(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】硬質表面用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/722 20060101AFI20250317BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20250317BHJP
C11D 1/44 20060101ALI20250317BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20250317BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20250317BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20250317BHJP
【FI】
C11D1/722
C11D1/72
C11D1/44
C11D17/08
C11D1/62
C11D17/04
(21)【出願番号】P 2020204520
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田之畑 大二郎
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-136194(JP,A)
【文献】国際公開第2007/119392(WO,A1)
【文献】特開2011-132302(JP,A)
【文献】特開昭62-146285(JP,A)
【文献】特開2017-066312(JP,A)
【文献】特開2019-210318(JP,A)
【文献】特表2013-520551(JP,A)
【文献】特開2009-084456(JP,A)
【文献】米国特許第06521578(US,B1)
【文献】特開2016-079258(JP,A)
【文献】特開2014-201697(JP,A)
【文献】特開平07-279081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/722
C11D 1/72
C11D 1/44
C11D 17/08
C11D 1/62
C11D 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤(A)、下記一般式(2)で表される非イオン界面活性剤(B)、および水を含み、非イオン界面活性剤(B)に対する非イオン界面活性剤(A)の質量比(A)/(B)が0.5~8.0であ
り、水洗トイレ用洗浄剤である、硬質表面用液体洗浄剤組成物。
R
1-O-(A
1O)
n-H (1)
一般式(1)中、R
1は炭素数8~18のアルキル基もしくはアルケニル基を表し、A
1Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し6~40の数である。
【化1】
一般式(2)中、R
2は炭素数8~24のアルキル基もしくはアルケニル基を表し、A
2OおよびA
3Oはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、mおよびpはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、m+pが10~40の数である。
【請求項2】
さらにカチオン界面活性剤(C)を含む、請求項1に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記カチオン界面活性剤(C)が第4級アンモニウム塩である、請求項2に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
吐出容器に収容されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
オンタンク型の水洗トイレ用洗浄剤である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面用液体洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陶器や磁器、ガラス、金属などの硬質表面を洗浄するための液体洗浄剤組成物として、様々な界面活性剤を用いたものが提案されている。例えば、特許文献1には、ガードナー色素が3以下であるポリオキシアルキレンアルキルアミンからなる非イオン界面活性剤を必須成分とする液体洗浄剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように特許文献1には、硬質表面用の液体洗浄剤組成物としてポリオキシアルキレンアルキルアミンを用いることが記載されており、具体的にその実施例においてポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤と併用することにより、優れた洗浄性が得られることが記載されている。しかしながら、この特許文献1に記載の液体洗浄剤組成物では、硬質表面に対する防汚性に劣るという問題がある。
【0005】
本発明の実施形態は、洗浄性と防汚性を持つ硬質表面用液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る硬質表面用液体洗浄剤組成物は、下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤(A)、下記一般式(2)で表される非イオン界面活性剤(B)、および水を含み、非イオン界面活性剤(B)に対する非イオン界面活性剤(A)の質量比(A)/(B)が0.5~8.0であるものである。
R
1-O-(A
1O)
n-H (1)
一般式(1)中、R
1は炭素数8~18のアルキル基もしくはアルケニル基を表し、A
1Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し6~40の数である。
【化1】
一般式(2)中、R
2は炭素数8~24のアルキル基もしくはアルケニル基を表し、A
2OおよびA
3Oはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、mおよびpはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、m+pが10~40の数である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、上記の非イオン界面活性剤(A)と非イオン界面活性剤(B)を、両者の含有比(A)/(B)を0.5~8.0として用いることにより、硬質表面に対する洗浄性と防汚性を両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係る硬質表面用液体洗浄剤組成物(以下、「洗浄剤組成物」ということがある。)は、非イオン界面活性剤(A)と、非イオン界面活性剤(B)と、水を含有するものである。
【0009】
[非イオン界面活性剤(A)]
非イオン界面活性剤(A)は、下記一般式(1)で表される界面活性剤である。
R1-O-(A1O)n-H (1)
【0010】
式(1)中、R1は炭素数8~18のアルキル基もしくはアルケニル基を表す。アルキル基またはアルケニル基の炭素数は、10以上であることが好ましく、また16以下であることが好ましい。
【0011】
炭素数8~18のアルキル基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基またはシクロアルキル基が挙げられ、例えば、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、イソノニル、n-デシル、イソデシル、n-ドデシル、イソドデシル、n-トリデシル、イソトリデシル、n-テトラデシル、イソテトラデシル、n-ヘキサデシル、イソヘキサデシル、ステアリル等が挙げられる。炭素数8~18のアルケニル基としては、直鎖もしくは分岐のアルケニル基またはシクロアルケニル基が挙げられ、例えば、オクテニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル等が挙げられる。R1はこれらのアルキル基もしくはアルケニル基の一種のみからなるものでもよく、または2種以上の混合物でもよい。
【0012】
式(1)中、A1Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。これらはアルキレンオキサイドに由来するものであり、例えば、エチレンオキサイドに由来するオキシエチレン基、プロピレンオキサイドに由来するオキシプロピレン基、1,2-ブチレンオキサイドに由来する1,2-オキシブチレン基、2,3-ブチレンオキサイドに由来する2,3-オキシブチレン基が挙げられる。
【0013】
式(1)中のnはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、6~40の範囲に含まれる数である。該平均付加モル数nが6以上であることにより洗浄性に優れ、また40以下であることにより洗浄性に優れる。平均付加モル数nは、10以上であることが好ましく、より好ましくは12以上であり、また35以下であることが好ましい。
【0014】
式(1)の(A1O)nにおいて、複数のA1Oは同一でも異なってもよい。異なる場合の付加形式は、ランダム付加でもブロック付加でもよく、特に限定されない。
【0015】
式(1)の(A1O)nは50~100質量%のオキシエチレン基を含むことが好ましい。すなわち、式(1)の全オキシアルキレン基(AO)に占めるオキシエチレン基(EO)の含有量(EO/AO)は50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。このように(A1O)nは主としてオキシエチレン基から構成されることが好ましく、オキシエチレン基のみで構成されてもよいが、洗浄剤組成物の粘度上昇を抑えるために、オキシプロピレン基などの他のオキシアルキレン基を含むことが好ましい。例えば、(A1O)nに占めるオキシエチレン基の含有量(EO/AO)は60~85質量%でもよく、また、オキシエチレン基の含有量が60~85質量%でオキシプロピレン基の含有量が15~40質量%でもよい。
【0016】
[非イオン界面活性剤(B)]
非イオン界面活性剤(B)は、下記一般式(2)で表される界面活性剤である。
【化2】
【0017】
式(2)中、R2は、炭素数8~24のアルキル基もしくはアルケニル基を表す。アルキル基またはアルケニル基の炭素数は、10以上であることが好ましく、より好ましくは12以上であり、また20以下であることが好ましく、より好ましくは18以下である。
【0018】
炭素数8~24のアルキル基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基またはシクロアルキル基が挙げられ、例えば、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、イソノニル、n-デシル、イソデシル、n-ドデシル、イソドデシル、n-トリデシル、イソトリデシル、n-テトラデシル、イソテトラデシル、n-ヘキサデシル、イソヘキサデシル、ステアリル、ノナデシル、エイコシル、ドコシル、テトラコシル等が挙げられる。炭素数8~24のアルケニル基としては、直鎖もしくは分岐のアルケニル基またはシクロアルケニル基が挙げられ、例えば、オクテニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、ドコセニル等が挙げられる。R2はこれらのアルキル基もしくはアルケニル基の一種のみからなるものでもよく、または2種以上の混合物でもよい。
【0019】
式(2)中、A2OおよびA3Oは、それぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。これらはアルキレンオキサイドに由来するものであり、例えば、エチレンオキサイドに由来するオキシエチレン基、プロピレンオキサイドに由来するオキシプロピレン基、1,2-ブチレンオキサイドに由来する1,2-オキシブチレン基、2,3-ブチレンオキサイドに由来する2,3-オキシブチレン基が挙げられる。
【0020】
式(2)中のmおよびpはそれぞれA2OおよびA3Oの平均付加モル数を表す。mおよびpは両者の合計m+pが10~40であれば特に限定されないが、通常はそれぞれ5以上であることが好ましい。m+pが10以上であることにより、防汚性を向上することができる。また、m+pが40以下であることにより、洗浄力を向上することができる。m+pは15以上であることが好ましく、またm+pは35以下であることが好ましい。
【0021】
式(2)の(A2O)mおよび(A3O)pにおいて、複数のA2OおよびA3Oはそれぞれ同一でも異なってもよい。異なる場合の付加形式は、ランダム付加でもブロック付加でもよく、特に限定されない。
【0022】
式(2)の(A2O)mおよび(A3O)pは両者の合計で60~100質量%のオキシエチレン基を含むことが好ましい。すなわち、式(2)の全オキシアルキレン基(AO)に占めるオキシエチレン基(EO)の含有量(EO/AO)は60質量%以上100質量%以下であることが好ましい。このように(A2O)mおよび(A3O)pは主としてオキシエチレン基から構成されることが好ましく、オキシエチレン基のみで構成されてもよい。より好ましくは、式(2)の全オキシアルキレン基に占めるオキシエチレン基の含有量(EO/AO)は75~100質量%であり、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を用いる場合、オキシプロピレン基が好ましく、例えばオキシプロピレン基の含有量は0~25質量%でもよい。
【0023】
[カチオン界面活性剤(C)]
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、さらにカチオン界面活性剤(C)を含有することが好ましい。上記の非イオン界面活性剤(A)および(B)に加え、カチオン界面活性剤(C)を併用させることにより、防汚性をより一層向上することができる。
【0024】
カチオン界面活性剤(C)としては、ステアリルジメチルアミノプロピルアミドなどの脂肪酸アミドアミンを用いてもよいが、好ましくは第4級アンモニウム塩を用いることである。
【0025】
第4級アンモニウム塩としては、特に限定されず、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアルキルトリメチルアンモニウムハライド、またはこれらに対応するメチル硫酸塩; ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライドなどのジアルキルジメチルアンモニウムハライド、またはこれらに対応するメチル硫酸塩; ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリブチルベンジルアンモニウムクロライドなどのトリアルキルベンジルアンモニウムハライド、またはこれらに対応するメチル硫酸塩; オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、パルミチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートなどのアルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートなどが挙げられる。これらはいずれか一種単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
これらの中でも、第4級アンモニウム塩としては、アルキルトリメチルアンモニウムハライド、アルキルトリメチルアンモニウムメチルサルフェートなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムハライド、ジアルキルジメチルアンモニウムメチルサルフェートなどのジアルキルジメチルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウムハライド、トリアルキルベンジルアンモニウムメチルサルフェートなどのトリアルキルベンジルアンモニウム塩から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。第4級アンモニウム塩として、より好ましくは、アルキルトリメチルアンモニウム塩およびジアルキルジメチルアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも一種を用いることであり、さらに好ましくは、アルキルトリメチルアンモニウムハライド、アルキルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジアルキルジメチルアンモニウムハライドおよびジアルキルジメチルアンモニウムメチルサルフェートからなる群から選択される少なくとも一種を用いることである。ここで、アルキルトリメチルアンモニウム塩におけるアルキルの炭素数は8~24であることが好ましく、また、ジアルキルジメチルアンモニウム塩におけるアルキルの炭素数はそれぞれ8~24であることが好ましい。トリアルキルベンジルアンモニウム塩におけるアルキルの炭素数はそれぞれ1~20であることが好ましい。
【0027】
[洗浄剤組成物]
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、上記の非イオン界面活性剤(A)および(B)、好ましくはさらにカチオン界面活性剤(C)を、水に溶解又は分散させた液状の形態を持つ。洗浄剤組成物における水の含有量は、特に限定されないが、10~80質量%であることが好ましく、より好ましくは20~70質量%であり、さらに好ましくは30~60質量%である。
【0028】
該洗浄剤組成物において、非イオン界面活性剤(B)に対する非イオン界面活性剤(A)の質量比(A)/(B)は0.5~8.0であることが好ましい。この質量比(A)/(B)が0.5以上であることにより、洗浄性を向上することができる。また、質量比(A)/(B)が8.0以下であることにより、防汚性を向上することができる。質量比(A)/(B)は0.7以上であることが好ましく、より好ましくは1.0以上である。また、質量比(A)/(B)は6.0以下であることが好ましく、より好ましくは4.0以下である。
【0029】
該洗浄剤組成物における非イオン界面活性剤(A)の含有量は、特に限定されないが、10~50質量%であることが好ましく、より好ましくは15~40質量%である。また、該洗浄剤組成物における非イオン界面活性剤(B)の含有量は、特に限定されないが、1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは3~20質量%である。
【0030】
また、カチオン界面活性剤(C)を配合する場合、洗浄剤組成物におけるカチオン界面活性剤(C)の含有量は、特に限定されないが、5~30質量%であることが好ましく、より好ましくは10~25質量%である。
【0031】
該洗浄剤組成物には、上記以外の界面活性剤として、アニオン界面活性剤や両性界面活性剤、上記以外の非イオン界面活性剤を、本実施形態の効果を損なわない範囲で配合してもよい。また、該洗浄剤組成物には、上記成分の他に、本実施形態の効果を損なわない範囲で、硬質表面用液体洗浄剤組成物に通常配合されている各種添加剤を配合してもよい。そのような添加剤としては、例えば、香料、キレート剤、ビルダー、有機溶剤、pH調整剤、防腐剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0032】
香料としては、水溶性の香料または油溶性の香料を用いることができ、油溶性の香料は上記非イオン界面活性剤(A)および(B)により水中に可溶化することができる。一実施形態として香料を含む場合、洗浄剤組成物における香料の含有量は特に限定されないが、例えば0.01~20質量%でもよく、1~10質量%でもよい。
【0033】
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、上記の非イオン界面活性剤(A)および(B)、好ましい成分としてのカチオン界面活性剤(C)、水、ならびに、その他の任意成分を加えて、公知の方法により攪拌、混合することにより調製することができる。
【0034】
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、硬質表面を洗浄するために用いられる。硬質表面としては、例えば、陶器、磁器、ガラス、琺瑯、タイル、セラミックス、アルミニウム、ステンレスなどの無機物固体表面が挙げられる。具体的には、トイレ、台所周り、浴室、洗面台などにおける硬質表面を洗浄するために好ましく用いられる。
【0035】
本実施形態に係る洗浄剤組成物を用いた洗浄方法としては、特に限定されず、たとえば、(1)スポンジなどに当該洗浄剤組成物を含浸させて、スポンジで被洗浄面を擦り洗いした後、水ですすぐ、(2)被洗浄面に当該洗浄剤組成物をスプレーまたは塗付した後、水ですすぐ、あるいは(3)被洗浄面に当該洗浄剤組成物をスプレーまたは塗付した後、スポンジ等で擦り、その後水ですすぐ、などが考えられる。
【0036】
一実施形態において、上記洗浄剤組成物は水洗トイレ用洗浄剤として好ましく用いられ、より好ましくは吐出容器に収容され、洗浄時に吐出容器から水洗トイレ用洗浄剤を便器表面に吐出することで使用され、さらに好ましくはオンタンク型の水洗トイレ用洗浄剤として用いることである。オンタンク型の水洗トイレ用洗浄剤は、吐出容器に収容された水洗トイレ用洗浄剤を水洗トイレの貯水タンク上に設置し、フラッシング用の水とともに当該洗浄剤を貯水タンクに流出させるように構成したものであり、フラッシング、即ちトイレの水を流すことで、便器表面の屎尿汚れに対して洗浄力を発揮する。また、本実施形態に係る洗浄剤組成物であると、便器表面を洗浄するとともに、便器表面に防汚性を付与することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
実施例および比較例で使用した界面活性剤の詳細は以下の通りである。
[非イオン界面活性剤(A)]
・A-1:
C10アルコール(商品名:デカノール、KHネオケム株式会社製)1モルに、エチレンオキサイド9モルおよびプロピレンオキサイド4モルをランダム付加した、上記式(1)で表される化合物(ポリオキシアルキレンデシルエーテル。式(1)中、n=13、EO/AO=63質量%)。
・A-2:
C12アルコール(商品名:カルコール2098、花王株式会社製)1モルに、エチレンオキサイド14モルおよびプロピレンオキサイド3モルをランダム付加した、上記式(1)で表される化合物(ポリオキシアルキレンラウリルエーテル。式(1)中、n=17、EO/AO=78質量%)。
・A-3:
C13アルコール(商品名:トリデカノール、KHネオケム株式会社製)1モルに、エチレンオキサイド30モルおよびプロピレンオキサイド5モルをランダム付加した、上記式(1)で表される化合物(ポリオキシアルキレントリデシルエーテル。式(1)中、n=35、EO/AO=82質量%)。
【0039】
[非イオン界面活性剤(B)]
・B-1:
牛脂アミン(商品名:ニッサンアミンABT-2、日油株式会社製)1モルに、エチレンオキサイドを25モル付加した、上記式(2)で表される化合物(牛脂アミンエチレンオキサイド付加物。式(2)中、m+p=25、EO/AO=100質量%)。
・B-2:
ヤシアミン(商品名:ニッサンアミンFB、日油株式会社製)1モルに、エチレンオキサイド30モルおよびプロピレンオキサイド5モルをランダム付加した、上記式(2)で表される化合物(ヤシアミンアルキレンオキサイド付加物。式(2)中、m+p=35、EO/AO=82質量%)。
・B-3:
ラウリルアミン(商品名:ニッサンアミンBB、日油株式会社製)1モルに、エチレンオキサイドを10モル付加した、上記式(2)で表される化合物(ラウリルアミンエチレンオキサイド付加物。式(2)中、m+p=10、EO/AO=100質量%)。
【0040】
[カチオン界面活性剤(C)]
・C-1:
ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:カチオーゲンDDM-PG、第一工業製薬株式会社製)
・C-2:
セチルトリメチルアンモニウムクロライド(商品名:カチオーゲンTMP、第一工業製薬株式会社製)
【0041】
[アニオン界面活性剤]
・D-1:
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム(商品名:ハイテノール227L、第一工業製薬株式会社製)
[両性界面活性剤]
・D-2:
ラウリルジメチルアミンオキサイド(商品名:アモーゲンAOL、第一工業製薬株式会社製)
【0042】
[その他の非イオン界面活性剤]
・E-1:
イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(商品名:ノイゲンGIS-125、第一工業製薬株式会社製)
・E-2:
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(商品名:ソルゲンTW-80、第一工業製薬株式会社製)
・E-3:
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(商品名:エパン450、第一工業製薬株式会社製)
【0043】
下記表1に示す配合(質量%)に従い、各原料を混合することにより実施例1~11および比較例1~8の洗浄剤組成物を得た。表1中の配合は、水以外の成分については固形分としての割合であり、水の配合量については、該水以外の成分に含まれる水の量も含めた洗浄剤組成物全体での水の割合である。
【0044】
得られた実施例1~11および比較例1~8の各洗浄剤組成物について、以下の方法により、洗浄性と防汚性を評価した。
【0045】
[洗浄性]
スライドガラスに疑似便20mgを塗付し、当該スライドガラスを洗浄剤組成物の1質量%水溶液300mLに30秒間浸漬した。次に、当該スライドガラスを1L/分の流水ですすぎを行った。その後、スライドガラス上の疑似便残りをデジタルカメラで撮影し、得られた画像を使用して、洗浄前の疑似便の塗布面積に対する洗浄後の残渣の面積比率を計測し、下記の基準で評価した。
A:残渣なし
B:残渣10%未満
C:残渣10%以上
【0046】
[防汚性]
洗浄剤組成物0.1gを水で2万倍に希釈し、2Lの希釈水溶液を得た。ガラス板(10cm×10cm)を上記希釈水溶液に10秒間浸漬し、90°で立てかけ20℃で2時間静置し、乾燥した。次いで、ガラス板の表面に疑似便10gを塗布した後、流水で10秒間すすいだ。そして、ガラス板の表面を目視で確認し、下記の基準で評価した。
A:1L/分の流水ですすいだあとに、ガラス板の疑似便が残らない。
B:3L/分の流水ですすいだあとに、ガラス板の表面に疑似便が残らない。
C:3L/分の流水ですすいだあとに、ガラス板の表面に疑似便が残る。
【0047】
洗浄性と防汚性の評価における疑似便の組成は、米みそ50質量%、キサンタンガム5質量%、オレイン酸2.3質量%、水42.7質量%であり、これらを混合して水酸化ナトリウムでpH7に調製したものを疑似便として用いた。
【0048】
【0049】
結果は表1に示す通りである。比較例1,2では、ポリオキシアルキレンアルキルアミン型の非イオン界面活性剤(B)とカチオン界面活性剤(C)を併用したが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型の非イオン界面活性剤(A)を配合していないため、洗浄性および防汚性に劣っていた。比較例3,5では、非イオン界面活性剤(A)および(B)を併用したが、両者の質量比(A)/(B)が大きすぎて、防汚性に劣っていた。比較例4では、この質量比(A)/(B)が小さすぎて、洗浄性に劣っていた。比較例6~8は、ポリオキシアルキレンアルキルアミン型の非イオン界面活性剤(B)とともに、その他のアルキレンオキサイド付加型非イオン界面活性剤を併用した例であり、洗浄性に劣っていた。
【0050】
これに対し、非イオン界面活性剤(A)および(B)を併用し、両者の質量比(A)/(B)を0.5~8.0の範囲内とした実施例1~11では、洗浄性に優れるとともに、防汚性も付与されていた。特に、非イオン界面活性剤(A)および(B)に加えてカチオン界面活性剤(C)を配合した実施例1~6および9~11であると、洗浄性と防汚性ともに優れた効果が得られた。
【0051】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。