(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20250319BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20250319BHJP
【FI】
G03B5/00 J
H04N23/50
(21)【出願番号】P 2023545510
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2022032047
(87)【国際公開番号】W WO2023032808
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2021141192
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100142147
【氏名又は名称】本木 久美子
(72)【発明者】
【氏名】水井 研吾
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-003665(JP,A)
【文献】特開2007-102035(JP,A)
【文献】特開2005-157056(JP,A)
【文献】特開2013-045068(JP,A)
【文献】特開2020-064138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00 - 5/06
H04N 23/50
H04N 23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を保持し、光軸に対して直交する直交面内で移動可能に設けられ、光軸方向の一方側に向かって突出する係合部が設けられた可動部と、
前記可動部の前記一方側に配置され、前記光軸に対して直交する直交面内で移動可能に設けられ、前記直交面内を移動して前記可動部に設けられた前記係合部と係合して前記可動部をロックするロック部材を有するロックユニットと、
を備え、
前記ロック部材は、前記係合部を保持するU字部を有し、
前記U字部の先端には、前記U字部の基端側より幅が広くなったテーパ部が設けられている、撮像装置。
【請求項2】
前記可動部には、複数の前記係合部が設けられ、
前記ロックユニットは、前記複数の係合部のそれぞれと係合する複数のロック部材を有する、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記ロック部材は、前記可動部をロックする第1位置と、前記可動部のロックを解除する第2位置との間を前記直交面内において直線方向に移動する、
請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
複数の前記係合部のうちのいずれか2つの係合部は、前記光軸に対して互いに対向する位置に配置されている、
請求項2又は請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
複数の前記係合部は、前記可動部の縁部に、互いに離間して配置されている、
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記ロック部材は、前記係合部を保持した状態で、前記係合部を互いに離れる方向に押圧する弾性部を有する、
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記弾性部は、前記係合部と対向する方向に突出した凸部を有するバネからなり、前記ロック部材が前記係合部を保持した状態で、前記凸部は、前記係合部に設けられた凹部を押圧する、
請求項
6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記ロックユニットは、
前記光軸を中心として回転可能で、前記ロック部材側の面にカム溝が設けられたカム板、を有し、
前記ロック部材は、
前記カム溝に係合するカムフォロアを有し、
前記カム板が回転したときに、前記カムフォロアが前記カム溝に沿って移動することで、前記ロック部材が前記光軸と直交する直交面内を移動する、
請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記ロック部材が前記係合部をロックしているロック時において、前記カム溝における、前記カムフォロアが位置する部分の2つの側辺は、互いに平行で、且つ、前記ロック部材の前記直交面内での移動方向に対して直交し、前記係合部の前記直交面内での移動が、前記側辺により規制される、
請求項
8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記ロック部材が前記係合部のロックを解除している解除時において、前記カム溝における、前記カムフォロアが位置する部分の2つの側辺は、互いに平行で、且つ、前記ロック部材の前記直交面内での移動方向に対して直交し、前記係合部の前記直交面内での移動が、前記側辺により規制される、
請求項
8又は請求項
9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記カム板を回転駆動するアクチュエータを備え、
前記アクチュエータにより前記カム板が回転駆動されることで、
前記ロック部材の前記係合部をロックするロック動作、及び
前記ロック部材が前記係合部のロックを解除するロック解除動作、が行われる、
請求項
8から請求項1
0のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記カム板と前記アクチュエータのそれぞれは歯車を有し、
それぞれの前記歯車に噛み合うピニオンギアを有する中間ギア部と、
前記アクチュエータを支持し、前記中間ギア部、及び、前記カム板のそれぞれを固定するベース部と、を備え、
前記アクチュエータの駆動力を、前記中間ギア部を介して前記カム板に伝達することにより前記カム板を回転駆動させる、
請求項1
1に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手ブレが検出された場合に、撮像素子を駆動することにより手ブレを補正する撮像装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。この従来の撮像装置においては、撮像素子を所定位置に保持する機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の撮像装置は、撮像素子を保持し、光軸に対して直交する直交面内で移動可能に設けられ、光軸方向の一方側に向かって突出する係合部が設けられた可動部と、前記可動部の前記一方側に配置され、前記光軸に対して直交する直交面内で移動可能に設けられ、前記直交面内を移動して前記可動部に設けられた前記係合部と係合して前記可動部をロックするロック部材を有するロックユニットと、を備え、前記ロック部材は、前記係合部を保持するU字部を有し、前記U字部の先端には、前記U字部の基端側より幅が広くなったテーパ部が設けられている構成とした。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】実施形態のカメラ1と、カメラ1に対して着脱可能な交換レンズ2とを示す概略図である。
【
図2】可動部20と、固定部30と、ロックユニット40とを斜め後方から見た斜視図である。
【
図3】可動部20と、固定部30と、ロックユニット40とを斜め前方から見た斜視図である。
【
図4】係合部27と、ロックユニット40の一部とを後方から見た図であり、(a)は非ロック時、(b)はロック時である。
【
図5】ロックユニット40を斜め後方から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、図面等を参照して、撮像装置の実施形態としてのカメラ1について説明する。
図1は、実施形態のカメラ1と、カメラ1に対して着脱可能な交換レンズ2とを示す概略図である。なお、実施形態では交換レンズ2が着脱可能なカメラ1について説明するが、本発明のカメラ1は、レンズ一体型のカメラであってもよい。
【0007】
(カメラ1)
カメラ1は、カメラ1に固定された固定部30と、撮像素子21を含み、固定部30に対して移動する可動部20と、可動部20の移動を制限するロックユニット40と、レリーズスイッチ11と、表示部12と、ブレ検出センサ13と、固定部30に対して可動部20を駆動する駆動部3と、位置検出部4と、制御部14と、操作部15とを備える。
【0008】
レリーズスイッチ11は、カメラ1の撮影操作を行う部材であって、図示しないシャッタの駆動のタイミング等を操作する。
【0009】
撮像素子21は交換レンズ2の撮影光学系の予定焦点面に設けられ、制御部14の制御に基づいて、交換レンズ2の撮影光学系を介して入射した被写体像光を光電変換して信号を生成する。撮像素子21は、例えばCCD、CMOS等により構成されている。
【0010】
表示部12は、カメラ1の後面に設けられ、撮影された被写体像(静止画、ライブビュー画像を含む動画)や操作に関連した情報(メニュー)等を表示するカラー液晶ディスプレイである。
【0011】
ブレ検出センサ13は、加速度センサや角速度センサで、カメラ1の手ブレによるブレを検出する。
【0012】
制御部14は、レリーズスイッチ11の押下により撮像素子21の撮影制御を行う。また、制御部14は、撮像素子21により出力された信号に対してノイズ処理やA/D変換等の処理を行い、画像データを生成し、表示部12に表示する。さらに制御部14は、ブレ検出センサ13により検出された撮像素子21のブレ信号を基に撮像素子21の目標位置を検出する。そして制御部14は、検出された目標位置に基づき撮像素子21のブレを補正する駆動量を演算し、演算された駆動量に基づいて、駆動部3を介して撮像素子21を駆動する。
【0013】
図2は、可動部20と、固定部30と、ロックユニット40とを斜め後方から見た斜視図であり、
図3は、可動部20と、固定部30と、ロックユニット40とを斜め前方から見た斜視図である。
【0014】
以下の図において、説明と理解を容易にするために、適宜XY直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラ1の位置(正位置)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。また、光軸OA方向被写体側を前、逆側を後、Yプラス側を上、Yマイナス側を下、後側の面を後面として説明する。
【0015】
(可動部20)
可動部20は、固定部30に対して光軸OAに対して直交する直交面であるXY平面内で移動可能である。可動部20は、撮像素子21を保持する可動フレーム22を備え、可動フレーム22の前面に撮像素子21が取り付けられている。
【0016】
(可動部20側駆動部3)
可動フレーム22における、撮像素子21が配置されている領域のX方向マイナス側には、駆動部3としてのX方向駆動用のコイル23が取り付けられ、撮像素子21のY方向マイナス側(下側)には、駆動部3としてのY方向駆動用及び回転方向駆動用のコイル24,25が取り付けられている。
【0017】
(係合部27)
可動フレーム22の縁部には、光軸OA方向後方に突出した略円柱状のピン形の係合部27が、実施形態では2つ設けられている。ただし、2つに限定されず、それ以上であってもよい。実施形態の2つの係合部27は、可動フレーム22のX方向のほぼ中央であって、光軸OAからY方向に互いに等しい位置であって、可動フレーム22のY方向の両縁部に互いに離間して配置されている。なお、2つの係合部27の配置は上記例に限定されない。例えば、係合部27をY方向プラス側とマイナス側それぞれに配置する代わりに、X方向プラス側とマイナス側それぞれに配置してもよい。
【0018】
なお、実施形態では係合部27はピン形であるが、これに限定されず、後述するロック部材43と係合する形状であれば、ピン形でなくてもよい。実施形態で係合部27は光軸OA方向後方側に延びる。2本の係合部27は、光軸OAに対して互いに対向する位置、すなわち光軸OAから等しい距離に互いに逆向きで配置され、2本の係合部27の中心を結ぶ直線は光軸OAを通る。
【0019】
(凹部27a)
図4は、係合部27と、ロックユニット40の一部とを後方から見た図であり、(a)は非ロック時、(b)はロック時である。なお、ロック動作については後述する。係合部27の先端面には、略山形(略扇形)に窪んだ凹部27aが設けられている。凹部27aの山形の頂部は実施形態では係合部27の中心軸上またはその近傍位置するが、これに限らない。ただし、凹部27aの山形の頂部は、係合部27の軸線と、光軸OAとを結んだ直線上に位置していることが好ましい。凹部27aの山形の裾野に相当する部分の中央も光軸OAと係合部27の軸線とを結んだ直線上に位置していることが好ましい。なお、実施形態で凹部27aは略山形であったがこれに限定されず、例えば円弧状であってもよい。また、凹部27aは、係合部27の外周において軸方向にわたって形成される必要はなく、係合部27の外周の一部を切り欠いて形成してもよい。
【0020】
(固定部30)
固定部30はカメラ1の筐体に対して固定された固定フレーム31を備える。固定部30は、可動部20における、撮像素子21が配置されている部分の後側を覆っている。
【0021】
(孔部37)
固定フレーム31におけるY方向の両縁部であって、光軸OAからY方向に互いに等しい位置に、2つの孔部37が、互いに離間して配置されている。孔部37が設けられている位置は、係合部27が設けられている位置に略対応している。
【0022】
(固定部30側駆動部3)
固定フレーム31における、X方向マイナス側には、駆動部3としてのX方向駆動用のマグネット33、撮像素子21のY方向マイナス側(下側)には、駆動部3としてのY方向駆動用及び回転方向駆動用のマグネット34,35が取り付けられている。マグネット33,34,35は、それぞれコイル23,24,25に対応する位置に設けられている。
【0023】
(位置検出部4)
カメラ1には位置検出部4(
図1に図示)が設けられている。位置検出部4は、固定部30に対する可動部20の位置を検出する。本実施形態において位置検出部4は、例えば可動部20に取り付けられたホール素子26と、固定部30に取り付けられた位置検出用マグネット36とであるが、これに限らず、例えば発光部と受光部(PSD)であってもよい。なお、位置検出用マグネット36を設ける代わりに、駆動用のマグネット33,34,35が位置検出としての機能を兼ねてもよい。
【0024】
(駆動部3)
上述したように、可動フレーム22に設けられたコイル23,24,25と、固定フレーム31に設けられたマグネット33,34,35とで、駆動部3としてボイスコイルモータ(VCM)としての駆動部3を構成する。
【0025】
可動部20と固定部30とは、図示しない3つのボールを介して、バネ部材で互いに近づく方向に付勢され、これにより可動フレーム22は、固定フレーム31に対してX軸方向、Y軸方向、光軸OA回りの回転方向に移動可能に支持されている。なお、可動部20と固定部30とをバネ部材で互いに近づく方向に付勢する代わりに、可動部20と固定部30のいずれか一方にマグネットを設け、他方の金属部分にマグネットが吸引されるようにすることで互いに近づく方向に付勢されるようにしてもよい。
【0026】
コイル23,24,25に電流を流すと、電流の方向がマグネット33,34,35の磁力線に対して直交するコイル23,24,25の部分に電磁力が作用し、可動部20が固定部30に対して駆動される。コイル23,24,25に流す電流の向きを逆転させると、可動部20は逆方向に駆動される。また、コイル23,24,25に流れる電流の大きさにより、可動部20に作用する力を変えることができる。
【0027】
コイル23,24,25に電流が流れている状態では、可動部20は所定位置に保持されている。しかし、コイル23,24,25への通電が停止されと、可動部20を保持する力がなくなる。このとき、可動部20はカメラ1の筐体内を可動範囲内で自由に動くことができるようになるため、通電停止時に自重により重力方向に落下して筐体内の他の部品に衝突したり、カメラ1が振られる等したときに、他の部品に衝突して、可動部等が破損する可能性がある。
【0028】
(ロックユニット40)
このため、実施形態では、通電されていないときに可動部20を固定するロックユニット40が設けられている。ロックユニット40は、カメラ1の筐体内の固定部30の後面側に配置されている。
図5はロックユニット40を斜め後方から見た分解斜視図である。
【0029】
ロックユニット40は、前側に配置されたベース部46と、後ろに配置されたカバー部41とを備える。ベース部46とカバー部41との間には、ベース部46に保持された、中間ギア部であるウォームギア47及び第2ピニオンギア48と、アクチュエータ44と、アクチュエータ44の軸に保持された第1ピニオンギア45と、2つのロック部材43と、カム板42とが配置されている。なお、中間ギア部としてウォームギア47及び第2ピニオンギア48を別個に設ける代わりに、ウォームギア47及び第2ピニオンギア48を一体化させて1つの部品として形成してもよい。
【0030】
(ベース部46)
ベース部46における光軸OA方向後側の面には、光軸OA方向後側に延びるカム板保持軸46aと、カム板保持軸46aのXマイナス側に配置されたギア保持部46bとが設けられている。
【0031】
カム板保持軸46aにはカム板42が回転可能に保持されている。ギア保持部46bには、光軸OAと直交する方向に延びる保持軸(図示せず)が配置され、保持軸のYマイナス側には、第2ピニオンギア48が保持軸に取り付けられ、第2ピニオンギア48の上部には、ウォームギア47が保持軸に取り付けられている。このため、第2ピニオンギア48の回転により、保持軸が回転すると、ウォームギア47も回転することになる。なお、ウォームギア47及び第2ピニオンギア48を一体化させて1つの部品として形成した場合、保持軸をベース部46に固定し、一体化した中間ギア部(ウォームギア47及び第2ピニオンギア48)を保持軸に対して回転可能に支持してもよい。
【0032】
また、ベース部46には、2つの貫通孔46cが設けられている。2つの貫通孔46cは、光軸OAからY方向に互いに等しい位置であって、2つの貫通孔46cを結ぶ直線は光軸OAを通る。貫通孔46cが設けられている位置は、係合部27及び孔部37が設けられている位置に略対応している。
さらに、ベース部46には、後述するロック部材43の移動を案内するガイド枠46fが設けられている。
【0033】
(アクチュエータ44)
アクチュエータ44は、ベース部46のギア保持部46bのYマイナス側に支持されている。アクチュエータ44の回転軸44aは、ベース部46に対して回転可能で、回転軸44aの下端には歯車を有する第1ピニオンギア45が取り付けられている。第1ピニオンギア45は、第2ピニオンギア48と噛み合っている。なお、アクチュエータ44の回転軸44aに直接ウォームギア47を接続する場合、第1ピニオンギア45と第2ピニオンギア48を設けなくともよい。
【0034】
(ロック部材43)
実施形態では、光軸OAに対してY方向プラス側とマイナス側(上下)に、2つのロック部材43U及びロック部材43Dが配置されている。ロック部材43U及びロック部材43Dは互いに同形で、光軸OAに対して互いに対称となるように光軸OAを通る一直線上に配置されている。すなわち、光軸OAを通る一直線上において、互いに逆向きになるように配置されている。
ロック部材43は、ベース部46に設けられたガイド枠46f内に配置されている。ロック部材43の側面は、ガイド枠の内側面によって案内されて、光軸OAを通る一直線上を移動する。その際、2つのロック部材43U及びロック部材43Dは、次に述べるカムフォロア43aが、カム板42のカム溝42bを移動することにより、光軸OAからの距離が互いに等しい状態を保ちつつ移動可能である。
【0035】
なお、区別して説明する必要がない場合、ロック部材43Uとロック部材43Dとを合わせてロック部材43として説明する。
図4(a)は、ロック部材43が可動部20をロックしていない非ロック時(ロック解除時)の第2の位置で、
図4(b)はロック部材43が可動部20をロックしているロック時の第1の位置である。
【0036】
(カムフォロア43a)
ロック部材43は、
図4及び
図5に示すように、光軸OA側の後面に、カム板42のカム溝42bに係合するカムフォロア43aが設けられている。カム溝42bの一端は、カム板42の中心側に位置し、他端は、カム板42の外周側に位置する。
【0037】
(U字部43c)
また、ロック部材43における光軸OAを中心としたときの径方向外側の端部に、係合部27を保持するU字部43cが設けられている。
さらに、ロック部材43は、U字部43cの入口部分に、U字部43cの基端側より幅が広くなったテーパ部43dが設けられている。すなわち、U字部43cの入口部分の開口は、他の部分より広くなっている。なお、U字部43cの入口部分にテーパ部43dを設ける代わりにR形状の曲面を形成してもよい。
【0038】
(弾性部43b)
U字部43cの基端部の後面側には、弾性部43bが取り付けられている。弾性部43bは、係合部27をU字部43cに保持した状態で、係合部27を互いに離れる方向に押圧する。
【0039】
実施形態で弾性部43bは板バネで、中央部に係合部27と対向する方向に突出した凸部43eを有する。凸部43eは、係合部27の山形の凹部27aに嵌るように板バネを折り曲げることで形成されている。係合部27をU字部43cに保持した状態で、弾性部43bの凸部43eは、係合部27の凹部27aに嵌り込んで凹部27aの光軸OA側の面を径方向外側に押圧している。なお、本実施形態では、弾性部43bが板バネとして形成されている例を示しているが、板バネの代わりに線バネとして形成してもよい。
【0040】
(カム板42)
図6はカム板42を前側からみた図である。カム板42は円板部材で、光軸OAを中心として回転可能である。カム板42の外周には、歯車42aが設けられている。
【0041】
(カム溝42b)
また、カム板42のロック部材43側の面である前面には、2つのカム溝42bが設けられている。カム溝42bには、それぞれ、ロック部材43のカムフォロア43aが係合している。カム溝42bの一端は、カム板42の中心、すなわち光軸OA側にあり、カム溝42bの他端は、カム板42の外周側、すなわち光軸OAから径方向に離れた位置にある。
【0042】
そして、
図4(b)及び
図6に示すようにカム板42の外周側にある他端側のカム溝42bの2つの側辺42baは、互いに平行で、光軸OAに対して直交し、さらに径方向に対しても直交するように延びている。すなわち、
図4(b)に示すようにロック部材43が係合部27をロックしているロック時において、カム溝42bにおける、カムフォロア43aが位置する部分の2つの側辺は、互いに平行で、且つ、ロック部材43の直交面内での移動方向に対して直交している。
このため、係合部27のY方向の移動が、側辺42baにより規制される。また、ロック部材43の移動を案内するガイド枠46f(
図5に示す)によりロック部材43はX方向の移動が規制される。この結果、ロック部材43の直交面内の移動が規制されることになる。
一方、カム板42の光軸OA側にある一端側のカム溝42bの2つの側辺42bbも互いに平行で、光軸OAに対して直交し、さらに径方向に対しても直交するように延びている。このため、
図4(a)に示す非ロック時(ロック解除時)においても、ロック部材43の直交面内の移動が規制されることになる。
【0043】
(カバー部41)
カバー部41は、ベース部46のカム板保持軸46aの先端を保持する保持部(図示せず)が設けられ、ベース部46と組み合わさってロックユニット40の外枠を形成する。
また、カバー部41には、2つの貫通孔41cが設けられている。2つの貫通孔41cは光軸OAから等しい距離に位置し、2つの貫通孔41cを結ぶ直線は光軸OAを通る。なお、カム板保持軸46aに十分な曲げ強度を持たせることでカム板保持軸46aを片持ちとして保持できれば、カバー部41を省略することができる。
【0044】
ベース部46の貫通孔46cと、カバー部41の貫通孔41cとは同位置に形成され、カバー部41とベース部46とが組み合わさると、ロックユニット40を貫通する貫通孔40cとなる。2つの貫通孔40cは光軸OAから等しい距離、すなわち係合部27が設けられている位置に対応し、2つの貫通孔40cを結ぶ直線は光軸OAを通る。
【0045】
可動部20に設けられた係合部27は、固定部30に設けられた孔部37に挿通され、さらにロックユニット40のベース部46の貫通孔46c及び、カバー部41の貫通孔40cに挿通される。
【0046】
(ロック部材43の動作)
撮影時において、ロックユニット40のロック部材43は、
図4(a)に示すように係合部27から離間した、光軸OA側の第2の位置にある。このとき、ロック部材43は、係合部27に係合せず、可動部20の固定部30に対する移動を制限しない非ロック状態である。
【0047】
この状態で、例えば、カメラ1のメイン電源OFFが撮影者により選択されると、電源が完全にOFFになる前にアクチュエータ44が回転する。
そうすると、アクチュエータ44の回転軸に取り付けられた第1ピニオンギア45が回転し、第1ピニオンギア45と噛み合っている、第2ピニオンギア48が回転する。第2ピニオンギア48の回転により保持軸が回転することでウォームギア47が回転する。そうすると、カム板42の歯車42aがウォームギア47と噛み合っているので、カム板42が回転する。
【0048】
カム板42が回転すると、ロック部材43は、カムフォロア43aがカム板42のカム溝42bと係合しているので、ガイド枠46f内において光軸OAと直交する径方向に移動する。
【0049】
ロック部材43が、光軸OAに対して径方向に移動すると、U字部43cの内部に係合部27が挟み込まれて保持され、可動部20が固定部30に対してロックされる。すなわちロック部材43は、可動部20の固定部30に対する移動を制限する第1の位置となる。
【0050】
(光軸OA方向に対して径方向に移動する効果)
ここで、実施形態と異なり、ロック部材43が径方向ではなくて、光軸OAに沿って移動することにより可動部20を固定部30に対してロックする場合、ロック部材43が光軸OA方向に沿って移動するためのスペースとして光軸OA方向に厚さが必要となり、カメラ1が大きくなる。
しかし、実施形態でロック部材43は、光軸OAに対して径方向に移動することにより、係合部27と係合して、可動部20を固定部30に対してロックする。したがってカメラ1の薄型化が可能である。さらに、ロック部材43が光軸OAに直交する面内で直線的に移動することから、ロック部材43の移動スペースを抑制することができる。
【0051】
(テーパ部43d)
ここで、可動部20にはホール素子が取り付けられ、固定部30には位置検出用マグネット36が取り付けられ、これにより可動部20の位置を検出している。しかし、温度によっては、可動部20の位置検出が不正確となり、可動部20の位置が、目標位置からずれる可能性がある。そうすると、係合部27の中心が、ロック部材43が移動する直線上にない可能性がある。
しかし、実施形態では、ロック部材43の先端に設けられた、係合部27を保持するU字部43cの入口部分には、U字部43cの基端側より幅が広くなったテーパ部43dが設けられている。すなわち、U字部43cの入口部分の開口が広くなっている。
ゆえに、係合部27の位置がバラついた場合であっても、係合部27を確実にU字部43cに誘い込むことができる。ゆえに、可動部20のロック動作を確実に行うことができる。
【0052】
(弾性部43bの効果)
また、ロック部材43が係合部27を保持すると、弾性部43bの凸部43eは、係合部27の凹部27aに嵌り込んで凹部27aの光軸OA側の面を径方向外側に押圧する。
これにより、光軸OAを挟んだ両側に配置された2つの係合部27が、互いに離れる方向に弾性的に押圧されるので、ロック部材43が係合部27をロックしているロック時において、可動部20のガタつきが防止される。
【0053】
(カム溝42bの形状の効果)
ロック部材43が係合部27をロックしているロック時において、カムフォロア43aは、この、カム板42に設けられたカム溝42bの外周に近い端部に位置する。カム溝42bの外周に近い端における2つの側辺は、互いに平行で、且つ、ロック部材43の直交面内での移動方向に対して直交している。すなわち、カムフォロア43aは径方向の一方と他方とで保持されており、更に、カムフォロア43aとカム溝42bの接触部における法線が光軸OA、すなわち、カム板42の回転中心を通る。このため、ロック部材43にY方向の力が作用してもカム板42を回転させる力が働かないので、ロック部材43のY方向の移動が規制される。なお、ロック部材43の移動を案内するガイド枠46fによりロック部材43のX方向の移動が規制されているため、ロック部材43の直交面内での移動が規制される。
【0054】
(係合部27を2ヶ所設けることによる効果)
係合部27を1ヶ所に設けた場合、ロック部材43により係合部27はY方向の一方向(プラスY方向又はマイナスY方向)の移動が規制されるが、他の方向には自由に移動することができる。一方、係合部27を2ヶ所に設けることで、ロック部材43により係合部27は、Y方向の両方向(プラスY方向及びマイナスY方向)での移動が規制されることになるため、固定部30に対する可動部20のY方向の移動を確実に規制することができる。なお、U字部43cにより係合部27のX方向の移動が規制されていることから、係合部27はX及びY方向、すなわち、直交面内での移動が規制されるため、固定部30に対する可動部20の直交面内の移動が規制されることになる。結果として、電源OFFの状態においても可動部20が固定されることから常時通電する必要がなくなり、電力消費を抑制することができる。
なお、実施形態では2ヵ所で保持される形態について説明したが、3ヶ所以上であってもよい。
なお、
図4(b)に示すロック時において、ロック部43は、弾性部43bを介して、光軸OAを挟んだ両側に配置された2つの係合部27から、互いに近づく方向に弾性的に押圧される。この場合、カムフォロア43aは、カム板42の外周側にあるカム溝42bの2つの側辺42baのうち光軸OA側の側辺42ba1に押圧されることになり、係合部27は、2ヶ所の光軸OA側の側辺42ba1によってY方向の動きが規制されることになる。
【0055】
上述のように、ロック部材43は、電源OFFの状態でカム板42を回転させる力が働かないので、ロック部材43が移動することがない。したがって、電源OFFの状態でも撮像素子21を含む可動部20が固定されるので、可動部20が重力により落下したり、持ち運びの振動により移動することがない。ゆえに、電力を消費せずに撮像素子21を含む可動部20を保持することができる。
なお、ロック部材43が係合部27をロックしない
図4(a)に示す非ロック時(ロック解除時)において、カムフォロア43aは、この、カム板42に設けられたカム溝42bの光軸OAに近い端部に位置する。カム溝42bの光軸OAに近い端部における2つの側辺42bbは、互いに平行で、且つ、ロック部材43の直交面内での移動方向に対して直交している。
また、ロック部材43の移動を案内するガイド枠46f(
図5に示す)によりロック部材43のX方向の移動が規制されている。このため、ロック部材43の直交面内での移動が規制される。結果として、非ロック時において電源OFFの状態においてもロック部材43が自由に移動することがないため、常時通電する必要がなくなり、電力消費を抑制することができる。
【0056】
なお、このように可動部20の保持は、電源がOFFにされたときだけでなく、撮影者が操作部15より選択操作可能なようにしてもよい。また、撮影モードによって、自動的に可動部20の保持するようにしてもよい。
【0057】
また、実施形態で固定部30には、係合部27が挿通される2つの孔部37が設けられているが、撮像素子21の後面側にはロック動作のための他の開口は設けられていない。
ゆえに、撮影時に撮像素子21の温度が上昇した場合に、固定部30の固定フレーム31を放熱経路として利用することができ、放熱機構の面積を十分に確保することができるので、熱源に近い部分で効率よく放熱することができる。
【0058】
また、係合部27を、撮像素子21の後側ではなく縁部に配置することで、係合部27同士の距離を大きく取ることができる。したがって可動部20を、より位置精度よくロックすることができる。
【0059】
例えば、実施形態と異なりロック解除時のロック部材43の退避を、バネの付勢力で行った場合、係合部27の待機位置がずれていると、ロック部材43と係合部27との摩擦力が大きくなり、ロック部材43の退避を正確かつ確実に行うことができない可能性がある。なお、弾性体の付勢力を上げて解決しようとすることも考えられるが、この場合、ロック時の動作負荷が増大する弊害がある。
しかし、実施形態ではロック解除時においては、アクチュエータ44を逆に回転させることで、ロック解除時も十分な力でロック部材43を係合部27との係合位置から退避させる。したがってロック部材43の移動を正確かつ確実に行うことができる。
【0060】
以上、好適な実施形態について説明したが、これらの実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
OA 光軸
1 カメラ
20 可動部
21 撮像素子
22 可動フレーム
27 係合部
27a 凹部
30 固定部
31 固定フレーム
37 孔部
40 ロックユニット
42 カム板
42a 歯車
42b カム溝
43 ロック部材
43a カムフォロア
43b 弾性部
43c U字部
43d テーパ部
43e 凸部
44 アクチュエータ
44a 回転軸
45 第1ピニオンギア
46 ベース部
46a カム板保持軸
46b ギア保持部
46c 貫通孔
47 ウォームギア
48 第2ピニオンギア