(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】通信システム、計算機、通信方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 69/00 20220101AFI20250312BHJP
H04L 47/722 20220101ALI20250312BHJP
【FI】
H04L69/00
H04L47/722
(21)【出願番号】P 2023544916
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2021032313
(87)【国際公開番号】W WO2023032128
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】日比 智也
(72)【発明者】
【氏名】市川 潤紀
(72)【発明者】
【氏名】築島 幸男
(72)【発明者】
【氏名】清水 健司
(72)【発明者】
【氏名】西沢 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 綺泉
(72)【発明者】
【氏名】間野 暢
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-048500(JP,A)
【文献】特開2007-257479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 69/00
H04L 47/722
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ネットワークに接続される複数の計算機を備える通信システムであって、
前記光ネットワークは、主信号通信路と、制御通信路とを含み、
各計算機は、
前記主信号通信路を設定するための
第1の設定情報を、前記制御通信路を介して接続先の計算機に送信する
とともに、前記第1の設定情報の送信と並行して、下位レイヤの前記主信号通信路上に確立される上位レイヤのRDMA(Remote Direct Memory Access)通信路の設定を
制御部に指示する通信部と、
前記
第1の設定情報に基づいて、前記主信号通信路を確立する主信号送受信部
と、
前記指示
を受け付けて、前記RDMA通信路を設定するための第2の設定情報を、前記制御通信路を介して前記接続先の計算機に送信して、前記RDMA通信路を設定する
前記制御部
と、を備える
通信システム。
【請求項2】
前記制御部は、RDMA通信の通信開始タイミングを含む
前記第2の設定情報を送信する
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
接続先の計算機と光ネットワークで接続される計算機であって、
前記光ネットワークは、主信号通信路と、制御通信路とを含み、
前記計算機は、
前記主信号通信路を設定するための
第1の設定情報を、前記制御通信路を介して接続先の計算機に送信する
とともに、前記第1の設定情報の送信と並行して、下位レイヤの前記主信号通信路上に確立される上位レイヤのRDMA(Remote Direct Memory Access)通信路の設定を
制御部に指示する通信部と、
前記
第1の設定情報に基づいて、前記主信号通信路を確立する主信号送受信部
と、
前記指示
を受け付けて、前記RDMA通信路を設定するための第2の設定情報を、前記制御通信路を介して前記接続先の計算機に送信して、前記RDMA通信路を設定する
前記制御部
と、を備える
計算機。
【請求項4】
光ネットワークに接続される複数の計算機を備える通信システムが行う通信方法であって、
前記光ネットワークは、主信号通信路と、制御通信路とを含み、
各計算機は、
前記主信号通信路を設定するための
第1の設定情報を、前記制御通信路を介して接続先の計算機に送信する
とともに、前記第1の設定情報の送信と並行して、下位レイヤの前記主信号通信路上に確立される上位レイヤのRDMA(Remote Direct Memory Access)通信路の設定を
制御部に指示するステップと、
前記
第1の設定情報に基づいて、前記主信号通信路を確立するステップ
と、
前記指示
を受け付けて、前記RDMA通信路を設定するための第2の設定情報を、前記制御通信路を介して前記接続先の計算機に送信して、前記RDMA通信路を設定するステップと、を行う
通信方法。
【請求項5】
請求項3に記載の計算機としてコンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、計算機、通信方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
データセンタ内などの比較的通信距離の短い計算機システム同士のデータ通信において、通信処理速度を高速化するため計算機間でCPUを介さずにメモリにアクセスしてデータ転送を行う、RDMA(Remote Direct Memory Access)技術が用いられている(非特許文献1)。計算機が光導波路により直接、光ネットワークに接続されることで中継ノードにおける信号損失の影響がなくなるため、RDMAの長距離データ通信への適用が可能になる。
【0003】
光通信においては、5Gの普及に伴い、地理的に分散した計算機間で発生する様々な通信要求に応じて、動的に光通信路を設定もしくは削除するための分散制御方法および集中制御方法が研究されている(非特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】IETF, “A Remote Direct Memory Access Protocol Specification”, RFC5040, October 2007
【文献】竹房 あつ子, 「グリッドにおける計算資源と光パスネットワーク資源のコアロケーション実験」, 情報処理学会研究報告 2006-ARC-167 2006-HPC-105
【文献】神野 正彦, 「フォトニックトランスポートネットワーク アーキテクチャと制御管理技術」, NTT技術ジャーナル 2007年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ネットワークを介して接続された計算機システムにおいて、RDMAによるデータ転送の設定を行う場合、一般的な通信方式では下位レイヤから上位レイヤに向けて順番に、レイヤ毎に通信路が確立される。
【0006】
RDMA通信を開始する場合、まず、最下位層のレイヤ1の主信号通信路を確立し、その後、上位レイヤのRDMA通信路を確立する。レイヤ1の主信号通信路を設定するには数分程度の時間を要するが、レイヤ1の設定が完了するのを待ってRDMA通信路が設定される。
【0007】
このため、ユーザからの要求に応じて動的に主信号通信路およびRDMA通信路を確立する場合、RDMA通信が可能になるまでに時間がかかってしまうという課題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、RDMA通信の開始までに要する時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、光ネットワークに接続される複数の計算機を備える通信システムであって、前記光ネットワークは、主信号通信路と、制御通信路とを含み、各計算機は、前記主信号通信路を設定するための設定情報を、前記制御通信路を介して接続先の計算機に送信する通信部と、前記設定情報に基づいて、前記主信号通信路を確立する主信号送受信部と、を備え、前記通信部は、前記設定情報の送信と並行して、RDMA(Remote Direct Memory Access)通信路の設定を指示し、前記指示に基づいて、RDMA通信用のメモリ領域を確保し、前記メモリ領域を含む設定情報を、前記制御通信路を介して前記接続先の計算機に送信して、前記RDMA通信路を設定する制御部を備える。
【0010】
本発明の一態様は、接続先の計算機と光ネットワークで接続される計算機であって、前記光ネットワークは、主信号通信路と、制御通信路とを含み、前記計算機は、前記主信号通信路を設定するための設定情報を、前記制御通信路を介して前記接続先の計算機に送信する通信部と、前記設定情報に基づいて、前記主信号通信路を確立する主信号送受信部と、を備え、前記通信部は、前記設定情報の送信と並行して、RDMA(Remote Direct Memory Access)通信路の設定を指示し、前記指示に基づいて、RDMA通信用のメモリ領域を確保し、前記メモリ領域を含む設定情報を、前記制御通信路を介して前記接続先の計算機に送信して、前記RDMA通信路を設定する制御部を備える。
【0011】
本発明の一態様は、光ネットワークに接続される複数の計算機を備える通信システムが行う通信方法であって、前記光ネットワークは、主信号通信路と、制御通信路とを含み、各計算機は、前記主信号通信路を設定するための設定情報を、前記制御通信路を介して接続先の計算機に送信するステップと、前記設定情報に基づいて、前記主信号通信路を確立するステップと、前記設定情報を送信するステップと並行して、RDMA(Remote Direct Memory Access)通信用のメモリ領域を確保し、前記メモリ領域を含む設定情報を、前記制御通信路を介して前記接続先の計算機に送信して、前記RDMA通信路を設定するステップと、を行う。
【0012】
本発明の一態様は、上記計算機としてコンピュータを機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、RDMA通信の開始までに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態の通信システムの構成図である。
【
図2】比較例の通信路の設定処理を説明するための説明図である。
【
図3】本実施形態の通信路の設定処理を説明するための説明図である。
【
図4】本実施形態の通信路の設定処理を示すシーケンス図である。
【
図5】
図4のS14、S17のメッセージを説明する説明図である。
【
図6】
図4のS31、S32の詳細を示すシーケンス図である。
【
図7】
図2の比較例の通信路の設定処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
<通信システムの構成>
図1は、本発明の実施形態の通信システムのシステム構成図である。本実施形態の通信システムは、光ネットワーク(光伝送路)に接続される複数の計算機1、2を備える。
【0017】
光ネットワークは、制御通信路3と、主信号通信路4とを含む。制御通信路3は、制御信号を伝送する通信路である。主信号通信路4は、レイヤ1(下位レイヤ)の大容量かつ低遅延の通信路である。制御通信路3は常時、設定され、主信号通信路4は、ユーザからの要求に応じて動的に設定されるものとする。
【0018】
計算機1、2は、RDMA(Remote Direct Memory Access)通信によるデータ転送を行う。RDMA通信は、一方の計算機1のメモリから、他方の計算機のメモリへデータをDAM(Direct Memory Access)転送する通信である。RDMA通信では、計算機1、2のオペレーティングシステムを経由せずにデータが転送されるため、高スループットおよび低遅延のデータ転送を実現できる。
【0019】
本実施形態では、レイヤ1の主信号通信路4(OTNプロトコル)の上位レイヤとして、RDMA通信路(RDMAプロトコル)が、計算機1、2にエンド・ツー・エンドで主信号通信路4上に設定される。すなわち、本実施形態の通信システムは、RDMA over レイヤ1伝送を実現する。
【0020】
各計算機1、2は、RDMA通信部11(通信部)と、通信切替部12と、データ記憶部13と、RDMA制御部14(制御部)と、制御信号送受信部15と、主信号送受信部16とを備える。
【0021】
RDMA通信部11は、RDMA通信を行うアプリケーションである。RDMA通信部11は、CPUおよびメモリを用いて実装される。RDMA通信部11は、主信号通信路4の設定および削除を制御する。例えば、計算機1のRDMA通信部11は、主信号通信路4を設定するための設定情報(制御メッセージ)を、制御通信路3を介して接続先の計算機2に送信する。
【0022】
RDMA通信部11は、RDMA通信路の設定および削除を制御する。具体的には、計算機1のRDMA通信部11は、制御通信路3の設定情報の送信と並行して、RDMA通信路の設定をRDMA制御部14に指示する。
【0023】
通信切替部12は、例えばRoot Complex、PCIスイッチなどであって、RDMA通信部11の通信先のデバイスを切り替える。
【0024】
データ記憶部13は、メモリまたはストレージなどであって、各種データを記憶する。データ記憶部13がメモリの場合、RDMA通信部11はデータ記憶部13上で動作する。
【0025】
RDMA制御部14は、RDMA通信によるデータ転送を制御する。RDMA制御部14には、DMA(Direct Memory Access)コントローラを用いることができる。DMAコントローラは、DMA転送を制御する専用のアプリケーション(ICチップ)であって、例えばFPGA NIC(Field Programmable Gate Array Network Interface Card)上に実装される。本実施形態のRDMA制御部14は、RDMA通信部11の指示に基づいて、RDMA通信用のメモリ領域を確保し、メモリ領域を含む設定情報を制御通信路3を介して接続先の計算機2に送信してRDMA通信路を設定する。
【0026】
制御信号送受信部15は、制御信号路3を流れる制御信号を送受信する。制御信号送受信部15には、NIC(Network Interface Card)を用いることができる。
【0027】
主信号送受信部16は、主信号通信路4を流れる主信号を送受信する。主信号送受信部16には、レーザなどを搭載したNICを用いることができる。主信号送受信部16は、主信号通信路4の設定情報に基づいて、主信号通信路4を確立する。
【0028】
<通信路の設定処理>
次に、主信号通信路4およびRDMA通信路の設定処理について説明する。なお、制御通信路3は、あらかじめ設定されているものとする。主信号通信路4およびRDMA通信路の設定処理には、以下の処理A、B、Cが含まれる。処理AおよびBと、処理Cとは、並行して実施可能である。
【0029】
処理A:RDMA通信を行う計算機1、2は、制御通信路3を介して、主信号通信路4を設定するための制御メッセージ(設定要求、設定応答)を送受信する。
【0030】
処理B:計算機1、2は、制御メッセージに基づいて主信号通信路4を設定する。
【0031】
処理C:計算機1、2は、RDMA通信路を設定するための制御メッセージ(設定要求、設定応答)を送受信し、RDMA通信路を設定する。
【0032】
図2は、本実施形態の比較例における、通信路の設定処理を説明するための説明図である。
図2では、処理A、処理B、処理Cの順番で、シーケンシャルに主信号通信路4およびRDMA通信路を設定する。すなわち、レイヤ毎に下位レイヤから上位レイヤに向けて順番に通信路が確立され、主信号通信路4が確立するまで処理CのRDMA通信路の設定は開始されない。比較例では、処理Cは、主信号通信路4を介して行われる。
【0033】
このため、RDMA通信路が確立されるまでの時間は、処理A、処理Bおよび処理Cの各処理時間の合計となり、設定処理の開始からRDMA通信が開始されるまでに長い時間を要する。処理Bの処理時間は、数分程度と長い時間がかかる。
【0034】
図3は、本実施形態の通信路の設定処理を説明するための説明図である。
【0035】
本実施形態では、処理AおよびBと、処理Cとを並行して実施する。制御信号通信路3は、主信号通信路4の設定だけでなくRDMA通信路を設定するためにも使用される。制御通信路3は、主信号通信路4を設定(もしくは削除)するために、あらかじめ確立されている。
【0036】
RDMA通信部11は、主信号通信路4の設定を開始するとともに、RDMA通信路の設定も開始する。これにより、本実施形態では、主信号通信路4の設定と、RDMA通信路の設定を並列処理し、設定処理の開始からRDMA通信が開始されるまでの時間を短くすることができる。
【0037】
図3に示すように、処理Aでは、計算機1のRDMA通信部11は、制御信号送受信部15および制御通信路3を介して接続先の計算機2のRDMA通信部11と、主信号通信路4を設定するための制御メッセージ(設定情報)を送受信する。
【0038】
処理Aの後に行われる処理Bでは、計算機1のRDMA通信部11は、主信号送受信部16を制御して、制御メッセージに基づいて接続先の計算機2と主信号通信路4を確立する。
【0039】
処理Cは、処理Aおよび処理Bと独立して並行に行われる。計算機1のRDMA通信部11は、RDMA通信路の設定指示をRDMA制御部14に送出する。RDMA通信部11は、前記指示に基づいて、RDMA通信用のメモリ領域を確保し、確保したメモリ領域を含む設定情報を、制御通信路3を介して接続先の計算機2に送信する。計算機2のRDMA制御部14は、設定情報に基づいてRDMA通信用のメモリ領域を確保する。これにより、RDMA通信路が設定される。
【0040】
本実施形態では、処理Cは、処理A、Bと並行して行われるため、RDMA通信路が確立されるまでの時間は、処理Aおよび処理Bの各処理時間の合計となり、
図2の比較例よりRDMA通信が開始されるまでの時間を短縮することができる。
【0041】
図4は、
図3に示す本実施形態の通信路の設定処理を示すシーケンス図である。
【0042】
処理AはS12とS13で、処理BはS14~S18で、処理Cは、S31~S33である。制御通信路3は、計算機1、2との間で事前に確立されている(S11)。
【0043】
処理Aにおいて、計算機1のRDMA通信部11は、ユーザの要求を受け付けて、主信号通信路4を設定するための設定情報を含む設定要求(制御メッセージ)を、制御信号送受信部15および制御通信路3を介して計算機2に送信する(S12)。ユーザの要求には、接続先の計算機2のノード識別子が指定されている。
【0044】
主信号通信路4(光パス)の設定または削除は、GMPLS(Generalized Multi Protocol Label Switching)などの分散制御(非特許文献2)、またはSDN(Software Defined Network)もしくはNMS(Network Management SYSTEM)/EMS(Element Management SYSTEM)などの集中制御(非特許文献3)などを用いることができる。
【0045】
GMPLSの分散制御を用いた場合、計算機1が送信する設定情報(設定要求)には、メッセージ識別子(Session ID)、主信号通信路4のローカル端点のノード識別子、主信号通信路4のリモート端点のノード識別子、隣接ホップ/端点識別子、波長ラベル識別子(候補群)、伝送容量などが含まれる。
【0046】
SDNの集中制御を用いた場合、計算機1が集中制御サーバ(不図示)を介して計算機2に送信する設定情報(設定要求)には、メッセージ識別子(Session ID)、主信号通信路4のローカル端点のノード識別子、主信号通信路4のローカル端点としてのインターフェース/端点識別子、主信号通信路のリモート端点のノード識別子、波長ラベル識別子、伝送容量などが含まれる。
【0047】
計算機2のRDMA通信部11は、制御信号送受信部15を介して設定要求を受信し、設定要求に含まれる設定情報に基づいて主信号通信路4を設定する。計算機2のRDMA通信部11は、主信号通信路4の設定情報を含む設定応答(制御メッセージ)を、制御信号送受信部15および制御通信路3を介して計算機1に送信する(S13)。計算機1は、制御信号送受信部15を介して設定応答を受信する。
【0048】
GMPLSの分散制御を用いた場合、計算機2が送信する設定情報(設定応答)には、メッセージ識別子(Session ID)、主信号通信路4のローカル端点のノード識別子、主信号通信路4のリモート端点のノード識別子、隣接ホップ/端点識別子、伝送容量、主信号通信路4として確定した隣接ホップ/端点識別子および波長ラベル識別子などが含まれる。
【0049】
SDNの集中制御を用いた場合、集中制御サーバを介して計算機1に送信される設定情報(設定応答)には、メッセージ識別子(Session ID)、主信号通信路4のローカル端点のノード識別子、主信号通信路4のローカル端点としてのインターフェース/端点識別子、主信号通信路のリモート端点のノード識別子、波長ラベル識別子、伝送容量などが含まれる。
【0050】
処理Bにおいて、計算機1のRDMA通信部11は、設定応答を受信すると、主信号送受信部16に主信号通信路4の起動を指示する(S14)。計算機2のRDMA通信部11は、設定応答を送信後、主信号送受信部16に主信号通信路4の起動を指示する(S15)。計算機1、2の主信号送受信部16は、設定要求および設定応答の設定情報に基づいて、主信号通信路4を確立する(S16)。各主信号送受信部16が起動指示を受け付けてから、実際に主信号通信路4が確立されるまでの時間は、数分程度との長い時間を要する。
【0051】
計算機1、2の各主信号送受信部16は、主信号通信路4の確立後、起動指示に対する応答をRDMA通信部11に送出する(S17、S18)。
【0052】
図5は、
図4のS14およびS17(またはS15およびS18)のRDMA通信部11と主信号送受信部16との間のメッセージを説明する説明図である。
【0053】
RDMA通信部11は、S14、S15の起動指示として、以下の項目を含むメッセージを主信号送受信部16に送出する。
【0054】
・インターフェース 起動
・レーザon
・波長制御on
・変調方式 (例 16QAM/32QAM、QPSK)
・エラー訂正方式(Reed Solumon)
なお、主信号通信路4の停止指示の場合は、上記メッセージは、「インターフェース 停止」、「レーザoff」、「波長制御off」となる。
【0055】
主信号送受信部16は、S17、S18の応答として、主信号通信路4の確立に成功または失敗したかの処理結果を示すメッセージを送出する。
【0056】
図4に戻り、処理Cを説明する。処理Cは、処理Aおよび処理Bと並行して実行される。計算機1のRDMA通信部11は、RDMA通信路の設定指示をRDMA制御部14に送出する。RDMA制御部14は、前記指示に基づいて、RDMA用のメモリを確保するなどの設定を実行し、設定情報を含む設定要求を、制御信号送受信部15および制御通信路3を介して接続先の計算機2に送信する(S31)。
【0057】
計算機2のRDMA制御部14は、制御信号送受信部15を介して設定要求を受信すると、設定要求に含まれる設定情報に基づいて、RDMA用のメモリを確保するなどの設定を実行し、設定情報を含む設定応答を、制御信号送受信部15および制御通信路3を介して計算機1に送信する(S32)。これにより、RDMA通信路が設定される(S33)。
【0058】
なお、計算機1のRDMA通信部11は、S31で計算機2に送信する設定情報に、通信開始タイミングを含めてもよい。具体的には、RDMA通信部11は、RDMA制御部14に対する設定指示に通信開始タイミングを設定し、RDMA制御部14は、通信開始タイミングを含む設定情報を計算機2に送信する。計算機1、2のRDMA通信部11は、通信開始タイミングに基づいて、実際にRDMA通信を開始する。
【0059】
通信開始タイミングは、タイマー情報であって、例えばRDMA通信路の確立時刻+所定時間(固定値)とすることが考えられる。主信号通信路4の確立に要する時間を考慮して所定時間を設定することで、主信号通信路4の確立後にRDMA通信が開始されるようにする。
【0060】
主信号通信路4の確立前にRDMA通信路が確立してRDMA通信が開始されてしまうと、RDMA通信は失敗する。そこで、設定情報に通信開始タイミングを設定することでRDMA通信の失敗を抑制することができる。
【0061】
図6は、
図4のS31、S32のRDMA通信部11とRDMA制御部14の処理の詳細を示すシーケンス図である。
【0062】
計算機1のRDMA通信部11は、送信元アドレスおよび送信先アドレスを取得して(S31-1)、RDMA通信路を設定するための設定指示をRDMA制御部14に送出する(S31-2)。設定指示(例えば“open”)には、以下の指示が含まれる。
【0063】
・SQ(Send Queue)、CQ(Completion Queue)およびQP(Queue Pair)の作成
・仮想メモリアドレスと物理メモリアドレスの対応づけ
・メモリの割当て
RDMA制御部14は、設定指示にしたがってRDMA用のメモリを確保するなどの設定を実行する(S31-3)。そして、RDMA制御部14は、メモリ情報などの設定情報を含む設定要求を、制御通信路3を介して計算機2に送信する(S31-4)。設定要求には、例えば、サービスタイプがRC(Reliable Connection(RC)の場合は“Connect”が用いられ、サービスタイプがUD(Unreliable Datagram)の場合は“mmap”が用いられる。
【0064】
計算機2のRDMA制御部14は、設定要求を受信すると、設定要求にしたがってRDMA用のメモリを確保するなどの設定を実行する(S32-1)。具体的には、RDMA制御部14は、RDMA通信を開始するために以下のような設定を実行する。
【0065】
・RQ(Receive Queue)、CQ(Completion Queue)およびQP(Queue Pair)の作成
・仮想メモリアドレスと物理メモリアドレスの対応づけ
・メモリの割当て
RDMA制御部14は、メモリ情報などの設定情報を含む設定応答を、制御通信路3を介して、計算機1に送信する(S32-2)。計算機1のRDMA制御部14は、設定情報を受信し、当該設定情報をRDMA通信部11に通知する(S32-3)。なお、設定情報には、計算機2でRDMA通信路の設定に成功したか否かのステータスも含まれる。以上により、RDMA通信路が設定される。
【0066】
図4に示す本実施形態では、処理Cは、処理AおよびBと並行して実施される。このため、処理Cの処理時間は、処理AおよびBの処理時間の中に吸収され、RDMA通信が開始されるまでの時間は、処理Aおよび処理Bの各処理時間の合計となる。
【0067】
一方、
図7は、
図2に示す比較例の通信路の設定処理を示すシーケンス図である。図示するシーケンス図では、S12~S13で主信号通信路4を設定するための設定要求を送受信し(処理A)、S14~S18で主信号通信路4を設定し(処理B)、S19~S21でRDMA通信路を設定する(処理C)。すなわち、処理A、B、Cの順番で、シーケンシャルに主信号通信路4とRDMA通信路とが設定される。したがって、RDMA通信路が確立されるまでの時間は、処理A、処理Bおよび処理Cの各処理時間の合計となり、
図4に示す本実施形態より長い時間を要する。
【0068】
<作用効果>
以上説明した本実施形態の通信システムは、光ネットワークに接続される複数の計算機を備える通信システムであって、前記光ネットワークは、主信号通信路4と、制御通信路3とを含み、各計算機1、2は、主信号通信路4を設定するための設定情報を、制御通信路3を介して接続先の計算機に送信するRDMA通信部11と、前記設定情報に基づいて主信号通信路3を確立する主信号送受信部16と、を備え、RDMA通信部11は、前記設定情報の送信と並行して、RDMA通信路の設定を指示し、前記指示に基づいて、RDMA通信用のメモリ領域を確保し、前記メモリ領域を含む設定情報を、制御通信路3を介して接続先の計算機に送信して、RDMA通信路を設定するRDMA制御部14を備える。
【0069】
このように本実施形態では、主信号通信路4の設定と、RDMA通信路の設定とを並行して実施する。これにより、本実施形態では、比較例の通信方式のようにレイヤ1の主信号通信路の確立を待つことなくRDMA通信路の設定を進めることができるため、短い時間でRDMAのデータ通信の開始が可能となる。すなわち、RDMA通信の開始までに要する時間を短縮することができる。
【0070】
本実施形態では、計算機1は、RDMA通信の通信開始タイミングを含む設定情報を接続先の計算機2に送信してもよい。これにより、主信号通信路4の確立前にRDMA通信が開始されてしまうという事態を、回避することができる。
【0071】
<ハードウェア構成>
上記説明した計算機1、2は、例えば、
図8に示すような汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。図示するコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える。メモリ902およびストレージ903は、記憶装置である。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、各計算機1,2の各機能が実現される。
【0072】
また、計算機1、2は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また、計算機1,2は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。計算機用のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1、2:計算機
11:RDMA通信部(通信部)
12:通信切替部
13:データ記憶部
14:RDMA制御部(制御部)
15:制御信号送受信部
16:主信号送受信部
3 :制御通信路
4 :主信号通信路