(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】エクソソームの分離及び検出方法、並びに、分離及び検出キット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20250321BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
G01N33/574 Z
G01N33/543 541A
(21)【出願番号】P 2021554222
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2020037516
(87)【国際公開番号】W WO2021079717
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019193707
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】524412640
【氏名又は名称】JSR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】和久井 世紀
(72)【発明者】
【氏名】河上 裕
(72)【発明者】
【氏名】谷口 智憲
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/068772(WO,A1)
【文献】特表2016-512197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0309018(US,A1)
【文献】Theresa L. WHITESIDE,The role of tumor-derived exosomes in epithelial mesenchymal transition(EMT),Translational Cancer Research,2017年02月28日,Vol.6, Supp.1,pp.S90-S92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543,33/574,
C12Q 1/6804,
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII),
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN),
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質を含む捕捉用分子と、
がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質及び標識物質を含む検出用分子と、を備え、
前記捕捉用分子及び前記検出用分子のうち少なくともいずれか一方の分子における前記がん細胞表面に発現する抗原が、細胞表面ビメンチンであ
り、
初期がんの診断用である、エクソソームの分離及び検出キット。
【請求項2】
がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質を含む捕捉用分子と、
がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質及び標識物質を含む検出用分子と、を備え、
前記捕捉用分子及び前記検出用分子のうち少なくともいずれか一方の分子における前記がん細胞表面に発現する抗原が、細胞表面ビメンチンであ
り、
コンパニオン診断用である、エクソソームの分離及び検出キット。
【請求項3】
初期肺がんの診断用である、請求項
1に記載のキット。
【請求項4】
前記細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質が抗CSV抗体である、請求項
1~3のいずれか一項に記載のキット。
【請求項5】
前記検出用分子におけるがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質が、抗CSV抗体であり、前記捕捉用分子におけるがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質が、抗CSV抗体、抗EpCAM抗体又は抗PD-L1抗体である、請求項
1~4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
前記捕捉用分子が磁性粒子に固定されている、請求項
1~5のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクソソームの分離及び検出方法、並びに、分離及び検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞は、エクソソームと呼ばれる、その内部にタンパク質、核酸、脂質、糖等の様々な細胞内容物を含む、脂質二重膜からなる小胞を、細胞外に放出することが知られている。エクソソームは、生体の病態を知るための重要な手掛かりとなる物質として注目されており、がんを始めとした各種疾患における研究が盛んに行われている。
【0003】
一方、ビメンチンは、細胞質形成に重要なタンパク質の一つであり、細胞内の上皮間葉転換(EMT)のマーカーとして知られている。がん細胞ではビメンチンが過剰発現し、その発現量とがんの進展に相関があることが明らかになっている。特定の環境下ではビメンチンは細胞表面に移動する。この細胞表面に移動したビメンチンは、細胞表面ビメンチン(CSV)と呼ばれる。
【0004】
CSVは、自己免疫不全やウイルス感染、がんに関与していることや、活性化マクロファージや血小板、アポトーシスを起こしたTリンパ球でCSVが発現していることから、炎症性疾患に関与していることが明らかになっている。最近では、抗CSV抗体と、癌腫の診断マーカーとして知られている上皮細胞接着分子(EpCAM、CD326)に対する抗体とを組み合わせて、末梢循環腫瘍細胞(CTC)を検出する方法が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Satelli A et al., “Circulating tumor cell enumeration using a combination of EpCAM and Cell-surface vimentin based methods for monitoring breast cancer therapeutic response.”, Clin Chem., Vo. 61, Issue 1, pp. 259-266, 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、CTCは血液中に極少量しか存在せず、がん診断又はコンパニオン診断を目的としたCTCの抗原マーカーの検出は困難である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、がん診断又はコンパニオン診断に利用可能な、エクソソームを分離及び検出する方法、並びに、当該方法に使用するキットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 生体試料と、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質を含む捕捉用分子とを接触させて、エクソソームと前記捕捉用分子との複合体を形成させる複合体形成工程と、
前記複合体と、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質及び標識物質を含む検出用分子とを接触させて、前記複合体を前記検出用分子で検出する検出工程と、
を含み、
前記捕捉用分子及び前記検出用分子のうち少なくともいずれか一方の分子における前記がん細胞表面に発現する抗原がCSVである、エクソソームの分離及び検出方法。
(2) 前記CSVに対する特異的結合物質が抗CSV抗体である、(1)に記載の方法。
(3) 前記捕捉用分子におけるがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質が、抗CSV抗体であり、前記検出用分子におけるがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質が、抗CSV抗体、抗EpCAM抗体又は抗PD-L1抗体である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 前記検出用分子におけるがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質が、抗CSV抗体であり、前記捕捉用分子におけるがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質が、抗CSV抗体、抗EpCAM抗体又は抗PD-L1抗体である、(1)又は(2)に記載の方法。
(5) 前記捕捉用分子が磁性粒子に固定されている、(1)~(4)のいずれか一つに記載の方法。
(6) 前記複合体形成工程の後であって、前記検出工程の前に、
洗浄液を添加して、前記複合体以外の夾雑物を除去する洗浄工程を更に含む、(1)~(5)のいずれか一つに記載の方法。
(7) 前記検出工程において、前記複合体と、前記検出用分子とを接触させ、次いで、洗浄液を添加して、前記検出用分子が結合した前記複合体以外の夾雑物を除去した後、前記複合体を前記検出用分子で検出する、(1)~(6)のいずれか一つに記載の方法。
【0009】
(8) がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質を含む捕捉用分子と、
がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質及び標識物質を含む検出用分子と、を備え、
前記捕捉用分子及び前記検出用分子のうち少なくともいずれか一方の分子における前記がん細胞表面に発現する抗原が、CSVである、エクソソームの分離及び検出キット。
(9) 前記細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質が抗CSV抗体である、(8)に記載のキット。
(10) 前記捕捉用分子におけるがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質が、抗CSV抗体であり、前記検出用分子におけるがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質が、抗CSV抗体、抗EpCAM抗体又は抗PD-L1抗体である、(8)又は(9)に記載のキット。
(11) 前記検出用分子におけるがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質が、抗CSV抗体であり、前記捕捉用分子におけるがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質が、抗CSV抗体、抗EpCAM抗体又は抗PD-L1抗体である、(8)又は(9)に記載のキット。
(12) 前記捕捉用分子が磁性粒子に固定されている、(8)~(11)のいずれか一つに記載のキット。
(13) がんの診断用である、(8)~(12)のいずれか一つに記載のキット。
(14) 初期がんの診断用である、(8)~(13)のいずれか一つに記載のキット。
(15) 肺がんの診断用である(8)~(14)のいずれか一つに記載のキット。
(16) コンパニオン診断用である、(8)~(12)のいずれか一つに記載のキット。
【発明の効果】
【0010】
上記態様のエクソソームの分離及び検出方法、並びに、分離及び検出キットによれば、エクソソームを分離及び検出することができ、がん診断又はコンパニオン診断に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】解析例1における肺がん患者検体又は健常者検体中のCSV陽性エクソソームの測定結果を示すグラフである。図中、()内の数値は症例数を表す。
【
図2】
図1に示す測定結果から作成したROC曲線を示すグラフである。
【
図3】解析例2における肺がん患者検体又は健常者検体中のCSV及びEpCAM陽性エクソソームの測定結果を示すグラフである。図中、()内の数値は症例数を表す。
【
図4】
図3に示す測定結果から作成したROC曲線を示すグラフである。
【
図5】解析例3における肺がん患者検体又は健常者検体中のCSV及びPD-L1陽性エクソソームの測定結果を示すグラフである。図中、()内の数値は症例数を表す。
【
図6】
図5に示す測定結果から作成したROC曲線を示すグラフである。
【
図7A】
図1に示す測定結果を肺がんの種類で分類したグラフである。図中、()内の数値は症例数を表す。
【
図7B】
図3に示す測定結果を肺がんの種類で分類したグラフである。図中、()内の数値は症例数を表す。ただし、Ad群の(12000)はSignal/Noise値を表す。
【
図7C】
図5に示す測定結果を肺がんの種類で分類したグラフである。図中、()内の数値は症例数を表す。
【
図8A】
図1に示す測定結果を肺がんの病理病期で分類したグラフである。図中、()内の数値は症例数を表す。
【
図8B】
図3に示す測定結果を肺がんの病理病期で分類したグラフである。図中、()内の数値は症例数を表す。ただし、III群の(12000)はSignal/Noise値を表す。
【
図8C】
図5に示す測定結果を肺がんの病理病期で分類したグラフである。図中、()内の数値は症例数を表す。
【
図9A】
図1に示す測定結果を腺がん又は扁平上皮がんの病理病期で分類したグラフである。図中、()内の数値は症例数を表す。
【
図9B】
図3に示す測定結果を腺がん又は扁平上皮がんの病理病期で分類したグラフである。図中、()内の数値は症例数を表す。ただし、Adenocarcinoma III群の(12000)はSignal/Noise値を表す。
【
図9C】
図5に示す測定結果を腺がん又は扁平上皮がんの病理病期で分類したグラフである。図中、()内の数値は症例数を表す。
【
図10】実施例4における肺がん患者検体又は健常者検体中のCSV陽性エクソソーム、CSV及びEpCAM陽性エクソソーム、並びに、CSV及びGPC3陽性エクソソームの測定結果を示すグラフである。
【
図11】実施例5におけるCSV/PD-L1評価系及びPD-L1/CSV評価系でのCSV及びPD-L1陽性エクソソームの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0013】
<エクソソームの分離及び検出方法>
一実施形態において、本発明は、複合体形成工程と、検出工程と、を含む、エクソソームの分離及び検出方法を提供する。
複合体形成工程では、生体試料と、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質を含む捕捉用分子とを接触させて、エクソソームと前記捕捉用分子との複合体を形成させる。
検出工程では、前記複合体と、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質及び標識物質を含む検出用分子とを接触させて、前記複合体を前記検出用分子で検出する。
前記捕捉用分子及び前記検出用分子のうち少なくともいずれか一方の分子におけるがん細胞表面に発現する抗原が、細胞表面ビメンチン(CSV)である。
【0014】
発明者らは、CSVが、がん細胞から放出されたエクソソームの表面に主に発現していることを見出し、本発明を完成するに至った。
従来のCTCの抗原マーカーの検出法では、血液10mL中にCTCが1個以上10個以下程度しか含まれないことから、大量の血液試料が検出に必要であり、がん診断を目的としてCTCの抗原マーカーを検出することは困難である。特に、がん診断及びコンパニオン診断においては、診断の迅速性、正確性が求められるが、CTCの抗原マーカーの検出は、そのニーズを充足することができない。
これに対して、本発明の一実施形態に係るエクソソームの分離及び検出方法(以下、単に「本実施形態の分離及び検出方法」と略記する場合がある)では、エクソソームは、血液数十μL程度の試料に、測定に十分量含まれることから、がん診断又はコンパニオン診断の検出対象として好適である。また、エクソソーム1個に存在する抗原マーカーのうち、CSVと既知のがん抗原マーカーとを組み合わせて標的とすることで、がん細胞から放出されたエクソソームを特異的に分離することができる。これにより、がん診断の精度を高めることができる。さらに、CSVと組み合わせる既知のがん抗原マーカーとして治療薬の標的となるがん抗原を選択することで、コンパニオン診断を行うことができる。
次いで、本実施形態の分離及び検出方法の各工程について詳細を説明する。
【0015】
[複合体形成工程]
複合体形成工程では、生体試料と、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質を含む捕捉用分子とを接触させる。この接触により、エクソソームと前記捕捉用分子との複合体が形成される。
【0016】
生体試料としては、例えば、体液、細胞培養上清、組織細胞の破砕液等の各種液体が挙げられる。中でも、体液、又は細胞培養上清が好ましい。体液としては、全血、血清、血漿、各種血球、血餅、血小板等の他、尿、精液、母乳、汗、間質液、間質性リンパ液、骨髄液、組織液、唾液、胃液、関節液、胸水、胆汁、腹水、羊水等が挙げられる。中でも、血漿が好ましい。なお、血漿は、クエン酸、ヘパリン、EDTA等の抗凝固剤で処理されたものでもよい。
【0017】
生体試料が由来する種は特に限定されず、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、サル等が挙げられる。これらのうち、ヒト由来試料が好ましい。また、種と体液の組み合わせとしては、ヒト由来血漿が好ましい。
【0018】
上記生体試料は、公知のバッファーに添加しておく等して予め前処理したものを用いてもよいが、生体から摂取したものをそのまま用いることもできる。すなわち、本実施形態の分離及び検出方法によれば、PEG沈殿法、超遠心機等を用いた単離法等による前処理を行わず簡便に、エクソソームの選択的な分離を行うことができる。
【0019】
生体試料の量は、適宜調整することができるが、例えば、1μL以上50μL以下であってもよく、例えば、1μL以上20μL以下であってもよい。
【0020】
複合体形成工程で用いられる捕捉用分子は、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質を含む。がん細胞から放出されたエクソソームは、その表面にがん細胞表面に発現する抗原を有することから、当該抗原に対する特異的結合物質を用いることで、がん細胞から放出されたエクソソームを捕捉することができる。
【0021】
がん細胞表面に発現する抗原としては、正常細胞よりもがん細胞で高発現していることが知られている抗原、或いは、がん細胞でのみ特異的に発現していることが知られている抗原を意味する。このような抗原としては、例えば、細胞表面ビメンチン(CSV)、上皮細胞接着分子(EpCAM、CD326)、プログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)、glypican-3(GPC3)、glypican-1(GPC1)、がん胎児性抗原(CEA)、CD4、CD5、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD44、CD52、CD123、CD171、Cancer Antigen 125、Claudin18、受容体型チロシンキナーゼROR1、シアリルLex-i(SLX)、シアリルルイスA(CA19-9)、免疫共刺激タンパク質B7-homolog6(B7H6)、細胞表面糖タンパク質(CS-1)、受容体型チロシンキナーゼ3(FLT3)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、B細胞成熟抗原(BCMA)、ウィルムス腫瘍1(WT1),NY-ESO-1、Caveolin-1、Fasリガンド(FasL)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、Galectine3、CD151、Tetraspanin 8、上皮成長因子受容体(EGFR)、HER2、Ribophorin 2(RPN2)、CD44、TGF-βが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
ヒトの上記各種がん細胞表面に発現する抗原の塩基配列及びアミノ酸配列の情報は、Genbank等のデータベースから入手できる。ヒトCSV(ビメンチンとして)のアミノ酸配列は、例えば、Genbankのアクセッション番号NP_003371.2として開示されている。ヒトEpCAMのアミノ酸配列は、例えば、Genbankのアクセッション番号NP_002345.2として開示されている。ヒトPD-L1のアミノ酸配列は、例えば、Genbankのアクセッション番号NP_054862.1として開示されている。ヒトGPC3のアミノ酸配列は、例えば、Genbankのアクセッション番号NP_001158089.1として開示されている。
【0023】
捕捉用分子は、上記抗原に対する特異的結合物質を含む。
特異的結合物質としては、例えば、抗原に特異的に結合する物質が挙げられる。抗原に特異的に結合する物質としては、例えば、抗体、アプタマー等が挙げられる。
【0024】
抗体としては、がん細胞上の抗原配列(エピトープ)に対する結合能を有するものであればよく、具体的には、例えば、抗CSV抗体、抗EpCAM抗体、抗PD-L1抗体、抗GPC3抗体が挙げられる。これらの抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体であることが好ましい。さらに、これらの抗体は、二重特異性抗体であってもよい。抗体のクラスとしては、例えば、IgG、IgMが挙げられるが、IgGがより好ましい。また、抗体は、ヒト化抗体等のキメラ抗体であってもよい。抗体は、例えば、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳動物、ニワトリ等の鳥類、ヒト等の動物種由来のものでもよく、特に制限されない。抗体は、例えば、前記動物種由来の血清から、従来公知の方法により調製してもよく、公知の抗体遺伝子配列情報を用いて合成したベクターから抗体を調製してもよく、市販の抗体を使用してもよい。市販の抗CSVモノクローナル抗体としては、Abnova社製のマウス抗ヒトCSVモノクローナル抗体(アイソタイプ:IgG2b、κ)等が挙げられる。
【0025】
また、抗体として抗体断片を用いることもできる。抗体断片としては、例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、rIgG、scFv等が挙げられる。
【0026】
アプタマーとは、標的物質に対する特異的結合能を有する物質である。アプタマーとしては、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。抗原に特異的結合能を有する核酸アプタマーは、例えば、systematic evolution of ligand by exponential enrichment(SELEX)法により選別することができる。また、抗原に特異的結合能を有するペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたTwo-hybrid法により選別することができる。
【0027】
また、抗原がCSVである場合に、CSVへの結合能を有することが知られている、Nkp46タンパク質等を特異的結合物質として用いることもできる。
【0028】
捕捉用分子は、固相担体に固定されていることが好ましい。
【0029】
固相担体の材質としては、例えば、ポリスチレン類、ポリエチレン類、ポリプロピレン類、ポリエステル類、ポリ(メタ)アクリロニトリル類、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサッカライド等の高分子化合物;ガラス;金属;磁性体;磁性体を含む樹脂組成物;これらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
また、固相担体の形状は特に限定されるものではなく、例えば、トレイ状、球状、粒子状、繊維状、棒状、盤状、容器状、マイクロ流路が挙げられる。
本工程においては、固液分離や洗浄の容易性の観点から、固相担体として磁性粒子を用いることが好ましい。
【0031】
上記磁性粒子としては、例えば、四三酸化鉄(Fe3O4)、三二酸化鉄(γ-Fe2O3)、各種フェライト、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、クロム等の金属からなる磁性体微粒子、及びこれら金属の合金からなる磁性体微粒子であって、これら磁性体微粒子を樹脂中に含む磁性粒子が挙げられる。樹脂としては、例えば、疎水性ポリマー、親水性ポリマー等が挙げられる。
中でも、磁性体を樹脂中に含む磁性粒子が好ましく、超常磁性微粒子を含む母粒子の表面にポリマー層が形成されたものがより好ましい。例えば、特開2008-32411号公報(参考文献1)に記載の、超常磁性微粒子を含む母粒子の表面に、疎水性の第1ポリマー層が形成され、当該第1ポリマー層上に、少なくとも表面にグリシジル基を有する第2ポリマー層が形成され、当該グリシジル基を化学修飾することにより極性基が導入された磁性粒子が挙げられる。
【0032】
ここで、超常磁性微粒子としては、粒子径20nm以下(好ましくは粒子径5nm以上20nm以下)の酸化鉄系の微粒子が代表的であり、XFe2O4(X=M n、Co、Ni、Mg、Cu、Li0.5Fe0.5等)で表現されるフェライト、Fe3O4で表現されるマグネタイト、γ-Fe2O3が挙げられ、飽和磁化が強く、かつ残留磁化が少ない点で、γ-Fe2O3及びFe3O4のいずれか一方を含むことが好ましい。
【0033】
また、上記疎水性の第1ポリマー層を形成するためのモノマーは、単官能性モノマー、架橋性モノマーに大別される。
上記単官能性モノマーとして、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系モノマー;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル系モノマーが挙げられる。
また、上記架橋性モノマーとして、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート; ブタジエン、イプレン等の共役ジオレフィンの他、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレートが挙げられる。
【0034】
また、上記第2ポリマー層を形成するためのモノマーは、粒子表面への官能基導入を主目的とするものであり、グリシジル基含有モノマーを含むものである。グリシジル基含有モノマーの含有量としては、第2ポリマー層を形成するためのモノマー中、20質量%以上が好ましい。ここで、グリシジル基を含む共重合性モノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0035】
第2ポリマー層のグリシジル基を化学修飾することにより導入される極性基としては、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質と反応可能な官能基であることが好ましく、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子を1個以上含むものがより好ましい。中でも、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシ基、又は活性エステル基がより好ましい。特に、磁性粒子の第2ポリマー層が前記極性基及び2,3-ジヒドロキシプロピル基を有する場合、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質(特に、がん細胞表面に発現する抗原に対する抗体)との結合性が良好となる。
【0036】
がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質を固相担体に結合する方法としては、物理的吸着法や、共有結合法、イオン結合法といった化学的に結合する方法等が用いられる。物理的吸着法としては、固相担体にがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質を直接固定する方法、アルブミン等の他のタンパク質に化学的に結合させてから吸着させて固定する方法等が挙げられる。化学的に結合させる方法としては、固相担体表面に導入した、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質と反応可能な官能基を利用して、固相担体上に直接結合する方法、固相担体とがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質との間にスペーサー分子(カルボジイミド化合物等)を化学結合で導入してから結合する方法、アルブミン等の他のタンパク質にがん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質を結合させた後、そのタンパク質を固相担体に化学結合する方法等が挙げられる。
【0037】
複合体形成工程は、上記各成分の他に、必要に応じて、塩類や、アルブミン等のタンパク質、界面活性剤等を用いて行ってもよい。
【0038】
複合体形成工程における反応温度は、通常2℃以上42℃以下の範囲内であり、反応時間は、通常5分間以上24時間以下である。2℃以上8℃以下で反応を行う場合、反応時間は好ましくは8時間以上30時間以下、室温(20℃)以上42℃以下で反応を行う場合、反応時間は好ましくは5分間以上4時間以下である。
【0039】
複合体形成工程において、系中のpHは特に限定されないが、好ましくはpH5以上10以下の範囲、より好ましくはpH6以上8以下の範囲である。目的のpHを維持するために、通常、緩衝液が用いられ、例えば、リン酸緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液、HEPES緩衝液、MES緩衝液が挙げられる。
【0040】
[検出工程]
検出工程では、前記複合体と、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質及び標識物質を含む検出用分子とを接触させる。この接触により、前記複合体中のエクソソームに前記検出用分子を結合させて、前記複合体を前記検出用分子で検出する。
【0041】
検出用分子は、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質及び標識物質を含む。中でも、検出用分子は、標識物質が結合した、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質を含むことが好ましい。
【0042】
がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質としては、上記「捕捉用分子」において例示されたものと同様のものが挙げられる。捕捉用分子が有する特異的結合物質と、検出用分子が有する特異的結合物質とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。捕捉用分子が有する特異的結合物質と、検出用分子が有する特異的結合物質とが同一である場合、当該特異的結合物質は、CSVに対する特異的結合物質であり、抗CSV抗体であることが好ましい。
【0043】
また、捕捉用分子が有する特異的結合物質又は検出用分子が有する特異的結合物質が抗体である場合に、それらは二重特異性抗体からなるものを用いることもでき、或いは、抗原の異なる複数の抗体の混合物を用いることもできる。
【0044】
また、前記捕捉用分子が有する特異的結合物質が、抗CSV抗体であり、前記検出用分子が有する特異的結合物質が、抗CSV抗体、抗EpCAM抗体又は抗PD-L1抗体であることが好ましい。
また、前記検出用分子が有する特異的結合物質が、抗CSV抗体であり、前記捕捉用分子が有する特異的結合物質が、抗CSV抗体、抗EpCAM抗体又は抗PD-L1抗体であることも好ましい。
捕捉用分子が有する特異的結合物質と、検出用分子が有する特異的結合物質とが上記組み合わせであることで、後述する実施例に示すように、エクソソームを高い精度で検出することができる。
【0045】
標識物質としては、例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラビジン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、グルタチオン、アルカリホスファターゼ(ALP)、蛍光色素、ポリエチレングリコール、メリト酸等の電荷分子等が挙げられる。標識物質がALPである場合には、ALP発光基質を添加することで、エクソソームを高い精度で検出することができる。ALP発光基質としては、例えば、p-ニトロフェニルリン酸(PNP)、4-メチルウンベリフェリルリン酸(4MUP)、3-(2'-spiroadamantane)4-methoxy-4-(3’’-phosphoryloxy)phenyl-1,2-dioxetane(AMPPD)、Disodium 3-(4-methoxyspiro{1,2-dioxetane-3,2’-(5’-chloro)tricyclo[3.3.1.13,7]decan}-4-yl)phenyl phosphate(CSPD)、2-クロロ-5-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}-4-イル)-1-フェニルホスフェート・二ナトリウム(CDP-Star)が挙げられる。
【0046】
検出工程における検出方法は、免疫測定法により行えばよく、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、ELISA、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射線免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法、イムノブロット法、ウェスタンブロット法が挙げられ、特異的結合物質が抗体である場合に、簡便に感度よく抗体を検出できる点から、CLEIA法又はELISA法が好ましい。ELISA法としては、競合法、サンドイッチ法等が挙げられる。
【0047】
CLEIA法を使用する場合の分離及び検出方法の一例を示す。まず、がん細胞表面に発現する抗原に対する抗体を固相担体に結合して捕捉用分子を固定させた後、生体試料を接触させて複合体を形成させる。そこに、標識物質を結合させたがん細胞表面に発現する抗原に対する抗体を含む検出用分子を添加して、さらなる複合体を形成させる。そして、形成された複合体中の標識量を検出することにより、生体試料に含まれるエクソソーム由来のシグナルを測定することができる。
【0048】
本実施形態の分離及び検出方法は、上記複合体形成工程及び上記検出工程に加えて、その他の工程を備えることができる。
例えば、上記複合体形成工程の後であって、上記検出工程の前に、洗浄工程を備えてもよい。
洗浄工程では、上記複合体形成工程で形成されたエクソソームと捕捉用分子との複合体を洗浄する。これによって、未反応の成分等の夾雑物が除去される。
【0049】
上記洗浄工程は、通常、捕捉用分子の構成成分である固相担体の形状により異なる方法がある。磁性粒子のように固相担体が粒子状である場合には、例えば洗浄液中に磁性粒子を分散させて洗浄する方法、又は集磁したまま浸漬により洗浄する方法が挙げられる。一方、固相担体がマイクロプレートのような形態である場合には、プレートに洗浄液の分注及び吸引を繰り返して洗浄する方法が挙げられる。
【0050】
また、固相担体が磁性粒子の場合、洗浄工程としては、磁性粒子を磁力により集めて磁性粒子と液相とを分離する集磁工程、及び該集磁工程で分離された磁性粒子を洗浄液中に分散させる分散工程とを含むことが好ましい。これによって、未反応の物質や試料中の夾雑物を磁性粒子表面から更に効率よく洗浄及び分離除去できる。
具体的には、反応容器に磁場を作用させ、磁性粒子を反応容器壁に付着させて集めた後、反応上清を除去し、さらに必要に応じて洗浄液を加え、同様に磁場を作用させた後上清を除去する操作を繰り返すことにより行えばよい。
【0051】
洗浄液としては、界面活性剤と上記複合体形成工程で挙げた緩衝液を含む洗浄液が好ましい。洗浄液のpHは、好ましくはpH5以上10以下の範囲、より好ましくはpH6以上8以下の範囲である。具体的には、溶液の総質量に対して0.1質量%のTween20を含むTris Buffered Saline(TBS)等が挙げられる。
【0052】
また、上記検出工程において、前記複合体と、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質及び標識物質を含む検出用分子とを接触させた後、洗浄液を添加して、前記検出用分子が結合した前記複合体を洗浄することもできる。これにより、未反応の物質や試料中の夾雑物を除去することができ、前記複合体を前記検出用分子でより高感度で検出することができる。
【0053】
また、本実施形態の分離及び検出方法では、後述する実施例に示すように、2種類以上の捕捉用分子及び検出用分子の組み合わせを用いて、並行して各工程を実施することで、エクソソームの検出感度をより高めることができる。
【0054】
<エクソソームの分離及び検出キット>
本発明の一実施形態に係るエクソソームの分離及び検出キット(以下、単に「本実施形態の分離及び検出キット」と略記する場合がある)は、捕捉用分子と、検出用分子とを備える。捕捉用分子は、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質を含む。検出用分子は、がん細胞表面に発現する抗原に対する特異的結合物質及び標識物質を含む。前記捕捉用分子及び前記検出用分子のうち少なくともいずれか一方の分子におけるがん細胞表面に発現する抗原が、CSVである。
【0055】
捕捉用分子及び検出用分子としては、上記「エクソソームの分離及び検出方法」に例示されたものと同様である。
【0056】
本実施形態の分離及び検出キットは、捕捉用分子と、検出用分子とに加えて、洗浄液を更に備えることができる。洗浄液としては、上記「エクソソームの分離及び検出方法」に例示されたものと同様である。
【0057】
<使用用途>
本実施形態の分離及び検出方法、並びに、分離及び検出キットは、がんの診断、特に初期がんの診断に好適に用いられる。すなわち、一実施形態において、本発明は、被検者より採取した生体試料を用いて、上記分離及び検出方法で検出されたエクソソーム由来のシグナルと、対照者より採取した生体試料中のバックグラウンドとなるエクソソーム由来のシグナルとを対比して、被検者試料中のエクソソーム由来のシグナルが対照者試料中のエクソソーム由来のシグナル(バックグラウンド)よりも強い場合に、被検者ががんを発症していると判定する判定工程を含む、がんの判定方法を提供する。
また、上記分離及び検出キットは、がんの診断用キットと言い換えることができる。
【0058】
診断対象となるがんとしては、大腸がん、乳がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、膵がん、胃がん、食道がん、肝がん、肺がん、腎がん、皮膚がん等が挙げられるが、中でも、肺がんが好ましい。
【0059】
判定工程では、上記検出工程で測定された被検者試料中のエクソソーム由来のシグナルについて、対照者試料中のエクソソーム由来のシグナルに基づいて統計学的な解析を行なって、比較を行うことで、被検者が、がんを発症しているか否かを判定することができる。例えば、被検者試料中のエクソソーム由来のシグナルが対照者試料中のエクソソーム由来のシグナルと比べて強い場合に、がんを発症している可能性が高いと判断される。なお、判定工程における対照者は、被検者と同年代及び同性の者であって、がんを発症していない者の平均であり、対照者におけるエクソソーム由来のシグナルは被検者におけるエクソソーム由来のシグナルと共に測定してもよく、別途予め測定した値から得られた統計値を用いてもよい。
【0060】
また、本実施形態の分離及び検出方法、並びに、分離及び検出キットは、がん治療薬を選定するためのコンパニオン診断に好適に用いられる。すなわち、一実施形態において、本発明は、被検者より採取した生体試料を用いて、上記分離及び検出方法で検出された特定のがん抗原が陽性のエクソソーム由来のシグナルと、対照者より採取した生体試料中の特定のがん抗原が陽性のエクソソーム由来のシグナルとを対比して、被検者における特定のがん抗原が陽性のエクソソーム由来のシグナルが対照者における特定のがん抗原が陽性のエクソソーム由来のシグナルと同程度、又は対照者における特定のがん抗原が陽性のエクソソーム由来のシグナルよりも強い場合に、当該特定のがん抗原を分子標的とするがん治療薬を被検者に使用するがん治療薬として選定する選定工程を含む、がん治療薬の選定方法を提供する。
また、上記分離及び検出キットは、がん治療薬のコンパニオン診断用キットと言い換えることができる。
【0061】
選定工程では、上記検出工程で測定された被検者試料中のエクソソーム由来のシグナルについて、対照者試料中のエクソソーム由来のシグナルに基づいて統計学的な解析を行なって、比較を行うことで、被検者に使用するがん治療薬を選定することができる。例えば、被検者試料中の特定のがん抗原が陽性のエクソソーム由来のシグナルが、対照者試料中の当該がん抗原が陽性のエクソソーム由来のシグナルと比べて同程度又は高い場合に、当該がん抗原を分子標的とするがん治療薬を被検者に使用するがん治療薬として選定することができる。なお、選定工程における対照者は、被検者と同年代及び同性の者であって、候補となるがん治療薬で治療効果が得られたがん患者の平均であり、対照者における特定のがん抗原が陽性のエクソソーム由来のシグナルは、対照者において投薬前に測定した値から得られた統計値を用いることができる。
【0062】
また、エクソソームは、種々の細胞、例えば免疫系の細胞や各種がん細胞から分泌されることから、がん治療薬の投与の前後での血中エクソソームの変化(存在量の増減だけに加え、膜タンパク質の量の変動を含む)を測定することにより、患者における薬効を評価することができる。すなわち、一実施形態において、本発明は、がん治療薬の投与前及び投与後の被検者より採取した生体試料を用いて、上記分離及び検出方法で検出されたエクソソーム由来のシグナルについて、がん治療薬の投与後の被検者より採取した生体試料中のエクソソーム由来のシグナルが、がん治療薬の投与前の被検者より採取した生体試料中のエクソソーム由来のシグナルよりも低い場合に、がん治療薬が薬効を示している可能性が高いと評価する評価工程を含む、がん治療薬の薬効評価方法を提供する。
【0063】
評価工程では、上記分離及び検出方法で検出されたエクソソーム由来のシグナルについて、がん治療薬の投与前の被検者より採取した生体試料中のエクソソーム由来のシグナルに基づいて統計学的な解析を行って比較を行う。解析方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。また、その後の判定は、例えば、がん治療薬の投与後の被検者より採取した生体試料中のエクソソーム由来のシグナルが、投与前の被検者より採取した生体試料中のエクソソーム由来のシグナルと比べて低い場合に、該がん治療薬ががんを抑える効果を有している可能性が高いと評価することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0065】
<サンプルの調製>
[ヘパリン血漿検体の調製]
健常者又は肺がん患者からへパリンナトリウム入りの採血管に採血し、室温、1500~1800×g、15分間遠心し、上清を別の容器に回収し、ヘパリン血漿検体とした。使用時まで-80℃で保存した。
【0066】
<エクソソームの測定方法>
後述する実施例及び比較例におけるエクソソームの測定は、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)により発光強度を測定することで行った。各実施例での測定方法について以下に詳細を説明する。
【0067】
[測定方法A]
(CSV/CSV評価系でのCLEIA法による発光強度測定)
予め、ヘパリン血漿検体それぞれを、適宜2%(w/v)BSA及び150mM NaClを含有する50mM Trisバッファーで希釈し、試料溶液とした。96ウェル白色マイクロプレート(コーニング社製)に、抗CSV抗体(カタログ番号:H00007431-M08、Abnova社製)を結合した0.05%(w/v)の抗体結合磁性粒子(Magnosphere MS300/Carboxyl(品番:MSP-S300-CA、JSRライフサイエンス社製)に抗体をJSR社で感作)分散液25μL/ウェルを添加し、次いで、試料溶液25μL/ウェルを添加した。さらに、アルカリホスファターゼ標識抗CSV抗体(カタログ番号:H00007431-M08、Abnova社製をJSR社で標識)含有溶液25μL/ウェルを添加した。その後、96ウェル白色マイクロプレートを25℃で20分間撹拌し、次いで、マイクロプレートウォッシャー(テカン社製 ハイドロフレックス)を用いて集磁しながら洗浄バッファー(Tween20を0.1質量%含むTBS)で反応後の粒子を5回洗浄した。さらにTBS 50μLを添加し、25℃で5分間撹拌し、次いで、マイクロプレートウォッシャー(テカン社製 ハイドロフレックス)を用いて集磁しながら洗浄バッファー(Tween20を0.1質量%含むTBS)で反応後の粒子を5回洗浄した。次いで、発光基質(LSI社製、基質液(R5)、CDP-Star)50μLを添加し、5分後に発光測定機(Promega社製 GloMax(登録商標) Discover System)を用いて発光強度を測定した。
【0068】
[測定方法B]
(EpCAM/CSV評価系でのCLEIA法による発光強度測定)
予め、ヘパリン血漿検体それぞれを、適宜2%(w/v)BSA及び150mM NaClを含有する50mM Trisバッファーで希釈し、試料溶液とした。96ウェル白色マイクロプレート(コーニング社製)に、抗EpCAM抗体(JSR社製)を結合した0.05%(w/v)の抗体結合磁性粒子(Magnosphere MS300/Carboxyl(品番:MSP-S300-CA、JSRライフサイエンス社製)に抗体をJSR社で感作)分散液25μL/ウェルを添加し、次いで、試料溶液25μL/ウェルを添加した。さらに、アルカリホスファターゼ標識抗CSV抗体(カタログ番号:H00007431-M08、Abnova社製をJSR社で標識)含有溶液25μL/ウェルを添加した。その後、96ウェル白色マイクロプレートを25℃で20分間撹拌し、次いで、マイクロプレートウォッシャー(テカン社製 ハイドロフレックス)を用いて集磁しながら洗浄バッファー(Tween20を0.1質量%含むTBS)で反応後の粒子を5回洗浄した。さらにTBS 50μLを添加し、25℃で5分間撹拌し、次いで、マイクロプレートウォッシャー(テカン社製 ハイドロフレックス)を用いて集磁しながら洗浄バッファー(Tween20を0.1質量%含むTBS)で反応後の粒子を5回洗浄した。次いで、発光基質(LSI社製、基質液(R5)、CDP-Star)50μL/ウェルを添加し、5分後に発光測定機(Promega社製 GloMax(登録商標) Discover System)を用いて発光強度を測定した。
【0069】
[測定方法C]
(CSV/PD-L1評価系でのCLEIA法による発光強度測定)
予め、ヘパリン血漿検体それぞれを、適宜2%(w/v)BSA及び150mM NaClを含有する50mM Trisバッファーで希釈し、試料溶液とした。96ウェル白色マイクロプレート(コーニング社製)に、抗CSV抗体(カタログ番号:H00007431-M08、Abnova社製)を結合した0.05%(w/v)の抗体結合磁性粒子(Magnosphere MS300/Carboxyl(品番:MSP-S300-CA、JSRライフサイエンス社製)に抗体をJSR社で感作)分散液25μLを添加し、次いで、試料溶液25μLを添加した。さらに、アルカリホスファターゼ標識抗PD-L1抗体(MBL社製抗体をJSR社で標識)含有溶液25μL/ウェルを添加した。その後、96ウェル白色マイクロプレートを25℃で20分間撹拌し、次いで、マイクロプレートウォッシャー(テカン社製 ハイドロフレックス)を用いて集磁しながら洗浄バッファー(Tween20を0.1質量%含むTBS)で反応後の粒子を5回洗浄した。さらにTBS 50μLを添加し、25℃で5分間撹拌し、次いで、マイクロプレートウォッシャー(テカン社製 ハイドロフレックス)を用いて集磁しながら洗浄バッファー(Tween20を0.1質量%含むTBS)で反応後の粒子を5回洗浄した。次いで、発光基質(LSI社製、基質液(R5)、CDP-Star)50μL/ウェルを添加し、5分後に発光測定機(Promega社製 GloMax(登録商標) Discover System)を用いて発光強度を測定した。
【0070】
<肺がん患者検体中のCSV陽性エクソソームの測定>
[実施例1]
ステージ1又は2の初期肺がん患者を含む、肺がん患者ヘパリン血漿検体(47例)を試料溶液として、それぞれについて、上記測定方法Aに従い測定を行った。各試料の測定値をブランクの値で除した値(S/N:Signal/Noise ratio)を算出した。
【0071】
[比較例1]
健常者ヘパリン血漿検体(8例)を試料溶液として、それぞれについて、上記測定方法Aに従い測定を行った。各試料の測定値をブランクの値で除した値(S/N)を算出した。
【0072】
[解析例1]
実施例1及び比較例1の結果を
図1に示す。
図1において、「Healthy」は健常者ヘパリン血漿検体、「Cancer」は肺がん患者ヘパリン血漿検体である。以降の図面においても同様である。また、
図1に示す測定結果から作成したROC曲線を
図2に示す。
比較例1で得られた健常者のS/Nを対照群として、実施例1で得られた肺がん患者のS/Nを被判別群として検証したところ、カットオフ値29.47とすると、感度(特異度)は0.98となり、肺がん患者を健常者と識別できることが示唆された。
【0073】
[実施例2]
ステージ1又は2の初期肺がん患者を含む、肺がん患者ヘパリン血漿検体(47例)を試料溶液として、それぞれについて、上記測定方法Bに従い測定を行った。各試料の測定値をブランクの値で除した値(S/N)を算出した。
【0074】
[比較例2]
健常者ヘパリン血漿検体(8例)を試料溶液として、それぞれについて、上記測定方法Bに従い測定を行った。各試料の測定値をブランクの値で除した値(S/N)を算出した。
【0075】
[解析例2]
実施例2及び比較例2の結果を
図3に示す。また、
図3に示す測定結果から作成したROC曲線を
図4に示す。
比較例2で得られた健常者のS/Nを対照群として、実施例2で得られた肺がん患者のS/Nを被判別群として検証したところ、カットオフ値4.00とすると、感度(特異度)は1.00となり、肺がん患者を健常者と識別できることが示唆された。
【0076】
[実施例3]
ステージ1又は2の初期肺がん患者を含む、肺がん患者ヘパリン血漿検体(47例)を試料溶液として、それぞれについて、上記測定方法Cに従い測定を行った。各試料の測定値をブランクの値で除した値(S/N)を算出した。
【0077】
[比較例3]
健常者ヘパリン血漿検体(8例)を試料溶液として、それぞれについて、上記測定方法Cに従い測定を行った。各試料の測定値をブランクの値で除した値(S/N)を算出した。
【0078】
[解析例3]
実施例3及び比較例3の結果を
図5に示す。また、
図5に示す測定結果から作成したROC曲線を
図6に示す。
比較例3で得られた健常者のS/Nを対照群として、実施例3で得られた肺がん患者のS/Nを被判別群として検証したところ、カットオフ値2.91とすると、感度(特異度)は0.94となり、肺がん患者を健常者と識別できることが示唆された。
【0079】
[解析例4]
実施例1及び比較例1、実施例2及び比較例2、実施例3及び比較例3の測定結果それぞれについて、肺がんの種類によって分類した。結果を
図7A(実施例1及び比較例1:CSV/CSV評価系)、
図7B(実施例2及び比較例2:EpCAM/CSV評価系)及び
図7C(実施例3及び比較例3:CSV/PD-L1評価系)に示す。
図7A~
図7Cにおいて、「Ad」はAdenocarcinomaの略であり、腺がんである。「Sq」はSquamousの略であり、扁平上皮がんである。「Large」は大細胞がんである。「Small」は小細胞肺がんである。
図7A~
図7Bにおいて、肺がん患者のS/Nについて、いずれのがん種においても健常者のS/Nよりも高値を示した。
【0080】
[解析例5]
実施例1及び比較例1、実施例2及び比較例2、実施例3及び比較例3の測定結果それぞれについて、病理病期によって分類した。結果を
図8A(実施例1及び比較例1:CSV/CSV評価系)、
図8B(実施例2及び比較例2:EpCAM/CSV評価系)及び
図8C(実施例3及び比較例3:CSV/PD-L1評価系)に示す。
図8A~
図8Cにおいて、病理病期は以下のとおりである。以降の図面においても同様である。
【0081】
(病理病期)
日本肺癌学会編:肺癌取扱い規約第8版 TNM臨床病期分類に従った。
【0082】
図8A~
図8Cから、肺がん患者のS/Nについて、病理病期の初期から健常者のS/Nよりも高い値であり、肺がん患者について、I~IV期まで病理病期にかかわらず、健常者と識別できた。
【0083】
[解析例6]
実施例1及び比較例1、実施例2及び比較例2、実施例3及び比較例3の測定結果中の腺がん患者及び扁平上皮がん患者の測定結果について病理病期によって分類した。結果を
図9A(実施例1及び比較例1:CSV/CSV評価系)、
図9B(実施例2及び比較例2:EpCAM/CSV評価系)及び
図9C(実施例3及び比較例3:CSV/PD-L1評価系)に示す。
【0084】
図9A~
図9Cから、腺がん患者及び扁平上皮がん患者のS/Nについて、病理病期の初期から値が高くなる傾向がみられた。このことから、がん細胞表面に発現する抗原に対する抗体と抗CSV抗体を組み合わせた評価系により、腺がん患者及び扁平上皮がん患者を健常者と識別できることが示唆される。
【0085】
また、肺がん患者ヘパリン血漿検体について、既存の肺がんマーカーであるがん胎児性抗原(CEA)、扁平上皮癌関連抗原(SCC)、シアリルLex-i抗原(SLX)、神経特異エノラーゼ(NSE)、ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro GRP)及びサイトケラチン19フラグメント(Cyfra)の濃度を測定した。次いで、実施例1及び比較例1のCSV/CSV評価系、実施例2及び比較例2のEpCAM/CSV評価系、並びに、実施例3及び比較例3のCSV/PD-L1評価系について、それぞれ上記既存の肺がんマーカーとの相関を検討したが、相関は見られなかった。
さらに、実施例1及び比較例1のCSV/CSV評価系、実施例2及び比較例2のEpCAM/CSV評価系、並びに、実施例3及び比較例3のCSV/PD-L1評価系について、各評価系間の相関を検討したが、相関は見られなかった。
なお、上記相関の検討において、EpCAM/CSV評価系のS/N=12000であった検体は異常値として除外して検討を行った。
これらのことから、既存のマーカーと本評価系、又は本評価系を複数組み合わせて行うことで、がんの診断の精度を向上できる。
【0086】
[実施例4]
予め、健常者ヘパリン血漿検体及び肺がん患者ヘパリンプール血漿検体それぞれを、適宜2%(w/v)BSA及び150mM NaClを含有する50mM Trisバッファーで希釈し、試料溶液とした。96ウェル白色マイクロプレート(コーニング社製)に、抗CSV抗体(カタログ番号:H00007431-M08、Abnova社製)、抗EpCAM抗体(JSR社製)、又は抗glypican-3抗体(抗GPC3抗体)(MBL社製)のいずれか一つを結合した0.05%(w/v)の抗体結合磁性粒子(Magnosphere MS300/Carboxyl(品番:MSP-S300-CA、JSRライフサイエンス社製)に抗体をJSR社で感作)分散液(3種類)をそれぞれ異なるウェルに25μL/ウェルずつ添加し、次いで、試料溶液25μL/ウェルを添加した。さらに、アルカリホスファターゼ標識抗CSV抗体(カタログ番号:H00007431-M08、Abnova社製をJSR社で標識)含有溶液25μL/ウェルを添加した。その後、96ウェル白色マイクロプレートを25℃で20分間撹拌し、次いで、マイクロプレートウォッシャー(テカン社製 ハイドロフレックス)を用いて集磁しながら洗浄バッファー(Tween20を0.1質量%含むTBS)で反応後の粒子を5回洗浄した。さらにTBS 50μLを添加し、25℃で5分間撹拌し、次いで、マイクロプレートウォッシャー(テカン社製 ハイドロフレックス)を用いて集磁しながら洗浄バッファー(Tween20を0.1質量%含むTBS)で反応後の粒子を5回洗浄した。次いで、発光基質(LSI社製、基質液(R5)、CDP-Star)50μL/ウェルを添加し、5分後に発光測定機(Promega社製 GloMax(登録商標) Discover System)を用いて発光強度を測定した。各試料の測定値をブランクの値で除した値(S/N)を算出した。結果を
図10に示す。
図10において、「Capture」は捕捉用分子であり、「Detector」は検出用分子である。
【0087】
図10から、EpCAMとは別のがん抗原であるGPC3とCSVの共発現をマーカーとしても、評価系を構築できたことから、がん細胞表面に発現する抗原に対する抗体と抗CSV抗体を組み合わせた評価系により、肺がん患者を健常者と識別できることが示唆された。
【0088】
[実施例5]
予め、健常者ヘパリン血漿検体を、2%(w/v)BSA及び150mM NaClを含有する50mM Trisバッファーで希釈し、試料溶液とした。96ウェル白色マイクロプレート(コーニング社製)に、抗PD-L1抗体(MBL社製)を結合した0.05%(w/v)の抗体結合磁性粒子(Magnosphere MS300/Carboxyl(品番:MSP-S300-CA、JSRライフサイエンス社製)に抗体をJSR社で感作)分散液25μL/ウェルを添加し、次いで、試料溶液25μL/ウェルを添加した。さらに、アルカリホスファターゼ標識抗CSV抗体(カタログ番号:H00007431-M08、Abnova社製をJSR社で標識)溶液25μL/ウェルを添加した。その後、96ウェル白色マイクロプレートを25℃で20分間撹拌し、次いで、マイクロプレートウォッシャー(テカン社製 ハイドロフレックス)を用いて集磁しながら洗浄バッファー(Tween20を0.1質量%含むTBS)で反応後の粒子を5回洗浄した。さらにTBS 50μLを添加し、25℃で5分間撹拌し、次いで、マイクロプレートウォッシャー(テカン社製 ハイドロフレックス)を用いて集磁しながら洗浄バッファー(Tween20を0.1質量%含むTBS)で反応後の粒子を5回洗浄した。次いで、発光基質(LSI社製、基質液(R5)、CDP-Star)50μL/ウェルを添加し、5分後に発光測定機(Promega社製 GloMax(登録商標) Discover System)を用いて発光強度を測定した(以降、当該評価系を「CSV/PD-L1評価系」と称する場合がある)。
別途、抗PD-L1抗体(MBL社製)を結合した0.05%(w/v)の抗体結合磁性粒子(Magnosphere MS300/Carboxyl(品番:MSP-S300-CA、JSRライフサイエンス社製)に抗体をJSR社で感作)分散液の代わりに抗CSV抗体(カタログ番号:H00007431-M08、Abnova社製)を結合した0.05%(w/v)の抗体結合磁性粒子(Magnosphere MS300/Carboxyl(品番:MSP-S300-CA、JSRライフサイエンス社製)に抗体をJSR社で感作)分散液を、アルカリホスファターゼ標識抗CSV抗体(カタログ番号:H00007431-M08、Abnova社製をJSR社で標識)の代わりにアルカリホスファターゼ標識抗PD-L1抗体(MBL社製抗体をJSR社で標識)を用いた以外は、上記「CSV/PD-L1評価系」と同様の方法を用いて、発光強度を測定した(以降、当該評価系を「PD-L1/CSV評価系」と称する場合がある)。結果を
図11に示す。
図11において、「Capture」は捕捉用分子であり、「Detector」は検出用分子である。
【0089】
図11から、「CSV/PD-L1評価系」及び「PD-L1/CSV評価系」のIntensityを比較したところ、捕捉用分子と検出用分子の組み合わせを逆にしても、評価系を構築できることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本実施形態のエクソソームの分離及び検出方法、並びに、分離及び検出キットによれば、エクソソームを分離することができ、がん診断やコンパニオン診断に利用することができる。