(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】酸化物系固体電解質及び全固体リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20250311BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250311BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20250311BHJP
H01B 1/08 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/06 A
H01B1/08
(21)【出願番号】P 2022025006
(22)【出願日】2022-02-21
【審査請求日】2024-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 翔一
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/145312(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/204027(WO,A1)
【文献】米国特許第5458995(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01B 1/06
H01B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式:Li
αGe
xV
yTi
zO
4(式中、3.25≦α≦3.8、0.05≦x≦0.6、0.25≦y≦0.6、且つ、0.04≦z≦0.4である。)
で表される酸化物系固体電解質。
【請求項2】
前記式中、0.25≦x≦0.5である請求項1に記載の酸化物系固体電解質。
【請求項3】
前記式中、0.30≦y≦0.55である請求項1または2に記載の酸化物系固体電解質。
【請求項4】
前記式中、0.045≦z≦0.35である請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化物系固体電解質。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の酸化物系固体電解質で構成された固体電解質層と、正極層と、負極層とを含む全固体リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物系固体電解質及び全固体リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるパソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。該電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウムイオン電池が注目を浴びている。また、車載用等の動力源やロードレベリング用といった大型用途におけるリチウム二次電池についても、エネルギー密度や電池特性の向上が求められている。
【0003】
LISICON型酸化物系固体電解質は、Liイオンを伝導する固体材料として、次世代の全固体電池用固体電解質として期待されている。また、異なる価数のイオンと置換することでLi欠損や過剰Liの導入が可能であり、様々な元素と組み合わせた材料を作製することができる利点も有する。
【0004】
また、全固体リチウムイオン電池の特性改善のため、イオン伝導度の高い固体電解質が求められている。非特許文献1には、LISICON型酸化物系固体電解質においてイオン伝導度の向上を目指した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Guowei zhaoら、Enhancing Fast Lithium Ion Conduction in Li4GeO4-Li3PO4 Solid Electrolytes, ACS Appl. Energy Mater., 2, 2019, 6608-6615
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1には、Li3.75Ge0.75P0.25O4に種々のカチオンMを置換し、酸化物系固体電解質のイオン伝導度の向上を目指した技術について記載されている。これを一般化した組成式はLi3.75±y(Ge0.75P0.25)1-xMxO4であり、MにはMg2+、B3+、Al3+、Ga3+またはV5+のいずれかが選択されている。その中でもV5+が選択された系において、x=0.3のときに最も高いイオン伝導度を示し、25℃において5.1×10-5S/cm程度であったと記載されている。
【0007】
このように、現在報告されている最もイオン伝導度の高いLISICON型の固体電解質でも、他の酸化物系固体電解質材料群であるガーネット型材料等に比べてイオン伝導度が1桁から2桁程度低く、全固体電池に応用するためにはさらなるイオン伝導度の向上が望まれる。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、良好なイオン伝導度を有する酸化物系固体電解質、及び、それを用いた全固体リチウムイオン電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記知見を基礎にして完成した本発明は実施形態において、組成式:LiαGexVyTizO4(式中、3.25≦α≦3.8、0.05≦x≦0.6、0.25≦y≦0.6、且つ、0.04≦z≦0.4である。)
で表される酸化物系固体電解質である。
【0010】
本発明の酸化物系固体電解質は別の実施形態において、前記式中、0.25≦x≦0.5である。
【0011】
本発明の酸化物系固体電解質は更に別の実施形態において、前記式中、0.30≦y≦0.55である。
【0012】
本発明の酸化物系固体電解質は更に別の実施形態において、前記式中、0.045≦z≦0.35である。
【0013】
本発明は更に別の実施形態において、本発明の実施形態に係る酸化物系固体電解質で構成された固体電解質層と、正極層と、負極層とを含む全固体リチウムイオン電池である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、良好なイオン伝導度を有する酸化物系固体電解質、及び、それを用いた全固体リチウムイオン電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る全固体リチウムイオン電池の模式図である。
【
図2】母材(Li
3.5Ge
0.5V
0.5O
4)のXRDのX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0017】
(酸化物系固体電解質)
本実施形態の酸化物系固体電解質は、組成式:LiαGexVyTizO4(式中、3.25≦α≦3.8、0.05≦x≦0.6、0.25≦y≦0.6、且つ、0.04≦z≦0.4である。)で表される。本実施形態の酸化物系固体電解質は、LISICON型固体電解質であるLiαGexVyO4の母材料に、Tiを置換してなる組成を有している。このような構成によれば、酸化物系固体電解質を構成する元素の種類が多くなり、活性化エネルギーが低減するため、良好なイオン伝導度を有する酸化物系固体電解質が得られる。
なお、本発明において、酸化物系固体電解質とは、リチウムイオンの対アニオンとして、中心元素に酸素原子が配位結合したオキソ酸イオンを骨格に有する固体電解質を指す。
【0018】
本実施形態の酸化物系固体電解質は、上記組成式において、αが3.25未満であると、キャリア濃度が低いためイオン伝導度が低下するという問題が生じるおそれがある。また、αが3.8超であると、単一相合成が困難となる問題が生じるおそれがある。本実施形態の酸化物系固体電解質は、上記組成式において、3.4≦α≦3.65であるのが好ましい。
【0019】
本実施形態の酸化物系固体電解質は、上記組成式において、xが0.05未満であると、イオン伝導性の低いLi4GeO4相が生じるおそれがある。また、xが0.6超であると、結晶格子が大きくなるためLiサイト間距離が長くなり、イオン伝導度が低下するおそれがある。本実施形態の酸化物系固体電解質は、上記組成式において、0.25≦x≦0.5であるのが好ましい。
【0020】
本実施形態の酸化物系固体電解質は、上記組成式において、yが0.25未満であると、元素置換による活性化エネルギー低減の効果が弱いため、イオン伝導度の向上効果が小さいおそれがある。また、yが0.6超であると、Li4VO4などの不純物相が生成し、イオン伝導度が低下するおそれがある。本実施形態の酸化物系固体電解質は、上記組成式において、0.30≦y≦0.55であるのが好ましい。
【0021】
本実施形態の酸化物系固体電解質は、上記組成式において、Tiが含まれている。当該Tiは母材料に置換可能であり、イオン伝導度が向上するという効果がある。
【0022】
本実施形態の酸化物系固体電解質は、上記組成式において、zが0.4超であると、Li5TiO4などの不純物相が生成され、イオン伝導度が低下するおそれがある。本実施形態の酸化物系固体電解質は、上記組成式において、0.045≦z≦0.35であるのが好ましい。
【0023】
本発明の実施形態に係る酸化物系固体電解質の平均粒径は特に限定されないが、0.01~100μmであってもよく、0.1~100μmであってもよく、0.1~50μmであってもよい。
【0024】
本発明の実施形態に係る酸化物系固体電解質のイオン伝導度は、30℃において、10-5S/cm以上であることが好ましく、10-4S/cm以上であることがより好ましく、10-3S/cm以上であることが更により好ましい。酸化物系固体電解質のイオン伝導度は、例えば以下の方法で測定することができる。
まず、当該酸化物系固体電解質の粉末0.2gを、550MPaの圧力で押圧してプレート状に仮成形した後、800℃で12時間焼結し、成形体とする。その成形体の両面に銀ペーストを塗布した直径10mmのペレットを作製する。当該ペレットを用いて、30℃において、20Hz~50MHzまでの交流インピーダンス測定を印加電圧100mVとして行う。当該交流インピーダンス測定は、オープン-ショート補正を行った東陽テクニカ株式会社製E4990Aを用いて行うことができる。当該交流インピーダンス測定によって得られたCole-Coleプロットの周波数30kHz以上の部分に見られる円弧を解析してLiイオンの移動抵抗を求める。次に、下記式に基づき、当該Liイオンの移動抵抗と、測定に用いたペレットの固体電解質部分の厚み及び面積から、イオン伝導度を求める。
イオン伝導度=ペレットの固体電解質部分の厚み/[(Liイオンの移動抵抗)×(ペレット面積)]
【0025】
本実施形態の酸化物系固体電解質の粒子は、単一相を構成していることが好ましい。このような構成によれば、充放電時のLiイオンの移動に寄与しないNiOなどの相が無いため、電池容量が良好になる効果が期待できる。
【0026】
酸化物系固体電解質の粒子が単一相であることは、粉末X線回折法に基づく公知の方法で解析及び同定することができる。得られたX線回折パターンが、
図2に示すような母材料であるLi
3.5Ge
0.5V
0.5O
4のX線回折パターンと同一であり、かつその他のピークの存在が認められなかったものを、単一相であると判断することができる。具体的には、当該X線回折パターンにおいて、回折ピークが2θ=16°付近、28°付近、及び、35°付近の3箇所に現れているものについて、単一相であると判断する。なお、2θ=16°付近のピークは(200)面の回析ピーク、2θ=28°付近のピークは(020)面の回析ピーク、2θ=35°付近のピークは(002)面の回析ピークにそれぞれ対応する。
【0027】
(酸化物系固体電解質の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係る酸化物系固体電解質の製造方法について説明する。
まず、アルゴンガスまたは窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気のグローブボックス内で所定の組成となるように原料を秤量する。ここで用いる各原料は、例えば、LiOH・H2O、GeO2、V2O5、TiO2等が挙げられる。
【0028】
次に、乳鉢などにより、5~30分混合して混合粉を作製する。このとき、混合粉の平均粒径が5~40μmとなるような時間だけ混合することが好ましい。
【0029】
次に、当該混合粉をアルミナ製匣鉢にのせ、600~1000℃で1~20時間焼成することで、組成式:LiαGexVyTizO4(式中、3.25≦α≦3.8、0.05≦x≦0.6、0.25≦y≦0.6、且つ、0.04≦z≦0.4である。)で表される、本発明の実施形態に係る酸化物系固体電解質を作製することができる。
【0030】
(全固体リチウムイオン電池)
本発明の実施形態に係る酸化物系固体電解質によって固体電解質層を形成し、当該固体電解質層と、正極層と、負極層とを含む全固体リチウムイオン電池を作製することができる。本発明の実施形態に係る全固体リチウムイオン電池を構成する正極層及び負極層は、特に限定されず、公知の材料で形成することができ、
図1に示すような公知の構成とすることができる。
【0031】
リチウムイオン電池の正極層は、公知のリチウムイオン電池用正極活物質と、本発明の実施形態に係る酸化物系固体電解質または別の酸化物系固体電解質とを混合してなる正極合材を層状に形成したものである。
【0032】
正極合材は、さらに導電助剤を含んでもよい。当該導電助剤としては、炭素材料、金属材料、または、これらの混合物を用いることができる。導電助剤は、例えば、炭素、ニッケル、銅、アルミニウム、インジウム、銀、コバルト、マグネシウム、リチウム、クロム、金、ルテニウム、白金、ベリリウム、イリジウム、モリブデン、ニオブ、オスニウム、ロジウム、タングステン及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含んでもよい。導電助剤は、好ましくは、導電性が高い炭素単体、炭素、ニッケル、銅、銀、コバルト、マグネシウム、リチウム、ルテニウム、金、白金、ニオブ、オスニウム又はロジウムを含む金属単体、混合物又は化合物である。炭素材料としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、活性炭等を用いることができる。
【0033】
リチウムイオン電池の正極層の平均厚みについては特に限定されず、目的に応じて適宜設計することができる。リチウムイオン電池の正極層の平均厚みは、例えば、1μm~100μmであってもよく、1μm~10μmであってもよい。
【0034】
リチウムイオン電池の正極層の形成方法については特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。リチウムイオン電池の正極層の形成方法としては、例えば、正極活物質のターゲット材料を用いたスパッタリング、または、正極活物質を圧縮成形する方法などが挙げられる。
【0035】
リチウムイオン電池の負極層は、公知のリチウムイオン電池用負極活物質を層状に形成したものであってもよい。また、当該負極層は、公知のリチウムイオン電池用負極活物質と、本発明の実施形態に係る酸化物系固体電解質または別の酸化物系固体電解質とを混合してなる負極合材を層状に形成したものであってもよい。
【0036】
負極層は、正極層と同様に、導電助剤を含んでもよい。当該導電助剤は、正極層において説明した材料と同じ材料を用いることができる。負極活物質としては、例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等、または、その混合物を用いることができる。また、負極材としては、例えば、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組み合わせた合金を用いることができる。
【0037】
リチウムイオン電池の負極層の平均厚みについては特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。リチウムイオン電池の負極層の平均厚みは、例えば、1μm~100μmであってもよく、1μm~10μmであってもよい。
【0038】
リチウムイオン電池の負極層の形成方法については特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。リチウムイオン電池の負極層の形成方法としては、例えば、負極活物質のターゲット材料を用いたスパッタリング、または、負極活物質を圧縮成形する方法、負極活物質を蒸着する方法などが挙げられる。
【0039】
本発明の実施形態に係る酸化物系固体電解質によって形成されたリチウムイオン電池の固体電解質層の平均厚みについては特に限定されず、目的に応じて適宜設計することができる。リチウムイオン電池の固体電解質層の平均厚みは、例えば、50μm~500μmであってもよく、50μm~100μmであってもよい。
【0040】
リチウムイオン電池の固体電解質層の形成方法については特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。リチウムイオン電池の固体電解質層の形成方法としては、例えば、固体電解質のターゲット材料を用いたスパッタリング、または、固体電解質を圧縮成形する方法などが挙げられる。
【0041】
リチウムイオン電池を構成するその他の部材については特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正極集電体、負極集電体、及び、電池ケースなどが挙げられる。
【0042】
正極集電体の大きさ及び構造については特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
正極集電体の材質としては、例えば、ダイス鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン合金、銅、金、ニッケルなどが挙げられる。
正極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状などが挙げられる。
正極集電体の平均厚みとしては、例えば、10μm~500μmであってもよく、50μm~100μmであってもよい。
【0043】
負極集電体の大きさ及び構造については特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
負極集電体の材質としては、例えば、ダイス鋼、金、インジウム、ニッケル、銅、ステンレス鋼などが挙げられる。
負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状などが挙げられる。
負極集電体の平均厚みとしては、例えば、10μm~500μmであってもよく、50μm~100μmであってもよい。
【0044】
電池ケースについては特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、従来の全固体電池で使用可能な公知のラミネートフィルムなどが挙げられる。ラミネートフィルムとしては、例えば、樹脂製のラミネートフィルム、樹脂製のラミネートフィルムに金属を蒸着させたフィルムなどが挙げられる。
電池の形状については特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円筒型、角型、ボタン型、コイン型、扁平型などが挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0046】
(実施例1)
アルゴン雰囲気のグローブボックス内で原料仕込み組成がLi3.55Ge0.50V0.45Ti0.05となるように原料を秤量し、乳鉢を用いて15分間混合して混合粉を作製した。次に、当該混合粉の1g程度をアルミナボートにのせ、800℃で12時間焼成することで、Li3.47Ge0.48V0.46Ti0.049O4の組成を有する酸化物系固体電解質を得た。
【0047】
(実施例2)
原料仕込み組成がLi3.50Ge0.45V0.50Ti0.05であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0048】
(実施例3)
原料仕込み組成がLi3.70Ge0.50V0.30Ti0.20であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0049】
(実施例4)
原料仕込み組成がLi3.50Ge0.30V0.50Ti0.20であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0050】
(実施例5)
原料仕込み組成がLi3.71Ge0.33V0.33Ti0.33であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0051】
(実施例6)
原料仕込み組成がLi3.50Ge0.10V0.50Ti0.40であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0052】
(実施例7)
原料仕込み組成がLi3.53Ge0.48V0.48Ti0.05であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0053】
(実施例8)
原料仕込み組成がLi3.70Ge0.60V0.30Ti0.10であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0054】
(実施例9)
原料仕込み組成がLi3.40Ge0.30V0.60Ti0.10であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0055】
(比較例1)
原料仕込み組成がLi3.50Ge0.50V0.50であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0056】
(比較例2)
原料仕込み組成がLi3.90Ge0.50V0.10Ti0.40であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0057】
(比較例3)
原料仕込み組成がLi3.75Ge0.70V0.25Ti0.05であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0058】
(比較例4)
原料仕込み組成がLi3.85Ge0.80V0.15Ti0.05であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0059】
(比較例5)
原料仕込み組成がLi3.20Ge0.15V0.80Ti0.05であること以外は実施例1と同様に実施した。
【0060】
<組成分析>
実施例1~9及び比較例1~5で得られた各酸化物系固体電解質のサンプル(粉末)を0.5gはかり取り、種々の酸を用いて溶液化した後、株式会社日立ハイテク製の誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)「PS7800」を用いて、組成分析を行った。
【0061】
<イオン伝導度>
実施例1~9及び比較例1~5で得られた各酸化物系固体電解質の粉末0.2gを、550MPaの圧力で押圧してプレート状に仮成形した後、800℃で12時間焼結し、成形体とした。その成形体の両面に銀ペーストを塗布した直径10mmのペレットを作製した。当該ペレットを用いて、30℃において、20Hz~50MHzまでの交流インピーダンス測定を印加電圧100mVとして、オープン-ショート補正を行った株式会社東陽テクニカ製E4990Aを用いて行った。当該交流インピーダンス測定によって得られたCole-Coleプロットの周波数30kHz以上の部分に見られる円弧を解析してLiイオンの移動抵抗を求めた。次に、下記式に基づき、当該Liイオンの移動抵抗と、測定に用いたペレットの固体電解質部分の厚み及び面積から、イオン伝導度を求めた。
イオン伝導度=ペレットの固体電解質部分の厚み/[(Liイオンの移動抵抗)×(ペレット面積)]
【0062】
<単一相>
実施例1~9及び比較例1~5で得られた各酸化物系固体電解質の粉末について、単一相であるか否かを以下の条件により、粉末X線回折法(θ/2θ法)で解析した。得られたX線回折パターンが、
図2に示すような母材料であるLi
3.5Ge
0.5V
0.5O
4のX線回折パターンと同一であり、かつその他のピークの存在が認められなかったものを、単一相であると判断した。具体的には、当該X線回折パターンにおいて、回折ピークが2θ=16°付近、28°付近、及び、35°付近の3箇所に現れているものについて、単一相であると判断した。なお、2θ=16°付近のピークは(200)面の回析ピーク、2θ=28°付近のピークは(020)面の回析ピーク、2θ=35°付近のピークは(002)面の回析ピークにそれぞれ対応する。表1において、単一相であったものを「A」と記載し、単一相でなかったものを「B」と記載した。
・X線回折装置:株式会社リガク製SmartLab
・光源:CuKα線
・電圧:40kV
・電流:30mA
上記製造条件及び試験結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
(評価結果)
実施例1~9の酸化物系固体電解質については、いずれも組成式:LiαGexVyTizO4(式中、3.25≦α≦3.8、0.05≦x≦0.6、0.25≦y≦0.6、且つ、0.04≦z≦0.4である。)で表される組成を有していたが、比較例1~5は当該組成を有していなかった。
このため、実施例1~9に係る酸化物系固体電解質は、上記組成を有さない比較例1~5よりも、イオン伝導度が良好であった。従って、実施例1~9に係る固体電解質を用いた全固体リチウムイオン電池の電池容量の向上が期待できる。