(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】気相堆積装置及び真空チャンバ内で基板をコーティングするための方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20250318BHJP
【FI】
C23C14/56 J
C23C14/56 A
(21)【出願番号】P 2022574434
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 US2021034611
(87)【国際公開番号】W WO2021247380
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バンゲルト, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ロップ, アンドレアス
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-012662(JP,A)
【文献】特開2016-017198(JP,A)
【文献】特開2011-154786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされる基板を支持するための基板支持体であって、湾曲したドラム表面を備えた回転可能なドラムである基板支持体と、
蒸気伝搬空間を通して蒸気を前記基板支持体に向かって方向付けるための複数のノズルを備えた蒸気源と、
前記蒸気源に装着されており、前記蒸気源から前記基板支持体に向かって突出し、前記蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲み、前記蒸気伝搬空間の側壁を形成する加熱可能なシールドであって、コーティングされない前記基板の領域をマスクするためのエッジ除外部分を備える、加熱可能なシールドと
を備え、
前記エッジ除外部分は、前記湾曲したドラム表面に沿って延び、その曲率に追従
し、
前記エッジ除外部分と前記湾曲したドラム表面との間に、前記回転可能なドラムの周方向に延びる間隙が設けられており、
前記エッジ除外部分は、前記加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、前記基板支持体に向かってより近接して移動するように構成されている、気相堆積装置。
【請求項2】
前記気相堆積装置は、前記湾曲したドラム表面上の前記基板を前記蒸気源を通過して
前記周方向に移動させるように構成される、請求項1に記載の気相堆積装置。
【請求項3】
(i)前記加熱可能なシールドが加熱されていないときに、前記エッジ除外部分と前記湾曲したドラム表面との間の最大距離は、2mm以上6mm以下であること、及び
(ii)前記加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、前記エッジ除外部分と前記湾曲したドラム表面との間の最大距離は、2mm未満、特に約1mm又は1mm未満であることが適用される、請求項2に記載の気相堆積装置。
【請求項4】
前記加熱可能なシールドが加熱されるときに、
前記周方向における前記加熱可能なシールドの延長部分にわたってサブmmの偏差で、回転可能なドラムから所定の半径方向距離で前記加熱可能なシールドを位置決めするための、前記周方向に互いに離間し且つそれぞれの位置合わせ凹部に突出する、少なくとも3つの位置合わせピンを備える、請求項1に記載の気相堆積装置。
【請求項5】
前記エッジ除外部分は、前記基板の2つの反対側の側方方向エッジをマスクするように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の気相堆積装置。
【請求項6】
前記加熱可能なシールドは、2つのコーティングストリップの堆積を可能にするために内部基板領域をマスクするためのセグメンテーション部分を含む、請求項1
~4のいずれか一項に記載の気相堆積装置。
【請求項7】
前記セグメンテーション部分は、前記加熱可能なシールドによって提供されるコーティングウインドウを、側方方向に本質的に等しい幅を有する2つ以上のサブウインドウに分割する、請求項6に記載の気相堆積装置。
【請求項8】
前記加熱可能なシールドを、蒸気凝縮温度を上回る温度、特に500℃以上600℃以下の温度まで能動的に又は受動的に加熱するための加熱装置を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の気相堆積装置。
【請求項9】
前記加熱装置に接続され、前記加熱可能なシールドの前記温度を、前記蒸気源内の温度より低く、且つ前記蒸気伝搬空間内の蒸気凝縮温度より高くなるよう制御するように構成されるコントローラ
を更に備える、請求項8に記載の気相堆積装置。
【請求項10】
前記加熱可能なシールドは、前記基板支持体と接触せず、よって前記基板支持体は、気相堆積中に前記加熱可能なシールド及び前記蒸気源に対して移動することができる、請求項1
~4のいずれか一項に記載の気相堆積装置。
【請求項11】
前記加熱可能なシールドは、2つの側方側、並びに基板入口側及び基板出口側の少なくとも一方において、前記蒸気伝搬空間を囲む、請求項1~4のいずれか一項に記載の気相堆積装置。
【請求項12】
コーティングされる基板を支持するための基板支持体であって、湾曲したドラム表面を備えた回転可能なドラムである基板支持体と、
蒸気伝搬空間を通して蒸気を前記湾曲したドラム表面に向かって方向付けるための複数のノズルを備えた蒸気源と、
前記蒸気源に装着されており、前記蒸気源から前記湾曲したドラム表面に向かって突出し、前記蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲み、前記蒸気伝搬空間の側壁を形成する加熱可能なシールドであって、前記湾曲したドラム表面上にコーティングウインドウを画定する加熱可能なシールドと
を備え、
前記加熱可能なシールドは、コーティングされない前記基板の領域をマスクするためのエッジ除外部分を備え、前記エッジ除外部分は、前記回転可能なドラムの周方向に延び、前記湾曲したドラム表面の曲率に追従
し、
前記エッジ除外部分と前記湾曲したドラム表面との間に、前記周方向に延びる間隙が設けられており、
前記エッジ除外部分は、前記加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、前記基板支持体に向かってより近接して移動するように構成されている、気相堆積装置。
【請求項13】
真空チャンバ内で基板をコーティングするための方法であって、
基板を、蒸気源を通過して回転可能なドラムの湾曲したドラム表面上を周方向に移動させることと、
蒸気伝搬空間を通して、前記蒸気源から前記湾曲したドラム表面上で支持される前記基板に向かって蒸気を方向付けることと、
前記蒸気源に装着されており、前記蒸気源から前記湾曲したドラム表面に向かって突出し、前記蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲み、前記蒸気伝搬空間の側壁を形成する加熱可能なシールドを加熱することと
を含み、
前記加熱可能なシールドは、コーティングされない前記基板の領域をマスクするためのエッジ除外部分を備え、前記エッジ除外部分は、
前記周方向に延び、前記湾曲したドラム表面の曲率に追従
し、
前記エッジ除外部分と前記湾曲したドラム表面との間に、前記周方向に延びる間隙が設けられており、
前記エッジ除外部分は、前記加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、前記回転可能なドラムに向かってより近接して移動するように構成されている、方法。
【請求項14】
前記加熱可能なシールドは、前記湾曲したドラム表面上にコーティングウインドウを画定する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エッジ除外部分は、前記基板の少なくとも1つの側方エッジ又は2つの反対側の側方エッジをマスクする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記間隙は、前記加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、約0.8mmと約1.5mmとの間の本質的に一定の間隙幅、特に約1mmの一定の間隙幅を有する、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
真空チャンバ内で基板をコーティングするための方法であって、
基板を、蒸気源を通過して回転可能なドラムの湾曲したドラム表面上を周方向に移動させることと、
蒸気伝搬空間を通して、前記蒸気源から前記湾曲したドラム表面上で支持される前記基板に向かって蒸気を方向付けることと、
前記蒸気源に装着されており、前記蒸気源から前記湾曲したドラム表面に向かって突出し、前記蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲み、前記蒸気伝搬空間の側壁を形成する加熱可能なシールドを加熱することと
を含み、
前記加熱可能なシールドは、コーティングされない前記基板の領域をマスクするためのエッジ除外部分を備え、前記エッジ除外部分は、前記周方向に延び、前記湾曲したドラム表面の曲率に追従し、
前記加熱可能なシールドは、前記周方向に延び、且つ前記加熱可能なシールドによって提供されるコーティングウインドウを2つ以上のサブウインドウに分割するセグメンテーション部分を備え、前記方法は、
前記2つ以上のサブウインドウを通して前記基板上に2つ以上の別々のコーティングストリップを堆積させること
を含む
、方法。
【請求項18】
前記蒸気源がリチウム源であり、前記蒸気がリチウム蒸気である、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
コーティングされる基板を支持するための基板支持体であって、湾曲したドラム表面を備えた回転可能なドラムである、基板支持体と、
蒸気伝搬空間を通して蒸気を前記基板支持体に向かって方向付けるための複数のノズルを備えた蒸気源と、
前記蒸気源から前記基板支持体に向かって延び、前記蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲む加熱可能なシールドであって、コーティングされない前記基板の領域をマスクするためのエッジ除外部分を備える、加熱可能なシールドと
を備え、
前記加熱可能なシールドが加熱されるときに、周方向における前記加熱可能なシールドの延長部分にわたってサブmmの偏差で、回転可能なドラムから所定の半径方向距離で前記加熱可能なシールドを位置決めするための、前記周方向に互いに離間し且つそれぞれの位置合わせ凹部に突出する、少なくとも3つの位置合わせピンを備える、気相堆積装置。
【請求項20】
真空チャンバ内で基板をコーティングするための方法であって、
基板を、蒸気源を通過して回転可能なドラムの湾曲したドラム表面上を周方向に移動させることと、
蒸気伝搬空間を通して、前記蒸気源から前記湾曲したドラム表面上で支持される前記基板に向かって蒸気を方向付けることと、
前記蒸気源から前記湾曲したドラム表面に向かって延在し、前記蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲む加熱可能なシールドを加熱することと
を含み、
前記加熱可能なシールドは、当該加熱可能なシールドが前記湾曲したドラムの方を向くように少なくとも3つの位置合わせピンによって保持され、
前記少なくとも3つの位置合わせピンは、前記加熱可能なシールドが加熱されるときに、周方向における前記加熱可能なシールドの延長部分にわたってサブmmの偏差で、回転可能なドラムから所定の半径方向距離で前記加熱可能なシールドを位置決めするための位置合わせピンであり、前記周方向に互いに離間し且つそれぞれの位置合わせ凹部に突出している、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示の実施形態は、真空チャンバ内での熱蒸発による基板コーティングに関する。本開示の実施形態は、更に、例えばフレキシブル金属箔上の蒸発を介してフレキシブル基板上への1つ又は複数のコーティングストリップの堆積に関する。特に、実施形態は、例えばLiバッテリの製造のためのフレキシブル箔上へのリチウムの堆積に関する。具体的には、実施形態は、気相堆積装置、基板を真空チャンバ内でコーティングするための方法、及び気相堆積装置を設置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 基板上への堆積のための種々の技術、例えば、化学気相堆積(CVD)及び物理的気相堆積(PVD)が知られている。高い堆積速度での堆積のために、PVDプロセスとして熱蒸発が使用されうる。熱蒸発のために、ソース材料は、例えば基板上に堆積されうる蒸気を生成するために加熱される。加熱されたソース材料の温度を上昇させると、蒸気濃度を増加させ、速い堆積速度を促進することができる。速い堆積速度を達成するための温度は、ソース材料の物理的特性、例えば、温度の関数としての蒸気圧、及び基板の物理的限界、例えば、融点に依存する。
【0003】
[0003] 例えば、基板上に堆積される材料は、高い蒸気圧で蒸気を生成するために、るつぼ内で加熱することができる。蒸気は、るつぼから複数のノズルを備えた、加熱された蒸気分配器に移送することができる。蒸気は、1つ又は複数のノズルによって、例えば真空チャンバ内のコーティング空間内の基板上に方向付けることができる。
【0004】
[0004] 蒸発による金属(例えばリチウム)のフレキシブル基板上(例えば銅基板上)への堆積は、Li-バッテリのようなバッテリの製造に使用されうる。例えば、リチウム層は、バッテリのアノードを生成するための薄いフレキシブル基板上に堆積されうる。アノード層スタックとカソード層スタックとを、オプションではこれらの間に電解質及び/又はセパレータを用いて、組み立てた後に、Li-バッテリを製造するために、製造された層構成が圧延されるか又は他の方法で積層されうる。
【0005】
[0005] 構成要素の表面、例えば、真空チャンバの真空チャンバ壁は、蒸気に曝され、コーティングされうる。凝縮物を取り除くための頻繁なメンテナンスは、大量製造、例えば薄い箔上のウェブコーティングに対しては実用的ではない。更に、基板とは異なる真空チャンバの構成要素がコーティングされる場合に、高価なコーティング材料が無駄になる可能性がある。
【0006】
[0006] 加えて、特に蒸気が金属蒸気であり、ノズルが大きなプルーム発散を提供する場合、蒸発によって基板上に正確に画定される鋭いエッジを有する層を堆積させることは、概して難しい。シールド構成上のシャドウイング効果及び材料凝縮は、明確に画定されていない基板上の層エッジ、及び/又はコーティング材料を含まない状態に保たれる基板領域上の材料堆積につながることがある。
【0007】
[0007] 従って、真空チャンバ内で基板をコーティングするための気相堆積装置及び方法を有することが有益であろう。このため、メンテナンスサイクルを低減することができ、同時に、基板がフレキシブルであるか又は湾曲していても、基板上のコーティング層の鋭いエッジ及びコーティングを含まない基板エッジを可能にする。更に、ソース材料の利用が有利に改善される。これにより、製造コストを低減し、層品質を向上させることができる。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 上記に鑑み、気相堆積装置、基板を真空槽内でコーティングする方法、及び独立請求項に記載の気相堆積装置を設置するための方法が提供される。本開示の更なる態様、利点及び特徴は、明細書、及び添付の図面から明らかとなる。
【0009】
[0009] 1つの態様によれば、気相堆積装置が提供される。本気相堆積装置は、コーティングされる基板を支持するための基板支持体と、蒸気伝搬空間(vapor propagation volume)を通して蒸気を基板支持体に向かって方向付けるための複数のノズルを備えた蒸気源と、蒸気源から基板支持体に向かって延び、蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲む加熱可能なシールドであって、コーティングされない基板の領域をマスクするためのエッジ除外部分を備える、加熱可能なシールドとを含む。
【0010】
[0010] エッジ除外部分は、基板支持体から少し離れて、即ち基板支持体と接触せずに、配置されうる。よって、その上に支持された基板と共に基板支持体が、加熱可能なシールドを通過して、気相堆積中に蒸気源を通過することができるようになる。具体的には、熱シールドは、蒸気源に装着され、基板支持体に向かって突出しうる。その結果、加熱可能なシールドのエッジ除外部分は、基板支持体から近接した距離(例えば、2mm以下)に保持される。
【0011】
[0011] 1つの態様によれば、気相堆積装置が提供される。本気相堆積装置は、コーティングされる基板を支持するための基板支持体であって、湾曲したドラム表面を備えた回転可能なドラムである基板支持体と、蒸気伝搬空間を通して蒸気を湾曲したドラム表面に向かって方向付けるための複数のノズルを備えた蒸気源と、蒸気源から湾曲したドラム表面に向かって延び、蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲む加熱可能なシールドであって、湾曲したドラム表面上にコーティングウインドウを画定する加熱可能なシールドとを含む。
【0012】
[0012] 1つの態様によれば、真空チャンバ内で基板をコーティングするための方法が提供される。本方法は、基板を、蒸気源を通過して回転可能なドラムの湾曲したドラム表面上を周方向に移動させることと、蒸気伝搬空間を通して、蒸気源から湾曲したドラム表面上で支持される基板に向かって蒸気を方向付けることと、蒸気源から湾曲したドラム表面に向かって延び、蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲む加熱可能なシールドを加熱することとを含む。
【0013】
[0013] 1つの態様によれば、真空チャンバ内で基板をコーティングするための方法が提供される。本方法は、基板支持体上の基板を支持することと、蒸気伝搬空間を通して、蒸気源から基板支持体上に支持される基板に向かって蒸気を方向付けることと、蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲む加熱可能なシールドを加熱することと、加熱可能なシールドのエッジ除外部分でコーティングされない基板の領域をマスクすることとを含む。
【0014】
[0014] 本明細書に記載の方法では、加熱可能なシールドは、加熱可能なシールド上の蒸気凝縮を防止又は少なくとも低減するための温度(本明細書では「動作温度(operation temperature)」とも称される)まで加熱される。むしろ、加熱可能なシールドに当たる蒸気は、再蒸発及び/又は反射されうる。したがって、「加熱可能なシールド(heatable shield)」は、本明細書では、「温度制御されたシールド(temperature-controlled shield)」とも称されうる。というのは、加熱可能なシールドの温度は、気相堆積中に所定の動作温度に設定することができ、加熱可能なシールド上の蒸気凝縮を低減又は防止することができるからである。
【0015】
[0015] 1つの態様によれば、気相堆積装置を設置するための方法が提供される。本方法は、基板を支持するための湾曲したドラム表面を備えた回転可能なドラムと、湾曲したドラム表面に向かって蒸気を方向付けるための蒸気源とを提供することと、加熱可能なシールドが蒸気源から湾曲したドラム表面に向かって延び、コーティングウインドウを画定するように、加熱可能なシールドを装着することとを含み、加熱可能なシールドは、湾曲したドラム表面に沿って周方向に延び、かつその曲率に追従するエッジ除外部分を備える。
【0016】
[0016] 1つの態様によれば、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる気相堆積装置においてコーティングされた基板を製造する方法が提供される。本方法は、気相堆積装置の基板支持体上で基板を支持することと、基板上に1つ又は複数のコーティングストリップを堆積させるために、気相堆積装置の蒸気源から基板に向かって蒸気を方向付けることとを含む。
【0017】
[0017] 実施形態はまた、開示された方法を実行するための装置を対象とし、記載された各方法の態様を実行するための装置部品を含む。これらの方法の態様は、ハードウェア構成要素、適切なソフトウェアによってプログラムされたコンピュータ、これら2つの任意の組み合わせ又は他の任意の方法によって実行されうる。更に、本開示による実施形態はまた、記載された装置及び製品を製造するための方法、並びに記載された装置を動作させる方法を対象とする。記載される実施形態は、記載される装置のすべての機能を実行するための方法の態様を含む。
【0018】
[0018] 本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、実施形態を参照することによって、上記で簡潔に要約した本開示のより具体的な説明が得られうる。添付の図面は、本開示の実施形態に関連し、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の実施形態による気相堆積装置の概略断面図を示す。
【
図2】本開示の実施形態により製造されたコーティングされた基板の概略断面図を示す。
【
図3】本開示の実施形態による気相堆積装置の概略図を示す。
【
図4】本開示の実施形態による気相堆積装置の加熱可能なシールドの斜視図を示す。
【
図5A】本開示の実施形態による気相堆積装置の部分断面図である。加熱可能なシールドは加熱されていない。
【
図5B】本開示の実施形態による気相堆積装置の部分断面図である。加熱可能なシールドは動作温度まで加熱されている。
【
図6】本開示の実施形態による気相堆積装置の部分断面図を示す。
【
図7】本明細書に記載の実施形態による、真空チャンバ内の基板をコーティングするための方法を説明するためのフローチャートを示す。
【
図8】本明細書に記載の実施形態による気相堆積装置を設置するためのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0019] ここで、本開示の様々な実施形態を詳細に参照することになるが、その1つ又は複数の例が図に示されている。図面についての以下の説明の中で、同じ参照番号は、同じ構成要素を表している。個々の実施形態に関する相違点のみが説明される。本開示の説明として、各例が提供されているが、本開示を限定することを意図するものではない。更に、1つの実施形態の一部として図示又は説明される特徴は、他の実施形態で又は他の実施形態と併せて使用することができ、更に別の実施形態をもたらす。説明は、そのような修正及び変更を含むことが意図される。
【0021】
[0020] 以下の図面の説明において、同じ参照番号は、同じ又は類似の構成要素を指す。概して、個々の実施形態に関する相違点のみが記載される。特に明記しない限り、1つの実施形態における一部又は態様の説明は、別の実施形態における対応する一部又は態様にも適用される。
【0022】
[0021] 本開示の実施形態によれば、真空チャンバ内で蒸発によってコーティングするための装置及び方法が提供される。蒸発によってソース材料を有する基板を堆積させるために、ソース材料は、ソース材料の蒸発又は昇華温度を超えて、蒸気源の内部(例えば蒸気源のるつぼの内部)で加熱されうる。本開示の実施形態は、結果として、基板表面以外の表面上での凝縮の低減をもたらし、よって、真空チャンバ内の漂遊コーティングによる洗浄努力及び材料の浪費を低減することができる。加えて、本開示の実施形態は、基板が気相堆積中にフレキシブルであり且つ/又は湾曲状態にある場合であっても、基板上に明確に画定され且つ鋭いコーティング層エッジを提供する。更に、本明細書に開示される実施形態によって、基板が移動する基板支持体上に(特にコーティングドラムの湾曲したドラム表面上に)配置されている間にコーティングされる場合であっても、正確な基板エッジマスキングが可能になる。
【0023】
[0022]
図1は、本明細書に記載の実施形態による気相堆積装置100の概略図である。気相堆積装置100は、コーティングされる基板10を支持するための基板支持体110を含む。気相堆積装置100は、蒸気伝搬空間20を通って基板支持体110に向かって蒸気15を方向付けるための複数のノズル121を備えた蒸気源120を更に含む。蒸気伝搬空間20は、蒸気が複数のノズル121によって方向付けられる、蒸気源120と基板支持体との間の容積又は空間として理解されうる。複数のノズル121によって放出される蒸気の少なくとも大部分が、蒸気伝搬空間20内に、即ち複数のノズル121の下流の画定された空間内に閉じ込められて、真空チャンバ内ではあるが、例えば真空チャンバ壁の、蒸気伝搬空間20の外側にある他の構成要素の漂遊コーティングを低減又は回避することができるならば有益である。
【0024】
[0023] 本明細書に記載のいくつかの実施形態では、基板支持体110は、基板10が気相堆積中に蒸気源120を通過するように移動可能である。コーティング材料がない状態に保たれる基板10の領域の正確なマスキング、具体的には、基板エッジの正確なマスキング(本明細書では「エッジ除外(edge exclusion)」とも称される)は、特に、基板が気相堆積中に蒸気源120を通過する場合に、課題となる。
【0025】
[0024] いくつかの実装形態では、基板支持体110は、湾曲したドラム表面111を備えた回転可能なドラムであり、気相堆積装置は、蒸気源120を通過して周方向Tに基板10を湾曲したドラム表面111上で移動させるように構成される。例えば、基板は、フレキシブルウェブ又は箔であり、気相堆積システムは、ロールツーロール堆積システムでありうる。コーティングされない基板の領域の正確なマスキングは、基板が移動し、気相堆積中に湾曲したドラム表面111上に支持される場合、特に課題となる。というのは、蒸気源と基板が支持される基板支持体との間の距離は、湾曲したドラム表面111の曲率のために、周方向Tで変化しうるからである。
【0026】
[0025] 本明細書で使用する「周方向T(circumferential direction T)」は、コーティングドラムが軸Aの周りを回転するときに、湾曲したドラム表面111の移動方向に対応するコーティングドラムの外周に沿った方向として理解されうる。周方向は、基板が湾曲したドラム表面上の蒸気源120を通過して移動する際の基板搬送方向に対応する。いくつかの実施形態では、コーティングドラムは、300~1400mm以上の範囲の直径を有しうる。既に先述したように、蒸気伝搬空間20内に蒸気を閉じ込め、正確に画定され且つ鋭い層エッジを設けるための複数のノズル121の下流で蒸気15を確実に遮蔽することは、湾曲したドラム表面上を移動するフレキシブル基板がコーティングされる場合に、特に困難である。というのは、この場合、蒸気伝搬空間及びコーティングウインドウが複雑な形状を有しうるからである。本明細書に記載の実施形態は、湾曲したドラム表面上に設けられたウェブ基板をコーティングするように構成された気相堆積装置においても、信頼性があり正確なエッジ除外及び材料遮蔽を可能にする。
【0027】
[0026] 気相堆積装置100は、フレキシブル基板、例えば箔をコーティングするためのロールツーロール堆積システム(roll-to-roll deposition system)でありうる。コーティングされる基板は、50μm以下、特に20μm以下、又は更には6μm以下の厚さを有しうる。例えば、気相堆積装置において、金属箔又はフレキシブル金属コーティング箔がコーティングされうる。いくつかの実施態様では、基板10は、30μm未満、例えば6μm以下の厚さを有する薄い銅箔又は薄いアルミニウム箔である。基板はまた、グラファイト、ケイ素及び/若しくは酸化ケイ素、又はこれらの混合物でコーティングされた薄い金属箔(例えば、銅箔)であってもよく、例えば、150μm以下、特に100μm以下、又は更には50μm以下の厚さであってもよい。いくつかの実施態様によれば、ウェブは、グラファイトとケイ素及び/又は酸化ケイ素とを更に含みうる。例えば、リチウムは、グラファイトと、ケイ素及び/又は酸化ケイ素とを含む層をプレリチオ化(pre-lithiate)しうる。
【0028】
[0027] ロールツーロール気相堆積システムにおいて、基板10は、収納スプールから巻き出され、少なくとも1つ又は複数の材料層が基板上に気相堆積されうる一方で、基板は、コーティングドラムの湾曲したドラム表面111上に案内され、コーティングされた基板は、堆積後に、巻き取りスプール上に巻き付けられ、且つ/又は、更なる堆積装置においてコーティングされうる。
【0029】
[0028] 本明細書に記載の実施形態によれば、気相堆積装置は、蒸気源120から基板支持体110に向かって延び、蒸気伝搬空間20を少なくとも部分的に囲む加熱可能なシールド130を更に含む。特に、加熱可能なシールド130は、蒸気源120に、例えば蒸気源120の外周に、又は真空チャンバ内の別の静止支持体に、装着され、蒸気源120から基板支持体110に向かって延びうる。加熱可能なシールド130は、気相堆積装置の真空チャンバ内に静止して装着されうる。すなわち、加熱可能なシールドは、基板支持体110と共に移動することはない。加熱可能なシールド130は、加熱可能なシールドが少なくとも部分的に又は全体的に蒸気伝搬空間20を囲むように成形され、蒸気伝搬空間の外側の蒸気15の伝搬が減少又は防止されうる。言い換えれば、加熱可能なシールド130は、蒸気伝搬空間20の側壁を形成し、蒸気15又はその少なくとも大部分を蒸気伝搬空間内に閉じ込めることができる。加熱可能なシールドによって(少なくとも部分的に又は全体的に)囲まれている蒸気伝搬空間20の外側の表面上の漂遊コーティングを低減することができ、装置の洗浄を容易にすることができる。
【0030】
[0029] 特に、加熱可能なシールド130は、
図1の断面図に概略的に示すように、蒸気伝搬空間20の少なくとも2つの反対側の側方側に配置されうる。蒸気伝搬空間20から
図1の左右側面に向かって、すなわちコーティングドラムの軸Aに沿って延びる側方方向Lに、蒸気が抜けることが防止されうる。加えて、いくつかの実施形態では、加熱可能なシールド130はまた、基板入口側(蒸気伝搬空間20の基板入口壁を画定する)及び蒸気伝搬空間20の基板出口側(蒸気伝搬空間20の基板出口壁を画定する)(
図1には示されていないが、加熱可能なシールドが蒸気伝搬空間20の基板出口側137においても遮蔽壁を提供する
図4に見られる)の少なくとも1つに配置されうる。2つ以上の蒸気源がコーティングドラムの外周で互いに隣接して配置される場合(
図3参照)、2つ以上の蒸気源の2つ以上の蒸気伝搬空間は、加熱可能なシールドによって互いに完全に分離されなくてもよい。すなわち、加熱可能なシールドは、2つの隣接する蒸気源の間の界面において、部分的に開いた側壁138を有してもよく、又は側壁を有していなくてもよい(
図4参照)。
【0031】
[0030]
図1に戻り、基板支持体110上に支持された基板が気相堆積中に蒸気源120を通過し、加熱可能なシールド130を通過して移動することができるように、加熱可能なシールド130は、基板支持体110に接触しない。加熱可能なシールド130は、加熱可能なシールド130と基板支持体110との間に僅かな間隙、例えば5mm以下、3mm以下、2mm以下、又は更には約1mm以下の間隙を残すだけでよく、その結果、蒸気が加熱可能なシールドを通過して側方方向Lに伝搬することはほぼできない。
【0032】
[0031] 加熱可能なシールド130は加熱可能であるため、加熱可能なシールド130が動作温度(例えば、いくつかの実施形態では、500℃以上の動作温度)まで加熱されるときに、加熱可能なシールド130上の蒸気凝縮は低減又は防止することができる。加熱可能なシールド130上の蒸気凝縮を防止することは、洗浄労力を低減できるので、有益である。更に、加熱可能なシールド130上のコーティングは、加熱可能なシールドによって提供されるコーティングウインドウの寸法を変更しうる。特に、加熱可能なシールド130と基板支持体110との間に、わずか数ミリメートル、例えば約1mm以下の範囲の間隙が設けられる場合、加熱可能なシールド上のコーティングは、間隙寸法の変化をもたらし、よって、基板上に堆積されたコーティング層のエッジ形状の望ましくない変化をもたらすだろう。更に、ソース材料の利用率は、ソース材料が加熱可能なシールド上に蓄積しないときに改善することができる。具体的には、蒸気伝搬空間20の内部を伝搬する本質的に全てのソース材料は、加熱可能なシールドが蒸気凝縮温度を上回る可能性のある動作温度まで加熱される場合、基板表面をコーティングするために使用することができる。
【0033】
[0032] 本明細書で使用される「蒸気凝縮温度(vapor condensation temperature)」は、蒸気15がもはや加熱可能なシールド上に凝縮しない、加熱可能なシールドの閾値温度として理解されうる。加熱可能なシールド130の動作温度は、蒸気凝縮温度でありうるか又はこれより(僅かに)高くてもよい。例えば、加熱可能なシールドの動作温度は、基板支持体に向かう過度の熱放射を回避するために、蒸気凝縮温度よりも5℃と50℃との間高い可能性がある。なお、蒸気凝縮温度は蒸気圧に依存しうる。蒸気伝搬空間20内の複数のノズル121の下流の蒸気圧は、るつぼ160内部及び/又は蒸気源120の分配器161内部の源圧よりも低いので、蒸気源120内部の蒸気は、蒸気伝搬空間20内部の蒸気15よりも低い温度で既に凝縮している可能性がある。本明細書で使用される「蒸気凝縮温度」は、加熱可能なシールド上の蒸気凝縮を回避する、蒸気伝搬空間20内の複数のノズルの下流の加熱可能なシールドの温度に関する。本明細書で使用される「蒸発温度(evaporation temperature)」は、ソース材料が蒸発する複数のノズル121の上流の蒸気源120内部の温度に関する。蒸気源120内の蒸発温度は、典型的には、蒸気伝搬空間20内の蒸気凝縮温度よりも高い。例えば、蒸気源内部の蒸発温度は、600℃を超える温度に設定されうる。一方で、複数のノズル121の下流の蒸気凝縮温度は、リチウムが蒸発する場合に、600℃未満、例えば500℃~550℃でありうる。本明細書に記載の実施形態では、蒸気源内部の温度は600℃以上であり、加熱可能なシールドの動作温度は、気相堆積中に600℃未満、例えば500℃~550℃に設定されうる。
【0034】
[0033] 例えば500℃~550℃の動作温度で提供される加熱可能なシールドに当たる蒸気は、加熱可能なシールド表面から直ちに再蒸発又は反射され、その結果、それぞれの蒸気分子は、加熱可能なシールド表面上ではなく、基板表面上で終端する(end up)。加熱可能なシールド上の材料蓄積を低減又は防止することができ、洗浄の労力を低減することができる。
【0035】
[0034] 「加熱可能なシールド(heatable shield)」は、加熱可能なシールドの温度を気相堆積中に所定の動作温度に設定することができ、加熱可能なシールド上の蒸気凝縮を低減又は防止するので、本明細書では「温度制御されたシールド(temperature-controlled shield)」とも称されうる。特に、加熱可能なシールドの温度は、所定の範囲に維持されるように制御することができる。気相堆積中に加熱可能なシールドの温度を制御するために、コントローラ及びコントローラによって制御されるそれぞれの加熱装置が設けられうる。
【0036】
[0035] 本明細書に記載の実施形態によれば、加熱可能なシールド130は、コーティングされない基板の領域をマスクするためのエッジ除外部分131を含む。特に、基板支持体110の近くに配置され、その突出した自由端を提供しうる加熱可能なシールド130の前方部は、コーティング材料を含まない状態を維持される基板エッジなどの基板の領域をマスクするエッジ除外マスクとして構成されうる。特に、側方方向L(lateral direction L)において、1つ又は2つの反対側の側方基板エッジ11は、エッジ除外マスクとして作用する加熱可能なシールド130のエッジ除外部分131のため、コーティング材料のない状態が維持されうる。エッジ除外マスクとして作用することができるように、エッジ除外部分131は、気相堆積中に基板から近い距離に、具体的には2mm以下又は1.5mm以下、特に約1mm以下(例えば、1mm±20%)の距離に配置される必要がある。基板の厚さは、典型的には50μm以下、特に6μmと10μmとの間であるので、基板とエッジ除外部分との間の距離は、基板支持体とエッジ除外部分との間の距離に本質的に対応し、その結果、基板の厚さは、この点で無視することができる。堆積中にエッジ除外部分131と2mm以上の基板との間の間隙は、すでに、大きなプルーム発散を有する遠くに配置されたノズルから間隙内にかなりの蒸気伝搬をもたらし、エッジ除外を防止し、傾斜層エッジ及びコーティングされた基板エッジを提供しうる。
【0037】
[0036] 本明細書に記載の実施形態によれば、加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、エッジ除外部分131と基板支持体110との間の距離Dは、典型的には2mm以下、特に1mm以下である。したがって、加熱可能なシールド130のエッジ除外部分131は、エッジ除外マスクとして作用することができ、基板エッジをマスクし、鋭く明確に画定されたコーティング層エッジを提供する。例えば、コーティング層の厚さは、側方のコーティング層エッジにおいて、側方方向Lに3mm以下の範囲内で100%から1%以下に低下しうる。
【0038】
[0037] 加熱可能なシールド130の寸法は、加熱可能なシールドが室温(約20℃)から動作温度まで(例えば500℃以上の動作温度まで)加熱されるときに、拡大しうる。したがって、熱誘導膨張のために、エッジ除外部分131は、加熱可能なシールドの加熱中に基板支持体110に向かってより近接して移動しうる。本明細書に記載の実施形態によれば、加熱可能なシールドが動作温度、例えば500℃と600℃との間まで加熱されるときに、エッジ除外部分131と基板支持体110との間の間隙の幅が、2mm以下、特に約1mmの本質的に一定の間隙幅まで低減されるように、加熱可能なシールド130が成形され装着される。
【0039】
[0038] 本明細書に記載の実施形態によれば、エッジ除外部分131と基板支持体110との間の最大距離Dは、加熱可能なシールドが加熱されていないとき、すなわち、室温(約20℃)で提供されるとき、2mm以上6mm以下でありうる。加熱可能なシールドは、加熱可能なシールドを動作温度まで加熱することによって距離が本質的に一定になるように、基板支持体に対して可変距離で配置されうる(すなわち、非対称に配置されうる)。他方で、加熱可能なシールドが動作温度(例えば、500℃と600℃との間)まで加熱されるときに、エッジ除外部分131と基板支持体との間の最大距離Dは、2mm未満、特に1.5mm以下、より具体的には約1mm、又は更には1mm未満でありうる。一方、加熱可能なシールドは、動作温度であっても、加熱可能なシールドが基板支持体に接触しないように、寸法が決められ装着されうる。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、1mmの本質的に一定の間隙幅が、加熱可能なシールドのエッジ除外部分131と基板支持体110との間に提供される。間隙幅Dは、周方向Tにおける間隙の延長部分にわたって本質的に一定であり、例えば、間隙幅Dは、周方向Tにおいて0.8mmと1.5mmとの間、特に約1mm(1mm±15%)でありうる。
【0040】
[0039] 基板支持体110が、堆積中に基板が支持される湾曲したドラム表面111を有する回転可能なドラムである場合、加熱可能なシールド130のエッジ除外部分131は、
図3及び
図4に概略的に示すように、湾曲したドラム表面111に沿って周方向Tに延び、その曲率に追従しうる。具体的には、加熱可能なシールドが加熱されない場合、エッジ除外部分131と湾曲したドラム表面111との間の最大距離Dは、2mm以上6mm以下であり、及び/又は加熱可能なシールドが動作温度まで加熱される場合、エッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の最大距離Dは、2mm以下、特に約1mmでありうる。具体的には、加熱可能なシールドの加熱状態において、エッジ除外部分131と湾曲したドラム表面111との間の距離Dは、周方向Tの間隙延長部分に沿って本質的に一定であり、例えば、1.5mm以下0.8mm以上の本質的に一定の値を有しうる。したがって、たとえ気相成長中に基板が湾曲したドラム表面111上に配置されたとしても、1つの側方基板エッジ又は2つの反対側の側方基板エッジ11を堆積から確実に除外することができる。
【0041】
[0040] 本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、エッジ除外部分131は、2つの反対側の側方基板エッジ11をマスクするように構成される。例えば、
図1に概略的に描かれているように、エッジ除外部分131は、第1の基板エッジに向かって側方方向Lに、且つ反対側の第2の基板エッジに向かって側方方向Lに、突出し、2つの外側の反対側にある側方基板エッジ11をマスクし、これらの基板エッジ上の材料コーティングを阻止し、明確に画定されたコーティング層エッジを確保する。
【0042】
[0041]
図2は、本明細書に記載の気相堆積装置のいずれかで製造されたコーティング基板10の概略断面図を示す。2つの反対側の側方基板エッジ11は、加熱可能なシールドのエッジ除外部分131によるマスキングのために、本質的にコーティング材料を含まない。明確に画定された外側エッジを有するコーティング層又は2つ以上のコーティングストリップ13が堆積される。画定され鋭い外側エッジを有するコーティング材料のストリップを基板上に堆積させることができる。
図2に示される例では、それぞれの画定された鋭いエッジを有するコーティング材料の2つの別個のコーティングストリップが、基板10上に堆積される。内側基板領域12は、コーティング材料を含まない状態に維持されうる。
【0043】
[0042]
図1に戻り、加熱可能なシールド130は、例えば2つ以上のコーティングストリップの堆積を可能にするために、内側基板領域12をマスクするためのセグメンテーション部分132を(オプションで)有しうる。セグメンテーション部分132が、エッジ除外部分131の間の中央に延びる場合に、側方方向Lに本質的に等しい幅を有するコーティング材料の2つの別個のストリップを基板上に堆積させることができる。セグメンテーション部分132は、外側の基板エッジをマスクするエッジ除外部分131の間に配置されうる。セグメンテーション部分132は、周方向に延びうる。セグメンテーション部分132は、1cm以上10cm以下の側方方向Lの幅を有しうる。したがって、間隔を空けて配置されているいくつかのコーティングストリップを、基板11の表面上に均等に又は不均等に配置することができるだろう。
【0044】
[0043] いくつかの実施態様では、セグメンテーション部分132は、加熱可能なシールド130によって提供されるコーティングウインドウを2つ以上のサブウインドウに分割し、2つ以上のコーティングストリップを基板上に堆積させることができるようにする。セグメンテーション部分132は、気相堆積中に基板支持体110に近接して配置され、コーティングされていない、すなわちコーティング材料がないように維持される内側基板領域12をマスクするエッジ除外マスク部分として作用しうる。セグメンテーション部分132は、湾曲ドラム表面111に近い距離、例えば、2mm以下の距離に配置されうる。したがって、セグメンテーション部分132の2つの側方側に堆積される2つのコーティングストリップ13の鋭い内側エッジを設けることができる。いくつかの実施形態では、コーティングウインドウを3つ以上のサブウインドウに分割し、3つ以上のコーティングストリップを基板上に堆積させることができるようにする、いくつかのセグメンテーション部分132が提供されうる。例えば、1つ又は複数のセグメンテーション部分132は、コーティングウインドウを、側方方向Lに等しい幅を有する2つ以上のサブウインドウに分割しうる。したがって、本質的に等しい幅及び鋭く明確に画定されたエッジを有する2つ、3つ、又はそれ以上のコーティングストリップ13を、基板上に堆積させることができる。
【0045】
[0044] 加熱可能なシールド130によって画定されるコーティングウインドウは、側方方向Lに基板幅の80%以上、特に90%以上の幅を有しうる。側方方向Lにおける側方の基板エッジ11は、加熱シールドによってマスクされる。コーティングウインドウは、1つの単一の開口として構成されてもよく、又は2つ、3つ、4つ、若しくはそれ以上のサブウインドウに分割されてもよい。したがって、セグメンテーション部分132が設けられていない場合には、1つの単一の連続材料層が基板上に堆積されうるか、又は代替的には、1つ、2つ、又はそれ以上のセグメンテーション部分が設けられている場合には、2つ、3つ、又はそれ以上のコーティングストリップが基板上に堆積されうる。コーティングウインドウの側方方向Lの幅は、20cm以上1m以下でありうる。よって、いくつかの実施形態では、20cm以上1m以下の幅を有するコーティングストリップを堆積させることができる。代替的には、側方におけるいくつかのサブウインドウの各々の幅は、5cm以上50cm以下でありうる。よって、各々が5cm以上50cm以下、特に20cm以上40cm以下の幅を有するいくつかのコーティングストリップを、1つ又は複数のセグメンテーション部分を有する加熱可能なシールドを通して基板上に堆積させることができる。
【0046】
[0045] 本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、蒸気源120は、金属、特に500℃以上、特に600℃以上の蒸発温度を有する金属を蒸発させるように構成されうる。いくつかの実施態様では、蒸気源120は、基板上にリチウム層を堆積させるように構成されうる。蒸気源120は、600℃以上、特に800℃以上の温度まで加熱されるように構成されたるつぼ160と、るつぼ160から複数のノズル121に蒸気を案内するように構成された分配器161とを含みうる。分配器の内部空間は、600℃以上、特に800℃以上の温度まで加熱することができる。
【0047】
[0046] 気相堆積装置は、加熱可能なシールド130を蒸気凝縮温度を上回る温度、特に500℃以上600℃以下、特に500℃以上550℃以下の温度まで、能動的に又は受動的に加熱するための加熱装置140を更に含みうる。加熱可能なシールド130の表面の温度が蒸気凝縮温度より低い場合、蒸気15は、加熱可能なシールドの表面上で凝縮する可能性がある。従って、加熱可能なシールドの動作温度は、蒸気凝縮温度を上回るように制御されうる。具体的には、加熱可能なシールドの動作温度は、基板に向かう過度の熱負荷を回避するために、蒸気凝縮温度よりわずかに高い、例えば、蒸気凝縮温度より10℃以上50℃以下高いことがある。
【0048】
[0047] いくつかの実施形態では、気相堆積装置は、加熱装置140に接続されたコントローラ141を含む。コントローラ141は、蒸気源120内部の温度よりも低く、且つ蒸気凝縮温度よりも高くなるように加熱可能なシールド130の温度を制御するように構成される。したがって、加熱可能なシールドはまた、本明細書では「温度制御されたシールド(temperature-controlled shield)」と称されうる。加熱可能なシールドの動作温度は、基板に向かう熱負荷を低減するために、可能な限り低くすべきであるが、加熱可能なシールド上での蒸気凝縮を防止するのに十分に高くすべきである。加熱可能なシールドの動作温度は、典型的には、蒸気源120内部、例えば、るつぼ160の内部、又は蒸気源の分配器161の内部の蒸発温度よりも低い。これは、蒸気源120内部の圧力は、典型的には、複数のノズル121の下流の蒸気伝搬空間20の内部の圧力よりも高いからである。
【0049】
[0048]
図3は、回転可能なドラムとして構成される基板支持体110の回転軸Aに沿った方向から見た、本明細書に記載される実施形態による気相堆積装置200の概略図を示す。気相堆積装置200は、
図1に示す気相堆積装置100の特徴の一部又は全部を含みうる。よって、上述の説明を参照することができ、上述の説明をここでは繰り返さない。フレキシブルな基板10、例えば薄い箔の基板は、湾曲したドラム表面111上の気相堆積装置200の蒸気源120を通過して移動させることができる。
【0050】
[0049] 蒸気源120は、蒸気伝搬空間を通して湾曲したドラム表面111に向かって蒸気を方向付けるための複数のノズル121を含む。更に、加熱可能なシールド130が設けられる。加熱可能なシールド130は、蒸気源120から湾曲したドラム表面111に向かって延び、蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲んでいる。いくつかの実施形態では、加熱可能なシールド130は、湾曲したドラム表面上のコーティングウインドウ、すなわち、湾曲したドラム表面上の領域を画定する。この領域で、蒸気源から方向付けられた蒸気分子が、湾曲したドラム表面上に支持された基板上に衝突する可能性がある。いくつかの実施態様では、蒸気源120は、蒸気源120の複数のノズル121が湾曲したドラム表面111に向かって方向付けられるように装着され、回転可能なドラムの外周に沿って延びる。
【0051】
[0050] 例えば、1つの蒸気源120に関連する加熱可能なシールド130によって画定されるコーティングウインドウは、周方向Tにおいて湾曲したドラム表面111の10°以上45°以下の角度範囲にわたって延びうる。2つ、3つ又はそれ以上の蒸気源120は、例えば、基板上にいくつかの材料層を堆積させるために、又は基板上に同じ材料の1つの厚い材料層を堆積させるために、周方向に互いに隣接して配置されうる。1つの実施形態では、2つ、3つ又はそれ以上の金属蒸発源、特にリチウム源が、1つの回転ドラムの周方向Tにおいて互いに隣接して配置され、基板上に厚い金属層を堆積させることができる一方で、基板は、1つの回転ドラムの湾曲したドラム表面111上を移動する。
【0052】
[0051] 隣接する蒸気源の加熱可能なシールド130によって画定されるコーティングウインドウは、分離していてもよく(
図3に概略的に示されるように)、又は代替的には、隣接する蒸気源の加熱可能なシールド130によって画定されるコーティングウインドウは、部分的に重なっていてもよい。例えば、2つの隣接する蒸気源に関連する加熱可能なシールドによって提供される分離壁は、部分的に開いていてもよい。2つの隣接するコーティングウインドウの間の界面を画定する部分的に開いた側壁138を有する加熱可能なシールドが
図4に示されている。
【0053】
[0052] 本明細書に記載の実施形態によれば、加熱可能なシールド130は、回転可能なドラムの周方向Tに延び、コーティングされない基板の領域をマスクするように構成されたエッジ除外部分131を含む。例えば、基板の第1の側方エッジと、第1の側方エッジに反対側の基板の第2の側方エッジとは、堆積から除外されうる。エッジ除外部分131は、周方向Tに沿った湾曲したドラム表面の曲率に追従しうる。よって、基板が湾曲したドラム表面により画定された湾曲した移送経路に沿って移動するときに、基板の側方エッジが正確にマスクされる。
【0054】
[0053] 特に、エッジ除外部分131と湾曲したドラム表面111との間の距離Dは、加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、周方向Tにおけるエッジ除外部分131の完全な延長部分に沿って、2mm以下、特に約1mmとなりうる。エッジ除外部分131は、20cm以上、30cm以上、更には50cm以上にわたって周方向Tに延びうる。具体的には、周方向に延びる間隙が、エッジ除外部分131と湾曲したドラム表面111との間に設けられ、この間隙は、加熱可能なシールドが動作温度まで加熱される場合に約0.8mmと約1.5mmとの間の本質的に一定の間隙幅、特に約1mmの一定の間隙幅を有する。
【0055】
[0054]
図4は、本明細書に記載の気相堆積装置の加熱可能なシールド130の斜視図を示す。加熱可能なシールド130は、その間の蒸気伝搬空間20を画定する少なくとも2つの反対側にある側方側壁を有しうる。エッジ除外部分131は、2つの反対側にある側方側壁の前方部に設けられ、反対側の基板エッジをマスクするように構成されうる。
図4に概略的に示されているように、エッジ除外部分131は、コーティングドラムの曲率に適合した曲率を有する湾曲した前面を有しうる。エッジ除外部分131は、コーティング層エッジを画定し、堆積中に特に湾曲したドラム表面に近接して配置されるそれぞれのマスキングリムに近づくと、より薄くなりうる。蒸気源に取り付けた後に、加熱可能なシールド130の反対側の2つの側壁は、蒸気源から湾曲したドラム表面に向かって突出し、エッジ除外部分131と湾曲した基板表面との間に小さな間隙を残しうる。間隙は、加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるとき、周方向に沿って本質的に一定の間隙幅を有する。
【0056】
[0055] 加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されて熱膨張したときに、エッジ除外部分131と湾曲したドラム表面111との間に一定の小さな間隙幅が提供されるように、エッジ除外部分131を湾曲させ、気相堆積中に湾曲したドラム表面の曲率に正確に追従させる。
【0057】
[0056] オプションで、加熱可能なシールド130は、エッジ除外部分131の間に配置され、内側基板領域をマスクするように構成されているセグメンテーション部分132を更に含みうる。
図4では、セグメンテーション部分132は、オプションとして破線で示されている。周方向におけるセグメンテーション部分132の曲率進行は、周方向Tにおけるエッジ除外部分131の曲率進行に対応していてもよく、加熱可能なシールド130(セグメンテーション部分132を含む)が動作温度まで加熱される際に、気相堆積時においてセグメンテーション部分132と湾曲したドラム表面111との間に一定かつ小さな隙間が生じることにつながる。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、又はそれ以上のセグメンテーション部分132が、エッジ除外部分131の間に、例えば、これらの間に均等な間隔を置いて配置される。したがって、本質的に等しい側方幅を有しうる2つ、3つ、又はそれ以上のコーティングストリップを基板上に堆積させることができる。
【0058】
[0057]
図5A及び
図5Bは、それぞれ、湾曲したドラム表面111を備えた回転可能なドラムの形態の基板支持体110の一部を示す。加熱可能なシールド130のエッジ除外部分131と湾曲したドラム表面111との間に小さく本質的に一定の間隙が設けられるように、本明細書に記載の加熱可能なシールド130は、湾曲したドラム表面111に向かってコーティングウインドウを画定する。
図5Aは、室温、すなわち非加熱状態での加熱可能なシールドを示し、
図5Bは、例えば気相堆積中の、動作温度での加熱可能なシールドを示す。加熱可能なシールドの動作温度は、蒸発させるソース材料に応じて、200℃以上、特に300℃以上、400℃以上、又は更に500℃以上、例えば500℃と600℃との間でありうる。よって、加熱可能なシールド上での蒸気凝縮を低減又は防止することができる。
【0059】
[0058] 回転可能なドラムは、0.2m以上、特に0.5m以上、例えば約0.7mの半径を有しうる。エッジ除外部分の曲率半径は、本質的に、湾曲したドラム表面の曲率半径に対応しうる。すなわち、エッジ除外部分131は、湾曲したドラム表面111の曲率に追従しうる。
【0060】
[0059]
図5Aでは、エッジ除外部分131と湾曲したドラム表面111との間の間隙幅Dは、少なくとも複数のセクションで、
図5Bのそれぞれの間隙幅D(すなわち、加熱可能なシールドを蒸発温度まで加熱した後)より大きくなりうる。その理由は、加熱可能なシールドが加熱中に熱膨張する可能性があるからである。
図5Bでは、間隙幅Dは、周方向に沿った加熱可能なシールドの全延長部分にわたって本質的に一定であり非常に小さい。
図5Aでは、間隙幅は、(1)加熱可能なシールドの材料の熱膨張係数、(2)動作温度、(3)加熱可能なシールドの周方向の角度の延び(angular extension)、及び/又は(4)加熱可能なシールドの固定点の位置に応じて、例えば、0.5mm以上3mm以下でありうる変動範囲で、周方向にわずかに変化しうる。
【0061】
[0060] 例えば、加熱可能なシールドが周方向の端部で半径方向に固定して装着され、加熱可能なシールドの中心部分が半径方向に移動可能になる場合、加熱可能なシールドの中心セクション(
図5A及び
図5Bにおいて(2)とマークされている)におけるエッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の第1の距離は、加熱可能なシールドが加熱されるときには小さくなる。したがって、中心位置((2)とマークされている)における距離Dは、
図5Aに示される非加熱状態において、
図5Bに示される加熱状態よりも、例えば0.5mm以上、又は更には1mm以上大きくなりうる。特に、(1)室温と動作温度との間の温度差が約500℃であり、且つ(2)加熱可能なシールドがステンレス鋼、又は類似の熱膨張係数を有する材料で構成される場合に、中心位置((2)とマークされている)における差Dは、
図5Aにおいて約2.3mm、
図5Bにおいて約1mmでありうる。
【0062】
[0061] 加熱可能なシールドが周方向の端部で半径方向に固定して装着され、加熱可能なシールドの中心部分が半径方向に移動可能となる場合、加熱可能なシールドが加熱されると、加熱可能なシールドの終端セクション(
図5A及び
図5Bにおいて(1)とマークされている)におけるエッジ除外部と湾曲したドラム表面との間の第2の距離は、半径方向内側に向かってほとんど移動しない。したがって、
図5A及び
図5Bにおける終端位置((1)とマークされている)での距離Dは、本質的に互いに対応しうる。というのは、加熱可能なシールドが加熱されるときに、加熱可能なシールドの端部では熱的な動きがほとんどないからである。
【0063】
[0062] 上記を要約すると、室温で、間隙幅が周方向延長部分において変化し、それによって、半径方向内側に向かうエッジ除外部分の変化する熱移動が予め補償され、動作温度で、本質的に一定で小さな間隙幅が提供できるように、加熱可能なシールドが装着されうる。
【0064】
[0063]
図6は、加熱可能なシールドの加熱が加熱可能なシールドの熱移動につながるように、加熱可能なシールドを固定することを示している。これにより、加熱可能なシールドの周方向の全延長部分にわたって、加熱可能なシールドと湾曲したドラム表面との間に一定の間隙幅が提供される。
【0065】
[0064] それぞれの位置合わせ凹部内に突出する少なくとも3つの位置合わせピン171、172が、加熱可能なシールド130を保持するために設けられうる。これにより、加熱可能なシールドのエッジ除外部分131は、湾曲したドラム表面に向かい、且つそれに近接して配置される。少なくとも3つの位置合わせピン171、172は、周方向に互いに間隔を空けて配置され、加熱可能なシールドが加熱されるときに、特に100μm未満又は50μm未満の偏差で、周方向における加熱可能なシールドの全延長部分にわたってサブmmの偏差(sub-mm deviation)で、回転可能なドラムから所定の半径方向距離で加熱可能なシールドを位置決めするためのそれぞれの位置合わせ凹部内に突出しうる。
【0066】
[0065] 例えば、2つの外側位置合わせピン171により、2つの外側位置合わせピン171の位置での加熱可能なシールドの任意の半径方向の移動ができないようにし、オプションで、2つの外側位置合わせピン171の位置での周方向Tにおける加熱可能なシールドの移動をできるようにしてもよい。特に、2つの外側位置合わせピン171は、周方向に細長い凹部内に突出してもよいが、半径方向には遊隙(play)を提供しない。2つの外側位置合わせピン171により半径方向への加熱可能なシールドの移動ができないので、2つの外側位置合わせピン171の位置における間隙幅は、加熱可能なシールドが加熱されても、本質的に一定のままでありうる。
【0067】
[0066] 内側位置合わせピン172の位置での終端停止部(end stop)(例えば、内側位置合わせピン172が突出する位置合わせ凹部の壁によって提供される)まで半径方向内側に向かう方向に、加熱可能なシールドを移動可能にする内側位置合わせピン172は、例えば、2つの外側位置合わせピン171の間の中心に、配置されうる。加熱可能なシールドの加熱は、内側位置合わせピン172が終端停止部で当接するまで、内側位置合わせピン172の位置で、半径方向内側に向かって加熱可能なシールドの熱的移動につながりうる。加熱可能なシールドは、それ以上移動する可能性はない。動作温度では、内側位置合わせピン172の位置における第1の間隙幅は、2つの外側位置合わせピン171の位置における第2の間隙幅に対応し、0.8mm~1.5mmの範囲、特に約1mmでありうる。2つの外側位置合わせピン171が周方向の加熱可能なシールドの端部に設けられる場合、間隙は、次に周方向における全延長部分にわたって、すなわち、2つの位置合わせピンの間の位置においても、一定でありうる。
【0068】
[0067]
図7は、本明細書に記載の実施形態による、基板をコーティングするための方法を説明するためのフロー図である。
【0069】
[0068] ボックス701において、回転可能なドラムの湾曲したドラム表面上の蒸気源を通過して周方向に基板が移動される。
【0070】
[0069] ボックス702において、蒸気源から、蒸気伝搬空間を通って湾曲したドラム表面上で支持される基板に向かって、蒸気が方向付けられる。加熱可能なシールドが、蒸気源から、湾曲したドラム表面に向かって延び、蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲んでいる。加熱可能なシールドは、加熱可能なシールド上の蒸気凝縮を低減又は防止するために、蒸気凝縮温度以上の動作温度まで加熱される。
【0071】
[0070] いくつかの実施形態では、蒸気源は、金属源、特にリチウム源であり、蒸気は、金属蒸気、特にリチウム蒸気である。加熱可能なシールドの動作温度は、500℃以上600℃以下、特に500℃と550℃との間でありうる。蒸気源がリチウム源である場合、蒸気源内部の蒸発温度は、600℃以上850℃以下でありうる。
【0072】
[0071] 基板は、フレキシブル箔、特にフレキシブル金属箔、より具体的には銅箔又は銅担持箔、例えばその片面又は両面が銅でコーティングされている箔でありうる。基板は、50μm以下、特に20μm以下、例えば約8μmの厚さを有しうる。具体的には、基板は、20μmに近い(sub 20-μm)範囲の厚さを有する薄い銅箔でありうる。
【0073】
[0072] いくつかの実施形態では、加熱可能なシールドは、エッジ除外部分を含みうる。例えば、基板に向かって突出し、そこに近接した距離に配置される加熱可能なシールドの前方部は、エッジ除外マスクとして形成されうる。ボックス703では、加熱可能なシールドのエッジ除外部分が、コーティングされない基板の領域をマスクする。
【0074】
[0073] また、エッジ除外部分は、気相堆積中に周方向に延び、湾曲したドラム表面の曲率に追従しうる。ボックス703におけるマスキングは、基板の少なくとも1つの側方エッジ又は2つの反対側にある側方エッジをマスクすることを含みうる。
【0075】
[0074] 加熱可能なシールドは、湾曲したドラム表面上のコーティングウインドウ、すなわち、蒸気源の複数のノズルによって放出された蒸気が基板に衝突しうる一方で、基板が蒸気源を通過して移動しうるウインドウを画定しうる。
【0076】
[0075] ボックス703におけるマスキングは、2つのエッジ除外部分の間に延びる加熱可能なシールドのセグメンテーション部分を用いて、基板の少なくとも1つの内側領域をマスクすることを更に含みうる。2つ(又はそれ以上)の別個のコーティングストリップを基板上に堆積させることができる。特に、加熱可能なシールドは、周方向に延び、加熱可能なシールドによって提供されるコーティングウインドウを2つ以上のサブウインドウに分割するセグメンテーション部分を含みうる。各サブウインドウは、10cm以上50cm以下の幅を有しうる。側方方向Lに画定された幅を有する2つ以上の別個のコーティングストリップが、2つ以上のサブウインドウを通して基板上に堆積されうる。
【0077】
[0076] 加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、エッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の最大距離は、2mm以下、特に約1mmでありうる。特に、エッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の間隙幅は、周方向において本質的に一定でありうる、例えば、0.8mmと1.5mmとの間(例えば、約1mm(1mm±15%)など)の本質的に一定の幅を有する。
【0078】
[0077] 更に、セグメンテーション部分はまた、周方向に沿って湾曲したドラム表面の曲率に追従しうる。セグメンテーション部分と湾曲したドラム表面との間の最大距離は、加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、2mm以下、特に約1mmでありうる。特に、セグメンテーション部分と湾曲したドラム表面との間の間隙幅は、周方向において本質的に一定でありうる(例えば、約1mm(1mm±15%)の幅値を有する)。
【0079】
[0078]
図8は、本明細書に記載の実施形態による気相堆積装置を設置するための方法を説明するためのフロー図である。
【0080】
[0079] 本方法は、ボックス801において、基板を支持するための湾曲したドラム表面と、湾曲したドラム表面に向かって蒸気を方向付けるための蒸気源とを備えた回転可能なドラムを提供する。
【0081】
[0080] 本方法は、ボックス802において、加熱可能なシールドが蒸気源から湾曲したドラム表面に向かって延びるように、加熱可能なシールドを装着することを更に含む。加熱可能なシールドは、湾曲したドラム表面に沿って周方向に延び、且つその曲率に追従するエッジ除外部分を含む。換言すれば、エッジ除外部分の曲率は、コーティングドラムの曲率に適合されうる。その結果、加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されると-エッジ除外部分の曲率進行が湾曲したドラム表面の曲率進行に正確に追従し、湾曲したドラム表面とエッジ除外部分との間に一定の小さな間隙を提供する。
【0082】
[0081] ボックス802における装着することは、加熱可能なシールドの熱誘導膨張が、周方向に沿ってエッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の一定の距離、特に、周方向におけるエッジ除外部分の延長部分にわたって0.8mmと1.5mmとの間の範囲の距離をもたらすように、加熱可能なシールドを装着することを含みうる。
【0083】
[0082] 具体的には、ボックス802における装着することは、加熱可能なシールドの非加熱状態において、加熱可能なシールドの中心セクションにおけるエッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の第1の距離が、加熱可能なシールドの周方向の端部セクションにおけるエッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の第2の距離と、例えば1mm以上異なる(例えば、第2の距離より大きくなる)ように、加熱可能なシールドを装着することを含みうる。その理由は、加熱可能なシールドが加熱されて熱膨張するときに、加熱可能なシールドの周方向の端部が、加熱可能なシールドの中心部とは異なるように移動しうるからである。具体的には、加熱可能なシールドが周方向の2つの端部で半径方向に固定的に装着される場合には、加熱可能なシールドが熱膨張すると、端部は中心部よりも湾曲したドラム表面に向かう移動が少ないことがある。加熱可能なシールドを装着することは、加熱可能なシールドが動作温度まで加熱され熱膨張したときに、加熱可能なシールドのエッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の一定の非常に小さな間隙が気相堆積中に実現できるようにするためのものでありうる。
【0084】
[0083] 例えば、加熱可能なシールドの中心セクションにおけるエッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の第1の距離は、非加熱状態で2mm以上、例えば約2.3mmであり、及び/又は加熱可能なシールドの終端セクションにおけるエッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の第2の距離は、1.5mm以下、特に非加熱状態で1.2mm以下でありうる。加熱可能なシールドを動作温度まで加熱した後に、第1の距離と第2の距離は、本質的に同一、例えば、0.8mmから1.2mm、特に約1mmでありうる。
【0085】
[0084] 言い換えれば、加熱可能なシールドは、間隙幅が周方向にわずかに変化するように、例えば0.5mm以上2mm以下の変動範囲内で装着される。この結果、動作温度まで加熱されると、間隙幅が周方向に沿って本質的に一定になり、基板の正確なエッジ除外と、一定に成形された鋭い層エッジとが提供される。
【0086】
[0085] 加熱可能なシールドは、金属材料、例えば、ステンレス鋼で作られ、上記寸法は、ステンレス鋼の熱膨張係数に基づくものでありうる。例えば、ステンレス鋼は、室温から約550℃の動作温度まで加熱されると、長さが約0.88%熱膨張する。明らかであるように、加熱可能なシールドの熱膨張は、加熱可能なシールドの材料に依存しうる。それぞれの寸法及びそれに関連する熱膨張は、使用される材料に基づいて適合され、よって、加熱可能なシールドの異なる材料が使用される場合に、気相堆積中に、回転可能なドラムとエッジ除外部分との間に一定の小さな間隙幅を実現することができる。
【0087】
[0086] 本開示の実施形態は、例えば、基板とは異なる真空チャンバ内部の構成要素の漂遊コーティングを低減するために、温度制御されたコーティングチャンバ環境を提供する。したがって、予防保守サイクル間のより長い動作時間に加えて、有利に改善された基板コーティング品質及び歩留まりを提供することができる。
【0088】
[0087] いくつかの実施形態では、蒸気源のるつぼ内で蒸発させるソース材料は、例えば、所与の条件下で気相を有する金属、特にリチウム、金属合金、及び他の気化可能な材料などを含むことができる。更なる実施形態によれば、追加的に又は代替的には、材料は、マグネシウム(Mg)、イッテルビウム(Yb)及びフッ化リチウム(LiF)を含みうる。るつぼ内で生成された蒸発物質は、分配器に進入しうる。分配器は、例えば、堆積装置の幅及び/又は長さに沿って蒸発材料を分配する移送システムを提供するチャネル又はチューブを含みうる。分配器は、「シャワーヘッド反応器」の設計を有しうる。
【0089】
[0088] 本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、蒸発した材料は、リチウム、Yb、又はLiFを含みうるか又はこれからなりうる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、蒸発器及び/又はノズルの温度は、少なくとも600℃、又は特に600℃と1000℃との間、又はより具体的には600℃と800℃との間でありうる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、加熱可能なシールドの動作温度は、±10℃以下の偏差で、450℃と600℃との間、特に500℃と550℃との間でありうる。
【0090】
[0089] 本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、加熱可能なシールドの温度は、蒸発器の温度よりも、例えば、少なくとも100℃ほど、低い。
【0091】
[0090] 本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、加熱可能なシールドは、例えば蒸気源の側壁によって、例えば放射によって、受動的に加熱される。加熱可能なシールドは、例えば、特に分配器の、蒸気源の側壁からの放射熱によって加熱することができる。「受動的に(passively)」という用語は、加熱可能なシールドがもっぱら真空堆積装置の他の構成要素によって加熱されることであると理解できる。加熱可能なシールドは、例えば、熱(特に蒸気源の側壁の放射熱)を吸収し、反射し、及び/又は遮蔽するように構成することができる。加熱可能なシールドによって基板に向かって方向付けられる熱を低下させることによって、基板は、真空チャンバのより小さくコンパクトな設計を可能にする蒸発器により接近して配置することができる。
【0092】
[0091] 更に、加熱可能なシールドを加熱することによって、加熱可能なシールドの表面上に堆積させた材料を、例えば、漂遊コーティングによって再蒸発させることができる。加熱可能なシールド上の漂遊コーティング材料は、有利には、再蒸発によって除去することができる。更に、加熱可能なシールドから材料を再蒸発させることによって、基板上のコーティングをより均一に行うこともできる。
【0093】
[0092] いくつかの実施形態では、複数のノズルは、3列、4列又はそれ以上のノズルを含む。追加的又は代替的に、開口部及び/又はノズルうる。4つ以上の開口部及び/又はノズルが、2つの異なる方向、例えば、直交する方向に配置される。
【0094】
[0093] コントローラは、加熱可能なシールドの温度を能動的に制御するように構成されうる。能動的に制御することは、加熱装置に供給される電力を制御することを含み、及び/又は加熱装置に供給される加熱液体の流量を制御することを含みうる。コントローラは、蒸気源内の温度及び/又は加熱可能なシールドの温度を測定するように構成することができる。更に、コントローラはまた、複数のノズルの上流の蒸気源内、複数のノズルの下流の蒸気伝搬空間内、及び/又は真空チャンバの別の部分内の圧力を測定するように構成されうる。更に、コントローラは、るつぼ及び/又は分配管内の蒸発速度及び/又は基板上の蒸発材料の堆積速度を制御するように構成することができる。それぞれのパラメータは、例えば、温度、速度、及び圧力でありうる。それぞれのパラメータは、例えば、それぞれの構成要素に配置されたセンサによって測定することができる。
【0095】
[0094] 本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、バッテリのアノードが製造され、フレキシブル基板又はウェブは、銅を含むか又は銅からなる。いくつかの実施態様によれば、ウェブは、グラファイトとケイ素及び/又は酸化ケイ素とを更に含みうる。例えば、リチウムは、グラファイトと、ケイ素及び/又は酸化ケイ素とを含む層をプレリチオ化(pre-lithiate)しうる。
【0096】
[0095] 特に、以下の実施形態が本明細書で説明される。
実施形態1.コーティングされる基板を支持するための基板支持体と、蒸気伝搬空間を通して蒸気を基板支持体に向かって方向付けるための複数のノズルを備えた蒸気源と、蒸気源から基板支持体に向かって延び、蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲む加熱可能なシールドであって、コーティングされない基板の領域をマスクするためのエッジ除外部分を備える、加熱可能なシールドとを備える、気相堆積装置。
【0097】
実施形態2.基板支持体は、湾曲したドラム表面を備えた回転可能なドラムであり、気相堆積装置は、湾曲したドラム表面上の基板を蒸気源を通過して周方向に移動させるように構成される、実施形態1に記載の気相堆積装置。
【0098】
実施形態3.エッジ除外部分は、湾曲したドラム表面に沿って周方向に延び、その曲率に追従する、実施形態2に記載の気相堆積装置。
【0099】
実施形態4.(i)加熱可能なシールドが加熱されていないときに、エッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の最大距離は、2mm以上6mm以下であること、及び
(ii)加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、エッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の最大距離は、2mm未満、特に約1mm又は1mm未満であること
のうちの少なくとも1つが適用される、実施形態2又は3に記載の気相堆積装置。
【0100】
実施形態5.加熱可能なシールドが加熱されるときに、周方向における加熱可能なシールドの延長部分にわたってサブmm(sub-mm)の偏差で、回転可能なドラムから所定の半径方向距離で加熱可能なシールドを位置決めするための、周方向に互いに離間し且つそれぞれの位置合わせ凹部に突出する、少なくとも3つの位置合わせピンを備える、実施形態1~4のいずれか一項に記載の気相堆積装置。
【0101】
実施形態6.エッジ除外部分は、基板の2つの反対側の側方方向エッジ(lateral edge)をマスクするように構成される、実施形態1~5のいずれか一項に記載の気相堆積装置。
【0102】
実施形態7.加熱可能なシールドは、2つのコーティングストリップの堆積を可能にするために内部基板領域をマスクするためのセグメンテーション部分を含む、実施形態1から6のいずれか一項に記載の気相堆積装置。
【0103】
実施形態8.セグメンテーション部分は、加熱可能なシールドによって提供されるコーティングウインドウを、側方方向(lateral direction)に本質的に等しい幅を有する2つ以上のサブウインドウに分割する、実施形態7に記載の気相堆積装置。
【0104】
実施形態9.加熱可能なシールドを、蒸気凝縮温度を上回る温度、特に500℃以上600℃以下の温度まで能動的に又は受動的に加熱するための加熱装置を備える、実施形態1~8のいずれか一項に記載の気相堆積装置。
【0105】
実施形態10.加熱装置に接続され、加熱可能なシールドの温度を、蒸気源内の温度より低く、且つ蒸気伝搬空間内の蒸気凝縮温度より高くなるよう制御するように構成されたコントローラを更に備える、実施形態9に記載の気相堆積装置。
【0106】
実施形態11.加熱可能なシールドは、基板支持体と接触せず、よって基板支持体は、気相堆積中に加熱可能なシールド及び蒸気源に対して移動することができる、実施形態1から10のいずれか一項に記載の気相堆積装置。
【0107】
実施形態12.加熱可能なシールドは、2つの側方側(lateral side)、並びに基板入口側及び基板出口側の少なくとも一方において、蒸気伝搬空間を囲む、実施形態1~11のいずれか一項に記載の気相堆積装置。
【0108】
実施形態13.コーティングされる基板を支持するための基板支持体であって、湾曲したドラム表面を備えた回転可能なドラムである基板支持体と、蒸気伝搬空間を通して蒸気を湾曲したドラム表面に向かって方向付けるための複数のノズルを備えた蒸気源と、蒸気源から湾曲したドラム表面に向かって延び、蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲む加熱可能なシールドであって、湾曲したドラム表面上にコーティングウインドウを画定する加熱可能なシールドとを備える、気相堆積装置。
【0109】
実施形態14.加熱可能なシールドは、コーティングされない基板の領域をマスクするためのエッジ除外部分を備え、エッジ除外部分は、回転可能なドラムの周方向に延び、湾曲したドラム表面の曲率に追従する、実施形態13に記載の気相堆積装置。
【0110】
実施形態15.真空チャンバ内で基板をコーティングするための方法であって、基板を、蒸気源を通過して回転可能なドラムの湾曲したドラム表面上を周方向に移動させることと、蒸気伝搬空間を通して、蒸気源から湾曲したドラム表面上で支持される基板に向かって蒸気を方向付けることと、蒸気源から湾曲したドラム表面に向かって延び、蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲む加熱可能なシールドを加熱することとを含む、方法。
【0111】
実施形態16.加熱可能なシールドは、湾曲したドラム表面上にコーティングウインドウを画定し、コーティングされない基板の領域をマスクするエッジ除外部分を含む、実施形態15に記載の方法。
【0112】
実施形態17.エッジ除外部分は、周方向に延び、湾曲したドラム表面の曲率に追従し、基板の少なくとも1つの側方エッジ又は2つの反対側の側方エッジをマスクする、実施形態16に記載の方法。
【0113】
実施形態18.エッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間に、周方向に延びる間隙が設けられ、間隙は、加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、約0.8mmと約1.5mmとの間の本質的に一定の間隙幅、特に約1mmの一定の間隙幅を有する、実施形態16又は17に記載の方法。
【0114】
実施形態19.加熱可能なシールドは、周方向に延び、且つ加熱可能なシールドによって提供されるコーティングウインドウを2つ以上のサブウインドウに分割するセグメンテーション部分を備え、該方法は、2つ以上のサブウインドウを通して基板上に2つ以上の別々のコーティングストリップを堆積させることを含む、実施形態15~18のいずれか一項に記載の方法。
【0115】
実施形態20.セグメンテーション部分は、周方向に沿って湾曲したドラム表面の曲率に追従し、セグメンテーション部分と湾曲したドラム表面との間の最大距離は、加熱可能なシールドが動作温度まで加熱されるときに、2mm以下、特に約1mmである、実施形態19に記載の方法。
【0116】
実施形態21.蒸気源は金属源、特にリチウム源であり、蒸気は金属蒸気、特にリチウム蒸気である、実施形態15~20のいずれか一項に記載の方法。
【0117】
実施形態22.加熱可能なシールドの動作温度は、約500℃と約600℃との間であるか、又は蒸気源の内部の動作温度は、約600℃と850℃との間である、実施形態15~21のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
実施形態23.基板が、フレキシブル金属箔、特に銅箔、より具体的には厚さが20μm以下の銅箔である、実施形態15~22のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
実施形態24.加熱可能なシールドに衝突する蒸気が再蒸発又は反射される、実施形態15~23のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
実施形態25.真空チャンバ内の基板をコーティングするための方法であって、基板支持体上の基板を支持することと、蒸気伝搬空間を通して、蒸気源から基板支持体上に支持される基板に向かって蒸気を方向付けることと、加熱可能なシールド上の蒸気凝縮を防止又は低減するために、蒸気伝搬空間を少なくとも部分的に囲む加熱可能なシールドを加熱することと、加熱可能なシールドのエッジ除外部分でコーティングされない基板の領域をマスクすることとを含む、方法。
【0121】
実施形態26.気相堆積装置を設置するための方法であって、基板を支持するための湾曲したドラム表面を備えた回転可能なドラムと、湾曲したドラム表面に向かって蒸気を方向付けるための蒸気源とを提供することと、加熱可能なシールドが蒸気源から湾曲したドラム表面に向かって延び、コーティングウインドウを画定するように、加熱可能なシールドを装着することとを含み、
加熱可能なシールドは、湾曲したドラム表面に沿って周方向に延び、かつその曲率に追従するエッジ除外部分を備える、方法。
【0122】
実施形態27.加熱可能なシールドの熱誘導膨張が、周方向に沿ってエッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の本質的に一定の距離、特に0.8mmと1.5mmとの間の範囲の距離に至るように、加熱可能なシールドが装着される、実施形態26に記載の方法。
【0123】
実施形態28.加熱可能なシールドの非加熱状態において、加熱可能なシールドの中心セクションにおけるエッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の第1の距離が、周方向における加熱可能なシールドの端部におけるエッジ除外部分と湾曲したドラム表面との間の第2の距離と、0.5mm以上2mm以下ほど異なるように、加熱可能なシールドが装着される、実施形態26又は27に記載の方法。
【0124】
実施形態29.実施形態1~14のいずれか一項に記載の気相堆積装置においてコーティングされた基板を製造する方法であって、気相堆積装置の基板支持体上で基板を支持することと、基板上に1つ又は複数のコーティングストリップを堆積させるために、気相堆積装置の気相堆積源から基板に向かって蒸気を方向付けることとを含む、方法。
【0125】
[0096] 以上の説明は実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱せずに、他の実施形態及び更なる実施形態が考案されてもよく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。