(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】制御プログラム、制御方法、及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
(21)【出願番号】P 2021165745
(22)【出願日】2021-10-07
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 颯哉
(72)【発明者】
【氏名】竹田 諒平
(72)【発明者】
【氏名】近江 宗行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晋
(72)【発明者】
【氏名】高良 穣二
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113759(JP,A)
【文献】特開2017-028092(JP,A)
【文献】特開2020-096176(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0227326(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ生成源にソース電力を供給し、処理対象の基板を載置する載置台にバイアス電力を供給することによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置の制御プログラムであって、
前記ソース電力又は前記バイアス電力のピーク間電圧値を観測し、
前記ピーク間電圧値の変動に応じて、前記ソース電力及び前記バイアス電力の比率を固定し、観測されるピーク間電圧値が初期設定値に近づくように、前記プラズマ生成源に供給するソース電力及び前記載置台に供給するバイアス電力を補正する
処理をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【請求項2】
前記ソース電力及び前記バイアス電力の印加時間に応じて、前記載置台の周囲に配置される外周部材に印加する直流電圧の値を補正する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1に記載の制御プログラム。
【請求項3】
観測したピーク間電圧値が閾値を超えた場合、又は前記直流電圧の値を補正した場合、前記ソース電力及び前記バイアス電力を補正する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項2に記載の制御プログラム。
【請求項4】
前記外周部材を含むコンポーネントの交換後に実施されるシーズニング処理毎に、前記ソース電力及び前記バイアス電力の補正に用いる補正係数を校正する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項2又は請求項3に記載の制御プログラム。
【請求項5】
補正係数校正用のステップが埋め込まれたシーズニングレシピに基づき前記シーズニング処理を実行することにより、前記補正係数を校正する
請求項4に記載の制御プログラム。
【請求項6】
前記補正係数の校正後に前記ソース電力又は前記バイアス電力のピーク間電圧値を収集し、
収集結果に基づき、前記初期設定値を算出する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項4又は請求項5に記載の制御プログラム。
【請求項7】
補正後のソース電力又はバイアス電力が設定範囲を超えた場合、警告を出力する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1から請求項6の何れか1つに記載の制御プログラム。
【請求項8】
プラズマ生成源にソース電力を供給し、処理対象の基板を載置する載置台にパルス電圧を印加することによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置の制御プログラムであって、
前記パルス電圧の電流値を観測し、
前記電流値の変動に応じて、前記ソース電力及び前記パルス電圧の比率を固定し、観測されるパルス電圧の電流値が初期設定値に近づくように、前記プラズマ生成源に供給するソース電力及び前記載置台に印加するパルス電圧を補正する
処理をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【請求項9】
プラズマ生成源にソース電力を供給し、処理対象の基板を載置する載置台にバイアス電力を供給することによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置の制御方法であって、
前記ソース電力又は前記バイアス電力のピーク間電圧値を観測し、
前記ピーク間電圧値の変動に応じて、前記ソース電力及び前記バイアス電力の比率を固定し、観測されるピーク間電圧値が初期設定値に近づくように、前記プラズマ生成源に供給するソース電力及び前記載置台に供給するバイアス電力を補正する
処理をコンピュータにより実行する制御方法。
【請求項10】
プラズマ生成源にソース電力を供給し、処理対象の基板を載置する載置台にパルス電圧を印加することによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置の制御方法であって、
前記パルス電圧の電流値を観測し、
前記電流値の変動に応じて、前記ソース電力及び前記パルス電圧の比率を固定し、観測されるパルス電圧の電流値が初期設定値に近づくように、前記プラズマ生成源に供給するソース電力及び前記載置台に印加するパルス電圧を補正する
処理をコンピュータにより実行する制御方法。
【請求項11】
処理対象の基板を載置する載置台と、前記載置台の周囲に配置される外周部材と、プラズマ生成源にソース電力を供給する第1電源と、前記載置台にバイアス電力を供給する第2電源と、前記外周部材に直流電圧を印加する第3電源と、制御部とを備えるプラズマ生成装置であって、
前記ソース電力又は前記バイアス電力のピーク間電圧値を観測する観測部と、
前記ピーク間電圧値の変動に応じて、前記ソース電力及び前記バイアス電力の比率を固定し、観測されるピーク間電圧値が初期設定値に近づくように、前記第1電源が供給するソース電力及び前記第2電源が供給するバイアス電力を補正する補正部と
を備え、
前記制御部は、前記補正部により補正されたソース電力及びバイアス電力を前記プラズマ生成源及び前記載置台に夫々供給するように、前記第1電源及び前記第2電源の動作を制御する
プラズマ生成装置。
【請求項12】
処理対象の基板を載置する載置台と、前記載置台の周囲に配置される外周部材と、プラズマ生成源にソース電力を供給する第1電源と、前記載置台にパルス電圧を印加する第2電源と、前記外周部材に直流電圧を印加する第3電源と、制御部とを備えるプラズマ生成装置であって、
前記パルス電圧の電流値を観測する観測部と、
前記電流値の変動に応じて、前記ソース電力及び前記
パルス電圧の比率を固定し、観測されるパルス電圧の電流値が初期設定値に近づくように、前記第1電源が供給するソース電力及び前記第2電源が印加するパルス電圧を補正する補正部と
を備え、
前記制御部は、前記補正部により補正されたソース電力を前記プラズマ生成源に供給し、補正されたパルス電圧を前記載置台に印加するように、前記第1電源及び前記第2電源の動作を制御する
プラズマ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御プログラム、制御方法、及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置は、基板のプラズマ処理に用いられている。プラズマ処理装置のチャンバ内において、基板は、エッジリング若しくはフォーカスリングと呼ばれる外周部材によって囲まれた領域内に配置される。
【0003】
プラズマ処理装置によりプラズマ処理が実行されると、外周部材が消耗してその厚さが減少する。外周部材の厚さの減少に伴い、外周部材の上方でのシースの上端位置が低くなる。外周部材の上方でのシースの上端位置が低くなると、プラズマからのイオンが基板のエッジに対して傾斜した角度で衝突する。その結果、基板のエッジにおいて形成される開口が傾斜する。特許文献1は、基板のエッジに形成される開口の傾斜を抑制するために、外周部材に直流電圧を印加することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、チャンバ内に配置された部材の消耗に伴うプロセス特性の低下や、プラズマ処理装置におけるプロセス特性の個体差を抑制する制御プログラム、制御方法、及びプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る制御プログラムは、プラズマ生成源にソース電力を供給し、処理対象の基板を載置する載置台にバイアス電力を供給することによってプラズマ処理を行うプラズマ処理装置の制御プログラムであって、前記ソース電力又は前記バイアス電力のピーク間電圧値を観測し、前記ピーク間電圧値の変動に応じて、前記ソース電力及び前記バイアス電力の比率を固定し、観測されるピーク間電圧値が初期設定値に近づくように、前記プラズマ生成源に供給するソース電力及び前記載置台に供給するバイアス電力を補正する処理をコンピュータに実行させるための制御プログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、チャンバ内に配置された部材の消耗に伴うプロセス特性の低下や、プラズマ処理装置におけるプロセス特性の個体差を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【
図2A】エッジリングの消耗によるチルティングの変動を説明するための図である。
【
図2B】エッジリングの消耗によるチルティングの変動を説明するための図である。
【
図3】FRDC_Vの補正方法を説明するグラフである。
【
図4】LF_pwの補正例を説明するグラフである。
【
図5】HF_pwの補正例を説明するグラフである。
【
図6】実施の形態1における補正処理の実行手順を説明するフローチャートである。
【
図8】実施の形態2における補正処理の実行手順を説明するフローチャートである。
【
図9】実施の形態3における補正処理の実行手順を説明するフローチャートである。
【
図10】実施の形態4における補正処理の実行手順を説明するフローチャートである。
【
図11】過補正防止処理の実行手順を示すフローチャートである。
【
図12】補正係数の校正手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。
図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0010】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0011】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0012】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0013】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。エッジリングは、フォーカスリング(FR)とも呼ばれる。
図1に例示したリングアセンブリ112は、環状のエッジリング112aと、エッジリング112aの周囲に配置される環状のカバーリング112bとを備える。
【0014】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0015】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0016】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0017】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0018】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。以下、ソースRF信号のピーク間電圧は、HF_Vppとも表記され、ソースRF電力(ソース電力)は、HF_pwとも表記される。
【0019】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。以下、バイアスRF信号のピーク間電圧は、LF_Vppとも表記され、バイアスRF電力(バイアス電力)は、LF_pwとも表記される。また、ソースRF電力及びバイアスRF電力は、これらを区別して説明がする必要がない場合、RF_pwとも表記される。
【0020】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0021】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、パルス電圧のシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。パルス電圧は、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号からパルス電圧のシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、パルス電圧生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部がパルス電圧生成部を構成する場合、パルス電圧生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。パルス電圧は、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、パルス電圧のシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性パルス電圧と1又は複数の負極性パルス電圧とを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0022】
プラズマ処理システムは、エッジリング112aに結合される可変直流電源33を更に備えてもよい。一実施形態において、可変直流電源33は、エッジリング112aに接続され、第3のDC信号を生成するように構成される。生成されたDC信号は、エッジリング112aに印加される。以下、エッジリング112aに印加される第3のDC信号の電圧は、FRDC_Vとも表記される。
【0023】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0024】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体Mであってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0025】
次に、エッジリング112aの消耗によって生じるシースの変化と、チルティング(tilting)の発生について説明する。
図2A及び
図2Bは、エッジリング112aの消耗によるチルティングの変動を説明するための図である。
【0026】
図2Aは、エッジリング112aが消耗していない状態を示している。エッジリング112aは、リングアセンブリ112の一部として基板支持部11の環状領域111bに配置される。エッジリング112aの厚みは、環状領域111bに配置されたときに、エッジリング112aの上面の高さとウェハWの上面の高さとが一致するように設計される。エッジリング112aに消耗が発生していない場合、プラズマ処理中に生成されるウェハW上のシースとエッジリング112a上のシースとは同じ厚さとなり、段差は生じていない。
【0027】
このとき、ウェハW及びエッジリング112aに対するイオンの照射角度は、これらの表面に対して略垂直になる。この結果、ウェハWに形成される凹部の形状(エッチング形状)は、ウェハWの中央領域及び周縁領域のいずれであっても略垂直となり、凹部の形状が斜めになるチルティングは発生しない。
【0028】
プラズマ処理において、エッジリング112aはプラズマに曝露されて徐々に消耗する。
図2Bは、エッジリング112aが消耗した状態を示している。消耗によってエッジリング112aの厚みが薄くなると、エッジリング112aの上面はウェハWの上面よりも低くなる。この結果、
図2Bに示すように、エッジリング112aの上方のシースとウェハWの上方のシースとの間に段差が生じる。
【0029】
シースに段差が生じた結果、図中の矢符で示すように、ウェハWの周縁領域においてイオンの照射方向が斜めになり、ウェハWに形成される凹部の形状が斜めになるチルティングが発生する。
【0030】
上述したエッジリング112aに限らず、プラズマ処理チャンバ10内に配置されている部材の消耗に伴い、プラズマ処理装置1におけるプロセス特性は低下する。ここで、プラズマ処理チャンバ10内に配置されている部材は、エッジリング112aの他、カバーリング112b、基板支持部11、上部電極、プラズマ処理チャンバ10の内壁などを含む。また、プラズマ処理チャンバ10には個体差(機差)があり、複数のプラズマ処理装置1の間でプラズマ特性が異なる。
【0031】
これに対し、本実施形態に係るプラズマ処理システムは、プラズマ処理の実行中にプラズマ処理装置1の状態を随時監視し、各種パラメータを自律的に制御する。これにより、本実施の形態に係るプラズマ処理システムは、部材の消耗に伴うプロセス特性の低下を抑制し、複数のプラズマ処理装置1におけるプロセス特性の個体差を小さくする。以下、プラズマ処理システムの制御部2が実行する処理について説明する。
【0032】
(1)FRDC_Vの補正
制御部2は、部材の消耗対策にFRDC_VをRF印加時間に応じて補正する。
図3は、FRDC_Vの補正方法を説明するグラフである。グラフの横軸はRF印加時間、縦軸はFRDC_Vを表す。ここで、RF印加時間は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bから、それぞれソースRF信号及びバイアスRF信号を供給している時間を表す。FRDC_Vは、エッジリング112aに印加している直流電圧値である。
【0033】
一実施形態において、制御部2は、RF印加時間が50時間経過する都度、FRDC_Vを所定の増加幅だけ増加させる。増加幅は、例えば、200時間経過するまでの間は25Vであり、200時間経過後は12.5Vである。なお、FRDC_Vが上限値(例えば300V)に達した場合、制御部2は、その上限値を維持する。FRDC_Vを補正する時間間隔、及びFRDC_Vを補正する際の増加幅は、上記に限定されず、適宜設計することが可能である。
【0034】
(2)LF_pwの補正
LF_Vppは、経時変化やFRDC_Vの変動の影響を受けて上昇する。製品特性は、LF_Vppの上昇に伴い、悪化する場合がある。制御部2は、製品特性の悪化を抑制するために、初期Vppに合うようにLF_pwを補正する。ここで、初期Vppは、消耗品交換後のシーズニング処理において所定時間(例えば50時間)が経過するまでのLF_Vppの平均値として設定される。初期Vppは、エッジリング112aなどの消耗品が交換される都度(RF印加時間が0にリセットされる都度)、制御部2によって算出されるとよい。制御部2は、LF_Vppの平均値に代えて、中央値や移動平均などの他の統計値を初期Vppに用いてもよい。
【0035】
図4は、LF_pwの補正例を説明するグラフである。グラフの横軸はRF印加時間、縦軸はLF_pw及びLF_Vppを表す。RF印加時間は、シーズニング処理を終え、実際のプラズマ処理が開始されてからの経過時間を表す。LF_pw及びLF_Vppは適宜の基準値に対する変化率(%)として表されている。上述したように、LF_Vppは、経時変化やFRDC_Vの変動の影響を受けて上昇する。
図4のグラフは、プラズマ処理の開始後、RF印加時間が50時間を経過するまでの間、50時間を経過した後、100時間を経過するまでの間等において、LF_Vppが単調に増加している様子を示している。本実施形態において、制御部2は、LF_pwを補正することにより、LF_Vppの上昇を抑える。
【0036】
制御部2は、例えば、以下の数1で表される補正式を用いて、LF_pwを補正する。
【0037】
【0038】
ここで、Cor LF_pwは、バイアス電力の現在値に対する補正量を表す。数1に示すように、バイアス電力の補正量Cor LF_pwは、平均LF_Vpp(平均Vpp)、初期LF_Vpp(初期Vpp)、Cor FRDC(FRDC_Vの補正量)、及び補正係数α,βの関数として表される。数1の関数形は、補正量Cor LF_pwが負の値を取るように定められる。
【0039】
制御部2は、例えばFRDC_Vを補正したタイミングにおいて、数1に従ってLF_pwを補正する。LF_pwは、補正により減算される。
図4のグラフは、RF印加時間が50時間経過する都度、FRDC_Vを補正すると共に、LF_pwを補正した様子を示している。LF_pwは、補正により約1%ずつ段階的に減算されている。また、LF_pwの補正により、LF_Vppは、初期Vppに合うように補正されている。
【0040】
図4のグラフでは、FRDC_Vを補正するタイミングで、LF_pwを補正する例を示したが、制御部2は、LF_Vppを観測し、LF_Vppの変動が閾値を超えた場合、LF_pwを補正する構成としてもよい。閾値は、例えば初期Vppを基に設定される。一例では、閾値は、初期Vpp×1.005に設定される。
【0041】
(3)HF_pwの補正
HF_Vppは、LF_pwの補正の影響を受けて上昇する。HF_Vppの上昇に伴い、製品特性は悪化する場合がある。制御部2は、製品特性の悪化を抑制するために、HF_pwを補正する。
【0042】
図5は、HF_pwの補正例を説明するグラフである。グラフの横軸はRF印加時間、縦軸はHF_pw及びHF_Vppを表す。RF印加時間は、シーズニング処理を終え、実際のプラズマ処理が開始されてからの経過時間を表す。HF_pw及びHF_Vppは適宜の基準値に対する変化率(%)として表されている。HF_Vppは、LF_pwの変動の影響を受けて上昇する。本実施形態において、制御部2は、HF_pwを補正することにより、HF_Vppの上昇を抑える。
【0043】
制御部2は、例えば、以下の数2で表される補正式を用いて、HF_pwを補正する。
【0044】
【0045】
ここで、Cor HF_pwは、ソース電力の現在値に対する補正量を表す。数2に示すように、ソース電力の補正量Cor HF_pwは、Cor LF_pw、及び補正係数γの関数として表される。数2の関数形は、ソース電力及びバイアス電力の比率が固定されるように定められる。
【0046】
以下、FRDC_V及びRF_pwの補正手順について説明する。
図6は、実施の形態1における補正処理の実行手順を説明するフローチャートである。プラズマ処理装置1においてエッジリング112aを含む消耗品が交換され、処理工程を規定するレシピに従ってプロセスが開始された後、制御部2は、以下の手順を実行する。制御部2は、プラズマ処理装置1においてプロセスが開始されてからの経過時間を計時し、所定時間(例えば25時間)が経過したか否かを判断する(ステップS101)。
【0047】
所定時間が経過していないと判断した場合(S101:NO)、制御部2は、LF_Vppの値を収集する(ステップS102)。制御部2は、収集したLF_Vppの値を時刻に関連付けて記憶部2a2に記憶させ、処理をステップS101へ戻す。
【0048】
所定時間が経過したと判断した場合(S101:YES)、制御部2は、記憶部2a2に記憶させたLF_Vppの値に基づき、初期Vppを算出する(ステップS103)。制御部2は、記憶部2a2に記憶させたLF_Vppの平均値を初期Vppとして算出する。代替的に、制御部2は、記憶部2a2に記憶させたLF_Vppの中央値や移動平均を初期Vppとして算出してもよい。制御部2は、算出した初期Vppを記憶部2a2に記憶させる。
【0049】
次いで、制御部2は、FRDC_Vを補正するか否かを判断する(ステップS104)。本実施の形態では、制御部2は、RF印加時間が50時間経過する都度FRDC_Vを補正する。この場合、制御部2は、プロセスが開始されてから50時間が経過したか否か、又は、前回の補正から50時間が経過したか否かを判断することにより、FRDC_Vを補正するか否かを判断することができる。
【0050】
ステップS104で補正すると判断した場合(S104:YES)、制御部2は、FRDC_Vを補正する(ステップS105)。制御部2は、可変直流電源33の動作を制御することによって、エッジリング112aに印加されるFRDC_Vを所定の増加幅だけ増加させる。増加幅は、事前に記憶部2a2に記憶されているものとする。一例では、RF印加時間がトータルで200時間経過するまでの間、増加幅は25Vであり、200時間経過後は12.5Vである。制御部2は、FRDC_Vを補正した後、後述のステップS107の処理を実行し、RF_pwを併せて補正する。
【0051】
ステップS104で補正しないと判断した場合(S104:NO)、制御部2は、RF_pwを補正するか否かを判断する(ステップS106)。制御部2は、LF_Vppを観測し、例えば平均LF_Vppが閾値を超えた場合、RF_pwを補正すると判断することができる。閾値は、例えば、ステップS103で算出された初期Vppの1.005倍の値に設定される。
【0052】
ステップS106でRF_pwを補正しないと判断した場合(S106:NO)、制御部2は、ステップS109以降の処理を実行する。
【0053】
ステップS106でRF_pwを補正すると判断した場合(S106:YES)、又はステップS105でFRDC_Vを補正した場合、制御部2は、RF_pwを補正する(ステップS107)。ステップS107において、制御部2は、バイアス電力及びソース電力の双方を補正する。
【0054】
制御部2は、例えば数1に基づき、現在の平均LF_Vpp、初期LF_Vpp、及びFRDC_Vの補正量に応じて、LF_pwの補正量を算出する。また、制御部2は、例えば数2に基づき、HF_pw及びLF_pwの比率を固定しながら、HF_Vppを維持できるように、HF_pwの補正量を算出する。制御部2は、算出したLF_pw及びHF_pwの補正量に基づき、補正後のLF_pw及びHF_pwの値を算出することができる。
【0055】
制御部2は、第1のRF生成部31aを制御することにより、補正後のHF_pwを満たすように、ソースRF信号(ソースRF電力)を生成する。生成したソースRF信号(ソースRF電力)は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。また、制御部2は、第2のRF生成部31bを制御することにより、補正後のLF_pwを満たすように、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成する。生成したバイアスRF信号(バイアスRF電力)は、少なくとも1つの下部電極に供給される。
【0056】
次いで、制御部2は、各種補正値を出力する(ステップS108)。制御部2が出力する補正値は、ステップS105で算出したFRDC_Vの補正値、及びステップS107で算出したRF_pwの補正値を含む。制御部2は、これらの補正値を含む情報を通信インターフェース2a3を通じて、外部コンピュータへ出力する。外部コンピュータは、複数のプラズマ処理装置1を統括的に管理する管理サーバであってもよく、プラズマ処理装置1の管理者等が携帯する携帯端末等であってもよい。また、コンピュータ2aが液晶ディスプレイなどの表示部を搭載している場合、制御部2は、当該表示部に上記補正値を含む情報を表示させてもよい。
【0057】
次いで、制御部2は、プロセスが終了した否かを判断する(ステップS109)。プロセスの終了はレシピに基づき判断される。プロセスが終了していないと判断した場合(S109:NO)、制御部2は、処理をステップS104へ戻す。プロセスが終了したと判断した場合(S109:YES)、制御部2は、本フローチャートによる処理を終了する。
【0058】
図7は、補正値の出力例を示す図である。制御部2は、FRDC_V及びRF_pwに対する補正値を算出した場合、
図7に示すような出力項目と各項目の値とを組にした補正値テーブルを生成し、上述のステップS108で出力する。
【0059】
図7に示す補正値テーブルは、FRDC_Vの補正に関する出力項目として、FRDC_Current、FRDC_Delta、及びFRDC(Optimized)を含む。ここで、FRDC_Currentは、現在のFRDC_Vの制御値を表す。FRDC_Deltaは、FRDC_Vの補正量であり、現在の制御値からの差分を表す。FRDC(Optimized)は、FRDC_Vの補正値(補正後のFRDC_Vの制御値)を表す。
【0060】
また、
図7に示す補正値テーブルは、LF_pwに関する出力項目として、LF_Power_Current、LF_Power_Delta、LF_Power_Delta(Pecentage)、及びLF_Power(Optimized)を含む。ここで、LF_Power_Currentは、現在のLF_pwの制御値を表す。LF_Power_Deltaは、LF_pwの補正量であり、現在の制御値からの差分を表す。LF_Power_Delta(Pecentage)は、LF_pwの補正割合であり、現在の制御値に対する変化割合を表す。LF_Power(Optimized)は、LF_pwの補正値(補正後のLF_pwの制御値)を表す。
【0061】
また、
図7に示す補正値テーブルは、HF_pwに関する出力項目として、HF_Power_Current、HF_Power_Delta、HF_Power_Delta(Pecentage)、及びHF_Power(Optimized)を含む。ここで、HF_Power_Currentは、現在のHF_pwの制御値を表す。HF_Power_Deltaは、HF_pwの補正量であり、現在の制御値からの差分を表す。HF_Power_Delta(Pecentage)は、HF_pwの補正割合であり、現在の制御値に対する変化割合を表す。HF_Power(Optimized)は、HF_pwの補正値(補正後のHF_pwの制御値)を表す。
【0062】
補正値テーブルの出力項目は、
図7に示されるものに限定されず、適宜設定される得る。例えば、補正値テーブルは、RF印加時間、FRDC_V、LF_Vpp、LF_pw、HF_Vpp、HF_pwなど、プロセスの実行中に計測される値を出力項目として含んでもよい。また、補正値テーブルは、初期Vpp、補正係数α、β、γなど、補正演算に用いられるパラメータを出力項目として含んでもよい。更に、補正値テーブルは、FRDC_V、LF_Vpp、LF_pw、HF_Vpp、HF_pwなどの制御範囲(上限及び下限)を出力項目として含んでもよい。
【0063】
制御部2は、生成した補正値テーブルを通信インターフェース2a3より外部コンピュータへ出力してもよい。また、制御部2は、生成した補正値テーブルを表示部に表示させてもよい。
【0064】
以上のように、実施の形態1において、制御部2は、RF印加時間に応じてFRDC_Vを補正するので、エッジリング112aの消耗に伴うプロセス特性の低下を抑制することができる。また、実施の形態1において、制御部2は、平均LF_Vppが閾値を超えた場合やFRDC_Vを補正した場合、RF_pwを補正するので、製品特性の悪化を抑制することができる。
【0065】
実施の形態1では、制御部2が補正処理を実行する構成としたが、制御部2に通信可能にされたクラウドサーバなどの外部サーバにて補正処理を実行する構成としてもよい。また、制御部2にインストールされるプログラムは、プログラム製品として提供されてもよい。
【0066】
(実施の形態2)
実施の形態2では、ソース電力のピーク間電圧(HF_Vpp)を観測し、HF_Vppの変動に応じて、ソース電力及びバイアス電力を補正する構成について説明する。
プラズマ処理システムの全体構成、プラズマ処理装置1の内部構成、制御部2の内部構成等は、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0067】
図8は、実施の形態2における補正処理の実行手順を説明するフローチャートである。プラズマ処理装置1においてエッジリング112aを含む消耗品が交換され、処理工程を規定するレシピに従ってプロセスが開始された後、制御部2は、以下の手順を実行する。制御部2は、プラズマ処理装置1においてプロセスが開始されてからの経過時間を計時し、所定時間(例えば25時間)が経過したか否かを判断する(ステップS201)。
【0068】
所定時間が経過していないと判断した場合(S201:NO)、制御部2は、HF_Vppの値を収集する(ステップS202)。制御部2は、収集したHF_Vppの値を時刻に関連付けて記憶部2a2に記憶させ、処理をステップS201へ戻す。
【0069】
所定時間が経過したと判断した場合(S201:YES)、制御部2は、記憶部2a2に記憶させたHF_Vppの値に基づき、初期Vppを算出する(ステップS203)。制御部2は、記憶部2a2に記憶させたLF_Vppの平均値を初期Vppとして算出する。代替的に、制御部2は、記憶部2a2に記憶させたLF_Vppの中央値や移動平均を初期Vppとして算出してもよい。制御部2は、算出した初期Vppを記憶部2a2に記憶させる。
【0070】
次いで、制御部2は、FRDC_Vを補正するか否かを判断する(ステップS204)。本実施の形態では、制御部2は、RF印加時間が50時間経過する都度FRDC_Vを補正する。この場合、制御部2は、プロセスが開始されてから50時間が経過したか否か、又は、前回の補正から50時間が経過したか否かを判断することにより、FRDC_Vを補正するか否かを判断することができる。
【0071】
ステップS204で補正すると判断した場合(S204:YES)、制御部2は、FRDC_Vを補正する(ステップS205)。制御部2は、可変直流電源33の動作を制御することによって、エッジリング112aに印加されるFRDC_Vを所定の増加幅だけ増加させる。増加幅は、事前に記憶部2a2に記憶されているものとする。一例では、RF印加時間がトータルで200時間経過するまでの間、増加幅は25Vであり、200時間経過後は12.5Vである。制御部2は、FRDC_Vを補正した後、後述のステップS207の処理を実行し、RF_pwを併せて補正する。
【0072】
ステップS204で補正しないと判断した場合(S204:NO)、制御部2は、RF_pwを補正するか否かを判断する(ステップS206)。制御部2は、HF_Vppを観測し、例えば平均HF_Vppが閾値を超えた場合、RF_pwを補正すると判断することができる。閾値は、例えば、ステップS203で算出された初期Vppの1.005倍の値に設定される。
【0073】
ステップS206でRF_pwを補正しないと判断した場合(S206:NO)、制御部2は、ステップS209以降の処理を実行する。
【0074】
ステップS206でRF_pwを補正すると判断した場合(S206:YES)、又はステップS205でFRDC_Vを補正した場合、制御部2は、RF_pwを補正する(ステップS207)。ステップS207において、制御部2は、バイアス電力及びソース電力の双方を補正する。具体的には、制御部2は、実施の形態1と同様に、HF_pw及びLF_pwの比率を固定しながら、観測されるHF_Vppが初期設定値(初期Vpp)に近づくようにバイアス電力及びソース電力の双方を補正する。
【0075】
制御部2は、第1のRF生成部31aを制御することにより、補正後のHF_pwを満たすように、ソースRF信号(ソースRF電力)を生成する。生成したソースRF信号(ソースRF電力)は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。また、制御部2は、第2のRF生成部31bを制御することにより、補正後のLF_pwを満たすように、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成する。生成したバイアスRF信号(バイアスRF電力)は、少なくとも1つの下部電極に供給される。
【0076】
次いで、制御部2は、各種補正値を出力する(ステップS208)。制御部2が出力する補正値は、実施の形態1と同様である。制御部2は、補正値を含む情報を通信インターフェース2a3を通じて、外部コンピュータへ出力する。外部コンピュータは、複数のプラズマ処理装置1を統括的に管理する管理サーバであってもよく、プラズマ処理装置1の管理者等が携帯する携帯端末等であってもよい。また、コンピュータ2aが液晶ディスプレイなどの表示部を搭載している場合、制御部2は、当該表示部に上記補正値を含む情報を表示させてもよい。
【0077】
次いで、制御部2は、プロセスが終了した否かを判断する(ステップS209)。プロセスの終了はレシピに基づき判断される。プロセスが終了していないと判断した場合(S209:NO)、制御部2は、処理をステップS204へ戻す。プロセスが終了したと判断した場合(S209:YES)、制御部2は、本フローチャートによる処理を終了する。
【0078】
(実施の形態3)
上述のように、プラズマ処理装置1の下部電極にはパルス電圧が印加されてもよい。この場合、制御部2は、プラズマ処理装置1の下部電極に印加されるパルス電圧の電流値を観測し、観測した電流値の変動に応じて、ソース電力及びパルス電圧を補正すればよい。実施の形態3では、下部電極に印加されるパルス電圧の電流値の変動に応じて、ソース電力及びパルス電圧を補正する構成について説明する。
なお、プラズマ処理システムの全体構成、プラズマ処理装置1の内部構成、制御部2の内部構成等は、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0079】
図9は、実施の形態3における補正処理の実行手順を説明するフローチャートである。プラズマ処理装置1においてエッジリング112aを含む消耗品が交換され、処理工程を規定するレシピに従ってプロセスが開始された後、制御部2は、以下の手順を実行する。制御部2は、プラズマ処理装置1においてプロセスが開始されてからの経過時間を計時し、所定時間(例えば25時間)が経過したか否かを判断する(ステップS301)。
【0080】
所定時間が経過していないと判断した場合(S301:NO)、制御部2は、下部電極に印加したパルス電圧の電流値を収集する(ステップS302)。制御部2は、収集した電流値を時刻に関連付けて記憶部2a2に記憶させ、処理をステップS301へ戻す。
【0081】
所定時間が経過したと判断した場合(S301:YES)、制御部2は、記憶部2a2に記憶させた電流値に基づき、初期電流値を算出する(ステップS303)。制御部2は、記憶部2a2に記憶させた電流値の平均値を初期電流値として算出する。代替的に、制御部2は、記憶部2a2に記憶させた電流値の中央値や移動平均を初期電流値として算出してもよい。制御部2は、算出した初期電流値を記憶部2a2に記憶させる。
【0082】
次いで、制御部2は、FRDC_Vを補正するか否かを判断する(ステップS304)。本実施の形態では、制御部2は、RF印加時間が50時間経過する都度FRDC_Vを補正する。この場合、制御部2は、プロセスが開始されてから50時間が経過したか否か、又は、前回の補正から50時間が経過したか否かを判断することにより、FRDC_Vを補正するか否かを判断することができる。
【0083】
ステップS304で補正すると判断した場合(S304:YES)、制御部2は、FRDC_Vを補正する(ステップS305)。制御部2は、可変直流電源33の動作を制御することによって、エッジリング112aに印加されるFRDC_Vを所定の増加幅だけ増加させる。増加幅は、事前に記憶部2a2に記憶されているものとする。一例では、RF印加時間がトータルで200時間経過するまでの間、増加幅は25Vであり、200時間経過後は12.5Vである。制御部2は、FRDC_Vを補正した後、後述のステップS307の処理を実行し、ソース電力及びパルス電圧を併せて補正する。
【0084】
ステップS304で補正しないと判断した場合(S304:NO)、制御部2は、ソース電力及びパルス電圧を補正するか否かを判断する(ステップS306)。制御部2は、下部電極に印加されるパルス電圧の電流値を観測し、観測した電流値が閾値を超えた場合、ソース電力及びパルス電圧を補正すると判断することができる。閾値は、例えば、ステップS303で算出された初期電流値を基に設定される。
【0085】
ステップS306で補正しないと判断した場合(S306:NO)、制御部2は、ステップS309以降の処理を実行する。
【0086】
ステップS306で補正すると判断した場合(S306:YES)、又はステップS305でFRDC_Vを補正した場合、制御部2は、プラズマ生成用のソース電力と、下部電極に印加されるパルス電圧とを補正する(ステップS307)。具体的には、制御部2は、ソース電力及びパルス電圧の比率を固定しながら、観測されるパルス電圧の電流値が初期電流値に近づくようにソース電力及びパルス電圧の双方を補正する。
【0087】
制御部2は、第1のRF生成部31aを制御することにより、補正後のHF_pwを満たすように、ソースRF信号(ソースRF電力)を生成する。生成したソースRF信号(ソースRF電力)は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。また、制御部2は、第1のDC生成部32aを制御することにより、補正後のパルス電圧を生成する。生成したパルス電圧は、少なくとも1つの下部電極に供給される。
【0088】
次いで、制御部2は、各種補正値を出力する(ステップS308)。制御部2が出力する補正値は、ステップS305で算出したFRDC_Vの補正値、及びステップS307で算出したソース電力及びパルス電圧の補正値を含む。制御部2は、これらの補正値を含む情報を通信インターフェース2a3を通じて、外部コンピュータへ出力する。外部コンピュータは、複数のプラズマ処理装置1を統括的に管理する管理サーバであってもよく、プラズマ処理装置1の管理者等が携帯する携帯端末等であってもよい。また、コンピュータ2aが液晶ディスプレイなどの表示部を搭載している場合、制御部2は、当該表示部に上記補正値を含む情報を表示させてもよい。
【0089】
次いで、制御部2は、プロセスが終了した否かを判断する(ステップS309)。プロセスの終了はレシピに基づき判断される。プロセスが終了していないと判断した場合(S309:NO)、制御部2は、処理をステップS304へ戻す。プロセスが終了したと判断した場合(S309:YES)、制御部2は、本フローチャートによる処理を終了する。
【0090】
(実施の形態4)
実施の形態4に係るプラズマ処理装置1では、FRDC_Vに代えて、パルス電圧をエッジリング112aに印加する。例えば、プラズマ処理装置1が備える第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に対してパルス電圧を印加すると共に、エッジリング112aに対してもパルス電圧を印加する。このようなプラズマ処理装置1においては、エッジリング112aに印加されるパルス電圧を補正すると共に、プラズマ生成用のソース電力、及び下部電極に印加されるパルス電圧を補正してもよい。実施の形態4では、エッジリング112aに印加されるパルス電圧を第1パルス電圧、下部電極に印加されるパルス電圧を第2パルス電圧と称する。
【0091】
図10は、実施の形態4における補正処理の実行手順を説明するフローチャートである。プラズマ処理装置1においてエッジリング112aを含む消耗品が交換され、処理工程を規定するレシピに従ってプロセスが開始された後、制御部2は、以下の手順を実行する。制御部2は、プラズマ処理装置1においてプロセスが開始されてからの経過時間を計時し、所定時間(例えば25時間)が経過したか否かを判断する(ステップS401)。
【0092】
所定時間が経過していないと判断した場合(S401:NO)、制御部2は、第2パルス電圧の電流値を収集する(ステップS402)。制御部2は、収集した電流値を時刻に関連付けて記憶部2a2に記憶させ、処理をステップS401へ戻す。
【0093】
所定時間が経過したと判断した場合(S401:YES)、制御部2は、記憶部2a2に記憶させた電流値に基づき、初期電流値を算出する(ステップS403)。制御部2は、記憶部2a2に記憶させた電流値の平均値を初期電流値として算出する。代替的に、制御部2は、記憶部2a2に記憶させた電流値の中央値や移動平均を初期電流値として算出してもよい。制御部2は、算出した初期電流値を記憶部2a2に記憶させる。
【0094】
次いで、制御部2は、第1パルス電圧を補正するか否かを判断する(ステップS404)。本実施の形態では、制御部2は、RF印加時間が50時間経過する都度、第1パルス電圧を補正する。この場合、制御部2は、プロセスが開始されてから50時間が経過したか否か、又は、前回の補正から50時間が経過したか否かを判断することにより、第1パルス電圧を補正するか否かを判断することができる。
【0095】
ステップS404で補正すると判断した場合(S404:YES)、制御部2は、第1パルス電圧を補正する(ステップS405)。制御部2は、第1のDC生成部32aの動作を制御することによって、エッジリング112aに印加されるパルス電圧の大きさを増加させる。増加幅は、事前に記憶部2a2に記憶されているものとする。制御部2は、第1パルス電圧を補正した後、後述のステップS407の処理を実行し、ソース電力及び第2パルス電圧を併せて補正する。
【0096】
ステップS404で補正しないと判断した場合(S404:NO)、制御部2は、ソース電力及び第2パルス電圧を補正するか否かを判断する(ステップS406)。制御部2は、下部電極に印加される第2パルス電圧の電流値を観測し、観測した電流値が閾値を超えた場合、ソース電力及び第2パルス電圧を補正すると判断することができる。閾値は、例えば、ステップS403で算出された初期電流値を基に設定される。
【0097】
ステップS406で補正しないと判断した場合(S406:NO)、制御部2は、ステップS409以降の処理を実行する。
【0098】
ステップS406で補正すると判断した場合(S406:YES)、又はステップS405で第1パルス電圧を補正した場合、制御部2は、ソース電力及び第2パルス電圧を補正する(ステップS407)。具体的には、制御部2は、ソース電力及び第2パルス電圧の比率を固定しながら、観測される第2パルス電圧の電流値が初期電流値に近づくようにソース電力及び第2パルス電圧の双方を補正する。
【0099】
制御部2は、第1のRF生成部31aを制御することにより、補正後のHF_pwを満たすように、ソースRF信号(ソースRF電力)を生成する。生成したソースRF信号(ソースRF電力)は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。また、制御部2は、第1のDC生成部32aを制御することにより、補正後の第2パルス電圧を生成する。生成した第2パルス電圧は、少なくとも1つの下部電極に供給される。
【0100】
次いで、制御部2は、各種補正値を出力する(ステップS408)。制御部2が出力する補正値は、ステップS405で算出した第1パルス電圧の補正値、及びステップS407で算出したソース電力及び第2パルス電圧の補正値を含む。制御部2は、これらの補正値を含む情報を通信インターフェース2a3を通じて、外部コンピュータへ出力する。外部コンピュータは、複数のプラズマ処理装置1を統括的に管理する管理サーバであってもよく、プラズマ処理装置1の管理者等が携帯する携帯端末等であってもよい。また、コンピュータ2aが液晶ディスプレイなどの表示部を搭載している場合、制御部2は、当該表示部に上記補正値を含む情報を表示させてもよい。
【0101】
次いで、制御部2は、プロセスが終了した否かを判断する(ステップS409)。プロセスの終了はレシピに基づき判断される。プロセスが終了していないと判断した場合(S409:NO)、制御部2は、処理をステップS404へ戻す。プロセスが終了したと判断した場合(S409:YES)、制御部2は、本フローチャートによる処理を終了する。
【0102】
(実施の形態5)
実施の形態5では、過補正防止機能について説明する。
なお、プラズマ処理装置1の構成や制御部2の構成は実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0103】
実施の形態1において説明したように、制御部2は、平均LF_Vppが閾値を超えた場合やFRDC_Vを補正した場合、数1及び数2に基づいて、LF_pw及びHF_pwを補正する。しかしながら、補正量が大きいと、ソース電力やバイアス電力が低くなるので、所要のプロセス性能が発揮できない可能性がある。そこで、実施の形態5では、LF_pw及びHF_pwの補正に対し、過補正防止機能を設ける。
【0104】
図11は、過補正防止処理の実行手順を示すフローチャートである。制御部2は、LF_pw及びHF_pwに対する補正量を算出した場合、以下の処理を実行する。
【0105】
制御部2は、ステップS501において、LF_pwに対する補正量の絶対値(|Cor LF_pw|)が第1閾値以上であるか否かを判断する。第1閾値は、例えば、現在のLF_pwの5%の値(LF_pw×0.05)に設定される。なお、第1閾値は、LF_pwの5%の値に限らず、適宜設定してもよい。
【0106】
制御部2は、ステップS502において、HF_pwに対する補正量の絶対値(|Cor HF_pw|)が第2閾値以上であるか否かを判断する。第2閾値は、例えば、現在のHF_pwの5%の値(HF_pw×0.05)に設定される。なお、第2閾値は、HF_pwの5%の値に限らず、適宜設定してもよい。
【0107】
ステップS501において、|Cor LF_pw|が第1閾値以上であると判断した場合、又はステップS502において、|Cor HF_pw|が第2閾値以上であると判断した場合、制御部2は、LF_pw及びHF_pwの補正を停止する(ステップS503)。この場合、LF_pw及びHF_pwが変更されずに、プロセスが継続される。
【0108】
一方、ステップS501において、|Cor LF_pw|が第1閾値未満であると判断した場合、かつ、ステップS502において、|Cor HF_pw|が第2閾値未満であると判断した場合、制御部2は、補正を停止させずに本フローチャートによる処理を終了する。この場合、LF_pw及びHF_pwは補正され、プロセスが継続される。
【0109】
以上のように、実施の形態5では、LF_pw及びHF_pwの補正に対し、過補正防止機能を設けることによって、ソース電力やバイアス電力の値が想定範囲よりも低くなることを防止することができる。
【0110】
(実施の形態6)
実施の形態6では、補正係数α,β,γの校正手順について説明する。
なお、プラズマ処理装置1の構成や制御部2の構成は実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0111】
プラズマ処理装置では、一般的に、定期的に処理室内を大気に開放して、エッジリングを含むコンポーネントの交換や、処理室内の付着物の除去といった、所謂ウェットクリーニングが行われている。しかしながら、ウェットクリーニングを行った直後の処理室内の雰囲気は、量産安定時の雰囲気とは異なるため、結果として、ウェットクリーニング前後でプラズマ処理性能を変化させていた。
【0112】
このような問題点を解決するために、量産時のプラズマ処理を模擬したプラズマ処理(以下、シーズニング処理と称する)を行い、処理室内の状態を量産安定時に近づけていた。シーズニング処理では、製品用の被処理体とは異なるダミーの被処理体を用いてプラズマ処理することで、量産時のプラズマ処理を模擬することが多い。
【0113】
実施の形態6では、このシーズニング処理の手順を記述するシーズニングレシピに、補正係数α,β,γの校正用のステップを埋め込むことにより、シーズニング処理毎に補正係数を校正する。補正係数校正用のステップが埋め込まれたシーズニングレシピを含む各種レシピは、例えば、制御部2内の記憶部2a2に予め記憶されているものとする。
【0114】
図12は、補正係数の校正手順を説明するフローチャートである。制御部2は、シーズニング処理の要否を判断する(ステップS601)。エッジリング112aを含むプラズマ処理装置1のコンポーネントを交換したり、処理室内の付着物を除去したりするために、プラズマ処理チャンバ10が大気に開放された場合、制御部2は、シーズニング処理を必要と判断する。シーズニング処理を不要と判断した場合(S601:NO)、制御部2は、本フローチャートによる処理を終了する。
【0115】
シーズニング処理を要と判断した場合(S601:YES)、制御部2は、記憶部2a2から補正係数校正用のステップが埋め込まれたシーズニングレシピを読み込み(ステップS602)、読み込んだシーズニングレシピに従ってシーズニング処理を実行する(ステップS603)。
【0116】
制御部2は、シーズニング処理を実行する過程で、補正係数校正用のステップに従い、補正係数α,β,γを校正する。制御部2は、例えば、補正係数校正用のステップにおいて計測されるLF_pw、LF_Vpp、HF_pw、HF_Vppの値を解析することによって、補正係数α,β,γを校正することができる。
【0117】
補正係数校正用のステップが埋め込まれたシーズニングレシピを実行することにより、校正後の補正係数α,β,γが得られるので、制御部2は、得られた補正係数α,β,γを記憶部2a2に記憶させる(ステップS604)。
【0118】
なお、ステップ数が異なる複数種のシーズニングレシピが用意されている場合、シーズニングレシピ毎に、補正係数を校正する際の初期値や校正方法を異ならせてもよい。
【0119】
以上のように、実施の形態6では、シーズニング処理を実行する都度、補正係数が校正されるので、プラズマ処理装置1の機差に関わらず、適切な補正係数を用いて、ソース電力やバイアス電力を補正することができる。
【0120】
実施の形態6では、シーズニングレシピに補正係数α,β,γの校正用のステップを埋め込むことにより補正係数を校正する構成としたが、シーズニングレシピに埋め込まずに、単独で係数補正用のレシピを実施してもよい。
【0121】
今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0122】
実施形態では、容量結合型のプラズマ処理装置1への適用例について説明したが、容量結合型に限らず、Inductively Coupled Plasma (ICP)、Radial Line Slot Antenna (RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma (ECR)、Helicon Wave Plasma (HWP)のどのタイプのプラズマ処理装置にも適用可能である。
【0123】
実施形態では、処理対象の基板の一例としてウェハWを挙げて説明したが、処理対象の基板はウェハWに限らず、FPD(Flat Panel Display)に用いられる各種基板、プリント基板等であってもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
2a コンピュータ
2a1 処理部
2a2 記憶部
2a3 通信インターフェース
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
20 ガス供給部
30 電源
31 RF電源
31a 第1のRF生成部
31b 第2のRF生成部
32 DC電源
32a 第1のDC生成部
32b 第2のDC生成部
33 可変直流電源
112 リングアセンブリ
112a エッジリング
112b カバーリング