(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】測定端末装置、傾斜測定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 9/06 20060101AFI20250312BHJP
【FI】
G01C9/06 Z
(21)【出願番号】P 2022551945
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2021034252
(87)【国際公開番号】W WO2022065217
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2020158670
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【氏名又は名称】増田 重之
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】長谷 航記
(72)【発明者】
【氏名】渡部 郷太
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-203713(JP,A)
【文献】特開2011-146313(JP,A)
【文献】特開2014-160471(JP,A)
【文献】特開2018-007959(JP,A)
【文献】登録実用新案第3155862(JP,U)
【文献】特開2009-211433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサと、
ディスプレイ装置と、
一以上のプロセッサと、
一以上のメモリと、
を備えた測定端末装置であって、
前記プロセッサは、
測定対象の壁と前記測定端末装置との接触状態の把握における前記測定端末装置の操作者を補助する第3アシスト情報を前記ディスプレイ装置へ表示させ、
前記壁と平行な面内における前記測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内であるか否かを検出する端末姿勢検出を実施し、
前記端末姿勢検出が実施される際に、前記端末姿勢検出を実施する前記プロセッサを備える前記測定端末装置の操作者を補助する第1アシスト情報であり、前記壁と平行な面内における前記測定端末装置の水平方向に対する傾きを表す第1アシスト情報を前記ディスプレイ装置へ表示させ、
前記壁と平行な面内における前記測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内の場合に、前記加速度センサの測定データに基づき、鉛直方向に対する前記壁の傾斜を測定する壁傾斜測定を実施し、
前記壁傾斜測定の結果を前記メモリへ記憶する測定端末装置。
【請求項2】
前記測定端末装置は、携帯型端末装置である請求項1に記載の測定端末装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記壁と平行な面内における前記測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内とされる状態が一定期間継続された場合に、前記壁傾斜測定を開始する請求項1又は2に記載の測定端末装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記壁傾斜測定を実施する前記プロセッサを備える前記測定端末装置の操作者を補助する第2アシスト情報を前記ディスプレイ装置へ表示させる請求項1から3のいずれか一項に記載の測定端末装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記第2アシスト情報として、前記壁傾斜測定の実施中を表す表示を前記ディスプレイ装置へ表示させる請求項4に記載の測定端末装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第2アシスト情報として、前記壁傾斜測定の完了を表す表示を前記ディスプレイ装置へ表示させる請求項4又は5に記載の測定端末装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第2アシスト情報として、前記壁傾斜測定の再測定の実施を指示する第1ボタンを前記ディスプレイ装置へ表示させる請求項4から6のいずれか一項に記載の測定端末装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記第2アシスト情報として、前記壁傾斜測定の測定結果の記憶を指示する第2ボタンを前記ディスプレイ装置へ表示させる請求項4から7のいずれか一項に記載の測定端末装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記第2アシスト情報として
、前記壁を含む構造物の地理的位置を表す地理的位置情報を前記ディスプレイ装置へ表示させる請求項4から8のいずれか一項に記載の測定端末装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記第2アシスト情報として、前記構造物の構造を表す構造情報を前記ディスプレイ装置へ表示させる請求項9に記載の測定端末装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記第2アシスト情報として、前記構造物におけ
る前記壁の位置を表す測定位置情報を前記ディスプレイ装置へ表示させる請求項9又は10に記載の測定端末装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記第2アシスト情報として、前記壁傾斜測定の測定結果を前記ディスプレイ装置へ表示させる請求項4から11のいずれか一項に記載の測定端末装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記第2アシスト情報として
、前記壁について壁傾斜測定の実施を指示する第3ボタンを前記ディスプレイ装置へ表示させる請求項4から12のいずれか一項に記載の測定端末装置。
【請求項14】
加速度センサ、ディスプレイ装置、一以上のプロセッサ、及び一以上のメモリを備えた測定端末装置を用いて鉛直方向に対する測定対象の壁の傾斜を測定する傾斜測定方法であって、
前記壁と前記測定端末装置との接触状態の把握における前記測定端末装置の操作者を補助する第3アシスト情報を前記ディスプレイ装置へ表示させ、
前記壁と平行な面内における前記測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内であるか否かを検出する端末姿勢検出を実施し、
前記端末姿勢検出が実施される際に、前記端末姿勢検出を実施する前記プロセッサを備える前記測定端末装置の操作者を補助する第1アシスト情報であり、前記壁と平行な面内における前記測定端末装置の水平方向に対する傾きを表す第1アシスト情報を前記ディスプレイ装置へ表示させ、
前記壁と平行な面内における前記測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内の場合に、前記加速度センサの測定データに基づき、鉛直方向に対する前記壁の傾斜を測定する壁傾斜測定を実施し、
前記壁傾斜測定の結果を前記メモリへ記憶する傾斜測定方法。
【請求項15】
加速度センサ、ディスプレイ装置、一以上のプロセッサ、及び一以上のメモリを備えた測定端末装置を用いて測定対象の壁の鉛直方向に対する傾斜を測定するプログラムであって、
前記測定端末装置として機能するコンピュータに、
前記壁と前記測定端末装置との接触状態の把握における前記測定端末装置の操作者を補助する第3アシスト情報を前記ディスプレイ装置へ表示させる機能、
前記壁と平行な面内における前記測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内であるか否かを検出する端末姿勢検出を実施する機能、
前記端末姿勢検出が実施される際に、前記端末姿勢検出を実施する前記プロセッサを備える前記測定端末装置の操作者を補助する第1アシスト情報であり、前記壁と平行な面内における前記測定端末装置の水平方向に対する傾きを表す第1アシスト情報を前記ディスプレイ装置へ表示させる機能、
前記壁と平行な面内における前記測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内の場合に、前記加速度センサの測定データに基づき、鉛直方向に対する前記壁の傾斜を測定する壁傾斜測定を実施する機能、及び
前記壁傾斜測定の結果を前記メモリへ記憶する機能を実現させるプログラム。
【請求項16】
非一時的かつコンピュータ読取可能な記録媒体であって、請求項15に記載のプログラムが記録された記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定端末装置、傾斜測定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
罹災証明書の発行を目的とする被害認定調査における一要素として、住家等の傾斜に基づく被害認定がある。一般に、住家等の傾斜を測定する際に、調査員は下げ振りと呼ばれるツールを使用する。
【0003】
下げ振りを使用して調査員が住家等の傾斜を測定する際の問題として、以下の(1)から(3)に記載の事項が挙げられる。
【0004】
(1)住家等の傾斜を測定する際に、下げ振りを固定する人員及び計測値を確認する人員が必要であり、二人以上の人員が必要となる。
【0005】
(2)下げ振りは一般的なツールではなく、下げ振りの使用方法の習得及び住家等の傾斜に基づく被害程度の判断基準の習得など、学習コストが発生する。
【0006】
(3)大規模災害の直後などの時期は、下げ振り自体の不足が発生し、代替品を使用して住家等の傾斜を測定する事態が生じ得る。代替品を使用する場合は測定データの信頼性の低下が懸念される。
【0007】
一方、スマートデバイスにインストールされるアプリケーションソフトウェアを実行し、スマートデバイスを使用して建物の傾斜角を測定する技術が知られている。非特許文献1は、被害認定調査の際に、スマートデバイスのアプリケーションソフトウェアを使用して、建物の傾斜角を測定し、測定結果を撮影する旨が記載される。
【0008】
特許文献1は、建物被災度判定技術が記載される。同文献には、地震の加速度を検出するセンサとして、スマートデバイス及びパーソナルコンピュータ等に内蔵される加速度センサが例示される。
【0009】
特許文献2は、二個の加速度センサを用いて重力加速度の変化を測定し、加速度センサの測定データを用いて物体の傾斜角を測定するセンサモジュールが記載される。同文献には、センサモジュールとして、携帯電話等のスマートデバイスの加速度センサを適用し得る旨が記載される。
【0010】
非特許文献1は、被害認定調査における具体的な手順及び調査方法等が記載されている。同文献の記載に基づき、被害認定調査が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2019-015684号公報
【文献】特開2016-017792号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】災害に係る住家被害認定業務 実施体制の手引き 令和2年3月 内閣府(防災担当) 126ページ、127ページ、129ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、スマートデバイス等の測定端末装置に適用される建物の傾斜測定用のアプリケーションソフトウェアは、使用方法の習得が必要であり、様々な能力の調査員が用いるには不便である。すなわち、スマートデバイス等にインストールされるアプリケーションソフトウェアは、上記した問題(2)を解決していない。
【0014】
特許文献1に記載の加速度センサは、地震が発生した際の加速度を検出するものであり、同文献には住家等の傾斜測定に関する記載又は示唆はない。特許文献2は、センサモジュールの適用例として、携帯電話等のスマートデバイスが例示されているが、スマートデバイスにインストールされるアプリケーションソフトウェアを用いた傾斜測定に関する具体的な記載はない。
【0015】
同様に、非特許文献1にも、スマートデバイスにインストールされるアプリケーションソフトウェアを用いた傾斜測定に関する具体的な記載はない。すなわち、上記した先行技術文献のいずれにも、上記の問題(2)の解決に寄与する記載又は示唆はない。
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、測定端末装置を使用して安定的な住家等の傾斜測定を実現し、かつ、誰にでも簡単に住家等の傾斜測定を実施し得る、測定端末装置、傾斜測定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0018】
本開示に係る測定端末装置は、加速度センサと、ディスプレイ装置と、一以上のプロセッサと、一以上のメモリと、を備えた測定端末装置であって、プロセッサは、測定対象の壁と平行な面内における測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内であるか否かを検出する端末姿勢検出を実施し、端末姿勢検出が実施される際に、端末姿勢検出を補助する第1アシスト情報をディスプレイ装置へ表示させ、壁と平行な面内における測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内の場合に、加速度センサの測定データに基づき、鉛直方向に対する壁の傾斜を測定する壁傾斜測定を実施し、壁傾斜測定の結果をメモリへ記憶する測定端末装置である。
【0019】
本開示に係る測定端末装置によれば、測定対象の壁と平行な面内における測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内であるか否かを検出する端末姿勢検出において、端末姿勢検出を補助する第1アシスト情報がディスプレイ装置へ表示される。これにより、操作者は、端末姿勢検出を実施する際に第1アシスト情報を参照でき、測定端末装置を使用して安定的な住家等の傾斜測定を実現し、かつ、誰にでも簡単に住家等の傾斜測定を実施し得る。また、第1アシスト情報を視認した操作者は、測定端末装置の姿勢を維持すべきか若しくは測定端末装置の姿勢を変えるべきかを判断し得る。
【0020】
他の態様に係る測定端末装置において、第1アシスト情報として、壁と平行な面内における測定端末装置の水平方向に対する傾きをディスプレイ装置へ表示させる。
【0021】
かかる態様によれば、操作者は、端末姿勢検出を実施する際に、ディスプレイ装置へ表示される、壁と平行な面内における測定端末装置の水平方向に対する傾きを参照し得る。
【0022】
他の態様に係る測定端末装置において、プロセッサは、壁と平行な面内における測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内とされる状態が一定期間継続された場合に、壁傾斜測定を開始する。
【0023】
かかる態様によれば、端末姿勢検出が実施された後に、自動的に壁傾斜測定を開始し得る。
【0024】
他の態様に係る測定端末装置において、プロセッサは、壁傾斜測定を補助する第2アシスト情報をディスプレイ装置へ表示させる。
【0025】
かかる態様によれば、操作者は、壁傾斜測定の際に、第2アシスト情報を参照し得る。
【0026】
他の態様に係る測定端末装置において、プロセッサは、第2アシスト情報として、壁傾斜測定の実施中を表す表示をディスプレイ装置へ表示させる。
【0027】
かかる態様によれば、操作者は、第2アシスト情報に基づき、壁傾斜測定の実施中を把握し得る。
【0028】
他の態様に係る測定端末装置において、プロセッサは、第2アシスト情報として、壁傾斜測定の完了を表す表示をディスプレイ装置へ表示させる。
【0029】
かかる態様によれば、操作者は、第2アシスト情報に基づき、壁傾斜測定の完了を把握し得る。
【0030】
他の態様に係る測定端末装置において、プロセッサは、第2アシスト情報として、壁傾斜測定の再測定の実施を指示する第1ボタンをディスプレイ装置へ表示させる。
【0031】
かかる態様によれば、操作者は、第1ボタンを操作して、再測定の実施を指示し得る。
【0032】
かかる態様において、複数の壁について壁傾斜測定を実施する場合、壁ごとの測定の際に表示される画面において、再測定の実施を指示する第1ボタンをディスプレイ装置へ表示させ得る。
【0033】
かかる態様において、複数の壁について壁傾斜測定を実施する場合、複数の壁の測定の全体を表す画面において、再測定の実施を指示する第1ボタンをディスプレイ装置へ表示させ得る。
【0034】
他の態様に係る測定端末装置において、プロセッサは、第2アシスト情報として、壁傾斜測定の測定結果の記憶を指示する第2ボタンをディスプレイ装置へ表示させる。
【0035】
かかる態様によれば、操作者は、第2ボタンを操作して、測定結果の記憶を指示し得る。
【0036】
他の態様に係る測定端末装置において、プロセッサは、第2アシスト情報として、測定対象の壁を含む構造物の地理的位置を表す地理的位置情報をディスプレイ装置へ表示させる。
【0037】
かかる態様によれば、操作者は、地理的位置情報に基づき、測定対象の壁を含む構造物の地理的位置を把握し得る。
【0038】
構造物の地理的表示は、住居表示を適用し得る。
【0039】
他の態様に係る測定端末装置において、プロセッサは、第2アシスト情報として、構造物の構造を表す構造情報をディスプレイ装置へ表示させる。
【0040】
かかる態様によれば、操作者は、構造情報に基づき、測定対象の壁を含む構造物の構造を把握し得る。
【0041】
構造物の構造の例として、構造物が住家等の建築物の場合、木構造及び鉄筋コンクリート構造等の建築構造が挙げられる。
【0042】
他の態様に係る測定端末装置において、プロセッサは、第2アシスト情報として、構造物における測定対象の壁の位置を表す測定位置情報をディスプレイ装置へ表示させる。
【0043】
かかる態様によれば、操作者は、測定位置情報に基づき、住家等の測定対象における具体的な測定位置を把握し得る。
【0044】
他の態様に係る測定端末装置において、プロセッサは、第2アシスト情報として、壁傾斜測定の測定結果をディスプレイ装置へ表示させる。
【0045】
かかる態様によれば、操作者は、壁傾斜測定の測定結果を把握し得る。
【0046】
他の態様に係る測定端末装置において、プロセッサは、第2アシスト情報として、測定対象の壁について壁傾斜測定の実施を指示する第3ボタンをディスプレイ装置へ表示させる。
【0047】
かかる態様によれば、操作者は、第3ボタンを操作して、壁傾斜測定の実施を指示し得る。
【0048】
他の態様に係る測定端末装置において、プロセッサは、壁と測定端末装置との接触を補助する第3アシスト情報をディスプレイ装置へ表示させる。
【0049】
かかる態様によれば、操作者は、第3アシスト情報に基づき、測定対象の壁と測定端末装置との接触状態を把握し得る。
【0050】
本開示に係る傾斜測定方法は、加速度センサ、ディスプレイ装置及び一以上のメモリを備えた測定端末装置を用いて鉛直方向に対する測定対象の壁の傾斜を測定する傾斜測定方法であって、測定対象の壁と平行な面内における測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内であるか否かを検出する端末姿勢検出を実施し、端末姿勢検出が実施される際に、端末姿勢検出を補助する第1アシスト情報をディスプレイ装置へ表示させ、壁と平行な面内における測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内の場合に、加速度センサの測定データに基づき、鉛直方向に対する壁の傾斜を測定する壁傾斜測定を実施し、壁傾斜測定の結果をメモリへ記憶する傾斜測定方法である。
【0051】
本開示に係る傾斜測定方法によれば、本開示に係る測定端末装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る測定端末装置の構成要件は、他の態様に係る傾斜測定方法の構成要件へ適用し得る。
【0052】
本開示に係るプログラムは、加速度センサ、ディスプレイ装置及び一以上のメモリを備えた測定端末装置を用いて測定対象の壁の鉛直方向に対する傾斜を測定するプログラムであって、コンピュータに、測定対象の壁と平行な面内における測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内であるか否かを検出する端末姿勢検出を実施する機能、端末姿勢検出が実施される際に、端末姿勢検出を補助する第1アシスト情報をディスプレイ装置へ表示させる機能、壁と平行な面内における測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内の場合に、加速度センサの測定データに基づき、鉛直方向に対する壁の傾斜を測定する壁傾斜測定を実施する機能、及び壁傾斜測定の結果をメモリへ記憶する機能を実現させるプログラムである。
【0053】
本開示に係るプログラムによれば、本開示に係る測定端末装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る測定端末装置の構成要件は、他の態様に係るプログラムの構成要件へ適用し得る。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、測定対象の壁と平行な面内における測定端末装置の水平方向に対する傾きが規定範囲内であるか否かを検出する端末姿勢検出において、端末姿勢検出を補助する第1アシスト情報がディスプレイ装置へ表示される。これにより、操作者は、端末姿勢検出を実施する際に第1アシスト情報を参照でき、測定端末装置を使用して安定的な住家等の傾斜測定を実現し、かつ、誰にでも簡単に住家等の傾斜測定を実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図2】
図2は調査対象の住家における主要四隅の具体例を示す説明図である。
【
図4】
図4は測定対象の壁に対する測定端末装置の設置状態を示す説明図である。
【
図5】
図5は隅を構成する二つの壁を鉛直方向について上から見た模式図である。
【
図6】
図6は実施形態に係る測定端末装置の外観を示す測定端末装置の正面図である。
【
図7】
図7は
図6に示す測定端末装置の機能ブロック図である。
【
図8】
図8は実施形態に係る被害程度判定方法の手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は測定端末装置へ適用される軸の説明図である。
【
図12】
図12は水平方向に対する測定端末装置の姿勢調整が実施されない場合の説明図である。
【
図13】
図13は調査実施中画面が表示されるディスプレイの正面図である。
【
図14】
図14は判定結果表示画面が表示されるディスプレイの正面図である。
【
図15】
図15は設置調整画面が表示されるディスプレイの正面図である。
【
図16】
図16は測定中画面が表示されるディスプレイの正面図である。
【
図17】
図17は測定完了画面が表示されるディスプレイの正面図である。
【
図19】
図19は測定端末装置が適用される被害認定調査システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、添付図面に従って本発明の実施の形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0057】
[被害認定調査の概要]
地震等の災害に起因して被災した住家等について、被害の程度を証明する罹災証明書が交付される前提として、住家等の被害状況を調査する被害認定調査が実施される。被害認定調査には、住家等の一階部分の外壁の四隅又は四隅の柱を測定し、単純平均した傾斜の導出が含まれる。
【0058】
図1は壁の傾斜測定の模式図である。同図には、測定端末装置10を用いて、調査員Pが調査対象の住家1における外壁である壁20の傾斜測定を実施している状態が図示される。
【0059】
図2は調査対象の住家における主要四隅の具体例を示す説明図である。同図には、調査対象の住家1を平面視した図を示す。同図には調査対象の住家1における主要四隅となる隅22の例を示す。
【0060】
図3は主要四隅の例を示す説明図である。同図は調査対象の住家1を上から見た図を示す。同図に示す隅22A、隅22B、隅22C及び隅22Dのそれぞれは、主要四隅を構成する隅22の例である。
図3の隅22A、隅22B、隅22C及び隅22Dのそれぞれに付した矢印線は、隅22A、隅22B、隅22C及び隅22Dのそれぞれの傾斜を表す。
【0061】
図4は測定対象の壁に対する測定端末装置の設置状態を示す説明図である。
図4に示す壁20は、主要四隅における任意の隅を構成する二つの壁のいずれか一方である。
図1に示す調査員Pが使用する測定端末装置10は、傾斜測定アプリケーションソフトウェアがインストールされており、調査員Pは、測定端末装置10を測定対象の壁20へ接触させ、傾斜測定アプリケーションソフトウェアを実行して、鉛直方向に対する壁20の角度θを測定する傾斜測定を実施する。
【0062】
図4には、壁20に対して測定端末装置10の裏面を設置し、鉛直方向に対する壁20の傾斜を測定する例を示す。
図4に示す二本の一点鎖線は、水平面における直交する二方向を表す。また、同図に示す水平面を表す二本の一点鎖線と直交する一点鎖線は、鉛直方向を表す。
【0063】
なお、測定端末装置10の裏面は、測定端末装置10のディスプレイ102が搭載される表面の反対の側の面である。
図4では測定端末装置10の裏面の符号の図示を省略する。測定端末装置10の裏面は符号10Bを付して
図9に示す。
【0064】
壁20に対して測定端末装置10の側面を設置させる場合、壁20に対する測定端末装置10の設置状態が安定せず、正確な壁20の傾斜測定が困難になる。なお、直方体形状の測定端末装置10における側面は、表面と裏面との間に挟まれた面のうち、相対的に長い二つの面である。
【0065】
一方、
図4に示すように、壁20に対して測定端末装置10の裏面を設置させる場合は、壁20に対する測定端末装置10の設置状態が安定し、正確な壁20の傾斜測定を実施し得る。
【0066】
図5は隅を構成する二つの壁を鉛直方向について上から見た模式図である。測定対象の住家における主要四隅の傾斜の測定では、隅22を構成する二つの壁20A及び壁20Bのそれぞれについて傾斜の度合いが測定される。
【0067】
壁20Aの傾斜の度合いと壁20Bの傾斜との度合いとをベクトルとして合算し、隅22の傾斜値が算出される。大半の住家の隅22を構成する壁20Aと壁20Bとがなす角度は、直角と近似することができる。隅22を構成する壁20A及び壁20Bの傾斜は、それぞれの正接の値を利用し、三平方の定理を適用して導出し得る。
【0068】
[測定端末装置の構成例]
図6は実施形態に係る測定端末装置の外観を示す測定端末装置の正面図である。測定端末装置10は、スマトフォン及びタブレット端末等のスマートデバイスが適用される。
図6には測定端末装置10の表面10Aを示す。
【0069】
測定端末装置10は、ディスプレイ102、マイクロフォン104、スピーカ106及びカメラ108を備える。ディスプレイ102、マイクロフォン、スピーカ106及びカメラ108は、フレーム100に搭載される。
【0070】
測定端末装置10は、電源ボタン110及び操作ボタン112を備える。電源ボタン110及び操作ボタン112は、フレーム100の一方の側面に搭載される。測定端末装置10は、入出力ポート120を備える。入出力ポート120は、フレーム100に内蔵される。
【0071】
ディスプレイ102は、デタッチパネル方式の液晶パネルが適用される。ディスプレイ102は、各種情報及びソフトウェアボタンが表示される。ディスプレイ102は、表示装置及び操作装置として機能する。
【0072】
マイクロフォン104は、音声等の音を取得し、音を表す電気信号を生成する。スピーカ106は電気信号を音へ変換し、電気信号を表す音を出力する。カメラ108は、光学像を電気信号へ変換し、光学像を表す電気信号を生成する。光学像を表す電気信号は画像及び画像信号と呼ばれる。
【0073】
電源ボタン110は、操作者の操作に応じて、電源オンを表す電気信号及び電源オフを表す電気信号を出力する。操作ボタン112は、操作者の操作に応じて、ディスプレイ102のオンを表す電気信号及びディスプレイ102のオフを表す電気信号を出力する。
【0074】
図7は
図6に示す測定端末装置の機能ブロック図である。測定端末装置10は、一以上のプロセッサ200及び一以上のメモリ202を備える。プロセッサ200はプログラムを実行して、測定端末装置10の各種の機能を実現する。
図7に示すプロセッサ200に具備される各部は、プロセッサ200が実現する各種の機能に対応する。
【0075】
メモリ202は、測定端末装置10に適用される各種のデータが記憶される。メモリ202は、測定端末装置10に適用される各種のデータが記憶される。メモリ202は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などの半導体記憶媒体を適用し得る。メモリ202は、ハードディスクなどの磁気記憶媒体を適用してもよい。
【0076】
測定端末装置10は、加速度センサ204を備える。加速度センサ204は互いに直交する三方向における加速度を測定する三軸加速度センサが適用される。加速度センサ204から出力される測定データを表す信号は、プロセッサ200へ送信される。
【0077】
プロセッサ200は、住家情報取得部219を備える。住家情報取得部219は、入出力ポート120を介して、測定端末装置10の外部から送信される調査対象の住家の住所、構造等の調査対象の住家に関連する住家情報を取得する。住家情報はメモリ202へ記憶される。なお、実施形態に記載の住家は構造物の一例である。実施形態に記載の住所は地理的位置を表す地理的位置情報の一例である。
【0078】
プロセッサ200は、設置適正確認部220を備える。設置適正確認部220は、加速度センサ204から送信される測定データを取得し、加速度センサ204の測定データをディスプレイ102へ表示させる。
【0079】
設置適正確認部220は、加速度センサ204の測定データに基づき、測定端末装置10の姿勢を検出し、測定端末装置10の姿勢をディスプレイ102へ表示させる。調査員は、ディスプレイ102へ表示される加速度センサ204の測定データ及び測定端末装置10の姿勢を確認し、測定端末装置10に具備される加速度センサ204の任意の一軸と、水平方向とを一致させて、測定端末装置10の姿勢を水平方向に対して平行に調整し得る。
【0080】
すなわち、設置適正確認部220は、測定端末装置10の壁20への設置をアシストする第1アシスト情報として、加速度センサ204の測定値及び水平方向に対する測定端末装置10の姿勢を表示させる。水平方向に対する測定端末装置10の姿勢は、水平方向に対する加速度センサ204の任意の一軸の角度が適用される。
【0081】
プロセッサ200は、傾斜計算部222を備える。傾斜計算部222は、加速度センサ204の測定データを取得し、加速度センサ204の測定データに基づき、測定対象の壁20の鉛直方向に対する傾斜を表す傾斜指標値を計算する。傾斜計算部222は、壁20ごとの計算結果をメモリ202へ記憶する。傾斜計算部222は、壁20ごとの計算結果をディスプレイ102へ表示させる。
【0082】
傾斜計算部222は、調査対象の住家における主要四隅のそれぞれについて、
図2に示す隅22を構成する二つの壁20A及び壁20Bについて傾斜指標値を算出し、壁20A及び壁20Bの傾斜指標値に基づき、隅22ごとの傾斜値を計算する。
【0083】
傾斜計算部222は、隅22ごとに計算される傾斜値をメモリ202へ記憶する。傾斜計算部222は、隅22ごと傾斜値をディスプレイ102へ表示させる。
【0084】
プロセッサ200は、被害程度判定部224を備える。被害程度判定部224は、メモリ202から隅22ごとの傾斜値を読み出し、判定ルールを参照して、隅22ごとの傾斜値に基づく調査対象の住家における被害程度判定結果を導出する。被害程度判定部224は、被害程度判定結果をメモリ202へ記憶する。
【0085】
プロセッサ200は、電源ボタン110及び操作ボタン112から送信される信号を受信し、受信した信号に応じて、測定端末装置10の各部を動作させる。プロセッサ200は、マイクロフォン104から送信される音声信号を取得し、受信した音声信号を規定の規格に適応する無線信号へ変換し、無線信号を外部へ送信する。
【0086】
スピーカ106は、プロセッサ200から送信される音声信号を取得し、取得した音声信号を音声へ変換し、音声を出力する。なお、ここでいう音声は、アラーム音及びビープ音などを含み得る。
【0087】
カメラ108は、被写体を表す光学像を電気信号へ変換し、被写体の画像を生成する。プロセッサ200はカメラ108から送信される画像をメモリ202へ記憶させる。また、プロセッサ200は、カメラ108から送信される画像をディスプレイ102へ送信する。ディスプレイ102は、プロセッサ200から送信される画像を表示する。ここで、画像という用語は、画像自体及び画像を表す電気信号である画像データの意味を含み得る。
【0088】
[各種の処理部及び各種の制御部のハードウェア構成]
各種の処理を実施する処理部のハードウェアは、各種のプロセッサを適用し得る。なお、処理部はprocessing unitと呼ばれる場合があり得る。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、PLD(Programmable Logic Device)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が含まれる。
【0089】
CPUは、プログラムを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサである。PLDは、製造後に回路構成を変更可能なプロセッサである。PLDの例として、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。ASICは、特定の処理を実施させるために専用に設計された回路構成を有する専用電気回路である。
【0090】
一つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの一つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。例えば、一つの処理部は、複数のFPGA等を用いて構成されてもよい。一つの処理部は、一つ以上のFPGA及び一つ以上のCPUを組み合わせて構成されてもよい。
【0091】
また、一つのプロセッサを用いて複数の処理部を構成してもよい。一つのプロセッサを用いて複数の処理部を構成する例として、一つ以上のCPUとソフトウェアとを組み合わせて一つのプロセッサを構成し、一つプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。かかる形態は、クライアント端末装置及びサーバ装置等のコンピュータに代表される。
【0092】
他の構成例として。複数の処理部を含むシステム全体の機能を一つのICチップを用いて実現するプロセッサを使用する形態が挙げられる。かかる形態は、システムオンチップ(System On Chip)などに代表される。なお、ICはIntegrated Circuitの省略語である。また、システムオンチップは、System On Chipの省略語を用いてSoCと記載される場合がある。
【0093】
このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記した各種のプロセッサを一つ以上用いて構成される。更に、各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0094】
[壁傾斜測定方法の手順]
図8は実施形態に係る被害程度判定方法の手順を示すフローチャートである。
図1に示す調査員Pは、測定端末装置10を操作し、
図7に示すプロセッサ200を用いて被害程度判定に適用されるプログラムを実行する。
【0095】
住家情報取得工程S10では、プロセッサ200は調査対象の住家における住家情報を取得する。プロセッサ200は、調査員Pが測定端末装置10を操作して入力した住家情報を取得してもよいし、予め、記憶されている住家情報を取得してもよい。住家情報取得工程S10の後にデバイス設置工程S12へ進む。
【0096】
デバイス設置工程S12では、
図5に示す設置適正確認部220は、測定対象の壁20に対する測定端末装置10の姿勢を検出し、測定端末装置10の姿勢をディスプレイ102へ表示させる。
【0097】
調査員は、測定対象の壁20に対して、測定端末装置10の広い面である裏面10Bを接触させて、測定端末装置10を設置する。調査員は、測定対象の壁20に対して、測定端末装置10の裏面10Bの全面を接触させるとよい。デバイス設置工程S12の後に、設置調整工程S14へ進む。
【0098】
なお、実施形態に記載のデバイス設置工程S12における、測定端末装置10の姿勢の検出は、測定対象の壁と平行な面内において水平方向に対する測定端末装置の傾きが規定範囲内であるか否かを検出する端末姿勢検出の一例である。また、同工程における、測定端末装置10の姿勢のディスプレイ102への表示は、第3アシスト情報のディスプレイ装置への表示の一例である。
【0099】
設置調整工程S14では、設置適正確認部220は測定端末装置10の設置状態が調整される。設置調整工程S14では、設置適正確認部220は測定端末装置10の壁20への設置をアシストする第1アシスト情報をディスプレイ102へ表示させる。
【0100】
調査員Pは、ディスプレイ102へ表示される第1アシスト情報を参照して、手動で測定端末装置10の姿勢を水平方向に対して平行に調整し得る。設置調整工程S14の後に傾斜測定工程S16へ進む。なお、実施形態に記載の設置調整工程S14における測定端末装置10の設置状態の検出は、端末傾斜検出の一例である。
【0101】
傾斜測定工程S16では、傾斜計算部222は加速度センサ204から測定データを取得し、加速度センサ204の測定データに基づき、測定対象の壁20の鉛直方向に対する傾斜指標値を計算する。なお、実施形態に記載の傾斜測定工程S16における壁20の傾斜指標値の計算は、壁傾斜測定の一例である。
【0102】
また、傾斜計算部222は、壁20の傾斜指標値に基づき、隅22の傾斜値を計算し、隅22ごとに傾斜値を記憶する。傾斜測定工程S16では、壁20の傾斜測定を補助する第2アシスト情報が、ディスプレイ102へ表示される。第2アシスト情報の詳細は後述する。傾斜測定工程S16の後に全箇所測定完了判定工程S18へ進む。
【0103】
全箇所測定完了判定工程S18では、傾斜計算部222は調査対象の住家における主要四隅について、傾斜値が得られたか否かを判定する。全箇所測定完了判定工程S18において、傾斜計算部222が傾斜値が得られていない隅22があると判定する場合はNo判定となる。No判定の場合はデバイス設置工程S12へ進み、全箇所測定完了判定工程S18においてYes判定となるまで、デバイス設置工程S12から全箇所測定完了判定工程S18のそれぞれをくり返し実施する。
【0104】
一方、全箇所測定完了判定工程S18において、傾斜計算部222が主要四隅の全てについて傾斜値が得られたと判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は被害程度判定工程S20へ進む。
【0105】
被害程度判定工程S20では、被害程度判定部224は主要四隅の傾斜値に基づき、調査対象の住家の被害程度判定結果を導出する。被害程度判定部224はメモリ202へ被害程度判定結果を記憶する。被害程度判定部224はディスプレイ102へ被害程度判定結果を表示させる。
【0106】
被害程度判定工程S20において、調査対象の住家における被害程度判定結果が導出されると、プロセッサ200は被害程度判定方法の手順を終了させる。なお、実施形態に記載の住家情報取得工程S10から全箇所測定完了判定工程S18までの各工程は、傾斜測定方法の構成要素の一例である。
【0107】
[壁傾斜測定の詳細な説明]
次に、測定端末装置10を用いて実施される壁20の傾斜測定について詳細に説明する。
図9は測定端末装置へ適用される軸の説明図である。
図9に示すα、β及びγは、
図7に示す加速度センサ204が測定可能な三軸を表す。
【0108】
測定端末装置10の表面10A及び裏面10Bと平行な面において、互いに直交する二軸の一方をα軸とし、他方をβ軸とする。表面10A及び裏面10Bと直交する軸をγ軸とする。
【0109】
図8に示す設置調整工程S14では、測定端末装置10を壁20へ設置する際に、測定端末装置10は、加速度センサ204のα軸の測定値がゼロとなる姿勢であり、加速度センサ204のα軸と水平方向とを一致させる姿勢に調整される。
【0110】
図10は壁傾斜測定の説明図である。
図11は
図10を壁の正面から見た図である。測定端末装置10に具備される加速度センサ204は、重力加速度gのβ軸成分g
β及び重力加速度gのγ軸成分g
γを測定する。上記した測定端末装置10の姿勢の調整において、重力加速度gのα軸成分g
αはゼロに調整されている。鉛直方向に対する壁20がなす角度をθとすると、tanθ=g
β/g
γと表される。すなわち、角度θは鉛直方向に対する壁20の傾斜を表す。
【0111】
測定端末装置10は、加速度センサ204に作用する重力加速度gを、壁20の面内における壁20と水平面に対して平行な面との交線に対して直交する方向の成分であるβ軸方向と、壁20の法線方向であるγ軸方向とに分散させて、壁20の傾斜指標値を正確に算出し得る。
【0112】
なお、図示の都合上、重力加速度gのβ軸成分g
β及び重力加速度gのγ軸成分g
γは始点が異なる平行なベクトルとして図示したが、両者は始点が同一の平行なベクトルである。同様に、
図12に示す、重力加速度gのγ軸成分g
γ及び重力加速度gのα軸成分g
αと重力加速度gのβ軸成分g
βとの合成ベクトルも、始点が同一の平行なベクトルである。
【0113】
図12は水平方向に対する測定端末装置の姿勢調整が実施されない場合の説明図である。設置調整工程S14において、加速度センサ204のα軸と水平方向とを一致させる測定端末装置10の姿勢調整が実施されない場合、加速度センサ204は重力加速度gのα軸成分g
αの測定値としてゼロ以外の値が得られる。
【0114】
壁20の傾斜指標値を計算する際に、重力加速度gのα軸成分gαと重力加速度gのβ軸成分gβとを合成して、重力加速度gの測定端末装置の表面10Aと平行な方向の成分を計算し、重力加速度gのα軸成分gαと重力加速度gのβ軸成分gβとの合成成分及び重力加速度gのγ軸成分gγを用いて、鉛直方向に対する壁20がなす角度をθが導出される。
【0115】
すなわち、加速度センサ204のα軸と水平方向とを一致させる測定端末装置10の姿勢調整が実施される場合は、加速度センサ204のα軸と水平方向とを一致させる測定端末装置10の姿勢調整が実施されない場合と比較して、重力加速度gのα軸成分gαと重力加速度gのβ軸成分gβとを合成する処理が不要となる。これにより、演算の負荷が低減化され得る。
【0116】
[測定端末装置に適用されるアシスト表示の具体例]
図13から
図17を用いて、測定端末装置10へ適用されるアシスト情報について説明する。アシスト情報は、測定端末装置10を用いて実施される調査対象の住家の被害認定調査、被害認定調査における主要四隅の傾斜値の算出及び壁20の傾斜測定を補助する。アシスト情報は、ディスプレイ102へ表示される。
【0117】
図13は調査実施中画面が表示されるディスプレイの正面図である。
図13には被害認定調査の実施中を表す調査実施中画面300を示す。調査実施中画面300は、調査対象の住家の住所を表す住所情報302、調査対象の住家の構造を表す構造情報304が含まれる。
【0118】
住所情報302は、都道府県及び市区町村等の行政区間を含む住居表示を適用し得る。構造情報304は、木構造及び鉄筋コンクリート構造等の建築構造を適用し得る。住所情報302及び構造情報304は文字情報が適用される。
【0119】
また、調査実施中画面300は、調査対象の住家における主要四隅を模式的に表す主要四隅情報306、主要四隅の測定データを表す測定データ情報308及び操作ボタン310が含まれる。
【0120】
主要四隅情報306の数字1が表示される隅は、
図3に示す隅22Aに対応する。主要四隅情報306の数字2、数字3及び数字4が表示される隅は、
図3に示す隅22B、隅22C及び隅22Dに対応する。
【0121】
主要四隅情報306は、測定データが得られた隅22に対して反転表示が適用される。また、主要四隅情報306は、測定データが得られた隅22に対して、測定データを模式的に表す矢印線及び測定データの値が追加される。なお、実施形態に記載の主要四隅情報306は、測定対象の壁の位置を表す測定位置情報の一例である。
【0122】
測定データ情報308は、主要四隅のそれぞれにおける測定データが表示される。第1隅の測定データは、主要四隅情報306の数字1が表示される隅の測定データに対応する。第2隅の測定データ、第3隅の測定データ及び第4隅の測定データは、それぞれ、主要四隅情報306の数字2、数字3及び数字4が表示される隅の測定データに対応する。
【0123】
操作ボタン310は主要四隅のそれぞれに対応する四つのボタンが含まれる。操作ボタン310は、測定の開始を指令するボタンが適用される。操作ボタン310は測定データが取得される隅22について再測定の開始を指令するボタンを適用してもよい。
【0124】
なお、実施形態に記載の操作ボタン310は、測定対象の壁について壁傾斜測定の実施を指示する第3ボタンの一例であり、測定済みの測定対象の壁について壁傾斜測定の再測定の実施を指示する第4ボタンの一例である。
【0125】
図14は判定結果表示画面が表示されるディスプレイの正面図である。同図に示す判定結果表示画面320は、調査対象の住家の被害認定調査を補助する。判定結果表示画面320は、
図13に示す調査実施中画面300に対して、判定結果情報322が追加される。
図14には、判定結果情報322として全壊を表す文字情報が表示される判定結果表示画面320を図示する。
【0126】
図13に示す調査実施中画面300及び
図14に示す判定結果表示画面320において、壁傾斜測定の実施又は壁傾斜測定の再測定の実施を指令する操作ボタン310が操作されると、壁傾斜測定を補助するアシスト表示がディスプレイ102へ表示される。なお、
図13及び
図14に示す各種の情報は、第2アシスト情報の一例である。
【0127】
図15は設置調整画面が表示されるディスプレイの正面図である。同図には、壁20の傾斜測定において、測定端末装置10の適正設置を補助する設置調整画面340を示す。設置調整画面340は、測定端末装置10の姿勢を表す姿勢線342、角度スケール344、水平基準線346及び操作情報348が含まれる。
【0128】
測定端末装置10は、壁傾斜測定が開始され、測定対象の壁20へ測定端末装置10が設置された場合に、加速度センサ204から測定データを取得し、
図9に示すα軸成分の測定データに基づき姿勢線342を生成し、姿勢線342をディスプレイ102へ表示させる。
【0129】
調査員Pは、姿勢線342、角度スケール344及び水平基準線346を参照して、姿勢線342と水平基準線346とを一致させる姿勢に、測定端末装置10の姿勢を調整し得る。
【0130】
操作情報348は、調査員Pに対する測定端末装置10の操作内容を表す文字情報が適用される。調査員Pは、操作情報348を参照して、設置調整工程S14における測定端末装置10に対する操作内容を把握し得る。
【0131】
図16は測定中画面が表示されるディスプレイの正面図である。測定端末装置10は、姿勢線342と水平基準線346とを一致させる状態が一定期間継続された場合に、壁20の傾斜測定を開始し、加速度センサ204の測定データを取得する。
【0132】
壁20の傾斜測定が開始され、加速度センサ204の測定データが取得されるまでの期間は、ディスプレイ102へ測定中画面360が表示される。測定中画面360は、
図15に示す設置調整画面340における操作情報348に代わり、測定中を表すステータス情報362が含まれる。
【0133】
測定中画面360が表示される期間において、姿勢線342が水平基準線346と一致しない姿勢へ、測定端末装置10の姿勢が変更された場合、測定が中止され、測定の中止を表すステータス情報362を表示させてもよい。
【0134】
図17は測定完了画面が表示されるディスプレイの正面図である。測定端末装置10は、壁20の傾斜測定が完了し、測定データが取得されると、ディスプレイ102へ測定完了画面380を表示させる。
【0135】
測定完了画面380は、
図15に示す測定中画面360におけるステータス情報362に代わり、測定完了を表すステータス情報362Aが含まれる。また、測定完了画面380は、測定データ値情報382、第1ボタン384及び第2ボタン386が含まれる。
【0136】
図17に示す第1ボタン384は、調査員Pが再測定を実施する際に操作するボタンが適用される。調査員Pが第1ボタン384を操作した場合は、測定端末装置10は再測定を実施する。
【0137】
第2ボタン386は、調査員Pが測定データを保存する際に操作するボタンが適用される。調査員Pが第2ボタン386を操作した場合は、測定端末装置10は測定データを保存する。なお、ここでいう測定データの保存は測定データの記憶と同義である。
【0138】
なお、実施形態に示す
図16及び
図17に示す各種の情報は、第2アシスト情報の一例である。実施形態に示す第2ボタン386は、壁傾斜測定の測定結果の記憶を指示する第1ボタンの一例である。
【0139】
[被害認定調査の判定結果]
図18は判定結果の説明図である。下げ振りを用いる傾斜測定では、下げ振りの鉛直方向の長さhを1200ミリメートルとする場合の、下げ振りの上端における水平方向の距離d1及び下げ振りの下端における水平方向の距離d2を測定し、d1の測定値及びd2測定値を(d1-d2)/1200へ代入して傾斜指標値を算出する。なお、
図18に示すdは、d1-d2である。
【0140】
図14に示す判定結果情報322は、主要四隅を構成する隅22の傾斜値を、
図18に示すd/h又はdへ換算し、判定基準と対比して導出される判定結果が表示される。
図14に示す測定データ情報308は、隅22のそれぞれの傾斜値を、d/h又はdへ変換して表示してもよい。
【0141】
[測定端末装置及び壁傾斜測定方法の作用効果]
実施形態に係る測定端末装置及び壁傾斜測定方法は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0142】
〔1〕
測定端末装置10の設置調整工程S14において、ディスプレイ102へ設置調整画面340が表示される。設置調整画面340は、第1アシスト情報として、測定端末装置10の姿勢を表す姿勢線342及び水平基準線346が含まれる。これにより、調査員Pは設置調整画面340を参照して、加速度センサ204の一軸と水平方向とを一致させる、測定端末装置10の適正設置を実施し得る。また、調査員Pは第1アシスト情報を参照して、測定端末装置10の姿勢を維持すべきか若しくは測定端末装置10の姿勢を変更すべきかを判断し得る。
【0143】
〔2〕
加速度センサ204の一軸と水平方向とを一致させる測定端末装置10の適正設置は、加速度センサの三軸のうち、一軸を固定し、残りの二軸の測定データに基づき、測定対象の壁20の傾斜が算出し得る。これにより、測定対象の壁20の傾斜の際に固定した一軸の測定データが不要となり、演算の負荷が軽減され、正確な傾斜の導出に寄与する。
【0144】
〔3〕
測定端末装置10は、壁20の傾斜測定中にディスプレイ102へ測定中画面360を表示させる。これにより、調査員Pは壁20の傾斜測定中であることを把握し得る。
【0145】
〔4〕
測定端末装置10は、壁20の傾斜測定完了の際にディスプレイ102へ測定完了画面380を表示させる。これにより、調査員Pは壁20の傾斜測定が完了したことを把握し得る。
【0146】
〔5〕
測定端末装置10は、ディスプレイ102へ調査実施中画面300を表示させる。調査実施中画面300は、調査対象の住家等の住所、構想、測定対象の隅22の情報及び測定データが含まれる。これにより、調査員Pは、調査対象の住家等の各種の情報を把握し得る。
【0147】
〔6〕
調査実施中画面300は、操作ボタン310が表示される。これにより、調査員Pは壁傾斜測定の際に、測定端末装置10に対して操作ボタン310に割り当てられた機能の実施を指令し得る。
【0148】
〔7〕
操作ボタン310は、測定及び再測定が割り当てられる。これにより、調査員Pは測定端末装置10に対して測定の実施及び再測定の実施を指令し得る。
【0149】
〔8〕
測定端末装置10は、ディスプレイ102へ判定結果表示画面320を表示させる。判定結果表示画面320は、判定結果を表す判定結果情報322が含まれる。これにより。調査方法を熟知していない調査員Pであっても、被害認定調査を正確に実施し得る。
【0150】
[ネットワークシステムへの適用例]
図19は測定端末装置が適用される被害認定調査システムの構成図である。同図に示す被害認定調査システム400は、ネットワーク402を経由して、複数の測定端末装置10と、調査本部410に設置されるサーバ装置412が接続される。
【0151】
ネットワーク402は、インターネット及び広域通信網等を適用し得る。同図に示すネットワーク402は、複数のネットワークが含まれていてもよい。ネットワーク402に適用される通信規格は、各種の通信規格を適用し得る。
【0152】
測定端末装置10は、調査対象の住家1の被害認定調査における各種のデータを、ネットワーク402を経由してサーバ装置412へ送信し得る。サーバ装置412は、測定端末装置10から送信される被害認定調査における各種のデータを取得し、調査対象の住家1ごとの調査票を作成し得る。
【0153】
サーバ装置412は、調査本部410に設置されるデータベース414へ、住家1ごとの被害認定調査における各種のデータ及び調査票を記憶し得る。サーバ装置412及びデータベース414は、調査本部410の外部に設置され、調査本部410に具備されるコンピュータと通信可能に接続されてもよい。サーバ装置412及びデータベース414は、クラウドコンピューティングを適用し得る。
【0154】
[プログラムへの適用例]
コンピュータに、測定端末装置10における各種の機能を実現させるプログラムを構成し得る。すなわち、コンピュータに、住家情報取得機能、測定端末装置10の適正設置確認機能、傾斜測定機能、傾斜値導出機能及び被害程度判定機能を実現させるプログラムを構成し得る。
【0155】
上述した各種の機能をコンピュータに実現させるプログラムを、有体物である非一時的な情報記憶媒体である、コンピュータが読取可能な情報記憶媒体に記憶し、情報記憶媒体を通じてプログラムを提供することが可能である。
【0156】
また、非一時的な情報記憶媒体にプログラムを記憶して提供する態様に代えて、通信ネットワークを介してプログラム信号を提供する態様も可能である。
【0157】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。また、実施形態、変形例及び応用例は適宜組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0158】
1 住家
10 測定端末装置
10A 表面
10B 裏面
20 壁
20A 壁
20B 壁
22 隅
22A 隅
22B 隅
22C 隅
22D 隅
100 フレーム
102 ディスプレイ
104 マイクロフォン
106 スピーカ
108 カメラ
110 電源ボタン
112 操作ボタン
120 入出力ポート
200 プロセッサ
202 メモリ
204 加速度センサ
220 設置適正確認部
222 傾斜計算部
224 被害程度判定部
300 調査実施中画面
302 住所情報
304 構造情報
306 主要四隅情報
308 測定データ情報
310 操作ボタン
320 判定結果表示画面
322 判定結果情報
340 設置調整画面
342 姿勢線
344 角度スケール
346 水平基準線
348 操作情報
360 測定中画面
362 ステータス情報
362A ステータス情報
380 測定完了画面
382 測定データ値情報
384 第1ボタン
386 第2ボタン
400 被害認定調査システム
402 ネットワーク
410 調査本部
412 サーバ装置
414 データベース
P 調査員
S10からS20 被害程度判定方法の各工程