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特許7651837トナー、現像剤、トナー収容ユニット、画像形成装置及び画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】トナー、現像剤、トナー収容ユニット、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
G03G9/097 372
G03G9/097 371
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020178189
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022069168
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 彰法
(72)【発明者】
【氏名】武井 章生
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 靖男
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 輪太郎
(72)【発明者】
【氏名】行川 真広
(72)【発明者】
【氏名】竹林 冬馬
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099809(JP,A)
【文献】特開2020-140113(JP,A)
【文献】特開2016-164616(JP,A)
【文献】特開2019-152856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含むトナー母体粒子を含有し、
前記トナー母体粒子の表面に、スチレンアクリル樹脂を含みかつカルボキシル基を含まない樹脂(a)を有するコアと、カルボキシル基を含む樹脂(b)を有するシェルで構成されるコアシェル構造を有する有機樹脂微粒子と、カルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤とを有し、
前記結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記アニオン系界面活性剤が、コハク酸誘導体を含むトナー。
【請求項2】
前記樹脂(a)及び前記樹脂(b)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stが、30℃~70℃である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記有機樹脂微粒子の体積粒子径が、10nm~100nmである請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記有機樹脂微粒子の含有量は、前記トナーに対して、0.2質量%~5質量%である請求項1~3の何れか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記アニオン系界面活性剤の酸価が、100mgKOH/g~200mgKOH/gである請求項4に記載のトナー。
【請求項6】
請求項1~の何れか一項に記載のトナーと、キャリアとを含む現像剤。
【請求項7】
請求項1~の何れか一項に記載のトナーを収容したトナー収容ユニット。
【請求項8】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体の上に静電潜像を形成する静電潜像形成部と、
前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像部と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写部と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着部と、を備え、
前記トナーが、請求項1~の何れか一項に記載のトナーである画像形成装置。
【請求項9】
静電潜像担持体の上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着する定着工程と、を含み、
前記トナーが、請求項1~の何れか一項に記載のトナーである画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、現像剤、トナー収容ユニット、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーを利用した複合機(MFP)及びプリンタ等の画像形成装置は、オフィス等、様々な場所で広く利用されている。トナーには、出力画像の高品質化と、定着時の消費電力を抑えて省エネルギー化とを図ると共に、保管時や運搬時における高温高湿に対する耐性を高めるために、耐高温オフセット性、低温定着性及び耐熱保存性が要求されている。
【0003】
耐高温オフセット性、低温定着性及び耐熱保存性の改善を図ったトナーとして、例えば、重量平均分子量(Mw)が8,000~1,000,000であり、かつ粒径が20~400nmであり、コア・シェル構造を有する樹脂微粒子を含むトナーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のトナーでは、帯電性能の改善については検討されていない。トナーの帯電性が低下すると、地汚れやトナーの飛散を生じる可能性がある。そのため、トナーの更なる利用を図るため、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性及び帯電性のいずれも優れたトナーが希求されている。
【0005】
本発明の一態様は、優れた、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性及び帯電性を有するトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトナーの一態様は、結着樹脂を含むトナー母体粒子を含有し、前記トナー母体粒子の表面に、スチレンアクリル樹脂を含みかつカルボキシル基を含まない樹脂(a)を有するコアと、カルボキシル基を含む樹脂(b)を有するシェルで構成されるコアシェル構造を有する有機樹脂微粒子と、カルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様は、優れた、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性及び帯電性を有するトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】一実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3】一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図4図3の画像形成装置の部分拡大図である。
図5】一実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、実施形態は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本明細書において数値範囲を示すチルダ「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
<トナー>
一実施形態に係るトナーは、結着樹脂を含むトナー母体粒子を含有するトナーであって、トナーの表面に、コアシェル構造を有する有機樹脂微粒子と、カルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤とを含んでいる。なお、一実施形態に係るトナーは、結着樹脂以外に、必要に応じて、着色剤、離型剤等他の成分を含有してもよい。
【0011】
[結着樹脂]
結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含むことができる。なお、一実施形態に係るトナーは、ポリエステル樹脂以外の結着樹脂を含有してもよい。
【0012】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶質ポリエステル樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0013】
((結晶性ポリエステル樹脂))
結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性をもつために、定着開始温度付近において急激な粘度低下を示す熱溶融特性を示す。このような特性を有する結晶性ポリエステル樹脂を非結晶性ポリエステル樹脂と共に用いることで、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性がよく、溶融開始温度では結晶性ポリエステル樹脂の融解による急激な粘度低下を起こし、それに伴い非結晶性ポリエステル樹脂と相溶し、共に急激に粘度低下することで定着することから、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。また、離型幅(定着下限温度と耐高温オフセット発生温度との差)についても、良好な結果を示す。
【0014】
結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られる。なお、本実施形態において、結晶性ポリエステル樹脂とは、上記の成分を用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性して得られる樹脂、例えば、後述する、プレポリマー、及びプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂を含まない。
【0015】
-多価アルコール-
多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコールが挙げられる。
【0016】
ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオール等が挙げられる。飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。炭素数としては12以下であることがより好ましい。
【0017】
飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0018】
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
-多価カルボン酸-
多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸が挙げられる。
【0020】
2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸;等が挙げられ、更に、これらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルも挙げられる。
【0021】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステル等が挙げられる。
【0022】
また、多価カルボン酸は、飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸を含んでもよい。更に、多価カルボン酸は、飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸を含有してもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4~12の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。即ち、結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4~12の飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と、炭素数2~12の飽和脂肪族ジオールに由来する構成単位とを有することが好ましい。そうすることにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れることから、優れた低温定着性を発揮できる点で好ましい。
【0024】
結晶性ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃~80℃であることが好ましい。融点が、60℃未満であると、結晶性ポリエステル樹脂が低温で溶融し易く、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、80℃を超えると、定着時の加熱による結晶性ポリエステル樹脂の溶融が不十分で、低温定着性が低下することがある。
【0025】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、かつ分子量が低い成分が多いと、耐熱保存性が低下するという観点から、結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定において、重量平均分子量(Mw)は、3,000~30,000であることが好ましく、5,000~15,000であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)は、1,000~10,000であることが好ましく、2,000~10,000であることがより好ましい。Mw/Mnは、1.0~10であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましい。
【0026】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、紙と樹脂との親和性の観点から、所望の低温定着性を達成するためには、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。一方、耐高温オフセット性を向上させるには、45mgKOH/g以下が好ましい。
【0027】
結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所望の温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには、0mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~50mgKOH/gがより好ましい。
【0028】
結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定等により確認することができる。簡便には、赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1又は990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを結晶性ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0029】
結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、3質量部~20質量部が好ましく、5質量部~15質量部がより好ましい。含有量が、3質量部未満であると、結晶性ポリエステル樹脂によるシャープメルト化が不十分なため、低温定着性に劣ることがある。含有量が、20質量部を超えると、耐熱保存性が低下すること、及び画像のかぶりが生じやすくなる場合がある。含有量が、上記のより好ましい範囲内であると、高画質、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0030】
((非結晶性ポリエステル樹脂))
非結晶性ポリエステル樹脂は、構成成分として、ジオール成分及び架橋成分を含む。
【0031】
非結晶性ポリエステル樹脂に含まれるジオール成分は、炭素数3~10の脂肪族ジオールを、50mol%以上含有し、80mol%以上含有することが好ましく、90mol
%以上含有することがより好ましい。
【0032】
炭素数3~10の脂肪族ジオールとしては、例えば、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
【0033】
非結晶性ポリエステル樹脂は、ジオール成分の主鎖となる部分の炭素数が奇数であり、ジオール成分がアルキル基を側鎖に有することが好ましい。
【0034】
炭素数3~10の脂肪族ジオールは、主鎖となる部分の炭素数が奇数であり、アルキル基を側鎖に有することが好ましく、下記一般式(1)で表される脂肪族ジオールであることが好ましい。
HO-(CR)-OH ・・・一般式(1)
但し、一般式(1)中、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~3のアルキル基を表す。nは3~9の奇数を表す。n個の繰り返し単位において、R及びRは、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
非結晶性ポリエステル樹脂に含まれる架橋成分は、3価以上の脂肪族アルコールを含み、3価~4価の脂肪族アルコールを含むことが、定着画像の光沢及び画像濃度の点から好ましい。架橋成分は、3価以上の脂肪族アルコールのみであってもよい。
【0036】
3価以上の脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリ
トール等が挙げられる。
【0037】
架橋成分の割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%~5質量%が好ましく、1質量%~3質量%がより好ましい。
【0038】
多価アルコール成分における3価以上の脂肪族アルコールの割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50質量%~100質量%が好ましく、90質量%~100質量%がより好ましい。
【0039】
ジカルボン酸成分は、炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸を含有することが好ましく、炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸を50mol%以上含有することが好ましい。
【0040】
ジカルボン酸成分は、炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸を60mol%未満含有することが好ましい。
【0041】
炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。
【0042】
非結晶性ポリエステル樹脂は、単独で使用してもよいし、他の非結晶性ポリエステル樹脂と併用してもよい。
【0043】
((他の非結晶性ポリエステル樹脂))
他の非結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、構成成分として、ジオール成分及びジカルボン酸成分を含む。他の非結晶性ポリエステル樹脂は、構成成分として、更に架橋成分を含んでもよい。架橋成分として、3価以上の脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0044】
-ジオール成分-
ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。これらの中でも、炭素数4~12の脂肪族ジオールが好ましい。これらのジオールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
-ジカルボン酸成分-
ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。また、これらの無水物を用いてもよいし、低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物を用いてもよいし、ハロゲン化物を用いてもよい。
【0046】
脂肪族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0047】
芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられるこれらの中でも、炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0048】
これらのジカルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
-3価以上の脂肪族アルコール-
3価以上の脂肪族アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの中でも3価~4価の脂肪族アルコールが好ましい。これらの3価以上の脂肪族アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
ポリエステル樹脂の示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目のガラス転移点(ガラス転移温度ともいう)Tg1stは、20℃~50℃であることが好ましい。
【0051】
トナーの低温定着性を向上させるため、非結晶性ポリエステル樹脂を結晶性ポリエステル樹脂と共に溶融するように、結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点(ガラス転移温度ともいう)Tgを低くする方法又は結晶性ポリエステル樹脂の分子量を小さくする方法が考えられる。非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点Tgを低くすること、又は結晶性ポリエステル樹脂の分子量を小さくすることにより、非結晶性ポリエステル樹脂の溶融粘性を低下させた場合、トナーの耐熱保存性と、定着時の高温オフセット性とが悪化する可能性がある。
【0052】
本実施形態では、非結晶性ポリエステル樹脂は、構成成分としてジオール成分を含み、ジオール成分が炭素数3~10の脂肪族ジオールを50mol%以上含有することが好ましい。これにより、ガラス転移点Tgや溶融粘性を低下させ、低温定着性を担保することができる。また、非結晶性ポリエステル樹脂は、3価以上の脂肪族アルコールを架橋成分として含むことが好ましい。これにより、非結晶性ポリエステル樹脂は、分子骨格中に分岐構造を有し、分子鎖が三次元的な網目構造となるため、低温で変形するが、流動しないというゴム的な性質を有する。そのため、トナーの耐熱保存性及び耐高温オフセット性を保持することができる。
【0053】
他の非結晶性ポリエステル樹脂は、紙等の記録媒体への接着性がより優れる点から、ウレタン結合及びウレア結合の少なくとも何れかを有することが好ましい。他の非結晶性ポリエステル樹脂が、ウレタン結合及びウレア結合の少なくともいずれかを有することにより、ウレタン結合又はウレア結合が擬似架橋点のような挙動を示し、他の非結晶性ポリエステル樹脂のゴム的性質が強くなり、トナーの耐熱保存性、耐高温オフセット性がより優れる。
【0054】
-ウレタン結合及びウレア結合の少なくとも何れかを有する非結晶性ポリエステル樹脂-
ウレタン結合及びウレア結合の少なくとも何れかを有する非結晶性ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基を有する非結晶性ポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物等が挙げられる。反応生成物は、後述する硬化剤と反応させる反応前駆体(以下、「プレポリマー」と称することがある。)として使用することができる。
【0055】
--活性水素基を有する非結晶性ポリエステル樹脂--
活性水素基を有する非結晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、水酸基を有する非結晶性ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0056】
--ポリイソシアネート--
ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジイソシアネート、3価以上のイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの等が挙げられる。
【0058】
脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0059】
脂環式ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0060】
芳香族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4'-ジイソシアナトジフェニル、4,4'-ジイソシアナト-3,3'-ジメチルジフェニル、4,4'-ジイソシアナト-3-メチルジフェニルメタン、4,4'-ジイソシアナト-ジフェニルエーテル等が挙げられる。前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α,α,α',α'-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0061】
イソシアヌレート類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0062】
これらのポリイソシアネートは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
--硬化剤--
硬化剤としては、プレポリマーと反応するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基含有化合物等が挙げられる。
【0064】
---活性水素基含有化合物---
活性水素基含有化合物における活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
活性水素基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ウレア結合を形成可能な点で、アミン類が好ましい。
【0066】
アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン、3価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミノ基をブロックしたもの等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン、ジアミンと少量の3価以上のアミンとの混合物が好ましい。
【0067】
ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン等が挙げられる。前記芳香族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。前記脂環式ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。前記脂肪族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0068】
3価以上のアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0069】
アミノアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン等が挙げられる。
【0070】
アミノメルカプタンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。
【0071】
アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられる。
【0072】
アミノ基をブロックしたものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0073】
ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定等により確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものをポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0074】
ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、50質量部~90質量部が好ましく、70質量部~85質量部がより好ましい。前記含有量が、50質量部未満であると、低温定着性、及び耐高温オフセット性が悪化することがあり、90質量部を超えると、耐熱保存性の悪化、及び定着後に得られる画像の光沢度及び着色度が低下することがある。前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、低温定着性、耐高温オフセット性、及び耐熱保存性の全てに優れる点で有利である。
【0075】
(他の結着樹脂)
一実施形態に係るトナーは、上記のポリエステル樹脂以外の、他の結着樹脂成分を含有することができる。他の結着樹脂として、例えば、シリコーン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、クマリン樹脂、アミドイミド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等、公知の結着樹脂を含むことができる。
【0076】
[有機樹脂微粒子]
有機樹脂微粒子は、トナーの表面に配置されている。有機樹脂微粒子は、トナーの表面を覆って積層した状態でなく、トナーの表面に点在した状態で配置されている。
【0077】
有機樹脂微粒子は、スチレンアクリル樹脂を含みかつカルボキシル基を含まない樹脂(a)を有するコアと、カルボキシル基を含む樹脂(b)を有するシェルで構成されるコアシェル構造を有する。なお、有機樹脂微粒子は、必ずしもシェルを有している必要はなく、コアのみで構成されていてもよい。
【0078】
(樹脂(a))
樹脂(a)は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーである。ビニルモノマーとしては、下記(1)~(10)が挙げられる。
【0079】
(1)ビニル炭化水素
ビニル炭化水素としては、(1-1)脂肪族ビニル炭化水素、(1-2)脂環式ビニル炭化水素及び(1-3)芳香族ビニル炭化水素等が挙げられる。
【0080】
(1-1)脂肪族ビニル炭化水素
脂肪族ビニル炭化水素としては、アルケン及びアルカジエン等が挙げられる。アルケンの具体的な例としてはエチレン、プロピレン及びα-オレフィン等が挙げられる。アルカジエンの具体的な例としてはブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン等が挙げられる。
【0081】
(1-2)脂環式ビニル炭化水素
脂環式ビニル炭化水素としては、モノ-もしくはジ-シクロアルケン及びアルカジエンが挙げられ、具体的な例としては(ジ)シクロペンタジエン、テルペン等が挙げられる。
【0082】
(1-3)芳香族ビニル炭化水素
芳香族ビニル炭化水素としては、スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体等が挙げられ、具体的にはα-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン及びビニルナフタレン等が挙げられる。
【0083】
(2)カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩
カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩としては、炭素数3~30の不飽和モノカルボン酸(塩)、不飽和ジカルボン酸(塩)並びにその無水物(塩)及びそのモノアルキル(炭素数1~24)エステル又はその塩等が挙げられる。
【0084】
具体的には、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマー及びこれらの金属塩等が挙げられる。
【0085】
なお、本実施形態において、「(塩)」とは、酸又はその塩を意味する。例えば、炭素数3~30の不飽和モノカルボン酸(塩)とは、不飽和モノカルボン酸又はその塩を意味する。
【0086】
「(メタ)アクリル」とは、メタクリル酸又はアクリル酸を意味する。すなわち、「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイル又はアクリロイルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0087】
(3)スルホン基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩
スルホン基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩としては、炭素数2~14のアルケンスルホン酸(塩)、炭素数2~24のアルキルスルホン酸(塩)、スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(塩)もしくは(メタ)アクリルアミド(塩)及びアルキルアリルスルホコハク酸(塩)等が挙げられる。具体的には、炭素数2~14のアルケンスルホン酸としてはビニルスルホン酸(塩)等が挙げられ、炭素数2~24のアルキルスルホン酸(塩)としてはα-メチルスチレンスルホン酸(塩)等が挙げられ、スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(塩)もしくは(メタ)アクリルアミド(塩)としてはスルホプロピル(メタ)アクリレート(塩)、硫酸エステル(塩)もしくはスルホン酸基含有ビニルモノマー(塩)等が挙げられる。
【0088】
(4)燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩:
燐酸基含有ビニルモノマー及びその塩としては、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)燐酸モノエステル(塩)及び(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)ホスホン酸(塩)等が挙げられる。
【0089】
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)燐酸モノエステル(塩)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート(塩)及びフェニル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート(塩)等が挙げられる。
【0090】
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)ホスホン酸(塩)の具体例としては、2-アクリロイルオキシエチルホスホン酸(塩)等が挙げられる。
【0091】
上記(2)~(4)の塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩及び4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0092】
(5)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー
ヒドロキシル基含有ビニルモノマーとしては、ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール、2-ブテン-1,4-ジオール、プロパルギルアルコール、2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル及び蔗糖アリルエーテル等が挙げられる。
【0093】
(6)含窒素ビニルモノマー
含窒素ビニルモノマーとしては、アミノ基含有ビニルモノマー、アミド基含有ビニルモノマー、ニトリル基含有ビニルモノマー、4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー及びニトロ基含有ビニルモノマー等が挙げられる。
【0094】
アミノ基含有ビニルモノマーとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0095】
アミド基含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド及びN-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0096】
ニトリル基含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン及びシアノアクリレート等が挙げられる。
【0097】
4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びジアリルアミン等の3級アミン基含有ビニルモノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等が挙げられる。
【0098】
ニトロ基含有ビニルモノマーとしてはニトロスチレン等が挙げられる。
【0099】
(7)エポキシ基含有ビニルモノマー
エポキシ基含有ビニルモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート及びp-ビニルフェニルフェニルオキサイド等が挙げられる。
【0100】
(8)ハロゲン元素含有ビニルモノマー
ハロゲン元素含有ビニルモノマーとしては、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン及びクロロプレン等が挙げられる。
【0101】
(9)ビニルエステル
ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4-ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα-エトキシアクリレート、炭素数1~50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等)]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2~8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2~8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]等、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニルモノマー[ポリエチレングリコール(分子量300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート[多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
【0102】
(10)ビニル(チオ)エーテル
ビニル(チオ)エーテルとしては、例えばビニルメチルエーテル等が挙げられる。
【0103】
(11)ビニルケトン
ビニルケトンとしては、例えばビニルメチルケトン等が挙げられる。
【0104】
(12)その他のビニルモノマー
その他のビニルモノマーとしては、テトラフルオロエチレン、フルオロアクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート及びm-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0105】
樹脂(a)は、上記(1)~(12)のビニルモノマーの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0106】
樹脂(a)としては、有機樹脂微粒子の低温定着性の点から、好ましくはスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含み、より好ましくはスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む。
【0107】
(樹脂(b))
樹脂(b)は、カルボキシル基を有するビニルモノマーを単独重合又はそれと他のモノマーを共重合したポリマーを用いることができる。ビニルモノマーとしては、上記の樹脂(a)に用いられるポリマーと同様のポリマーを用いることができる。
【0108】
樹脂(b)は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を樹脂(b)の合計重量に対して、好ましくは合計10質量%~60質量%、より好ましくは合計30質量%~50質量%有する樹脂である。
【0109】
樹脂(b)としては、樹脂(a)と同様、有機樹脂微粒子の低温定着性の点から、好ましくはスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、更に好ましくはスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。
【0110】
樹脂(a)及び樹脂(b)の酸価について説明する。
【0111】
樹脂(a)の酸価は、低温定着性及びコアシェル構造形成の観点から、その酸価は0mgKOH/gであることが好ましい。
【0112】
樹脂(b)の酸価は、好ましくは75mgKOH/g~400mgKOH/gであり、更に好ましくは150mgKOH/g~300mgKOH/gである。樹脂(b)の酸価がこの範囲内であれば、コア樹脂(a)とシェル樹脂(b)とを含む有機樹脂微粒子がトナーの表面に付着した構造を形成し易い。
【0113】
((酸価の測定))
JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠し、以下の条件で酸価を測定した。ただし、サンプルが溶解しない場合は、溶媒にジオキサン、テトラヒドロフラン等を用いた。酸価は、具体的に次のような手順で決定される。
-測定条件-
・測定装置:電位差自動滴定装置(DL-53 Titrator、メトラー・トレド社製)
・使用電極:DG113-SC(メトラー・トレド社製)
・解析ソフト:LabX Light Version 1.00.000
・装置の校正:トルエン120mlとエタノール30mlの混合溶媒を使用した。
・測定温度:23℃
【0114】
なお、酸化の測定は、上記の測定装置を用いて計算することができるが、具体的には、次のように計算した。即ち、予め標定されたN/10水酸化カリウムのアルコール溶液で滴定し、アルコール水酸化カリウム溶液の消費量から次の計算で酸価を求めた。
酸価=KOH(ml数)×N×56.1/試料重量
(但し、NはN/10KOHのファクター)
【0115】
樹脂(a)及び樹脂(b)の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stについて説明する。
【0116】
樹脂(a)及び樹脂(b)の示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、30℃~70℃であることが好ましい。昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stが30℃未満では、耐熱保存性の効果得られない。昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stが70℃を超えると、低温定着への阻害が大きくなる。
【0117】
なお、本実施形態おいて、ガラス転移点Tg1stとは、具体的に、次のような手順で決定される。測定装置として島津製作所製TA-60WS及びDSC-60を用い、以下の測定条件で測定する。
((測定条件))
・サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり)
・サンプル量:5mg
・リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg)
・雰囲気:窒素(流量50ml/min)
((温度条件))
・開始温度:20℃
・昇温速度:10℃/min
・終了温度:150℃
・保持時間:なし
・降温温度:10℃/min
・終了温度:20℃
・保持時間:なし
・昇温速度:10℃/min
・終了温度:150℃
【0118】
測定結果は、島津製作所製データ解析ソフト(TA-60、バージョン1.52)を用いて解析を行った。解析方法は、1度目の昇温のDSC微分曲線であるDrDSC曲線のもっとも低温側に最大ピークを示す点を中心として±5℃の範囲を指定し、解析ソフトのピーク解析機能を用いてピーク温度を求める。次に、DSC曲線でピーク温度+5℃及び-5℃の範囲で解析ソフトのピーク解析機能を用いてDSC曲線の最大吸熱温度を求める。ここで示された温度が測定試料の樹脂の、昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stに相当する。
【0119】
有機樹脂微粒子に含まれる樹脂(a)と樹脂(b)との質量比率は、5/95~95/5であり、好ましくは25/75~75/25であり、更に好ましくは40/60~60/40である。前記質量比率が95/5以上であれば、有機樹脂微粒子の耐熱保存性に優れる。前記質量比率が5/95以下であれば、有機樹脂微粒子がトナー母体粒子の表面に付着したトナー粒子を形成しやすい。
【0120】
また、乳化中に予め混合した有機樹脂微粒子をトナー母体粒子の表面に均一に付着させた後、トナー母体粒子をアルカリ水溶液で洗浄する際、トナー母体粒子の表面に付着した有機樹脂微粒子中の樹脂(b)の全て又は一部を取り除くことで、トナー母体粒子の表面の有機樹脂微粒子の状態を制御することができる。
【0121】
樹脂(a)と樹脂(b)とを構成成分として含む有機樹脂微粒子を製造する方法としては、公知の製造方法が挙げられるが、例えば、次のような製造方法(I)~(V)等が挙げられる。
(I)水性分散液中の樹脂(b)の微粒子をシードとして、樹脂(a)の構成モノマーをシード重合する方法。
(II)水性分散液中の樹脂(a)の微粒子をシードとして、樹脂(b)の構成モノマーをシード重合する方法。
(III)樹脂(a)及び樹脂(b)の混合物を水性媒体に乳化して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法。
(IV)樹脂(a)と樹脂(b)の構成モノマーの混合物とを水性媒体に乳化した後に、樹脂(b)の構成モノマーを重合して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法。
(V)樹脂(a)の構成モノマーと樹脂(b)の混合物とを水性媒体に乳化した後に、樹脂(a)の構成モノマーを重合して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法。
【0122】
なお、樹脂(a)と樹脂(b)とを同一粒子内に構成成分として含む有機樹脂微粒子であることは、有機樹脂微粒子の切断面を公知の表面元素分析装置(TOF-SIMS及びEDX-SEM等)を用いて元素マッピング画像の観察及び樹脂(a1)と樹脂(a2)に含まれる官能基に応じた染色剤で染色した有機樹脂微粒子の切断面の電子顕微鏡観察画像の観察を行うことにより確認することができる。
【0123】
(I)の具体例としては、以下の方法等が挙げられる。まず、樹脂(b)の構成モノマーを滴下重合して、樹脂(b)を含む樹脂微粒子の水性分散液を製造する。その後、水性分散液をシードとして樹脂(a)の構成モノマーをシード重合する方法及び予め溶液重合等で製造した樹脂(b)を水に乳化分散する。その後、乳化分散液をシードとして樹脂(a)の構成モノマーをシード重合する。
【0124】
(II)の具体例としては、以下の方法等が挙げられる。まず、樹脂(a)の構成モノマーを滴下重合して、樹脂(a)を含む樹脂微粒子の水性分散液を製造する。その後、水性分散液をシードとして樹脂(b)の構成モノマーをシード重合する方法及び予め溶液重合等で製造した樹脂(a)を水に乳化分散する。その後、乳化分散液をシードとして樹脂(b)の構成モノマーをシード重合する。
【0125】
(III)の具体例としては、予め溶液重合等で製造した樹脂(a)及び樹脂(b)を含む溶液又は溶融物を混合した後、この混合液を水性媒体に乳化分散する方法等が挙げられる。
【0126】
(IV)の具体例としては、予め溶液重合等で製造した樹脂(a)を樹脂(b)の構成モノマーと混合して得られた混合物を水性媒体に乳化分散して、乳化分散液中で樹脂(b)の構成モノマーを重合して樹脂(b)を製造する方法等が挙げられる。
【0127】
(V)の具体例としては、(a)の構成モノマーを予め溶液重合等で製造した(b)と混合して得られた混合物を水性媒体に乳化分散して、乳化分散液中で樹脂(a)の構成モノマーを重合して樹脂(a)を製造する方法等が挙げられる。
【0128】
(I)~(V)のいずれの製造方法も好適である。
【0129】
有機樹脂微粒子は、水性分散液として用いることが好ましく、分散液の水性媒体としては、水を必須構成成分とする液体であれば特に制限なく使用できる。本実施形態では、トナーの表面に有機樹脂微粒子と界面活性剤とを設けることから、水性媒体として、例えば、水に界面活性剤を含有させた水溶液等を用いることが好ましい。
【0130】
有機樹脂微粒子の粒子径は10nm~100nmであることが好ましい。粒子径が10nm未満では、トナー表面への被覆率が高くなり、低温定着性能が低下する可能性がある。粒子径が100nmを超えると、トナー表面の空隙が大きくなり、耐熱保存性能の効果が低下する。
【0131】
有機樹脂微粒子の粒子径は、レーザードップラー粒度分布測定器粒度分布測定装置を用いて、測定するサンプルを測定器にスポイト又は注射器等を使用して加えることで、測定することができる。測定条件は、下記の通りである。
(測定条件)
・装置:nanotrac UPA-150EX(日機装株式会社製)
・分布表示:体積
・チャンネル数:52
・測定時間:30sec
・粒子屈折率:1.81
・温度:25℃
・粒子形状:球形
・粘度(CP):高温粘度0.797 低温粘度1.002
・溶媒屈折率:1.333
・溶媒:水
【0132】
トナー中の有機樹脂微粒子Aの含有量は、0.2質量%~5質量%が好ましい。含有量が0.2質量%未満では、耐熱保存の効果が十分得られない。含有量が、5%を超えると、低温定着への阻害が大きくなる。
【0133】
トナー中の有機樹脂微粒子Aの含有量は、熱分解ガスクログラフ装置で測定することができる。測定方法は、下記の通りである。
(測定条件)
・ガスクロマトグラフ装置:7890B(アジレントテクノロジー製)
・熱分解装置:EGA/PY-3030D(フロンティアラボ製)
・熱分解条件温度: 600℃
・インターフェース温度:400℃
・ディテクター温度:320℃
・オーブン温度:50℃(10min)-<10℃/minn>-150℃(0min)-<20℃/min>-320℃(3.5min)
・カラム:UA5-30M-1F(30m×0.25mmi.d.、1.0μm film)
・検出器:FID
【0134】
[アニオン系界面活性剤]
アニオン系界面活性剤は、トナーの表面に結合して存在しており、カルボキシル基を含んでいる。
【0135】
アニオン系界面活性剤としては、炭素数8~24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩、炭素数8~24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩、炭素数8~24の炭化水素基を有するスルホン酸塩、炭素数8~24の炭化水素基を1個又は2個有するスルホコハク酸塩、炭素数8~24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩、炭素数8~24の炭化水素基を有する脂肪酸塩及び炭素数8~24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩等が挙げられる。
【0136】
炭素数8~24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩としては、ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0137】
炭素数8~24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0138】
炭素数8~24の炭化水素基を有するスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0139】
炭素数8~24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩としては、ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0140】
炭素数8~24の炭化水素基を有する脂肪酸塩としては、ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0141】
炭素数8~24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩としては、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム等が挙げられる。
【0142】
更に必要に応じて、緩衝剤として、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等を含んでもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0143】
更に必要に応じて、保護コロイドとして、水溶性セルロース化合物及びポリメタクリル酸のアルカリ金属塩等を含んでもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0144】
アニオン系界面活性剤の酸価は、100mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましく、110mgKOH/g~180mgKOH/gであることがより好ましく、130mgKOH/g~160mgKOH/gであることがさらに好ましい。アニオン系界面活性剤の酸価が100mgKOH/g~200mgKOH/gであれば、大気中の湿気による影響を受け難く、負帯電性の効果が良好に得られる。
【0145】
カルボキシル基を有するアニオン系界面活性剤として、具体的には、スルホコハク酸エステル塩等のコハク酸誘導体を用いることが好ましい。
【0146】
カルボキシル基を有するアニオン系界面活性剤は、市販のスルホコハク酸エステル塩の界面活性剤としては、ビューライトSSS(三洋化成工業社製)、カラボンDA-72(三洋化成社製)、ペレックスOT-P(花王社製)等がある。また、スルホコハク酸エステル塩の界面活性剤を酸によりエステル基を加水分解することで得ることができる。
【0147】
また、スルホコハク酸エステル塩を合成する場合は、公知の方法で合成することができ、例えば、マレイン酸をアルキルアルコール類でエステル化し、亜硫酸水素金属塩にてスルホン化することで望みのスルホコハク酸エステル塩が得られる。この合成法の場合、アルキルアルコール類のアルキル鎖の炭素数を自由に変えることで、望みのアルキル鎖を有するスルホコハク酸エステル塩を得ることができる。
【0148】
これらの界面活性剤がトナー中に存在することの確認は、液体クロマトグラフィーとMS検出器で行なうことができる。例えば、液体クロマトグラフィーシステム(AQUITY-UPLC/SQDシステム、日本ウォーターズ社製)を用いて、下記手法により測定を行なうことができる。
【0149】
トナーサンプル約0.2gを精評し、メタノール20mLに投入して攪拌分散させる。その後、超音波を30分間かけて、24時間静置する。上澄み液を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過し、得たサンプルをメタノールで100倍希釈してから前記液体クロマトグラフィーに供する。MS検出器により、カルボキシル基に由来するピークが存在することを確認する。
【0150】
カルボキシル基を有する界面活性剤の酸価は、100mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましい。その範囲では、大気中の湿気による影響を受けにくく、負帯電性の効果が最も良好に得られる。
【0151】
カルボキシル基を有する界面活性剤の酸価は、電位差自動滴定装置(DL-53 Titrator、メトラー・トレド社製)で下記手法により測定することができる。
【0152】
予め標定されたN/10苛性カリ~アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から次の計算で酸価を求める。
酸価=KOH(ml数)×N×56.1/試料重量
(但し、NはN/10KOHのファクター)
【0153】
[他の界面活性剤]
一実施形態に係るトナーは、アニオン系界面活性剤以外に、他の界面活性剤を含んでもよい。他の界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びその他の乳化分散剤が挙げられる。
【0154】
ノニオン性界面活性剤としては、例えばAO付加型ノニオン性界面活性剤及び多価アルコール型ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0155】
AO付加型ノニオン性界面活性剤としては、炭素数10~20の脂肪族アルコールのEO付加物、フェノールのEO付加物、ノニルフェノールのEO付加物、炭素数8~22のアルキルアミンのEO付加物及びポリ(オキシプロピレン)グリコールのEO付加物等が挙げられる。
【0156】
多価アルコール型ノニオン性界面活性剤としては、多価(3~8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2~30)の脂肪酸(炭素数8~24)エステル(例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレエート等)及びアルキル(炭素数4~24)ポリ(重合度1~10)グリコシド等が挙げられる。
【0157】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型及びアミン塩型が挙げられる。具体的には、第4級アンモニウム塩型としては、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
アミン塩型としては、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等が挙げられる。
【0158】
両性界面活性剤としては、ベタイン型両性界面活性剤及びアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0159】
ベタイン型両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン及びラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
【0160】
アミノ酸型両性界面活性剤としては、β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0161】
その他の乳化分散剤としては、例えば反応性活性剤[ラジカル反応性を有するものであれば特に制限されず、具体的にはアデカリアソープ{登録商標、(株)ADEKA製}SE-10N、SR-10、SR-20、SR-30、ER-20、ER-30、アクアロン{登録商標、第一工業製薬(株)製}HS-10、KH-05、KH-10、KH-1025、エレミノール{登録商標、三洋化成工業(株)製}JS-20、ラテムル{登録商標、花王(株)製}PD-104、PD-420、PD-430、イオネット{登録商標、三洋化成工業(株)製}MO-200]、ポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体並びにポリアクリル酸ソーダ等のカルボキシル基含有(共)重合体及び米国特許第5906704号明細書に記載のウレタン基又はエステル基を有する乳化分散剤(例えばポリカプロラクトンポリオールとポリエーテルジオールをポリイソシアネートで連結させたもの)等が挙げられる。
【0162】
本実施形態では、界面活性剤としては、乳化及び分散させる際に、油滴を安定化させ、所望の形状を得ながら、粒度分布をシャープにする観点から、アニオン系界面活性剤と、ノニオン性界面活性剤及びその他の乳化分散剤の少なくとも何れか一つとの併用が好ましく、アニオン系界面活性剤とその他の乳化分散剤との併用がより好ましい。
【0163】
[その他の樹脂成分]
有機樹脂微粒子は、樹脂(a)及び樹脂(b)の他に、その他の樹脂成分を含有していてもよい。その他の樹脂成分として、開始剤(及びその残渣)、連鎖移動剤、酸化防止剤、可塑剤、防腐剤、還元剤及び有機溶剤等が挙げられる。
【0164】
その他の樹脂成分としては、樹脂(a)及び樹脂(b)に用いた樹脂以外のビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂及びポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0165】
開始剤(及びその残渣)としては、公知のラジカル重合開始剤等が挙げられる。具体的には、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩開始剤、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ開始剤、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロパーオキサイド、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート及びターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
【0166】
連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、2-メルカプトエタノール、β-メルカプトプロピオン酸及びα-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0167】
酸化防止剤としては、フェノール化合物、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、有機硫黄化合物及び有機燐化合物等が挙げられる。
【0168】
フェノール化合物としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレン-ビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3′-ビス(4′-ヒドロキシ-3′-t-ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ-ルエステル及びトコフェロール等が挙げられる。
【0169】
パラフェニレンジアミンとしては、N-フェニル-N′-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-イソプロピル-p-フェニレンジアミン及びN,N′-ジメチル-N,N′-ジ-t-ブチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0170】
ハイドロキノンとしては、2,5-ジ-t-オクチルハイドロキノン、2,6-ジドデシルハイドロキノン、2-ドデシルハイドロキノン、2-ドデシル-5-クロロハイドロキノン、2-t-オクチル-5-メチルハイドロキノン及び2-(2-オクタデセニル)-5-メチルハイドロキノン等が挙げられる。
【0171】
有機硫黄化合物としては、ジラウリル-3,3′-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3′-チオジプロピオネート及びジテトラデシル-3,3′-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0172】
有機燐化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4-ジブチルフェノキシ)ホスフィン等が挙げられる。
【0173】
可塑剤としては、フタル酸エステル、脂肪族2塩基酸エステル、トリメリット酸エステル、燐酸エステル及び脂肪酸エステル等が挙げられる。
具体的には、フタル酸エステルとしては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソデシル等が挙げられる。
脂肪族2塩基酸エステルとしては、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル及びセバシン酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
トリメリット酸エステルとしては、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル及びトリメリット酸トリオクチル等が挙げられる。
燐酸エステルとしては、リン酸トリエチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル及びリン酸トリクレジール等が挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、オレイン酸ブチル等が挙げられる。
【0174】
防腐剤としては、有機窒素硫黄化合物防腐剤及び有機硫黄ハロゲン化物防腐剤等が挙げられる。
【0175】
還元剤としては、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖及びホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩等の還元性有機化合物並びにチオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム及びメタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物等が挙げられる。
【0176】
有機溶剤としては、ケトン溶媒[例えばアセトン及びメチルエチルケトン(以下、MEKと略記)]、エステル溶媒(例えば酢酸エチル及びγ-ブチロラクトン)、エーテル溶媒(例えばTHF)、アミド溶媒(例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン及びN-メチルカプロラクタム)、アルコール溶媒(例えばイソプロピルアルコール)及び芳香族炭化水素溶媒(例えばトルエン及びキシレン)等が挙げられる。
【0177】
[その他の成分]
一実施形態に係るトナーは、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、離型剤、着色剤、帯電制御剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料等が挙げられる。
【0178】
(離型剤)
離型剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
【0179】
ロウ類及びワックス類の離型剤としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;等の天然ワックスが挙げられる。
【0180】
これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;等が挙げられる。
【0181】
更に、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド系化合物;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等を用いてもよい。
【0182】
これらの中でも、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の炭化水素系ワックスが好ましい。
【0183】
離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下が好ましい。前記融点が、60℃未満であると、低温で離型剤が溶融しやすくなり、耐熱保存性が劣る場合がある。前記融点が、80℃を超えると、樹脂が溶融して定着温度領域にある場合でも、離型剤が充分溶融せずに定着オフセットを生じ、画像の欠損を生じる場合がある。
【0184】
離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、2質量部~10質量部が好ましく、3質量部~8質量部がより好ましい。含有量が、2質量部未満であると、定着時の耐高温オフセット性、及び低温定着性に劣ることがあり、10質量部を超えると、耐熱保存性が低下すること、及び画像のかぶり等が生じやすくなることがある。含有量が、上記の前記より好ましい範囲内であれば、高画質化及び定着安定性を向上させる点で有利である。
【0185】
(着色剤)
着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられる。
【0186】
着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、1質量部~15質量部が好ましく、3質量部~10質量部がより好ましい。
【0187】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練される樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0188】
マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合し、混練して得ることができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練を行い、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0189】
(帯電制御剤)
帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。
【0190】
具体的には、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業株式会社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0191】
帯電制御剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、0.1質量部~10質量部が好ましく、0.2質量部~5質量部がより好ましい。含有量が10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることもできるし、もちろん有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えてもよいし、トナー表面にトナー粒子作製後固定化させてもよい。
【0192】
(外添剤)
外添剤としては、酸化物微粒子の他に、無機微粒子や疎水化処理無機微粒子を併用することができるが、疎水化処理された一次粒子の平均粒径は1nm~100nmが好ましく、5nm~70nmの無機微粒子がより好ましい。
【0193】
また、疎水化処理された一次粒子の平均粒径が20nm以下の無機微粒子を少なくとも1種類以上含み、かつ30nm以上の無機微粒子を少なくとも1種類含むことが好ましい。また、BET法による比表面積は、20m/g~500m/gであることが好ましい。
【0194】
外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ微粒子、疎水性シリカ、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等)、金属酸化物(例えばチタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモン等)、フルオロポリマー等が挙げられる。
【0195】
好適な添加剤としては、疎水化されたシリカ、チタニア、酸化チタン、アルミナ微粒子が挙げられる。シリカ微粒子としては、例えば、R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(いずれも、日本アエロジル社製)等が挙げられる。また、チタニア微粒子としては、例えばP-25(日本アエロジル社製)、STT-30、STT-65C-S(いずれも、チタン工業社製)、TAF-140(富士チタン工業社製)、MT-150W、MT-500B、MT-600B、MT-150A(いずれも、テイカ社製)等が挙げられる。
【0196】
疎水化処理された酸化チタン微粒子としては、例えば、T-805(日本アエロジル社製)、STT-30A、STT-65S-S(いずれも、チタン工業社製)、TAF-500T、TAF-1500T(いずれも、富士チタン工業社製)、MT-100S、MT-100T(いずれも、テイカ株式会社製)、IT-S(石原産業社製)等が挙げられる。
【0197】
疎水化処理された酸化物微粒子、疎水化処理されたシリカ微粒子、疎水化処理されたチタニア微粒子、疎水化処理されたアルミナ微粒子は、例えば、親水性の微粒子をメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤で処理して得ることができる。またシリコーンオイルを必要ならば熱を加えて無機微粒子に処理した、シリコーンオイル処理酸化物微粒子、無機微粒子も好適である。
【0198】
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0199】
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。これらの中でも、シリカと二酸化チタンが特に好ましい。
【0200】
外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、0.1質量部~5質量部が好ましく、0.3質量部~3質量部がより好ましい。
【0201】
無機微粒子の一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm以下が好ましく、3nm以上70nm以下がより好ましい。この範囲より小さいと、無機微粒子がトナー中に埋没し、その機能が有効に発揮されにくい。またこの範囲より大きいと、感光体表面を不均一に傷つけ好ましくない。
【0202】
(流動性向上剤)
流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。前記シリカ、前記酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0203】
(クリーニング性向上剤)
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子等が挙げられる。該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm~1μmのものが好適である。
【0204】
(磁性材料)
磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト等が挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0205】
<トナーの特性>
[ガラス転移点Tg1st
一実施形態に係るトナーは、示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stが、20℃~50℃であり、25℃~50℃がより好ましい。
【0206】
従来のトナーであると、ガラス転移点Tgが50℃以下程度になると、夏場や熱帯地方を想定したトナーの輸送時、及び保管環境での温度変化によりトナーの凝集が発生しやすくなる。その結果、トナーボトル中での固化、及び現像機内でのトナーの固着が発生する。また、トナーボトル内でのトナー詰りによる補給不良、及び現像機内でのトナー固着による画像異常が発生しやすくなる。
【0207】
一実施形態に係るトナーは、従来のトナーよりガラス転移点Tgが低い。しかし、トナー中の低Tg成分であるポリエステル樹脂が非線状であるため、一実施形態に係るトナーは、耐熱保存性を保持することができる。特に、ポリエステル樹脂が凝集力の高いウレタン結合又はウレア結合を有する場合には、耐熱保存性を保持する効果がより顕著になる。
【0208】
一実施形態に係るトナーは、示差走査熱量測定(DSC)の昇温2回目におけるガラス転移点Tg2nd(ガラス転移温度ともいう)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃~30℃であることが好ましく、10℃~30℃であることがより好ましい。
【0209】
一実施形態に係るトナーの示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目のガラス転移点Tg1stと昇温2回目のガラス転移点Tg2ndとの差(Tg1st-Tg2nd)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃超(即ち、Tg1st>Tg2nd)であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。前記差の上限は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記差(Tg1st-Tg2nd)は、50℃以下が好ましい。
【0210】
一実施形態に係るトナーが結晶性ポリエステル樹脂を含有すると、加熱前(昇温1回目の前)には非相溶状態で存在していた結晶性ポリエステル樹脂と、非結晶性ポリエステル樹脂とが加熱後(昇温1回目の後)には相溶状態になる。
【0211】
昇温1回目のガラス転移点Tg1stが、20℃未満であると、耐熱保存性の低下、現像機内でのブロッキング、及び感光体へのフィルミングが発生し易くなる。昇温1回目のガラス転移点Tg1stが50℃を超えると、トナーの低温定着性が低下する。
【0212】
昇温2回目のガラス転移点Tg2ndが0℃未満であると、定着画像(印刷物)の耐ブロッキング性が低下することがある。昇温2回目のガラス転移点Tg2ndが30℃を超えると、十分な低温定着性や光沢度が得られないことがある。
【0213】
[体積平均粒径]
一実施形態に係るトナーの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm~7μmであることが好ましい。また、個数平均粒径に対する体積平均粒径の比は1.2以下であることが好ましい。また、体積平均粒径が2μm以下である成分を1個数%以上10個数%以下含有することが好ましい。
【0214】
<トナーの構成成分の各種特性の算出方法>
ポリエステル樹脂のガラス転移点Tg及び融点は、それぞれ、それ自体について測定してもよいが、実際のトナーからGPC等によりトナーに含まれる構成成分を分離し、分離した構成成分を後述の分析手法を用いて測定することで、ガラス転移点Tg、融点、構成成分の質量比を算出してもよい。
【0215】
GPCによる各成分の分離は、例えば、以下の方法により行うことができる。
【0216】
まず、THF(テトラヒドロフラン)を移動相としたGPC測定において、溶出液についてフラクションコレクター等により分取を行い、溶出曲線の全面積分のうちの所望の分子量部分に相当するフラクションをまとめる。
【0217】
このまとめた溶出液をエバポレーター等により濃縮及び乾燥した後、固形分を重クロロホルム又は重THF等の重溶媒に溶解させ、H-NMR測定を行い、各元素の積分比率から、構成モノマーの比率を算出することができる。
【0218】
また、他の手法としては、溶出液を濃縮後、水酸化ナトリウム等により加水分解して、分解生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により定性定量分析することで、構成モノマーの比率を算出することができる。
【0219】
なお、トナーが、非線状の反応性前駆体と硬化剤との伸長反応及び/又は架橋反応により非結晶性ポリエステル樹脂を生成しながら、トナー母体粒子を形成する場合には、実際のトナーからGPC等により非結晶性ポリエステル樹脂を分離して、非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点Tg等を求めてもよい。また、非線状の反応性前駆体と硬化剤との伸長反応及び/又は架橋反応により非結晶性ポリエステル樹脂を合成し、その合成した非結晶性ポリエステル樹脂からガラス転移点Tg等を測定してもよい。
【0220】
[トナー構成成分の分離手段]
トナーを分析する際の各構成成分の分離手段の一例を詳細に示す。まず、トナー1gを100mLのTHF中に投入し、25℃の条件下、30分間攪拌しながら可溶分が溶解した溶解液を得る。溶解液を目開き0.2μmのメンブランフィルターにてろ過し、トナー中のTHF可溶分を得る。次いで、THF可溶分をTHFに溶解してGPC測定用の試料とし、前述の各樹脂の分子量測定に用いるGPCに注入する。一方、GPCの溶出液排出口にフラクションコレクターを配置して、所定のカウント毎に溶出液を分取しておき、溶出曲線の溶出開始(曲線の立ち上がり)から面積率で5%毎に溶出液を得る。次いで、各溶出分について、1mLの重クロロホルムに30mgのサンプルを溶解させ、基準物質として0.05体積%のテトラメチルシラン(TMS)を添加する。溶液を5mm径のNMR測定用ガラス管に充填し、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製JNM-AL400)を用い、23℃~25℃の温度下、128回の積算を行い、スペクトルを得る。トナーに含まれる結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂等のモノマー組成及び構成比率は、得られたスペクトルのピーク積分比率から求めることができる。
【0221】
例えば、以下のように、ピークの位置から、そのピークに由来する成分を特定して、それぞれの積分比から構成モノマーの成分比率を求めることができる。
ピークが8.25ppm付近:トリメリット酸のベンゼン環由来(水素1個分)
ピークが8.07ppm~8.10ppm付近:テレフタル酸のベンゼン環由来(水素4個分)
ピークが7.1ppm~7.25ppm付近:ビスフェノールAのベンゼン環由来(水素4個分)
ピークが6.8ppm付近:ビスフェノールAのベンゼン環由来(水素4個分)及びフマル酸の二重結合由来(水素2個分)
ピークが5.2ppm~5.4ppm付近:ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のメチン由来(水素1個分)
ピークが4.0ppm~5.0ppm付近:脂肪族アルコールのメチレン由来(水素2個分)
ピークが3.7ppm~4.7ppm付近:ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のメチレン由来(水素2個分)及びビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のメチレン由来(水素4個分)
ピークが2.2ppm~2.6ppm付近:脂肪族ジカルボン酸のメチレン由来(水素2個分)
ピークが1.6ppm付近:ビスフェノールA及び脂肪族アルコールのメチル基由来(水素6個分)
【0222】
これらの結果から、例えば、結晶性ポリエステル樹脂が90%以上を占めるフラクションに回収された抽出物を結晶性ポリエステル樹脂として扱うことができる。同様に、非結晶性ポリエステル樹脂が90%以上を占めるフラクションに回収された抽出物を非結晶性ポリエステル樹脂として扱うことができる。
【0223】
[融点及びガラス転移点Tgの測定方法]
融点及びガラス転移点Tgは、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。具体的には、対象試料の融点、ガラス転移点は、下記手順により測定できる。
【0224】
まず、対象試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、-80℃から昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱する(昇温1回目)。その後、150℃から降温速度10℃/minにて-80℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱(昇温2回目)する。この昇温1回目、及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示差走査熱量計(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測する。
【0225】
得られるDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目におけるガラス転移点を求めることができる。また同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目におけるガラス転移点を求めることができる。
【0226】
また、得られるDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めることができる。同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めることができる。
【0227】
対象試料としてトナーを用いた際の、1回目昇温時におけるガラス転移点をTg1st、2回目昇温時におけるガラス転移点をTg2ndとする。
【0228】
また、ポリエステル樹脂等のトナーの構成成分の融点及びガラス転移点は、特に断りが無い場合、2回目昇温時における吸熱ピークトップ温度、ガラス転移点Tgを各対象試料の融点及びガラス転移点Tgとする。
【0229】
以上のように、一実施形態に係るトナーは、トナー母体粒子の表面に、スチレンアクリル樹脂を含みかつカルボキシル基を含まない樹脂(a)を有するコアと、カルボキシル基を含む樹脂(b)を有するシェルで構成されるコアシェル構造を有する有機樹脂微粒子と、カルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤とを有している。
【0230】
有機樹脂微粒子は、シェルを、カルボキシル基を含む樹脂(b)を含んで形成しているため、トナーの製造時にトナーを有機溶媒で洗浄した際、シェルの少なくとも一部が溶解し、トナー母体粒子に付着した有機樹脂微粒子の一部を脱離させることができる。また、コアは、スチレンアクリル樹脂を含みかつカルボキシル基を含まない樹脂(a)を含んで形成しているため、トナーを有機溶媒で洗浄しても、有機溶媒に溶解し難く、トナー母体粒子の表面に留まることができる。そのため、トナー母体粒子の表面には、コアで構成された有機樹脂微粒子を点在して存在させることができるため、トナーの低温定着が阻害されることを抑制して低温定着性を担保することができると共に、耐熱性を向上させることができる。
【0231】
また、アニオン系界面活性剤は、トナー母体粒子の表面に付着することでトナー中でのトナー母体粒子の分散性を高めることができる。また、アニオン系界面活性剤に含まれるカルボキシル基は負帯電性を付与する効果があり、帯電阻害を抑制することができる。そのため、トナーは、カルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤を含むことで、トナー母体粒子の良好な分散性と優れた負帯電性を付与することができる。
【0232】
よって、一実施形態に係るトナーは、トナー母体粒子の表面に、上記のコアシェル構造を有する有機樹脂微粒子と、カルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤とを有することで、優れた、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性及び帯電性を有することができる。
【0233】
一実施形態に係るトナーは、樹脂(a)及び樹脂(b)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stを、30℃~70℃とすることができる。これにより、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を保持することができるので、現像機内でのブロッキング及び感光体へのフィルミングの発生等を低減することができる。
【0234】
一実施形態に係るトナーは、有機樹脂微粒子の粒子径を10nm~100nmとすることができる。これにより、トナー母体粒子の表面への被覆割合を最適な量にすることができ、トナー表面への被覆率が高くなり過ぎないようにすることができると共に、トナー母体粒子の表面の空隙の大きさを抑えることができる。そのため、一実施形態に係るトナーは、低温定着性能及び耐熱保存性能を良好に維持することができる。
【0235】
一実施形態に係るトナーは、有機樹脂微粒子の含有量をトナーに対して0.2質量%~5質量%とすることができる。これにより、耐熱保存の効果が十分得られると共に、低温定着への阻害の増大を抑えることができる。そのため、一実施形態に係るトナーは、低温定着性能及び耐熱保存性能を良好に維持することができる。
【0236】
一実施形態に係るトナーは、アニオン系界面活性剤の酸価を100mgKOH/g~200mgKOH/gとすることができる。これにより、トナー母体粒子を、大気中の湿気による影響を受け難くして、負帯電性の効果を良好にすることができるため、トナーの帯電性を良好に維持することができる。
【0237】
一実施形態に係るトナーは、アニオン系界面活性剤としてコハク酸誘導体を用いることができる。コハク酸誘導体が備えるアルキル鎖の炭素数を自由に変えることができ、所望のアルキル鎖を有するコハク酸誘導体を得ることができるため、トナーの帯電性をより高めることができる。
【0238】
<トナーの製造方法>
一実施形態に係るトナーの製造方法は、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエステル樹脂を含み、好ましく前記結晶性ポリエステル樹脂を更に含み、更に必要に応じて、離型剤等を含む油相を、有機樹脂微粒子と、カルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤とを含む水系媒体中で分散させることにより、トナー母体粒子を造粒すると共に、その表面に有機樹脂微粒子と、カルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤とを付着させる造粒工程を含むことが好ましい。
【0239】
また、一実施形態に係るトナーの製造方法は、上記の造粒工程において、ポリエステル樹脂として、ウレタン結合及びウレア結合の少なくとも何れかを有するプレポリマーである非結晶性ポリエステル樹脂と、ウレタン結合及びウレア結合を有しない非結晶性ポリエステル樹脂とを含み、好ましくは結晶性ポリエステル樹脂を含み、更に必要に応じて、硬化剤等を含む油相を用いることがより好ましい。
【0240】
トナーの製造方法として、溶解懸濁法を用いることができる。溶解懸濁法を用いてトナーを製造する方法として、例えば、プレポリマーと硬化剤との伸長反応及び/又は架橋反応により非晶質ポリエステル樹脂を伸張しながら、トナー母体粒子を製造する方法を用いることができる。
【0241】
この溶解懸濁法を用いてトナー母体粒子を製造する方法は、水系媒体を調整する工程(水系媒体の調製工程)と、トナー材料を含有する油相を調整する工程(油相の調製工程)と、トナー材料の乳化乃至分散を行う工程(乳化乃至分散工程)と、有機溶媒の除去を行う工程(有機溶媒の除去工程)とを含む。
【0242】
(水系媒体の調製工程)
水系媒体(水相)は、例えば、樹脂粒子と、有機樹脂微粒子と、カルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤とを水系媒体に分散させることにより調製することができる。樹脂粒子の水系媒体中の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水系媒体100質量部に対して、0.5質量部~10質量部が好ましい。
【0243】
水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
【0244】
水と混和可能な溶媒としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、低級ケトン類、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類等が挙げられる。アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。低級ケトン類としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0245】
(油相の調製工程)
トナー材料を含有する油相は、結晶性ポリエステル樹脂と、ウレタン結合及びウレア結合の少なくとも何れかを有するプレポリマーである非結晶性ポリエステル樹脂と、ウレタン結合及びウレア結合を有しない非結晶性ポリエステル樹脂とを少なくとも含み、更に必要に応じて、硬化剤、離型剤、着色剤等を含むトナー材料を、有機溶媒中に溶解乃至分散させることにより、調製することができる。
【0246】
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
【0247】
沸点が150℃未満の有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0248】
これらの中でも、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0249】
(乳化乃至分散工程)
トナー材料を含有する油相を、水系媒体中に分散させることにより、トナー材料を乳化乃至分散させることができる。このとき、トナー母体粒子の表面に有機樹脂微粒子を配置すると共に、トナー母体粒子の表面にカルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤を結合させて配置することができる。
【0250】
また、トナー材料を乳化乃至分散させる際に、硬化剤とプレポリマーとを伸長反応及び/又は架橋反応させることにより、非晶質ポリエステル樹脂が生成する。
【0251】
プレポリマーを生成させるための反応条件(反応時間、反応温度)としては、特に制限はなく、硬化剤と、プレポリマーとの組み合わせに応じて、適宜選択することができる。
【0252】
反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間~40時間が好ましく、2時間~24時間がより好ましい。
【0253】
反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。
【0254】
水系媒体中において、プレポリマーを含有する分散液を安定に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水系媒体相中に、トナー材料を溶媒に溶解乃至分散させて調製した油相を添加し、せん断力により分散させる方法等が挙げられる。
【0255】
分散のための分散機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機等が挙げられる。
【0256】
これらの中でも、分散体(油滴)の粒子径を2μm~20μmに制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。
【0257】
高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。
【0258】
回転数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000rpm~30,000rpmが好ましく、5,000rpm~20,000rpmがより好ましい。
【0259】
分散時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、バッチ方式の場合、0.1分間~5分間が好ましい。
【0260】
分散温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加圧下において、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。なお、一般に、分散温度が高温である方が分散は容易である。
【0261】
トナー材料を乳化乃至分散させる際の、水系媒体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対して、50質量部~2,000質量部が好ましく、100質量部~1,000質量部がより好ましい。水系媒体の使用量が、50質量部未満であると、トナー材料の分散状態が悪くなって、所定の粒子径のトナー母体粒子が得られないことがある。水系媒体の使用量が、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
【0262】
トナー材料を含有する油相を乳化乃至分散する際には、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にすると共に粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
【0263】
分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0264】
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
【0265】
陰イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0266】
(有機溶媒の除去工程)
乳化スラリー等の分散液から有機溶媒を除去することにより、トナー母体粒子を得る。分散液から有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を除去する方法等が挙げられる。
【0267】
有機溶媒が除去されると、トナー母体粒子が形成される。トナー母体粒子に対しては、洗浄、乾燥等を行うことができ、さらに分級等を行うことができる。前記分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
【0268】
(外添工程)
また、得られたトナー母体粒子に、外添剤、帯電制御剤等を混合してもよい。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、トナー母体粒子の表面から外添剤等の粒子が脱離するのを抑制することができる。
【0269】
機械的衝撃力を印加する方法は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入して加速させ、粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法等が挙げられる。
【0270】
機械的衝撃力を印加する方法に用いる装置は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢等が挙げられる。
【0271】
次いで、250メッシュ以上の篩を通過させて、粗大粒子、凝集粒子を除去することにより、一実施形態に係るトナーが得られる。
【0272】
<現像剤>
一実施形態に係る現像剤は、一実施形態に係るトナーを含み、必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含むことができる。これにより、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定に形成することができる。
【0273】
現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上の点から、二成分現像剤であることが好ましい。
【0274】
一実施形態に係るトナーを一成分現像剤として用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0275】
一実施形態に係る現像剤を二成分現像剤に用いる場合には、キャリアと混合して現像剤として用いることができる。一実施形態に係るトナーを二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0276】
二成分現像剤中のキャリアの含有量は、目的に応じて適宜選択することができるが、二成分現像剤100質量部に対して、90質量部~98質量部が好ましく、93質量部~97質量部がより好ましい。
【0277】
一実施形態に係る現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0278】
[キャリア]
キャリアは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層(被覆層)とを有するものであることが好ましい。
【0279】
(芯材)
芯材の材料は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50emu/g~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、50emu/g~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料等が挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75emu/g~120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30emu/g~80emu/gの銅-亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0280】
芯材の体積平均粒径は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm~150μmが好ましく、40μm~100μmがより好ましい。体積平均粒径が10μm以上であれば、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることがあるという問題を有効に防止できる。一方、150μm以下であれば、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがあるという問題を有効に防止することができる。
【0281】
(樹脂層)
樹脂層は、樹脂及び必要に応じてその他の成分を含有することができる。樹脂層に用いられる樹脂としては、必要な帯電性を付与できる公知の材料を使用できる。具体的にはシリコーン樹脂、アクリル樹脂、またはこれらを併用して使用することが好ましい。また樹脂層を形成するための組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0282】
樹脂層の平均膜厚は、0.05~0.50μmであることが好ましい。
【0283】
<現像剤収容容器>
一実施形態に係る現像剤収容容器は、一実施形態に係る現像剤を収容している。現像剤収容容器としては、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択することができるが、容器本体とキャップを有するもの等が挙げられる。
【0284】
また、容器本体の大きさ、形状、構造、材質等は、特に限定されないが、形状は、円筒状等であることが好ましく、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより、内容物である現像剤が排出口側に移行することが可能であり、スパイラル状の凹凸の一部又は全てが蛇腹機能を有することが特に好ましい。さらに、材質は、特に限定されないが、寸法精度がよいものであることが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0285】
現像剤収容容器は、保存、搬送等が容易であり、取扱性に優れるため、後述する画像形成装置、プロセスカートリッジ等に着脱可能に取り付け、現像剤の補給に使用することができる。
【0286】
<トナー収容ユニット>
一実施形態に係るトナー収容ユニットは、一実施形態に係るトナーを収容することができる。一実施形態に係るトナー収容ユニットとは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものをいう。ここで、トナー収容ユニットの態様としては、例えば、トナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジが挙げられる。
【0287】
トナー収容容器とは、トナーを収容した容器をいう。
【0288】
現像器は、トナーを収容し現像する手段を有するものをいう。
【0289】
プロセスカートリッジとは、少なくとも静電潜像担持体(像担持体ともいう)と現像手段とを一体とし、トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に帯電手段、露光手段、クリーニング手段等から選ばれる少なくとも一つを備えてもよい。
【0290】
一実施形態に係るトナー収容ユニットには、一実施形態に係るトナーが収容される。一実施形態に係るトナー収容ユニットを、画像形成装置に装着して画像形成することで、一実施形態に係るトナーを用いて画像形成が行われるため、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性及び帯電性に優れたトナーを得ることができる。
【0291】
<画像形成装置>
一実施形態に係る画像形成装置は、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成部と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像をトナーを用いて現像してトナー像を形成する現像部とを有し、更に必要に応じて、その他の構成を有することができる。
【0292】
一実施形態に係る画像形成装置は、より好ましくは、上記の、静電潜像担持体、静電潜像形成部及び現像部の他に、前記トナー像を記録媒体に転写する転写部と、前記記録媒体の表面に転写された転写像を定着させる定着部とを備える。
【0293】
前記現像部において、一実施形態に係るトナーが使用される。好ましくは、一実施形態に係るトナーを含有し、更に必要に応じて、キャリア等のその他の成分が含有された現像剤を用いることにより、トナー像を形成してもよい。
【0294】
(静電潜像担持体)
静電潜像担持体(「電子写真感光体」、「感光体」と称することがある)の材質、形状、構造、大きさ等としては、特に制限されず、公知のものの中から適宜選択することができる。静電潜像担持体の材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)等が挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点で、アモルファスシリコンが好ましい。
【0295】
アモルファスシリコン感光体としては、例えば、支持体を50℃~400℃に加熱し、支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD(化学気相成長、Chemical Vapor Deposition)法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法によりa-Siからなる光導電層を有する感光体を用いることができる。これらの中でも、プラズマCVD法、即ち、原料ガスを直流又は高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa-Si堆積膜を形成する方法が好適である。
【0296】
静電潜像担持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、円筒状が好ましい。円筒状の静電潜像担持体の外径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3mm~100mmが好ましく、5mm~50mmがより好ましく、10mm~30mmが特に好ましい。
【0297】
(静電潜像形成部)
静電潜像形成部としては、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。静電潜像形成部は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電部材(帯電器)と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光部材(露光器)とを備える。
【0298】
帯電器としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。
【0299】
帯電器の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等どのような形態をとってもよく、画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。
【0300】
帯電器としては、静電潜像担持体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。また、帯電器が、静電潜像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
【0301】
帯電器としては、接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られる点から、接触式の帯電部材を用いることが好ましい。
【0302】
露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、等の各種露光器が挙げられる。
【0303】
露光器に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般等が挙げられる。
【0304】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0305】
なお、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0306】
(現像部)
現像部は、静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成できれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。現像部は、例えば、トナーを収容し、静電潜像にトナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を備えるものを好適に用いることができ、トナー入り容器を備えた現像器等が好ましい。
【0307】
現像器は、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。現像器として、例えば、トナーを摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、内部に固定された磁界発生部とを有し、表面にトナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体を有する現像装置が好ましい。
【0308】
(転写部)
転写部としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写部と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写部とを有する態様が好ましい。なお、中間転写体としては、特に制限されず、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0309】
転写部(第一次転写手段及び第二次転写部)は、静電潜像担持体(感光体)上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写部は1つであってもよいし、2以上であってもよい。
【0310】
転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、等が挙げられる。
【0311】
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0312】
(定着部)
定着部としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧部が好適である。加熱加圧部としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ等が挙げられる。
【0313】
定着部は、発熱体を具備する加熱体と、加熱体と接触するフィルムと、フィルムを介して加熱体と圧接する加圧部材とを有し、フィルムと加圧部材の間に未定着画像を形成させた記録媒体を通過させて加熱定着できる加熱加圧部であることが好ましい。
【0314】
加熱加圧部における加熱は、通常、80℃~200℃が好ましい。
【0315】
加熱加圧部における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm~80N/cmであることが好ましい。
【0316】
なお、本実施形態においては、目的に応じて、定着部と共に又はこれに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0317】
(その他)
一次形態に係る画像形成装置は、その他、例えば、除電部、リサイクル部、制御部等を備えることができる。
【0318】
((除電部))
除電部としては、特に制限されず、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0319】
((クリーニング部))
クリーニング部は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができる。クリーニング部として、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が挙げられる。
【0320】
一次形態に係る画像形成装置は、クリーニング部を有することにより、クリーニング性を向上させることができる。すなわち、トナー間付着力を制御することにより、トナーの流動性が制御され、クリーニング性を向上させることができる。また、劣化後のトナーの特性を制御することにより、高寿命化や高温多湿等の過酷な条件下においても、優れたクリーニング品質を維持することができる。さらに、感光体上におけるトナーから外添剤を十分に遊離させることができるため、クリーニングブレードニップ部における外添剤の堆積層(ダム層)を形成することにより、高いクリーニング性を達成することができる。
【0321】
((リサイクル部))
リサイクル部としては、特に制限されず、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0322】
((制御部))
制御部は、上記の各部の動きを制御することができる。制御部としては、上記の各部の動きを制御できれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の制御機器が挙げられる。
【0323】
一実施形態に係る画像形成装置は、一実施形態に係るトナーを用いて画像形成を行うことができるため、消費電力を抑えることができると共に、高画質な画像を安定して提供することができる。
【0324】
<画像形成方法>
一実施形態に係る画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程とを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含むことができる。前記画像形成方法は、前記画像形成装置により好適に行うことができ、前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成部により好適に行うことができ、前記現像工程は、前記現像部により好適に行うことができ、前記その他の工程は、前記その他の部により好適に行うことができる。
【0325】
また、一実施形態に係る画像形成方法は、より好ましくは、上記の、静電潜像形成工程及び現像工程の他に、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体の表面に転写された転写像を定着する定着工程とを含む。
【0326】
現像工程において、一実施形態に係るトナーが使用される。好ましくは、一実施形態に係るトナーを含有し、更に必要に応じて、キャリア等のその他の成分が含有された現像剤を用いることにより、トナー像を形成してもよい。
【0327】
静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程であり、静電潜像担持体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程とを含む。帯電は、例えば、帯電器を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。露光は、例えば、前記露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。静電潜像の形成は、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成部により行うことができる。
【0328】
現像工程は、静電潜像を複数色のトナーにより順次現像して可視像を形成する工程である。可視像の形成は、例えば、静電潜像を前記トナーを用いて現像することにより行うことができ、現像器により行うことができる。
【0329】
現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて静電潜像担持体(感光体)の表面にトナーによる可視像が形成される。
【0330】
転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程である。転写工程は、中間転写体を用い、中間転写体上に可視像を一次転写した後、可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。転写工程は、二色以上のトナー、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。転写は、例えば、可視像を転写帯電器を用いて静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、転写部により行うことができる。
【0331】
定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色の現像剤に対し記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色の現像剤に対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0332】
一次形態に係る画像形成方法は、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程等を含むことができる。
【0333】
除電工程は、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電部により好適に行うことができる。
【0334】
クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留する前記トナーを除去する工程であり、クリーニング部により好適に行うことができる。
【0335】
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像部にリサイクルさせる工程であり、リサイクル部により好適に行うことができる。
【0336】
一実施形態に係る画像形成方法は、一実施形態に係るトナーを用いて画像形成を行うことができるため、消費電力を抑えることができると共に、高画質な画像を安定して提供することができる。
【0337】
[画像形成装置の一態様]
次に、一実施形態に係る画像形成装置の一の態様について、図1を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、画像形成装置1Aは、静電潜像担持体である感光体ドラム10と、帯電部である帯電ローラ20と、露光部である露光装置30と、現像部である現像装置40と、中間転写体(中間転写ベルト)50と、クリーニング部であるクリーニング装置60と、転写部である転写ローラ70と、除電部である除電ランプ80と、中間転写体クリーニング装置90とを備える。
【0338】
中間転写体50は、内側に配置されている3個のローラ51で張架されている無端ベルトであり、3個のローラ51によって、矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50の近傍には、中間転写体クリーニング装置90が配置されている。さらに、中間転写体50の近傍に、転写ローラ70が中間転写体50に対向して配置され、記録媒体としての転写紙Pに現像像(トナー画像)を転写(二次転写)するための転写バイアス(二次転写バイアス)を印加することができる。中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー画像に電荷を付与するためのコロナ帯電器52が、中間転写体50の回転方向に対して、感光体ドラム10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と転写紙Pとの接触部との間に配置されている。
【0339】
現像装置40は、現像剤担持体である現像ベルト41と、現像ベルト41の周囲に併設したブラック(Bk)現像ユニット42K、イエロー(Y)現像ユニット42Y、マゼンタ(M)現像ユニット42M、及びシアン(C)現像ユニット42Cとから構成されている。
【0340】
現像ベルト41は、複数のベルトローラで張架されている無端ベルトであり、図中、矢印方向に移動することができる。さらに、現像ベルト41の一部が感光体ドラム10と接触している。
【0341】
ブラック現像ユニット42Kは、現像剤収容部421Kと現像剤供給ローラ422Kと現像ローラ(現像剤担持体)423Kとを備えている。イエロー現像ユニット42Yは、現像剤収容部421Yと現像剤供給ローラ422Yと現像ローラ423Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット42Mは、現像剤収容部421Mと現像剤供給ローラ422Mと現像ローラ423Mとを備えている。シアン現像ユニット42Cは、現像剤収容部421Cと現像剤供給ローラ422Cと現像ローラ423Cとを備えている。
【0342】
次に、画像形成装置1を用いて画像を形成する方法について説明する。まず、帯電ローラ20を用いて、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させた後、露光装置30を用いて、感光体ドラム10に露光光Lを露光し、静電潜像を形成する。次に、感光体ドラム10上に形成された静電潜像を、現像装置40から供給されたトナーで現像してトナー像を形成する。さらに、感光体ドラム10上に形成されたトナー像が、ローラ51から印加された転写バイアスにより、中間転写体50上に転写(一次転写)された後、転写ローラ70から印加された転写バイアスにより、不図示の給紙部によって給紙された転写紙P上に転写(二次転写)される。一方、トナー像が中間転写体50に転写された感光体ドラム10は、表面に残留したトナーがクリーニング装置60により除去された後、除電ランプ80により除電される。画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置90によって除去される。
【0343】
転写工程終了後、転写紙Pは定着ユニットに搬送されて、この定着ユニットで、上記転写されたトナー像は転写紙Pに定着される。
【0344】
図2は、一実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。図2に示すように、画像形成装置1Bは、図1に示す画像形成装置1Aにおいて、現像ベルト41を設けずに、感光体ドラム10の周囲に、ブラック現像ユニット42K、イエロー現像ユニット42Y、マゼンタ現像ユニット42M及びシアン現像ユニット42Cが直接対向して配置されている以外は、画像形成装置1Aと同様の構成を有する。
【0345】
図3は、一実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。図3に示すように、画像形成装置1Cは、タンデム型カラー画像形成装置であり、複写装置本体110と、給紙テーブル120と、スキャナ130と、原稿自動搬送装置(ADF)140と、二次転写装置150と、定着部である定着装置160と、シート反転装置170を備えている。
【0346】
複写装置本体110の中央部には、無端ベルト状の中間転写体50が設けられている。中間転写体50は、3個のローラ53A、53B及び53Cに張架されている無端ベルトであり、図3中、矢印方向に移動することができる。ローラ53Bの近傍には、トナー像が記録紙に転写された中間転写体50上に残留したトナーを除去するための中間転写体クリーニング装置90が配置されている。ローラ53A及び53Bにより張架された中間転写体50に対向すると共に、搬送方向に沿って、画像形成ユニット(イエロー(Y)現像ユニット42Y、シアン(C)現像ユニット42C、マゼンタ(M)現像ユニット42M及びブラック(Bk)現像ユニット42K)が配置されている。
【0347】
また、前記画像形成ユニットの近傍には、露光装置30が配置されている。さらに、中間転写体50の前記画像形成ユニットが配置された側とは反対側には、二次転写装置150が配置されている。二次転写装置150は、二次転写ベルト151を備える。なお、二次転写ベルト151は、一対のローラ152に張架されている無端ベルトであり、二次転写ベルト151上を搬送される記録紙と中間転写体50は、ローラ53Cとローラ152との間で接触することができる。
【0348】
また、二次転写ベルト151の近傍には、定着装置160が配置されている。定着装置160は、一対のローラに張架されている無端ベルトである定着ベルト161と、定着ベルト161に押圧されて配置された加圧ローラ162とを備えている。
【0349】
また、二次転写ベルト151及び定着装置160の近傍に、記録紙の両面に画像を形成する場合に、記録紙を反転させるためのシート反転装置170が配置されている。
【0350】
次に、画像形成装置1Cを用いて、フルカラー画像を形成する方法について説明する。ます、原稿自動搬送装置(ADF)140の原稿台141上にカラー原稿をセットするか、原稿自動搬送装置140を開いてスキャナ130のコンタクトガラス131上にカラー原稿をセットし、原稿自動搬送装置140を閉じる。
【0351】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置140にカラー原稿をセットした時は、カラー原稿が搬送されてコンタクトガラス131上へと移動された後で、スキャナ130が駆動し、光源を備える第1走行体132及び第2走行体133が走行する。一方、コンタクトガラス131上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ130が駆動して、光源を備える第1走行体132及び第2走行体133が走行する。このとき、第1走行体132から照射された光の原稿面からの反射光を第2走行体133のミラーで反射した後、結像レンズ135を通して読取りセンサ136で受光することにより、カラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報が得られる。
【0352】
各色の画像情報は、各色の現像ユニット(イエロー現像ユニット42Y、シアン現像ユニット42C、マゼンタ現像ユニット42M及びブラック現像ユニット42K)にそれぞれ伝達され、各色のトナー像が形成される。
【0353】
図4は、図3の画像形成装置の部分拡大図である。図4に示すように、各現像ユニット(イエロー現像ユニット42Y、シアン現像ユニット42C、マゼンタ現像ユニット42M及びブラック現像ユニット42K)は、それぞれ、感光体ドラム10(ブラック用静感光体ドラム10K、イエロー用感光体ドラム10Y、マゼンタ用感光体ドラム10M、及びシアン用感光体ドラム10C)と、静電潜像担持体10を一様に帯電させる帯電部である帯電ローラ20と、各色の画像情報に基づいて、感光体ドラム10に露光光Lを露光し、感光体ドラム10上に各色の静電潜像を形成する露光装置30と、静電潜像を各色の現像剤で現像して各色のトナー像を形成する現像部である現像装置40と、トナー像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置60と、除電ランプ80とを備える。
【0354】
各色の現像ユニット(イエロー現像ユニット42Y、シアン現像ユニット42C、マゼンタ現像ユニット42M及びブラック現像ユニット42K)で形成された各色のトナー像は、ローラ53A、53B及び53Cに張架されて移動する中間転写体50上に順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に各色のトナー像が重ね合わされて、複合トナー像が形成される。
【0355】
一方、給紙テーブル120においては、給紙ローラ121の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク122に多段に備える給紙カセット123の1つから記録紙を繰り出す。記録紙は、分離ローラ124で1枚ずつ分離されて給紙路125に送出され、搬送ローラ126で搬送されて複写装置本体110内の給紙路111に導かれ、レジストローラ112に突き当てて止められる。または、手差しローラ113を回転して手差しトレイ114上の記録紙を繰り出し、手差しローラ113で1枚ずつ分離して手差し給紙路115に導き、レジストローラ112に突き当てて止める。
【0356】
なお、レジストローラ112は、一般には接地されて使用されるが、記録紙の紙粉を除去するためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。
【0357】
次に、中間転写体50上に形成された複合トナー像にタイミングを合わせてレジストローラ112を回転させ、中間転写体50と二次転写ベルト151との間に記録紙を送出させ、複合トナー像を記録紙上に転写(二次転写)する。なお、複合トナー像を転写した中間転写体50上に残留したトナーは、中間転写体クリーニング装置90により除去される。
【0358】
複合トナー像が転写された記録紙は、二次転写ベルト151により搬送された後、定着装置160により複合トナー像が記録紙上に定着される。
【0359】
その後、記録紙は、切換爪116により搬送経路が切り換えられ、排出ローラ117により排紙トレイ118上に排出される。または、記録紙は、切換爪116により搬送経路が切り換えられ、シート反転装置170により反転され、再度、二次転写ベルト151にと導かれ、裏面にも同様にして画像が形成された後、排出ローラ117により排紙トレイ118上に排出される。
【0360】
<プロセスカートリッジ>
一実施形態に係るプロセスカートリッジは、各種画像形成装置に着脱可能に成型されており、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に担持された静電潜像を上記の一実施形態に係る現像剤で現像してトナー像を形成する現像部とを有し、必要に応じて、その他の構成を有してもよい。
【0361】
静電潜像担持体は、上記の画像形成装置の静電潜像担持体と同様であるため、詳細は省略する。
【0362】
現像部は、一実施形態に係る現像剤を収容する現像剤収容容器と、現像剤収容容器内に収容された現像剤を担持すると共に搬送する現像剤担持体とを有する。なお、現像部は、担持する現像剤の厚さを規制するため、規制部材等をさらに有してもよい。
【0363】
図5に、一実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す。図5に示すように、画像形成装置プロセスカートリッジ200は、感光体ドラム10、帯電部であるコロナ帯電器22、現像装置40、クリーニング装置60及び転写ローラ70を有する。
【実施例
【0364】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0365】
<界面活性剤1の調整>
スルホコハク酸ドデシル二ナトリウム(三洋化成工業社製、ビューライトSSS)200質量部に塩酸をpH3.0になるまで投入した後、30分攪拌した。その後、吸引ろ過にてろ液を回収し、イオン交換水で固形分を30%に調整して、界面活性剤1を得た。
【0366】
得られた界面活性剤1を液体クロマトグラフィーシステム(AQUITY-UPLC/SQDシステム、日本ウォーターズ社製)を用いて、MS検出器のピークからカルボキシル基を有するアニオン系界面活性剤が得られていることを確認した。また、酸価は、電位差自動滴定装置(DL-53 Titrator、メトラー・トレド社製)を用いて測定した結果、酸価140mgKOH/gであった。
【0367】
<界面活性剤2の調整>
スルホコハク酸オクチル(花王社製、ペレックスOT-P)200質量部に塩酸をpH5.0になるまで投入した後、30分攪拌した。その後、吸引ろ過にてろ液を回収し、イオン交換水で固形分を30%に調整して、界面活性剤2を得た。
【0368】
得られた界面活性剤2を液体クロマトグラフィーシステム(AQUITY-UPLC/SQDシステム、日本ウォーターズ社製)を用いて、MS検出器のピークからカルボキシル基を有するアニオン系界面活性剤が得られていることを確認した。また、酸価は、電位差自動滴定装置(DL-53 Titrator、メトラー・トレド社製)を用いて測定した結果、170mgKOH/gであった。
【0369】
<界面活性剤3の調整>
マレイン酸とペンタノールを等モル反応させた後、亜硫酸ナトリウムをマレイン酸と等モル反応させた。塩酸をpH5.0になるまで投入した後、30分攪拌した。その後、吸引ろ過にてろ液を回収し、イオン交換水で固形分を30%に調整して、界面活性剤3を得た。
【0370】
得られた界面活性剤3を液体クロマトグラフィーシステム(AQUITY-UPLC/SQDシステム、日本ウォーターズ社製)を用いて、MS検出器のピークからカルボキシル基を有するアニオン系界面活性剤が得られていることを確認した。また、酸価は、電位差自動滴定装置(DL-53 Titrator、メトラー・トレド社製)を用いて測定した結果、190mgKOH/gであった。
【0371】
<界面活性剤4の調整>
マレイン酸とペンタデカノールを等モル反応させた後、亜硫酸ナトリウムをマレイン酸と等モル反応させた。塩酸をpH5.0になるまで投入した後、30分攪拌した。その後、吸引ろ過にてろ液を回収し、イオン交換水で固形分を30%に調整して、界面活性剤4を得た。
【0372】
得られた界面活性剤4を液体クロマトグラフィーシステム(AQUITY-UPLC/SQDシステム、日本ウォーターズ社製)を用いて、MS検出器のピークからカルボキシル基を有するアニオン系界面活性剤が得られていることを確認した。また、酸価は、電位差自動滴定装置(DL-53 Titrator、メトラー・トレド社製)で測定した結果、110mgKOH/gであった。
【0373】
界面活性剤1~界面活性剤4のそれぞれの酸価を表1に示す。
【0374】
【表1】
【0375】
<有機樹脂微粒子製造例1>
〔有機樹脂微粒子(A-1S)を含む微粒子分散液(W-01)の製造〕
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬社製、アクアロンKH-1025)200質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、混合液に、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン450質量部、ブチルアクリレート250質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(b)からなる有機樹脂微粒子(A-1S)を含む微粒子分散液(W-01)を得た。微粒子分散液(W-01)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0376】
微粒子分散液(W-01)中の有機樹脂微粒子(A-1S)の体積平均粒径は15.0nmであった。また、微粒子分散液(W-01)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-1S)を単離した。有機樹脂微粒子(A-1S)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。有機樹脂微粒子(A-1S)の、体積平均粒径、ガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0377】
<有機樹脂微粒子製造例2>
[有機樹脂微粒子(A-1)を含む微粒子分散液(W-1)の製造]
次に、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-01)を667質量部、水248質量部を仕込んだ。ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えた後、混合液を加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部、及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-01)中の有機樹脂微粒子(A-1S)をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-1C)と樹脂(b)(A-1S)とを同一粒子内に構成成分として含む有機樹脂微粒子(A-1)を含む微粒子分散液(W-1)を得た。微粒子分散液(W-1)はポリマー純分が20%となるように調整した。
【0378】
有機樹脂微粒子(A-1)の体積平均粒径は、17.3nmであった。体積平均粒径は、レーザードップラー粒度分布測定装置(nanotrac UPA-150EX、日機装株式会社製)を用いて測定した。
【0379】
また、微粒子分散液(W-1)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(a)(A-1C)を単離した。樹脂(a)(A-1C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、53℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0380】
微粒子分散液(W-1)が有機樹脂微粒子(A-1)を含むことを、上記の<有機樹脂微粒子製造例1>と同様に、微粒子分散液(W-1)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-1)を単離することにより確認した。
【0381】
有機樹脂微粒子(A-1)の体積平均粒径、樹脂(a)(A-1C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0382】
<有機樹脂微粒子製造例3>
[樹脂微粒子(A-2S)を含む微粒子分散液(W-02)の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3760質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬製、アクアロンKH-1025)150質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、混合液に、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン430質量部、ブチルアクリレート270質量部及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(b)からなる有機樹脂微粒子(A-2S)を含む微粒子分散液(W-02)を得た。微粒子分散液(W-02)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0383】
微粒子分散液(W-02)中の有機樹脂微粒子(A-2S)の体積平均粒径は、30.0nmであった。また、微粒子分散液(W-02)の一部を乾燥して、有機樹脂微粒子(A-2S)を単離した。有機樹脂微粒子(A-2S)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。有機樹脂微粒子(A-2S)の、体積平均粒径、ガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0384】
<有機樹脂微粒子製造例4>
[樹脂微粒子(A-2)を含む微粒子分散液(W-2)の製造]
次に、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-02)を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-02)中の有機樹脂微粒子(A-2S)をシードとして、スチレン及びブチルアクリレート及びアスコルビン酸水溶液が共重合したポリマーである樹脂(a)(A-2C)と樹脂(b)(A-2S)とを同一粒子内に構成成分として含有する樹脂微粒子(A-2)を含む微粒子分散液(W-2)を得た。微粒子分散液(W-2)はポリマー純分が20%となるように調整した。
【0385】
有機樹脂微粒子(A-2)の体積平均粒径は、34.3nmであった。体積平均粒径は、上記の有機樹脂微粒子(A-1)と同様に測定した。
【0386】
また、微粒子分散液(W-2)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(a)(A-2C)を単離した。樹脂(a)(A-2C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、53℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0387】
微粒子分散液(W-2)が有機樹脂微粒子(A-2)を含むことを、上記の<有機樹脂微粒子製造例1>と同様に、微粒子分散液(W-2)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-2)を単離することにより確認した。
【0388】
有機樹脂微粒子(A-2)の体積平均粒径、樹脂(a)(A-2C)のガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0389】
<有機樹脂微粒子製造5>
[樹脂微粒子(A-3S)を含む微粒子分散液(W-03)の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3810質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬製、アクアロンKH-1025)100質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン400質量部、ブチルアクリレート300質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(b)からなる有機樹脂微粒子(A-3S)を含む微粒子分散液(W-03)を得た。微粒子分散液(W-03)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0390】
微粒子分散液(W-03)中の有機樹脂微粒子(A-3S)の体積平均粒径は45.0nmであった。また、微粒子分散液(W-03)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-3S)を単離した。有機樹脂微粒子(A-3S)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。有機樹脂微粒子(A-3S)の、体積平均粒径、ガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0391】
<有機樹脂微粒子製造例6>
[樹脂微粒子(A-3)を含む微粒子分散液(W-3)の製造]
次に、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-03)を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-03)中の有機樹脂微粒子(A-3S)をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-3C)と樹脂(b)(A-3S)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-3)を含む微粒子分散液(W-3)を得た。微粒子分散液(W-3)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0392】
有機樹脂微粒子(A-3)の体積平均粒径は、51.5nmであった。体積平均粒径は、上記の有機樹脂微粒子(A-1)と同様に測定した。
【0393】
また、微粒子分散液(W-3)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(a)(A-3C)を単離した。樹脂(a)(A-3C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、53℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0394】
微粒子分散液(W-3)が有機樹脂微粒子(A-3)を含むことを、上記の<有機樹脂微粒子製造例1>と同様に、微粒子分散液(W-3)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-3)を単離することにより確認した。
【0395】
有機樹脂微粒子(A-3)の体積平均粒径、樹脂(a)(A-3C)のガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0396】
<有機樹脂微粒子製造例7>
[有機樹脂微粒子(A-4S)を含む水性分散液(W-04)の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬製、アクアロンKH-1025)300質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を 加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン450質量部、ブチルアクリレート250質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(b)からなる有機樹脂微粒子(A-4S)を含む微粒子分散液(W-04)を得た。微粒子分散液(W-04)はポリマー純分が20%となるように調整した。
【0397】
微粒子分散液(W-04)中の有機樹脂微粒子(A-4S)の体積平均粒径は、8.0nmであった。また、微粒子分散液(W-04)の一部を乾燥して、有機樹脂微粒子(A-4S)を単離した。有機樹脂微粒子(A-4S)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。有機樹脂微粒子(A-4S)の、体積平均粒径、ガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0398】
<有機樹脂微粒子製造例8>
[有機樹脂微粒子(A-4)を含む微粒子分散液(W-4)の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-04)を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで(W-01)中の微粒子をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-4C)と樹脂(b)(A-4S)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-4)を含む微粒子分散液(W-4)を得た。微粒子分散液(W-4)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0399】
樹脂微粒子(A-4)の体積平均粒径は、10.0nmであった。体積平均粒径は、上記の有機樹脂微粒子(A-1)と同様に測定した。
【0400】
また、微粒子分散液(W-4)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(a)(A-4C)を単離した。樹脂(a)(A-4C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、53℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0401】
微粒子分散液(W-4)が有機樹脂微粒子(A-4)を含むことを、上記の<有機樹脂微粒子製造例1>と同様に、微粒子分散液(W-4)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-4)を単離することにより確認した。
【0402】
有機樹脂微粒子(A-4)の体積平均粒径、樹脂(a)(A-4C)のガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0403】
<有機樹脂微粒子製造例9>
[有機樹脂微粒子(A-5S)を含む微粒子分散液(W-05)の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬製、アクアロンKH-1025)50質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、混合液に、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン450質量部、ブチルアクリレート250質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(b)からなる有機樹脂微粒子(A-5S)を含む微粒子分散液(W-05)を得た。微粒子分散液(W-05)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0404】
微粒子分散液(W-05)中の有機樹脂微粒子(A-5S)の体積平均粒径は、88.0nmであった。また、微粒子分散液(W-05)の一部を乾燥して、有機樹脂微粒子(A-5S)を単離した。有機樹脂微粒子(A-5S)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。有機樹脂微粒子(A-5S)の、体積平均粒径、ガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0405】
<有機樹脂微粒子製造例10>
[有機樹脂微粒子(A-5)を含む微粒子分散液(W-5)の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-05)を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-01)中の微粒子をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-5C)と樹脂(b)(A-4S)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-5)を含む微粒子分散液(W-5)を得た。微粒子分散液(W-5)はポリマー純分が20%となるように調整した。
【0406】
樹脂微粒子(A-5)の体積平均粒径は、100.0nmであった。体積平均粒径は、上記の有機樹脂微粒子(A-1)と同様に測定した。
【0407】
また、微粒子分散液(W-5)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(a)(A-5C)を単離した。樹脂(a)(A-5C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、53℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0408】
微粒子分散液(W-5)が有機樹脂微粒子(A-5)を含むことを、上記の<有機樹脂微粒子製造例1>と同様に、微粒子分散液(W-5)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-5)を単離することにより確認した。
【0409】
有機樹脂微粒子(A-5)の体積平均粒径、樹脂(a)(A-5C)のガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0410】
<有機樹脂微粒子製造例11>
[有機樹脂微粒子(A-6)を含む微粒子分散液(W-6)の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-01)を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン23.3質量部、ブチルアクリレート43.3質量部及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-01)中の微粒子をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-6C)と樹脂(b)(A-1S)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(A-6)を含む微粒子分散液(W-6)を得た。微粒子分散液(W-6)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0411】
樹脂微粒子(A-6)の体積平均粒径は17.0nmであった。体積平均粒径は、上記の有機樹脂微粒子(A-1)と同様に測定した。
【0412】
また、微粒子分散液(W-6)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(a)(A-6C)を単離した。樹脂(a)(A-6C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは30℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0413】
微粒子分散液(W-6)が樹脂微粒子(A-6)を含むことを、上記の<有機樹脂微粒子製造例1>と同様に、微粒子分散液(W-6)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-6)を単離することにより確認した。
【0414】
有機樹脂微粒子(A-6)の体積平均粒径、樹脂(a)(A-6C)のガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0415】
<有機樹脂微粒子製造例12>
[有機樹脂微粒子(A-7)を含む微粒子分散液(W-7)の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-01)を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、スチレン53.3質量部、ブチルアクリレート13.3質量部及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-01)中の微粒子をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-7C)と樹脂(b)(A-1S)とを同一粒子内に構成成分として含む有機樹脂微粒子(A-7)を含む微粒子分散液(W-7)を得た。微粒子分散液(W-7)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0416】
樹脂微粒子(A-7)の体積平均粒径は、17.0nmであった。体積平均粒径は、上記の有機樹脂微粒子(A-1)と同様に測定した。
【0417】
また、微粒子分散液(W-7)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(a)(A-7C)を単離した。樹脂樹脂(a)(A-7C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、70℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0418】
微粒子分散液(W-7)が有機樹脂微粒子(A-7)を含むことを、上記の<有機樹脂微粒子製造例1>と同様に、微粒子分散液(W-7)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-5)を単離することにより確認した。
【0419】
有機樹脂微粒子(A-7)の体積平均粒径、樹脂(a)(A-7C)のガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0420】
<有機樹脂微粒子製造例13>
[有機樹脂微粒子(A-8)を含む微粒子分散液(W-8)の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-01)を667質量部、水57質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.06質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン9.6質量部、ブチルアクリレート5.2質量部、及び1質量%アスコルビン酸水溶液4質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-01)中の微粒子をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-8C)と樹脂(b)(A-1S)とを同一粒子内に構成成分として含有する有機樹脂微粒子(A-8)を含む微粒子分散液(W-8)を得た。微粒子分散液(W-8)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0421】
樹脂微粒子(A-8)の体積平均粒径は15.0nmであった。体積平均粒径は、上記の有機樹脂微粒子(A-1)と同様に測定した。
【0422】
また、微粒子分散液(W-8)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(a)(A-8C)を単離した。樹脂(a)(A-8C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは53℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0423】
微粒子分散液(W-8)が有機樹脂微粒子(A-8)を含むことを、上記の<有機樹脂微粒子製造例1>と同様に、微粒子分散液(W-8)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-8)を単離することにより確認した。
【0424】
有機樹脂微粒子(A-8)の体積平均粒径、樹脂(a)(A-8C)のガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0425】
<有機樹脂微粒子製造例14>
[有機樹脂微粒子(A-9)を含む微粒子分散液(W-9)の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬製、アクアロンKH-1025)200質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を、加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、混合液に、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン640質量部、ブチルアクリレート360質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-9C)と樹脂(b)(A-1S)とを同一粒子内に構成成分として含有する有機樹脂微粒子(A-9)を含む微粒子分散液(W-9)を得た。微粒子分散液(W-9)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0426】
微粒子分散液(W-9)中の微粒子の体積平均粒径は、15.0nmであった。体積平均粒径は、上記の有機樹脂微粒子(A-1)と同様に測定した。
【0427】
また、微粒子分散液(W-9)の一部を乾燥して、樹脂(a)(A-9C)を単離した。樹脂(a)(A-9C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは53℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0428】
<有機樹脂微粒子製造例15>
〔有機樹脂微粒子(A-10S)を含む微粒子分散液(W-010)の製造〕
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬社製、アクアロンKH-1025)200質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、混合液に、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン122質量部、ブチルアクリレート578質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(b)からなる有機樹脂微粒子(A-10S)を含む微粒子分散液(W-010)を得た。微粒子分散液(W-010)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0429】
微粒子分散液(W-010)中の有機樹脂微粒子(A-10S)の体積平均粒径は15.0nmであった。また、微粒子分散液(W-010)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-10S)を単離した。有機樹脂微粒子(A-10S)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは22℃、酸価は195mgKOH/gであった。有機樹脂微粒子(A-11S)の、体積平均粒径、ガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表3に示す。
【0430】
<有機樹脂微粒子製造例16>
[有機樹脂微粒子(A-10)を含む微粒子分散液(W-10)の製造]
次に、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-010)を667質量部、水248質量部を仕込んだ。ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えた後、混合液を加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン13.4質量部、ブチルアクリレート53.2量部、及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-010)中の有機樹脂微粒子(A-10S)をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-10C)と樹脂(b)(A-10S)とを同一粒子内に構成成分として含む有機樹脂微粒子(A-10)を含む微粒子分散液(W-10)を得た。微粒子分散液(W-10)はポリマー純分が20%となるように調整した。
【0431】
有機樹脂微粒子(A-10)の体積平均粒径は、17.3nmであった。体積平均粒径は、レーザードップラー粒度分布測定装置(nanotrac UPA-150EX、日機装株式会社製)を用いて測定した。
【0432】
また、微粒子分散液(W-10)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(a)(A-10C)を単離した。樹脂(a)(A-10C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、21℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0433】
微粒子分散液(W-10)が有機樹脂微粒子(A-10)を含むことを、上記の<有機樹脂微粒子製造例1>と同様に、微粒子分散液(W-10)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-10)を単離することにより確認した。
【0434】
有機樹脂微粒子(A-10)の体積平均粒径、樹脂(b)(A-10C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表3に示す。
【0435】
<有機樹脂微粒子製造例17>
〔有機樹脂微粒子(A-11S)を含む微粒子分散液(W-011)の製造〕
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬社製、アクアロンKH-1025)200質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、混合液に、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン235質量部、ブチルアクリレート465質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(b)からなる有機樹脂微粒子(A-11S)を含む微粒子分散液(W-011)を得た。微粒子分散液(W-011)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0436】
微粒子分散液(W-011)中の有機樹脂微粒子(A-11S)の体積平均粒径は15.0nmであった。また、微粒子分散液(W-011)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-11S)を単離した。有機樹脂微粒子(A-11S)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは30℃、酸価は195mgKOH/gであった。有機樹脂微粒子(A-11S)の、体積平均粒径、ガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表3に示す。
【0437】
<有機樹脂微粒子製造例18>
[有機樹脂微粒子(A-11)を含む微粒子分散液(W-11)の製造]
次に、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-011)を667質量部、水248質量部を仕込んだ。ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えた後、混合液を加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン23.3質量部、ブチルアクリレート43.3量部、及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-011)中の有機樹脂微粒子(A-11S)をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-11C)と樹脂(b)(A-11S)とを同一粒子内に構成成分として含む有機樹脂微粒子(A-11)を含む微粒子分散液(W-11)を得た。微粒子分散液(W-11)はポリマー純分が20%となるように調整した。
【0438】
有機樹脂微粒子(A-11)の体積平均粒径は、17.3nmであった。体積平均粒径は、レーザードップラー粒度分布測定装置(nanotrac UPA-150EX、日機装株式会社製)を用いて測定した。
【0439】
また、微粒子分散液(W-11)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(b)(A-11C)を単離した。樹脂(a)(A-11C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、31℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0440】
微粒子分散液(W-11)が有機樹脂微粒子(A-11)を含むことを、上記の<有機樹脂微粒子製造例1>と同様に、微粒子分散液(W-11)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-11)を単離することにより確認した。
【0441】
有機樹脂微粒子(A-11)の体積平均粒径、樹脂(a)(A-11C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表3に示す。
【0442】
<有機樹脂微粒子製造例19>
〔有機樹脂微粒子(A-12S)を含む微粒子分散液(W-012)の製造〕
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬社製、アクアロンKH-1025)200質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、混合液に、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン506質量部、ブチルアクリレート194質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(b)からなる有機樹脂微粒子(A-12S)を含む微粒子分散液(W-012)を得た。微粒子分散液(W-012)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0443】
微粒子分散液(W-012)中の有機樹脂微粒子(A-12S)の体積平均粒径は15.0nmであった。また、微粒子分散液(W-012)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-12S)を単離した。有機樹脂微粒子(A-12S)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは61℃、酸価は195mgKOH/gであった。有機樹脂微粒子(A-12S)の、体積平均粒径、ガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表3に示す。
【0444】
<有機樹脂微粒子製造例20>
[有機樹脂微粒子(A-12)を含む微粒子分散液(W-12)の製造]
次に、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-012)を667質量部、水248質量部を仕込んだ。ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えた後、混合液を加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン47.4質量部、ブチルアクリレート19.2量部、及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-012)中の有機樹脂微粒子(A-12S)をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-12C)と樹脂(b)(A-12S)とを同一粒子内に構成成分として含む有機樹脂微粒子(A-12)を含む微粒子分散液(W-12)を得た。微粒子分散液(W-12)はポリマー純分が20%となるように調整した。
【0445】
有機樹脂微粒子(A-12)の体積平均粒径は、17.3nmであった。体積平均粒径は、レーザードップラー粒度分布測定装置(nanotrac UPA-150EX、日機装株式会社製)を用いて測定した。
【0446】
また、微粒子分散液(W-12)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(b)(A-12C)を単離した。樹脂(a)(A-12C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、60℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0447】
微粒子分散液(W-12)が有機樹脂微粒子(A-12)を含むことを、上記の<有機樹脂微粒子製造例1>と同様に、微粒子分散液(W-12)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-12)を単離することにより確認した。
【0448】
有機樹脂微粒子(A-12)の体積平均粒径、樹脂(b)(A-12C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表3に示す。
【0449】
<有機樹脂微粒子製造例21>
〔有機樹脂微粒子(A-13S)を含む微粒子分散液(W-013)の製造〕
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬社製、アクアロンKH-1025)200質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、混合液に、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン578質量部、ブチルアクリレート122質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(b)からなる有機樹脂微粒子(A-13S)を含む微粒子分散液(W-013)を得た。微粒子分散液(W-013)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0450】
微粒子分散液(W-013)中の有機樹脂微粒子(A-13S)の体積平均粒径は15nmであった。また、微粒子分散液(W-013)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-13S)を単離した。有機樹脂微粒子(A-13S)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは71℃、酸価は195mgKOH/gであった。有機樹脂微粒子(A-13S)の、体積平均粒径、ガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表3に示す。
【0451】
<有機樹脂微粒子製造例22>
[有機樹脂微粒子(A-13)を含む微粒子分散液(W-13)の製造]
次に、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-013)を667質量部、水248質量部を仕込んだ。ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えた後、混合液を加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン53.3質量部、ブチルアクリレート13.3質量部、及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-013)中の有機樹脂微粒子(A-13S)をシードとして、スチレン及びブチルアクリレート記モノマーが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-13C)と樹脂(b)(A-13S)とを同一粒子内に構成成分として含む有機樹脂微粒子(A-13)を含む微粒子分散液(W-13)を得た。微粒子分散液(W-13)はポリマー純分が20%となるように調整した。
【0452】
有機樹脂微粒子(A-13)の体積平均粒径は、17.3nmであった。体積平均粒径は、レーザードップラー粒度分布測定装置(nanotrac UPA-150EX、日機装株式会社製)を用いて測定した。
【0453】
また、微粒子分散液(W-13)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(b)(A-13C)を単離した。樹脂(a)(A-13C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、71℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0454】
<有機樹脂微粒子製造例23>
〔有機樹脂微粒子(A-14S)を含む微粒子分散液(W-014)の製造〕
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬社製、アクアロンKH-1025)200質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、混合液に、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン645質量部、ブチルアクリレート55質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(b)からなる有機樹脂微粒子(A-14S)を含む微粒子分散液(W-014)を得た。微粒子分散液(W-014)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0455】
微粒子分散液(W-014)中の有機樹脂微粒子(A-14S)の体積平均粒径は15.0nmであった。また、微粒子分散液(W-014)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-14S)を単離した。有機樹脂微粒子(A-14S)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは81℃、酸価は195mgKOH/gであった。有機樹脂微粒子(A-14S)の、体積平均粒径、ガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表3に示す。
【0456】
<有機樹脂微粒子製造例24>
[有機樹脂微粒子(A-14)を含む微粒子分散液(W-14)の製造]
次に、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-014)を667質量部、水248質量部を仕込んだ。ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えた後、混合液を加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン59.2質量部、ブチルアクリレート7.4質量部、及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-014)中の有機樹脂微粒子(A-14S)をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-14C)と樹脂(b)(A-14S)とを同一粒子内に構成成分として含む有機樹脂微粒子(A-14)を含む微粒子分散液(W-14)を得た。微粒子分散液(W-14)はポリマー純分が20%となるように調整した。
【0457】
有機樹脂微粒子(A-14)の体積平均粒径は、17.3nmであった。体積平均粒径は、レーザードップラー粒度分布測定装置(nanotrac UPA-150EX、日機装株式会社製)を用いて測定した。
【0458】
また、微粒子分散液(W-14)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(b)(A-14C)を単離した。樹脂(a)(A-14C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは80℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0459】
<有機樹脂微粒子製造例25>
〔有機樹脂微粒子(A-15S)を含む微粒子分散液(W-015)の製造〕
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬社製、アクアロンKH-1025)175質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、混合液に、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン450質量部、ブチルアクリレート250質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(b)からなる有機樹脂微粒子(A-15S)を含む微粒子分散液(W-015)を得た。微粒子分散液(W-015)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0460】
微粒子分散液(W-015)中の有機樹脂微粒子(A-15S)の体積平均粒径は23.0nmであった。また、微粒子分散液(W-015)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-15S)を単離した。有機樹脂微粒子(A-15S)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。有機樹脂微粒子(A-15S)の、体積平均粒径、ガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0461】
<有機樹脂微粒子製造例26>
[有機樹脂微粒子(A-15)を含む微粒子分散液(W-15)の製造]
次に、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-015)を667質量部、水248質量部を仕込んだ。ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えた後、混合液を加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部、及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-015)中の有機樹脂微粒子(A-15S)をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-15C)と樹脂(b)(A-15S)とを同一粒子内に構成成分として含む有機樹脂微粒子(A-15)を含む微粒子分散液(W-15)を得た。微粒子分散液(W-15)はポリマー純分が20%となるように調整した。
【0462】
有機樹脂微粒子(A-15)の体積平均粒径は、26.0nmであった。体積平均粒径は、レーザードップラー粒度分布測定装置(nanotrac UPA-150EX、日機装株式会社製)を用いて測定した。
【0463】
また、微粒子分散液(W-15)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(b)(A-15C)を単離した。樹脂(a)(A-15C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、53℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0464】
<有機樹脂微粒子製造例27>
〔有機樹脂微粒子(A-16S)を含む微粒子分散液(W-016)の製造〕
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬社製、アクアロンKH-1025)75質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。混合液を加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、混合液に、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン450質量部、ブチルアクリレート250質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、75℃で4時間熟成させることで、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸からなる混合液とポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムとが共重合したポリマーである樹脂(b)からなる有機樹脂微粒子(A-16S)を含む微粒子分散液(W-016)を得た。微粒子分散液(W-016)は、ポリマー純分が20%となるように調整した。
【0465】
微粒子分散液(W-016)中の有機樹脂微粒子(A-16S)の体積平均粒径は67nmであった。また、微粒子分散液(W-016)の一部を乾燥して有機樹脂微粒子(A-16S)を単離した。有機樹脂微粒子(A-16S)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは53℃、酸価は195mgKOH/gであった。有機樹脂微粒子(A-16S)の、体積平均粒径、ガラス転移点Tg1st及び酸価の測定結果を表2に示す。
【0466】
<有機樹脂微粒子製造例28>
[有機樹脂微粒子(A-16)を含む微粒子分散液(W-16)の製造]
次に、攪拌機、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に微粒子分散液(W-016)を667質量部、水248質量部を仕込んだ。ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油製、パーブチルH)0.267質量部を加えた後、混合液を加熱して系内温度を70℃まで昇温させた。その後、混合液に、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部、及び1質量%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。滴下後、混合液を、70℃で4時間熟成させることで、微粒子分散液(W-016)中の有機樹脂微粒子(A-16S)をシードとして、スチレン及びブチルアクリレートが共重合したポリマーである樹脂(a)(A-16C)と樹脂(b)(A-16S)とを同一粒子内に構成成分として含む有機樹脂微粒子(A-16)を含む微粒子分散液(W-16)を得た。微粒子分散液(W-16)はポリマー純分が20%となるように調整した。
【0467】
有機樹脂微粒子(A-16)の体積平均粒径は、76.0nmであった。体積平均粒径は、レーザードップラー粒度分布測定装置(nanotrac UPA-150EX、日機装株式会社製)を用いて測定した。
【0468】
また、微粒子分散液(W-16)を10質量%アンモニア水溶液で中和してpH9.0にした後、遠心分離した沈殿物を乾固することで、樹脂(b)(A-16C)を単離した。樹脂(a)(A-16C)の示差走査熱量測定の昇温1回目におけるガラス転移点Tg1stは、53℃であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0469】
微粒子分散液(W-01)~(W-016)及び(W-1)~(W-16)の性状を表2及び表3に示す。
【0470】
【表2】
【0471】
【表3】
【0472】
<結晶性ポリエステルの製造例>
[結晶性ポリエステル樹脂の合成]
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ドデカン二酸、及び1,6-ヘキサンジオールを、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが0.9となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に、180℃で10時間反応させた。その後、混合液を200℃に昇温して3時間反応させ、更に8.3kPaの圧力にて2時間反応させることで、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
【0473】
<非晶質ポリエステル樹脂の製造例>
[非晶質ポリエステル樹脂A1の合成]
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸26.5質量部、ビスフェノールAのエチレンオキシド2.2モル付加物13.5質量部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド2.2モル付加物59.9質量部及びジブチルスズオキシド0.2質量部を投入し、常圧下、230℃で4時間反応させた。その後、混合物を、10mmHg~15mmHgの減圧下、5時間反応させ、非晶質ポリエステル樹脂A1を得た。
【0474】
<非晶質ポリエステル樹脂の製造例>
[非晶質ポリエステル樹脂A2の合成]
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸25.8質量部、アジピン酸27.8質量部、3-メチル-1,5-ペンタンジオール44.9質量部、トリメチロールプロパン1.5質量部、及びジブチルスズオキシド0.2質量部を投入し、常圧下、230℃で4時間反応させた。その後、混合物を10mmHg~15mmHgの減圧下、5時間反応させ、非晶質ポリエステル樹脂中間体を得た。
【0475】
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、非晶質ポリエステル樹脂中間体90質量部、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)10質量部を投入し、酢酸エチル100質量部で希釈した。その後、混合物を80℃で5時間反応させ、プレポリマーである、非晶質ポリエステル樹脂A2の酢酸エチル溶液を得た。
【0476】
<実施例1>
[トナーの製造]
(マスターバッチ(MB)の調製)
水1,200質量部と、カーボンブラック(Printex35デクサ製、DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5)500質量部と、500質量部の非晶質ポリエステル樹脂A1とを、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて、150℃で30分間混練した。その後、圧延冷却し、パルペライザーで粉砕することで、マスターバッチ1を得た。
【0477】
(ワックス分散液の作製)
撹拌棒及び温度計をセットした容器に離型剤としてパラフィンワックス50質量部(日本精鑞株式会社製、HNP-9、炭化水素系ワックス、融点75℃、SP値8.8)及び酢酸エチル450質量部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した。その後、混合物を1時問で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散して、ワックス分散液を得た。
【0478】
(結晶性ポリエステル樹脂分散液の作製)
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に結晶性ポリエステル樹脂50質量部及び酢酸エチル450質量部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した。その後、混合物を1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散することで、結晶性ポリエステル樹脂分散液を得た。
【0479】
(油相の調製)
ワックス分散液500質量部、非晶質ポリエステル樹脂A3の酢酸エチル溶液300質量部、結晶性ポリエステル樹脂分散液500質量部、非晶質ポリエステル樹脂A1を700質量部、マスターバッチ100質量部、及びプレポリマーの硬化剤としてイソホロンジアミン2質量部を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で5,000rpmで60分間混合し、油相を得た。
【0480】
(水相の調製)
水938質量部、有機樹脂微粒子(A-1)を含む水性分散液(W-1)50質量部、界面活性剤120質量部及び酢酸エチル92質量部を混合撹拌して、乳白色の液体を得た。これを、水相とした。
【0481】
(乳化・脱溶剤)
油相が800質量部入った容器に、水相1,200質量部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで20分間混合し、乳化スラリーを得た。撹拌機及び温度計をセットした容器に、乳化スラリーを投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で10時間熟成を行い、分散スラリーを得た。
【0482】
(洗浄・乾燥)
分散スラリー100質量部に10%水酸化ナトリウム水溶液をpH11になるまで加えて1時間攪拌した。その後、スラリーを減圧濾過した後、以下の(1)~(4)の操作を行った。
【0483】
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
【0484】
上記(1)~(4)の操作を2回行い、濾過ケーキを得た。
【0485】
得られた濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩い、トナー母体粒子を得た。得られたトナー母体粒子約0.2gを精評し、メタノール20mLに投入して攪拌分散させた。その後、超音波を30分間かけて、24時間静置後、上澄み液を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過して、ろ過した上澄み液をメタノールで100倍希釈してから、液体クロマトグラフィーシステム(AQUITY-UPLC/SQDシステム、日本ウォーターズ社製)に供した。液体クロマトグラフィーシステムのMS検出器により、カルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤由来のピークが観察され、トナー母体粒子の表面にカルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤が存在していることが確認できた。また、トナー中に含まれる有機樹脂微粒子(A-1)の含有量を、熱分解ガスクログラフ装置システム(7890B、アジレントテクノロジー製、EGA/PY-3030D(フロンティアラボ社製)で測定した。
【0486】
(外添処理)
トナー母体粒子を100質量部に対して、平均粒径100nmの疎水性シリカ0.6質量部と、平均粒径20nmの酸化チタン1.0質量部と、平均粒径15nmの疎水性シリカ微粉体を0.8部とをヘンシェルミキサーにて混合し、トナーを得た。トナー原材料の配合を表4に示す。
【0487】
<キャリアの作製>
トルエン100質量部に、シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン)100質量部、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、及びカーボンブラック10質量部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。流動床型コーティング装置を用いて、平均粒径50μmの球状マグネタイト1000質量部の表面に前記樹脂層塗布液を塗布して、キャリアを作製した。
【0488】
<現像剤の作製>
ボールミルを用いて、トナー5質量部とキャリア95質量部とを混合し、現像剤を作製した。
【0489】
<トナーの特性の評価>
次に、作製した各現像剤を用いて、以下のようにして、トナーの特性を評価した。それぞれの、評価結果を表5及び表6に示す。
【0490】
[耐オフセット性]
キャリアとトナーを、トナーの濃度が5質量%となるように混合して、現像剤を得た。imageo MP C4300(株式会社リコー製)のユニットに現像剤を投入した後、PPC用紙タイプ6000<70W>A4 T目(株式会社リコー製)に2cm×15cmの長方形のベタ画像をトナーの付着量が0.40mg/cmとなるように形成した。このとき、定着ローラの表面温度を変化させ、ベタ画像の現像残画像が所望の場所以外の場所に定着されるオフセットが発生するコールドオフセット温度(定着下限温度)及びホットオフセット温度(定着上限温度)を求め、下記評価基準に基づいて、耐オフセット性を評価した。
(コールドオフセットの評価基準)
◎:定着下限温度が、110℃未満
○:定着下限温度が、110℃以上120℃未満
△:定着下限温度が、120℃以上130℃未満
×:定着下限温度が、130℃以上
(ホットオフセットの評価基準)
◎:定着上限温度が、170℃以上
○:定着上限温度が、160℃以上170℃未満
△:定着上限温度が、150℃以上160℃未満
×:定着上限温度が、150℃未満
【0491】
[耐熱保存性]
50mLのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した後、24℃まで冷却した。次に、針入度試験(JISK2235-1991)により針入度[mm]を測定し、耐熱保存性を評価した。なお、針入度が大きいほど、耐熱保存性が優れていることを意味する。針入度が10mm未満であるものは、使用上、問題が発生する可能性が高い。
(評価基準)
◎:針入度が、20mm以上
○:針入度が、15mm以上20mm未満
△:針入度が、10mm以上15mm未満
×:針入度が、10mm未満
【0492】
[帯電性]
2成分系現像剤6gを計量し、密閉できる金属円柱に仕込み、280rpmの攪拌速度で攪拌し、ブローオフ法により帯電量を求め、下記評価基準に基づいて、帯電性を評価した。なお、攪拌時間は15秒(TA15)、60秒(TA60)、600秒(TA600)で測定した。キャリアは、TEFV200/300(パウダーテック株式会社製)を用いた。
(評価基準)
◎:帯電量が、36以上
○:帯電量が、33以上36未満
△:帯電量が、30以上33未満
×:帯電量が、30未満
【0493】
[総合評価]
総合評価は、下記評価基準により評価した。全ての評価項目が◎か○が1つあるものを◎、○が2つ以上あるが使用上は問題ないものを○、△が1以上あるが使用上は問題ないものを△、×が1つ以上のものを×として判定した。
(評価基準)
◎:非常に優れている
○:優れている
△:従来より若干優れている
×:実用に耐えない
【0494】
<実施例2~4>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた界面活性剤1を、表4に示すように、界面活性剤2~4のいずれかに変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。なお、実施例2では界面活性剤2を用い、実施例3では界面活性剤3を用い、実施例4では界面活性剤4を用いた。トナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0495】
<実施例5~11>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた有機樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を、有機樹脂微粒子(A-2)の水性分散液(W-2)~有機樹脂微粒子(A-7)の水性分散液(W-7)のいずれかに変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。なお、実施例5では、有機樹脂微粒子(A-2)の水性分散液(W-2)を用いた。実施例6では、有機樹脂微粒子(A-3)の水性分散液(W-3)を用いた。実施例7では、有機樹脂微粒子(A-4)の水性分散液(W-4)を用いた。実施例8では、有機樹脂微粒子(A-5)の水性分散液(W-5)を用いた。実施例9では、有機樹脂微粒子(A-6)の水性分散液(W-6)を用いた。実施例10では、有機樹脂微粒子(A-7)の水性分散液(W-7)を用いた。実施例11では、有機樹脂微粒子(A-8)の水性分散液(W-8)を用いた。各実施例のトナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0496】
<実施例12>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた有機樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)の含有量を50質量部から125質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。実施例のトナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0497】
<実施例13~19>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた有機樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を、有機樹脂微粒子(A-10)の水性分散液(W-10)~有機樹脂微粒子(A-16)の水性分散液(W-16)のいずれかに変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。なお、実施例13では、有機樹脂微粒子(A-10)の水性分散液(W-10)を用いた。実施例14では、有機樹脂微粒子(A-11)の水性分散液(W-11)を用いた。実施例15では、有機樹脂微粒子(A-12)の水性分散液(W-12)を用いた。実施例16では、有機樹脂微粒子(A-13)の水性分散液(W-13)を用いた。実施例17では、有機樹脂微粒子(A-14)の水性分散液(W-14)を用いた。実施例18では、有機樹脂微粒子(A-15)の水性分散液(W-15)を用いた。実施例19では、有機樹脂微粒子(A-16)の水性分散液(W-16)を用いた。各実施例のトナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0498】
<実施例20>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた有機樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を有機樹脂微粒子(A-8)の水性分散液(W-8)に変更し、その含有量を50質量部から37.5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。実施例のトナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0499】
<実施例21>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた有機樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)の含有量を50質量部から150質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。実施例のトナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0500】
<実施例22>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた有機樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を有機樹脂微粒子(A-8)の水性分散液(W-8)に変更し、その含有量を50質量部から62.5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。実施例のトナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0501】
<実施例23>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた有機樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)の含有量を50質量部から37.5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。実施例のトナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0502】
<実施例24>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた有機樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)の含有量を50質量部から75質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。実施例のトナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0503】
<実施例25>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた有機樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)の含有量を50質量部から100質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。実施例のトナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0504】
<比較例1>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた水の含有量を938質量部から983質量部に変更し、界面活性剤1をドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON-7:三洋化成工業株式会社製)75質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。トナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0505】
なお、使用した、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液の酸価を、電位差自動滴定装置(DL-53 Titrator、メトラー・トレド社製)で測定した結果、酸価は0mgKOH/gであり、カルボキシル基を含有していないことを確認した。
【0506】
<比較例2>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた水の含有量を938質量部から968質量部に変更し、界面活性剤1をアルカンスルホン酸ナトリウムの40%水溶液(ラテムルPS、花王株式会社製)90質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のトナーを得た。トナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0507】
なお、使用した、アルカンスルホン酸ナトリウムの40%水溶液の酸価を電位差自動滴定装置(DL-53 Titrator、メトラー・トレド社製)で測定した結果、酸価は0mgKOH/gであり、カルボキシル基を含有していないことを確認した。
【0508】
<比較例3>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた有機樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を、有機樹脂微粒子A-1Sの水性分散液(W-01)に変更したこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0509】
<比較例4>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた有機樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を、有機樹脂微粒子(A-89)の水性分散液(W-9)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行ったが、トナー母体粒子は造粒できなかった。
【0510】
<比較例5>
実施例1において、実施例1の(水相の調製)で用いた水の含有量を983質量部に変更し、界面活性剤1をドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)75質量部に変更した。有機樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W-1)を、有機樹脂微粒子A-1Sの水性分散液(W-01)に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして行った。トナー原材料の配合を表4に示し、評価結果を表5及び表6に示す。
【0511】
なお、使用したドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液の酸価を電位差自動滴定装置(DL-53 Titrator、メトラー・トレド社製)で測定したところ、酸価は0mgKOH/gであり、カルボキシル基を含有していないことが確認された。
【0512】
【表4】
【0513】
【表5】
【0514】
【表6】
【0515】
表5及び表6より、実施例1~25のトナーは、低定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性及び帯電性をいずれも使用上の条件を満たしていたことが確認された。これに対して、比較例1~5で得られたトナーは、低定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性及び帯電性の少なくともいずれかが使用上の条件を満たしていないかトナー母体粒子を製造できておらず、実用上問題を有することが確認された。
【0516】
よって、実施例1~25のトナーは、比較例1~5のトナーと異なり、トナーの表面に、スチレンアクリル樹脂を含みかつカルボキシル基を含まない樹脂(a)を有するコアと、カルボキシル基を含む樹脂(b)を有するシェルで構成されるコアシェル構造を有する有機樹脂微粒子と、カルボキシル基を含むアニオン系界面活性剤とを有することで、低定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性及び帯電性に優れ、高品質なトナーであるといえる。
【0517】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0518】
1A、1B、1C 画像形成装置
10 静電潜像担持体(感光体ドラム)
20 帯電ローラ(帯電部)
30 露光装置(露光部)
40 現像装置(現像部)
50 中間転写体(中間転写ベルト)
60 クリーニング装置(クリーニング部)
70 転写ローラ(転写部)
80 除電ランプ(除電部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0519】
【文献】特開2005-055498号公報
図1
図2
図3
図4
図5