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  • 特許-歯間清掃具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】歯間清掃具
(51)【国際特許分類】
   A61C 15/02 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
A61C15/02 501
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018248341
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020103850
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-25
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】吉川 侑
(72)【発明者】
【氏名】朝山 紘貴
【合議体】
【審判長】平瀬 知明
【審判官】三森 雄介
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-762(JP,A)
【文献】特開2016-131602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、前記基部から真っ直ぐに延在する軸部と、を有する基材部と、
前記軸部のうちその先端から基端に向かって延びる先端領域の少なくとも一部を軟質部材で被覆する軟質部と、を備え、
前記軸部は、前記先端領域及び前記先端領域から基端に向かって延びる基端領域を含む先端部と、前記基部から連続して扁平な板状かつ当該扁平な板状の面において前記先端部に向かうにつれてその幅を減少させるテーパ形状で延在する移行部と、を含み、
前記先端領域は、前記軸部の軸方向に直交する前記軸部の断面において、正円形状であり、
前記基端領域は、前記軸部の軸方向に直交する前記軸部の断面において、四角形状であり、第1方向に規定される第1外形寸法と、前記第1方向に直交する第2方向に規定されて前記第1外形寸法より小さい第2外形寸法と、を有し、前記先端領域側から前記移行部側に向かうにつれて前記先端領域の形状から前記移行部の形状に近づくように形成されている、歯間清掃具。
【請求項2】
前記第1外形寸法は、前記基部に沿って延在する平面に平行な方向に規定される、請求項1に記載の歯間清掃具。
【請求項3】
前記第1外形寸法と前記第2外形寸法との比(第2外形寸法/第1外形寸法)が0.20~0.98である、請求項1又は2に記載の歯間清掃具。
【請求項4】
前記第2外形寸法が1.0mm以上である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の歯間清掃具。
【請求項5】
前記軸部の軸方向に規定される前記軟質部の長さが15mm以上である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の歯間清掃具。
【請求項6】
前記基端領域において、前記先端領域側から前記移行部側に向かって前記第1外形寸法と前記第2外形寸法との比(第2外形寸法/第1外形寸法)が次第に減少する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の歯間清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯間を清掃する歯間清掃具が知られている。例えば特許文献1に開示された歯間清掃具は、合成樹脂から形成された基材部と、エラストマーから形成された軟質部と、を備えている。基材部は、持ち手としての扁平なハンドル部と、ハンドル部の先端から延びる細長い芯基材部と、を備えている。軟質部は、芯基材部の少なくとも一部を覆う被覆部と、被覆部の表面から突き出る複数の突起部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/176297号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯間清掃具の芯基材部は通常、その先端に向かうにつれて縮径する略円錐(テーパ)形状に形成されており、比較的狭い歯間から比較的広い歯間までの一定範囲の歯間を清掃することが出来る設計となっている。しかしながら、広い歯間を清掃するために芯基材部が太い箇所では、その太さゆえに強度が増し、歯間への追随性が低く、無理に挿入しようとすると折れやすいという課題が発生していた。この課題は特に一般的にLサイズと呼ばれる直径(エラストマー部含む)が1.5mm以上の場合において顕著に発生している。しかし、ある程度広い歯間の清掃には、強度のある軸で強く押し付けてしっかりと清掃したいというニーズがあり、芯基材部を細くすれば解決できるという問題でもない。
【0005】
そこで、本発明は、歯間への挿入のしやすさと清掃効果の向上とを両立する歯間清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る歯間清掃具は、
基部と、基部から延在する軸部と、を有する基材部と、
軸部の少なくとも一部を被覆する軟質部と、を備え、
軸部の少なくとも一部は、軸部の軸方向に直交する軸部の断面において、第1方向に規定される第1外形寸法と、第1方向に直交する第2方向に規定されて第1外形寸法より小さい第2外形寸法と、を有する。
【0007】
この態様によれば、軸部の少なくとも一部の断面において、第1方向に第1外形寸法が規定され、第1方向に直交する第2方向に第1外形寸法よりも小さい第2外形寸法が規定される。その結果、軸部は、より小さな第2外形寸法の第2方向により曲がりやすい一方で、第1外形寸法の第1方向にはより曲がりにくい。言い換えれば、軸部の強度は第1方向に沿って向上する。従って、歯間への挿入時、より曲がりやすい第2方向に曲がるように歯間清掃具を使用することで挿入のしやすさを実現することができる。一方で、より曲がりにくい第1方向に沿って歯間清掃具を歯に押し当てるように使用することによって、軟質部を歯の側面により強く押し当てることができるので、清掃効果を向上させることができる。従って、この歯間清掃具は、歯間への挿入のしやすさと清掃効果の向上とを両立することができる。
【0008】
上記態様において、第1外形寸法は、基部に沿って延在する平面に平行な方向に規定されることが好ましい。また、第1外形寸法と第2外形寸法との比(第2外形寸法/第1外形寸法)は0.20~0.98であることが好ましい。また、第2外形寸法が1.0mm以上であることが好ましい。さらに、軸部の軸方向に規定される軟質部の長さが15mm以上であることが好ましい。加えて、軸部の先端部から基部に向かって第1外形寸法と第2外形寸法との比(第2外形寸法/第1外形寸法)が次第に減少しても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、歯間への挿入のしやすさと清掃効果の向上とを両立する歯間清掃具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る歯間清掃具の構造を概略的に示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る歯間清掃具の構造を概略的に示す側面図である。
図3図1の3-3線に沿った断面図である。
図4図1の4-4線に沿った端面図である。
図5図1の5-5線に沿った端面図である。
図6図1の6-6線に沿った端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。図1図3に示されるように、本発明の一実施形態に係る歯間清掃具1は、基材部10と、基材部10の少なくとも一部を被覆する軟質部20と、を備えている。歯間清掃具1は、例えば基材部10に形成された1対の接続部30、30によって歯間清掃具1の短手方向(第1方向)D1に例えば10個の歯間清掃具1が並列に接続されて形成された接続体40から個別に切り離されたものである。
【0012】
基材部10は、使用者が把持する基部11と、基部11の先端から歯間清掃具1の短手方向D1に直交する長手方向D2に延在して、使用者の歯間に挿入される軸部12と、を備えている。なお、本明細書において、基部11から軸部12に向かう側を先端側とし、軸部12から基部11に向かう側を基端側とする。
【0013】
基部11は、例えば扁平に広がる板状に形成されており、本実施形態では、例えば平たい直方体形状に形成されているが、使用者が把持することができる形状であれば、その他の形状に形成されてもよい。
【0014】
軸部12は、基部11の一端である先端から長手方向D2に延在している。軸部12は、基部11から連続して扁平な板状に延在する移行部13と、移行部13の先端から軸部12の先端まで細い軸状に延びる先端部14と、を備えている。移行部13は、軸部12の先端に向かうにつれて短手方向D1に沿って規定される幅を減少させるテーパ形状に形成される。
【0015】
基材部10は例えば合成樹脂材料から成形される。合成樹脂材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド等を採用することができる。また、合成樹脂材料には、例えば1~30重量%程度の割合でガラス繊維等の繊維素材が添加されてもよい。
【0016】
軟質部20は、軸部12の先端部14の少なくとも一部の外周面を被覆する被覆部21と、被覆部21から突き出る複数の突起部22と、を備えている。突起部22は、例えば円錐形状に形成されており、被覆部21の基端から先端まで、軸部12の先端部14の軸心周りに螺旋状に配置されている。被覆部21の外周面からの突起部22の高さは、被覆部21の基端から先端に向かうにつれて減少する。
【0017】
軟質部20は、基部10の合成樹脂材料の硬度よりも低い硬度を有する樹脂材料から形成される。樹脂材料としてはエラストマーを採用することができ、エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、シリコーン、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が用いられてもよい。エラストマーの硬度は、デュロメータ硬さタイプA(JISK6253)が、10~50であることが好ましく、10~40であることがより好ましい。本実施形態では、デュロメータ硬さタイプAは35である。
【0018】
本実施形態の歯間清掃具1において、長手方向D2に規定される基材部10の長さL1は例えば45mm~55mmに設定されている。短手方向D1に規定される基部11の幅W1は例えば3mm~10mmに設定されている。また、短手方向D1及び長手方向D2に直交する厚さ方向(第2方向)D3に規定される基部11の厚さT1は例えば0.5mm~10mmに設定されている。
【0019】
被覆部21は、長手方向D2に規定されるその基端から先端までの長さは例えば10mm~25mmに設定されている。被覆部21は、長手方向D2の同じ位置では均一な厚さで形成されており、その厚さは例えば0.1mm~2.5mmに設定されている。被覆部21の外周面からの突起部22の高さは例えば0.1mm~5.0mmに設定されている。なお、上述した本発明の課題は、被覆部21が長いほど生じやすく、本願の効果がより発揮されることから、長手方向D2に規定される被覆部21の長さは好ましくは15mm以上、より好ましくは16mm以上、特に好ましくは18mm以上である。
【0020】
先端部14は、その先端から基端に向かって延びる先端領域14aと、先端領域14aから移行部13まで延びる基端領域14bと、を備えている。先端領域14aの少なくとも一部は被覆部21に被覆されている。図4に示すように、軸部12の軸心に直交する先端領域14aの断面はほぼ正円形状に設定されている。先端領域14aは、その基端から先端に向かうにつれてその縮径するテーパ形状に形成されており、その直径(すなわち、短手方向D1に規定される第1外形寸法X1又は厚さ方向D3に規定される第2外形寸法X2)は例えば0.6mm~3.0mmに設定されている。本実施形態では、軟質部20の先端から基端に向かって先端領域14aの長さは15mmに設定される一方で、同様に基端領域14bの長さは5mmに設定されている。
【0021】
一方で、図5及び図6に示すように、基端領域14bでは、その断面において、短手方向D1に規定される第1外形寸法X1が、短手方向D1に直交する厚さ方向D3に規定される第2外形寸法X2よりも大きく設定される。基端領域14bでは、第2外形寸法X2は、1.0mm以上に設定されることが好ましく、1.1mm以上に設定されることが更に好ましい。第1外形寸法X1と第2外形寸法X2との比(X2/X1)は0.20~0.98に設定されており、より好ましくは0.30~0.97が挙げられる。この比(X2/X1)は、基端領域14bの先端部から基部に向かって次第に減少するように設定しても良い。なお、第1外形寸法X1及び第2外形寸法X2のうちで相対的に長いほうがX1であり、短手方向D1の外形寸法が必ずしもX1となるわけではない。本実施形態では、先端領域14b側から移行部1側に向かうにつれて四角形に近くなるように設定されている。例えば図5の断面における先端領域14b側ではほぼ楕円形状であるのに対して、移行部1側ではほぼ長方形に近い形状である。
【0022】
以上のような歯間清掃具1によれば、軸部12の基端領域14bにおいて、第2外形寸法X2が第1外形寸法X1よりも小さいので、第2外形寸法X2に沿った厚さ方向D3に軸部12はより曲がりやすい一方で、第1外形寸法X1に沿った短手方向D1に軸部12はより曲がりにくい。言い換えれば、軸部12の強度は、長手方向D2との比較において短手方向D1に沿って向上する。従って、歯間への挿入時、より曲がりやすい厚さ方向D3に曲がるように歯間清掃具1を使用することで挿入のしやすさを実現することができる。
【0023】
一方で、より曲がりにくい短手方向D1に沿って歯間清掃具1を歯に押し当てるように使用することによって、被覆部21や突起部22を歯の側面により強く押し当てることができるので、清掃効果を向上させることができる。従って、歯間への挿入のしやすさと清掃効果の向上とを両立することができる。
【0024】
また、基端領域14bよりも軸部12の先端側の先端領域14aの断面はほぼ正円形状に設定されているので、先端領域14aは、軸部12の軸心に交差するいずれの方向にも折れ曲がることができる。従って、上述した基端領域14bの厚さ方向D3への曲がりやすさに加えて、歯間清掃具1を歯間に挿入する際の軸部12の折れ曲がりの自由度をさらに向上させることができる。
【0025】
次に、歯間清掃具1の製造方法について以下に説明する。まず、基材部10の外形を象った第1金型の充填空間に溶融した合成樹脂材料が充填されて基材部10が成形される。その後、基材部10は第1金型から取り出される。続いて、成形された基材部10は、軟質部20の外形を象った第2金型の充填空間内に配置される。充填空間には、溶融したエラストマーが充填され軟質部20が成形される。こうして歯間清掃具1が成形される。歯間清掃具1は、その後、第2金型から取り出される。
【0026】
以上のような歯間清掃具1では、被覆部21及び突起部22は、軸部12の先端領域14aだけでなく、基端領域14bも被覆してもよい。また、第1外形寸法X1及び第2外形寸法X2の設定は、基端領域14bのみだけではなく、先端領域14aの一部又は全部の領域まで適用されてもよい。さらに、第1外形寸法X1が厚さ方向D3に設定され、第1外形寸法X1より小さい第2外形寸法X2が短手方向D1に設定されてもよい。
【0027】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…歯間清掃具、10…基材部、11…基部、12…軸部、20…軟質部、D1…短手方向(第1方向)、D3…厚さ方向(第2方向)、X1…第1外形寸法、X2…第2外形寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6