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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】ウエーハの生成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250311BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20250311BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20250311BHJP
   B28D 7/04 20060101ALI20250311BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
H01L21/68 P
B28D5/04 B
B28D7/04
B26F3/00 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020209569
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096455
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 節男
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186276(JP,A)
【文献】特開2019-125755(JP,A)
【文献】特開2018-041799(JP,A)
【文献】特開2012-076203(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154173(WO,A1)
【文献】特開2020-088097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
B28D 5/04
B28D 7/04
B26F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに位置付けて照射し、剥離層を形成したインゴットからウエーハを生成するウエーハの生成装置であって、
生成すべきウエーハを上にしてインゴットを吸着面で保持するチャックテーブルと、
生成すべきウエーハと対面する端面を有し、超音波を発振する超音波発振ユニットと、
生成すべきウエーハと該超音波発振ユニットの該端面との間に水を供給する水供給ユニットと、
生成すべきウエーハを吸引保持しインゴットから生成すべきウエーハを剥離する剥離ユニットと、
該チャックテーブルを囲繞し、該水供給ユニットから該インゴットに供給され、該インゴットの周囲の該チャックテーブルの該吸着面を流れて排出される水を受ける水受け部と、を備え、
該チャックテーブルは、気孔率が体積比で40%以上かつ70%以下であり、かつ気孔によって構成される通気孔の直径が10μm以上かつ25μm以下の多孔質材であるポーラスセラミックスにより構成されたポーラス板と、上面に該ポーラス板が載置されて該ポーラス板を支持し該ポーラス板に負圧を作用させる連通路を備える基台と、を有し、
吸引源に連結した該連通路が底に開口した互いに同軸な中央凹部と複数の環状凹部とが該基台の上面に形成されて、該吸着面の面積より該インゴットの底面の面積が小さく、該インゴットの周囲で露出した該吸着面に該水が流れる状態でも該インゴットを吸引保持するウエーハの生成装置。
【請求項2】
該ポーラス板の該吸着面は、第1の直径を有する第1インゴットに対応した第1領域と、該第1領域を囲繞する第2領域とを有し、
該ポーラス板の該吸着面と反対側の面の、該第1領域と該第2領域それぞれに対応した領域に、負圧または陽圧を選択的に作用させる該連通路が接続され、
該第1インゴットを吸引保持する際は、該第1領域に接続された該連通路で負圧を、該第2領域に接続された該連通路で陽圧を作用させる請求項1に記載のウエーハの生成装置。
【請求項3】
該チャックテーブルの該連通路に吸引源としての減圧ポンプを連結し、該連通路に圧力計を設置して該ポーラス板の該吸着面に何も載せていない状態とインゴットを置いた状態で該減圧ポンプを作動した際、該ポーラス板は該圧力計の測定値の差が5kPa以上となる請求項1または請求項2に記載のウエーハの生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、パワーデバイスなど各種電子デバイスチップは、シリコン、サファイア、SiC(単化ケイ素)などの単結晶インゴットからワイヤーソーで薄く切り出されたウエーハに微細な回路を形成することでデバイスが形成され、個々のチップに切り出されて製造される。しかし、単結晶のインゴットをワイヤーソーで切断し、表裏面を研磨してウエーハを生成するとインゴットの体積のうち70%~80%が捨てられることになり、不経済であるという問題がある。
【0003】
特に、単結晶SiCインゴットは、硬度が高く、ワイヤーソーでの切断が困難であり、切断に相当の時間を要することから生産性が悪いと共に、インゴットの単価が高いことから、効率よくウエーハを生成することに課題を有している。
【0004】
これらの課題に対し、単結晶SiCインゴットに対して透過性を有するレーザー光線の集光点をインゴットの内部に位置付けて照射し、切断予定面に分離層を形成し、ウエーハを分離する技術が(例えば、特許文献1参照)提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-102513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SiC単結晶インゴットは、直径が3inch~6inchなど、様々のタイプがあり、特許文献1に示された剥離装置は、それぞれのインゴットのサイズに応じた吸引溝を吸着面に備えたチャックテーブルを用いていた。このため、特許文献1に示された剥離装置は、インゴットのサイズを変更する度にチャックテーブルを交換する必要があった。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その目的は、チャックテーブルの交換を抑制することができるウエーハの生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの生成装置は、インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに位置付けて照射し、剥離層を形成したインゴットからウエーハを生成するウエーハの生成装置であって、生成すべきウエーハを上にしてインゴットを吸着面で保持するチャックテーブルと、生成すべきウエーハと対面する端面を有し、超音波を発振する超音波発振ユニットと、生成すべきウエーハと該超音波発振ユニットの該端面との間に水を供給する水供給ユニットと、生成すべきウエーハを吸引保持しインゴットから生成すべきウエーハを剥離する剥離ユニットと、該チャックテーブルを囲繞し、該水供給ユニットから該インゴットに供給され、該インゴットの周囲の該チャックテーブルの該吸着面を流れて排出される水を受ける水受け部と、を備え、該チャックテーブルは、気孔率が体積比で40%以上かつ70%以下であり、かつ気孔によって構成される通気孔の直径が10μm以上かつ25μm以下の多孔質材であるポーラスセラミックスにより構成されたポーラス板と、上面に該ポーラス板が載置されて該ポーラス板を支持し該ポーラス板に負圧を作用させる連通路を備える基台と、を有し、吸引源に連結した該連通路が底に開口した互いに同軸な中央凹部と複数の環状凹部とが該基台の上面に形成されて、該吸着面の面積より該インゴットの底面の面積が小さく、該インゴットの周囲で露出した該吸着面に該水が流れる状態でも該インゴットを吸引保持することを特徴とする。
【0009】
前記ウエーハの生成装置において、該ポーラス板の該吸着面は、第1の直径を有する第1インゴットに対応した第1領域と、該第1領域を囲繞する第2領域とを有し、該ポーラス板の該吸着面と反対側の面の、該第1領域と該第2領域それぞれに対応した領域に、負圧または陽圧を選択的に作用させる該連通路が接続され、該第1インゴットを吸引保持する際は、該第1領域に接続された該連通路で負圧を、該第2領域に接続された該連通路で陽圧を作用させても良い。
【0010】
前記ウエーハの生成装置において、該チャックテーブルの該連通路に吸引源としての減圧ポンプを連結し、該連通路に圧力計を設置して該ポーラス板の該吸着面に何も載せていない状態とインゴットを置いた状態で該減圧ポンプを作動した際、該ポーラス板は該圧力計の測定値の差が5kPa以上となっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、チャックテーブルの交換を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に係るウエーハの生成装置の加工対象のSiCインゴットの平面図である。
図2図2は、図1に示されたSiCインゴットの側面図である。
図3図3は、実施形態1に係るウエーハの生成装置により製造されるウエーハの斜視図である。
図4図4は、図1に示されたSiCインゴットに剥離層を形成する状態を示す斜視図である。
図5図5は、図4に示されたSiCインゴットに剥離層を形成する状態を示す側面図である。
図6図6は、実施形態1に係るウエーハの生成装置の構成例を示す模式的に示す斜視図である。
図7図7は、図6に示されたウエーハの生成装置を模式的に示す断面図である。
図8図8は、図6に示されたウエーハの生成装置のチャックテーブルの斜視図である。
図9図9は、図8に示されたチャックテーブルの分解斜視図である。
図10図10は、実施形態1に係るウエーハの生成装置の第2SiCインゴットを加工する際を模式的に示す断面図である。
図11図11は、実施形態1に係るウエーハの生成装置の第1SiCインゴットを加工する際を模式的に示す断面図である。
図12図12は、図10に示された第2SiCインゴットからウエーハを剥離する際を模式的に示す断面図である。
図13図13は、実施形態1の変形例に係るウエーハの生成装置のチャックテーブルを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るウエーハの生成装置を図面に基づいて説明する。まず、実施形態1に係るウエーハの生成装置の加工対象のインゴットであるSiCインゴットを説明する。図1は、実施形態1に係るウエーハの生成装置の加工対象のSiCインゴットの平面図である。図2は、図1に示されたSiCインゴットの側面図である。図3は、実施形態1に係るウエーハの生成装置により製造されるウエーハの斜視図である。図4は、図1に示されたSiCインゴットに剥離層を形成する状態を示す斜視図である。図5は、図4に示されたSiCインゴットに剥離層を形成する状態を示す側面図である。
【0015】
(SiCインゴット)
図1及び図2に示すSiCインゴット1は、実施形態1では、SiC(炭化ケイ素)からなり、全体として円柱状に形成されている。実施形態1において、SiCインゴット1は、六方晶単結晶SiCインゴットである。
【0016】
SiCインゴット1は、図1及び図2に示すように、円形状の端面である第1面2と、第1面2の裏面側の円形状の第2面3(底面に相当)と、第1面2の外縁と第2面3の外縁とに連なる周面4を有している。また、SiCインゴット1は、周面4に結晶方位を示す第1オリエンテーションフラット5と、第1オリエンテーションフラット5に直交する第2オリエンテーションフラット6を有している。第1オリエンテーションフラット5の長さは第2オリエンテーションフラット6の長さより長い。
【0017】
また、SiCインゴット1は、第1面2の垂線7に対して第2オリエンテーションフラット6に向かう傾斜方向8にオフ角α傾斜したc軸9とc軸9に直交するc面10を有している。c面10は、SiCインゴット1の第1面2に対してオフ角α傾斜している。c軸9の垂線7からの傾斜方向8は、第2オリエンテーションフラット6の伸長方向に直交し、かつ第1オリエンテーションフラット5と平行である。c面10は、SiCインゴット1中にSiCインゴット1の分子レベルで無数に設定される。実施形態1では、オフ角αは、1°、4°又は6°に設定されているが、本発明では、オフ角αを例えば1°~6°の範囲で自由に設定してSiCインゴット1を製造することができる。
【0018】
また、SiCインゴット1は、第1面2が研削装置により研削加工された後、研磨装置により研磨加工されて、第1面2が鏡面に形成される。
【0019】
図3に示すウエーハ11は、SiCインゴット1の一部分が剥離され、SiCインゴット1から剥離された面12に研削加工、研磨加工等が施されて製造される。ウエーハ11は、SiCインゴット1から剥離された後、表面にデバイスが形成される。実施形態1では、デバイスは、MOSFET(Metal-oxide-semiconductor Field-effect Transistor)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)又はSBD(Schottky Barrier Diode)であるが、本発明では、デバイスは、MOSFET、MEMS及びSBDに限定されない。なお、ウエーハ11のSiCインゴット1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0020】
図1及び図2に示すSiCインゴット1は、図4及び図5に示すように、剥離層13が形成された後、剥離層13を起点に生成すべきウエーハ11が剥離される。剥離層13は、SiCインゴット1に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザー光線21(図5に示す)の集光点22(図5に示す)をSiCインゴット1の第1面2から生成すべきウエーハ11の厚み14(図3に示す)に相当する深さ23(図5に示す)に位置付けて、第2オリエンテーションフラット6に沿ってパルス状のレーザー光線21を照射して、SiCインゴット1の内部に形成される。
【0021】
SiCインゴット1は、SiCインゴット1に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザー光線21が照射されると、パルス状のレーザー光線21の照射によりSiCがSi(シリコン)とC(炭素)とに分離し次に照射されるパルス状のレーザー光線21が前に形成されたCに吸収されて連鎖的にSiCがSiとCとに分離する改質部24が、第2オリエンテーションフラット6に沿ってSiCインゴット1の内部に形成されると共に、改質部24からc面10に沿って延びるクラックが生成される。こうして、SiCインゴット1は、SiCインゴット1に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザー光線21が照射されると、改質部24と、改質部24からc面10に沿って形成されるクラックとを含む剥離層13を形成する。
【0022】
SiCインゴット1は、第2オリエンテーションフラット6と平行な方向の全長に亘ってレーザー光線21が照射されると、SiCインゴット1とレーザー光線21を照射する図示しないレーザー光線照射ユニットとを第1オリエンテーションフラット5に沿って相対的にインデックス送りする。このときのインデックス送りの移動距離25は、クラックの幅以下である。再度、SiCインゴット1は、集光点22を第1面2から厚み14に相当する深さ23に位置付けて、第2オリエンテーションフラット6に沿ってパルス状のレーザー光線21が照射されて、内部に剥離層13が形成される。SiCインゴット1は、レーザー光線21が第2オリエンテーションフラット6に沿って照射させる動作と、レーザー光線照射ユニットが第1オリエンテーションフラット5に沿って相対的にインデックス送りされる動作とを繰り返される。
【0023】
これにより、SiCインゴット1は、インデックス送りの移動距離毎に、第1面2からウエーハ11の厚み14に相当する深さ23に、SiCがSiとCとに分離した改質部24とクラックとを含む他の部分よりも強度が低下した剥離層13が形成される。SiCインゴット1は、第1面2から厚み14に相当する深さ23に第1オリエンテーションフラット5と平行な方向の全長に亘ってインデックス送りの移動距離25毎に剥離層13が形成される。
【0024】
また、SiCインゴット1は、直径26が異なる複数の種類のものが存存する。実施形態1では、ウエーハの生成装置30は、SiCインゴット1として、第1の直径26-1を有する第1SiCインゴット1-1(第1インゴットに相当)と、第1の直径26-1よりも大径な第2の直径26-2を有する第2SiCインゴット1-2(第2インゴットに相当)とからウエーハ11を製造する。
【0025】
(ウエーハの生成装置)
次に、ウエーハの生成装置を説明する。図6は、実施形態1に係るウエーハの生成装置の構成例を示す模式的に示す斜視図である。図7は、図6に示されたウエーハの生成装置を模式的に示す断面図である。図8は、図6に示されたウエーハの生成装置のチャックテーブルの斜視図である。図9は、図8に示されたチャックテーブルの分解斜視図である。実施形態1に係るウエーハの生成装置30は、剥離層13が形成されたSiCインゴット1-1,1-2から図4に示すウエーハ11を剥離して、ウエーハ11を生成する装置である。
【0026】
ウエーハの生成装置30は、図6及び図7に示すように、チャックテーブル31と、水供給ユニット33(図6のみに示す)と、超音波発振ユニット34(図6のみに示す)と、剥離ユニット35(図6のみに示す)と、水受け部36と、制御ユニット100(図6のみに示す)とを備える。
【0027】
チャックテーブル31は、生成すべきウエーハ11を上にしてSiCインゴット1-1,1-2を保持するものである。チャックテーブル31は、上面が水平方向と平行な吸着面32であって、吸着面32上にSiCインゴット1-1,1-2の第2面3が載置されて、第1面2を上方に向けて、SiCインゴット1-1,1-2を吸着面32で保持する。なお、チャックテーブル31の詳細な構成は、後ほど説明する。
【0028】
水供給ユニット33は、生成すべきウエーハ11と超音波発振ユニット34の端面341との間に水331(図10に示す)を供給するものである。水供給ユニット33は、図示しない水供給源から供給された水331を下端から供給する管であって、実施形態1では、チャックテーブル31に保持されたSiCインゴット1-1,1-2の第1面2上に水331を供給する。なお、実施形態1では、水供給ユニット33は、超音波発振ユニット34の筐体342内に設けられ、超音波発振ユニット34の端面341の外側から水331を供給する。
【0029】
超音波発振ユニット34は、筐体342内に収容され、チャックテーブル31に保持されたSiCインゴット1-1,1-2の生成すべきウエーハ11と対面する端面341を有し、超音波を発振して、発振した超音波をSiCインゴット1-1,1-2に付与するものである。超音波発振ユニット34の端面341は、チャックテーブル31に保持されたSiCインゴット1-1,1-2の第1面2と吸着面32及び第1面2に直交する方向に沿って対面する。
【0030】
超音波発振ユニット34は、超音波振動子と、生成すべきウエーハ11と対面する端面341を有するホーンを備えている。超音波振動子は、例えば、周知のピエゾ素子で構成され、図示しない電源から電力が印加されて、20kHz以上でかつ数GHz以下の周波数で数μmから数十μmまでの振幅で前述した直交する方向に沿って振動(以下、超音波振動と記す)する。ホーンは、柱状に形成され、超音波振動子の吸着面32寄りの端面に固定される。
【0031】
超音波発振ユニット34は、水供給ユニット33がチャックテーブル31に保持されたSiCインゴット1-1,1-2の第1面2上に供給した水331(図10に示す)中に端面341が浸漬されて、超音波振動子が超音波振動することで端面341を超音波振動させて、水331を介してSiCインゴット1-1,1-2の第1面2を超音波振動させて、超音波を付与する。また、実施形態1では、水供給ユニット33及び超音波発振ユニット34は、図示しない昇降機構により昇降自在に設けられている。
【0032】
剥離ユニット35は、超音波が付与されたSiCインゴット1-1,1-2の生成すべきウエーハ11を吸引保持し、SiCインゴット1-1,1-2からウエーハ11を剥離するものである。剥離ユニット35は、下面に生成すべきウエーハ11を吸引保持する搬送パッド351と、搬送パッド351を水平方向に移動自在でかつチャックテーブル31の上方で昇降させる図示しない移動ユニットとを備える。移動ユニットは、チャックテーブル31の上方と、チャックテーブル31の上方から退避する位置とに亘って、搬送パッド351を水平方向に沿って移動させる。
【0033】
水受け部36は、チャックテーブル31を囲繞し、水供給ユニット33からSiCインゴット1-1,1-2に供給され、SiCインゴット1-1,1-2の周囲のチャックテーブル31の吸着面32を流れて、排出される水331を受けるものである。実施形態1では、水受け部36は、底が閉塞され上部に開口を設けた箱状に形成され、底上にチャックテーブル31を設置して、チャックテーブル31を囲繞している。水受け部36は、図7に示すように、底に水331を外部に排出する排出口361が開口している。
【0034】
チャックテーブル31は、図7図8及び図9に示すように、ポーラス板40と、基台50とを有している。ポーラス板40は、上面が吸着面32をなすとともに、外径が第2SiCインゴット1-2の第2の直径36-2よりも大径でかつ厚みが一定の円板状に形成されている。このために、チャックテーブル31の吸着面32の面積よりもSiCインゴット1-1,1-2の第2面3の面積が小さい。
【0035】
ポーラス板40は、多孔質材であるポーラスセラミックスにより構成されている。実施形態1において、ポーラス板40は、例えば、所定の大きさのアルミナ砥粒とフリットと液状接着剤とを混合し、円板状にプレス後600℃~1300℃で焼成しポーラスセラミックスを生成して製造する。
【0036】
上述のような生成方法によって生成されることにより、ポーラス板40を形成するポーラスセラミックスの気孔率は体積比で40%以上でかつ70%以下であり、気孔によって構成される通気孔の直径が10μm以上でかつ25μm以下になっている。実施形態1では、ポーラス板40は、吸着面32に何も載せない状態で、チャックテーブル31に接続された吸引源である減圧ポンプ56(図7に示す)を動作させた場合、後述の合流連通路54-2に配設された圧力計57が測定する圧力値が、従来の構成の値よりも小さくなる所定の範囲に調整される。実施形態1では、所定の範囲は、例えば、-65kPa(ゲージ圧)から-20kPa(ゲージ圧)の間である。
【0037】
また、実施形態1では、ポーラス板40の吸着面32は、第1SiCインゴット1-1に対応した第1領域321(吸着面32の図6図8及び図9等の点線の内側の領域)と、第1領域321を囲繞する第2領域322(吸着面32の図6図8及び図9等の点線の外側の領域)とを有している。実施形態1において、第1領域321及び第2領域322の平面形状は、吸着面32の平面形状と同軸な円形である。また、実施形態1において、第1領域321の直径は、第1SiCインゴット1-1の第1の直径26-1と同じである。
【0038】
このために、第1領域321は、吸着面32に第1SiCインゴット1-1を保持する際に、第1SiCインゴット1-1が載置される。第1領域321及び第2領域322は、吸着面32に第2SiCインゴット1-2を保持する際に、第2SiCインゴット1-2が載置される。なお、図6図8及び図9等には、第1領域321と第2領域322との境界を点線で示すが、実際のポーラス板40の吸着面32には、第1領域321と第2領域322との境界が示されていない。
【0039】
基台50は、ポーラス板40を支持し、ポーラス板40に負圧を作用させる連通路54を備えるものである。実施形態1において、基台50は、ステンレス鋼等の金属に構成され、外径がポーラス板40の外径と等しい厚さが一定の円盤状に形成され、水受け部36の底の中央に設置されている。
【0040】
基台50は、水平方向と平行な上面51にポーラス板40が載置されて、ポーラス板40を支持する。このために、基台50の上面51は、ポーラス板40の吸着面32と反対側の面41が載置される。基台50は、上面51に平面形状が円形の中央凹部52と、リング状の複数の環状凹部53とが形成されている。
【0041】
実施形態1では、中央凹部52と複数の環状凹部53とは、基台50の上面51と同軸となる位置に形成されている。実施形態1では、中央凹部52の直径は、第1領域321の直径よりも小さい。実施形態1では、環状凹部53は、上面51に3つ形成されているが、本発明では、環状凹部53が上面51に形成される数は、3つに限定されない。なお、以下、3つの環状凹部53の内側から順に第1環状凹部53-1、第2環状凹部53-2及び第3環状凹部53-3と記す。
【0042】
第1環状凹部53-1の内径及び外径は、中央凹部52の直径よりも大きくかつ第1領域321の直径よりも小さい。第2環状凹部53-2の内径及び外径は、第1環状凹部53-1の内径及び外径、及び第1領域321の直径よりも大きい。第3環状凹部53-3の内径及び外径は、第2環状凹部53-2の内径及び外径、及び第1領域321の直径よりも大きい。
【0043】
連通路54は、一端が中央凹部52、第1環状凹部53-1、第2環状凹部53-2及び第3環状凹部53-3それぞれの底に開口し、他端が一本の連通路である合流連通路54-2に連通している。合流連通路54-2は、減圧ポンプ56に連結している。連通路54及び合流連通路54-2は、基台50内に形成された流路又は基台50に接続した配管等により構成される。
【0044】
連通路54は、減圧ポンプ56により吸引されることで、基台50上に載置されたポーラス板40に負圧を作用させるとともに、ポーラス板40に負圧を作用させることで、ポーラス板40を基台50に吸引保持するとともに、吸着面32上にSiCインゴット1-1,1-2を吸引保持する。なお、一端が中央凹部52、及び第1環状凹部53-1に接続した連通路54は、第1領域321に接続した連通路である。
【0045】
なお、実施形態1では、減圧ポンプ56は、水封式真空ポンプにより構成される。また、実施形態1では、合流連通路54-2には、合流連通路54-2内の気圧を測定する圧力計57が設置されている。圧力計57は、測定結果を制御ユニット100に出力する。
【0046】
また、中央凹部52、第1環状凹部53-1、第2環状凹部53-2及び第3環状凹部53-3それぞれの底には、連通路である陽圧連通路55の一端が開口している。陽圧連通路55の他端は、一本の合流陽圧連通路55-2に連通している。合流陽圧連通路55-2は、陽圧源58に連結している。陽圧連通路55及び合流陽圧連通路55-2は、基台50内に形成された流路又は基台50に接続した配管等により構成される。陽圧連通路55は、陽圧源58により加圧された気体が供給されることで、基台50上に載置されたポーラス板40に陽圧を作用させるとともに、ポーラス板40に陽圧を作用させることで、ポーラス板40吸着面32に開口した通気孔から気体を噴射させる。なお、一端が第2環状凹部53-2、及び第3環状凹部53-3に接続した陽圧連通路55は、第2領域322に接続した連通路である。
【0047】
また、第1環状凹部53-1、第2環状凹部53-2及び第3環状凹部53-3それぞれの底に一端が開口した連通路54には、それぞれ開閉弁59が設けられている。なお、以下、第1環状凹部53-1の底に一端が開口した連通路54に設けられた開閉弁59を第1開閉弁59-1と記し、第2環状凹部53-2の底に一端が開口した連通路54に設けられた開閉弁59を第2開閉弁59-2と記し、第3環状凹部53-3の底に一端が開口した連通路54に設けられた開閉弁59を第3開閉弁59-3と記す。
【0048】
また、第1環状凹部53-1、第2環状凹部53-2及び第3環状凹部53-3それぞれの底に一端が開口した陽圧連通路55には、それぞれ開閉弁60が設けられている。なお、以下、第1環状凹部53-1の底に一端が開口した陽圧連通路55に設けられた陽圧開閉弁60を第1陽圧開閉弁60-1と記し、第2環状凹部53-2の底に一端が開口した陽圧連通路55に設けられた開閉弁60を第2陽圧開閉弁60-2と記し、第3環状凹部53-3の底に一端が開口した陽圧連通路55に設けられた開閉弁60を第3陽圧開閉弁60-3と記す。
【0049】
また、合流連通路54-2には、開閉弁である合流開閉弁61が設けられ、合流陽圧連通路55-2には、開閉弁である合流陽圧開閉弁62が設けられている。
【0050】
このように、チャックテーブル31の連通路54,55,54-2,55-2は、開閉弁59-1,59-2,50-3,60-1,60-2,60-3,61,62が設けられ、一端が基台50の上面51の中央凹部52、第1環状凹部53-1、第2環状凹部53-2及び第3環状凹部53-3の底に開口し、減圧ポンプ56及び陽圧源58に連結していることで、ポーラス板40の面41の第1領域321と第2領域322それぞれに対応した領域に、負圧又は陽圧を選択的に作用させることとなる。このために、ポーラス板40の面41の第1領域321と第2領域322それぞれに対応した領域に、負圧又は陽圧を選択的に作用させる連通路54,55,54-2,55-2が接続されている。なお、第1領域321と第2領域322それぞれに対応した領域とは、ポーラス板40の面41のポーラス板40の厚さ方向に第1領域321と第2領域322それぞれに重なる領域をいう。
【0051】
制御ユニット100は、ウエーハの生成装置30の上述した構成要素を制御して、SiCインゴット1-1,1-2に対する加工動作、即ちウエーハ11の生成動作をウエーハの生成装置30に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、ウエーハの生成装置30を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介してウエーハの生成装置30の上述した構成要素に出力する。
【0052】
制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0053】
次に、実施形態1に係るウエーハの生成装置30の加工動作を図面に基づいて説明する。図10は、実施形態1に係るウエーハの生成装置の第2SiCインゴットを加工する際を模式的に示す断面図である。図11は、実施形態1に係るウエーハの生成装置の第1SiCインゴットを加工する際を模式的に示す断面図である。図12は、図10に示された第2SiCインゴットからウエーハを剥離する際を模式的に示す断面図である。
【0054】
実施形態1に係るウエーハの生成装置30は、チャックテーブル31の吸着面32に剥離層13が形成されたSiCインゴット1-1,1-2の第2面3が載置され、入力ユニットを介して加工内容情報を制御ユニット100が受け付けて記憶装置に記憶し、制御ユニット100がオペレータからの加工開始指示を受け付けると加工動作を開始する。なお、加工内容情報は、加工対象が、第1SiCインゴット1-1であるか第2SiCインゴット1-2であるかを示す情報を含む。
【0055】
加工動作では、ウエーハの生成装置30は、加工対象が第1SiCインゴット1-1であるか第2SiCインゴット1-2であるかに応じて、開閉弁59-1,59-2,59-3,60-1,60-2,60-3,61,62を開閉し、吸着面32に加工対象のSiCインゴット1-1,1-2を吸引保持する。なお、ウエーハの生成装置30は、図10に示すように、加工対象が第2SiCインゴット1-2である場合には、開閉弁59-1,59-2,59-3,61を開き、開閉弁60-1,60-2,60-3,62を閉じる。
【0056】
また、ウエーハの生成装置30は、図11に示すように、加工対象が第1SiCインゴット1-1である場合には、開閉弁59-1,60-2,60-3,61,62を開き、開閉弁59-2,59-3,60-1を閉じる。こうして、ウエーハの生成装置30は、チャックテーブル31の吸着面32に第1SiCインゴット1-1を吸引保持する際には、第1領域321に接続された中央凹部52及び第1環状凹部53-1に一端が開口した連通路54で負圧を、第2領域322に接続された第2環状凹部53-2及び第3環状凹部53-3に一端が開口した陽圧連通路55で陽圧を作用させる。
【0057】
また、実施形態1では、図10及び図11に示すように、チャックテーブル31の吸着面32にSiCインゴット1-1,1-2を吸引保持すると、圧力計57が測定する圧力値が、下限値と上限値との双方が前述した所定の範囲よりも低い第2の所定の範囲となる。実施形態1では、第2の所定の範囲は、例えば、-90kPa(ゲージ圧)から-70kPa(ゲージ圧)の間である。
【0058】
加工動作では、ウエーハの生成装置30は、水供給ユニット33及び超音波発振ユニット34を下降してチャックテーブル31に保持されたSiCインゴット1-1,1-2の第1面2に近づけて、水供給ユニット33からチャックテーブル31に保持されたSiCインゴット1-1,1-2の第1面2に水331を供給して、超音波発振ユニット34の端面341を保持されたSiCインゴット1-1,1-2の第1面2上の水331内に浸漬する。このときの圧力計57が測定する圧力値は、第2の所定の範囲となる。このように、チャックテーブル31は、ポーラス板40が、気孔率が体積比で40%以上でかつ70%以下であり、気孔によって構成される通気孔の直径が10μm以上でかつ25μm以下のポーラスセラミックスにより構成されていることにより、吸着面32に何も載せていない状態とSiCインゴット1-1,1-2を置いた状態で減圧ポンプ56を作動した際、圧力計57の測定値の差が所定の範囲と第2の所定の範囲との差、即ち5kPa以上となる。
【0059】
また、加工動作では、水供給ユニット33によりSiCインゴット1-1,1-2の第1面2に供給された水331は、第1面2上を流れ、SiCインゴット1-1,1-2の周面4を伝わって下方に向かう。水331は、SiCインゴット1-1,1-2の周囲で露出した吸着面32上を流れてチャックテーブル31の外周面を伝わって水受け部36に受けられた後、排出口361から排出される。このように、チャックテーブル31は、ポーラス板40が、気孔率が体積比で40%以上でかつ70%以下であり、気孔によって構成される通気孔の直径が10μm以上でかつ25μm以下のポーラスセラミックスにより構成されていることにより、吸着面32の面積よりSiCインゴット1-1,1-2の第2面3の面積が小さく、SiCインゴット1-1,1-2の周囲で露出した吸着面32上に水331が流れる状態でもSiCインゴット1-1,1-2を吸引保持することができる。
【0060】
なお、ポーラス板40を形成するポーラスセラミックスの気孔率が体積比で40%未満でかつ気孔によって構成される通気孔の直径が10μm未満であると、負圧の漏れを抑制できても、十分な吸引力で吸着面32にこの吸着面32の面積より第2面3の面積が小さいSiCインゴット1-1,1-2を吸引保持することができない。また、ポーラス板40を形成するポーラスセラミックスの気孔率が体積比で70%を超えかつ気孔によって構成される通気孔の直径が25μmを超えると、負圧の漏れが多過ぎて、十分な吸引力で吸着面32にこの吸着面32の面積より第2面3の面積が小さいSiCインゴット1-1,1-2を吸引保持することができない。
【0061】
ウエーハの生成装置30は、超音波発振ユニット34の超音波振動子に所定時間電力を印加して、超音波発振ユニット34でSiCインゴット1-1,1-2の第1面2に超音波を付与する。すると、超音波発振ユニット81からの超音波が、第1面2に照射され、剥離層13を刺激し、剥離層13を起点として、生成すべきウエーハ11を全面に亘ってSiCインゴット1-1,1-2を破断する。
【0062】
ウエーハの生成装置30は、超音波発振ユニット34の超音波振動子に所定時間電力を印加した後、水供給ユニット33の水331の供給を停止し、開閉弁59-1,59-2,59-3,61を開き、開閉弁60-1,60-2,60-3,62を閉じて、水供給ユニット33及び超音波発振ユニット34を上昇する。ウエーハの生成装置30は、剥離ユニット35をチャックテーブル31の上方まで移動し、チャックテーブル31の上方で下降して、剥離ユニット35の搬送パッド351の下面をチャックテーブル31に保持されたSiCインゴット1-1,1-2の第1面2に接触させる。
【0063】
ウエーハの生成装置30は、剥離ユニット35の搬送パッド351の下面にチャックテーブル31に保持されたSiCインゴット1-1,1-2の第1面2を吸引保持し、図12に示すように、剥離ユニット35を上昇する。ウエーハの生成装置30は、SiCインゴット1-1,1-2から第1面2側の生成すべきウエーハ11を剥離して、チャックテーブル31の吸着面32上からSiCインゴット1-1,1-2が搬出される。ウエーハの生成装置30は、チャックテーブル31の吸着面32上からSiCインゴット1-1,1-2が搬出された後、開閉弁59-1,59-2,59-3,61を閉じ、開閉弁60-1,60-2,60-3,62を開いて、陽圧源58からの加圧された気体をポーラス板40に供給して即ち陽圧を付与して、吸着面32に開口した気孔から気体を噴射する。
【0064】
また、ウエーハの生成装置30は、制御ユニット100が所定の範囲及び第2の所定の範囲を予め記憶しておき、チャックテーブル31の吸着面32にSiCインゴット1-1,1-2を吸引保持した後に、圧力計57の測定結果に基づいてチャックテーブル31の吸着面32に加工内容情報で定められたSiCインゴット1-1,1-2を吸引保持しているか否かを判定する。具体的には、制御ユニット100は、加工内容情報で定められた加工対象が第1SiCインゴット1-1である場合、チャックテーブル31の吸着面32にSiCインゴット1-1,1-2を吸引保持した後に、圧力計57の測定結果が第2の所定の範囲内であれば、吸着面32に第1SiCインゴット1-1を吸引保持していると判定し、圧力計57の測定結果が第2の所定の範囲外であれば、吸着面32に第1SiCインゴット1-1を吸引保持していないと判定する。制御ユニット100は、加工内容情報で定められた加工対象が第2SiCインゴット1-2である場合も同様に、チャックテーブル31の吸着面32にSiCインゴット1-1,1-2を吸引保持した後に判定する。
【0065】
以上説明したように、実施形態1に係るウエーハの生成装置30は、ポーラス板40を形成するポーラスセラミックスの気孔率は体積比で40%以上でかつ70%以下であり、気孔によって構成される通気孔のは直径が10μm以上でかつ25μm以下になっている。このために、実施形態1に係るウエーハの生成装置30は、吸着面32に水331が流れる状況でも、吸着面32の面積よりも小さい第2面3を有するSiCインゴット1-1,1-2をチャックテーブル31の吸着面32に吸引保持することができる。
【0066】
したがって、実施形態1に係るウエーハの生成装置30は、吸着面32に水331が流れる状況でも、SiCインゴット1-1,1-2の第2面3の面積によらず、SiCインゴット1-1,1-2を吸引保持できるチャックテーブル31を備えることとなり、SiCインゴット1-1,1-2のサイズによってチャックテーブル31を交換する必要が無いという効果を奏する。その結果、実施形態1に係るウエーハの生成装置30は、加工するSiCインゴット1-1,1-2のサイズである直径26-1,26-2が変更されても、チャックテーブル31の交換を抑制することができるという効果を奏する。
【0067】
また、実施形態1に係るウエーハの生成装置30は、チャックテーブル31に何も無い状態と、SiCインゴット1-1,1-2を載せている状態とでは、減圧ポンプ56により吸着面32に負圧を作用させた際に測定される圧力値の差が5kPa以上となって互いに異なる。その結果、ウエーハの生成装置30は、制御ユニット100が吸着面32にSiCインゴット1-1,1-2が載置されているかを圧力計57の測定結果により確認する事が出来る。
【0068】
また、実施形態1に係るウエーハの生成装置30は、第1SiCインゴット1-1の周囲で露出した吸着面32から陽圧を作用させる事が出来るので、剥離する際に発生する屑が露出した吸着面32に吸引されるのを防ぐことができる。その結果、ウエーハの生成装置30は、吸着面32の汚れを抑制することができる。
【0069】
〔変形例〕
本発明の実施形態1の変形例に係るウエーハの生成装置を図面に基づいて説明する。図13は、実施形態1の変形例に係るウエーハの生成装置のチャックテーブルを模式的に示す断面図である。なお、図13は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
図13に示す変形例に係るウエーハの生成装置30のチャックテーブル31-1は、図13に示すように、ポーラス板40と基台50とをボルト70により固定すること以外、実施形態1と同じである。なお、図13は、基台50の各凹部52,53-1,53-2,53-3、連通路54,54-2,55,55-2、開閉弁を省略しているが、本発明では、チャックテーブル31は、実施形態1と同様に、各凹部52,53-1,53-2,53-3及び連通路54を備えている。
【0071】
変形例に係るウエーハの生成装置30は、吸着面32に水331が流れる状況でも、SiCインゴット1-1,1-2の第2面3の面積によらず、SiCインゴット1-1,1-2を吸引保持できるチャックテーブル31-1を備える。その結果、変形例に係るウエーハの生成装置30は、実施形態1と同様に、加工するSiCインゴット1-1,1-2のサイズである直径26-1,26-2が変更されても、チャックテーブル31-1の交換を抑制することができるという効果を奏する。
【0072】
また、本発明のウエーハの生成装置30は、吸着面32に加工対象が載置された後に、開閉弁59-1,59-2,59-3,61を開き、開閉弁60-1,60-2,60-3,62を閉じて、制御ユニット100が圧力計57の測定結果に基づいて開閉弁59-1,59-2,59-3,60-1,60-2,60-3,61,62の開閉を制御しても良い。具体的には、本発明のウエーハの生成装置30は、吸着面32に加工対象が載置された後に、開閉弁59-1,59-2,59-3,61を開き、開閉弁60-1,60-2,60-3,62を閉じて、制御ユニット100が圧力計57の測定結果が第2の所定の範囲内であれば、開閉弁59-1,59-2,59-3,61を開き、開閉弁60-1,60-2,60-3,62を閉じた状態を維持して加工動作を継続する。
【0073】
本発明のウエーハの生成装置30は、吸着面32に加工対象が載置された後に、開閉弁59-1,59-2,59-3,61を開き、開閉弁60-1,60-2,60-3,62を閉じて、制御ユニット100が圧力計57の測定結果が第2の所定の範囲外であれば、第3開閉弁59-3を閉じ、第3陽圧開閉弁60-3及び合流陽圧開閉弁62を開いて、再度、制御ユニット100が圧力計57の測定結果が第2の所定の範囲内であるか否かを判定する。
【0074】
こうして、本発明のウエーハの生成装置30は、吸着面32に加工対象が載置された後に、開閉弁59-1,59-2,59-3,61を開き、開閉弁60-1,60-2,60-3,62を閉じて、制御ユニット100が圧力計57の測定結果が第2の所定の範囲内になるまで順に、開閉弁59-1,59-2,59-3のうち外周側の環状凹部53-1,53-2,53-3に一端が開口した連通路54に設けられたものから順に閉じるとともに、合流陽圧開閉弁62を開いて、陽圧開閉弁60-1,60-2,60-3のうち外周側の環状凹部53-1,53-2,53-3に一端が開口した陽圧連通路55に設けられたものから順に開く。
【0075】
この場合、ウエーハの生成装置30は、実施形態1の効果に加え、吸着面32に加工対象が載置された後に、開閉弁59-1,59-2,59-3,61を開き、開閉弁60-1,60-2,60-3,62を閉じて、制御ユニット100が圧力計57の測定結果が第2の所定の範囲内になるように開閉弁59-1,59-2,59-3,60-1,60-2,60-3,61,62の開閉を制御するので、いかなるサイズのSiCインゴット1-1,1-2であってもチャックテーブル31のポーラス板40の吸着面32に適正に吸引保持することができる。その結果、ウエーハの生成装置30は、加工するSiCインゴット1-1,1-2のサイズである直径26-1,26-2が変更されても、チャックテーブル31の交換をより一層抑制することができるという効果を奏する。
【0076】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 SiCインゴット(インゴット)
1-1 第1SiCインゴット(第1インゴット)
1-2 第2SiCインゴット(第2インゴット)
3 第2面(底面)
11 ウエーハ
13 剥離層
14 厚み
21 レーザー光線
22 集光点
23 深さ
26-1 第1の直径
30 ウエーハの生成装置
31 チャックテーブル
32 吸着面
33 水供給ユニット
34 超音波発振ユニット
35 剥離ユニット
36 水受け部
40 ポーラス板
41 面(吸着面の反対側の面)
50 基台
54 連通路
54-2 合流連通路(連通路)
55 陽圧連通路
55-2 合流陽圧連通路(連通路)
56 減圧ポンプ(吸引源)
57 圧力計
321 第1領域
322 第2領域
331 水
341 端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13