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<図1>
  • 特許-接合体の製造方法および接合体 図1
  • 特許-接合体の製造方法および接合体 図2
  • 特許-接合体の製造方法および接合体 図3
  • 特許-接合体の製造方法および接合体 図4
  • 特許-接合体の製造方法および接合体 図5
  • 特許-接合体の製造方法および接合体 図6
  • 特許-接合体の製造方法および接合体 図7
  • 特許-接合体の製造方法および接合体 図8
  • 特許-接合体の製造方法および接合体 図9
  • 特許-接合体の製造方法および接合体 図10
  • 特許-接合体の製造方法および接合体 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】接合体の製造方法および接合体
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20250312BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
C04B37/02 B
B23K20/00 310H
B23K20/00 310C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021129516
(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023023729
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2024-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000127488
【氏名又は名称】株式会社ウイセラ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】北 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀田 幹則
(72)【発明者】
【氏名】坪田 正道
(72)【発明者】
【氏名】前田 益利
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-081072(JP,A)
【文献】特開2003-002768(JP,A)
【文献】特開2016-145136(JP,A)
【文献】特開2016-145403(JP,A)
【文献】特開2014-196233(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146563(WO,A1)
【文献】特開2019-218260(JP,A)
【文献】特開2016-145137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/02
B23K 20/00 - 20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス部材とコバルト含有金属部材とを有する接合体の製造方法であって、
(ア-1)セラミックス部材の接合面に、アルミニウム含有金属部材を設置する工程であって、前記アルミニウム含有金属部材は、前記セラミックス部材と前記アルミニウム含有金属部材との間に、第1の有機ケイ素系ポリマーが配置されるように設置される、工程と、
(ア-2)前記(ア-1)の工程に引き続き実施される、前記アルミニウム含有金属部材の上にコバルト含有金属部材を設置して、組立体を形成する工程、または
(イ-1)コバルト含有金属部材の接合面に、アルミニウム含有金属部材を設置する工程と、
(イ-2)前記(イ-1)の工程に引き続き実施される、前記アルミニウム含有金属部材の上にセラミックス部材を設置して、組立体を形成する工程であって、前記セラミックス部材は、該セラミックス部材と前記アルミニウム含有金属部材との間に、第1の有機ケイ素系ポリマーが配置されるように設置される、工程、
を有し、
前記(ア-2)の工程または前記(イ-2)の工程の後に、さらに、
(ウ)前記組立体を、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下、430℃以上に加熱する工程、
を有し、
前記第1の有機ケイ素系ポリマーは、主鎖がSi-O-Si基を有し、
前記コバルト含有金属部材は、コバルトを15質量%以上含有する、製造方法。
【請求項2】
前記(ア-2)の工程において、前記コバルト含有金属部材は、前記アルミニウム含有金属部材と前記コバルト含有金属部材との間に、第2の有機ケイ素系ポリマーが配置されるように設置され、または
前記(イ-1)の工程において、前記アルミニウム含有金属部材は、該アルミニウム含有金属部材と前記コバルト含有金属部材との間に、第2の有機ケイ素系ポリマーが配置されるように設置され、
前記第2の有機ケイ素系ポリマーは、主鎖がSi-O-Si基を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2の有機ケイ素系ポリマーは、前記第1の有機ケイ素系ポリマーと同じである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルミニウム含有金属部材は、板状または粉末状であり、
前記アルミニウム含有金属部材が板状の場合、前記(ア-1)の工程において、前記アルミニウム含有金属部材は、前記第1の有機ケイ素系ポリマーを含む液体中に浸漬された後に、前記セラミックス部材の上に設置され
前記アルミニウム含有金属部材が粉末状の場合、前記(ア-1)の工程は、前記セラミックス部材の接合面に、前記第1の有機ケイ素系ポリマーおよび前記アルミニウム含有金属部材を含むスラリーを設置することにより実施される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アルミニウム含有金属部材は、板状または粉末状であり、
前記アルミニウム含有金属部材が板状の場合、前記(イ-1)の工程において、前記アルミニウム含有金属部材は、前記第2の有機ケイ素系ポリマーを含む液体中に浸漬された後に、前記コバルト含有金属部材の上に設置され
前記アルミニウム含有金属部材が粉末状の場合、前記(イ-1)の工程は、前記コバルト含有金属部材の接合面に、前記第2の有機ケイ素系ポリマーおよび前記アルミニウム含有金属部材を含むスラリーを設置することにより実施される、請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記コバルト含有金属部材は、コバルト-鉄-ニッケル系合金部材である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム含有金属部材は、アルミニウムを51質量%以上含有するアルミニウム合金を含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記セラミックス部材は、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ムライト、ジルコニア、フォルステライト、ステアタイト、コージェライト、およびフェライトからなる群から選定される、請求項1乃至のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
セラミックス部材とコバルト含有金属部材との接合体であって、
前記コバルト含有金属部材は、コバルトを15質量%以上含有し、
前記セラミックス部材とコバルト含有金属部材との間には、前記セラミックス部材から近い順に、
アルミニウム-ケイ素-酸素系の酸化物を含む酸化物層と、
アルミニウムおよびコバルトを含む接合層と、
が配置されている、接合体。
【請求項10】
前記接合層の少なくとも一部では、前記コバルト含有金属部材の側に向かって、アルミニウム濃度が低下する一方、コバルト濃度が増加する、請求項に記載の接合体。
【請求項11】
前記コバルト含有金属部材は、コバルト-鉄-ニッケル系合金部材である、請求項または10に記載の接合体。
【請求項12】
前記接合層の厚さの中心位置において、コバルトと鉄とニッケルの合計量は、20質量%以上である、請求項11に記載の接合体。
【請求項13】
さらに、前記酸化物層と前記接合層との間に、アルミニウム含有金属層を有する、請求項乃至12のいずれか一項に記載の接合体。
【請求項14】
前記アルミニウム含有金属層には、アルミニウムおよびコバルトを含有する粒状物が分散されている、請求項13に記載の接合体。
【請求項15】
前記セラミックス部材は、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ムライト、ジルコニア、フォルステライト、ステアタイト、コージェライト、およびフェライトからなる群から選定される、請求項乃至14のいずれか一項に記載の接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体の製造方法および接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、セラミックス部材とコバルト含有金属部材を接合する技術として、いくつかの方法が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、セラミックス部材の予めエッチングされた表面にニッケルめっき層を設置し、めっき層上に銀ろう材を設置した後、この銀ろう剤を介して、セラミックス部材とコバルト系合金部材をろう付けする方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、セラミックス部材とコバルト系合金部材との間にニッケル含有箔を設置した状態で熱処理を行い、セラミックス部材とコバルト系合金部材とを接合させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭60―081072号公報
【文献】特開昭63―060170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の方法では、セラミックス部材の接合面をエッチング処理したり、接合面にめっき処理またはろう付けを施すなど、追加の処理が必要となる。また、これらのめっき処理および/またはろう付けでは、銀およびニッケル等の高価な金属を使用する必要がある。
【0007】
このため、従来の方法では、接合工程を簡略化することが難しい上、コストが上昇するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、より低コストでより簡便に、セラミックス部材とコバルト含有金属部材とを接合することが可能な、接合体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明では、銀および/またはニッケルのような金属を含まない、セラミックス部材とコバルト含有金属部材とが接合された接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、セラミックス部材とコバルト含有金属部材とを有する接合体の製造方法であって、
(ア-1)セラミックス部材の接合面に、アルミニウム含有金属部材を設置する工程であって、前記アルミニウム含有金属部材は、前記セラミックス部材と前記アルミニウム含有金属部材との間に、第1の有機ケイ素系ポリマーが配置されるように設置される、工程と、
(ア-2)前記(ア-1)の工程に引き続き実施される、前記アルミニウム含有金属部材の上にコバルト含有金属部材を設置して、組立体を形成する工程、または
(イ-1)コバルト含有金属部材の接合面に、アルミニウム含有金属部材を設置する工程と、
(イ-2)前記(イ-1)の工程に引き続き実施される、前記アルミニウム含有金属部材の上にセラミックス部材を設置して、組立体を形成する工程であって、前記セラミックス部材は、該セラミックス部材と前記アルミニウム含有金属部材との間に、第1の有機ケイ素系ポリマーが配置されるように設置される、工程、
を有し、
前記(ア-2)の工程または前記(イ-2)の工程の後に、さらに、
(ウ)前記組立体を、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下、430℃以上に加熱する工程、
を有し、
前記第1の有機ケイ素系ポリマーは、主鎖がSi-O-Si基を有し、
前記コバルト含有金属部材は、コバルトを15質量%以上含有する、製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明では、セラミックス部材とコバルト含有金属部材との接合体であって、
前記コバルト含有金属部材は、コバルトを15質量%以上含有し、
前記セラミックス部材とコバルト含有金属部材との間には、前記セラミックス部材から近い順に、
アルミニウム-ケイ素-酸素系の酸化物を含む酸化物層と、
アルミニウムおよびコバルトを含む接合層と、
が配置されている、接合体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、より低コストでより簡便に、セラミックス部材とコバルト含有金属部材とを接合することが可能な、接合体の製造方法を提供することができる。また、本発明では、銀および/またはニッケルのような金属を含まない、セラミックス部材とコバルト含有金属部材とが接合された接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による接合体の断面の一例を模式的に示した図である。
図2】本発明の別の実施形態による接合体の断面の一例を模式的に示した図である。
図3】本発明のさらに別の実施形態による接合体の断面の一例を模式的に示した図である。
図4】本発明の一実施形態による接合体の製造方法のフローを概略的に示した図である。
図5】本発明の別の実施形態による接合体の製造方法のフローを概略的に示した図である。
図6】本発明の一実施形態に係る接合体の断面の一例を示した写真である。
図7】本発明の別の実施形態に係る接合体の断面の一例を示した写真である。
図8】本発明のさらに別の実施形態に係る接合体の断面の一例を示した写真である。
図9図8に示した接合体の断面における線分析結果を示した図である。
図10】本発明のさらに別の実施形態に係る接合体の断面の一例を示した写真である。
図11図10における枠内の部分を拡大して示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
前述のように、これまでに提案されているセラミックス部材とコバルト含有金属部材との接合方法は、低コストで簡便な方法であるとは言い難い。
【0015】
そこで、本願発明者らは、より簡便かつ低コストな方法で、セラミックス部材とコバルト含有金属部材とを適正に接合させる技術について、鋭意研究開発を推進してきた。その結果、本願発明者らは、セラミックス部材とコバルト含有金属部材との間に、有機ケイ素系ポリマーおよびアルミニウム含有金属部材を介在させることにより、セラミックス部材とコバルト含有金属部材を適正に接合させることができることを見出し、本願発明に至った。
【0016】
すなわち、本発明の一実施形態では、
セラミックス部材とコバルト含有金属部材とを有する接合体の製造方法であって、
(ア-1)セラミックス部材の接合面に、アルミニウム含有金属部材を設置する工程であって、前記アルミニウム含有金属部材は、前記セラミックス部材と前記アルミニウム含有金属部材との間に、第1の有機ケイ素系ポリマーが配置されるように設置される、工程と、
(ア-2)前記(ア-1)の工程に引き続き実施される、前記アルミニウム含有金属部材の上にコバルト含有金属部材を設置して、組立体を形成する工程、または
(イ-1)コバルト含有金属部材の接合面に、アルミニウム含有金属部材を設置する工程と、
(イ-2)前記(イ-1)の工程に引き続き実施される、前記アルミニウム含有金属部材の上にセラミックス部材を設置して、組立体を形成する工程であって、前記セラミックス部材は、該セラミックス部材と前記アルミニウム含有金属部材との間に、第1の有機ケイ素系ポリマーが配置されるように設置される、工程、
を有し、
前記(ア-2)の工程または前記(イ-2)の工程の後に、さらに、
(ウ)前記組立体を、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下、430℃以上に加熱する工程、
を有し、
前記第1の有機ケイ素系ポリマーは、主鎖がSi-O-Si基を有し、
前記コバルト含有金属部材は、コバルトを15質量%以上含有する、製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の一実施形態では、
セラミックス部材とコバルト含有金属部材との接合体であって、
前記コバルト含有金属部材は、コバルトを15質量%以上含有し、
前記セラミックス部材とコバルト含有金属部材との間には、前記セラミックス部材から近い順に、
アルミニウム-ケイ素-酸素系の酸化物を含む酸化物層と、
アルミニウムおよびコバルトを含む接合層と、
が配置されている、接合体が提供される。
【0018】
本願において、「コバルト含有金属部材」とは、金属コバルトで構成された部材、またはコバルトを15質量%以上含む合金で構成された部材を意味する。
【0019】
また、「アルミニウム含有金属部材」とは、金属アルミニウムで構成された部材、またはアルミニウムを51質量%以上含む金属部材を意味する。
【0020】
さらに、「アルミニウム含有金属層」とは、アルミニウムを51質量%以上含む層を意味する。ただし、後述するように、「アルミニウム含有金属層」がマトリクスと、該マトリクス中に分散された粒状物を有する場合、「アルミニウム含有金属層」は、マトリクスがアルミニウムを51質量%以上含む構成を有する。
【0021】
一般に、コバルト含有金属部材とセラミックス部材とを直接接合することは難しい。
【0022】
しかしながら、本発明の一実施形態では、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合に、アルミニウム含有金属部材および有機ケイ素系ポリマーが用いられ、これにより、コバルト含有金属部材とセラミックス部材とを適切に接合することができる。
【0023】
本願発明者らの知見によれば、アルミニウムは、コバルトとの間で「接合層」を介して良好な接合を形成し得る。よって、アルミニウム含有金属部材とコバルト含有金属部材も、両者の間に形成されたアルミニウムおよびコバルトを含む接合層を介することにより、相互に接合することができる。
【0024】
また、この接合層は、アルミニウム含有金属部材に含まれる成分、およびコバルト含有金属部材に含まれる成分が相互に拡散することにより構成される。従って、アルミニウム含有金属部材とコバルト含有金属部材とを接触させた状態で、熱処理を実施することにより、両者の間に接合層を形成することができる。また、この接合層を介することにより、アルミニウム含有金属部材とコバルト含有金属部材とを適切に接合することができる。
【0025】
一方、アルミニウム含有金属部材とセラミックス部材の接合に関し、両者を直接接合することは難しい。このため、本発明の一実施形態では、両者の間に、有機ケイ素系ポリマーを介在させる。すなわち、有機ケイ素系ポリマーは、アルミニウム含有金属部材とセラミックス部材との間に良好な接合を形成するために使用される。
【0026】
本願において使用される有機ケイ素系ポリマーは、主鎖が直鎖状のSi-O-Si基を有する。例えば、有機ケイ素系ポリマーは、シロキサン系ポリマーであってもよい。シロキサン系ポリマーの一例は、ポリメチルヒドロシロキサン、およびポリメチルフェニルシロキサン等である。
【0027】
そのような有機ケイ素系ポリマーは、不活性雰囲気下で加熱すると、ケイ素を含む化合物に変化する。このケイ素を含む化合物は、高温環境において、アルミニウム部材およびセラミック部材と結合することができる。
【0028】
従って、高温環境において、セラミック部材とアルミニウム含有金属部材との間に、ケイ素を含む化合物が形成された場合、ケイ素を含む化合物を介して、セラミックス部材とアルミニウム部材を適正に接合することができる。
【0029】
なお、有機ケイ素系ポリマーは、接合処理後に、アルミノシリケートのような、アルミニウム-ケイ素-酸素系の酸化物層となる。本願において、係る酸化物層は、「酸化物層」と称される。
【0030】
以上の効果により、本発明の一実施形態では、セラミックス部材とコバルト含有金属部材とを、適正に接合することができる。
【0031】
なお、以上の説明は、現時点で考察される一メカニズムに基づいて、生じ得る現象を記載したものに過ぎない。すなわち、本発明による接合体の製造方法では、他のメカニズムの結果として、セラミックス部材とコバルト含有金属部材との間に良好な接合が形成されてもよい。
【0032】
このような本発明の一実施形態による接合体の製造方法では、めっき工程のような煩雑な工程が実施されないため、簡便に接合体を製造することができる。また、本発明の一実施形態による接合体の製造方法では、ニッケルおよび/または銀のような高価な金属材料を使用しないため、製造コストを有意に抑制することができる。
【0033】
(本発明の一実施形態による接合体)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による接合体の構成例について、より詳しく説明する。
【0034】
図1には、本発明の一実施形態による接合体(以下、「第1の接合体」と称する)の断面を模式的に示す。
【0035】
図1に示すように、第1の接合体100は、セラミックス部材110とコバルト含有金属部材150とが接合された構造を有する。より具体的には、第1の接合体100は、セラミックス部材110、酸化物層120、アルミニウム含有金属層130、接合層140、およびコバルト含有金属部材150を、この順に積層した構成を有する。
【0036】
前述のように、コバルト含有金属部材150は、コバルトを少なくとも15質量%以上含む合金で構成される。コバルト含有金属部材150は、金属コバルトまたはコバルト合金で構成されてもよい。コバルト合金の一例は、KOVAR(17質量%コバルト-12質量%ニッケル-鉄合金)である。
【0037】
また、アルミニウム含有金属層130は、アルミニウムを51質量%以上含む金属層を意味する。
【0038】
酸化物層120は、アルミノシリケートのようなアルミニウム-ケイ素-酸素系の酸化物層である。
【0039】
接合層140は、少なくともアルミニウムおよびコバルトを含む。接合層140は、さらに、コバルト含有金属部材150に含まれる主要金属元素(コバルトを除く)を含んでもよい。例えば、コバルト含有金属部材150がKOVARの場合、接合層140は、鉄およびニッケルを含んでもよい。また、アルミニウム含有金属層130がケイ素を含む場合、接合層140は、さらにケイ素を含んでもよい。
【0040】
第1の接合体100は、セラミックス部材110とコバルト含有金属部材150の間に、酸化物層120、アルミニウム含有金属層130、および接合層140を有する。前述のように、酸化物層120~接合層140の機能により、セラミックス部材110とコバルト含有金属部材150とを適正に接合することができる。
【0041】
(本発明の別の実施形態による接合体)
次に、図2を参照して、本発明の別の実施形態による接合体の構成例について説明する。
【0042】
図2には、本発明の別の実施形態による接合体(以下、「第2の接合体」と称する)の断面を模式的に示す。
【0043】
図2に示すように、第2の接合体200は、セラミックス部材210、酸化物層220、接合層240、およびコバルト含有金属部材250を、この順に積層した構成を有する。すなわち、第2の接合体200は、第1の接合体100と比べて、アルミニウム含有金属層130が省略された構成を有する。
【0044】
実際には、第2の接合体200は、製造段階において、アルミニウム含有金属層のソースとなるアルミニウム含有金属部材が、酸化物層220および接合層240に取り込まれることにより、図2に示したような構成として形成される。
【0045】
第2の接合体200においても、セラミックス部材210とコバルト含有金属部材250の間には、酸化物層220~接合層240が存在する。従って、第2の接合体200においても、酸化物層220~接合層240による前述の機能により、セラミックス部材210とコバルト含有金属部材250とを適正に接合することができる。
【0046】
(本発明のさらに別の実施形態による接合体)
次に、図3を参照して、本発明のさらに別の実施形態による接合体の構成例について説明する。
【0047】
図3には、本発明のさらに別の実施形態による接合体(以下、「第3の接合体」と称する)の断面を模式的に示す。
【0048】
図3に示すように、第3の接合体300は、セラミックス部材310、酸化物層320、アルミニウム含有金属層330、接合層340、およびコバルト含有金属部材350を、この順に積層した構成を有する。すなわち、第3の接合体300は、第1の接合体100と同様の層構成を有する。
【0049】
ただし、第3の接合体300は、第1の接合体100とは異なり、アルミニウム含有金属層330の内部に複数の粒状物360を含む。換言すれば、アルミニウム含有金属層330は、アルミニウム系金属(金属アルミニウムまたはアルミニウム合金)のマトリクス中に粒状物360が分散された形態を有する。
【0050】
粒状物360の形状は、略球状である場合が多いが、必ずしも球である必要はない。
【0051】
これらの粒状物360は、アルミニウムと、コバルト含有金属部材350に含まれる金属成分とを含む。例えば、コバルト含有金属部材350がKOVARの場合、粒状物360は、アルミニウム、コバルト、鉄およびニッケルを含む組成を有する。
【0052】
また、一部の粒状物360の内部には、針状の析出物が存在する場合がある。本願発明者らの評価によれば、コバルト含有金属部材350がKOVARの場合、アルミニウム含有金属層330に存在するこれらの針状の析出物は、鉄、コバルト、およびニッケルを含む相で構成され、アルミニウムは含有されていないと考えられる。
【0053】
ここで、第3の接合体300においても、セラミックス部材310とコバルト含有金属部材350の間には、酸化物層320、アルミニウム含有金属層330、および接合層340が存在する。従って、第3の接合体300においても、酸化物層320~接合層340による前述の機能により、セラミックス部材310とコバルト含有金属部材350とを適正に接合することができる。
【0054】
(各構成部材について)
次に、本発明の一実施形態による接合体に含まれる各構成部材について、より詳しく説明する。なお、ここでは、一例として、前述の図1に示した第1の接合体100を例に、各構成部材について説明する。従って、各構成部材を表す際には、図1に示した参照符号を使用する。ただし、以下の記載が第2の接合体200および第3の接合体300においても、そのまま、または一部を修正して適用され得ることは、当業者には明らかである。
【0055】
(セラミックス部材110)
セラミックス部材110の材質は、セラミックスである限り、特に限られない。セラミックス部材110は、例えば、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ムライト、ジルコニア、フォルステライト、ステアタイト、コージェライト、およびフェライトからなる群から選定されてもよい。
【0056】
セラミックス部材110の形状は、特に限られない。セラミックス部材110は、例えば、ブロック、板、棒、またはディスク等の形状を有してもよい。
【0057】
(酸化物層120)
酸化物層120は、主として、アルミニウムおよびケイ素を含む酸化物で構成される。酸化物層120は、例えば、アルミノシリケートであってもよい。
【0058】
酸化物層120の厚さは、特に限られないが、例えば、10nm~100μmの範囲であってもよい。
【0059】
(アルミニウム含有金属層130)
アルミニウム含有金属層130は、アルミニウムを51質量%以上含む金属層である。アルミニウム含有金属層130は、アルミニウムに加えて、ケイ素を含んでもよい。
【0060】
前述のように、アルミニウム含有金属層130は、コバルトおよびアルミニウムを含有する粒状物360を含んでもよい(図3参照)。
【0061】
(接合層140)
接合層140は、少なくともアルミニウムおよびコバルトを含む。接合層140は、さらに、コバルト含有金属部材150に含まれるコバルト以外の金属元素を含んでもよい。また、接合層140は、さらに、アルミニウム含有金属層130に含まれるアルミニウム以外の金属元素を含んでもよい。
【0062】
接合層140内の少なくとも一部において、アルミニウムの濃度は、コバルト含有金属部材150の側に向かって、連続的に減少してもよい。同様に、アルミニウム含有金属層130に含まれるアルミニウム以外の金属元素も、コバルトと同様の挙動を示してもよい。例えば、接合層140にケイ素が含まれる場合、ケイ素は、アルミニウムと同様の濃度変化挙動を示してもよい。
【0063】
一方、コバルト濃度は、コバルト含有金属部材150の側に向かって、連続的に増加してもよい。コバルト含有金属部材150に含まれるコバルト以外の金属元素も、コバルトと同様の挙動を示してもよい。
【0064】
また、例えば、コバルト含有金属部材150がKOVARの場合、接合層140の厚さの中心位置において、コバルトと鉄とニッケルの合計量は、20質量%以上であってもよい。
【0065】
(コバルト含有金属部材150)
コバルト含有金属部材150は、コバルト含有量が15質量%以上である限り、その組成は、特に限られない。コバルト含有金属部材150は、例えば、金属コバルト、またはKOVAR(17質量%コバルト-12質量%ニッケル-鉄合金)であってもよい。
【0066】
コバルト含有金属部材150の形状は、特に限られない。コバルト含有金属部材150は、例えば、ブロック、板、棒、またはディスク等の形状を有してもよい。
【0067】
(本発明の一実施形態による接合体の製造方法)
次に、図4を参照して、本発明の一実施形態によるセラミックス部材とコバルト含有金属部材とを有する接合体の製造方法の一例について説明する。
【0068】
図4には、本発明の一実施形態によるセラミックス部材とコバルト含有金属部材とを有する接合体の製造方法(以下、「第1の製造方法」と称する)のフローを概略的に示す。
【0069】
図4に示すように、第1の製造方法は、
(A)セラミックス部材の接合面に、有機ケイ素系ポリマーを設置する工程(工程S110)と、
(B)前記有機ケイ素系ポリマーが設置されたセラミックス部材の上に、アルミニウム含有金属部材を設置する工程(工程S120)と、
(C)前記アルミニウム含有金属部材の上に、第2の有機ケイ素系ポリマーを設置する工程(工程S130)と、
(D)前記第2の有機ケイ素系ポリマーが設置されたアルミニウム含有金属部材の上に、コバルト含有金属部材を設置して、組立体を構成する工程(工程S140)と、
(E)前記組立体を、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下、430℃以上に加熱するステップ(工程S150)と、
を有する。
【0070】
なお、工程S130は、必ずしも必須の工程ではなく、省略されてもよい。
【0071】
以下、各ステップについて詳しく説明する。
【0072】
(工程S110)
この工程は、上記の(ア-1)の前半部分に相当する。
【0073】
まず、セラミックス部材が準備される。
【0074】
セラミックス部材は、特に限られない。セラミックス部材は、例えば、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ムライト、ジルコニア、フォルステライト、ステアタイト、コージェライト、およびフェライトからなる群から選定されてもよい。
【0075】
また、セラミックス部材の形状は特に限られず、セラミックス部材は、ブロック、板、棒、またはディスク等の形状を有してもよい。
【0076】
次に、セラミックス部材の接合面に、有機ケイ素系ポリマーが設置される。
【0077】
有機ケイ素系ポリマーは、主鎖が直鎖状のSi-O-Si基を有するシロキサン系ポリマーから選定される。
【0078】
シロキサン系ポリマーの一例は、ポリメチルヒドロシロキサン、およびポリメチルフェニルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリシルセスキオキサン等である。
【0079】
有機ケイ素系ポリマーの設置方法は、特に限られない。有機ケイ素系ポリマーは、例えば、塗布法などにより、セラミックス部材の接合面に設置されてもよい。塗布法としては、ディッピング法、スピンコーター法、スプレー法等の手法が挙げられる。
【0080】
(工程S120)
この工程は、上記の(ア-1)の後半部分に相当する。
【0081】
次に、有機ケイ素系ポリマーが設置されたセラミックス部材の上に、アルミニウム含有金属部材が設置される。
【0082】
アルミニウム含有金属部材は、アルミニウムを51質量%以上含有する限り、その組成は特に限られない。
【0083】
例えば、アルミニウム含有金属部材は、金属アルミニウム、またはアルミニウム合金であってもよい。アルミニウム合金は、例えば、ケイ素等を含んでもよい。アルミニウム合金は、例えばアルミニウム-Si合金等であっても良く、例えば、ケイ素を12質量%程度含むシルミンであってもよい。
【0084】
アルミニウム含有金属部材の形状は特に限られず、アルミニウム含有金属部材は、ブロック、板、棒、箔、またはディスク等の形状を有してもよい。
【0085】
(工程S130)
この工程は、上記の(ア-2)に含むことができる。
【0086】
次に、アルミニウム含有金属部材の上に、第2の有機ケイ素系ポリマーが設置される。
【0087】
第2の有機ケイ素系ポリマーは、主鎖が直鎖状のSi-O-Si基を有するシロキサン系ポリマーから選定される。
【0088】
第2の有機ケイ素系ポリマーは、第1の有機ケイ素系ポリマーと同じ材料であっても、異なる材料であってもよい。
【0089】
なお、前述のように、工程S130は、必ずしも必須の工程ではない。ただし、本工程を実施した場合、以降の工程S150における熱処理の際に、第2の有機ケイ素系ポリマーが分解して、シラン系ガスが生成される。アルミニウム含有金属部材がこのシラン系ガスと接触すると、アルミニウム含有金属部材の表面の酸化膜が除去され易くなる。そのため、接合処理の際に、アルミニウム含有金属部材の新生表面を露出させることができる。
【0090】
前述のように、アルミニウムとコバルトは、界面に形成された合金層を介することにより、相互に結合される傾向にある。従って、アルミニウム含有金属部材の表面に酸化物があまり存在しない場合、アルミニウム含有金属部材とコバルト含有金属部材を、より強固に接合することができる。
【0091】
(工程S140)
この工程は、上記の(ア-2)の部分に相当する。
【0092】
次に、前記第2の有機ケイ素系ポリマーが設置されたアルミニウム含有金属部材の上に、コバルト含有金属部材が設置され、組立体が構成される。
【0093】
前述のように、コバルト含有金属部材は、15質量%以上のコバルトを含む限り、その組成は特に限られない。
【0094】
コバルト含有金属部材は、例えば、コバルト金属、またはコバルト合金であってもよい。コバルト合金は、例えば、KOVARのような、コバルト-鉄-ニッケル系合金であってもよい。KOVARは、17質量%のコバルトと、12質量%のニッケルと、残りの鉄とを含む合金である。
【0095】
コバルト含有金属部材の形状は特に限られず、コバルト含有金属部材は、ブロック、板、棒、箔、またはディスク等の形状を有してもよい。
【0096】
(工程S150)
この工程は、上記の(ウ)の部分に相当する。
【0097】
次に、接合処理のため、工程S140で構成された組立体が熱処理される。これにより、セラミックス部材とコバルト含有金属部材とが接合された接合体が製造される。
【0098】
熱処理は、実質的に酸素が存在しない雰囲気、例えば不活性ガス雰囲気または真空雰囲気で実施される。熱処理を大気雰囲気のような酸素を含む環境下で実施した場合、アルミニウム含有金属部材の表面の酸化物が十分に還元されなくなる可能性がある。この場合、セラミックス部材とアルミニウム含有金属部材の間、およびアルミニウム含有金属部材とコバルト含有金属部材の間で、良好な接合を得ることが難しくなる可能性がある。
【0099】
不活性ガス雰囲気は、例えば、アルゴン、ヘリウム、および/または窒素などの雰囲気であってもよい。真空雰囲気における真空度は、例えば、大気圧を0MPaとした場合、-0.08MPa以下である。
【0100】
熱処理の温度は、430℃以上である。なお、熱処理の温度は、例えば、700℃以下であることが好ましい。特に、熱処理の温度は、540℃~660℃の範囲であることが好ましい。
【0101】
熱処理の時間は、熱処理温度によって変化するが、例えば、15分~2時間の範囲であってもよい。
【0102】
組立体を熱処理することにより、有機ケイ素系ポリマーが変化して、セラミックス部材とアルミニウム含有金属部材との間に、酸化物層が形成される。
【0103】
通常の場合、酸化物層は、アルミニウム-ケイ素-酸素系の酸化物で構成される。
【0104】
また、組立体を熱処理することにより、アルミニウム含有金属部材とコバルト含有金属部材との間に、接合層が形成される。
【0105】
この接合層は、実質的に、アルミニウム含有金属部材に含まれる成分およびコバルト含有金属部材に含まれる成分が、相互に拡散して構成された「合金層」であり、少なくともアルミニウムおよびコバルトを含む。
【0106】
また、この接合層は少なくとも一部に、アルミニウム濃度およびコバルト濃度が傾斜された傾斜部分を有する。
【0107】
該傾斜部分では、アルミニウム濃度は、コバルト含有金属部材の側に向かって徐々に減少する一方、コバルト濃度は、コバルト含有金属部材の側に向かって徐々に増加する。傾斜部分では、アルミニウム含有金属部材に含まれるアルミニウム以外の金属も、アルミニウムと同様の挙動を示してもよい。また、コバルト含有金属部材に含まれるコバルト以外の金属も、コバルトと同様の挙動を示してもよい。
【0108】
例えば、アルミニウム含有金属部材がケイ素を含む場合、ケイ素の濃度は、コバルト含有金属部材の側に向かって徐々に減少してもよい。また、コバルト含有金属部材がKOVARの場合、接合層の傾斜部分では、鉄濃度およびニッケル濃度は、コバルト含有金属部材の側に向かって徐々に増加してもよい。
【0109】
このように、通常接合層は、アルミニウム含有金属部材およびコバルト含有金属部材の各成分が相互に拡散された合金層として形成される。コバルト含有金属部材がKOVARの場合、接合層の厚さの中央部分では、コバルトと鉄とニッケルの濃度の合計は、20質量%以上であってもよい。
【0110】
なお、熱処理の条件等によっては、組立体に含まれるアルミニウム含有金属部材が完全に消失する場合がある。この場合、酸化物層の直上に接合層が配置された構成が得られる(図2参照)。
【0111】
以上の工程により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材とが良好に接合された接合体が製造される。
【0112】
第1の製造方法では、めっき工程のような煩雑な工程を実施しないため、簡便に接合体を製造することができる。また、第1の製造方法では、ニッケルおよび/または銀のような高価な金属材料を使用しないため、製造コストを有意に抑制することができる。
【0113】
なお、第1の製造方法では、有機ケイ素系ポリマーは、工程S110において、セラミックス部材の上に設置される。また、その後、セラミックス部材の上にアルミニウム含有金属部材が設置される。
【0114】
しかしながら、これとは異なり、アルミニウム含有金属部材の必要箇所に有機ケイ素系ポリマーを設置してから、セラミックス部材の上に、そのようなアルミニウム含有金属部材を設置してもよい。
【0115】
すなわち、有機ケイ素系ポリマーの設置のタイミングは、特に限られず、また有機ケイ素系ポリマーの設置の対象は、セラミックス部材とアルミニウム含有金属部材のいずれの側であってもよい。あるいは、セラミックス部材とアルミニウム含有金属部材の両方に、有機ケイ素系ポリマーを設置してから、両者を重ね合わせてもよい。
【0116】
また、第1の製造方法では、第2の有機ケイ素系ポリマーは、工程S130において、アルミニウム含有金属部材の上に設置される。また、その後、アルミニウム含有金属部材の上にコバルト含有金属部材が設置される。
【0117】
しかしながら、これとは異なり、コバルト含有金属部材の該当箇所に第2の有機ケイ素系ポリマーを設置してから、アルミニウム含有金属部材の上に、そのようなコバルト含有金属部材を設置してもよい。
【0118】
この工程は、上記の(イ-1)、(イ-2)の部分に相当する。
【0119】
すなわち、第2の有機ケイ素系ポリマーの設置のタイミングは、特に限られず、また第2の有機ケイ素系ポリマーの設置の対象は、アルミニウム含有金属部材とコバルト含有金属部材のいずれであってもよい。あるいは、アルミニウム含有金属部材とコバルト含有金属部材の両方に第2の有機ケイ素系ポリマーを設置してから、両者を重ね合わせてもよい。
【0120】
この他にも、各種変更が可能であることは、当業者には明らかである。
【0121】
(本発明の別の実施形態による接合体の製造方法)
次に、図5を参照して、本発明の別の実施形態によるセラミックス部材とコバルト含有金属部材とを有する接合体の製造方法の一例について説明する。
【0122】
図5には、本発明の別の実施形態によるセラミックス部材とコバルト含有金属部材とを有する接合体の製造方法(以下、「第2の製造方法」と称する)のフローを概略的に示す。
【0123】
図5に示すように、第2の製造方法は、
(A)セラミックス部材の接合面に、有機ケイ素系ポリマーとアルミニウム含有金属部材とを含むスラリーを設置する工程(工程S210)と、
(B)前記有機ケイ素系ポリマーとアルミニウム含有金属部材とを含むスラリーの上に、コバルト含有金属部材を設置して、組立体を構成する工程(工程S220)と、
(C)前記組立体を、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下、430℃以上に加熱するステップ(工程S230)と、
を有する。
【0124】
第2の製造方法は、特に、アルミニウム含有金属部材が粒子状の形態の場合に、有意に利用され得る。従って、以下の記載では、アルミニウム含有金属部材が粒子状の形態である場合を例に、各工程について説明する。
【0125】
ただし、第2の製造方法が、ブロック、板、棒、箔、またはディスク等のような形態のアルミニウム含有金属部材においても、同様に適用され得ることは、当業者には明らかである。
【0126】
(工程S210)
この工程は、上記の(ア-1)の部分に相当する。
【0127】
まず、前述の第1の製造方法に示したようなセラミックス部材が準備される。また、アルミニウム含有金属部材が準備される。アルミニウム含有金属部材は、前述のような組成を有してもよい。
【0128】
前述のように、第2の製造方法において使用されるアルミニウム含有金属部材は、粒子状である。粒子状のアルミニウム含有金属部材は、例えば、平均粒径が1μm~500μmの範囲である。平均粒径は、5μm~100μmの範囲であることが好ましい。
【0129】
次に、粒子状のアルミニウム含有金属部材が有機ケイ素系ポリマーと十分に混合され、スラリーが調製される。
【0130】
なお、有機ケイ素系ポリマーが液体の場合は、必ずしも必要ではないが、スラリーを調製する際に、溶媒が使用されてもよい。
【0131】
溶媒としては、例えば、メタノールおよびエタノールのようなアルコール、またはエステルなどの有機溶媒が使用されてもよい。
【0132】
次に、セラミックス部材の接合面に、調製されたスラリーが設置される。
【0133】
スラリーの設置方法は、特に限られない。スラリーは、例えば、スクリーン印刷法のような方法で、セラミックス部材もしくはコバルト含有金属部材の接合面に設置されてもよい。
【0134】
(工程S220)
この工程は、上記の(ア-2)の部分に相当する。
【0135】
次に、セラミックス部材の接合面に塗布されたスラリーの上に、コバルト含有金属部材が設置され、組立体が構成される。
【0136】
(工程S230)
この工程は、上記の(ウ)の部分に相当する。
【0137】
次に、組立体が熱処理され、接合体が製造される。熱処理の条件は、前述の第1の製造方法の場合と同様である。
【0138】
熱処理により、スラリー中に含まれる有機ケイ素系ポリマーが粒子状のアルミニウム含有金属部材と反応して、セラミックス部材とアルミニウム含有金属部材との間に、酸化物層が形成される。前述のように、通常の場合、酸化物層は、アルミニウム-ケイ素-酸素系の酸化物で構成される。
【0139】
また、組立体を熱処理することにより、コバルト含有金属部材のスラリーと接する表面において、コバルトとアルミニウムの相互拡散反応が生じ、前述のような接合層が形成される。
【0140】
さらに、初期のスラリーに含まれていた粒子状のアルミニウム含有金属部材のうち、反応に使用されなかった粒子により、アルミニウム含有金属層が形成される。
【0141】
その結果、酸化物層~接合層を介して、セラミックス部材とコバルト含有金属部材とが接合され、接合体を製造することができる。
【0142】
ここで、第2の製造方法において、粒子状のアルミニウム含有金属部材を使用した場合、前述の図3に示したような構成の接合体が製造される傾向が高くなる。
【0143】
すなわち、アルミニウム含有金属層のマトリクス中に、コバルトおよびアルミニウムを含む粒状物が分散された構造が得られる。
【0144】
このような第2の製造方法においても、第1の製造方法と同様の利点が得られることは、当業者には明らかである。
【0145】
すなわち、第2の製造方法においても、簡便に接合体を製造することができる。また、第2の製造方法では、ニッケルおよび/または銀のような高価な金属材料を使用しないため、製造コストを有意に抑制することができる。
【0146】
なお、第2の製造方法において、工程S210~工程S220の代わりに、コバルト含有金属部材の接合面に、アルミニウム含有金属部材を含むスラリーを設置してから、このスラリーが設置されたコバルト含有金属部材の接合面にセラミックス部材を配置し、組立体を構成してもよい。
【0147】
この工程は、上記の(イ-1)(イ-2)の部分に相当する。
【0148】
以上、第1の製造方法および第2の製造方法を例に、接合体を製造する方法について説明した。しかしながら、以上の説明は、単なる一例に過ぎず、前述の方法の一部を変更したり、他の工程を追加したりしても、同様の効果が得られることは当業者には明らかである。
【0149】
例えば、上記説明では、最初にセラミックス部材を準備し、この上に順次必要な部材を設置することにより、接合体が製造される。しかしながら、これとは逆に、最初にコバルト含有金属部材を準備し、この上に順次必要な部材を設置することにより、接合体が製造されてもよい。
【実施例
【0150】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0151】
(例1)
以下の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0152】
まず、セラミックス部材として、縦20mm×横20mm×厚さ0.32mmの寸法を有するアルミナ板(純度90%以上)を準備した。また、コバルト含有金属部材として、縦15mm×横15mm×厚さ1mmの寸法を有する純コバルト板(ニラコ社製)を準備した。さらに、アルミニウム含有金属部材として、縦10mm×横10mm×厚さ0.1mmの純アルミニウム板(ニラコ社製)板を準備した。
【0153】
次に、ポリシロキサン(KF-54;信越シリコーン製)溶液中にアルミニウム含有金属部材を浸漬させ、アルミニウム含有金属部材の両面に、ポリシロキサンを設置した。
【0154】
次に、セラミックス部材の接合面(縦20mm×横20mmの一つの表面)上に、アルミニウム含有金属部材、およびコバルト含有金属部材をこの順に配置して、組立体を構成した。
【0155】
次に、得られた組立体を熱処理した。熱処理条件は、不活性雰囲気下、700℃、15分とした。これにより、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例1に係る接合体」と称する。
【0156】
例1に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0157】
(例2)
以下の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0158】
セラミックス部材として、縦20mm×横20mm×厚さ0.32mmの寸法を有する窒化ケイ素板(純度90%以上)を用意した。また、コバルト含有金属部材として、縦15mm×横15mm×厚さ1mmの寸法を有する純コバルト板(ニラコ社製)を準備した。さらに、アルミニウム含有金属部材として、縦10mm×横5mm×厚さ0.08mmのシルミン(アルミニウム-12wt%Si合金)板を準備した。
【0159】
次に、ポリシロキサン(YR-3370;モメンティブパフォーマンスジャパン製)をエタノール溶媒に溶解し、溶液を調製した。溶液中のポリシロキサンの濃度は、0.1mol/Lである。
【0160】
次に、この溶液中にアルミニウム含有金属部材を浸漬させ、アルミニウム含有金属部材の両面に、ポリシロキサンを設置した。
【0161】
次に、セラミックス部材の接合面(縦20mm×横20mmの一つの表面)上にアルミニウム含有金属部材、およびコバルト含有金属部材をこの順に配置して、組立体を構成した。
【0162】
次に、得られた組立体を熱処理した。熱処理条件は、不活性雰囲気下、580℃、60分とした。これにより、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例2に係る接合体」と称する。
【0163】
例2に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0164】
(例3)
例1と同様の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0165】
ただし、この例3では、セラミックス部材として、縦10mm×横10mm×厚さ5mmの寸法を有する炭化ケイ素板(純度70%以上)を使用し、コバルト含有金属部材として、縦5mm×横5mm×厚さ3mmの寸法を有するサマリウムコバルト磁石(コバルト含有率66質量%;(株)三徳製)を使用した。
【0166】
組立体の熱処理後に、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例3に係る接合体」と称する。
【0167】
例3に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0168】
(例4)
例3と同様の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0169】
ただし、この例4では、セラミックス部材として、アルミナ板(純度90%以上)を使用し、アルミニウム含有金属部材として、シルミン(アルミニウム-12wt%Si合金)板を使用した。
【0170】
組立体の熱処理後に、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例4に係る接合体」と称する。
【0171】
例4に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0172】
(例5)
例1と同様の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0173】
ただし、この例5では、コバルト含有金属部材として、KOVAR板(コバルト含有量17質量%;ニラコ社製)を使用した。
【0174】
組立体の熱処理後に、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例5に係る接合体」と称する。
【0175】
例5に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0176】
(例6)
例5と同様の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0177】
ただし、この例6では、アルミニウム含有金属部材として、縦10mm×横5mm×厚さ0.08mmの寸法を有するシルミン(アルミニウム-12wt%Si合金)板を使用した。
【0178】
組立体の熱処理後に、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例6に係る接合体」と称する。
【0179】
例6に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0180】
(例7)
例6と同様の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0181】
ただし、この例7では、セラミックス部材として、縦10mm×横10mm×厚さ5mmの寸法を有する炭化ケイ素(純度70%以上)を使用した。
【0182】
組立体の熱処理後に、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例7に係る接合体」と称する。
【0183】
例7に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0184】
(例8)
以下の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0185】
まず、セラミックス部材として、縦20mm×横20mm×厚さ0.32mmの寸法を有するアルミナ板(純度90%以上)を準備した。また、コバルト含有金属部材として、縦15mm×横15mm×厚さ1mmの寸法を有するKOVAR板(コバルト含有量17質量%;ニラコ社製)を使用した。
【0186】
また、アルミニウム含有金属部材は、-63μmのシルミン粉末(アルミニウム-12wt%Si合金、商品名:シルミン合金;三津和化学薬品製)を含むスラリーを用いて作製した。
【0187】
次に、溶媒中にシルミン粉末を添加後、十分に撹拌してスラリーを調製した。溶媒は、ポリシロキサン(YR-3370;モメンティブパフォーマンスジャパン製)を酢酸2-(2-n-ブトキシエトキシ)エチルに溶解させて調製した。スラリー中のシルミン粉末の濃度は、65質量%とした。
【0188】
次に、セラミックス部材の接合面(縦20mm×横20mmの一つの表面)上に前述のスラリーを塗布し、その上にコバルト含有金属部材を設置して、組立体を構成した。
【0189】
次に、得られた組立体を熱処理した。熱処理条件は、不活性雰囲気下、700℃、15分とした。これにより、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例8に係る接合体」と称する。
【0190】
例8に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0191】
(例9)
例8と同様の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0192】
ただし、この例9では、スラリー中のアルミニウム含有金属部材として、アルミニウム粉末(平均粒径5μm、純度99%)を使用した。スラリー中のアルミニウム粉末の濃度は、65質量%とした。
【0193】
組立体の熱処理後に、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例9に係る接合体」と称する。
【0194】
例9に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0195】
なお、ペーストに含まれるアルミニウム粉末の平均粒径を10μmとして、同様の実験を実施したところ、同様の結果が得られた。
【0196】
(例10)
例8と同様の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0197】
ただし、この例10では、セラミックス部材として、縦15mm×横15mm×厚さ2mmの寸法を有するムライト板を使用した。また、スラリー中のアルミニウム含有金属部材として、アルミニウム粉末(平均粒径5μm、純度99%)を使用した。
【0198】
さらに、熱処理条件は、不活性雰囲気下、700℃、60分とした。これにより、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例10に係る接合体」と称する。
【0199】
例10に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0200】
(例11)
例10と同様の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0201】
ただし、この例11では、セラミックス部材として、ジルコニア板を使用した。
【0202】
組立体の熱処理後に、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例11に係る接合体」と称する。
【0203】
例11に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0204】
(例12)
例10と同様の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0205】
ただし、この例12では、セラミックス部材として、フォルステライト板を使用した。
【0206】
組立体の熱処理後に、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例12に係る接合体」と称する。
【0207】
例12に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0208】
(例13)
例10と同様の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0209】
ただし、この例13では、セラミックス部材として、ステアタイト板を使用した。
【0210】
組立体の熱処理後に、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例13に係る接合体」と称する。
【0211】
例13に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0212】
(例14)
例10と同様の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0213】
ただし、この例14では、セラミックス部材として、コージェライト板を使用した。
【0214】
組立体の熱処理後に、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例14に係る接合体」と称する。
【0215】
例14に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0216】
(例15)
例10と同様の方法により、セラミックス部材とコバルト含有金属部材の接合体を製作した。
【0217】
ただし、この例15では、セラミックス部材として、フェライト板を使用した。
【0218】
組立体の熱処理後に、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例15に係る接合体」と称する。
【0219】
例15に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、良好に接合されていた。
【0220】
以下の表1には、各接合体の製造条件をまとめて示した。
【0221】
【表1】
(評価)
各例に係る接合体を用いて、各種評価を実施した。
【0222】
まず、走査型電子顕微鏡を用いて、例2に係る接合体の断面を観察した。
【0223】
図6には、例2に係る接合体の断面の一例を示す。
【0224】
例2に係る接合体の場合、アルミニウム含有金属部材がほぼ消失していることがわかった。すなわち、接合体は、前述の図2に示したような断面構成であり、セラミックス部材、酸化物層、接合層、およびコバルト含有金属部材の順に配置されていることがわかった。
【0225】
酸化物層および接合層には、特にクラックやボイド等の欠陥は認められなかった。
【0226】
簡易元素分析装置により、酸化物層の元素分析を実施した。その結果、酸化物層には、アルミノシリケートの相が存在することがわかった。また、接合層には、アルミニウムとコバルトの双方が含まれていることがわかった。
【0227】
接合層の一部において、アルミニウムの濃度は、コバルト含有金属部材に向かって連続的に減少しており、逆にコバルトの濃度は、コバルト含有金属部材に向かって連続的に増加していることがわかった。
【0228】
例1に係る接合体においても、ほぼ同様の結果が得られた。
【0229】
一方、例5に係る接合体の場合、接合体の層構成は、前述の図1に示したような断面構成であり、セラミックス部材の側から順に、酸化物層、アルミニウム含有金属層、接合層、およびコバルト含有金属部材で構成されていることがわかった。
【0230】
酸化物層および接合層には、特にクラックやボイド等の欠陥は認められなかった。
【0231】
簡易元素分析装置により、酸化物層の元素分析を実施した。その結果、酸化物層には、アルミノシリケートの相が存在することがわかった。また、接合層には、アルミニウムおよびコバルトに加えて、鉄およびニッケルが含まれていることがわかった。
【0232】
接合層の一部において、アルミニウムの濃度は、コバルト含有金属部材に向かって連続的に減少しており、逆にコバルト、鉄、およびニッケルの濃度は、コバルト含有金属部材に向かって連続的に増加していることがわかった。
【0233】
図7には、例6に係る接合体の断面の一例を示す。
【0234】
例6に係る接合体の場合、アルミニウム含有金属部材がほぼ消失していることがわかった。すなわち、接合体は、前述の図2に示したような断面構成であった。
【0235】
酸化物層および接合層には、特にクラックやボイド等の欠陥は認められなかった。
【0236】
簡易元素分析装置により、酸化物層の元素分析を実施した。その結果、酸化物層には、アルミノシリケートの相が存在することがわかった。また、接合層には、アルミニウム、ケイ素、コバルト、鉄およびニッケルが含まれていることがわかった。
【0237】
接合層の一部において、アルミニウムおよびケイ素の濃度は、コバルト含有金属部材に向かって、連続的に減少していた。逆にコバルト、鉄およびニッケルの濃度は、コバルト含有金属部材に向かって、連続的に増加していることがわかった。
【0238】
図8には、例7に係る接合体の断面の一例を示す。
【0239】
例7に係る接合体の場合、接合体の層構成は、前述の図1に示したような断面構成であり、セラミックス部材の側から順に、酸化物層、アルミニウム含有金属層、接合層、およびコバルト含有金属部材で構成されていることがわかった。
【0240】
酸化物層および接合層には、特にクラックやボイド等の欠陥は認められなかった。
【0241】
簡易元素分析装置により、酸化物層の元素分析を実施した。その結果、酸化物層には、アルミノシリケートの相が存在することがわかった。また、接合層には、アルミニウム、ケイ素、コバルト、鉄およびニッケルが含まれていることがわかった。
【0242】
図9には、例7に係る接合体の断面における線分析結果を示す。図において、横軸は、図8内の各断面位置に対応する。例えば、点Aは、アルミニウム含有金属層の厚さの略中心の位置であり、点B1は、アルミニウム含有金属層と接合層の略界面の位置であり、点B2は、接合層の内部の位置であり、点B3は、接合層とコバルト含有金属部材の略界面の位置であり、点Cは、コバルト含有金属部材内の位置である。
【0243】
この結果から、接合層において、少なくとも点B1~点B2の領域では、アルミニウムの濃度は、コバルト含有金属部材に向かって徐々に減少することがわかる。また逆に、同領域において、コバルト、鉄およびニッケルの各濃度は、コバルト含有金属部材に向かって徐々に増加することがわかる。
【0244】
例7に係る接合体において、接合層の厚さの略中央位置(図8における点D参照)における元素濃度分析を実施した。結果を表2に示す。
【0245】
【表2】
接合層の厚さの略中央部分では、コバルト+鉄+ニッケルの含有量は、20質量%を超えることがわかった。
【0246】
図10には、例8に係る接合体の断面の一例を示す。また、図11には、図10の四角で囲った枠内の部分を拡大した写真を示す。
【0247】
例8に係る接合体の場合、接合体の層構成は、前述の図3に示したような断面構成であり、セラミックス部材の側から順に、酸化物層、アルミニウム含有金属層、接合層、およびコバルト含有金属部材で構成されていることがわかった。
【0248】
また、アルミニウム含有金属層には、略球状の粒状物が存在することが確認された。さらに図11に示すように、一部の球状の粒状物の内部には、針状の析出物が形成されていることがわかった。
この略球状の粒状物の元素分析を実施した。結果を以下の表3に示す。
【0249】
【表3】
表3から、略球状の粒状物は、アルミニウム、コバルト、鉄、およびニッケルを含むことが確認された。
【0250】
簡易元素分析装置により、酸化物層の元素分析を実施した。その結果、酸化物層には、アルミノシリケートの相が存在することがわかった。
【0251】
また、接合層には、アルミニウム、ケイ素、コバルト、鉄およびニッケルが含まれていることがわかった。以下の表4には、図10のE点で測定された元素分析結果を示した。
【0252】
【表4】
例8に係る接合体においても、酸化物層および接合層には、特にクラックやボイド等の欠陥は認められなかった。
【0253】
以下の表5には、各例に係る接合体における断面の構造をまとめて示した。
【0254】
【表5】
表5において、「I」は、前述の図1に示したような、アルミニウム含有金属層を含む断面構造を意味する。また、「II」は、前述の図2に示したような、アルミニウム含有金属層が実質的に認められない断面構造を意味し、「III」は、前述の図3に示したような、アルミニウム含有金属層の内部に球状の粒状物が分散された断面構造を意味する。
【0255】
このように、例1~例15に係る接合体において、断面の層構造は3種類存在することがわかった。また、例1~例15に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材は、間の層を介して良好に接合されていることが確認された。
【0256】
なお、簡易元素分析装置による測定から、例2に係る接合体、例7に係る接合体、および例8に係る接合体のそれぞれにおいて、アルミニウム含有金属層内のアルミニウム含有量が51質量%を超えることが確認されている。
【0257】
(例16)
以下の方法により、セラミックス部材の両側にコバルト含有金属部材が配置された接合体を製作した。
【0258】
まず、セラミックス部材として、縦20mm×横20mm×厚さ0.32mmの寸法を有するアルミナ板(純度90%以上)を準備した。また、コバルト含有金属部材として、縦15mm×横15mm×厚さ1mmの寸法を有するKOVAR板(コバルト含有量17質量%;ニラコ社製)を2枚準備した(それぞれ、「コバルト含有金属部材A」および「コバルト含有金属部材B」と称する)。さらに、アルミニウム含有金属部材として、縦10mm×横10mm×厚さ0.1mmの純アルミニウム板(ニラコ社製)板を2枚準備した(それぞれ、「アルミニウム含有金属部材A」および「アルミニウム含有金属部材B」と称する)。
【0259】
次に、アルミニウム含有金属部材Aを第1の溶液中に浸漬させた。また、アルミニウム含有金属部材Bを第2の溶液中に浸漬させた。第1の溶液は、ポリシロキサンK(KF-54;信越シリコーン製)溶液とした。また、第2の溶液は、ポリシロキサンH(H44;ワッカーケミー製)をエタノール溶媒に溶解して調製した。第2の溶液中のポリシロキサンHの濃度は、0.1mol/Lとした。
【0260】
次に、セラミックス部材の一方の接合面(縦20mm×横20mmの面)上に、アルミニウム含有金属部材A、およびコバルト含有金属部材Aをこの順に配置した。また、セラミックス部材の他方の接合面(縦20mm×横20mmの面)上に、アルミニウム含有金属部材B、およびコバルト含有金属部材Bをこの順に設置して、組立体を構成した。
【0261】
次に、得られた組立体を熱処理した。熱処理条件は、不活性雰囲気下、700℃、15分とした。これにより、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例16に係る接合体」と称する。
【0262】
例16に係る接合体において、セラミックス部材とコバルト含有金属部材A、およびセラミックス部材とコバルト含有金属部材Bは、いずれも良好に接合されていた。
【0263】
(例17)
以下の方法により、コバルト含有金属部材の両側にセラミックス部材が配置された接合体を製作した。
【0264】
まず、セラミックス部材として、縦20mm×横20mm×厚さ0.32mmの寸法を有する2枚の窒化ケイ素板(純度90%以上)を準備した(それぞれ、「セラミックス部材A」および「セラミックス部材B」と称する)。また、コバルト含有金属部材として、縦15mm×横15mm×厚さ1mmの寸法を有するKOVAR板(コバルト含有量17質量%;ニラコ社製)を準備した。さらに、アルミニウム含有金属部材として、縦10mm×横10mm×厚さ0.1mmの純アルミニウム板(ニラコ社製)板を2枚準備した(それぞれ、「アルミニウム含有金属部材C」および「アルミニウム含有金属部材D」と称する)。
【0265】
次に、アルミニウム含有金属部材Cおよびアルミニウム含有金属部材Dを、それぞれ、ポリシロキサン(KF-54;信越シリコーン製)溶液中に浸漬させた。
【0266】
次に、コバルト含有金属部材の一方の接合面(縦20mm×横20mmの面)上に、アルミニウム含有金属部材C、およびセラミックス部材Aをこの順に配置した。また、コバルト含有金属部材の他方の接合面(縦15mm×横15mmの面)上に、アルミニウム含有金属部材D、およびセラミックス部材Bをこの順に設置して、組立体を構成した。
【0267】
次に、得られた組立体を熱処理した。熱処理条件は、不活性雰囲気下、700℃、15分とした。これにより、接合体が得られた。以下、この接合体を、「例17に係る接合体」と称する。
【0268】
例17に係る接合体において、コバルト含有金属部材とセラミックス部材A、およびコバルト含有金属部材とセラミックス部材Bは、いずれも良好に接合されていた。
【符号の説明】
【0269】
100 第1の接合体
110 セラミックス部材
120 酸化物層
130 アルミニウム含有金属層
140 接合層
150 コバルト含有金属部材
200 第2の接合体
210 セラミックス部材
220 酸化物層
240 接合層
250 コバルト含有金属部材
300 第3の接合体
310 セラミックス部材
320 酸化物層
330 アルミニウム含有金属層
340 接合層
350 コバルト含有金属部材
360 粒状物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11