(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】包装袋入りゼリー飲料及び包装袋入りゼリー飲料の熱劣化抑制方法
(51)【国際特許分類】
B65D 75/52 20060101AFI20250313BHJP
B65D 30/16 20060101ALI20250313BHJP
B65D 85/72 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
B65D75/52
B65D30/16 C
B65D30/16 F
B65D85/72 200
(21)【出願番号】P 2018168628
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-08-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕介
(72)【発明者】
【氏名】北原 正明
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】長清 吉範
【審判官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-190750(JP,A)
【文献】特開2017-171341(JP,A)
【文献】特開2000-210036(JP,A)
【文献】特開2001-120240(JP,A)
【文献】特開2017-189462(JP,A)
【文献】特開2017-141039(JP,A)
【文献】特開2005-119729(JP,A)
【文献】特開2013-49461(JP,A)
【文献】特開2015-54703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D75/00~75/70
B65D30/00~33/38
B65D85/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼリー飲料を包装袋に充填し、
載置面からの熱で加温する加温器に保管して加温状態で提供する際に、ゼリー飲料の熱劣化を抑制する方法であって、前記包装袋として、キャップ付きのスパウトが取付けられたスパウト付き包装袋であって、底面部の周縁から下方に延びる下端シール部を有し、該下端シール部の下端が前記加温器の載置面に接して自立可能とされた包装袋を用い、前記ゼリー飲料を充填された状態で、前記底面部が前記載置面に接しないようにして保管することを特徴とする加温器保管用包装袋入りゼリー飲料の熱劣化抑制方法。
【請求項2】
前記下端シール部は、前記底面部の周縁を囲むように枠状をなして下方に延びている、請求項1記載の加温器保管用包装袋入りゼリー飲料の熱劣化抑制方法。
【請求項3】
前記包装袋は、金属箔層と、内面に配置された溶着可能なシーラント層とを有する積層シートで構成されている、請求項1又は2記載の加温器保管用包装袋入りゼリー飲料の熱劣化抑制方法。
【請求項4】
前記包装袋は、溶着可能なシーラント層を内面に有する積層シートでそれぞれ形成された、前面部と、後面部と、両側面部と、底面部とを有し、
前記前面部、前記後面部及び前記両側面部の各側端部が互いにシールされて、上下に延びる4つの側端シール部が形成されると共に、前記両側面部が折り畳み可能な横ガゼット部をなし、
前記前面部、前記後面部及び前記両側面部の各下端部と、前記底面部の外周縁部とが接合されて、枠状をなして下方に突出する前記下端シール部が形成されると共に、前記底面部が折り畳み可能な底ガゼット部をなしている、請求項1~3のいずれか1項に記載の加温器保管用包装袋入りゼリー飲料の熱劣化抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加温器に保管されて加温状態で提供される包装袋入りゼリー飲料及び該包装袋入りゼリー飲料の熱劣化抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運動時のエネルギー補給や、また、小腹がすいた時、あるいは、腹持ちを良くするために、手軽に喫食することができるエネルギー補給用のゼリー飲料が知られている(特許文献1参照)。また、日常の食生活において不足しがちなビタミンや蛋白質を補給するためのゼリー飲料も知られている(特許文献2参照)。
【0003】
このようなゼリー飲料として、スパウト付きの包装袋に充填されたものが販売されており、スパウトのキャップを外して吸引することにより、手軽に摂取できるので、人気を博している。この種のゼリー飲料は、一般に冷蔵状態で販売されており、冷たい状態で摂取するのが普通である。
【0004】
しかしながら、冬期など外気温が低いときには、冷たいゼリー飲料を摂取すると、体が冷える感じを与えるため、敬遠される傾向があった。
【0005】
一方、スパウト付き包装袋において、ラミネートフィルムの断熱性を高めて、手で持ったときに内容物の冷たさや熱さを感じにくくしたり、内容物の保冷性や保温性を高めたものも知られている(特許文献3,4,5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許5329488号公報
【文献】特開2016-187312号公報
【文献】特許4397214号公報
【文献】特許4514097号公報
【文献】特開3604685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ゼリー飲料は、一般に冷蔵状態で販売されており、冷たい状態で摂取するのが普通であったが、本発明者らは、冬期など外気温が低いときには、暖かいゼリー飲料を提供できないかと考え、包装袋に充填されたゼリー飲料を加温器で保管して提供する試みを行った。
【0008】
しかしながら、包装袋に充填されたゼリー飲料を加温器で保管すると、加温器の載置面に接する部分が高温に加熱され、内部のゼリー飲料が劣化して、変色したり、食感が変化したりする場合があることがわかった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、包装袋入りゼリー飲料を、加温器に保管して加温状態で提供する際に、ゼリー飲料が局所的に高温となって劣化するのを抑制できるようにした包装袋入りゼリー飲料及び包装袋入りゼリー飲料の熱劣化抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究したところ、包装袋の底面部が加温器の載置面に直接接しないようにすることによって、熱劣化を抑制できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の1つは、底面部を有する自立型の包装袋と、該包装袋に充填されたゼリー飲料とを備えた包装袋入りゼリー飲料において、前記包装袋入りゼリー飲料は、加温器に保管されて加温状態で提供されるものであり、前記包装袋は、前記底面部の周縁から下方に延びる下端シール部を有し、該下端シール部の下端が前記加温器の載置面に接して自立可能とされ、前記ゼリー飲料を充填された状態で、前記底面部が前記載置面に接しないように構成されていることを特徴とする包装袋入りゼリー飲料を提供する。
本発明の包装袋入りゼリー飲料によれば、下端シール部の下端が加温器の載置面に接して自立可能とされ、ゼリー飲料を充填された状態で、底面部が前記載置面に接しないように構成された包装袋に充填されているので、加温器の載置面からの熱がゼリー飲料に伝わりにくくなり、ゼリー飲料の熱劣化を抑制することができる。
【0012】
本発明のゼリー飲料において、前記下端シール部は、前記底面部の周縁を囲むように枠状をなして下方に延びていることが好ましい。
【0013】
上記態様によれば、下端シール部が、底面部の周縁を囲むように枠状をなして下方に延びていることにより、ゼリー飲料の重量によって下端シール部が曲がりにくくなり、底面部が載置面に接することをより確実に防止できる。
【0014】
また、前記包装袋は、キャップ付きのスパウトが取付けられたスパウト付き包装袋であることが好ましい。
【0015】
上記態様によれば、キャップを外してスパウトから吸飲することにより、手軽にゼリー飲料を摂取することができる。スパウトを通して少しずつ吸引することにより、熱いゼリーが一度に口中に流れ込むことを抑制できる。
【0016】
また、前記包装袋は、金属箔層と、内面に配置された溶着可能なシーラント層とを有する積層シートで構成されていることが好ましい。
【0017】
上記態様によれば、金属薄層を有する積層シートで構成されているので、包装袋を構成する積層シートの剛性が高くなり、ゼリー飲料の重量によって下端シール部が曲がりにくくなり、底面部が載置面に接することをより確実に防止できる。また、加温器の載置面からの熱が、金属薄層を通して、包装袋全体に伝わり易くなり、加温を均一化しやすくすることができる。
【0018】
また、前記包装袋は、溶着可能なシーラント層を内面に有する積層シートでそれぞれ形成された、前面部と、後面部と、両側面部と、底面部とを有し、前記前面部、前記後面部及び前記両側面部の各側端部が互いにシールされて、上下に延びる4つの側端シール部が形成されると共に、前記両側面部が折り畳み可能な横ガゼット部をなし、前記前面部、前記後面部及び前記両側面部の各下端部と、前記底面部の外周縁部とが接合されて、枠状をなして下方に突出する前記下端シール部が形成されると共に、前記底面部が折り畳み可能な底ガゼット部をなしていることが好ましい。
【0019】
上記態様によれば、横ガゼット部と底ガゼット部とを有することにより、内容量を高めることができる。また、枠状をなして下方に突出する下端シール部を有すると共に、該枠状をなす下端シール部の4つの角部に、上下に延びる4つの側端シール部の下端部が配置されるので、包装袋自体の上下方向の剛性が保持されると共に、ゼリー飲料の重量によって下端シール部が更に曲がりにくくなり、底面部が載置面に接することをより確実に防止できる。
【0020】
本発明のもう1つは、ゼリー飲料を包装袋に充填し、加温器に保管して加温状態で提供する際に、ゼリー飲料の熱劣化を抑制する方法であって、前記包装袋として、底面部の周縁から下方に延びる下端シール部を有し、該下端シール部の下端が前記加温器の載置面に接して自立可能とされた包装袋を用い、前記ゼリー飲料を充填された状態で、前記底面部が前記載置面に接しないようにして保管することを特徴とする包装袋入りゼリー飲料の熱劣化抑制方法を提供する。
【0021】
本発明の包装袋入りゼリー飲料の熱劣化抑制方法によれば、下端シール部の下端が加温器の載置面に接して、ゼリー飲料を充填された状態で、底面部が前記載置面に接しない自立型の包装袋を用いることにより、加温器の載置面からの熱がゼリー飲料に伝わりにくくなり、ゼリー飲料の熱劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、下端シール部の下端が加温器の載置面に接して自立可能とされ、ゼリー飲料を充填された状態で、底面部が前記載置面に接しないように構成された包装袋に充填されているので、加温器の載置面からの熱がゼリー飲料に伝わりにくくなり、ゼリー飲料の熱劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態を示す包装袋入りゼリー飲料の斜視図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図、(b)斜め下方から見た斜視図である。
【
図2】本発明の包装袋入りゼリー飲料を加温器内に載置した状態を示す説明図である。
【
図3】本発明の包装袋入りゼリー飲料を加温器内に載置した状態の、一部を切り欠いて示す正面断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態を示す包装袋入りゼリー飲料の斜視図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図、(b)斜め下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明において、包装袋入りゼリー飲料に用いられるゼリー飲料は、包装袋から押し出して摂取することができるような、流動性を有するゼリー状の食品であればよく、その原料や製造方法については、特に限定されない。
【0025】
その好ましい態様を説明すると、ゼリー飲料のゲル化剤としては、例えば、寒天、ローカストビーンガム、脱アシルジェランガム、ネイティブジェランガム、グルコマンナン、キサンタンガム、ペクチン、カラギナン、アルギン酸ナトリウムなどが好ましく用いられ、これらは1 種又は2 種以上の組合せで用いることができる。
【0026】
この場合、加温器に保管されて加温状態で提供されるという、本発明のゼリー飲料の用途を考慮すると、ゲル化剤としては、例えば45~75℃の温度にてゲル状態を保つことができるものが好ましく、特に脱アシルジェランガム、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、カラギナンから選ばれた1種又は2種以上が好ましく、脱アシルジェランガムが特に好ましく用いられる。
【0027】
本発明のゼリー飲料には、例えばエネルギー源、蛋白源、ビタミン類、アミノ酸、ミネラルなどを補給するのに適した原料を添加することができる。エネルギー源となる原料としては、例えば単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、デキストリン、水飴などの糖類が好ましく用いられる。具体的には、ぶどう糖、果糖、砂糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルトデキストリン等が挙げられる。
なお、ダイエット用のゼリー飲料においては、甘味料として、還元水飴等の糖アルコールや、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムK 、スクラロース、ソウマチン等の高甘味度甘味料を用いることもできる。
【0028】
蛋白源となる原料としては、例えば、ホエイ蛋白質、大豆蛋白質、コラーゲン、コラーゲンペプチド、カゼインなどが挙げられる。ホエイ蛋白質としては、ホエイ蛋白質分離物(WPI)、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC)、ホエイ蛋白質加水分解物(WPH)などが好ましく用いられ、大豆蛋白質としては、分離大豆たんぱく質(SPI)などが好ましく用いられる。
【0029】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA 、ビタミンB 1 、ビタミンB 2 、ビタミンB 6 、ビタミンB12、ビタミンC 、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンH 、ビタミンK、ビタミンP、パントテン酸、コリン、葉酸、イノシトール、ナイアシン、パラアミノ安息香酸(PABA)等が挙げられる。これらのビタミン類は単独又は2種類以上を使用できる。
【0030】
アミノ酸としては、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等が挙げられる。これらのアミノ酸は単独又は2種類以上を使用できる。
【0031】
ミネラルとしては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム等が挙げられる。これらのミネラルは単独又は2種類以上を使用できる。
【0032】
その他、酸味料として、例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、アスコルビン酸、グルコン酸、リン酸及びそれらの塩等を添加してもよい。また、果汁、食物繊維、香料、調味料、色素等を添加することもできる。
【0033】
本発明で用いるゼリー飲料は、上記のような原料を水に分散させ、ゲル化剤を加熱溶解させた後、冷却することによりゲル化させることによって製造することができる。各原料の添加順序等は、好ましいゲル性状となるように適宜調整することができる。
【0034】
本発明の包装袋入りゼリー飲料は、上記のようなゼリー飲料が、底面部を有する自立型の包装袋に充填されて、加温器に保管されて加温状態で提供されるものである。そして、前記包装袋は、前記底面部の周縁から下方に延びる下端シール部を有し、該下端シール部の下端が前記加温器の載置面に接して自立可能とされ、前記ゼリー飲料を充填された状態で、前記底面部が前記載置面に接しないように構成されている
図1~3には、本発明による包装袋入りゼリー飲料の一実施形態が示されている。この包装袋入りゼリー飲料100は、包装袋101と、該包装袋101の内部に充填されたゼリー飲料113(
図3参照)とで構成されている。
【0035】
図1に示すように、包装袋101は、溶着可能なシーラント層を内面に有する積層シートでそれぞれ形成された、前面部102と、後面部103と、両側に配置された一対の側面部104と、底面部105とを有している。
【0036】
上記シーラント層としては、合成樹脂の未延伸フィルムや、合成樹脂を層状に押し出した層が好ましい。シーラント層を形成する合成樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合、2種以上の合成樹脂の混合物の単層でもよく、2種以上の合成樹脂の複層でもよく、混合物の層を含む複層であってもよい。
【0037】
シーラント層が複層の場合、共押出し法、ラミネート法等の公知の方法により製造できる。共押出し法の場合、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法、Tダイ成形法等が採用できる。特に、薄肉フィルム及び広幅原反の成形が可能である空冷インフレーション法が有利である。
【0038】
合成樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられ、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0039】
ポリエチレン系樹脂としては、耐熱性に優れるHDPEと柔軟性があり耐衝撃性に優れるLLDPEを組み合わせることが好ましい。この場合、シーラント層は、HDPEとLLDPEの混合物の単層でもよく、HDPEの層とLLDPEの層を含む複層であってもよく、HDPEとLLDPEの混合物の層を含む複層であってもよい。
【0040】
上記積層シートは、上記シーラント層が内面に配置され、表面側には耐熱性、突き刺し強度、引っ張り強度、耐衝撃性等を備えた合成樹脂フィルムからなるからなる基材層が配置され、シーラント層と基材層との間には、酸素バリア性、水蒸気バリア性、引裂き性、耐衝撃性等の機能性を備えた中間層が配置されたものが好ましく用いられる。
【0041】
基材層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、エチレンビニルアルコール共重合体等が挙げられ、これらの二軸延伸フィルム又は一軸延伸フィルムが好ましい。また、これらのフィルムに、酸素や水蒸気に対するバリア性を付与するために、アルミニウム、マグネシウム等の金属、又は酸化珪素等の酸化物を蒸着させた蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン等のバリア性コート剤等をコートしたコートフィルム等を用いてもよい。基材層は、前記したフィルムの単体であってもよく、積層フィルムであってもよい。
【0042】
また、上記積層シートとしては、金属箔層と、内面に配置された溶着可能なシーラント層とを有する積層シートが好ましく用いられる。この場合、金属箔層は、上記中間層として配置されることが好ましい。金属箔層としては、アルミニウムの金属箔が好ましく用いられる。
【0043】
一対の側面部104の両側は、前面部102、後面部103の両側とヒートシールされて、上下方向に伸びる4つの側端シール部108が形成されている。この場合、一対の側面部104は、幅方向中央を上下に伸びる折れ線115で内側に折り曲げられて、広がり可能な横ガゼット部を構成している。
【0044】
また、前面部102,後面部103,一対の側面部104のそれぞれの下縁部と、長方形状をなす底面部105の周縁部とがヒートシールされて、下端シール部109が形成されている。底面部105は、折れ線116で内側に折り曲げられて、広がり可能な底ガゼット部を構成している。
底面部105の各辺に配置された下端シール部109の両端部は、上下方向に伸びる4つの側端シール部108の対応する下端部に連結され、側端シール部108の下端部と下端シール部109とで、底面部105の周縁を封止するシール構造が形成されている。
【0045】
そして、下端シール部109は、底面部105の周縁を囲むように枠状をなして下方に延出されている。なお、本発明において、枠状とは、下方に延出された下端シール部109の両端どうしが必ずしも連結された構造を意味するものではなく、互いに接触して配置された態様や、3mm以内の隙間を介して近接配置された態様をも含む意味である。
【0046】
また、本発明において、下端シール部109は、必ずしも枠状をなしている必要はなく、下端シール部109が横に倒れない程度の剛性をもって、下端シール部109の下端部で、ゼリー飲料が充填された包装袋101を支持することができるのであれば、下端シール部109の両端どうしが離れていてもよく、下方に延出された下端シール部109の数が2つであってもよい。
【0047】
一方、前面部102,後面部103,一対の側面部104のそれぞれの上縁部は、ヒートシールされて上端シール部110が形成されている。また、前面部102、後面部103の上辺の中央部は、スパウト106の外周を封止するように接合されたスパウト接合部111をなしている。
図3に示すように、スパウト106の吸引管112は、包装袋111内に挿入されている。
【0048】
この包装袋101は、内部にゼリー飲料113を充填されることにより、
図1に示すように、横ガゼット部をなす側面部104と、底ガゼット部をなす底面部105が開いて、容積を大きくするように広がった形状となる。そして、底面部105の4辺に位置する下端シール部109が全て下方に延出し、それらの下端が載置面に当接して、自立して載置されるようになっている。
【0049】
図2は、包装袋入りゼリー飲料を加温器120内に載置して保管している状態を示している。加温器120は、ハウジング121と、その内部に配置された載置面122とを有している。載置面122は、ハウジング121内の底面や、その上方に配置された棚や、 更に棚の上に載せられた皿などで構成されている。載置面122は、必ずしもプレート状をなすものでなくてもよく、メッシュ状や、パンチングメタル状をなすものであってもよい。なお、本発明において「加温器」としては、包装袋入りゼリー飲料を載置する載置面122と、包装袋入りゼリー飲料を加温できる加熱手段とを有するものであればよく、その形状や構造は特に限定されないが、具体的には、いわゆるホットベンダー、ホットショーケースと呼ばれているものが挙げられる。
【0050】
加温器120の加熱温度は、特に限定されないが、包装袋入りゼリー飲料のゼリー飲料113が、好ましくは50~70℃、より好ましくは55~65℃に加熱されるような温度とされる。このような温度であれば、ゼリー飲料の熱劣化を抑制しつつ、比較的暖かい状態でゼリー飲料を提供でき、冬などの外気温が低い季節において、ゼリー飲料を摂取することによって体を温める効果を付与することができる。なお、包装袋の表面の温度は、手で持ったときに熱く感じたり、火傷しないようにするため、30~60℃程度とされることが好ましい。
【0051】
図3に示すように、加温器120の載置面122に載置された包装袋入りゼリー飲料は、下方に延出された下端シール部109の下端が載置面122に当接して、自立した状態で載置されている。そして、底面部105は、ゼリー飲料113の重量によってその中央部がやや垂れ下がる傾向があるが、載置面122に接触しないようにされ、底面部105と載置面122との間に空間114が形成されている。
【0052】
この場合、下方に延出された下端シール部109の下方への延出長さhは、5~15mmが好ましく、5~10mmがより好ましい。また、空間114を形成する底面部105と載置面122との距離sは、2~10mmが好ましく、3~8mmがより好ましい。上記h及びsが小さすぎると、保管中に底面部105と載置面122とが接触してしまう虞れがあり、大きすぎると、下端シール部109が横に倒れやすくなる傾向がある。
【0053】
本発明の包装袋入りゼリー飲料の熱劣化抑制方法は、ゼリー飲料を包装袋に充填し、加温器に保管して加温状態で提供する際に、ゼリー飲料の熱劣化を抑制する方法である。このため、包装袋として、上記包装袋101に示されるように、底面部105の周縁から下方に伸びる下端シール部109を有し、下端シール部109の下端が加温器120の載置面122に当接して、底面部105が載置面122に接しない状態で自立することが可能なものを使用する。これによって、加温器120の載置面122からの熱が、包装袋101内のゼリー飲料113に伝わりにくくなり、ゼリー飲料113の熱劣化を抑制することができる。
【0054】
また、この実施形態の場合、下端シール部109が底面部105の周縁を囲むように枠状をなして下方に延びているので、ゼリー飲料113の重量によって下端シール部109が曲がりにくくなり、底面部105が載置面122に接することをより確実に防止できる。
【0055】
また、この実施形態では、包装袋101が、キャップ107が装着されたスパウト106を有するので、キャップ107を外してスパウト106から吸飲することにより、手軽にゼリー飲料113を摂取することができる。また、スパウト106を通して少しずつ吸引することにより、熱いゼリー飲料113が一度に口中に流れ込むことを抑制できる。
【0056】
また、この実施形態では、包装袋101の前面部102,後面部103,側面部104,底面部105が、金属薄層を有する積層シートで構成されているので、包装袋101を構成する積層シートの剛性が高くなり、ゼリー飲料の重量によって下端シール部109が曲がりにくくなり、底面部105が載置面122に接することをより確実に防止できる。
【0057】
また、加温器120の載置面122からの熱が、金属薄層を通して、包装袋101全体に伝わり易くなり、加温を均一化しやすくすることができる。
【0058】
更に、この実施形態では、前面部102,後面部103,一対の側面部104,及び底面部105を有し、前面部102、後面部103及び側面部104の各側端部が互いにシールされて、上下に延びる4つの側端シール部108が形成されると共に、側面部104が折り畳み可能な横ガゼット部をなし、前面部102、後面部103及び側面部104の各下端部と、底面部105の外周縁部とが接合されて、枠状をなして下方に突出する下端シール部109が形成されると共に、底面部105が折り畳み可能な底ガゼット部をなしているので、内容量を高めることができる。また、枠状をなして下方に突出する下端シール部109を有すると共に、該枠状をなす下端シール部109の4つの角部に、上下に延びる4つの側端シール部108の下端部が配置されるので、包装袋101自体の上下方向の剛性が保持されると共に、ゼリー飲料113の重量によって下端シール部109が更に曲がりにくくなり、底面部105が載置面122に接することをより確実に防止できる。
【0059】
図4には、本発明による包装袋入りゼリー飲料の他の実施形態が示されている。前記実施形態と共通する部分には、同符号を付してその説明を省略することにする。
【0060】
この包装袋入りゼリー飲料200は、包装袋201の構造が、前記実施形態と相違している。すなわち、包装袋201は、前面部102と、後面部103と、底面部105とを有し、前記実施形態の側面部104は有しない構造をなしている。すなわち、前面部102,後面部103の両側縁部が互いに接合されて上下に延びる2つの側端シール部108が形成されている。前面部102,後面部103の上縁部の間にスパウト106が挿入され、前面部102,後面部103どうしが接合されて上端シール部110をなすと共に、スパウト106の周囲がスパウト接合部111によってシールされている。底面部105は、その長径方向に沿った中心線を折線として内側に折り畳まれた状態で、その周縁部を前面部102及び後面部103の内面に円弧状に接合されて、底面部105の周縁から下方に延出する下端シール部109が形成されている。
【0061】
包装袋201内にゼリー飲料を充填すると、底面部105が楕円形状に広がって、下端シール部109が底面部105の周縁を囲む枠状をなして下方に突出した形状となる。そして、
図2に示した態様と同様にして、加温器120の載置面122に載置すると、下端シール部109の下端が載置面122に当接して自立させることができる。その状態で、底面部105は、載置面122に接しないで、両者の間に空間が設けられた状態になる。この実施形態においても、加温器120の載置面122からの熱が、包装袋201内のゼリー飲料に伝わりにくくなり、ゼリー飲料の熱劣化を抑制することができる。
【0062】
このように、本発明において、包装袋の構造は、下端シール部が下方に突出して、その下端が載置面に当接して、底面部が載置面に接触しない構造であればよく、積層シートの接合構造としては各種の構造を採用することができる。
【実施例】
【0063】
以下試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの試験例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0064】
[試験例1]
下記表1の配合により、常法によって、ゼリー飲料を作成した。
【0065】
【0066】
このゼリー飲料を
図1~3に示される包装袋に充填して、実施例の包装袋入りゼリー飲料を製造した。なお、この包装袋は、アルミ箔を含む積層シートで構成されている。この包装袋は、ゼリー飲料を充填して、底部を下にして立設したとき、下端シール部109の下端が加温器120の載置面122に当接して、底面部105が載置面122に接しない状態で自立するようになっている。
図3におけるhは8mm、sは5mmであった。
【0067】
また、上記ゼリー飲料を、底面部が載置面に当接する形状の、従来の包装袋(特開2008-290736号の
図6に示される包装袋)に充填して、比較例の包装袋入りゼリー飲料を製造した。なお、この包装袋は、アルミ箔を含む積層シートで構成されている。この包装袋は、ゼリー飲料を充填して、底部を下にして立設したとき、底部が載置面に当接するようになっている。
【0068】
上記実施例及び比較例の包装袋入りゼリー飲料を、加温器の載置面に底面部が下になるように設置して、加温器内が85℃となるように加熱した。
【0069】
それぞれの包装袋入りゼリー飲料のスパウトから温度計を挿入して、底面部から1cm程度上方に位置する部分のゼリー飲料の温度を経時的に測定した。この結果を下記表2に示す。
【0070】
【0071】
また、上記表2の結果をグラフ化したものを
図3に示す。
【0072】
上記表2、
図3に示されるように、比較例の包装袋入りゼリー飲料に比べて、実施例の包装袋入りゼリー飲料は、底面部から1cm程度上方に位置する部分のゼリー飲料の温度上昇が抑制されることがわかる。
【0073】
また、実施例及び比較例の包装袋入りゼリー飲料を、加温器に載置して、5日間保管した後、及び12日間保管した後にそれぞれ取出し、内部のゼリー飲料の色調は、日本電色工業株式会社製の測色色差計ZE-2000を用いて、L*a*b*表色系(ここで、L*は明度、a*は赤-緑方向の色度、b*は黄-青方向の色度を示す。)の色差を測定することにより評価した。
色差量(ΔE*)は、下式により算出した。
ΔE*=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
また、それぞれの風味及び食感を5名の専門パネラーによって評価した。なお、参考例として、加温器に保管する前の包装袋入りゼリー飲料についても、同様に色調を測定し、風味及び食感を評価した。この結果を表3に示す。
【0074】
【0075】
上記表3に示されるように、保管日数が増えても、実施例のゼリー飲料は、色調がほとんど変わらなかったのに対し、比較例のゼリー飲料は、色調が次第に濃くなって褐色に変色することがわかる。また、風味も、実施例のゼリー飲料は、それほど変わらなかったのに対し、比較例のゼリー飲料は、甘さが激衰して酸味が出てきて、カラメル臭を感じるようになることがわかる。更に、食感も、実施例のゼリー飲料はゼリーの粒感が維持されるのに対し、比較例のゼリー飲料では、ゼリーの粒感が小さくなることがわかる。
【符号の説明】
【0076】
100、200 包装袋入りゼリー飲料
101、201 包装袋
102 前面部
103 後面部
104 側面部
105 底面部
106 スパウト
107 キャップ
108 側端シール部
109 下端シール部
110 上端シール部
111 スパウト接合部
112 吸引管
113 ゼリー飲料
114 空間
115 折れ線
116 折れ線
120 加温器
121 ハウジング
122 載置面