(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び接着剤
(51)【国際特許分類】
C08G 75/045 20160101AFI20250312BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20250312BHJP
C09J 181/00 20060101ALI20250312BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
C08G75/045
C09J11/06
C09J181/00
H01L21/78 M
(21)【出願番号】P 2021136000
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信幸
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 一希
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-026245(JP,A)
【文献】特開2019-123825(JP,A)
【文献】特開2015-150781(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039486(WO,A1)
【文献】特開2017-125150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/045
C09J 11/06
C09J 181/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリチオール化合物、
(B)
環状構造を複数有する環状カルボジイミド化合物
、
(C)硬化触媒
、及び
(D1)(メタ)アクリレート化合物
を含み、
成分(B)のカルボジイミド基当量数に対する成分(A)のチオール基当量数の比(チオール基当量数/カルボジイミド基当量数)が、2.0~6.0であ
り、
(D1)成分の含有量は、樹脂組成物の総質量に対し、10~60質量%である、
樹脂組成物。
【請求項2】
成分(B)のカルボジイミド基当量数に対する成分(A)のチオール基当量数の比(チオール基当量数/カルボジイミド基当量数)が、2.0~4.0である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B)環状構造を複数有する環状カルボジイミド化合物が、下記一般式(5):
【化5】
で表される環状カルボジイミド化合物であり、
一般式(5)中、Ar
1
~Ar
4
は、それぞれ独立して、芳香族基であり、
Xは、4価の基であり、
qは、1である、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(D2)エポキシ化合物を含む、請求項
1~3
のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む接着剤。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物、又は請求項5に記載の接着剤が硬化された硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化物を含む半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置を含む電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂性組成物、それを含む接着剤、その硬化物、その硬化物を含む半導体装置及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体装置に用いられる電子部品、例えば半導体チップの組み立てや装着には、信頼性の保持等を目的として、硬化性樹脂組成物を含む接着剤、封止材等がしばしば用いられる。
【0003】
このような電子部品用の接着剤や封止材に用いられる樹脂組成物として、例えば、チオール系硬化剤を硬化剤として用いる、エポキシ-チオール系樹脂組成物(特許文献1、2)や、エン-チオール系樹脂組成物(特許文献3)が開示されている。どのタイプの樹脂組成物を使用するかは、接着剤の適用箇所に応じて使い分けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-211969号公報
【文献】特開平6-211970号公報
【文献】特開2014-77024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤の適用箇所が多岐にわたる現状において、様々な用途への対応を見据え、新たな組成のチオール系樹脂組成物が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、新たな組成のチオール系樹脂組成物及び接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、カルボジイミド基は水酸基と反応することから、カルボジイミド基とチオール基も反応すると考えた。そこでさらに検討したところ、カルボジイミド化合物の中から環状カルボジイミド化合物を適切に選択することで、ポリチオール化合物と適切に硬化反応が進み、硬化の際のボイド発生が抑制され、かつ、冷凍下での保存安定性が高い、接着剤として使用し得る新たな組成の樹脂組成物を実現することを見出した。
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
本発明の第一の実施形態は、以下の樹脂組成物である。
(1)(A)ポリチオール化合物、
(B)環状カルボジイミド化合物、及び
(C)硬化触媒
を含み、
成分(B)のカルボジイミド基当量数に対する成分(A)のチオール基当量数の比(チオール基当量数/カルボジイミド基当量数)が、2.0~6.0である、樹脂組成物。
(2)成分(B)のカルボジイミド基当量数に対する成分(A)のチオール基当量数の比(チオール基当量数/カルボジイミド基当量数)が、2.0~4.0である、上記(1)に記載の樹脂組成物。
(3)さらに、(D)前記成分(A)と反応する熱硬化性樹脂モノマー又はプレポリマー化合物を含む、上記(1)又は(2)に記載の樹脂組成物。
(4)前記成分(D)が、(D1)(メタ)アクリレート化合物及び(D2)エポキシ化合物の少なくとも1つを含む、上記(3)に記載の樹脂組成物。
【0009】
本発明の第二の実施形態は、(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の樹脂組成物を含む接着剤である。
本発明の第三の実施形態は、(6)上記(1)~(4)のいずれかに記載の樹脂組成物、又は上記(5)に記載の接着剤が硬化された硬化物である。
本発明の第四の実施形態は、(7)上記(6)に記載の硬化物を含む半導体装置である。
本発明の第五の実施形態は、(8)上記(7)に記載の半導体装置を含む電子部品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第一の実施態様によれば、優れた熱硬化性を有し、硬化の際のボイド発生が抑制され、かつ冷凍下で優れた保存安定性を有する樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の第二の実施態様によれば、優れた熱硬化性を有し、硬化の際のボイド発生が抑制され、かつ冷凍下で優れた保存安定性を有する接着剤を得ることができる。さらに、本発明の第三の実施態様によれば、ボイドが抑制された硬化物を得ることができる。本発明の第四の実施態様によれば、ボイドが抑制された硬化物を含む半導体装置を得ることができる。本発明の第五の実施態様によれば、ボイドが抑制された硬化物を含む半導体装置を含む電子部品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[樹脂組成物]
本発明の第一の実施形態である樹脂組成物は、
(A)ポリチオール化合物、
(B)環状カルボジイミド化合物、及び
(C)硬化触媒
を含み、
成分(B)のカルボジイミド基当量数に対する成分(A)のチオール基当量数の比(チオール基当量数/カルボジイミド基当量数)が、2.0~6.0である。本実施形態によれば、優れた熱硬化性を有し、硬化の際のボイド発生が抑制され、かつ冷凍下で優れた保存安定性を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0012】
(A)ポリチオール化合物
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ポリチオール化合物(以下、「(A)成分」とも言う)を含む。(A)成分は、2以上のチオール基を有していれば、特に限定されない。(A)成分は、3個以上のチオール基を有することが好ましい。(A)成分のチオール当量は、90~150g/eqであることが好ましく、90~140g/eqであることがより好ましく、90~130g/eqであることがさらに好ましい。
【0013】
本実施形態においては、耐湿性の観点から、分子内にエステル結合を有しない(A)ポリチオール化合物を好ましく使用することができる。そのような(A)成分としては、以下の一般式(1)で示されるグリコールウリル化合物が挙げられる。
【0014】
【0015】
一般式(1)中、R1、及びR2は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1~10のアルキル基、又はフェニル基である。nは、0~10の整数である。
【0016】
また、(A)成分は、以下の化学式(2)又は化学式(3)で表される化合物であってもよい。
【0017】
【0018】
【0019】
化学式(2)又は化学式(3)で表される化合物は、(A)成分として、より好ましい化合物である。
【0020】
さらに、分子中にエステル結合等を有しない(A)ポリチオール化合物としては、一般式(4)で示されるポリチオール化合物が挙げられる。
【0021】
【0022】
一般式(4)中、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素又はCnH2nSH(nは2~6)である。さらに、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは、CnH2nSH(nは2~6)である。一般式(4)で示される(A)成分のポリチオール化合物のnは、硬化性の観点から、2~4であることが好ましい。また、このポリチオール化合物は、硬化物物性と硬化速度とのバランスの観点から、nが3であるメルカプトプロピル基であることが、より好ましい。一般式(4)で示される(A)成分は、これ自身が十分に柔軟な骨格を持っているので、硬化物の弾性率を低くしたい場合に有効である。一般式(4)で示される(A)成分を加えることにより、硬化物の弾性率をコントロールできるので、硬化後の接着強度(特に、ピール強度)を高くすることができる。
【0023】
分子内にエステル結合を有しない(A)成分の市販品としては、四国化成工業製チオールグリコールウリル誘導体(品名:TS-G(化学式(2)に相当、チオール当量:100g/eq)、C3 TS-G(化学式(3)に相当、チオール当量:114g/eq))、及び、SC有機化学製チオール化合物(品名:PEPT(一般式(4)に相当、チオール当量:124g/eq))が挙げられる。
【0024】
分子内にエステル結合を有するポリチオール化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、及びトリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)等が挙げられる。
【0025】
分子内にエステル結合を有する(A)成分の市販品としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製:TMMP)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(SC有機化学株式会社製:TEMPIC)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製:PEMP)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製:EGMP-4)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製:DPMP)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製:カレンズMT(登録商標)PE1)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(昭和電工株式会社製:カレンズMT(登録商標)NR1)等が挙げられる。
【0026】
(A)成分としては、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。分子内にエステル結合を有する(A)成分と、分子内にエステル結合を有しない(A)成分とを併用してもよい。
【0027】
(B)環状カルボジイミド化合物
本実施形態の樹脂組成物は、(B)環状カルボジイミド化合物(以下、「(B)成分」とも言う)を含む。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を有する。環状構造は、カルボジイミド基(-N=C=N-)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有する。環状構造中の原子数は、好ましくは8~50、より好ましくは10~30、さらに好ましくは10~20である。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
【0028】
本実施形態で用いられる環状カルボジイミド化合物は、好ましくは、下記一般式(5)で表される環状カルボジイミド化合物である。
【0029】
【0030】
一般式(5)中、Ar1~Ar4は、それぞれ独立して、芳香族基である。芳香族基は炭素数1~6のアルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。芳香族基としてフェニレン基、ナフタレンジイル基などの芳香族基が挙げられる。
【0031】
Ar1~Ar4がフェニル基であると、製膜性が良好となるため好ましい。
【0032】
Xは2価若しくは4価の基である。Xが2価のときqは0で、Xが4価のときqは1である。Xは下記式(5-i)、(5-ii)、(5-iii)、(5-iv)、(5-v)、(5-vi)、(5-vii)のいずれかであることが好ましい。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
式(5-i)中、nは1~6の整数である。(5-i)の基としては、メチレン基、エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,5-ペンタン基、1,6-ヘキサン基が例示される。
【0038】
また、式(5-ii)~(5~v)中、式中、m及びnは、それぞれ独立して、0~4の整数である。m=0のメチレン基は単結合を表すものとする。
【0039】
また、式(5-vi)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基又はアリール基である。炭素数1~6のアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、sec-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、n-ペンチル基、sec-ペンチル基、iso-ペンチル基、n-ヘキシル基、sec-ヘキシル基、iso-ヘキシル基等が例示される。
【0040】
式(5)で表される環状カルボジイミド化合物の中でも、下記一般式(5-0)で表される化合物であることが好ましい。
【0041】
【0042】
一般式(5-0)中、Xは上述した(5-i)、(5-ii)、(5-iii)、(5-iv)、(5-v)、(5-vi)、(5-vii)のいずれかであることが好ましい。Y、Zは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基以外の置換基である。炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基以外の置換基として、従来公知の置換基が適用でき、例えば、炭素数7以上のアルキル基、フェニル基以外のアリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、スルホニルオキシ基、ハロゲノ基、シリル基、ビニル基、フルオロアルキル基、シアノ基、イソニトリル基、アミド基、イミド基、チオール基等が例示される。
【0043】
中でも、下記化学式(5-1)又は下記化学式(5-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0044】
【0045】
【0046】
本実施形態において、成分(B)のカルボジイミド基当量数に対する成分(A)のチオール基当量数の比(チオール基当量数/カルボジイミド基当量数)は、2.0~6.0であり、好ましくは、2.0~4.0である。本明細書中において、カルボジイミド当量やチオール当量などの官能基当量とは、官能基1個当たりの化合物の分子量を表し、カルボジイミド基当量数やチオール基当量数などの官能基当量数とは、化合物質量(仕込み量)当たりの官能基の個数(当量数)を表す。(A)成分のチオール当量は、理論的には、(A)成分の分子量を、1分子中のチオール基の数で割った数になる。実際のチオール当量は、例えば電位差測定によってチオール価を求めることで、決定できる。(B)環状カルボジイミド化合物のカルボジイミド当量は、理論的には、環状カルボジイミド化合物の分子量を、1分子中のカルボジイミド基の数で割った数に等しい。実際のカルボジイミド当量は、例えば、NMRによって測定できる。(A)成分のチオール基当量数は、(A)成分の質量(仕込み量)当たりのチオール基の個数(当量数)であり、(A)ポリチオール化合物の質量(g)を、そのポリチオール化合物のチオール当量で割った商(チオール化合物が複数含まれる場合は、各チオール化合物についてのそのような商の合計)である。(B)成分のカルボジイミド基当量数は、(B)成分の質量(仕込み量)当たりのカルボジイミド基の個数(当量数)であり、(B)環状カルボジイミド化合物の質量(g)を、その環状カルボジイミド化合物のカルボジイミド当量で割った商(環状カルボジイミド化合物が複数含まれる場合は、各環状カルボジイミド化合物についてのそのような商の合計)である。[(A)成分のチオール基当量数]/[(B)成分のカルボジイミド基当量数]を、2.0~6.0の範囲にすることは、これによってカルボジイミド基とチオール基とが一定量以上反応するため、分子架橋が十分に形成され、高い接着強度を発現し易くすることが可能となる。
【0047】
本発明者らは、カルボジイミド基は水酸基と反応することから、カルボジイミド基とチオール基も反応すると考えた。そこでさらに検討したところ、カルボジイミド化合物の中から環状カルボジイミド化合物を適切に選択することで、ポリチオール化合物と適切に硬化反応が進み、硬化の際のボイド発生が抑制され、かつ、冷凍下での保存安定性が高い、接着剤として使用し得る新たな組成の樹脂組成物を実現することを見出した。環状カルボジイミド化合物は、カルボジイミド基を有する環状構造を有することから、それによりカルボジイミド基周辺の立体障害が少なくなり、比較的低温による熱硬化反応が効率的に進み、硬化の際のボイドの発生も抑制されたと考えられる。一方、カルボジイミド基が環状構造中に含まれていない非環状ポリカルボジイミド化合物は、チオール基と反応し得るカルボジイミド基を分子内に複数有しているが、鎖状であるため分子鎖の自由度が大きく、カルボジイミド基は分子鎖の立体障害を受けてしまうため、ポリチオール化合物のチオール基との反応性が低くなったと考えられる。また、このような非環状ポリカルボジイミド化合物は、環状カルボジイミド化合物と異なり、硬化の際にボイドが発生した。これは、このような非環状ポリカルボジイミド化合物は、環状カルボジイミド化合物よりも、耐熱性が劣るため硬化中に分子鎖が切断され、ボイドが発生したと考えられる。また、分子内にカルボジイミド基が一つしか存在しない非環状モノカルボジイミド化合物は、三次元架橋を形成できず、熱により硬化しなかった。
【0048】
[環状カルボジイミド化合物の製造方法]
本実施形態において、環状カルボジイミド化合物の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法(例えば、国際公開第2010/071211号、特開2011-256139号公報に記載の方法など)により製造することができる。例えば、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法が挙げられる。
【0049】
環状カルボジイミド化合物は、市販品を用いてもよい。
【0050】
(C)硬化触媒
本実施形態の樹脂組成物は、(C)硬化触媒(以下、「(C)成分」とも言う)を含む。本実施形態において用いる(C)硬化触媒は、(メタ)アクリレート化合物の硬化触媒であれば特に限定されず、公知のものを使用することができるが、潜在性硬化触媒であることが好ましい。上記(C)成分の潜在性硬化触媒とは、室温では不活性の状態で、加熱することにより活性化して、硬化触媒として機能する化合物であり、例えば、常温で固体のイミダゾール化合物;アミン化合物とエポキシ化合物との反応生成物(アミン-エポキシアダクト系)等の固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化触媒;アミン化合物とイソシアネート化合物又は尿素化合物との反応生成物(尿素型アダクト系)等が挙げられる。
【0051】
常温で固体のイミダゾール化合物としては、例えば、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2-メチルイミダゾリル-(1))-エチル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2′-メチルイミダゾリル-(1)′)-エチル-S-トリアジン・イソシアヌール酸付加物、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール-トリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール-トリメリテイト、N-(2-メチルイミダゾリル-1-エチル)-尿素、N,N′-(2-メチルイミダゾリル-(1)-エチル)-アジボイルジアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化触媒(アミン-エポキシアダクト系)の製造原料の一つとして用いられるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノール、又はグリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p-ヒドロキシ安息香酸、β-ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル;4,4′-ジアミノジフェニルメタンやm-アミノフェノールなどとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルアミン化合物;さらに、エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィンなどの多官能性エポキシ化合物やブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどの単官能性エポキシ化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化触媒のもう一つの製造原料として用いられるアミン化合物は、エポキシ基と付加反応しうる活性水素を分子内に1個以上有し、かつ1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基の中から選ばれた官能基を少なくとも分子内に1個以上有するものであればよい。このような、アミン化合物の例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4′-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタンのような脂肪族アミン類;4,4′-ジアミノジフェニルメタン、2-メチルアニリンなどの芳香族アミン化合物;2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、ピペリジン、ピペラジンなどの窒素原子が含有された複素環化合物;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
また、この中で特に分子内に3級アミノ基を有する化合物は、優れた硬化促進能を有する潜在性硬化触媒を与える原料であり、そのような化合物の例としては、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N-メチルピペラジンなどのアミン化合物や、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール化合物のような、分子内に3級アミノ基を有する1級もしくは2級アミン類;2-ジメチルアミノエタノール、1-メチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-フェノキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、1-ブトキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-(2-ヒドロキ
シ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-β-ヒドロキシエチルモルホリン、2-ジメチルアミノエタンチオール、2-メルカプトピリジン、2-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、4-メルカプトピリジン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、N,N-ジメチルグリシンヒドラジド、N,N-ジメチルプロピオン酸ヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド等のような、分子内に3級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、チオール類、カルボン酸類及びヒドラジド類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化触媒に、さらに、もう一つの製造原料として用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネートなどの単官能イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの多官能イソシアネート化合物;さらに、これら多官能イソシアネート化合物と活性水素化合物との反応によって得られる、末端イソシアネート基含有化合物等も用いることができる。このような末端イソシアネート基含有化合物の例としては、トルイレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物、トルイレンジイソシアネートとペンタエリスリトールとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
また、尿素化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本実施形態に用いることのできる固体分散型潜在性硬化触媒は、例えば、上記の(a)アミン化合物とエポキシ化合物の2成分、(b)この2成分と活性水素化合物の3成分、又は(c)アミン化合物とイソシアネート化合物及び/又は尿素化合物の2成分もしくは3成分の組合せである。これらは、各成分を採って混合し、室温から200℃の温度において反応させた後、冷却固化してから粉砕するか、あるいは、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒中で反応させ、脱溶媒後、固形分を粉砕することにより容易に作製することが出来る。
【0058】
上記の固体分散型潜在性硬化触媒の市販品の代表的な例としては、アミン-エポキシアダクト系(アミンアダクト系)としては、「アミキュアPN-23」(味の素ファインテクノ株式会社品名)、「アミキュアPN-40」(味の素ファインテクノ株式会社品名)、「アミキュアPN-50」(味の素ファインテクノ株式会社品名)、「ハードナーX-3661S」(エー・シー・アール株式会社品名)、「ハードナーX-3670S」(エー・シー・アール株式会社品名)、「ノバキュアHX-3742」(旭化成イーマテリアルズ株式会社品名)、「ノバキュアHX-3721」(旭化成イーマテリアルズ株式会社品名)、「ノバキュアHXA9322HP」(旭化成イーマテリアルズ株式会社品名)、「FXR1121」(T&K TOKA株式会社品名)などが挙げられ、また、尿素型アダクト系としては、「フジキュアFXE-1000」(T&K TOKA株式会社品名)、「フジキュアFXR-1030」(T&K TOKA株式会社品名)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。(C)成分は、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
(C)硬化触媒の含有量は、樹脂組成物の硬化速度及びポットライフの観点から、樹脂組成物の総質量に対して、0.1~40質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましい。
【0060】
(D)成分(A)と反応する熱硬化性樹脂モノマー又はプレポリマー化合物
本実施形態において、樹脂組成物は、さらに、(D)前記成分(A)と反応する熱硬化性樹脂モノマー又はプレポリマー化合物を含むことができる。熱硬化性樹脂モノマー又はプレポリマー化合物としては、(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、フェノール化合物、メラミン化合物、尿素化合物、不飽和ポリエステル化合物、アルキド化合物、ポリウレタン化合物、熱硬化性ポリイミド化合物等を用いることができる。これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。好ましくは、成分(D)は、(D1)(メタ)アクリレート化合物及び(D2)エポキシ化合物の少なくとも1つであり得る。
【0061】
(D1)(メタ)アクリレート化合物
(D1)(メタ)アクリレート化合物(以下、「(D1)成分」とも言う)は、硬化後の樹脂組成物に透明性や適度な硬度を付与することができる。(D1)成分である(メタ)アクリレート化合物は、1以上の(メタ)アクリロイル基を有していれば、特に限定されない。耐熱性を確保する点を考慮すると、2個以上の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物が好ましく、2~6個の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物がより好ましく、2個の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物がさらに好ましい。また、粘度や硬化物物性(接着強度や柔軟性など)の調整のため、2個の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物に加えて、1個の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物を用いることもできる。
【0062】
(D1)(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレート及び/又はジメタクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート及び/又はトリメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート及び/又はトリメタクリレート、又はそのオリゴマー;ペンタエリスリトールトリアクリレート及び/又はトリメタクリレート、又はそのオリゴマー;ジペンタエリスリトールのポリアクリレート及び/又はポリメタクリレート;トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート;アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレート及び/又はポリメタクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレート及び/又はポリメタクリレート;エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート及び/又はエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート;ジヒドロシクロペンタジエチルアクリレート及び/又はジヒドロシクロペンタジエチルメタクリレート、ならびにポリエステルアクリレート及び/又はポリエステルメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジトリメチロールプロパンのポリ(メタ)アクリレート、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート等が挙げられる。反応性の観点から、(D1)成分は、実質的にメタクリレート化合物を含まず、アクリレート化合物であることが好ましい。
(D1)(メタ)アクリレート化合物は、上述した(メタ)アクリレート化合物のうち、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
(D1)成分は、25℃で0.01~80Pa・sの粘度を有していることが、樹脂組成物の調製及びディスペンス性の観点から、好ましい。なお、本明細書中において、粘度は、粘度域に応じて適切な粘度計を用いて、25℃の測定温度で測定した値をいう。
【0064】
(D1)成分の市販品としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製ポリエステルアクリレート(品名:EBECRYL810)、東亜合成株式会社製ポリエステルアクリレート(品名:M7100)、共栄社化学株式会社製ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(品名:ライトアクリレートDCP-A)が挙げられる。(A)成分は、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
(D2)エポキシ化合物
(D2)エポキシ化合物(以下、「(D2)成分」とも言う)は、少なくとも1つのエポキシ基を含む化合物である限り特に限定されない。耐熱性を確保する点を考慮すると、2個以上のエポキシ基を持つ化合物が好ましく、2~6個のエポキシ基を持つ化合物がより好ましく、2個のエポキシ基を持つ化合物がさらに好ましい。
エポキシ化合物は、脂肪族エポキシ化合物と芳香族エポキシ化合物に大別される。
【0066】
脂肪族エポキシ化合物の例としては、
-(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテ
ル、シクロヘキサン型ジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン型ジグリシジルエーテルのようなジエポキシ化合物;
-トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシ化合物;
-ビニル(3,4-シクロヘキセン)ジオキシド、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-5,1-スピロ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-m-ジオキサンのような脂環式エポキシ化合物;
-テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ化合物;
-1,3-ジグリシジル-5-メチル-5-エチルヒダントインのようなヒダントイン型エポキシ化合物;及び
-1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのようなシリコーン骨格を有するエポキシ化合物
などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
前記の例のうち、「シクロヘキサン型ジグリシジルエーテル」とは、2個のグリシジル基が、各々エーテル結合を介して、1個のシクロヘキサン環を母体構造として有する2価の飽和炭化水素基に結合した構造を有する化合物を意味する。「ジシクロペンタジエン型ジグリシジルエーテル」とは、2個のグリシジル基が、各々エーテル結合を介して、ジシクロペンタジエン骨格を母体構造として有する2価の飽和炭化水素基に結合した構造を有する化合物を意味する。脂肪族エポキシ化合物は、そのエポキシ当量が90~450g/eqであるものが好ましい。また、シクロヘキサン型ジグリシジルエーテルとしては、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0068】
芳香族エポキシ化合物は、ベンゼン環等の芳香環を含む構造を有するエポキシ化合物である。ビスフェノールA型エポキシ化合物など、従来頻用されているエポキシ化合物にはこの種のものが多い。芳香族エポキシ化合物の例としては、
-ビスフェノールA型エポキシ化合物;
-p-グリシジルオキシフェニルジメチルトリスビスフェノールAジグリシジルエーテルのような分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ化合物;
-ビスフェノールF型エポキシ化合物;
-ノボラック型エポキシ化合物;
-テトラブロモビスフェノールA型エポキシ化合物;
-フルオレン型エポキシ化合物;
-ビフェニルアラルキルエポキシ化合物;
-1,4-フェニルジメタノールジグリシジルエーテルのようなジエポキシ化合物;
-3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジグリシジルオキシビフェニルのようなビフェニル型エポキシ化合物;
-ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ化合物;及び
-ナフタレン環含有エポキシ化合物
などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びグリシジルアミン型エポキシ化合物が好ましく、中でもそのエポキシ当量が90~200g/eqであるものが特に好ましく、エポキシ当量が110~190g/eqであるものが最も好ましい。
【0069】
(D)成分の含有量は、樹脂組成物の接着強度の観点から、樹脂組成物の総質量に対し10~60質量%であることが好ましく、20~50質量%であることがより好ましい。
【0070】
樹脂組成物は、本実施形態の目的を損なわない範囲で、必要に応じ、溶剤、無機フィラー、安定化剤、カーボンブラック、チタンブラック、イオントラップ剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、揺変剤、粘度調整剤、難燃剤、及び/又はその他の添加剤等をさらに含有してもよい。
【0071】
樹脂組成物は、例えば、(A)成分~(C)成分、必要に応じて(D)成分、及び必要に応じてその他添加剤等を、同時に又は別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合及び/又は分散させることにより、得ることができる。これらの混合、撹拌及び分散等のための装置としては、特に限定されない。この装置として、撹拌及び加熱装置を備えた、ライカイ機、ヘンシェルミキサー、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、及びビーズミル等を使用することができる。また、これらの装置は、適宜に組み合わせられて使用されてもよい。
【0072】
このようにして得られた樹脂組成物は、熱硬化性を有する。樹脂組成物の熱硬化温度は、70~160℃であることが好ましく、低温硬化が求められる場合は、70℃~130℃であることが好ましい。
【0073】
樹脂組成物は、-80℃~0℃の温度で保存することが好ましい。-80℃~0℃で冷凍保存することにより、樹脂組成物の反応が抑制され、樹脂組成物を安定した状態で保存しておくことができる。樹脂組成物は、より好ましくは-80℃~-10℃で保存することが好ましく、さらに好ましくは-80℃~-20℃で保存する。
【0074】
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、部品同士を接合するための接着剤、又はその原料として用いられることができる。
【0075】
[接着剤]
本発明の第二の実施形態である接着剤は、上述の第一の実施形態の樹脂組成物を含む。この接着剤は、エンジニアリングプラスチック、セラミックス、及び金属に対して、良好な接合を可能にし、例えば、半導体装置又は電子部品を構成する部品等の固定、接合、保護に使用することができる。
【0076】
[樹脂組成物又は接着剤の硬化物]
本発明の第三の実施形態の硬化物は、上述の第一実施形態の樹脂組成物又は第二実施形態の接着剤が硬化された硬化物である。
【0077】
[半導体装置、電子部品]
本発明の第四の実施形態の半導体装置は、上述の第三実施形態の硬化物を含むため、高い耐湿性を有する。本発明の第五の実施形態の電子部品は、この第四実施形態の半導体装置を含むため、高い耐湿性を有する。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
【0079】
[実施例1~8、比較例1~5]
表1に示す配合に従って、3本ロールミルを用いて所定の量の各成分を混合することにより、樹脂組成物を調製した。表1において、各成分の量は質量部(単位:g)で表されている。実施例及び比較例において用いた成分は、以下の通りである。
【0080】
・(A)ポリチオール化合物(成分(A))
(A1):下記式で表されるペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(品名:PEMP、SC有機化学製、チオール当量:122g/eq)
【化13】
(A2):式(3)で表されるグリコールウリル誘導体(品名:C3 TS-G、四国化成工業製、チオール当量:114g/eq)
【化14】
(A3):下記式で表されるポリチオール化合物(品名:PEPT、SC有機化学製、チオール当量:124g/eq)
【化15】
(A4):下記式で表されるトリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート)(品名:TMMP、SC有機化学製、チオール当量:133g/eq)
【化16】
・(B)環状カルボジイミド化合物(成分(B))
(B1)式(5-1)の環状カルボジイミド化合物(カルボジイミド当量:256g/eq)
【化17】
・(B’)非環状カルボジイミド化合物
(B’1):非環状ポリカルボジイミド化合物(品名:カルボジライトV-02B、日清紡ケミカル株式会社製、カルボジイミド当量:600g/eq)
(B’2):非環状ポリカルボジイミド化合物(品名:カルボジライトV-04PF、日清紡ケミカル株式会社製、カルボジイミド当量:336g/eq)
(B’3):非環状ポリカルボジイミド化合物(品名:カルボジライトV-05、日清紡ケミカル株式会社製、カルボジイミド当量:262g/eq)
(B’4):下記式のビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド(東京化成工業株式会社製、カルボジイミド当量:363g/eq)(モノカルボジイミド化合物)
【化18】
・(C)硬化触媒(成分(C))
(C1)アミン-エポキシアダクト系潜在性硬化触媒(品名:フジキュアFXR1121、T&K TOKA株式会社製)
・(D)熱硬化性樹脂モノマー又はプレポリマー化合物(成分(D))
(D1):ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(品名:ライトアクリレートDCP-A、共栄社化学社製、アクリロイル当量:188g/eq)
(D2):ビスフェノールF型エポキシ樹脂・ビスフェノールA型エポキシ樹脂混合物(品名:EXA-835LV、DIC株式会社製、エポキシ当量:165g/eq)
【0081】
実施例及び比較例においては、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の特性を、以下のようにして測定した。
【0082】
[硬化性評価]
調製した樹脂組成物の硬化性は、樹脂組成物を1滴滴下し半球状のサンプルとした後、そのサンプルを150℃、120℃の温度において1時間加熱した際の状態を観察することにより評価した。半球状のサンプルが固形であり糸引きもない場合は十分に硬化したと判断して「硬化」とし、半球状のサンプルが固形とならなかった場合又は固形となっても糸引きがあった場合は未硬化と判断して「未硬化」とした。下記表1に測定結果を示す。
【0083】
[保存安定性の評価]
実施例及び比較例の樹脂組成物を、先端が直径5mmのシリンジに入れて、-20℃で24時間、冷凍保存した。冷凍保存後の樹脂組成物を、室温(25℃)で1時間静置した後に、シリンジ先端から樹脂組成物を人力で押し出せるかを確認することで、樹脂組成物の保存安定性を確認した。
【0084】
[硬化物のボイドの評価]
25mm×25mmの離型剤付きガラス上に樹脂組成物を0.2g塗布した。ガラスの両端に100μmのスペーサーを用いて離型剤付きガラスでこの樹脂組成物を挟み込み、クリップで固定した。その後、120℃及び150℃で60分間保持し、硬化をさせた。冷却後ガラスを剥がして、目視でボイドが発生しているかを観察した。
【0085】
【0086】
表1からわかるとおり、(B)環状カルボジイミド化合物を樹脂組成物中に、成分(B)のカルボジイミド基当量数に対する成分(A)のチオール基当量数の比(チオール基当量数/カルボジイミド基当量数)が2.0~6.0の量で含む樹脂組成物は、優れた熱硬化性を有し、硬化の際のボイド発生が抑制され、かつ冷凍下で優れた保存安定性を有するものであった。
実施例1、4、5、6の比較から、樹脂組成物は(B)環状カルボジイミド化合物を含むことにより、(A)ポリチオール化合物の種類によらず、優れた熱硬化性を有し、硬化の際のボイド発生が抑制され、かつ冷凍下で優れた保存安定性を有することがわかる。
(B)環状カルボジイミド化合物ではなくポリカルボジイミド化合物を含む比較例1~3について、比較例1、2は120℃での硬化性が悪く、比較例1~3のいずれも硬化の際にボイドが発生し、比較例3は冷凍保存中に硬化し保存安定性が悪かった。
(B)環状カルボジイミド化合物ではなくモノカルボジイミド化合物を含む比較例4は、120℃及び150℃のいずれにおいても硬化することができなかった。
成分(B)のカルボジイミド基当量数に対する成分(A)のチオール基当量数の比(チオール基当量数/カルボジイミド基当量数)が8.0である比較例5は、120℃及び150℃のいずれにおいても硬化することができなかった。
実施例7、8から、(D)熱硬化性樹脂モノマー又はプレポリマー化合物を併用しても、120℃及び150℃のいずれにおいても硬化し、硬化の際のボイド発生も抑制され、冷凍下での保存安定性を損なう事がないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、優れた熱硬化性を有し、硬化の際のボイド発生が抑制され、かつ冷凍下で優れた保存安定性を有する樹脂組成物であり、接着剤として、非常に有用である。