(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】同期精度評価装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20250318BHJP
H04J 3/06 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
H04L7/00 990
H04J3/06
(21)【出願番号】P 2021162977
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2024-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】山本 紘暉
(72)【発明者】
【氏名】砥板 秀雄
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特許第6869447(JP,B2)
【文献】特開2018-78351(JP,A)
【文献】特開2019-61565(JP,A)
【文献】特開2020-195056(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0304224(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
H04J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランドマスター機器、並びに映像、音声及び補助データの送受信を行うスイッチ及び複数のデバイスから構成され、マスターとして機能する前記グランドマスター機器及びスレーブとして機能する前記スイッチの間でPTP(Precision Time Protocol)メッセージの送受信を行うと共に、前記マスターとして機能する前記スイッチ及び前記スレーブとして機能する前記複数のデバイスの間で前記PTPメッセージの送受信を行うIP放送システムの下で、当該IP放送システムの時刻同期の精度を評価する同期精度評価装置であって、
前記スイッチから、当該スイッチによりコピーされた前記PTPメッセージを受信し、前記PTPメッセージの受信時刻を特定する受信部と、
前記受信部により受信された前記PTPメッセージの種類として、Syncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージを判定すると共に、前記PTPメッセージの送信元情報及び宛先情報を特定し、
前記Delay Requestメッセージに含まれる時刻情報(前記スレーブによる前記Delay Requestメッセージの送信時刻であるDReq時刻情報)、前記受信部により特定された前記Delay Requestメッセージの前記受信時刻(DReq受信時刻)、前記Delay Requestメッセージの前記送信元情報(DReq送信元情報)及び前記宛先情報、並びに、前記Delay Responseメッセージに含まれる時刻情報(前記マスターによる前記Delay Requestメッセージの受信時刻であるDRes時刻情報)、前記受信部により特定された前記Delay Responseメッセージの前記受信時刻(DRes受信時刻)、並びに前記Delay Responseメッセージの前記送信元情報及び前記宛先情報(DRes宛先情報)をメモリに格納する解析部と、
前記スイッチを前記マスターとし、前記複数のデバイスのそれぞれを前記スレーブとした場合に、
前記複数のデバイスのそれぞれについて、前記メモリから、前記DReq送信元情報として特定された前記デバイスに対応する前記DReq時刻情報及び前記DReq受信時刻を読み出すと共に、前記DRes宛先情報として特定された前記デバイスに対応する前記DRes時刻情報及び前記DRes受信時刻を読み出し、
前記DReq時刻情報、前記DReq受信時刻、前記DRes時刻情報及び前記DRes受信時刻に基づいて、前記スイッチ及び前記デバイスの間における時刻のオフセットの変動量を、前記デバイスのPTPオフセット変動量ΔOとして算出するデバイスPTPオフセット算出部と、
を備えたことを特徴とする同期精度評価装置。
【請求項2】
グランドマスター機器、並びに映像、音声及び補助データの送受信を行うスイッチ及び複数のデバイスから構成され、マスターとして機能する前記グランドマスター機器及びスレーブとして機能する前記スイッチの間でPTP(Precision Time Protocol)メッセージの送受信を行うと共に、前記マスターとして機能する前記スイッチ及び前記スレーブとして機能する前記複数のデバイスの間で前記PTPメッセージの送受信を行うIP放送システムの下で、当該IP放送システムの時刻同期の精度を評価する同期精度評価装置であって、
前記スイッチから、当該スイッチによりコピーされた前記PTPメッセージを受信し、前記PTPメッセージの受信時刻を特定する受信部と、
前記受信部により受信された前記PTPメッセージの種類として、Syncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージを判定すると共に、前記PTPメッセージの送信元情報及び宛先情報を特定し、
前記Delay Requestメッセージに含まれる時刻情報(前記スレーブによる前記Delay Requestメッセージの送信時刻であるDReq時刻情報)、前記受信部により特定された前記Delay Requestメッセージの前記受信時刻(DReq受信時刻)、前記Delay Requestメッセージの前記送信元情報(DReq送信元情報)及び前記宛先情報、並びに、前記Delay Responseメッセージに含まれる時刻情報(前記マスターによる前記Delay Requestメッセージの受信時刻であるDRes時刻情報)、前記受信部により特定された前記Delay Responseメッセージの前記受信時刻(DRes受信時刻)、並びに前記Delay Responseメッセージの前記送信元情報及び前記宛先情報(DRes宛先情報)をメモリに格納する解析部と、
前記グランドマスター機器を前記マスターとし、前記スイッチを前記スレーブとした場合に、
前記メモリから、前記DReq送信元情報として特定された前記スイッチに対応する前記DReq時刻情報及び前記DReq受信時刻を読み出すと共に、前記DRes宛先情報として特定された前記スイッチに対応する前記DRes時刻情報及び前記DRes受信時刻を読み出し、
前記DReq時刻情報、前記DReq受信時刻、前記DRes時刻情報及び前記DRes受信時刻に基づいて、前記グランドマスター機器及び前記スイッチの間における時刻のオフセットの変動量を、前記スイッチのPTPオフセット変動量ΔOとして算出するスイッチPTPオフセット算出部と、
を備えたことを特徴とする同期精度評価装置。
【請求項3】
請求項1に記載の同期精度評価装置において、
前記Syncメッセージ、前記Delay Requestメッセージ及び前記Delay Responseメッセージの送受信を1つのシーケンスとし、当該シーケンスが連続して行われる場合の前記シーケンスの番号をkとして、
前記デバイスPTPオフセット算出部は、
前記デバイスによる前記Delay Requestメッセージの前記送信時刻である前記DReq時刻情報をTd
k,3、前記受信部により特定された前記Delay Requestメッセージの前記受信時刻である前記DReq受信時刻をTs
k,4、前記スイッチによる前記Delay Requestメッセージの前記受信時刻である前記DRes時刻情報をTMb
k,4、前記受信部により特定された前記Delay Responseメッセージの前記受信時刻である前記DRes受信時刻をTs
k,5、予め設定されたパラメータをn(1以上の整数)として、
以下の式:
により、前記デバイスの前記PTPオフセット変動量ΔOを算出する、ことを特徴とする同期精度評価装置。
【請求項4】
請求項2に記載の同期精度評価装置において、
前記Syncメッセージ、前記Delay Requestメッセージ及び前記Delay Responseメッセージの送受信を1つのシーケンスとし、当該シーケンスが連続して行われる場合の前記シーケンスの番号をkとして、
前記スイッチPTPオフセット算出部は、
前記スイッチによる前記Delay Requestメッセージの前記送信時刻である前記DReq時刻情報をTSb
k,3、前記受信部により特定された前記Delay Requestメッセージの前記受信時刻である前記DReq受信時刻をTs
k,3、前記グランドマスター機器による前記Delay Requestメッセージの前記受信時刻である前記DRes時刻情報をTg
k,4、前記受信部により特定された前記Delay Responseメッセージの前記受信時刻である前記DRes受信時刻をTs
k,6、予め設定されたパラメータをn(1以上の整数)として、
以下の式:
により、前記スイッチの前記PTPオフセット変動量ΔOを算出する、ことを特徴とする同期精度評価装置。
【請求項5】
請求項1または3に記載の同期精度評価装置において、
さらに、前記複数のデバイスのうちの1以上の前記デバイスについて、前記デバイスPTPオフセット算出部により算出された前記PTPオフセット変動量ΔOが予め設定された閾値を超えると判定した場合、デバイス同期異常を出力するデバイス同期監視部、を備えたことを特徴とする同期精度評価装置。
【請求項6】
請求項2または4に記載の同期精度評価装置において、
さらに、前記スイッチについて、前記スイッチPTPオフセット算出部により算出された前記PTPオフセット変動量ΔOが予め設定された閾値を超えると判定した場合、スイッチ同期異常を出力するスイッチ同期監視部、を備えたことを特徴とする同期精度評価装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1から6までのいずれか一項に記載の同期精度評価装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTP(Precision Time Protocol)により時刻同期を実現するIP(Internet Protocol)システムにおいて、特に、番組制作及び送出等の時刻同期を評価する同期精度評価装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IPシステム上で精密な時刻同期を行うための規格として、PTPが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。また、IPベースの番組制作システム、送出システム等の放送システム(以下、「IP放送システム」という。)は、PTPを用いて、システム内の各機器の同期を確立している。
【0003】
このIP放送システムを安定に運用するためには、システム内の任意の機器の時間差(同期精度)が1μs以下であることが推奨されている(例えば、非特許文献2を参照)。特に、IP放送システムにおいては、映像及び音声等を生成するエンドデバイス群から任意に選んだ2つのエンドデバイスについて、エンドデバイスに備えたスレーブクロックのマスタークロックに対する同期精度が1μs以下に収束することが望ましい。
【0004】
同期精度の測定方法としては、オシロスコープ等の測定器を用いる方法が知られている。これは、IP放送システム内のマスタークロックと、そのマスタークロックを基準として同期を確立しようとするスレーブクロックとの間の高精度タイムパルス(1PPS)出力の位相差を、測定器を用いて測定するものである。
【0005】
また、マスタークロックを備えたマスター機器と、スレーブクロックを備えたスレーブ機器との間で送受信されるメッセージを用いて、これらの機器間の同期精度を算出し、補正する方法も知られている(例えば特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6869447号公報
【文献】特開2018-78351号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】IEEE Std,1588-2008
【文献】SMPTE ST 2059-2:2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の測定器を用いた方法では、IP放送システムを構成する機器を変更する毎に、高精度タイムパルス(1PPS)を測定する測定用系統を再構築する必要があり、測定に手間がかかる。また、IP放送システムが多数の機器により構成される場合には、日常的かつ簡易に同期精度を測定することが困難である。
【0009】
これに対し、前述の特許文献1,2の方法では、マスター機器とスレーブ機器との間で送受信されるメッセージを取得すれば済むため、簡易に同期精度を測定することができる。
【0010】
しかしながら、IP放送システムを構成する全ての機器の同期精度を測定し、これを評価するためには、全ての機器が前述の特許文献1,2の機能を実装する必要がある。このため、既存の機器では対応することができず、IP放送システム全体の同期精度を簡易に評価することが困難である、という問題があった。
【0011】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、PTPを用いるIP放送システムにおいて、同期精度を簡易に評価することが可能な同期精度評価装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、請求項1の同期精度評価装置は、グランドマスター機器、並びに映像、音声及び補助データの送受信を行うスイッチ及び複数のデバイスから構成され、マスターとして機能する前記グランドマスター機器及びスレーブとして機能する前記スイッチの間でPTP(Precision Time Protocol)メッセージの送受信を行うと共に、前記マスターとして機能する前記スイッチ及び前記スレーブとして機能する前記複数のデバイスの間で前記PTPメッセージの送受信を行うIP放送システムの下で、当該IP放送システムの時刻同期の精度を評価する同期精度評価装置であって、前記スイッチから、当該スイッチによりコピーされた前記PTPメッセージを受信し、前記PTPメッセージの受信時刻を特定する受信部と、前記受信部により受信された前記PTPメッセージの種類として、Syncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージを判定すると共に、前記PTPメッセージの送信元情報及び宛先情報を特定し、前記Delay Requestメッセージに含まれる時刻情報(前記スレーブによる前記Delay Requestメッセージの送信時刻であるDReq時刻情報)、前記受信部により特定された前記Delay Requestメッセージの前記受信時刻(DReq受信時刻)、前記Delay Requestメッセージの前記送信元情報(DReq送信元情報)及び前記宛先情報、並びに、前記Delay Responseメッセージに含まれる時刻情報(前記マスターによる前記Delay Requestメッセージの受信時刻であるDRes時刻情報)、前記受信部により特定された前記Delay Responseメッセージの前記受信時刻(DRes受信時刻)、並びに前記Delay Responseメッセージの前記送信元情報及び前記宛先情報(DRes宛先情報)をメモリに格納する解析部と、前記スイッチを前記マスターとし、前記複数のデバイスのそれぞれを前記スレーブとした場合に、前記複数のデバイスのそれぞれについて、前記メモリから、前記DReq送信元情報として特定された前記デバイスに対応する前記DReq時刻情報及び前記DReq受信時刻を読み出すと共に、前記DRes宛先情報として特定された前記デバイスに対応する前記DRes時刻情報及び前記DRes受信時刻を読み出し、前記DReq時刻情報、前記DReq受信時刻、前記DRes時刻情報及び前記DRes受信時刻に基づいて、前記スイッチ及び前記デバイスの間における時刻のオフセットの変動量を、前記デバイスのPTPオフセット変動量ΔOとして算出するデバイスPTPオフセット算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2の同期精度評価装置は、グランドマスター機器、並びに映像、音声及び補助データの送受信を行うスイッチ及び複数のデバイスから構成され、マスターとして機能する前記グランドマスター機器及びスレーブとして機能する前記スイッチの間でPTP(Precision Time Protocol)メッセージの送受信を行うと共に、前記マスターとして機能する前記スイッチ及び前記スレーブとして機能する前記複数のデバイスの間で前記PTPメッセージの送受信を行うIP放送システムの下で、当該IP放送システムの時刻同期の精度を評価する同期精度評価装置であって、前記スイッチから、当該スイッチによりコピーされた前記PTPメッセージを受信し、前記PTPメッセージの受信時刻を特定する受信部と、前記受信部により受信された前記PTPメッセージの種類として、Syncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージを判定すると共に、前記PTPメッセージの送信元情報及び宛先情報を特定し、前記Delay Requestメッセージに含まれる時刻情報(前記スレーブによる前記Delay Requestメッセージの送信時刻であるDReq時刻情報)、前記受信部により特定された前記Delay Requestメッセージの前記受信時刻(DReq受信時刻)、前記Delay Requestメッセージの前記送信元情報(DReq送信元情報)及び前記宛先情報、並びに、前記Delay Responseメッセージに含まれる時刻情報(前記マスターによる前記Delay Requestメッセージの受信時刻であるDRes時刻情報)、前記受信部により特定された前記Delay Responseメッセージの前記受信時刻(DRes受信時刻)、並びに前記Delay Responseメッセージの前記送信元情報及び前記宛先情報(DRes宛先情報)をメモリに格納する解析部と、前記グランドマスター機器を前記マスターとし、前記スイッチを前記スレーブとした場合に、前記メモリから、前記DReq送信元情報として特定された前記スイッチに対応する前記DReq時刻情報及び前記DReq受信時刻を読み出すと共に、前記DRes宛先情報として特定された前記スイッチに対応する前記DRes時刻情報及び前記DRes受信時刻を読み出し、前記DReq時刻情報、前記DReq受信時刻、前記DRes時刻情報及び前記DRes受信時刻に基づいて、前記グランドマスター機器及び前記スイッチの間における時刻のオフセットの変動量を、前記スイッチのPTPオフセット変動量ΔOとして算出するスイッチPTPオフセット算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項3の同期精度評価装置は、請求項1に記載の同期精度評価装置において、前記Syncメッセージ、前記Delay Requestメッセージ及び前記Delay Responseメッセージの送受信を1つのシーケンスとし、当該シーケンスが連続して行われる場合の前記シーケンスの番号をkとして、前記デバイスPTPオフセット算出部が、前記デバイスによる前記Delay Requestメッセージの前記送信時刻である前記DReq時刻情報をTd
k,3、前記受信部により特定された前記Delay Requestメッセージの前記受信時刻である前記DReq受信時刻をTs
k,4、前記スイッチによる前記Delay Requestメッセージの前記受信時刻である前記DRes時刻情報をTMb
k,4、前記受信部により特定された前記Delay Responseメッセージの前記受信時刻である前記DRes受信時刻をTs
k,5、予め設定されたパラメータをn(1以上の整数)として、以下の式:
により、前記デバイスの前記PTPオフセット変動量ΔOを算出する、ことを特徴とする。
【0015】
また、請求項4の同期精度評価装置は、請求項2に記載の同期精度評価装置において、前記Syncメッセージ、前記Delay Requestメッセージ及び前記Delay Responseメッセージの送受信を1つのシーケンスとし、当該シーケンスが連続して行われる場合の前記シーケンスの番号をkとして、前記スイッチPTPオフセット算出部が、前記スイッチによる前記Delay Requestメッセージの前記送信時刻である前記DReq時刻情報をTSb
k,3、前記受信部により特定された前記Delay Requestメッセージの前記受信時刻である前記DReq受信時刻をTs
k,3、前記グランドマスター機器による前記Delay Requestメッセージの前記受信時刻である前記DRes時刻情報をTg
k,4、前記受信部により特定された前記Delay Responseメッセージの前記受信時刻である前記DRes受信時刻をTs
k,6、予め設定されたパラメータをn(1以上の整数)として、以下の式:
により、前記スイッチの前記PTPオフセット変動量ΔOを算出する、ことを特徴とする。
【0016】
また、請求項5の同期精度評価装置は、請求項1または3に記載の同期精度評価装置において、さらに、前記複数のデバイスのうちの1以上の前記デバイスについて、前記デバイスPTPオフセット算出部により算出された前記PTPオフセット変動量ΔOが予め設定された閾値を超えると判定した場合、デバイス同期異常を出力するデバイス同期監視部、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項6の同期精度評価装置は、請求項2または4に記載の同期精度評価装置において、さらに、前記スイッチについて、前記スイッチPTPオフセット算出部により算出された前記PTPオフセット変動量ΔOが予め設定された閾値を超えると判定した場合、スイッチ同期異常を出力するスイッチ同期監視部、を備えたことを特徴とする。
【0018】
さらに、請求項7のプログラムは、コンピュータを、請求項1から6までのいずれか一項に記載の同期精度評価装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、PTPを用いるIP放送システムにおいて、同期精度を簡易に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態による同期精度評価装置を含むIP放送システムの全体構成例を示す概略図である。
【
図2】同期精度評価装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】メモリに格納されたS情報、DReq情報及びDRes情報の詳細を説明する図である。
【
図4】送出デバイスPTPオフセット算出部の処理例を示すフローチャートである。
【
図5】マスターとして機能する送出スイッチ及びスレーブとして機能する送出デバイス間のPTPメッセージのシーケンスを示す図である。
【
図6】
図5のシーケンスにおける時間のパラメータを説明する図である。
【
図7】マスターとして機能する送出スイッチ及びスレーブとして機能する送出デバイス間の時刻推移を示す図である。
【
図8】送出スイッチPTPオフセット算出部の処理例を示すフローチャートである。
【
図9】マスターとして機能するグランドマスター機器及びスレーブとして機能する送出スイッチ間のPTPメッセージのシーケンスを示す図である。
【
図10】
図9のシーケンスにおける時間のパラメータを説明する図である。
【
図11】マスターとして機能するグランドマスター機器及びスレーブとして機能する送出スイッチ間の時刻推移を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態による同期精度評価装置を含む他のIP放送システムの全体構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、IP放送システムにおいて、機器間で送受信されるPTPメッセージを傍受し、Delay Requestメッセージに含まれる時刻情報及び当該Delay Requestメッセージの受信時刻、並びにDelay Responseメッセージに含まれる時刻情報及び当該Delay Responseメッセージの受信時刻に基づいて、所定式により、マスターとして機能する機器の時刻に対し、スレーブとして機能する機器の時刻のオフセットの変動量をPTPオフセット変動量ΔOとして算出することを特徴とする。
【0022】
PTPを用いるIP放送システムにおいて、本発明を実施するための新たな機能を各機器に実装する必要がないため、システム全体の同期精度を簡易に評価することができる。
【0023】
〔全体構成〕
まず、PTPを用いるIP放送システムの全体構成例について説明する。
図1は、本発明の実施形態による同期精度評価装置を含むIP放送システムの全体構成例を示す概略図である。このIP放送システムは、番組送出システムを例とした、1つの施設を備えた最小限の基本的なシステムであり、施設内で、映像、音声及び補助データを含むマルチキャストパケットが伝送される。
【0024】
このIP放送システム1Aは、グランドマスター機器4、送出スイッチ5及び送出デバイス6-1,・・・,6-Nを備えて構成され、さらに、同期精度評価装置2及び時刻監視端末3を備えている。Nは2以上の整数である。ネットワーク機器は省略してある。以下、送出デバイス6-1,・・・,6-Nを総称して送出デバイス6という。IP放送システム1Aは、SMPTE ST 2110で規定される映像音声データをIPネットワークにより伝送する放送システム全般を指している。
【0025】
IP放送システム1Aは、制作スタジオ等の映像及び音声等を制作する施設(以下、「送出リソース」という。)、送出リソースから映像及び音声等を受信して切り替え、送出する施設(以下、「送出マスター」という。)が接続された大規模なシステムのうち、1つの施設を含む最小限のシステムに相当する。ここでの1つの施設は、送出リソースまたは送出マスターであり、送出スイッチ5及び送出デバイス6-1,・・・,6-Nから構成される(
図1の点線の個所)。
【0026】
尚、複数の送出リソース及び送出マスターの各種施設が接続された大規模システムについては、後述する
図12にて説明する。
【0027】
時刻監視端末3を操作する送出担当者は、施設内の送出スイッチ5及び送出デバイス6-1,・・・,6-Nの各機器のヘルスチェック、放送映像及び音声の監視等の保守作業を行う技術者である。この送出担当者は、同期精度評価装置2により算出される送出スイッチ5及び送出デバイス6-1,・・・,6-Nの各機器についてのPTPオフセット変動量ΔOを定量的に観測する。
【0028】
同期精度評価装置2は、送出スイッチ5から、時刻情報を含むPTPメッセージを受信し、PTPメッセージをメモリに格納して解析する。そして、同期精度評価装置2は、PTPメッセージに含まれる時刻情報及びPTPメッセージの受信時刻(当該同期精度評価装置2がPTPメッセージを受信した時刻)に基づいて、送出スイッチ5及び送出デバイス6-1,・・・,6-Nの各機器のPTPオフセット変動量ΔOを算出したり、PTPオフセット変動量ΔOを閾値処理して同期異常を判断したりする等により、計測データを生成する。
【0029】
また、同期精度評価装置2は、PTPオフセット変動量ΔOを、時系列グラフ等の人間が視認し易い可視化したデータ(以下、「時刻同期情報」という。)に加工し、時刻同期情報を時刻監視端末3へ送信する。さらに、同期精度評価装置2は、時刻監視端末3から要求を受信し、要求に応じて計測データを検索または参照し、その結果を要求に対する応答として時刻監視端末3へ送信する。同期精度評価装置2の詳細については後述する。
【0030】
時刻監視端末3は、同期精度評価装置2から時刻同期情報を受信し、時刻同期情報をWEBブラウザ等に画面表示する。また、時刻監視端末3は、送出担当者による検索または参照の操作に従い、その要求を同期精度評価装置2へ送信し、同期精度評価装置2から要求に対応する応答を受信し、応答をWEBブラウザ等に画面表示する。
【0031】
グランドマスター機器4は、国際原子時及びクロック周波数を生成し、これらに基づいて動作するグランドマスタークロックを備える。グランドマスター機器4は、グランドマスタークロックの時刻に従い、PTP v2によりメッセージングを行う。
【0032】
グランドマスター機器4は、マスターとして機能し、スレーブとして機能する送出スイッチ5との間でPTPメッセージの送受信を行う。
【0033】
送出スイッチ5は、PTP対応のネットワークスイッチである。尚、ここでは、番組送出システムを構成するIP放送システム1Aを例としているため、送出スイッチ5において送出という名称を使用しているが、このスイッチは、番組制作システム等の他の放送システムにも適用がある。つまり、このスイッチは、番組送出システム、番組制作システム等の放送システムに用いるネットワークスイッチである。
【0034】
送出スイッチ5は、施設(点線で示した個所)内の送出デバイス6から、映像、音声及び補助データを含むマルチキャストパケットを受信し、マルチキャストパケットを施設内の他の送出デバイス6へ転送する。また、送出スイッチ5は、PIM-SSM(Protocol Independent Multicast Source Specific Multicast)により、隣接する図示しないマルチキャストルータとの間でマルチキャストルート情報を交換し、マルチキャストの経路情報を更新する。
【0035】
送出スイッチ5は、バウンダリークロック(BC)を備え、バウンダリークロックの時刻に従い、PTP v2によりメッセージングを行う。送出スイッチ5は、マスターであるグランドマスター機器4に対し、スレーブとして機能すると共に、スレーブである送出デバイス6に対し、マスターとして機能する。
【0036】
送出スイッチ5は、スレーブとして機能する場合、マスターとして機能するグランドマスター機器4との間でPTPメッセージの送受信を行う。そして、送出スイッチ5は、バウンダリークロックの時刻(PTP時刻)を補正することで、バウンダリークロックの時刻を、グランドマスター機器4に備えたグランドマスタークロックの時刻に同期させる。
【0037】
一方、送出スイッチ5は、マスターとして機能する場合、スレーブとして機能する送出デバイス6との間でPTPメッセージの送受信を行う。
【0038】
また、送出スイッチ5は、グランドマスター機器4及び送出デバイス6との間で送受信するPTPメッセージを、ポートミラーリングによりコピーし、コピーしたPTPメッセージを同期精度評価装置2へ送信する。
【0039】
つまり、送出スイッチ5は、グランドマスター機器4から受信したPTPメッセージをコピーして同期精度評価装置2へ送信すると共に、グランドマスター機器4へ送信したPTPメッセージをコピーして同期精度評価装置2へ送信する。また、送出スイッチ5は、送出デバイス6へ送信したPTPメッセージをコピーして同期精度評価装置2へ送信すると共に、送出デバイス6から受信したPTPメッセージをコピーして同期精度評価装置2へ送信する。
【0040】
送出デバイス6は、PTP対応のネットワークに用いる放送用のデバイスである。尚、ここでは、番組送出システムを構成するIP放送システム1Aを例としているため、送出デバイス6において送出という名称を使用しているが、このデバイスは、番組制作システム等の他の放送システムにも適用がある。つまり、このデバイスは、番組送出システム、番組制作システム等の放送システムを構成する放送機器である。
【0041】
送出デバイス6は、SMPTE ST 2110形式の映像、音声及び補助データを生成し、映像、音声及び補助データを含むマルチキャストパケットを送出スイッチ5へ送信する。また、送出デバイス6は、IGMP(Internet Group Management Protocol) v3により送出スイッチ5からマルチキャストパケットを受信し、マルチキャストパケットから映像、音声及び補助データを抽出し処理する。
【0042】
送出デバイス6は、スレーブとして機能し、スレーブクロックを備え、スレーブクロックの時刻に従い動作する。送出デバイス6は、マスターとして機能する送出スイッチ5との間でPTPメッセージの送受信を行う。そして、送出デバイス6は、スレーブクロックの時刻(PTP時刻)を補正することで、スレーブクロックの時刻を、送出スイッチ5に備えたバウンダリークロックの時刻に同期させる。
【0043】
〔同期精度評価装置2〕
次に、
図1に示した同期精度評価装置2について詳細に説明する。
図2は、同期精度評価装置2の構成例を示すブロック図である。
【0044】
この同期精度評価装置2は、受信部20、メモリ21,23,26、解析部22、送出デバイスPTPオフセット算出部24、送出スイッチPTPオフセット算出部25、送出デバイス同期監視部27、送出スイッチ同期監視部28、加工部29、要求処理部30及び送受信部31を備えている。
【0045】
受信部20は、送出スイッチ5から時刻情報を含むPTPメッセージを受信し、当該受信部20がPTPメッセージを受信した時刻(受信時刻)を特定し、受信時刻と共にPTPメッセージをメモリ21に格納する。
【0046】
PTPメッセージには、SyncのPTPメッセージ(以下、「Syncメッセージ」という。)、Delay RequestのPTPメッセージ(以下、「Delay Requestメッセージ」という。)及びDelay ResponseのPTPメッセージ(以下、「Delay Responseメッセージ」という。)がある。
【0047】
Syncメッセージは、マスターからスレーブへ送信され、マスターが当該Syncメッセージを送信する時刻(送信時刻)を含むメッセージである。Delay Requestメッセージは、スレーブからマスターへ送信され、スレーブが当該Delay Requestメッセージを送信する時刻(送信時刻)を含むメッセージである。Delay Responseメッセージは、マスターからスレーブへ送信され、マスターがスレーブからDelay Requestメッセージを受信した時刻(受信時刻)を含むメッセージである。
【0048】
後述する
図5を参照して、送出スイッチ5がマスターとして機能し、送出デバイス6がスレーブとして機能する場合を想定する。この場合、例えばSyncメッセージ(1)は、送出スイッチ5から送出デバイス6へ送信され、送出スイッチ5が当該Syncメッセージ(1)を送信する時刻(時刻情報TMb
0,1(α0(k=0)))を含むメッセージである。このSyncメッセージ(1)は、送出スイッチ5にてコピーされ、同期精度評価装置2へ送信される。
【0049】
また、Delay Requestメッセージ(2)は、送出デバイス6から送出スイッチ5へ送信され、送出デバイス6が当該Delay Requestメッセージ(2)を送信する時刻(時刻情報Td0,3(α1(k=0)))を含むメッセージである。このDelay Requestメッセージ(2)は、送出スイッチ5にてコピーされ、同期精度評価装置2へ送信される。
【0050】
また、Delay Responseメッセージ(3)は、送出スイッチ5から送出デバイス6へ送信され、送出スイッチ5が送出デバイス6からDelay Requestメッセージを受信した時刻(時刻情報TMb0,4(α2(k=0)))を含むメッセージである。このDelay Responseメッセージ(3)は、送出スイッチ5にてコピーされ、同期精度評価装置2へ送信される。
【0051】
図2に戻って、メモリ21には、Syncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージが、受信時刻と共に格納される。
【0052】
具体的に、後述する
図5を参照して、送出スイッチ5がマスターとして機能し、送出デバイス6がスレーブとして機能する場合、メモリ21は、マスターの送出スイッチ5からスレーブの送出デバイス6へ送信されたSyncメッセージ、スレーブの送出デバイス6からマスターの送出スイッチ5へ送信されたDelay Requestメッセージ、及びマスターの送出スイッチ5からスレーブの送出デバイス6へ送信されたDelay Responseメッセージが、それぞれ受信時刻と共に格納される。
【0053】
また、後述する
図9を参照して、グランドマスター機器4がマスターとして機能し、送出スイッチ5がスレーブとして機能する場合、メモリ21には、マスターのグランドマスター機器4からスレーブの送出スイッチ5へ送信されたSyncメッセージ、スレーブの送出スイッチ5からマスターのグランドマスター機器4へ送信されたDelay Requestメッセージ、及びマスターのグランドマスター機器4からスレーブの送出スイッチ5へ送信されたDelay Responseメッセージが、それぞれ受信時刻と共に格納される。
【0054】
図2に戻って、解析部22は、メモリ21からPTPメッセージ及び受信時刻を読み出し、PTPメッセージのヘッダー(PTPメッセージヘッダー)からmessageTypeの値を抽出する。そして、解析部22は、messageTypeの値に基づいて、PTPメッセージの種類(Syncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージ)を判定する。
【0055】
解析部22は、PTPメッセージがSyncメッセージであると判定した場合、SyncメッセージからoriginTimestampの値(時刻情報:マスターの送信時刻)を抽出すると共に、Syncメッセージの送信元情報及び宛先情報(IPアドレス及びMACアドレス)を特定する。実際には、送信元情報及び宛先情報は、PTPメッセージを含むイーサネット(登録商標)フレームのヘッダから抽出され特定される。
【0056】
解析部22は、Syncメッセージについて、時刻情報、受信時刻(同期精度評価装置2にてSyncメッセージを受信した受信時刻)、並びに送信元情報及び宛先情報からなるSync情報(以下、「S情報」という。)を生成する。そして、解析部22は、S情報をメモリ23に格納する。
【0057】
解析部22は、PTPメッセージがDelay Requestメッセージであると判定した場合、Delay RequestメッセージからoriginTimestampの値(時刻情報:スレーブの送信時刻)を抽出すると共に、Delay Requestメッセージの送信元情報及び宛先情報を特定する。
【0058】
解析部22は、Delay Requestメッセージについて、時刻情報、受信時刻(同期精度評価装置2にてDelay Requestメッセージを受信した受信時刻)、並びに送信元情報及び宛先情報からなるDelay Request情報(以下、「DReq情報」という。)を生成する。そして、解析部22は、DReq情報をメモリ23に格納する。
【0059】
解析部22は、PTPメッセージがDelay Responseメッセージであると判定した場合、Delay ResponseメッセージからreceiveTimestampの値(時刻情報:マスターによるDelay Requestメッセージの受信時刻)を抽出する。また、解析部22は、Delay Responseメッセージの送信元情報及び宛先情報を特定する。
【0060】
解析部22は、Delay Responseメッセージについて、時刻情報、受信時刻(同期精度評価装置2にてDelay Responseメッセージを受信した受信時刻)、並びに送信元情報及び宛先情報からなるDelay Response情報(以下、「DRes情報」という。)を生成する。そして、解析部22は、DRes情報をメモリ23に格納する。
【0061】
メモリ23には、S情報、DReq情報及びDRes情報が格納される。
図3は、メモリ23に格納されたS情報、DReq情報及びDRes情報の詳細を説明する図である。
【0062】
S情報は、Syncメッセージに含まれる時刻情報(originTimestampの値)、同期精度評価装置2によるSyncメッセージの受信時刻、並びに送信元情報及び宛先情報からなる。例えば
図5を参照して、時刻情報はTMb
0,1(α0(k=0))、これに対応する受信時刻はTs
0,1である。また、
図9を参照して、時刻情報はTg
0,1(β0(k=0))、これに対応する受信時刻はTs
0,2である。
【0063】
DReq情報は、Delay Requestメッセージに含まれる時刻情報(originTimestampの値)(DReq時刻情報)、同期精度評価装置2によるDelay Requestメッセージの受信時刻(DReq受信時刻)、並びに送信元情報(DReq送信元情報)及び宛先情報からなる。例えば
図5を参照して、時刻情報はTd
0,3(α1(k=0))、これに対応する(これと同じシーケンス(k=0)の)受信時刻はTs
0,4(α3(k=0))である。また、
図9を参照して、時刻情報はTSb
0,3(β1(k=0))、これに対応する受信時刻はTs
0,3(β3(k=0))である。
【0064】
DRes情報は、Delay Responseメッセージに含まれる時刻情報(receiveTimestampの値)(DRes時刻情報)、同期精度評価装置2によるDelay Responseメッセージの受信時刻(DRes受信時刻)、並びに送信元情報及び宛先情報(DRes宛先情報)からなる。例えば
図5を参照して、時刻情報はTMb
0,4(α2(k=0))、これに対応する受信時刻はTs
0,5(α4(k=0))である。また、
図9を参照して、時刻情報はTg
0,4(β2(k=0))、これに対応する受信時刻はTs
0,6(β4(k=0))である。
【0065】
図2に戻って、送出デバイスPTPオフセット算出部24は、全ての送出デバイス6のそれぞれについて、一定時間で累積されるPTPオフセットの変化量をPTPオフセット変動量ΔOとして算出する。
【0066】
具体的には、送出デバイスPTPオフセット算出部24は、メモリ23からDReq情報及びDRes情報を読み出す。そして、送出デバイスPTPオフセット算出部24は、DReq情報及びDRes情報に含まれる時刻情報及び同期精度評価装置2によるPTPメッセージの受信時刻に基づいて、スレーブとして機能する送出デバイス6のそれぞれについてPTPオフセット変動量ΔOを算出する。
【0067】
送出デバイスPTPオフセット算出部24は、送出デバイス6のそれぞれについてのPTPオフセット変動量ΔOをメモリ26に格納すると共に、送出デバイス同期監視部27に出力する。送出デバイスPTPオフセット算出部24の詳細については後述する。
【0068】
送出スイッチPTPオフセット算出部25は、送出スイッチ5について、一定時間で累積されるPTPオフセットの変化量をPTPオフセット変動量ΔOとして算出する。
【0069】
具体的には、送出スイッチPTPオフセット算出部25は、メモリ23からDReq情報及びDRes情報を読み出す。そして、送出スイッチPTPオフセット算出部25は、DReq情報及びDRes情報に含まれる時刻情報及び同期精度評価装置2によるPTPメッセージの受信時刻に基づいて、スレーブとして機能する送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOを算出する。
【0070】
送出スイッチPTPオフセット算出部25は、送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOをメモリ26に格納すると共に、送出スイッチ同期監視部28に出力する。送出スイッチPTPオフセット算出部25の詳細については後述する。
【0071】
メモリ26には、送出デバイス6のそれぞれ(送出デバイス6-1,・・・,6-N)についてのPTPオフセット変動量ΔO、及び送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOが格納される。
【0072】
送出デバイス同期監視部27は、同期しようとする送出スイッチ5に接続される全ての送出デバイス6のPTPオフセット変動量ΔOが一定の範囲に収束することを監視する。
【0073】
一般に、マスタークロック及びスレーブクロックが正常な同期状態を維持する場合、PTPオフセットは、時間経過に対して一定の範囲内に収まり、理想的には0に収束する。すなわち、理想的に、PTPオフセット(S(t)-M(t))は、任意の時間tについて、次式が成り立つ。
[数1]
S(t)は、スレーブとして機能する送出デバイス6の時刻推移を示し、M(t)は、マスターとして機能する送出スイッチ5の時刻推移を示す(後述する
図7を参照)。
【0074】
本発明の実施形態では、送出担当者が送出デバイス6のPTPオフセットの増加または減少傾向を把握できるように、PTPオフセット変動量ΔOを閾値判定する。
【0075】
具体的には、送出デバイス同期監視部27は、送出デバイスPTPオフセット算出部24から送出デバイス6のそれぞれについてのPTPオフセット変動量ΔOを入力する。そして、送出デバイス同期監視部27は、送出デバイス6のそれぞれについて、予め設定された時間a(例えばa=1)秒毎に、以下の式のとおり、PTPオフセット変動量ΔOが予め設定された閾値A以下であるか否かを判定する。
[数2]
【0076】
送出デバイス同期監視部27は、全ての送出デバイス6のうちの1以上の送出デバイス6について前記式(2)を満たさないと判定した場合(PTPオフセット変動量ΔOが閾値Aを超えると判定した場合)、送出デバイス同期異常を生成する。そして、送出デバイス同期監視部27は、送出デバイス同期異常を送受信部31に出力する。送出デバイス同期異常は、送受信部31から時刻監視端末3へ送信される。
【0077】
これにより、送出担当者は、送出デバイス同期異常の発生を判断することで、同じ施設内の全ての送出デバイス6のうち1以上の送出デバイス6におけるPTPオフセット変動量ΔOが、一定の範囲に収束していないことを判断することができる。
【0078】
尚、予め設定された時間a及び閾値Aは、時刻監視端末3に対する送出担当者の操作により変更できるものとする。
【0079】
送出スイッチ同期監視部28は、送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOが一定の範囲に収束することを監視する。本発明の実施形態では、送出担当者が送出スイッチ5のPTPオフセットの増加または減少傾向を把握できるように、PTPオフセット変動量ΔOを閾値判定する。
【0080】
具体的には、送出スイッチ同期監視部28は、送出スイッチPTPオフセット算出部25から送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOを入力する。そして、送出スイッチ同期監視部28は、送出スイッチ5について、予め設定された時間b(例えばb=1)秒毎に、以下の式のとおり、PTPオフセット変動量ΔOが予め設定された閾値B以下であるか否かを判定する。
[数3]
【0081】
送出スイッチ同期監視部28は、送出スイッチ5について前記式(3)を満たさないと判定した場合(PTPオフセット変動量ΔOが閾値Bを超えると判定した場合)、送出スイッチ同期異常を生成する。そして、送出スイッチ同期監視部28は、送出スイッチ同期異常を送受信部31に出力する。
【0082】
尚、予め設定された時間b及び閾値Bは、時刻監視端末3に対する送出担当者の操作により変更できるものとする。
【0083】
加工部29は、メモリ26から、送出デバイス6のそれぞれについてのPTPオフセット変動量ΔO、及び送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOを読み出す。そして、加工部29は、送出デバイス6のPTPオフセット変動量ΔO及び送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOを、送出担当者が視認しやすい形式に加工し、時刻同期情報として送受信部31に出力する。
【0084】
要求処理部30は、送受信部31から要求を入力し、メモリ21,23,26から要求に応じたデータを検索または参照し、その結果を要求に対する応答とし生成し、応答を送受信部31に出力する。
【0085】
送受信部31は、時刻監視端末3から送出担当者の操作に伴う要求を受信し、要求を要求処理部30に出力する。送受信部31は、送出デバイス同期監視部27から送出デバイス同期異常を、送出スイッチ同期監視部28から送出スイッチ同期異常を、加工部29から時刻同期情報を、要求処理部30から応答をそれぞれ入力し、これらのデータを時刻監視端末3へ送信する。
【0086】
(送出デバイスPTPオフセット算出部24)
次に、
図2に示した送出デバイスPTPオフセット算出部24について詳細に説明する。
図4は、送出デバイスPTPオフセット算出部24の処理例を示すフローチャートであり、
図5は、マスターとして機能する送出スイッチ5及びスレーブとして機能する送出デバイス6間のPTPメッセージのシーケンスを示す図である。また、
図6は、
図5のシーケンスにおける時間のパラメータを説明する図である。
【0087】
図5において、縦軸は時間軸であり、同期精度評価装置2、送出スイッチ5及び送出デバイス6の時刻を示している。また、パラメータkは、PTPメッセージの送受信のシーケンスにおいて、Syncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージの送受信を1つのシーケンスとし、当該シーケンスが連続して行われる場合のシーケンスの番号を示している。
【0088】
図6には、マスターとして機能する送出スイッチ5の時間、スレーブとして機能する送出デバイス6の時間、及び同期精度評価装置2の時間にそれぞれ対応するパラメータが示されている。パラメータは、n回目のSyncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージを送受信する場合を示しており、そのパラメータの内容は、定義に記載されたとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0089】
これらのパラメータのうち、送出デバイス6のPTPオフセット変動量ΔOを算出するために用いるパラメータは、Tdn,3(α1)(送出デバイス6がDelay Requestメッセージを送信した時刻)、TMbn,4(α2)(送出スイッチ5がDelay Requestメッセージを受信した時刻)、Tsn,4(α3)(送出スイッチ5が受信したDelay Requestメッセージを同期精度評価装置2が受信した時刻)、及びTsn,5(α4)(送出スイッチ5が送信したDelay Responseメッセージを同期精度評価装置2が受信した時刻)である。
【0090】
送出デバイスPTPオフセット算出部24は、全ての送出デバイス6のうち1台の送出デバイス6を選定する(ステップS401)。送出デバイスPTPオフセット算出部24は、メモリ23から、DReq情報のうち、送信元情報がステップS401にて選定された送出デバイス6のDReq情報を読み出す(ステップS402)。つまり、送出デバイスPTPオフセット算出部24は、DReq情報について、送出デバイス6と一致する送信元情報を特定し、その送信元情報に対応するDReq情報を読み出す。また、送出デバイスPTPオフセット算出部24は、メモリ23から、DRes情報のうち、宛先情報がステップS401にて選定された送出デバイス6のDRes情報を読み出す(ステップS403)。つまり、送出デバイスPTPオフセット算出部24は、DRes情報について、送出デバイス6と一致する宛先情報を特定し、その宛先情報に対応するDRes情報を読み出す。
【0091】
送出デバイスPTPオフセット算出部24は、読み出したDReq情報から、k=0~nの時刻情報Tdk,3(α1(k))、同期精度評価装置2によるDelay Requestメッセージの受信時刻Tsk,4(α3(k))を抽出する(ステップS404)。
【0092】
これにより、
図5の送出デバイス6の時間軸を参照して、選定した送出デバイス6における時刻情報Td
0,3(α1(k=0)),Td
1,3(α1(k=1)),・・・,Td
n,3(α1(k=n))が抽出される。また、
図5の同期精度評価装置2の時間軸を参照して、受信時刻Ts
0,4(α3(k=0)),Ts
1,4(α3(k=1)),・・・,Ts
n,4(α3(k=n))が抽出される。
【0093】
送出デバイスPTPオフセット算出部24は、読み出したDRes情報から、k=0~nの時刻情報TMbk,4(α2(k))、同期精度評価装置2によるDelay Responseメッセージの受信時刻Tsk,5(α4(k))を抽出する(ステップS405)。
【0094】
これにより、
図5の送出スイッチ5の時間軸を参照して、送出スイッチ5における時刻情報TMb
0,4(α2(k=0)),TMb
1,4(α2(k=1)),・・・,TMb
n,4(α2(k=n))が抽出される。また、
図5の同期精度評価装置2の時間軸を参照して、受信時刻Ts
0,5(α4(k=0)),Ts
1,5(α4(k=1)),・・・,Ts
n,5(α4(k=n))が抽出される。
【0095】
送出デバイスPTPオフセット算出部24は、k=0~nの時刻情報Tdk,3(α1(k))、受信時刻Tsk,4(α3(k))、時刻情報TMbk,4(α2(k))及び受信時刻Tsk,5(α4(k))に基づいて、後述する式(12)により、選定した送出デバイス6のPTPオフセット変動量ΔOを算出し、これをメモリ26に格納すると共に、送出デバイス同期監視部27に出力する(ステップS406)。
【0096】
送出デバイスPTPオフセット算出部24は、全ての送出デバイス6について、ステップS402~S406の処理が完了したか否かを判定する(ステップS407)。
【0097】
送出デバイスPTPオフセット算出部24は、ステップS407において、全ての送出デバイス6について前述の処理が完了していないと判定した場合(ステップS407:N)、次の送出デバイス6を選定し(ステップS408)、ステップS402へ移行する。これにより、次の送出デバイス6について、ステップS402~S406の処理が行われる。
【0098】
送出デバイスPTPオフセット算出部24は、ステップS407において、全ての送出デバイス6について前述の処理が完了したと判定した場合(ステップS407:Y)、当該処理を終了する。そして、送出デバイスPTPオフセット算出部24は、ステップS401~ステップS407の処理を、次のk=0~nについて行うことで、k=0~n毎に、全ての送出デバイス6のそれぞれについてのPTPオフセット変動量ΔOを算出する。
【0099】
このようにして、k=0~nを単位として、全ての送出デバイス6のそれぞれについて、PTPオフセット変動量ΔOが算出される。
【0100】
(送出デバイス6のPTPオフセット変動量ΔO)
次に、送出デバイス6のPTPオフセット変動量ΔOについて説明する。
図7は、マスターとして機能する送出スイッチ5及びスレーブとして機能する送出デバイス6間の時刻推移を示す図である。横軸は同期精度評価装置2の時間を示し、縦軸は送出スイッチ5及び送出デバイス6の時間を示す。
図7には、スレーブとして機能する送出デバイス6の時刻推移S(t)、及びマスターとして機能する送出スイッチ5の時刻推移M(t)が示されている。送出デバイス6の時刻推移S(t)は、送出デバイス6によるDelay Requestメッセージの送信時刻の推移であり、送出スイッチ5の時刻推移M(t)は、送出スイッチ5によるDelay Requestメッセージの受信時刻の推移である。
【0101】
PTPオフセットは、同期精度評価装置2の時間軸(横軸)での同一時刻における、送出スイッチ5及び送出デバイス6の時間軸での時刻の差(PTP時刻の差)である。例えば、同期精度評価装置2の時間t=TMb’0,4のとき、送出スイッチ5及び送出デバイス6のPTPオフセットは、Td0,4-TMb0,4である(A’0,B0、矢印の個所を参照)。
【0102】
送出デバイスPTPオフセット算出部24により、PTPオフセットの増加または減少傾向を評価する指標として、同期精度評価装置2の一定の経過時間に対するPTPオフセットの積分値であるPTPオフセット変動量ΔOが算出される。
【0103】
同期精度評価装置2の時間tに対する送出スイッチ5及び送出デバイス6のPTP時刻の推移はそれぞれM(t),S(t)であり、同期精度評価装置2の時間幅[t
1,t
2]におけるPTPオフセット変動量をΔO(t
1,t
2)とすると、一般に、次式が成り立つ。
[数4]
【0104】
送出スイッチ5及び送出デバイス6間でSyncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージからなる一連のPTPメッセージングがn回繰り返されたとき、時間幅[TMb’
0,4,Td’
n,3](
図7のγ)に対するPTPオフセット変動量ΔO(TMb’
0,4,Td’
n,3)は、以下の式により算出される。
[数5]
【0105】
尚、n=3のとき、PTPオフセット変動量ΔO(TMb’
0,4,Td’
3,3)は、
図7の斜線で表した符号付き面積に相当する。
【0106】
ここで、 nが十分大きいとき、以下の式が成り立つ。
[数6]
【0107】
したがって、PTPオフセット変動量ΔO(TMb’
0,4,Td’
n,3)は、以下の式で表される。
[数7]
【0108】
また、送出デバイス6がDelay Requestメッセージを送信したときの同期精度評価装置2の時刻Td’
k,3、及び、送出スイッチ5がDelay Requestメッセージを受信したときの同期精度評価装置2の時刻TMb’
k,4は、それぞれ以下の式で表される。
[数8]
【0109】
すなわち、同期精度評価装置2におけるDelay Requestメッセージの送信間隔及び受信間隔は、それぞれ以下の式で表される。
[数9]
【0110】
ここで、Delay Requestメッセージの送信間隔が十分大きいとき、以下の式が成り立つ。
[数10]
【0111】
このため、同期精度評価装置2におけるDelay Requestメッセージの送信間隔及び受信間隔は、それぞれ以下の式で表される。
[数11]
【0112】
以上から、PTPオフセット変動量ΔO(TMb’
0,4,Td’
n,3)は、以下の式にて表される。nは1以上の整数である。
[数12]
【0113】
このように、送出デバイスPTPオフセット算出部24により、前記式(12)を用いてPTPオフセット変動量ΔOが算出される。
【0114】
図1に示したIP放送システム1Aの実際の運用において、Syncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージの送信レートの標準値は、8Hzである。この場合、
図2及び
図3に示したメモリ23には、1秒毎に、8組のSyncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージに対応するS情報、DReq情報及びDRes情報が格納される。例えばn=8とし、メモリ23に格納された8組のDReq情報及びDRes情報を用いて前記式(12)により、PTPオフセット変動量ΔOを算出する処理が1秒毎に繰り返される。このような処理は、それぞれの送出デバイス6について行われる。
【0115】
尚、パラメータnは予め設定され、時刻監視端末3に対する送出担当者の操作により変更できるものとする。
【0116】
(送出スイッチPTPオフセット算出部25)
次に、
図2に示した送出スイッチPTPオフセット算出部25について詳細に説明する。
図8は、送出スイッチPTPオフセット算出部25の処理例を示すフローチャートであり、
図9は、マスターとして機能するグランドマスター機器4及びスレーブとして機能する送出スイッチ5間のPTPメッセージのシーケンスを示す図である。また、
図10は、
図9のシーケンスにおける時間のパラメータを説明する図である。
【0117】
図9において、縦軸は時間軸であり、グランドマスター機器4、送出スイッチ5及び同期精度評価装置2の時刻を示している。また、パラメータkは、PTPメッセージの送受信のシーケンスにおいて、Syncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージの送受信を1つのシーケンスとし、当該シーケンスが連続して行われる場合のシーケンスの番号を示している。
【0118】
図10には、マスターとして機能するグランドマスター機器4の時間、スレーブとして機能する送出スイッチ5の時間、及び同期精度評価装置2の時間にそれぞれ対応するパラメータが示されている。パラメータは、n回目のSyncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージを送受信する場合を示しており、その内容は、定義に記載されたとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0119】
これらのパラメータのうち、送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOを算出するために用いるパラメータは、TSbn,3(β1)(送出スイッチ5がDelay Requestメッセージを送信した時刻)、Tgn,4(β2)(グランドマスター機器4がDelay Requestメッセージを受信した時刻)、Tsn,3(β3)(送出スイッチ5が送信したDelay Requestメッセージを同期精度評価装置2が受信した時刻)、及びTsn,6(β4)(送出スイッチ5が受信したDelay Responseメッセージを同期精度評価装置2が受信した時刻)である。
【0120】
図8を参照して、送出スイッチPTPオフセット算出部25は、メモリ23から、DReq情報のうち、送信元情報が送出スイッチ5のDReq情報を読み出す(ステップS801)。また、送出スイッチPTPオフセット算出部25は、メモリ23から、DRes情報のうち、宛先情報が送出スイッチ5のDRes情報を読み出す(ステップS802)。
【0121】
送出スイッチPTPオフセット算出部25は、読み出したDReq情報から、k=0~nの時刻情報TSbk,3(β1(k))、同期精度評価装置2によるDelay Requestメッセージの受信時刻Tsk,3(β3(k))を抽出する(ステップS803)。
【0122】
これにより、
図9の送出スイッチ5の時間軸を参照して、送出スイッチ5における時刻情報TSb
0,3(β1(k=0)),TSb
1,3(β1(k=1)),・・・,TSb
n,3(β1(k=n))が抽出される。また、
図9の同期精度評価装置2の時間軸を参照して、受信時刻Ts
0,3(β3(k=0)),Ts
1,3(β3(k=1)),・・・,Ts
n,3(β3(k=n))が抽出される。
【0123】
送出スイッチPTPオフセット算出部25は、読み出したDRes情報から、k=0~nの時刻情報Tgk,4(β2(k))、同期精度評価装置2によるDelay Responseメッセージの受信時刻Tsk,6(β4(k))を抽出する(ステップS804)。
【0124】
これにより、
図9のグランドマスター機器4の時間軸を参照して、グランドマスター機器4における時刻情報Tg
0,4(β2(k=0)),Tg
1,4(β2(k=1)),・・・,Tg
n,4(β2(k=n))が抽出される。また、
図9の同期精度評価装置2の時間軸を参照して、受信時刻Ts
0,6(β4(k=0)),Ts
1,6(β4(k=1)),・・・,Ts
n,6(β4(k=n))が抽出される。
【0125】
送出スイッチPTPオフセット算出部25は、k=0~nの時刻情報TSbk,3(β1(k))、受信時刻Tsk,3(β3(k))、時刻情報Tgk,4(β2(k))及び受信時刻Tsk,6(β4(k))に基づいて、後述する式(19)により、送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOを算出し、これをメモリ26に格納すると共に、送出スイッチ同期監視部28に出力する(ステップS805)。
【0126】
このようにして、k=0~nを単位として、送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOが算出される。
【0127】
(送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔO)
次に、送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOについて説明する。
図11は、マスターとして機能するグランドマスター機器4及びスレーブとして機能する送出スイッチ5間の時刻推移を示す図である。
図11には、スレーブとして機能する送出スイッチ5の時刻推移S(t)、及びマスターとして機能するグランドマスター機器4の時刻推移M(t)が示されている。送出スイッチ5の時刻推移S(t)は、送出スイッチ5によるDelay Requestメッセージの送信時刻の推移であり、グランドマスター機器4の時刻推移M(t)は、グランドマスター機器4によるDelay Requestメッセージの受信時刻の推移である。
【0128】
送出デバイス6のPTPオフセット変動量ΔOを算出する場合と同様に、グランドマスター機器4及び送出スイッチ5間でSyncメッセージ、Delay Requestメッセージ及びDelay Responseメッセージからなる一連のPTPメッセージングがn回繰り返されたとき、時間幅[Tg’
0,4,TSb’
n,3](
図11のγ)に対するPTPオフセット変動量ΔO(Tg’
0,4,TSb’
n,3)は、以下の式により算出される。
[数13]
【0129】
ここで、 nが十分大きいとき、以下の式が成り立つ。
[数14]
【0130】
また、送出スイッチ5がDelay Requestメッセージを送信したときの同期精度評価装置2の時刻TSb’
k,3、及び、グランドマスター機器4がDelay Requestメッセージを受信したときの同期精度評価装置2の時刻Tg’
k,4は、それぞれ以下の式で表される。
[数15]
【0131】
すなわち、同期精度評価装置2におけるDelay Requestメッセージの送信間隔及び受信間隔は、それぞれ以下の式で表される。
[数16]
【0132】
ここで、Delay Requestメッセージの送信間隔が十分大きいとき、以下の式が成り立つ。
である。
[数17]
【0133】
このため、同期精度評価装置2におけるDelay Requestメッセージの送信間隔及び受信間隔は、それぞれ以下の式で表される。
[数18]
【0134】
以上から、PTPオフセット変動量ΔO(Tg’
0,4,TSb’
n,3)は、以下の式にて表される。nは1以上の整数である。
[数19]
【0135】
このように、送出スイッチPTPオフセット算出部25により、前記式(19)を用いてPTPオフセット変動量ΔOが算出される。
【0136】
送出デバイスPTPオフセット算出部24の場合と同様に、例えばn=8とし、メモリ23に格納された8組のDReq情報及びDRes情報を用いて前記式(19)により、PTPオフセット変動量ΔOを算出する処理が1秒毎に繰り返される。
【0137】
尚、パラメータnは予め設定され、時刻監視端末3に対する送出担当者の操作により変更できるものとする。
【0138】
以上のように、
図1のIP放送システム1Aに備えた本発明の実施形態の同期精度評価装置2によれば、送出デバイスPTPオフセット算出部24は、送出スイッチ5がマスターとして機能し、送出デバイス6がスレーブとして機能する場合に、Delay Requestメッセージに含まれる時刻情報Td
k,3(α1(k))(送出デバイス6によるDelay Requestメッセージの送信時刻)、同期精度評価装置2によるDelay Requestメッセージの受信時刻Ts
k,4(α3(k))、Delay Responseメッセージに含まれる時刻情報TMb
k,4(α2(k))(送出スイッチ5によるDelay Requestメッセージの受信時刻)及び同期精度評価装置2によるDelay Responseメッセージの受信時刻Ts
k,5(α4(k))を用いて、前記式(12)により、全ての送出デバイス6のそれぞれについてPTPオフセット変動量ΔOを算出する。
【0139】
また、送出スイッチPTPオフセット算出部25は、グランドマスター機器4がマスターとして機能し、送出スイッチ5がスレーブとして機能する場合、Delay Requestメッセージに含まれる時刻情報TSbk,3(β1(k))(送出スイッチ5によるDelay Requestメッセージの送信時刻)、同期精度評価装置2によるDelay Requestメッセージの受信時刻Tsk,3(β3(k))、Delay Responseメッセージに含まれる時刻情報Tgk,4(β2(k))(グランドマスター機器4によるDelay Requestメッセージの受信時刻)及び同期精度評価装置2によるDelay Responseメッセージの受信時刻Tsk,6(β4(k))を用いて、前記式(19)により、送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOを算出する。
【0140】
これにより、PTPメッセージに含まれる時刻情報及びPTPメッセージの受信時刻のみから、PTPオフセット変動量ΔOを算出することができるため、新たな機能を送出スイッチ5及び送出デバイス6に実装する必要がない。したがって、既存の送出スイッチ5及び送出デバイス6を含むIP放送システム1Aに同期精度評価装置2を設けることで、送出スイッチ5及び送出デバイス6の機種及び製造ベンダーに関わらず、システム全体の同期精度を簡易に評価することができる。
【0141】
また、送出担当者は、同じ施設内の全ての送出デバイス6から任意に選んだ2つの送出デバイス6について、PTPオフセット変動量ΔOを参照することで、2つの送出デバイス6間の同期精度を評価することができる。例えば、2つの送出デバイス6に備えたスレーブクロックのマスタークロックに対する同期精度が1μs以下に収束しているか否かを評価することができる。
【0142】
〔他の全体構成〕
次に、PTPを用いる他のIP放送システムの全体構成例について説明する。
図12は、本発明の実施形態による同期精度評価装置を含む他のIP放送システムの全体構成例を示す概略図である。このIP放送システムは、複数の送出リソース及び1つの送出マスターの各種施設が接続される番組制作及び送出システムであり、複数の送出リソースから送出マスターへ、映像、音声及び補助データを含むマルチキャストパケットが伝送される。
【0143】
このIP放送システム1Bは、グランドマスター機器4、送出リソーススイッチ5A-1,・・・,5A-M、送出リソースデバイス6A-1-1,・・・,6A-1-L1,・・・,6A-M-1,・・・,6A-M-LM、送出マスタースイッチ5B、送出マスターデバイス6B-1,・・・,6B-N、時刻配信スイッチ7、基幹スイッチ8及び時刻収集スイッチ9を備えて構成され、さらに、同期精度評価装置2及び時刻監視端末3を備えている。N,M,L1,LMは2以上の整数である。ネットワーク機器は省略してある。
【0144】
IP放送システム1Bは、
図1に示したIP放送システム1Aと同様に、SMPTE ST 2110で規定される映像音声データをIPネットワークにより伝送する放送システム全般を指している。
【0145】
IP放送システム1Bは、制作スタジオ等の映像及び音声等を制作する施設である送出リソース10-1,・・・,10-M、及び、送出リソースから映像及び音声等を受信して切り替え、送出する施設である送出マスター11が接続された大規模なシステムである。
【0146】
送出リソース10-1,・・・,10-Mの施設数はMであり、そのうちの1番目の送出リソース10-1は、送出リソーススイッチ5A-1及びL1台の送出リソースデバイス6A-1-1,・・・,6A-1-L1により構成される。同様に、M番目の送出リソース10-Mは、送出リソーススイッチ5A-M及びLM台の送出リソースデバイス6A-M-1,・・・,6A-M-LMから構成される。
【0147】
また、送出マスター11の施設数は1であり、送出マスター11は、送出マスタースイッチ5B及びN台の送出マスターデバイス6B-1,・・・,6B-Nから構成される。
【0148】
図1に示したIP放送システム1AとこのIP放送システム1Bとを比較すると、両IP放送システム1A,1Bは、同期精度評価装置2、時刻監視端末3及びグランドマスター機器4を備えている点で共通する。
【0149】
一方、IP放送システム1Bは、M個の送出リソース10-1,・・・,10-Mの施設及び1つの送出マスター11の施設、並びに時刻配信スイッチ7、基幹スイッチ8及び時刻収集スイッチ9を備えている点で、1つの施設を備えたIP放送システム1Aと相違する。
【0150】
以下、送出リソーススイッチ5A-1,・・・,5A-Mを総称して送出リソーススイッチ5A、送出リソースデバイス6A-1-1,・・・,6A-1-L1,・・・,6A-M-1,・・・,6A-M-LMを総称して送出リソースデバイス6Aという。また、送出マスターデバイス6B-1,・・・,6B-Nを総称して送出マスターデバイス6B、送出リソース10-1,・・・,10-Mを総称して送出リソース10という。
【0151】
尚、IP放送システム1Bに備えた送出リソーススイッチ5A及び送出マスタースイッチ5Bは、
図1に示したIP放送システム1Aの送出スイッチ5に対応し、送出リソースデバイス6A及び送出マスターデバイス6Bは、送出デバイス6に対応する。
【0152】
時刻監視端末3を操作する送出担当者は、送出リソース10内の送出リソーススイッチ5A及び送出リソースデバイス6A、並びに送出マスター11内の送出マスタースイッチ5B及び送出マスターデバイス6Bの各機器のヘルスチェック、放送映像及び音声の監視等の保守作業を行う技術者である。この送出担当者は、同期精度評価装置2により算出される送出リソーススイッチ5A、送出マスタースイッチ5B、送出リソースデバイス6A及び送出マスターデバイス6Bの各機器について、PTPオフセット変動量ΔOを定量的に観測する。
【0153】
同期精度評価装置2は、
図1に示した同期精度評価装置2に対応する処理を行う。具体的には、同期精度評価装置2は、時刻収集スイッチ9から、時刻情報を含むPTPメッセージを受信し、PTPメッセージをメモリに格納して解析する。そして、同期精度評価装置2は、
図1の同期精度評価装置2と同様に、PTPメッセージに含まれる時刻情報及びPTPメッセージの受信時刻に基づいて、送出リソーススイッチ5A、送出マスタースイッチ5B、送出リソースデバイス6A及び送出マスターデバイス6Bの各機器のPTPオフセット変動量ΔOを算出したり、PTPオフセット変動量ΔOを閾値処理して同期異常を判断したりする等により、計測データを生成する。
【0154】
また、同期精度評価装置2は、
図1の同期精度評価装置2と同様に、PTPオフセット変動量ΔOを加工することで、時系列グラフ等の人間が視認し易い時刻同期情報を生成し、時刻監視端末3から受信した要求に応じて計測データを検索または参照する。そして、同期精度評価装置2は、時刻同期情報及び要求に対する応答を時刻監視端末3へ送信する。同期精度評価装置2の詳細については後述する。
【0155】
時刻監視端末3及びグランドマスター機器4は、
図1に示した時刻監視端末3及びグランドマスター機器4と同様の処理を行う。
【0156】
送出リソーススイッチ5Aは、
図1に示した送出スイッチ5に対応する処理を行う。具体的には、送出リソーススイッチ5Aは、送出リソース10内の全ての送出リソースデバイス6Aから、映像、音声及び補助データを含むマルチキャストパケットを受信する。そして、送出リソーススイッチ5Aは、マルチキャストパケットを、基幹スイッチ8、及び送出リソース10内の他の送出リソースデバイス6Aへ転送する。また、送出リソーススイッチ5Aは、PIM-SSMにより、隣接する図示しないマルチキャストルータとの間でマルチキャストルート情報を交換し、マルチキャストの経路情報を更新する。
【0157】
送出リソーススイッチ5Aは、バウンダリークロック(BC)を備え、バウンダリークロックの時刻に従い、PTP v2によりメッセージングを行う。送出リソーススイッチ5Aは、マスターであるグランドマスター機器4に対し、スレーブとして機能すると共に、スレーブである送出リソースデバイス6Aに対し、マスターとして機能する。
【0158】
送出リソーススイッチ5Aは、スレーブとして機能する場合、マスターとして機能するグランドマスター機器4との間で、時刻配信スイッチ7を介してPTPメッセージの送受信を行う。そして、送出リソーススイッチ5Aは、バウンダリークロックの時刻(PTP時刻)を補正することで、バウンダリークロックの時刻を、グランドマスター機器4に備えたグランドマスタークロックの時刻に同期させる。
【0159】
一方、送出リソーススイッチ5Aは、マスターとして機能する場合、スレーブとして機能する送出リソースデバイス6Aとの間でPTPメッセージの送受信を行う。
【0160】
また、送出リソーススイッチ5Aは、グランドマスター機器4及び送出リソースデバイス6Aとの間で送受信するPTPメッセージを、ポートミラーリングによりコピーし、コピーしたPTPメッセージを時刻収集スイッチ9へ転送する。
【0161】
送出リソースデバイス6Aは、
図1に示した送出デバイス6に対応する処理を行う。具体的には、送出リソースデバイス6Aは、SMPTE ST 2110形式の映像、音声及び補助データを生成し、映像、音声及び補助データを含むマルチキャストパケットを送出リソーススイッチ5Aへ送信する。また、送出リソースデバイス6Aは、IGMP v3により送出リソーススイッチ5Aからマルチキャストパケットを受信し、マルチキャストパケットから映像、音声及び補助データを抽出し処理する。
【0162】
送出リソースデバイス6Aは、スレーブとして機能し、スレーブクロックを備え、スレーブクロックの時刻に従い動作する。送出リソースデバイス6Aは、マスターとして機能する送出リソーススイッチ5Aとの間でPTPメッセージの送受信を行う。そして、送出リソースデバイス6Aは、スレーブクロックの時刻(PTP時刻)を補正することで、スレーブクロックの時刻を、送出リソーススイッチ5Aに備えたバウンダリークロックの時刻に同期させる。
【0163】
送出マスタースイッチ5Bは、
図1に示した送出スイッチ5に対応する処理を行う。具体的には、送出マスタースイッチ5Bは、基幹スイッチ8、及び送出マスター11内の全ての送出マスターデバイス6Bから、映像、音声及び補助データを含むマルチキャストパケットを受信し、マルチキャストパケットを、送出マスター11内の他の送出マスターデバイス6Bへ転送する。また、送出マスタースイッチ5Bは、PIM-SSMにより、隣接する図示しないマルチキャストルータとの間でマルチキャストルート情報を交換し、マルチキャストの経路情報を更新する。
【0164】
送出マスタースイッチ5Bは、バウンダリークロック(BC)を備え、バウンダリークロックの時刻に従い、PTP v2によりメッセージングを行う。送出マスタースイッチ5Bは、マスターであるグランドマスター機器4に対し、スレーブとして機能すると共に、スレーブである送出マスターデバイス6Bに対し、マスターとして機能する。
【0165】
送出マスタースイッチ5Bは、スレーブとして機能する場合、マスターとして機能するグランドマスター機器4との間で、時刻配信スイッチ7を介してPTPメッセージの送受信を行う。そして、送出マスタースイッチ5Bは、バウンダリークロックの時刻(PTP時刻)を補正することで、バウンダリークロックの時刻を、グランドマスター機器4に備えたグランドマスタークロックの時刻に同期させる。
【0166】
一方、送出マスタースイッチ5Bは、マスターとして機能する場合、スレーブとして機能する送出マスターデバイス6Bとの間でPTPメッセージの送受信を行う。
【0167】
また、送出マスタースイッチ5Bは、グランドマスター機器4及び送出マスターデバイス6Bとの間で送受信するPTPメッセージを、ポートミラーリングによりコピーし、コピーしたPTPメッセージを時刻収集スイッチ9へ転送する。
【0168】
送出マスターデバイス6Bは、
図1に示した送出デバイス6に対応する処理を行う。具体的には、送出マスターデバイス6Bは、SMPTE ST 2110形式の映像、音声及び補助データを生成し、映像、音声及び補助データを含むマルチキャストパケットを送出マスタースイッチ5Bへ送信する。また、送出マスターデバイス6Bは、IGMP v3により送出マスタースイッチ5Bからマルチキャストパケットを受信し、マルチキャストパケットから映像、音声及び補助データを抽出し処理する。
【0169】
送出マスターデバイス6Bは、スレーブとして機能し、スレーブクロックを備え、スレーブクロックの時刻に従い動作する。送出マスターデバイス6Bは、マスターとして機能する送出マスタースイッチ5Bとの間でPTPメッセージの送受信を行う。そして、送出マスターデバイス6Bは、スレーブクロックの時刻(PTP時刻)を補正することで、スレーブクロックの時刻を、送出マスタースイッチ5Bに備えたバウンダリークロックの時刻に同期させる。
【0170】
時刻配信スイッチ7は、トランスペアレントクロック(TC)を備えており、トランスペアレントクロックの時刻に従い動作する。時刻配信スイッチ7は、グランドマスター機器4と、当該グランドマスター機器4に備えたグランドマスタークロックに同期する送出リソーススイッチ5A及び送出マスタースイッチ5Bとの間で送受信されるPTPメッセージを転送する。
【0171】
基幹スイッチ8は、送出リソーススイッチ5Aからマルチキャストパケットを受信し、マルチキャストパケットを送出マスタースイッチ5Bへ転送する。
【0172】
時刻収集スイッチ9は、送出リソーススイッチ5A及び送出マスタースイッチ5BからPTPメッセージを受信し、PTPメッセージを同期精度評価装置2へ転送する。
【0173】
〔IP放送システム1Bに備えた同期精度評価装置2〕
次に、
図12に示した同期精度評価装置2について詳細に説明する。この同期精度評価装置2は、
図2と同様の構成部を備えている。受信部20、メモリ21,23,26、解析部22、加工部29、要求処理部30及び送受信部31は、
図2に示した構成部と同様であるため、これらの説明については省略する。
【0174】
送出デバイスPTPオフセット算出部24は、全ての送出リソースデバイス6A及び送出マスターデバイス6Bのそれぞれについて、一定時間で累積されるPTPオフセットの変化量であるPTPオフセット変動量ΔOを、前記式(12)により算出する。
【0175】
具体的には、送出デバイスPTPオフセット算出部24は、マスターとして機能する送出リソーススイッチ5A及び送出マスタースイッチ5Bがマスターとして機能する
図1の送出スイッチ5に対応し、スレーブとして機能する送出リソースデバイス6A及び送出マスターデバイス6Bがスレーブとして機能する
図1の送出デバイス6に対応し、
図4~
図7にて説明した処理と同様の処理を行う。
【0176】
送出スイッチPTPオフセット算出部25は、全ての送出リソーススイッチ5A及び送出マスタースイッチ5Bのそれぞれについて、一定時間で累積されるPTPオフセットの変化量であるPTPオフセット変動量ΔOを、前記式(19)により算出する。
【0177】
具体的には、送出スイッチPTPオフセット算出部25は、グランドマスター機器4がマスターとして機能し、スレーブとして機能する送出リソーススイッチ5A及び送出マスタースイッチ5Bがスレーブとして機能する
図1の送出スイッチ5に対応し、
図8~
図11にて説明した処理と同様の処理を行う。
【0178】
送出デバイス同期監視部27は、
図2に示した送出デバイス同期監視部27に対応する処理を行う。具体的には、送出デバイス同期監視部27は、送出リソースデバイス6Aの同期を監視する場合、同期しようとするマスタークロックが同一であって、当該マスタークロックを備えた送出リソーススイッチ5Aに接続される全ての送出リソースデバイス6AのPTPオフセット変動量ΔOが一定の範囲に収束することを監視する。例えば、送出リソース10-1について、全ての送出リソースデバイス6A-1-1,・・・,6A-1-L1のPTPオフセット変動量ΔOについて監視される。
【0179】
送出デバイス同期監視部27は、送出リソース10内の全ての送出リソースデバイス6Aのうちの1以上の送出リソースデバイス6Aについて前記式(2)を満たさないと判定した場合(PTPオフセット変動量ΔOが閾値Aを超えると判定した場合)、当該送出リソース10の送出リソースデバイス同期異常を出力する。
【0180】
また、送出デバイス同期監視部27は、送出マスターデバイス6Bの同期を監視する場合、同期しようとするマスタークロックが同一であって、当該マスタークロックを備えた送出マスタースイッチ5Bに接続される全ての送出マスターデバイス6BのPTPオフセット変動量ΔOが一定の範囲に収束することを監視する。例えば、送出マスター11について、送出マスターデバイス6B-1,・・・,6B-NのPTPオフセット変動量ΔOについて監視される。
【0181】
送出デバイス同期監視部27は、送出マスター11内の全ての送出マスターデバイス6Bのうちの1以上の送出マスターデバイス6Bについて前記式(2)を満たさないと判定した場合(PTPオフセット変動量ΔOが閾値Aを超えると判定した場合)、当該送出マスター11の送出マスターデバイス同期異常を出力する。
【0182】
これにより、送出担当者は、送出リソース10を単位とした送出リソースデバイス同期異常の発生を判断することで、同じ送出リソース10内の全ての送出リソースデバイス6Aのうち1以上の送出リソースデバイス6AにおけるPTPオフセット変動量ΔOが、一定の範囲に収束していないことを判断することができる。同様に、送出担当者は、送出マスター11を単位とした送出マスターデバイス同期異常の発生を判断することで、同じ送出マスター11内の全ての送出マスターデバイス6Bのうち1以上の送出マスターデバイス6BにおけるPTPオフセット変動量ΔOが、一定の範囲に収束していないことを判断することができる。
【0183】
送出スイッチ同期監視部28は、
図2に示した送出スイッチ同期監視部28に対応する処理を行う。具体的には、送出スイッチ同期監視部28は、送出リソーススイッチ5Aの同期を監視する場合、同期しようとするグランドマスタークロックが同一であって、当該グランドマスタークロックを備えたグランドマスター機器4に接続される全ての送出リソーススイッチ5AのPTPオフセット変動量ΔOが一定の範囲に収束することを監視する。例えば、全ての送出リソーススイッチ5A-1,・・・,5A-MのPTPオフセット変動量ΔOについて監視される。
【0184】
送出スイッチ同期監視部28は、全ての送出リソーススイッチ5Aのうちの1以上の送出リソーススイッチ5Aについて前記式(3)を満たさないと判定した場合(PTPオフセット変動量ΔOが閾値Bを超えると判定した場合)、送出リソーススイッチ同期異常を出力する。
【0185】
また、送出スイッチ同期監視部28は、送出マスタースイッチ5Bの同期を監視する場合、同期しようとするグランドマスタークロックが同一であって、当該グランドマスタークロックを備えたグランドマスター機器4に接続される送出マスタースイッチ5BのPTPオフセット変動量ΔOが一定の範囲に収束することを監視する。
【0186】
送出スイッチ同期監視部28は、送出マスタースイッチ5Bについて前記式(3)を満たさないと判定した場合(PTPオフセット変動量ΔOが閾値Bを超えると判定した場合)、送出マスタースイッチ同期異常を出力する。
【0187】
これにより、送出担当者は、送出リソーススイッチ同期異常の発生を判断することで、グランドマスター機器4を単位とした全ての送出リソーススイッチ5Aのうち1以上の送出リソーススイッチ5AにおけるPTPオフセット変動量ΔOが、一定の範囲に収束していないことを判断することができる。同様に、送出担当者は、送出マスタースイッチ同期異常の発生を判断することで、グランドマスター機器4を単位とした送出マスタースイッチ5BにおけるPTPオフセット変動量ΔOが、一定の範囲に収束していないことを判断することができる。
【0188】
以上のように、
図12のIP放送システム1Bに備えた本発明の実施形態の同期精度評価装置2によれば、PTPメッセージに含まれる時刻情報及びPTPメッセージの受信時刻のみから、全ての送出リソーススイッチ5A、送出マスタースイッチ5B、送出リソースデバイス6A及び送出マスターデバイス6Bの各機器について、PTPオフセット変動量ΔOを算出することができる。
【0189】
これにより、
図1のIP放送システム1Aの場合と同様に、新たな機能を送出リソーススイッチ5A、送出マスタースイッチ5B、送出リソースデバイス6A及び送出マスターデバイス6Bに実装する必要がない。したがって、既存の送出リソーススイッチ5A、送出マスタースイッチ5B、送出リソースデバイス6A及び送出マスターデバイス6Bを含むIP放送システム1Bに同期精度評価装置2を設けることで、送出リソーススイッチ5A、送出マスタースイッチ5B、送出リソースデバイス6A及び送出マスターデバイス6Bの機種及び製造ベンダーに関わらず、システム全体の同期精度を簡易に評価することができる。
【0190】
また、送出担当者は、同じ送出リソース10内の全ての送出リソースデバイス6Aから任意に選んだ2つの送出リソースデバイス6Aについて、PTPオフセット変動量ΔOを参照することで、2つの送出リソースデバイス6A間の同期精度が、IP放送システム1Bとして要求される1μs以下に収束しているか否かを評価することができる。送出マスター11についても同様である。
【0191】
また、IP放送システム1Bが複数のグランドマスター機器4を備える大規模なリモートプロダクション等のシステムであったとしても、同期のズレ及び異常をいち早く把握し、障害の検知及び復旧の迅速化を実現することができる。
【0192】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0193】
例えば
図12に示したIP放送システム1Bは、1台のグランドマスター機器4の下で、複数の送出リソース10及び1つの送出マスター11を備えるようにした。
【0194】
本発明は、1台のグランドマスター機器4の下において、複数の送出リソース10及び複数の送出マスター11を備えたIP放送システムにも適用があり、1台の送出リソース10、及び1台または複数の送出マスター11を備えたIP放送システムにも適用がある。
【0195】
また、本発明は、複数台のグランドマスター機器4を備えることで冗長システムを構成するようにしてもよい。この場合のIP放送システムは、それぞれのグランドマスター機器4の下で、1台または複数の送出リソース10、及び1台または複数の送出マスター11を備えて構成される。
【0196】
また、前記実施形態において、
図2に示した同期精度評価装置2は、送出デバイスPTPオフセット算出部24、送出スイッチPTPオフセット算出部25、送出デバイス同期監視部27及び送出スイッチ同期監視部28等を備えている。
【0197】
これに対し、同期精度評価装置2は、送出デバイス6のPTPオフセット変動量ΔOのみを算出するために、
図2に示した構成において、送出デバイスPTPオフセット算出部24等を備え、送出スイッチPTPオフセット算出部25、送出デバイス同期監視部27及び送出スイッチ同期監視部28を備えていなくてもよい。
【0198】
また、同期精度評価装置2は、送出デバイス6のPTPオフセット変動量ΔOを算出すると共に、送出デバイス同期異常を生成するために、送出デバイスPTPオフセット算出部24及び送出デバイス同期監視部27等を備え、送出スイッチPTPオフセット算出部25及び送出スイッチ同期監視部28を備えていなくてもよい。
【0199】
また、同期精度評価装置2は、送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOのみを算出するために、
図2に示した構成において、送出スイッチPTPオフセット算出部25等を備え、送出デバイスPTPオフセット算出部24、送出デバイス同期監視部27及び送出スイッチ同期監視部28を備えていなくてもよい。
【0200】
また、同期精度評価装置2は、送出スイッチ5のPTPオフセット変動量ΔOを算出すると共に、送出スイッチ同期異常を生成するために、送出スイッチPTPオフセット算出部25及び送出スイッチ同期監視部28等を備え、送出デバイスPTPオフセット算出部24及び送出デバイス同期監視部27を備えていなくてもよい。
【0201】
図2に示した同期精度評価装置2では、番組送出システムを構成するIP放送システム1Aに用いられるため、送出デバイスPTPオフセット算出部24、送出スイッチPTPオフセット算出部25、送出デバイス同期監視部27及び送出スイッチ同期監視部28において送出という名称を使用しているが、これらの構成部は、番組制作システム等の他の放送システムにも適用がある。
【0202】
尚、本発明の実施形態による同期精度評価装置2のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。同期精度評価装置2は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。
【0203】
同期精度評価装置2に備えた受信部20、メモリ21,23,26、解析部22、送出デバイスPTPオフセット算出部24、送出スイッチPTPオフセット算出部25、送出デバイス同期監視部27、送出スイッチ同期監視部28、加工部29、要求処理部30及び送受信部31の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0204】
これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPUに読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【符号の説明】
【0205】
1A,1B IP放送システム
2 同期精度評価装置
3 時刻監視端末
4 グランドマスター機器
5 送出スイッチ
5A 送出リソーススイッチ
5B 送出マスタースイッチ
6 送出デバイス
6A 送出リソースデバイス
6B 送出マスターデバイス
7 時刻配信スイッチ
8 基幹スイッチ
9 時刻収集スイッチ
10 送出リソース
11 送出マスター
20 受信部
21,23,26 メモリ
22 解析部
24 送出デバイスPTPオフセット算出部
25 送出スイッチPTPオフセット算出部
27 送出デバイス同期監視部
28 送出スイッチ同期監視部
29 加工部
30 要求処理部
31 送受信部