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特許7651560供試体自動運転装置、供試体自動運転方法、及び、供試体試験システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】供試体自動運転装置、供試体自動運転方法、及び、供試体試験システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20250318BHJP
   F02D 28/00 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
G01M17/007 B
F02D28/00 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022514329
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2021006761
(87)【国際公開番号】W WO2021205767
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020071005
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 嘉健
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 崇志
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-338004(JP,A)
【文献】特開2017-020974(JP,A)
【文献】特開2005-297872(JP,A)
【文献】特開2013-134151(JP,A)
【文献】特開2015-129701(JP,A)
【文献】米国特許第04442708(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/007
F02D 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験車両又はその一部である供試体を指令車速に基づいて自動運転する供試体自動運転装置であって、
前記指令車速に基づいて前記供試体を制御する運転制御部を備え、
前記運転制御部は、車速関連値、加速度関連値及びアクセル踏み込み量関連値の関係を示す第1アクセルマップ及び第2アクセルマップを有し、前記第1アクセルマップを用いて前記指令車速に応じたアクセル踏み込み量関連値を決定し、前記供試体の車速関連値又は加速度関連値をフィードバックして前記第2アクセルマップを用いて前記アクセル踏み込み量関連値を修正するものであり、
前記第1アクセルマップは、車種に共通した標準マップであり、
前記運転制御部は、前記指令車速、前記修正したアクセル踏み込み量関連値、並びに、前記供試体の車速関連値又は加速度関連値に基づいて、前記第2アクセルマップを更新するマップ更新部を有する、供試体自動運転装置。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記第1アクセルマップを用いたフィードフォワード制御にて前記指令車速に応じたアクセル踏み込み量関連値を決定し、前記第2アクセルマップを用いたフィードバック制御にて前記指令車速に応じたアクセル踏み込み量関連値を修正する、請求項1に記載の供試体自動運転装置。
【請求項3】
前記第2アクセルマップは、初期状態において車種に共通した標準マップである、請求項1又は2に記載の供試体自動運転装置。
【請求項4】
前記運転制御部は、所定の先読み時間後の指令車速を微分し、当該微分により得られた加速度関連値を前記第1アクセルマップに入力するフィードフォワード制御部を有している、請求項1乃至の何れか一項に記載の供試体自動運転装置。
【請求項5】
前記フィードフォワード制御部は、前記指令車速、前記修正したアクセル踏み込み量関連値、並びに、前記供試体の車速関連値又は加速度関連値に基づいて、前記先読み時間を変更する、請求項に記載の供試体自動運転装置。
【請求項6】
前記運転制御部は、減速度関連値及びブレーキ踏み込み量関連値の関係を示す第1ブレーキマップ及び第2ブレーキマップを有し、前記第1ブレーキマップを用いて前記指令車速に応じたブレーキ踏み込み量関連値を決定し、前記供試体の車速関連値又は加速度関連値をフィードバックして前記第2ブレーキマップを用いて前記ブレーキ踏み込み量関連値を修正する、請求項1乃至の何れか一項に記載の供試体自動運転装置。
【請求項7】
前記供試体を運転操作するための運転用アクチュエータをさらに備え、
前記運転制御部は、前記運転用アクチュエータを制御することによって前記供試体を制御するものである、請求項1乃至の何れか一項に記載の供試体自動運転装置。
【請求項8】
試験車両又はその一部である供試体を走行試験するためのシャシダイナモメータと、
請求項1乃至の何れか一項に記載の供試体自動運転装置とを備える、供試体試験システム。
【請求項9】
試験車両又はその一部である供試体を指令車速に基づいて自動運転する供試体自動運転方法であって、
車速関連値、加速度関連値及びアクセル踏み込み量関連値の関係を示す第1アクセルマップ及び第2アクセルマップを用いるものであり、前記第1アクセルマップを用いて前記指令車速に応じたアクセル踏み込み量関連値を決定し、前記供試体の車速関連値又は加速度関連値をフィードバックして前記第2アクセルマップを用いて前記アクセル踏み込み量関連値を修正して、当該修正したアクセル踏み込み量関連値に基づいて、前記供試体を制御し、
前記第1アクセルマップは、車種に共通した標準マップであり、
前記指令車速、前記修正したアクセル踏み込み量関連値、並びに、前記供試体の車速関連値又は加速度関連値に基づいて、前記第2アクセルマップを更新する、供試体自動運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験車両又はその一部である供試体を指令車速に基づいて自動運転する供試体自動運転装置及び供試体自動運転方法、並びに、供試体自動運転装置を用いた供試体試験システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばシャシダイナモメータ上で車両を自動運転する際に、当該車両のアクセル、ブレーキなどを操作するための自動運転ロボットを用いて、所定の走行パターンで車両を走行させて、当該車両の試験を行うものがある。
【0003】
この自動運転ロボットには、法規制やユーザによって定められた走行パターンに基づいて指令車速が入力される。なお、各国の法規制には、例えば、JC08(日本)、NEDC(欧州)、WLTP(主に日本、欧州など)、FTP75(米国)、US06(米国)、HWFET(米国)、SC03(米国)等を挙げることができる。
【0004】
そして、自動運転ロボットは、様々な車両を所定の走行パターンに従って運転する必要があるため、試験車両毎に求められた車速と加速度とスロットル開度との関係を示す走行性能マップを用いて、スロットル開度指令値を算出し、この指令値に基づいて、アクセルやブレーキを操作して、車両の実車速を指令車速に追従させている。
【0005】
しかしながら、上記の走行性能マップは、試験車両ごとに求める必要があり、走行試験を行う前に、走行性能マップを求めるための事前学習を行っている。この事前学習には、1回あたり20~40分程度の時間を要するため、試験効率の向上を阻害している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-35913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、車両ごとに走行性能マップを事前学習すること無く、供試体を自動運転できるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る供試体自動運転装置は、試験車両又はその一部である供試体を指令車速に基づいて自動運転する供試体自動運転装置であって、前記指令車速に基づいて前記供試体を制御する運転制御部を備え、前記運転制御部は、車速関連値、加速度関連値及びアクセル踏み込み量関連値の関係を示す第1アクセルマップ及び第2アクセルマップを有し、前記第1アクセルマップを用いて前記指令車速に応じたアクセル踏み込み量関連値を決定し、前記供試体の車速関連値又は加速度関連値をフィードバックして前記第2アクセルマップを用いて前記アクセル踏み込み量関連値を修正することを特徴とする。
【0009】
このような構成であれば、車速関連値、加速度関連値及びアクセル踏み込み量関連値の関係を示す第1アクセルマップ及び第2アクセルマップにおいて、第1アクセルマップを用いて指令車速に応じたアクセル踏み込み量関連値を決定し、供試体の車速関連値又は加速度関連値をフィードバックして第2アクセルマップを用いてアクセル踏み込み量を修正するので、車両ごとに走行性能マップを事前学習すること無く、供試体を自動運転できるようになる。その結果、供試体の走行試験を効率よく行うことができる。
なお、ここで、車速関連値は、車速そのものの他に、車速を示す値であっても良いし、加速度関連値は、加速度そのものの他に、加速度を示す値であっても良いし、アクセル踏み込み量関連値は、アクセル踏み込み量そのものの他に、アクセル踏み込み量を示す値であっても良い。
【0010】
具体的に前記運転制御部は、前記第1アクセルマップを用いたフィードフォワード制御にて前記指令車速に応じたアクセル踏み込み量関連値を決定し、前記第2アクセルマップを用いたフィードバック制御にて前記指令車速に応じたアクセル踏み込み量関連値を修正することが望ましい。
【0011】
ここで、前記第1アクセルマップは、車種に共通した標準マップであり、前記第2アクセルマップは、初期状態において車種に共通した標準マップであることが望ましい。なお、標準マップは、複数の車種の既存のアクセルマップデータを平均化したものや、複数の車種の既存のアクセルマップデータを主成分分析して復元したもの等が考えられる。
【0012】
供試体の応答特性を補正して、指令車速への追従性を向上するためには、前記運転制御部は、前記指令車速、前記修正したアクセル踏み込み量関連値、並びに、前記供試体の車速関連値又は加速度関連値に基づいて、前記第2アクセルマップを更新するマップ更新部を有することが望ましい。
【0013】
供試体の運転態様(運転の荒さや滑らかさ)を調整できるようにするためには、前記運転制御部は、所定の先読み時間後の指令車速を微分し、当該微分により得られた加速度関連値を前記第1アクセルマップに入力するフィードフォワード制御部を有していることが望ましい。
【0014】
供試体の応答特性を補正して、精度の良い走行試験を行うためには、前記フィードフォワード制御部は、前記指令車速、前記修正したアクセル踏み込み量関連値、並びに、前記供試体の車速関連値又は加速度関連値に基づいて、前記先読み時間を変更することが望ましい。
【0015】
さらに前記運転制御部は、減速度関連値及びブレーキ踏み込み量関連値の関係を示す第1ブレーキマップ及び第2ブレーキマップを有し、前記第1ブレーキマップを用いて前記指令車速に応じたブレーキ踏み込み量関連値を決定し、前記供試体の車速関連値又は加速度関連値をフィードバックして前記第2ブレーキマップを用いて前記ブレーキ踏み込み量関連値を修正することが望ましい。なお、ここで、減速度関連値は、減速度そのものの他に、減速度を示す値であっても良いし、ブレーキ踏み込み量関連値は、ブレーキ踏み込み量そのものの他に、ブレーキ踏み込み量を示す値であっても良い。
【0016】
また、本発明に係る供試体試験システムは、前記供試体を運転操作するための運転用アクチュエータをさらに備え、前記運転制御部は、前記運転用アクチュエータを制御することによって前記供試体を制御するものであることが望ましい。
【0017】
また、本発明に係る供試体試験システムは、試験車両又はその一部である供試体を走行試験するためのシャシダイナモメータと、上述した供試体自動運転装置とを備えることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明に係る供試体自動運転方法は、試験車両又はその一部である供試体を指令車速に基づいて自動運転する供試体自動運転方法であって、車速関連値、加速度関連値及びアクセル踏み込み関連値量の関係を示す第1アクセルマップ及び第2アクセルマップを用いるものであり、前記第1アクセルマップを用いて前記指令車速に応じたアクセル踏み込み量関連値を決定し、前記供試体の車速関連値及び加速度関連値をフィードバックして前記第2アクセルマップを用いて前記アクセル踏み込み関連値量を修正して、当該修正したアクセル踏み込み量関連値に基づいて、前記供試体を運転操作するための運転用アクチュエータを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上に述べた本発明によれば、車両ごとに走行性能マップを事前学習すること無く、供試体を自動運転できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る供試体自動運転装置の全体模式図である。
図2】同実施形態の運転制御部の機能ブロック図である。
図3】アクセルマップにおける標準マップの作成方法を示す模式図である。
図4】ブレーキマップにおける標準マップの作成方法を示す模式図である。
図5】アクセルマップにおける標準マップの補正方法を示す模式図である。
図6】アクセルマップにおける標準マップの更新方法を示す模式図である。
図7】変形実施形態の運転制御部の機能ブロック図である。
図8】変形実施形態の運転制御部の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0021】
100・・・自動運転装置
200・・・シャシダイナモメータ
V ・・・試験車両(供試体)
2 ・・・運転操作部
21 ・・・運転用アクチュエータ
10A・・・第1マップ
10B・・・第2マップ
3 ・・・運転制御部
31 ・・・フィードフォワード制御部
32 ・・・フィードバック制御部
33 ・・・加算器
34 ・・・マップ更新部
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の一実施形態に係る供試体自動運転装置について、図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態の供試体自動運転装置100は、図1に示すように、シャシダイナモメータ200の回転ローラ201上に載せられた供試体である試験車両Vを自動運転するための運転操作部2と、当該運転操作部2を制御する運転制御部3とを備えている。なお、供試体自動運転装置100は、シャシダイナモメータ200とともに供試体試験システムを構成する。
【0024】
運転操作部2は、試験車両Vの運転席V1の座面上に載置されて、試験車両Vのアクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、又はイグニッションスイッチ等をそれぞれ操作する運転用アクチュエータ21を備えている。
【0025】
具体的に運転操作部2は、運転用アクチュエータ21として、アクセルペダルを踏み込み操作するアクセル用アクチュエータ、ブレーキペダルを踏み込み操作するブレーキ用アクチュエータ、シフトレバーを操作するシフトレバー用アクチュエータ、又はイグニッションスイッチを操作するスイッチ用アクチュエータ等を有している。その他、運転操作部2は、必要に応じて、クラッチペダルを踏み込み操作するクラッチ用アクチュエータ等を有していても良い。
【0026】
運転制御部3は、入力された指令車速を目標値として、運転操作部2の各アクチュエータ21を制御することにより、試験車両Vの実車速を指令車速に追従させるものである。なお、指令車速r(t)は、例えば、JC08(日本)、NEDC(欧州)、WLTP(主に日本、欧州など)、FTP75(米国)、US06(米国)、HWFET(米国)、又はSC03(米国)等の法規制においてそれぞれ定められた走行パターンにより決まる車速であったり、あるいは、ユーザが定めた走行パターンにより決まる車速である。
【0027】
具体的に運転制御部3は、図2に示すように、2つの走行性能マップ10A、10Bを用いて、運転操作部2の各アクチュエータ21(特にアクセル用アクチュエータ及びブレーキ用アクチュエータ)を制御する。なお、運転制御部3は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換器等を有するコンピュータであり、内部メモリに格納された運転制御プログラムに基づいて、各アクチュエータ21を制御する。
【0028】
上記の2つの走行性能マップ10A、10Bは、それぞれアクセルマップ10A-1、10B-1及びブレーキマップ10A-2、10B-2を含んでいる。アクセルマップ10A-1、10B-1は、図3に示すように、車種に共通した3次元の標準マップであり、速度及び加速度からアクセル踏み込み量を得ることができるデータのことである。また、ブレーキマップ10A-2、10B-2は、図4に示すように、車種に共通した2次元の標準マップであり、減速度からブレーキ踏み込み量を得ることができるデータのことである。
なお、以下において2つの走行性能マップ10A、10Bを区別する場合には、その一方を「第1マップ10A」等といい、他方を「第2マップ10B」等という。なお、2つの走行性能マップ10A、10Bは、運転制御部3に設けられたマップ格納部30に格納されている。
【0029】
この走行性能マップ10A、10Bは、図3及ぶ図4に示すように、複数の車種の既存の走行性能マップを平均化したものや、複数の車種の既存の走行性能マップを主成分分析して復元したもの等が考えられる。なお、主成分分析して復元して作成する場合には、複数の車種の既存のマップデータを主成分分析した後に、例えば第7主成分までのスコアを平均処理して復元する。また、必要に応じて、図5に示すように、試験車両Vの全閉減速度データを取得して、当該全閉減速度データにより標準マップを補正し、当該補正された標準マップを用いても良い。
【0030】
ここで、既存の走行性能マップは、例えば、過去に作成されたものである。
過去のアクセルマップについては、次の(1)~(3)の手順により作成される。(1)試験車両の学習運転を行って、種々の異なるアクセル踏み込み量における速度及び加速度を取得する。(2)そして、アクセル踏み込み量、速度及び加速度を関連付けたデータを得る。(3)その後、アクセル踏み込む量、速度及び加速度を関連付けたデータに基づいて、速度及び加速度からアクセル踏み込み量を得ることができるデータ(アクセルマップ)に展開する。
また、過去のブレーキマップについては、次の(1)~(3)の手順により作成される。(1)試験車両の学習運転を行って、種々の異なるブレーキ踏み込み量における減速度を取得する。(2)そして、ブレーキ踏み込み量及び減速度を関連付けたデータを得る。(3)その後、ブレーキ踏み込む量及び減速度を関連付けたデータに基づいて、減速度からブレーキ踏み込み量を得ることができるデータ(ブレーキマップ)に展開する。
【0031】
そして、運転制御部3は、2自由度制御系の制御アルゴリズムにより、運転操作部2のアクセル用アクチュエータ又はブレーキ用アクチュエータ等の運転用アクチュエータ21を制御する。ここで、運転制御部3によるアクセル制御/ブレーキ制御は、補正後のアクセルマップ(標準マップ)の値がゼロになるときに、アクセル制御がOFFとなり、ブレーキ制御がONとなるように切り替わる。
【0032】
具体的に運転制御部3は、第1マップ10Aを用いて指令車速r(t)に応じたアクセル踏み込み量AccFF(t)又はブレーキ踏み込み量BrkFF(t)を決定するフィードフォワード制御部31と、試験車両Vの実車速及び実加速度をフィードバックして第2マップ10Bを用いてアクセル踏み込み量AccFF(t)又はブレーキ踏み込み量BrkFF(t)を修正するフィードバック制御部32とを有している。
【0033】
フィードフォワード制御部31は、現時刻から一定時間(所定の先読み時間)後の未来の指令車速r(t)を微分し、当該微分により得られた微分値(加速度)を第1マップ10Aに入力して、フィードフォワード制御系のアクセル踏み込み量AccFF(t)又はブレーキ踏み込み量BrkFF(t)を求める。
【0034】
また、フィードバック制御部32は、現時刻における指令車速r(t)と実車速v(t)との偏差を制御器(例えばPID制御)に入力して、当該制御器の出力値を第2マップ10Bに入力して、フィードバック制御系のアクセル踏み込み量AccFB(t)又はブレーキ踏み込み量BrkFB(t)を求める。
【0035】
さらに、運転制御部3は、フィードフォワード制御系のアクセル踏み込み量AccFF(t)とフィードバック制御系のアクセル踏み込み量AccFB(t)とを加算器33で加算して、フィードフォワード制御系のアクセル踏み込み量AccFF(t)をフィードバック制御系のアクセル踏み込み量AccFB(t)を用いて修正(補完)する。そして、運転制御部3は、修正したアクセル踏み込み量(Acc(t)=AccFB(t)+AccFB(t))を示すアクセル踏み込み量指令値により、アクセル用アクチュエータを制御する。また、運転制御部3は、フィードフォワード制御系のブレーキ踏み込み量BrkFF(t)とフィードバック制御系のブレーキ踏み込み量BrkFB(t)とを加算器33で加算して、フィードフォワード制御系のブレーキ踏み込み量BrkFF(t)をフィードバック制御系のブレーキ踏み込み量BrkFB(t)を用いて修正(補完)する。そして、運転制御部3は、修正したブレーキ踏み込み量(Brk(t)=BrkFB(t)+BrkFB(t))を示すブレーキ踏み込み量指令値により、ブレーキ用アクチュエータを制御する。
【0036】
ここで、運転制御部3は、指令車速r(t)、修正したアクセル踏み込み量Acc(t)、並びに、試験車両Vの実車速v(t)及び実加速度a(t)に基づいて、第2マップ10Bの第2アクセルマップ10B-1を更新するマップ更新部34を有している。マップ更新部34は、予め定められたMAP更新則を用いて、第2マップ10Bの第2アクセルマップ10B-1を更新する。なお、第2マップ10Bの第2ブレーキマップ10B-2も同様にしてマップ更新部34により更新される。
【0037】
図6に具体的なマップ更新の一例を示している。現時点での第2マップ10Bにおいて、スロットル踏み込み量(ここでは0.08)における試験車両Vの実加速度(ここでは1.8[km/h/s])と第2マップ10B上の指令加速度(ここでは1.4[km/h/s])との間にギャップがある場合、まず、マップ補正点を算出する。例えば、実加速度と指令加速度との間の点(ここでは1/4地点(1.5[km/h/s]))をマップ補正点とする。そして、このマップ補正点に基づいて、例えば最小二乗法等の近似手法を用いて第2マップ10Bの第2アクセルマップ10B-1を更新する。
【0038】
また、フィードフォワード制御部31は、指令車速r(t)、修正したアクセル踏み込み量Acc(t)、並びに、試験車両Vの実車速v(t)及び実加速度a(t)に基づいて、先読み時間を変更する。具体的にフィードフォワード制御部31は、試験車両Vのトランスミッションの種類によって先読み時間を変更する。また、試験中に試験車両Vの応答時間の長短等を推定できた場合は、先読み時間を随時変更させる。
【0039】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の供試体自動運転装置100によれば、車速、加速度及びアクセル踏み込み量の関係を示す第1マップ10A(第1アクセルマップ10A-1)及び第2マップ10B(第2アクセルマップ10B-1)において、第1アクセルマップ10A-1を用いて指令車速に応じたアクセル踏み込み量を決定し、試験車両Vの車速及び加速度をフィードバックして第2アクセルマップ10B-1を用いてアクセル踏み込み量を修正するので、試験車両Vごとに走行性能マップを事前学習すること無く、試験車両Vを自動運転できるようになる。その結果、試験車両Vのシャシダイナモメータ200上での走行試験を効率よく行うことができる。
【0040】
<その他の実施形態>
例えば、前記実施形態では、指令車速r(t)、修正したアクセル踏み込み量Acc(t)、並びに、試験車両Vの実車速v(t)及び実加速度a(t)に基づいて、フィードフォワード制御部31が先読み時間を変更するものであったが、図7に示すように、フィードフォワード制御部31が先読み時間を変更しないものでも良い。
【0041】
また、前記実施形態では、マップ更新部34が第2マップ10Bを更新するものであったが、指令車速r(t)、修正したアクセル踏み込み量Acc(t)、並びに、試験車両Vの実車速v(t)及び実加速度a(t)に基づいて、第1マップ10Aを更新するようにしても良い。
【0042】
さらに、前記実施形態では、マップ更新部34を有する構成であったが、図8に示すように、マップ更新部34を有さない構成、つまり、第1マップ10A及び第2マップ10Bを更新しない構成としても良い。
【0043】
その上、前記実施形態の第1マップ10A及び第2マップ10Bは更新前(初期状態)においては同一のものであったが、更新前において第1マップ10A及び第2マップ10Bが互いに異なるものであっても良い。
【0044】
また、前記実施形態では、走行性能マップとしてアクセルマップ及びブレーキマップの両方を有する構成であったが、何れか一方(例えばアクセルマップのみ又はブレーキマップのみ)を有する構成としても良い。
【0045】
加えて、フィードフォワード制御部31は、現時刻から一定時間(所定の先読み時間)後の未来の指令車速r(t)を微分し、当該微分により得られた微分値(加速度)に所定のゲイン値を掛け合わせた値を第1マップ10Aに入力しても良い。
【0046】
前記実施形態では、完成車両を試験するものであったが、例えばエンジンダイナモメータを用いてエンジンを試験するものであっても良いし、ダイナモメータを用いてパワートレインを試験するものであっても良い。また車両としては、ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車両であってもよい。
【0047】
前記実施形態の運転制御部は運転用アクチュエータを制御するものであったが、運転用アクチュエータを制御すること無く、供試体に制御信号を入力することによって供試体を制御するものであっても良い。この場合、運転制御部は、例えばアクセル踏み込み量そのものの指令値を供試体に入力するのではなく、当該アクセル踏み込み量に関連するアクセル踏み込み量関連値を入力することになる。
【0048】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、車両ごとに走行性能マップを事前学習すること無く、供試体を自動運転できるようになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8