画像であってもよいし、他の機器が撮像した画像を通信部14により受信した画像であってもよい。また、取得する牛の撮像画像50は、記憶部18に記憶されていたものの中から作業者が入力部12を用いて選択したものであってもよい。画像取得部30は、取得した牛の撮像画像50を表示部10に表示してもよい。これにより、作業者は、これから肉付きを評価する牛を表示部10上で視覚的に認識することができる。
【0018】
図4は、抽出部32が実行する処理を説明するための図である。なお、
図4においては、図の明瞭化のために、後述する曲線部66a、66b、68a、68bを太線で図示している。
図4に示すように、抽出部32は、画像取得部30が取得した牛の撮像画像50から、牛の輪郭をなぞった輪郭線60を抽出する。輪郭線60の抽出は、一般的に知られた画像処理技術を用いることができる。抽出部32は、抽出した牛の輪郭線60のみを表した抽出画像52を表示部10に表示してもよい。これにより、作業者は、これから肉付きを評価する牛の輪郭を表示部10上で視覚的に認識することができる。抽出画像52の外形は撮像画像50の外形と同じであり、画像の枠に対する牛の位置は抽出画像52と撮像画像50とで同じである。
【0019】
輪郭線60の上部の左右両側には山部62a、62bが存在する。山部62a、62bは、腰角に対応する部分である。山部62aは、山部62aの輪郭線60上の略中央の点64aを境に牛の背中側に伸びる曲線部66aと、牛の腹側に伸びる曲線部68aと、を有する。同様に、山部62bは、山部62bの輪郭線60上の略中央の点64bを境に牛の背中側に伸びる曲線部66bと、牛の腹側に伸びる曲線部68bと、を有する。
【0020】
図5は、基準点特定部34が実行する処理を説明するための図である。なお、
図5は、輪郭線60の上部を拡大した図であり、図の明瞭化のために模式的に図示している(以下の同様な図においても同じ)。
図5に示すように、基準点特定部34は、2つの山部62a、62bのうち少なくとも一方の山部に対して基準点70、72の少なくとも一方の基準点を特定する。本実施形態では、2つの山部62a、62bのうち山部62aに対して基準点70と基準点72の両方を特定する場合を例に説明する。
【0021】
基準点特定部34は、山部62aの輪郭線60の略中央の点64aを境に輪郭線60の上部側に伸びる曲線部66a上に位置する基準点70と、側部側に伸びる曲線部68a上に位置する基準点72と、を特定する。例えば、基準点特定部34は、抽出画像52内で概ね左右方向に伸びる第1直線90を上方から山部62aに向けて近づけて行き、第1直線90が山部62aに最初に接した点を基準点70と特定する。また、基準点特定部34は、抽出画像52内で概ね上下方向に伸びる第2直線92を側方から山部62aに向けて近づけて行き、第2直線92が山部62aに最初に接した点を基準点72と特定する。
【0022】
第1直線90は、抽出画像52内の水平線であってもよいし、水平線に対して傾いた直線であってもよい。第1直線90は、水平線に対して傾いている場合、抽出画像52の左右方向の中央側から山部62aに向かって斜め下に傾いた直線であってもよい。抽出画像52内の水平線に対する第1直線90の傾斜角度は、詳しくは後述するが、20°以下である場合が好ましい。
【0023】
第2直線92は、抽出画像52内の垂線であってもよいし、垂線に対して傾いた直線であってもよい。第2直線92は、垂線に対して傾いている場合、山部62a側から抽出画像52の上辺54の中央側に向かって傾いた直線であってもよい。抽出画像52内の水平線に対する第2直線92の傾斜角度は、詳しくは後述するが、70°以上である場合が好ましい。
【0024】
なお、基準点特定部34は、上記以外の方法によって基準点70、72を特定してもよい。例えば、輪郭線60のなかで抽出画像52の左上端点56からの直線距離が最も短い最短点を特定し、この最短点を挟んで位置する2つの点を基準点70、72としてもよい。基準点70、72は最短点から直線上または輪郭線60上で略等距離となって離れていてもよい。
【0025】
図6から
図8は、角度算出部36が実行する処理を説明するための図である。なお、
図6から
図8は、輪郭線60における山部62a付近を拡大した図であり、図の明瞭化のために模式的に図示している。
図6に示すように、まず、角度算出部36は、例えば輪郭線60上で基準点70と基準点72との間に位置する点74を特定する。例えば、角度算出部36は、基準点70および基準点72からの直線距離が略等しい輪郭線60上の点74、または、基準点70と基準点72の間の輪郭線60に沿った長さを略2等分した輪郭線60上の点74を特定する。例えば、角度算出部36は、基準点70と基準点72を結ぶ線分の中点を特定し、その中点を通りかつ基準点70と基準点72を結ぶ線分に直交する線分が輪郭線60に交わる点を点74として特定する。
【0026】
次いで、
図7に示すように、角度算出部36は、輪郭線60上で基準点70に対して点74とは反対側に位置する点76と、輪郭線60上で基準点72に対して点74とは反対側に位置する点78と、を特定する。例えば、角度算出部36は、輪郭線60上で基準点70に対して点74とは反対側に位置し、基準点70と点74との間の直線上または輪郭線60上の距離と略同じ長さだけ基準点70から直線上または輪郭線60上で離れた点76を特定する。また、角度算出部36は、輪郭線60上で基準点72に対して点74とは反対側に位置し、基準点72と点74との間の直線上または輪郭線60上の距離と略同じ長さだけ基準点72から直線上または輪郭線60上で離れた点78を特定する。
【0027】
次いで、
図8に示すように、角度算出部36は、基準点70と点74を結んだ線分80と、基準点70と点76を結んだ線分82と、を特定し、線分80と線分82のなす角度αを算出する。同様に、角度算出部36は、基準点72と点74を結んだ線分84と、基準点72と点78を結んだ線分86と、を特定し、線分84と線分86のなす角度βを算出する。
【0028】
図9(a)、
図9(b)、
図10(a)、および
図10(b)には、角度算出部36が算出する角度α、βと、牛の肉付きと、の関係が示されている。
図9(a)は、痩せている牛の輪郭線60を示し、図9(b)は、図9(a)の牛よりも太っている(肉付きの良い)牛の輪郭線60を示し、図10(a)は、図9(b)の牛よりも太っている(肉付きの良い)牛の輪郭線60を示し、図10(b)は、図10(a)の牛よりも太っている(肉付きの良い)牛の輪郭線60を示している。例えば、
図9(a)は、専門家によるボディコンディションスコアの評価が2.00であった牛の輪郭線60の上部を模式的に示し、
図9(b)は、ボディコンディションスコアの評価が2.50であった牛の輪郭線60の上部を模式的に示している。
図10(a)は、ボディコンディションスコアの評価が3.00であった牛の輪郭線60の上部を模式的に示し、
図10(b)は、ボディコンディションスコアの評価が3.50であった牛の輪郭線60の上部を模式的に示している。ボディコンディションスコアは、体脂肪の付着状態を示す指標であり、1.00~5.00の点数を付けることがあり、値が大きいほど肉付きが良いことを意味する。
【0029】
図9(a)から
図10(b)に示すように、ボディコンディションスコアが高くて肉付きの良い牛ほど、腰角に対応する部分である山部62a、62bが丸みを帯びた形状となる。このため、角度αおよび角度βは、肉付きの良い牛ほど大きくなると考えられる。したがって、角度αおよび角度βの少なくとも一方を用いて、牛の肉付き(ボディコンディションスコア)を評価することができると考えられる。
【0030】
[実験1]
専門家が評価したボディコンディションスコアと、角度αと角度βの和(角度α+角度β)と、の相関を調査する実験1を行った。
図11(a)から
図11(d)には、実験1の結果が示されている。
図11(a)から
図11(d)の横軸(x軸)は専門家が評価したボディコンディションスコアであり、縦軸(y軸)は角度αと角度βの和(角度α+角度β)である。
図11(a)から
図11(d)における複数の黒丸が実験した乳牛1頭1頭を示していて、点線の直線は近似直線を示している。なお、実験は乳牛(ホルスタイン種)に対して行った(以下の実験2、3についても同じ)。
【0031】
図11(a)から
図11(d)は、基準点70と基準点72を特定するために用いた第1直線90と第2直線92の傾斜角度が異なる場合についての実験結果である。
図11(a)は、第1直線90を抽出画像52内の水平線(すなわち水平線に対する傾斜角度が0°)とし、第2直線92を抽出画像52内の垂線(すなわち水平線に対する傾斜角度が90°)とした場合の結果である。
図11(b)は、第1直線90の抽出画像52内の水平線に対する傾斜角度を10°とし、第2直線92の抽出画像52内の水平線に対する傾斜角度を80°とした場合の結果である。
図11(c)は、第1直線90の抽出画像52内の水平線に対する傾斜角度を15°とし、第2直線92の抽出画像52内の水平線に対する傾斜角度を75°とした場合の結果である。
図11(d)は、第1直線90の抽出画像52内の水平線に対する角度を20°とし、第2直線92の抽出画像52内の水平線に対する角度を70°とした場合の結果である。
【0032】
図11(a)から
図11(d)に示すように、ボディコンディションスコアと角度αと角度βの和(角度α+角度β)との間には強い相関関係があることが確認された。例えば、
図11(a)のように、第1直線90が水平線で、第2直線92が垂線である場合では、近似直線はy=35.174x+199.16となり、相関係数Rは0.88となった。
図11(b)のように、第1直線90が水平線から10°傾斜し、第2直線92が水平線から80°傾斜した場合では、近似直線はy=30.632x+202.04となり、相関係数Rは0.83となった。
図11(c)のように、第1直線90が水平線から15°傾斜し、第2直線92が水平線から75°傾斜した場合では、近似直線はy=20.625x+231.22となり、相関係数Rは0.89となった。
図11(d)のように、第1直線90が水平線から20°傾斜し、第2直線92が水平線から70°傾斜した場合では、近似直線はy=10.555x+273.02となり、相関係数Rは0.58となった。
【0033】
[実験2]
第1直線90と第2直線92の傾斜角度が、ボディコンディションスコアと角度αと角度βの和(角度α+角度β)との間の相関係数Rに及ぼす影響を調査する実験2を行った。実験2は、抽出画像52内の水平線からの第1直線90の傾斜角度を0°、10°、15°、20°とし、第2直線92の傾斜角度を70°、75°、80°、90°とし、それぞれの組み合わせ毎にボディコンディションスコアと角度αと角度βの和(角度α+角度β)との間の相関係数Rを求めた。
【0034】
表1および
図12(a)、
図12(b)には、実験2の結果が示されている。
図12(a)の横軸(x軸)は抽出画像52内の水平線からの第2直線92の傾斜角度であり、縦軸(y軸)は相関係数Rである。
図12(b)の横軸(x軸)は抽出画像52内の水平線からの第1直線90の傾斜角度であり、縦軸(y軸)は相関係数Rである。
図12(a)および
図12(b)に記載された曲線は近似曲線である。
【表1】
【0035】
表1、
図12(a)、および
図12(b)に示すように、抽出画像52内の水平線からの傾斜角度が0°以上20°以下の第1直線90を用いて基準点70を特定し、抽出画像52内の水平線からの傾斜角度が70°以上90°以下の第2直線92を用いて基準点72を特定することで、ボディコンディションスコアと角度αと角度βの和(角度α+角度β)との間に強い相関関係が得られることが確認された。ボディコンディションスコアと角度αと角度βの和(角度α+角度β)との間の相関関係が強くなる観点から、第1直線90の抽出画像52内の水平線からの傾斜角度は0°以上15°以下が好ましいことが確認された。第2直線92の抽出画像52内の水平線からの傾斜角度は70°より大きく80°以下が好ましく、72°以上78°以下がより好ましく、74°以上76°以下が更に好ましいことが確認された。
【0036】
図2に戻り、実験1および実験2に示したように、ボディコンディションスコアと角度αと角度βの和(角度α+角度β)との間には強い相関があることから、本実施形態においては、評価部38は、角度αと角度βの和(角度α+角度β)から、牛の肉付き(ボディコンディションスコア)を評価する。例えば、評価部38は、記憶部18に記憶された、角度とボディコンディションスコアとが関連付けられたスコア情報を用い、角度算出部36が算出した角度αと角度βの和(角度α+角度β)から、ボディコンディションスコアを評価する。
【0037】
表2には、記憶部18に記憶されたスコア情報の一例が示されている。表2に示すように、スコア情報においては、角度とボディコンディションスコアとが関連付けられている。例えば、角度がa°未満の場合のボディコンディションスコアは1.00、a°以上b°未満の場合のボディコンディションスコアは1.50などのように、角度とボディコンディションスコアとが関連付けられている。なお、表2では、ボディコンディションスコアが0.5刻みの場合を例に示したが、その他の場合でもよい。例えば、0.25刻みの場合でもよいし、2.00~4.00の間は0.25刻みで、それ以外は0.50刻みの場合でもよい。
【表2】
【0038】
なお、記憶部18に記憶されるスコア情報は、角度とボディコンディションスコアとが関連付けられた情報であれば、表2に示したスコア情報以外であってもよい。例えば、
図11(a)から
図11(d)に示す近似直線に対応する一次関数(y=ax+b)がスコア情報として記憶部18に記憶されていてもよい。この場合、yに角度を代入することで得られたxの値に対して四捨五入や、切り上げ、切り捨て等の端数処理を行ってボディコンディションスコアを評価してもよい。
【0039】
図13は、牛の評価装置100のハードウェア構成図である。
図13に示すように、評価装置100は、記憶装置40、メモリ41、プロセッサ42、通信インターフェース43、入力装置44、表示装置45、および撮像装置46を有する。これらの各部はバス48により相互に接続される。
【0040】
記憶装置40は、フラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリであって、牛の評価プログラム47を記憶する。
【0041】
メモリ41は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等のようなデータを一時的に記憶するハードウェアである。
図1における記憶部18は、記憶装置40とメモリ41によって実現される。
【0042】
プロセッサ42は、牛の評価装置100の各部を制御するCPU(Central Processing Unit)等のハードウェアである。プロセッサ42は、メモリ41と協働して牛の評価プログラム47を実行する。このように、メモリ41とプロセッサ42とが協働して牛の評価プログラム47を実行することにより、
図2における制御部20の各機能が実現される。
【0043】
通信インターフェース43は、牛の評価装置100を他の機器と近距離無線通信またはネットワークを介した無線通信をさせるためのハードウェアである。通信インターフェース43により
図1における通信部14が実現される。
【0044】
入力装置44は、作業者が牛の評価装置100を操作するためのタッチパネルやスイッチ等の入力デバイスである。入力装置44により
図1における入力部12が実現される。
【0045】
表示装置45は、
図1における表示部10を実現するためのハードウェアであり、牛の撮像画像50や抽出画像52、牛の評価結果等を表示するための液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。
【0046】
撮像装置46は、
図1における撮像部16を実現するためのハードウェアであり、レンズや撮像素子等を備える。
【0047】
次に、実施形態に係る牛の肉付きの評価方法の一例について、
図14のフローチャートに沿って説明する。
図14の処理は、評価装置100の制御部20によって実行される。なお、記憶部18には、一例として表2のようなスコア情報が格納されているとする。
【0048】
図14の処理では、まず、ステップS10において、制御部20の画像取得部30は、牛の評価プログラム47が起動されるまで待機する。この場合、作業者の操作(例えば入力部12への入力操作またはマイク(不図示)への音声入力等)に応じて制御部20が牛の評価プログラム47を起動した段階で、ステップS12に移行する。
【0049】
ステップS12に移行すると、画像取得部30は、肉付きの評価を行う牛が撮像された撮像画像50を取得する(
図3参照)。牛の撮像画像50は、例えば、立位にある牛が略真後ろから撮像された画像である。画像取得部30は、例えば、作業者が撮像部16を用いて撮像した牛の撮像画像、通信部14を介して他の機器から受信した牛の撮像画像、または記憶部18に記憶されていた複数の牛の撮像画像の中から作業者が入力部12を操作することで選択した牛の撮像画像を取得する。なお、画像取得部30は、牛の評価プログラム47が起動した後に、作業者が撮像部16によって牛を撮像できるよう、カメラ機能を立ち上げてもよい。作業者が撮像部16によって牛を撮像した場合、撮像した牛の撮像画像と、この撮像画像を選択するか否かを問う選択ボタンと、を表示部10に表示してもよい。
【0050】
制御部20の抽出部32は、ステップS14において、ステップS12で取得した牛の撮像画像50から牛の輪郭をなぞった輪郭線60を抽出する(
図4参照)。これにより、牛の輪郭線60が示された抽出画像52が生成される。輪郭線60を抽出するにあたり、抽出部32は、輪郭線60を良好な精度で抽出するために、撮像画像50内の牛以外の背景を除去する処理を行ってもよい。
【0051】
次いで、ステップS16では、制御部20の基準点特定部34は、輪郭線60の上部の左右両側に存在する2つの山部62a、62bのうち少なくとも一方の山部62aの略中央の点64aを境に輪郭線60の上部側に伸びる曲線部66a上に位置する基準点70と、側部側に伸びる曲線部68a上に位置する基準点72と、を特定する(
図5参照)。例えば、基準点特定部34は、抽出画像52内で概ね左右方向に伸びる第1直線90を上方から山部62aに向けて近づけ、第1直線90が山部62aに最初に当たった点を基準点70と特定する。また、基準点特定部34は、抽出画像52内で概ね上下方向に伸びる第2直線92を山部62aの側方から山部62aに向けて近づけ、第2直線92が山部62aに最初に当たった点を基準点72と特定する。
【0052】
次いで、ステップS18では、制御部20の角度算出部36は、輪郭線60上で基準点70と基準点72の間に位置する点74を特定する(
図6参照)。例えば、角度算出部36は、輪郭線60上で基準点70と基準点72との間に位置し、基準点70からの距離と基準点72からの距離とが略同じ長さである1つの点74を特定する。
【0053】
次いで、ステップS20では、角度算出部36は、輪郭線60上で基準点70に対して点74とは反対側に位置する点76と、輪郭線60上で基準点72に対して点74とは反対側に位置する点78と、を特定する(
図7参照)。例えば、角度算出部36は、基準点70と点74の間の距離と略同じ長さだけ基準点70から離れた点76を特定する。また、角度算出部36は、基準点72と点74の間の距離と略同じ長さだけ基準点72から離れた点78を特定する。
【0054】
次いで、ステップS22では、角度算出部36は、基準点70と点74を結ぶ線分80と、基準点70と点76を結ぶ線分82と、のなす角度αを算出する(
図8参照)。また、角度算出部36は、基準点72と点74を結ぶ線分84と、基準点72と点78を結ぶ線分86と、のなす角度βを算出する(
図8参照)。
【0055】
次いで、ステップS24では、制御部20の評価部38は、ステップS22で算出した角度αと角度βの和(角度α+角度β)と、記憶部18に記憶された表2のようなスコア情報と、から撮像画像50に写された牛の肉付き(ボディコンディションスコア)を評価する。
【0056】
次いで、ステップS26では、評価部38は、ステップS24で評価したボディコンディションスコアを表示部10に表示すると共に記憶部18に記憶する。例えば、評価部38は、牛の撮像画像50と共にボディコンディションスコアを表示部10に表示してもよい。また、評価部38は、作業者が入力部12を操作して入力した牛の個体識別番号などの個体識別情報と、評価したボディコンディションスコアと、を関連付けて記憶部18に記憶してもよい。入力部12による個体識別情報の入力は、
図14におけるステップS12の前に行われてもよい。なお、評価部38は、作業者が入力部12を操作することで入力した個体識別情報を取得する場合に限られず、牛の体に取り付けられた識別票の画像を撮像部16が撮像した撮像画像から個体識別情報を取得する場合や、RFID(Radio Frequency Identification)技術を用いて、牛の体に取り付けられたRFタグから通信部14が個体識別情報を受信することで取得する場合などでもよい。また、カメラや通信装置を牛舎内外の通路に設置し、通路を通過する牛をセンサで検出できるようにしておき、通路を通過する牛をカメラが撮像した撮像画像を通信部14が取得し、その撮像画像に写された識別票の画像から個体識別情報を取得してもよいし、通路を通過する牛に取り付けられたRFタグから通信装置が個体識別情報を受信し、通信部14が通信装置から個体識別情報を受け取ることで取得してもよい。また、評価部38は、ボディコンディションスコアを評価した牛の個体識別情報と、当該牛を撮像した撮像画像50と、撮像日と、当該牛のボディコンディションスコアと、を関連付けた情報を記憶部18に記憶してもよい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、画像取得部30は、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像50を取得する。抽出部32は、撮像画像50から、牛の輪郭線60を抽出する。基準点特定部34は、輪郭線60の上部の左右両側に存在する2つの山部62a、62bのうち一方の山部62aの輪郭線60上の略中央の点64aを境に一方側に伸びる曲線部66a(第1曲線部)上に位置する基準点70(第1基準点)と他方側に伸びる曲線部68a(第2曲線部)上に位置する基準点72(第2基準点)とを特定する。角度算出部36は、基準点70から略中央の点64a側に位置する輪郭線60上の点74(第1の点)と基準点70とを結ぶ線分80(第1線分)と、基準点70を挟んで輪郭線60上で点74と反対側に位置する点76(第2の点)と基準点70とを結ぶ線分82(第2線分)と、の間の角度αを算出する。また、角度算出部36は、基準点72から略中央の点64a側に位置する輪郭線60上の点74(第1の点)と基準点72とを結ぶ線分84(第1線分)と、基準点72を挟んで輪郭線60上で点74と反対側に位置する点78(第2の点)と基準点72とを結ぶ線分86(第2線分)と、の間の角度βを算出する。評価部38は、角度算出部36が算出した角度αと角度βの和(角度α+角度β)を用いて、撮像画像50に写された牛の肉付きを評価する。このように、本実施形態では、立位にある牛を略後ろから撮像した二次元の撮像画像50を用いて牛の肉付きを評価するため、牛を上方から撮像するための特別な設備を必要とせず、多様な飼育現場に適用することができる。また、二次元画像上において相似性を有する情報である角度から牛の肉付きを評価するため、評価結果が牛そのものの大きさや撮像画像50に写された牛の大きさの影響を受け難く、正規化等の処理を行わなくても牛の肉付きを評価することができる。更に、人が牛の肉付きを評価する場合は、判定基準があいまいとなって評価にばらつきが起こるが、本実施形態では、制御部20が撮像画像50を用いて牛の肉付きを評価するため、評価のばらつきを抑えることができる。更に、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像50を用いて牛の肉付きを評価することから、携帯性に優れて汎用性の高いスマートフォン等の携帯型情報機器を評価装置100とすることができる。
【0058】
また、本実施形態では、基準点特定部34は基準点70、72の両方を特定し、角度算出部36は基準点70、72それぞれの角度α、βの両方を算出する。評価部38は角度αと角度βの和(角度α+角度β)を用いて牛の肉付きを評価する。牛の腰角の形状は角度αと角度βの両方によって良好に表されるため、角度αと角度βの和(角度α+角度β)を用いて牛の肉付きを評価することで、牛の肉付きを精度良く評価することができる。
【0059】
なお、上記実施形態では、基準点特定部34は基準点70、72の両方を特定し、角度算出部36は角度αと角度βの両方を算出し、評価部38は角度αと角度βの和(角度α+角度β)を用いて牛の肉付きを評価する場合を例に示したが、この場合に限られない。評価部38は、角度αと角度βの積(角度α×角度β)を用いて牛の肉付きを評価してもよいし、角度αと角度βの和および積以外で角度αおよび角度βから求まる値を用いて牛の肉付きを評価してもよい。また、基準点特定部34は基準点70、72のいずれか一方の基準点のみを特定し、角度算出部36は基準点特定部34が特定した基準点における角度を算出し、評価部38は角度算出部36が算出した角度を用いて牛の肉付きを評価してもよい。
【0060】
[実験3]
角度αと角度βの和(角度α+角度β)、角度αと角度βの積(角度α×角度β)、角度α、および角度βを用いてボディコンディションスコアを評価する場合の相関係数Rを調査する実験3を行った。実験3では、第1直線90および第2直線92の抽出画像52内の水平線からの傾斜角度を様々に変えて、角度αと角度βの和(角度α+角度β)、角度αと角度βの積(角度α×角度β)、角度α、および角度βと、ボディコンディションスコアと、の間の相関係数Rを求めた。
【0061】
表3および
図15には、実験3の結果が示されている。
図15の横軸(x軸)は抽出画像52内の水平線からの第2直線92の傾斜角度であり、縦軸(y軸)は相関係数Rである。角度αと角度βの和(角度α+角度β)を用いてボディコンディションスコアを評価したときの相関係数Rを◇で示し、角度αと角度βの積(角度α×角度β)を用いて評価したときの相関係数Rを□で示し、角度αを用い評価したときの相関係数Rを〇で示し、角度βを用いて評価したときの相関係数Rを×で図示している。
【表3】
【0062】
表3および
図15に示すように、角度αと角度βの和(角度α+角度β)、角度αと角度βの積(角度α×角度β)、角度α、および角度βのいずれを用いた場合でも、ボディコンディションスコアとの間には強い相関があることが確認された。特に、角度αと角度βの和または積を用いた場合では、第1直線90と第2直線92の傾斜角度が広い範囲内にあるときにわたってボディコンディションスコアとの間の相関関係が強くなることが確認され、角度αおよび角度βを用いた場合では、第1直線90および第2直線92の傾斜角度がある所定の値のときにボディコンディションスコアとの間の相関関係が強くなることが確認された。
【0063】
実験3の結果から、評価部38は、角度αまたは角度βを用いて牛の肉付きを評価してもよいし、角度αと角度βの和または積を用いて牛の肉付きを評価してもよい。評価部38が角度αと角度βの和または積を用いて牛の肉付きを評価することで、第1直線90と第2直線92の傾斜角度が広い範囲内にあるときにわたってボディコンディションスコアとの間の相関関係が強くなるため、抽出画像52における輪郭線60上の山部62a、62bの位置および形状が様々な場合でも、牛の肉付きを精度良く評価することができる。
【0064】
また、本実施形態では、
図6のように、輪郭線60上で基準点70(第1基準点)と基準点72(第2基準点)の間にあり、角度αを算出するために用いる点(第1基準点に対応する第1の点)と角度βを算出するために用いる点(第2基準点に対応する第1の点)とが、同一の点74である。点74は、基準点70および基準点72から略等距離に位置する。このような中間の点74と、基準点70、72と、基準点70、72に対して点74とは反対側に位置する点76、78と、を結ぶ線分80、82、84、86は、牛の腰角の形状を良好に反映する。したがって、角度αおよび/または角度βを用いて牛の肉付きを評価することで、牛の肉付きを精度良く評価することができる。略等距離とは、牛の肉付きを精度良く評価できる程度であれば、完全に同じ長さからずれている場合も許容し、例えば基準点70から点74までの距離に対する基準点70から点74までの距離と基準点72から点74までの距離との差が±10%以下であり、±5%以下でもよい。
【0065】
なお、角度αを算出するために用いる、輪郭線60上で基準点70と基準点72の間にある点と、角度βを算出するために用いる、輪郭線60上で基準点70と基準点72の間にある点は、別々の点である場合でもよい。
図16は、角度α、βを算出するために用いる、輪郭線60上で基準点70と基準点72の間にある点が別々の点である場合を示す図である。
図16に示すように、角度αを算出するために用いる、輪郭線60上で基準点70と基準点72の間にある点74a(第1基準点に対応する第1の点)と、角度βを算出するために用いる、輪郭線60上で基準点70と基準点72の間にある点74b(第2基準点に対応する第1の点)とは、異なる位置にある別々の点であってもよい。この場合でも、角度αおよび/または角度βを用いて牛の肉付きを評価することで、牛の肉付きを精度良く評価することができる。
【0066】
また、本実施形態では、
図7のように、角度算出部36は、基準点70を挟んで点74と反対側に位置しかつ基準点70と点74との間の距離と略等距離の点76を特定し、かつ、基準点72を挟んで点74と反対側に位置しかつ基準点72と点74との間の距離と略等距離の点78を特定する。この場合、基準点70と点74、76とを結ぶ線分80、82により特定される角度αと、基準点72と点74、78とを結ぶ線分84、86により特定される角度βと、は牛の腰角の形状を良好に表現する。よって、角度αおよび/または角度βを用いて牛の肉付きを評価することで、牛の肉付きを精度良く評価することができる。略等距離とは、牛の肉付きを精度良く評価できる程度であれば、完全に同じ長さからずれている場合も許容し、例えば基準点70から点74までの距離に対する基準点70から点74までの距離と基準点70から点76までの距離との差が±10%以下であり、±5%以下でもよい。同様に、基準点72から点74までの距離に対する基準点72から点74までの距離と基準点72から点78までの距離との差が±10%以下であり、±5%以下でもよい。
【0067】
なお、基準点70と点74の間の距離と、基準点70と点76の間の距離は、略等距離でない場合でもよい。同様に、基準点72と点74の間の距離と、基準点72と点78の間の距離は、略等距離でない場合でもよい。また、
図16のように、基準点70と基準点72の間に点74aと点74bがある場合でも、基準点70と点74aの間の距離と、基準点70と点76の間の距離は、略等距離でない場合でもよい。基準点72と点74bの間の距離と、基準点72と点78の間の距離は、略等距離でない場合でもよい。これらの場合でも、角度αおよび/または角度βを用いて牛の肉付きを評価することで、牛の肉付きを評価できる。
【0068】
また、本実施形態では、
図5のように、基準点特定部34は、抽出画像52内で概ね左右方向に伸びる第1直線90を山部62aの上方から山部62aに向けて近づけ、第1直線90が山部62aに最初に接した点を基準点70と特定する。また、基準点特定部34は、抽出画像52内で概ね上下方向に伸びる第2直線92を山部62aの側方から山部62aに向けて近づけ、第2直線92が山部62aに最初に接した点を基準点72と特定する。このように特定された基準点70、72を基準にして点74、76、78を特定し、これらの点を結んだ線分80、82、84、86から得られる角度αと角度βは牛の腰角の形状を良好に表現する。したがって、角度αおよび/または角度βを用いて牛の肉付きを評価することで、牛の肉付きを精度良く評価することができる。
【0069】
第1直線90は、上述した実験2の結果のように、抽出画像52内の水平線または水平線に対する角度が0°より大きく20°以下となって抽出画像52の左右方向の中央側から山部62aに向かって斜め下に傾いた直線である場合が好ましい。第2直線92は、抽出画像52内の垂線または水平線に対する角度が70°以上90°未満となって山部62aから抽出画像52の上辺54の中央側に向かって傾いた直線である場合が好ましい。このような第1直線90および第2直線92を用いて特定した基準点70、72を基準にして点74、76、78を特定し、これらの点を結んだ線分80、82、84、86から特定される角度αおよび/または角度βを用いて牛の肉付きを評価することで、牛の肉付きを精度良く評価することができる。
【0070】
なお、上記実施形態では、輪郭線60の上部の左右両側に存在する2つの山部62a、62bのうち一方の山部62aにおいて基準点70、72を特定する場合を例に示したが、山部62a、62bの両方において基準点70、72を特定してもよい。この場合、山部62aの基準点70、72における角度α、βを用いて評価した牛の肉付きと、山部62bの基準点70、72における角度α、βを用いて評価した牛の肉付きと、の平均を当該牛の肉付きとしてもよい。または、山部62aの基準点70、72における角度α、βの値と山部62bの基準点70、72における角度α、βの値との平均値を用いて牛の肉付きを評価してもよい。
【0071】
なお、上記実施形態では、画像取得部30は、立位にある牛を略真後ろから撮像した撮像画像50を取得する場合を例に示したが、立位にある牛を略正面から撮像した撮像画像を取得する場合でもよい。
図17(a)は、立位にある牛を略真後ろから撮像した撮像画像50であり、
図17(b)は、
図17(a)の牛を略正面から撮像した撮像画像50aである。
図17(a)に示すように、立位にある牛を略真後ろから撮像した場合に限られず、
図17(b)に示すように、立位にある牛を略正面から撮像した場合であっても、牛の左右の腰角周りの輪郭が写るように牛を撮像することができる。
【0072】
図18(a)および
図18(b)は、
図17(a)および
図17(b)の撮像画像50、50aから牛の輪郭線60を抽出した抽出画像52である。
図18(a)に示すように、立位にある牛を略真後ろから撮像した場合であっても、
図18(b)に示すように、立位にある牛を略正面から撮像した場合であっても、輪郭線60の上部の左右両側に腰角に対応する山部62a、62bを存在させることができる。よって、立位にある牛を略正面から撮像した撮像画像50aを用いても、略真後ろから撮像した撮像画像50を用いる場合と同じ方法によって、牛の肉付きを評価することができる。また、立位にある牛を略正面から撮像した二次元の撮像画像50aを用いる場合でも、略真後ろから撮像した撮像画像50を用いる場合と同様に、牛を上方から撮像するための特別な設備を必要とせず、多様な飼育現場に適用することができるとともに、携帯性に優れて汎用性の高いスマートフォン等の携帯型情報機器を評価装置100とすることができる。
【0073】
なお、上記実施形態では、牛の肉付きを評価する評価装置が、作業者が携帯して利用される、撮像部16を備える携帯型情報機器である場合を例に示したが、その他の場合でもよい。例えば、ネットワークに接続された他の機器と通信可能なサーバ等の据置型情報機器でもよい。この場合、作業者は例えばスマートフォン等の携帯型情報機器を用いて撮像した牛の撮像画像を、ネットワークを介してサーバ等の据置型情報機器に送信する。据置型情報機器では、評価装置100と同様の処理を行って牛の肉付きを評価する。そして、据置型情報機器は、牛の肉付きの評価結果を、ネットワークを介して作業者が携帯する携帯型情報機器に送信する。これにより、スマートフォンに掛かる負荷を低減できる。また、牛舎内に固定または移動可能にカメラを設置し、スマートフォン等の携帯型情報機器およびサーバ等の据置型情報機器は、牛舎内に設置されたカメラが撮像した立位にある牛の略真後ろまたは略正面の撮像画像を取得してもよい。
【0074】
なお、上記実施形態では、牛の肉付きとしてボディコンディションスコアを評価する場合を例に示したが、牛の肉付きを示すその他の指標を評価する場合でもよい。また、実験1から実験3は、乳牛に対して行ったが、同様の骨格を有する肉牛も同様の結果になると考えられる。したがって、上記実施形態は乳牛だけでなく肉牛にも適用できる。
【0075】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 表示部
12 入力部
14 通信部
16 撮像部
18 記憶部
20 制御部
30 画像取得部
32 抽出部
34 基準点特定部
36 角度算出部
38 評価部
40 記憶装置
41 メモリ
42 プロセッサ
43 通信インターフェース
44 入力装置
45 表示装置
46 撮像装置
47 牛の評価プログラム
48 バス
50、50a 撮像画像
52 抽出画像
54 上辺
56 左上端点
60 輪郭線
62a、62b 山部
64a、64b 略中央の点
66a、66b、68a、68b 曲線部
70、72 基準点
74、74a、74b、76、78 点
80、82、84、86 線分
90 第1直線
92 第2直線
100 牛の評価装置