(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-12
(45)【発行日】2025-03-21
(54)【発明の名称】自動分析装置、及び反応容器
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20250313BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20250313BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
G01N35/00 B
G01N21/01 B
G01N21/27 Z
(21)【出願番号】P 2023533526
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2022025066
(87)【国際公開番号】W WO2023282075
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2021114065
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林田 典大
(72)【発明者】
【氏名】松岡 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】高田 英一郎
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/075806(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/066165(WO,A1)
【文献】特開2019-193673(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105866456(CN,A)
【文献】坪田宜之,ラテックス凝集反応を利用した測定法,医用電子と生体工学,日本,一般社団法人日本生体医工学会,1984年,第22巻第4号,267-273
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G01N 21/01
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に収容された検体と試薬の混合液を分析する自動分析装置であって、
前記反応容器が挿入される孔と、前記反応容器を付勢する付勢部材とを備えるヒートブロックと、
前記反応容器は、側面の一部に第1突起を備え、
前記付勢部材は、前記反応容器が前記孔に挿入される際に鉛直方向上側から下側へ降ろされる場合において、前記第1突起に沿って前記反応容器の外側に退避するように動作すると共に、前記反応容器が前記孔に収まった時に前記第1突起を鉛直方向下側に付勢するよう設置され、および前記第1突起を水平方向、かつ、前記反応容器を前記孔の壁に押し付けるように付勢する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置であって、
前記反応容器は、側面の一部であって、前記第1突起と鉛直方向の線上から外れる位置に第2突起を備え、前記ヒートブロックは、前記第2突起と嵌合する溝を備える、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置であって、
前記付勢部材は、前記反応容器が挿入される際に、前記第1突起に沿って鉛直方向にも動作する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
反応容器に収容された検体と試薬の混合液を分析する自動分析装置であって、
前記反応容器が挿入される孔と、前記反応容器を付勢する付勢部材とを備えるヒートブロックと、
前記反応容器は、側面の一部に第1突起を備え、
前記付勢部材は、前記反応容器が前記孔に挿入される際に鉛直方向上側から下側へ降ろされる場合において、前記第1突起に沿って前記反応容器の外側に退避するように動作すると共に、前記反応容器が前記孔に収まった時に前記第1突起を鉛直方向下側に付勢するよう設置され、および
前記付勢部材は、前記反応容器が挿入される際に、前記第1突起に沿って鉛直方向にも動作し、一定の移動量以上には移動しないようにストッパを備える、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項5記載の自動分析装置であって、
前記付勢部材は、前記反応容器がない状態でも所定の鉛直方向の動作を許容し、前記反応容器が挿入される際に、前期第1突起に沿って前記反応容器の外側に退避するに従い、鉛直方向の動作がさらに許容される傾斜を持ったストッパを備える、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
反応容器に収容された検体と試薬の混合液を分析する自動分析装置であって、
前記反応容器が挿入される孔と、前記反応容器を付勢する付勢部材とを備えるヒートブロックと、
前記反応容器は、側面の一部に第1突起を備え、
前記付勢部材は、前記反応容器が前記孔に挿入される際に鉛直方向上側から下側へ降ろされる場合において、前記第1突起に沿って前記反応容器の外側に退避するように動作すると共に、前記反応容器が前記孔に収まった時に前記第1突起を鉛直方向下側に付勢するよう設置され、および
前記付勢部材は、前記反応容器がない状態では所定の高さに収まるように誘導され、前記反応容器が挿入される際に、前期第1突起に沿って該反応容器の外側に退避するに従い、鉛直方向の動作が許容される傾斜を持ったストッパを備える、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項7記載の自動分析装置であって、
前記付勢部材は、前記反応容器がない状態でも所定の鉛直方向の動作を許容し、前記反応容器が挿入される際に、前期第1突起に沿って前記反応容器の外側に退避するに従い、鉛直方向の動作がさらに許容される傾斜を持ったストッパを備える、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
検体と試薬の混合液を収容する反応容器であって、
その側面の一部に、スプリングによる付勢をおこなうための第1突起と、
前記側面の一部であって、前記第1突起と鉛直方向の線上から外れる位置に設けられた透光面が垂直となるように誘導するための第2突起と、を備え、
前記反応容器内の最大の反応液量時の液面高さより上側に、前記第1突起の最下面が設けられる、
ことを特徴とする反応容器。
【請求項11】
検体と試薬の混合液を収容する反応容器であって、
その側面の一部に、スプリングによる付勢をおこなうための第1突起と、
前記側面の一部であって、前記第1突起と鉛直方向の線上から外れる位置に設けられた透光面が垂直となるように誘導するための第2突起と、を備え、
前記第1突起の最下面が前記第2突起の最下面より下に位置する、
ことを特徴とする反応容器。
【請求項12】
検体と試薬の混合液を収容する反応容器であって、
その側面の一部に、スプリングによる付勢をおこなうための第1突起と、
前記側面の一部であって、前記第1突起と鉛直方向の線上から外れる位置に設けられた透光面が垂直となるように誘導するための第2突起と、を備え、
前記透光面と平行な面に前記第1突起を設ける、
ことを特徴とする反応容器。
【請求項13】
請求項9、11、12のいずれか1項に記載の反応容器であって、
前記第2突起は、前記側面の対向する位置に一対設けられる、
ことを特徴とする反応容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動分析装置、及びその反応容器に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿などの検体中における成分の分析や微生物の有無等の検査を行う自動分析装置には、生化学的検査を行う生化学自動分析装置や、免疫学的検査を行う免疫自動分析装置等がある。例えば、生化学自動分析装置では、検体に対して目的物質と反応する試薬を添加することで、化学反応により発色させ、この発色を吸光光度法により吸光度の経時変化として測光しその吸光変化率等を求め、これを検量線に代入して目的の成分濃度を求める比色分析が行われる。また免疫自動分析装置では、検体中に含まれる特定の測定対象物質に対して、特異的に反応する抗原抗体反応により標識をつけ、標識された物質量を定量化し、これを検量線に代入して目的の成分濃度を求める免疫分析が行われる。これらの反応には、その反応がもっとも効率的に進行する適切な温度が存在する。一般的に、人体に存在する物質を対象とする検体検査では、人体温に近い37℃での反応効率がよい。このため、多くの自動分析装置では測定対象物質の化学反応を、37℃付近に制御したヒートブロック等で行っている。(特許文献1参照)また、生化学自動分析装置と免疫自動分析装置の分析方式を一つに集約した複合型自動分析装置が知られている。この複合型自動分析装置で使用される反応容器についても検討されている。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2018/147029
【文献】WO2020/066165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、ヒートブロックが保持する複数の反応容器内の反応液の温度均一性の向上を簡易的な手法で実現し、かつ装置自体の大型化を抑制しつつ、測定精度の安定性向上する発明が記載されている。また、前記特許文献2では反応容器を所定温度に維持する機能を低下させることなく、反応液からの光量を測定可能な反応容器の形状について記載されている。
【0005】
一方、反応容器をヒートブロックに収容するときの適切な保持機構については言及されていない。生化学自動分析装置と免疫自動分析装置の分析方式を一つに集約した複合型自動分析装置では、反応容器はチップと同じ機構でハンドリングするため、また挿入時の位置調整のロバスト性を向上するために円筒形状が採用されている。
【0006】
また、ヒートブロックに保持された使い捨ての反応容器内の反応液に光を照射して透過光や散乱光の光量測定をする。この光量測定時にヒートブロックは回転しており、振動による反応容器のがたつきに起因して光軸ずれが発生し測定精度が低下する。
【0007】
そこで、本発明の目的は、反応容器の所定温度に維持する機能を低下させることなく、反応容器のがたつきを抑えることの可能な保持機構を有する自動分析装置、及び反応容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明おいては、検体と試薬の混合液を分析する自動分析装置であって、反応容器が挿入される孔と、前記反応容器を付勢する付勢部材とを備えるヒートブロックとを有し、前記反応容器は、側面の一部に第1突起を備え、前記付勢部材は、前記反応容器が前記孔に挿入される際に鉛直方向上側から下側へ降ろされる場合において、前記第1突起に沿って前記反応容器の外側に退避するように動作すると共に、前記反応容器が前記孔に収まった時に前記第1突起を鉛直方向下側に付勢するよう設置される構成の自動分析装置を提供する。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明においては、検体と試薬の混合液を収容する反応容器であって、その側面の一部に、スプリングによる付勢をおこなうための第1突起と、前記側面の一部であって、前記第1突起と鉛直方向の線上から外れる位置に設けられた透光面が垂直となるように誘導するための第2突起と、を備える構成の反応容器を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反応容器を所定温度に維持する機能を低下させることなく、反応容器のがたつきを抑えることの可能な保持機構を有する自動分析装置を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1に係る自動分析装置の全体構成の一例を示す図。
【
図2】実施例1に係る反応容器が設置されたヒートブロックにおける光学系を示す図。
【
図4】実施例1に係るねじりコイルばね設置位置の斜視図並びに断面図。
【
図6】実施例1に係る反応容器挿入時のねじりコイルばねの動きを示す図。
【
図9】実施例3に係るねじりコイルばねストッパの概略図。
【
図10】実施例4に係るねじりコイルばねストッパの概略図。
【
図11】実施例5に係るねじりコイルばねストッパの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明に係る自動分析装置の好ましい実施例について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0013】
図1を用いて、種々の実施例が適用される生化学検査用の自動分析装置100の全体構成の一例を説明する。自動分析装置100は、検体搬送路103、試薬ディスク104、移送部108、インキュベータ105、分光光度計113、制御部109を有する。以下、各部について説明する。なお
図1の右下に示すように、左右方向をX軸、上下方向をY軸、紙面と直交する方向である鉛直方向をZ軸とする。
【0014】
検体搬送路103は、検体を収容する複数の検体容器101が搭載される検体ラック102を検体分注部106がアクセス可能な位置へ搬送する。検体容器101に収容される検体はインキュベータ105に保持される反応容器112へ検体分注部106によって分注される。
【0015】
移送部108は、トレーに配置される消耗品である反応容器112や分注用チップをグリッパにより把持して移送する。移送部108によってトレーからインキュベータ105へ移送される反応容器112は、検体と試薬との混合液の収容に用いられ、分析毎に交換される。すなわち移送部108は、未使用の反応容器112をインキュベータ105へ移送する。
【0016】
試薬ディスク104には試薬を収容する複数の試薬容器110が保管される。試薬の劣化を軽減するために試薬ディスク104の内部は常温よりも低温に保たれる。また試薬ディスク104は試薬ディスクカバー111によって覆われる。なお
図1では試薬容器110の配置例を表すために、試薬ディスクカバー111の一部のみが示される。試薬容器110に収容される試薬は、検体が分注された反応容器112へ試薬分注部107によって分注される。
【0017】
インキュベータ105は、検体と試薬との混合液が収容される複数の反応容器112を保持するとともに、混合液を反応させるために所定の温度、例えば37℃付近に保たれる。混合液は、所定の温度に保たれるインキュベータ105に反応容器112が保持される過程で所定の時間をかけて反応させられることによって、分析に用いられる反応液になる。インキュベータ105はヒートブロックと称されることがある。
【0018】
分光光度計113は、反応容器112に収容される反応液に含まれる特定成分を分析するために、反応液の吸光度を測定する。分光光度計113は、インキュベータ105に隣接して配置され、光源や分光素子、光検出器を有する。光源にはハロゲンランプが、分光素子には回折格子が、光検出器には光電子増倍管やフォトダイオード等が用いられる。光源から放射される光は分光素子によって測定波長に分光されてから反応容器112に収容される反応液へ照射され、反応液を透過した光の強度が光検出器によって検出される。ある波長λに関する吸光度Aλは、反応液に照射された光の強度Iλ0と反応液を透過した光の強度Iλとを用いて次式によって算出される。
【0019】
Aλ=log(Iλ0/Iλ) … (式1)また吸光度Aλは、光路長Lと反応液に含まれる特定成分の濃度Cに比例するので、次式が成り立つ。
【0020】
Aλ=ε・L・C … (式2)ここでεは特定成分の種類毎に定められる比例定数である。すなわち反応液の透過光の強度Iλから算出される吸光度Aλの値と光路長Lとから特定成分の濃度Cが算出される。
【0021】
制御部109は、各部の動作を制御するとともに、分析に必要にデータの入力を受け付けたり、分析の結果を表示したり記憶したりする装置であり、例えばコンピュータである。
【0022】
図2は、インキュベータであるヒートブロック200に反応容器112を設置した状態の断面を示す図である。ヒートブロック200は反応容器112を保持する孔201を備え、反応容器112内の反応液の温度を所定温度に昇温、維持する役割を持ち、光路には光を通すためのスリット202、203が開けられる。
【0023】
光学系は、光源204、集光レンズ205、凹面回折格子206、及び受光器207とからなる。光源204から発せられた光は、集光レンズ205で集光され、照射スリット202で照射範囲を限定され、反応容器112に入射した後、反応容器112内の反応液208の吸光度に応じた光量の光が出射され、受光スリット203により受光範囲を限定され、凹面回折格子206で分光され、受光器207で受光される。ここで受光された光の波長毎の光量を電気信号に変換することにより、吸光度の測定が行われる。
【実施例1】
【0024】
実施例1は、自動分析装置であって、反応容器が搭載される複数の孔を有するヒートブロックに,反応容器を付勢するねじりコイルばねを備え,ねじりコイルばねは、ヒートブロックの孔近傍に取り付けられ,反応容器を直接付勢する腕部と腕部に復元力を与えるコイル部を有する。試薬と検体を混合した反応液を注入する反応容器は,側面の一部に第1突起を備え、反応容器が孔に挿入されるにあたり、ねじりコイルばねの腕部が第1突起に沿って退避するように動作すると共に、反応容器が孔に収まった時に第1突起を鉛直方向下側と水平方向、かつ、反応容器を孔の壁に押し付けるように付勢する構成の実施例である。
【0025】
図3は、実施例1の自動分析装置のヒートブロック200の一構成例を示す図である。ヒートブロック200の中心軸のまわりに回転自在に軸支された中空円形の盤体301に、反応容器112を複数格納する孔201を有し、孔近傍に反応容器を付勢するためのねじりコイルばね302が設置されている。ねじりコイルばね302は樹脂部品303が係合することによりヒートブロック200に固定されている。ねじりコイルばね302の設置位置は、前記の設置孔201より外周側に設けると、中空円形の盤体301の外周部に設けられた温度調整機構であるヒータ304と反応容器112の距離が離れることにより、温度制御の即応性が損なわれるため、設置孔201より内側に設置するのが望ましい。
【0026】
図4はねじりコイルばね302の固定方法を示す断面図である。同図の(a)(b)は、ねじりコイルばねの樹脂部品への設置位置の斜視図、並びにヒートブロック設置時の断面図を示す。ねじりコイルばね302はヒートブロックに設けられた孔の深さhよりコイルの自由高さ(未圧縮時の高さ)が高いものを選択し、設置時にねじりコイルばね302が圧縮されることでねじりコイルばね302の腕部の高さが定位置に復元されるように設計し、反応容器の挿入に必要な力が一定となるようにすることが望ましい。樹脂部品303には、ねじりコイルばねに設けられた回り止めとしてのねじりコイルばねの腕部401に係合する溝402を設けてあり、反応容器を付勢する側の腕部403が元の位置に復元するために機能する。尚、樹脂部品303は樹脂製でなくとも良く、回り止めとしての溝はヒートブロック側に設けても良い。
【0027】
図5は本実施例の反応容器の外観及び断面を示す図である。反応容器112は、分析に必要な光の波長に対して十分な透過率を持つプラスチック材料で構成され、基本形状としては分注チップと反応容器の双方共に同じ搬送機構で搬送するようにするために円筒形状であり、前記の円筒部側面にスプリングによる付勢をおこなうための突起部501を有する。反応容器112の突起部501は山型であり、第1突起と呼ぶことがある。
【0028】
すなわち、突起の形状は反応容器112の挿入・取り出しを考慮し、ねじりコイルばねが乗り越えやすい山型であることが望ましく、付勢のための突起部501は吸光度を測定するために反応容器の底面近傍に設けられた対向する平行な2平面502により上側に位置するようになっている。また、前記の突起部とヒートブロックは干渉しないように加工する必要があり、突起部は壁面と接触しない部分となるため、最大の反応液量(検体と試薬の合計液量)時の液面高さ503より上側に設けることで昇温性能に影響を与えないことが望ましい。
【0029】
以上の構成からなるヒートブロックおよび反応容器について、
図6の示すように反応容器112をヒートブロック200の設置孔201に格納するため鉛直方向上側から下側へ降ろされる場合において、ねじりコイルばね302は反応容器の突起部501に沿って反応容器の外側に退避するように動作すると共に、同図の右側に示すように、反応容器が設置孔201に収まった時に該突起を鉛直方向下側、および反応容器の円筒部を設置孔の壁に押し付けるように付勢する結果、反応容器112は下方と円周外側方向に押圧力を受ける。
【0030】
これにより反応容器112はがたつくことも、回転することもなく吸光度の測定の精度向上を可能としている。また、反応容器が設置孔の壁面に押し付けられるため、ヒートブロック200からの熱が反応容器112に伝わりやすくなり、温度制御性能の向上にもつなげることができる。
【実施例2】
【0031】
実施例2として実施例1の反応容器のバリエーションについて説明する。実施例2は、検体と試薬の混合液を収容する反応容器であって、その側面の一部に、スプリングによる付勢をおこなうための第1突起と、前記側面の一部であって、前記第1突起と鉛直方向の線上から外れる位置に設けられた透光面が垂直となるように誘導するための第2突起と、を備える構成の反応容器の実施例である。
【0032】
図7は本実施例の反応容器112に、透光面が垂直となるように誘導するための突出部701を追加した図である。すなわち、反応容器112の平面部502,すなわち透光面に対して光軸が垂直となるように誘導するための突出部701を追加し、樹脂部品303に係合するガイド溝を設けることで反応容器112の位置決め精度を高める構成が考えられる。本明細書においては、突起部701を第2突起と呼ぶことがある。
【0033】
突出部701は、同図に示すように2つに限らず1つでもよく、透光面に対して光軸が垂直となるように誘導できれば透光面に対して、任意の位置でも良い。形状に関しても突出部701が2つの場合、2つ目の突出部は別形状としても良い。ガイド溝が2つに対して、突出部501は1つでも良く、ガイド溝と突出部の数は揃っていなくても良い。ガイド溝は樹脂部品303だけはなく、ヒートブロックもしくはその両方に持たせても良い。
【実施例3】
【0034】
図8、
図9は実施例3に係り、ねじりコイルばねに係合する凹部901を持つ反応容器112を示す図である。反応容器112は実施例2同様、平面部502を有する。本実施例の場合、反応容器112の円筒外側に飛び出る形状ではなくなるので、ヒートブロックに突起部に対するにげ溝を加工しなくてよくなり、生産性の向上が期待できる。なお、801は、反応容器突出部701が係合する樹脂部品303の反応容器の抑え用凹部である。
【実施例4】
【0035】
図10は、ねじりコイルバネ302が矢印で示す鉛直方向にも動作できるようなすき間503を持たせた実施例4の構成における挿入途上の状態を示した図である。同図の(a)、(b)、(c)は初期状態の断面図、挿入途中の断面図、初期状態の立体断面図を示す。
【0036】
ねじりコイルバネ302の動作方向を水平方向に限定する場合、ねじりコイルバネ302の支持部との摩擦により挿入力が大きくなることが考えられる。これを解消する方法として、本実施例では、ねじりコイルバネ302が鉛直方向に動作することを許容するすき間503を設けた。この構成においては、ねじりコイルばね302は、すき間503で
図10の(b)に示す矢印の方向に動き、鉛直方向の動作限界に達してストッパ305に接触するまではねじりコイルバネ302と支持部の間で摩擦力が働かないため、小さな力で挿入することができる。また、ねじりコイルバネ302のコイル部も同時に圧縮されるため、バネの腕の部分は常に水平に近い状態となり、安定的な挿入が可能となる。
【0037】
ただし、最終的な反応容器112が固定される位置に達する前にねじりコイルバネ302が突起部501を乗り越えることを保証するため、ストッパ305は反応容器112の固定位置においてねじりコイルバネ302が突出部501より上部に来るような位置に設けることが望ましい。
【0038】
また、ねじりコイルバネ302のコイル部のバネ定数は、挿入時にバネの腕が水平に近く保たれるような値とすることが望ましく、コイル部が先に大きく圧縮されるようなバランスではコイル部が案内軸に対して傾くことで動きが渋くなることが考えられるため、コイル部が腕よりも先に下がってくるようなバネ定数のバランスは避けることが望ましい。
【実施例5】
【0039】
図11は、ねじりコイルバネ302がストッパに接触した際、挿入力を低減するため、反応容器112を挿入する力をねじりコイルバネ302を開く力とするための傾斜を持たせたストッパ306とした実施例5の構成において、挿入途上の状態を示した図である。同図の(a)、(b)、(c)は初期状態の断面図、挿入途中の断面図、初期状態の立体断面図を示す。
【0040】
反応容器112を挿入する際、ねじりコイルバネ302を水平方向だけでなく鉛直方向にも逃がすように誘導する傾斜をストッパ306に設けることで、摩擦力を低減し、より軽い力でキュベットを挿入することができる。この場合、ねじりコイルばね302は
図11中に示す矢印の方向に動く。ストッパ306の傾斜は、最終的に反応容器112が固定される位置に達する前にねじりコイルバネ302が突起部501を必ず乗り越える範囲で最大の角度とすることが望ましい。本実施例の構成は、実施例4と組み合わせることでより高い効果を発揮することができる。
【0041】
本発明は、以上説明した実施例および変形例に限定されるものではなく、さらに、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例および変形例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例や変形例の構成の一部を、他の実施例や変形例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例や変形例の構成に他の実施例や変形例の構成を加えることも可能である。また、各実施例や変形例の構成の一部について、他の実施例や変形例に含まれる構成を追加・削除・置換することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
100:自動分析装置、101:検体容器、102:検体ラック、103:検体搬送路、104:試薬ディスク、105:インキュベータ、106:検体分注部、107:試薬分注部、108:移送部、109:制御部、110:試薬容器、111:試薬ディスクカバー、112:反応容器、113:分光光度計、200…ヒートブロック、201…反応容器設置孔、202…入射側スリット、203…出射側スリット、204…光源、205…集光レンズ、206…凹面回折格子、207…受光器、208…反応液、301…盤体、302…ねじりコイルばね、303…樹脂部品、304…ヒータ、305、306…ストッパ、401…回り止め溝、501…反応容器突起部、502…反応容器平面部、503…すき間、701…反応容器突出部、801…反応容器の抑え用凹部、901…ねじりコイルばねに係合する凹部。