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特許7653366直接結合された化学シーラントを含む熱可塑性表面
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  • 特許-直接結合された化学シーラントを含む熱可塑性表面 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】直接結合された化学シーラントを含む熱可塑性表面
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/043 20200101AFI20250321BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20250321BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
C08J7/043 A CEZ
C08J7/043 Z CER
B32B27/38
B32B27/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021566454
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 US2020070020
(87)【国際公開番号】W WO2020232462
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】62/846,350
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】チャイチアン、 シナ
(72)【発明者】
【氏名】シェーラー、 カスパー
(72)【発明者】
【氏名】アハメッド、 バシール エム.
(72)【発明者】
【氏名】アブ-シャナブ、 オマール エル.
(72)【発明者】
【氏名】ハルバッシュ、 マイケル ディー.
(72)【発明者】
【氏名】エヤッス、 ツェハイエ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】レンケル、 マーティン
(72)【発明者】
【氏名】オカーン、 ルアイリ
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル、 アンナ エスメラルダ
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-132569(JP,A)
【文献】特開2000-226536(JP,A)
【文献】特開2005-212107(JP,A)
【文献】特開平09-003221(JP,A)
【文献】特開2006-016685(JP,A)
【文献】特表2020-523454(JP,A)
【文献】国際公開第2018/228893(WO,A1)
【文献】特開平11-334011(JP,A)
【文献】米国特許第06194061(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0198535(US,A1)
【文献】特開2000-267487(JP,A)
【文献】特開2015-034285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/00-7/18
B32B 1/00-43/00
B29C 71/04
C09J 1/00-5/10
9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光分解開裂した熱可塑性基材の結合と化学シーラントの反応性基との間のクロスポリマー結合により、表面に化学シーラントが直接結合された熱可塑性基材、及び表面処理フィルム層を含む複合構造であって、
前記化学シーラントが、1つ、2つ又はそれ以上のシラノール、アルコキシシラノール又はアルコキシシラン部分を有する有機化合物又は有機金属化合物である、あるいはこれらを含み、
前記化学シーラントが、前記熱可塑性基材と前記表面処理フィルム層との間に配置されて、前記熱可塑性基材と前記表面処理フィルム層の両方に結合し、
前記表面処理フィルム層が、前記化学シーラントに結合した第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有し、
前記熱可塑性基材が:
(a)ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、及びポリエーテルケトンエーテルケトンケトンから成る群から選択されるポリアリールエーテルケトン;
(b)カルボニル基に直接結合したフェニル基を含有するポリマー、任意で前記カルボニル基は、アミド基の一部である;
(c)ポリフェニレンスルファイド;
(d)ポリフェニレンオキシド;又は
(e)ポリエーテルイミドを含み、
前記表面処理フィルム層が、エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムである、複合構造。
【請求項2】
前記化学シーラントが、前記熱可塑性基材の表面のパターン化された部分に直接結合されている、請求項1に記載の複合構造。
【請求項3】
前記表面処理フィルム層が、エポキシ、エポキシアクリレート、又はそれらのコポリマー又は混合物を含む、請求項1又は2に記載の複合構造。
【請求項4】
前記表面処理フィルム層が塗布されているが、未硬化又は未固化である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項5】
前記表面処理フィルム層が硬化又は完全に固化している、請求項1~のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項6】
前記表面処理フィルムが存在し、
前記表面処理フィルム自体が、熱可塑性又は熱硬化性ポリマー内に、有機若しくは無機繊維、布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含み、
(a)前記表面処理フィルムの第2面上又は第2面下配置された1つ又は複数の剥離可能な有機若しくは無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シート;
(b)前記表面処理フィルムの第2面の中、又は上、又は下に含有され、さらに落雷保護、電流散逸、EMIシールド、又は熱伝達用途において使用するのに適した少なくとも1つの導電性材料を含む、1つ又は複数の有機若しくは無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シート;及び/又は
(c)衝撃改質剤として使用するのに適した1つ又は複数の粒子状物質、
の1つ又は複数を任意で含む、固体複合材料である、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項7】
前記表面処理フィルムの第2面が塗料でコーティングされ、任意で前記表面処理フィルムの第2面と前記塗料との間に配置された化学シーラントを含み、
前記化学シーラントが、1つ、2つ又はそれ以上のシラノール、アルコキシシラノール又はアルコキシシラン部分を有する有機化合物又は有機金属化合物である、あるいはこれらを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の複合構造を含む、航空機又は航空宇宙船の部品。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の複合構造を含む、陸上車両の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、熱可塑性表面を処理して、それらを塗料、接着剤、又は表面処理フィルムの塗布に適した状態にする方法、及びこれらの方法から誘導又は誘導可能な構造を対象とする。
【背景技術】
【0002】
繊維強化ポリマーマトリックス複合材料は、過酷な環境に対する耐性があり、高い比強度又は高い強度対密度比を有し、軽量であるため、航空機部品、高性能自動車、ボートのハル、及び自転車のフレームで一般的に使用される高性能構造材料である。
【0003】
オートクレーブ硬化プロセスと組み合わせた熱硬化性樹脂は、航空宇宙産業に導入されて以来、航空宇宙複合材料の中心的な成分であった。原材料の費用及び関連する処理費用を最適化するという動向が持続しているため、熱硬化性樹脂の代わりに熱可塑性樹脂の使用が加速した。熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂とは異なり、化学的に架橋する必要がなく、十分な熱の下で成形され、熱硬化性樹脂が硬化するよりもはるかに速い速度で単純に硬化し、それらの形状を維持する。しかしながら、航空宇宙産業で適用される熱可塑性材料は、少なくとも熱硬化性表面が享受するレベルまで、塗料や接着剤が接着しない表面を提示する。
【0004】
熱可塑性表面の直接塗装は、基材の表面エネルギーが低いため非常に困難である。プラズマ、UV、エッチング、炎、及びサンディングを包含する熱可塑性基材の典型的な前処理方法では、航空宇宙仕様の高い必要条件に関して、複数の塗料を十分に接着することはできない。
【0005】
一部には、この理由及び他の理由により、最近では、航空宇宙産業で使用される複合構造には、典型的に、塗装前に複合構造に必要な性能特性を提供するための熱硬化性表面処理フィルムが包含されている。航空宇宙用途に必要な表面品質を複合材料に提供するために、ポリマー複合材料にエポキシベースのフィルム等の表面処理フィルムが組み込まれることが多い。さらに、これらの表面処理フィルムは、例えば、落雷、静電放電、及び電磁放電に対するそれらの耐性を改善するように機能化されてよい。
【0006】
しかしながら、さらに最近では、航空宇宙産業は、表面処理フィルムのさらなる面積重量を追加しない新しい塗装方法を探索している。
【0007】
塗料、接着剤、及び表面処理フィルムをこうした低エネルギー表面に結合できるようにするために、化学プライミング、こうした基材の結合に使用するために特別に配合された化学接着剤組成物の使用、物理的摩耗又は化学的粗面化、火炎処理、及び酸又はプラズマエッチングを包含する、接着剤又は塗料の塗布前に表面を結合しやすくするためのいくつかの戦略が開発されてきた。しかしながら、これらの各方法には、考慮する必要のある交換条件が存在する。
【0008】
酸エッチング又は化学活性化等の化学処理は、安全性及び廃棄物処理の懸念、プロセス制御、並びに費用のために、商業的使用の観点から制限的であることが理解されよう。
【0009】
同様に、熱可塑性材料の表面の化学的不活性は、接着剤及び表面処理フィルムの使用に関して課題を提供する。接着剤業界では、特定の高性能プラスチック等の特定の基材を接着するのが難しいことが知られている。PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の熱可塑性樹脂;PPS(ポリフェニレンサルファイド);ポリアクリルアミド(PARA)又はポリエーテルイミド(PEI)は、比強度又は強度対密度比が高いという点で魅力的な構造ポリマーであるが、結合特性が低いという特徴も有する。繰り返すが、熱可塑性樹脂の低い表面エネルギーがこれの原因であると考えられている。熱可塑性表面にUV/プラズマを適用すると、表面に極性官能基が形成され、表面エネルギーが上昇して、濡れ性及び接着性が向上する。このような新しい極性基は、多くの場合、接着剤との化学結合の形成を可能にし、これにより結合強度がさらに向上する。
【0010】
官能基の化学反応能力は、接着剤の化学的性質に強く依存する。官能基は、様々な接着剤との化学結合に十分な反応性がないことが多い。特定の種類の接着剤の反応性の欠如を克服するには、より高い硬化温度が必要である。さらに、いくつかの強力な接着剤は、基材の適切な濡れ性のために高温を必要とする。航空宇宙産業では、より低い硬化温度で多種多様な接着剤で使用できる結合方法が引き続き必要とされている。
【0011】
同様に、プラズマ技術は有用であるが、大規模な機器を必要とすることが多い。そして、欠点の1つは、プラズマ処理された表面が塗料及び接着剤を受け入れる能力を保持する時間である。
【0012】
プライマーを使用して大きな効果を発揮できるが、後続の結合のために表面を活性化する別の方法が常に必要である。これは、特に、プラスチックの結合が困難な傾向があり、典型的に接着強度が他のプラスチックよりも低くなる傾向があるPEEK、PARA、PPS、又はPEIに当てはまる。これは一般に、プライマーを使用する場合でも当てはまる。
【0013】
これらの問題に対して最先端の提案された解決策が存在するにもかかわらず、末端使用者がより多くの選択肢を利用できるように代替の解決策を提供することが望ましい。本開示は、業界に拡大された選択肢を提供することを対象としている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、1つ又は複数の基材表面に結合された化学シーラントを有する熱可塑性基材を含む複合構造、これらの複合構造の製造方法、並びにこれらの複合構造を含む、これらから誘導される及び誘導可能な物品を対象とする。
【0015】
熱可塑性基材の定義は、本明細書の他の場所に記載されている。必ずしもそのように制限されるわけではないが、特定のより具体的な実施形態では、熱可塑性基材は、以下を含む。
(a)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、若しくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリアリールエーテルケトン;
(b)カルボニル基に直接結合したフェニル基を含有するポリマー、任意で前記カルボニル基は、ポリアクリルアミド(PARA)等のアミド基の一部である;
(c)ポリフェニレンスルファイド(PPS);
(d)ポリフェニレンオキシド(PPO);又は
(e)ポリエーテルイミド(PEI)。
【0016】
追加で又は代わりに、熱可塑性基材は、十分な強度及び持続時間の化学線による照射時に少なくとも部分的な光分解開裂を受けやすいいくつかの化学結合を含む熱可塑性ポリマーを含む。これらの実施形態のいくつかでは、化学線は、約10nm~約500nm又は約100nm~約450nmの範囲、好ましくは約200nm~約350nmの範囲の少なくとも1つの波長を有する放射線を包含する。
【0017】
追加で又は代わりに、熱可塑性基材は、その結合が、少なくとも1つの波長で約0.1J/cm~約300J/cmの範囲、好ましくは少なくとも1つの波長で約0.5J/cm~約250J/cm又は約1.5J/cm~約250J/cmの範囲のエネルギーで、少なくとも1つの波長の化学線を照射すると少なくとも部分的な光分解開裂を受けやすい熱可塑性ポリマーを含む。
【0018】
化学シーラントは、本明細書の他の場所でより広範に説明されているが、予備的な理解のために、用語「化学シーラント」は、熱可塑性基材の表面に接着すると、それへの塗料、塗料プライマー、又は接着剤の接着を促進できるペンダント(アルキル若しくはアリール等)又は官能基を提示する、一官能性、二官能性、又は多官能性の有機、無機、又は有機金属化合物の観点から説明されてよい。いくつかの実施形態では、このペンダント又は官能基は、別の材料(例えば、塗料、接着剤、又は表面層)に化学的に結合され、それによって、熱可塑性基材と他の材料との間に結合部(例えば、化学共有結合)を形成する。
【0019】
独立した実施形態では、化学シーラントは、以下に挙げられる1つ又は複数の官能基を有する有機又は有機金属化合物から成るか、本質的に成るか、又はそれらを含む。
1つ、2つ又はそれ以上のエポキシ又はオキセタン部分;
1つ、2つ又はそれ以上のグリシジルエーテル部分;
1つ、2つ又はそれ以上のカルボン酸、カルボキシエステル、カルボキシ無水物、アミド又はラクタム部分;
1つ、2つ又はそれ以上のヒドロキシリン酸部分;
1つ、2つ又はそれ以上の-OH、-SH又は-NH部分;
1つ、2つ又はそれ以上のシラノール、アルコキシシラノール、又はアルコキシシラン部分;
1つ、2つ又はそれ以上のイソシアネート部分;及び/あるいは
1つ、2つ又はそれ以上のアルコキシチタネート又はアルコキシジルコネート部分。
【0020】
すなわち、化学シーラントにおけるこれらの官能基の各組み合わせは、独立した実施形態を表す。さらに、用語「化学シーラント」は、1つ又は複数の化学物質(すなわち、異なる化学物質の混合物)を指す場合もある。
【0021】
さらなる実施形態は、表面化学シーラントが別の第2の材料にさらに接着又は結合されるものを包含する。このような場合、複合構造は、化学シーラントが熱可塑性基材と第2の材料との両方の間に配置される及び/又は両方に結合されるという観点から定義されてよい。例えば、一組の実施形態では、複合構造は、熱可塑性基材、化学シーラント、及び接着剤、塗料(プライマー、中間、若しくはトップコート層)、又は表面処理フィルム層を含み、ここで、シーラントは、熱可塑性基材と接着剤、塗料、又は表面処理フィルム層との間に配置され、好ましくはこれらに結合され、接着剤、塗料、又は表面処理フィルム層は、シーラントに隣接するか、又は好ましくは結合される第1面を有することを特徴とする。これらの実施形態のいくつかでは、接着剤、塗料、又は表面処理フィルム層がコーティングされた表面に塗布されるが、まだ未硬化である。他の実施形態では、接着剤、塗料、又は表面処理フィルム層が硬化され、化学シーラントに結合される。複合構造が表面処理フィルムを含む場合、追加の実施形態では、化学シーラントに結合された表面より遠位の表面処理フィルムの表面が塗装される。
【0022】
こうした複合構造がこの第2の材料を含む場合、その第2の材料は、熱可塑性又は熱硬化性ポリマーを含んでよい。この用途に有用な例示的な材料としては、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、エポキシ、(メタ)アクリレート、シアノアクリレート(メタ)アクリルアミド、エポキシアクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、トリアジン、ビニルエステル、又はそれらのコポリマー又は混合物、好ましくは(メタ)アクリレート、エポキシ、又はポリウレタンポリマーが挙げられる。
【0023】
こうしたコーティング、特に塗料及び接着剤の接着強度は、追加の実施形態を形成し、例えば、第2の材料が接着剤又は塗料を含む場合、その第2の材料は、ASTM D3359-09に従う標準45度クロスハッチテープ試験を使用して、少なくとも3B、4B、又は5Bのスコアを示すように、複合構造に十分に接着されており、その条件は実施例により完全に記載されている。
【0024】
化学シーラントを介して熱可塑性基材に結合された表面処理フィルムを含む複合構造内で、熱硬化性表面処理フィルムは、未硬化であってよく(例えば、最初に調製されたとき)又は部分的に硬化されていてよい(例えば、いくつかの後処理後)。熱可塑性基材又は表面に接着された表面処理フィルムは、供給されたままの表面処理フィルムよりも高い硬化度を有する。
【0025】
好ましい実施形態では、表面処理フィルムはエポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムである。様々な種類のエポキシベースの表面処理フィルムがここに記載される。
【0026】
複合材料自体として、本明細書に開示されるように基材に使用又は接着される表面処理フィルムは、いくつかの実施形態において、ポリマー又はプレポリマーマトリックスに組み込まれる1つ以上の有機、無機、又は金属添加剤、例えば流動剤、レオロジー調整剤、密度調整剤、衝撃調整剤、防腐剤、顔料、着色剤等のような添加剤を含む。
【0027】
代わりに又は追加で、表面処理フィルムは、ナノ、マイクロ、及び/又はマクロ寸法の粉末、粒子、ビーズ、フレーク、ウィスカー、又は繊維を含む少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤を含んでよい。これらの形態は、特定の材料の材料及び機能に応じて異なる。
【0028】
代わりに又は追加で、表面処理フィルムは、熱硬化性樹脂又はポリマーに含有される1つ又は複数の有機若しくは無機の繊維、布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含んでよい。これらの実施形態のいくつかでは、熱硬化性表面処理フィルムは、熱硬化性表面処理フィルムの第2面上又はその下に配置された1つ又は複数の剥離可能な有機若しくは無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含む。
【0029】
代わりに又は追加で、表面処理フィルムは、落雷保護、電流散逸、EMIシールド、又は熱伝達用途での使用に適した少なくとも1つの導電性材料を含んでよい。
【0030】
代わりに又は追加で、表面処理フィルムは、熱可塑性基材に、ASTM D3359-09に従う45°クロスハッチテープ試験で、少なくとも3B、4B、又は5Bのスコアを付けるのに十分な強度で接着され、その条件は実施例により十分に記載されている。
【0031】
さらに他の実施形態は、複合構造を調製するそれらの方法を包含する。これらの特定のものでは、方法は、
(a)熱可塑性基材の表面に、前記熱可塑性基材の表面を活性化するのに十分な化学線及び/又はプラズマを照射すること;
(b)前記熱可塑性基材の活性化された表面に化学シーラントを塗布し、化学シーラントの表面を有する化学的に密封された熱可塑性基材を形成すること;並びに
(c)任意で、化学的に密封された熱可塑性基材を加熱すること、
を包含する。
【0032】
方法を参照すると、基材、塗料、接着剤、表面処理フィルム、及びそれらの間の結合を活性化する方法の性質は、他の場所で説明されている複合構造と一致しており、ここではこれ以上繰り返さない。方法の他の態様(例えば、圧力及び熱処理)は、本明細書の他の場所でさらに説明されている。
【0033】
本開示のさらに別の態様は、これらの開示された複合構造を含むそれらの物品を包含し、部品、又は航空機及び自動車等の陸上車両を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本出願は、添付の図面と併せて読むとさらに理解される。主題を説明するために、主題の例示的な実施形態が図面に示されている。しかしながら、現在開示されている主題は、開示されている特定の方法、装置、及びシステムに限定されない。さらに、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。図面は以下の通りである。
図1
【0035】
図1は、本明細書に記載の接着試験のための45度のクロスハッチスクライブ及びテープの位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示は、化学的に密封された表面を含む熱可塑性基材を含む複合構造、これらの複合構造を作製するための方法、及びこれらの複合構造を含む物品を対象とする。
【0037】
提示された開示は、業界で使用されている既存の方法の少なくともいくつかの欠点に対処し、1つ又は複数の化学シーラーと組み合わせた熱可塑性表面のUV及び/又はプラズマ活性化の使用を包含する。本明細書の他の場所で説明するように、この組み合わせは、処理後長期間にわたって塗料及び接着剤を容易に受け入れる熱可塑性基材上に持続可能な表面を提供することにおいて、独特で予想外の性能上の利点を提供する。さらに、これらの方法で操作可能な様々な化学シーラーにより、塗料及び接着剤を同様に多様に使用できる。
【0038】
特に、本開示は、非密封表面と比較して改善された接着性を有する塗料及び接着剤を受け入れて保持する、並びに/あるいは、(例えば、プラズマ及び/又はUV活性化による)表面活性化を非密封表面よりも長く保持する、密封された熱可塑性表面を有する複合構造を提供し、その結果、塗料及び接着剤によるさらなるコーティングを、活性化され、密封され、老化した熱可塑性表面に、密封されずに同様にエージングされ活性化された熱可塑性表面よりも良好な接着力で塗布及び保持できる。
【0039】
本開示は、添付の図面及び実施例に関連して取られた以下の記載を参照することにより、より容易に理解されてよく、これらは全て、本開示の一部を形成する。本開示は、本明細書に記載又は示される特定の製品、方法、条件、又はパラメータに限定されず、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を例としてのみ説明するためのものであり、クレームされた発明を限定することを意図するものではないことを理解されたい。同様に、特に明記しない限り、可能な機構若しくは作用機序又は改善の理由に関する説明は、例示のみを目的としており、本明細書の開示は、そのような提案された機構若しくは作用機序又は改善の理由の正誤によって制約されるべきではない。この文章全体を通して、記載は、組成物、並びに前記組成物を製造及び使用する方法に言及していることが認識されている。すなわち、本開示が、組成物、並びに組成物を製造及び使用する方法に関連する特徴又は実施形態を記載又はクレームする場合、そのような記載又はクレームは、これらの特徴又は実施形態をこれらの文脈のそれぞれにおける実施形態(すなわち、組成物、製造方法、及び使用方法)に拡張することを意図している。
【0040】
複合構造
本開示は、複合構造のそれらの実施形態を含み、複合構造は、化学シーラントに直接結合された熱可塑性基材を含み、化学シーラントは、本明細書の他の場所に記載される化学材料の1つ又は複数である。追加の実施形態は、化学シーラントを含む複合構造が、直接又は他の方法で、塗料、接着剤、又は表面処理フィルムの1つ又は複数にさらに結合されるものを包含する。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「直接結合」及びその文法上の変形は、熱可塑性基材の熱可塑性表面と化学シーラントの第1面との間の境界面を規定し、熱可塑性表面及び第1面は、好ましくは熱可塑性表面及び第1面から供給されていない材料なしで、熱可塑性表面と第1面との共通の境界を形成する表面で互いに接着されている。同様に、用語「直接結合」は、結合が、熱可塑性基材のポリマー部分の活性化に由来するペンダント官能基が、化学シーラントの相補的結合部分に直接結合し、中間結合基が存在することによって(例えば、外部接着剤又は同様の組成物なしで)達成される機構を指してよい。
【0042】
化学シーラントは、化学シーラントの第1面の反対側の第2面をさらに含む。この第2面は、本明細書の他の場所に記載されているように、任意で機能化してよい。
【0043】
本明細書に記載されるように、熱可塑性基材と熱硬化性表面処理フィルムとの間の結合は、熱可塑性基材が熱硬化性表面処理フィルムに直接結合されるものとして説明される。同様に、この結合は、熱硬化性表面処理フィルムが熱可塑性基材に直接結合されている場合、又は熱硬化性表面処理フィルムと熱可塑性基材が直接結合されている場合として説明することができる。このような区別は単に意味論的なものであり、説明は全体を通して同等であると見なす必要がある。
【0044】
熱可塑性基材
本開示の文脈において、熱可塑性基材は、高分子化学の当業者によって一般的に理解される熱可塑性ポリマーを含むが、好ましい実施形態では、熱可塑性基材は、航空宇宙産業で典型的に使用される熱可塑性ポリマーを含む。
【0045】
この文脈においてさえ、熱可塑性基材の熱可塑性ポリマーは広く定義されているが、十分な強度の化学線による照射の際に光分解開裂を受けやすい結合を含むそれらの熱可塑性ポリマーが好ましいようである。このような結合としては、-O-、-S-、-C(O)-、-S(O)-、-S(O)-、-C(O)O-、-C(O)-N-、又はそれらの組み合わせ等のヘテロ原子を含む結合が挙げられる。こうした熱可塑性ポリマーは、これらに限定されないが、独立の実施形態として、
(a)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、若しくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリアリールエーテルケトン;
(b)カルボニル基に直接結合したフェニル基を含有するポリマー、任意で前記カルボニル基は、ポリアクリルアミド(PARA)等のアミド基の一部である;
(c)ポリフェニレンスルファイド(PPS);
(d)ポリフェニレンオキシド(PPO);又は
(e)ポリエーテルイミド(PEI)の1つ又は複数を包含する。
【0046】
これらの各ポリマーは、連結基に加えてペンダントを含んでよく、例えば、用語「ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)」は、(例えば、アルキル基による)置換及び非置換PEEKポリマーの両方を指す。
【0047】
本明細書の他の場所で説明されているように、熱可塑性基材また、一般に、複合材料であることができ、熱可塑性ポリマーは、流動剤、レオロジー調整剤、密度調整剤、防腐剤、顔料、着色剤等の有機及び/又は無機添加剤をさらに含む。熱可塑性基材は、典型的には、ポリマーマトリックス含有される繊維、メッシュ、布、又は多孔質シートを任意で含む構造的に強化された材料であり、好ましくは、隣接する層又は交互の層の繊維が互いに横方向に配向されるように、積層スタックに配置された配向繊維(例えば、炭素繊維)等を含有するポリマー複合材料の複数の層を含む繊維強化複合材料である。
【0048】
境界面が「熱可塑性基材の熱可塑性表面と熱硬化性表面処理フィルムの第1面」との間であると説明される場合、熱可塑性表面は、熱可塑性基材の熱可塑性ポリマーと同一であるか又は化学的に一致する。この点に関して、用語「化学的に一致する」は、表面の結合部位のいくつかが光分解活性化によって変化したとしても、基材のポリマービルディングブロックと表面のポリマービルディングブロックが実質的に同一であることを意味する。
【0049】
熱可塑性ポリマーが、十分な強度の化学線による照射時に光分解開裂を受けやすい結合を含むと記載されている場合、いくつかの実施形態では、その化学線は、約10nm~約500nm又は約100nm~約450nm、好ましくは約200nm~約350nmの範囲の少なくとも1つの波長を有する放射線を包含する。追加の実施形態では、その化学線は、約100nm~125nm、125nm~150nm、150nm~175nm、175nm~200nm、200nm~225nm、225nm~250nm、250nm~275nm、275nm~300nm、300nm~325nm、325nm~350nm、350nm~375nm、375nm~400nm、400nm~425nm、425nm~450nm、475nm~500nm、又は、前述の範囲の任意の2つ以上で定義される範囲、例えば300nm~400nm若しくは275nm~325nmの1つ又は複数の波長を有する放射線を包含する。他の実施形態では、化学線は、UV-A(約315~400nm又は320~390nm)あるいはUV-B(280~315nm又は280~320nm)として特徴付けられる少なくとも1つの波長を有する光又は放射線が包含される。他の実施形態では、化学線は、UV-C(約100~280nm)、UV-V(395~445nm)、近紫外線(NUV;300~400nm)、中紫外線(MUV;200~300nm)、遠紫外線(FUV;122~200nm)、真空紫外線(VUV;10~200nm)、又は極紫外線(EUV;10~120nm)として特徴付けられる少なくとも1つの波長を有する光又は放射線を包含する。
【0050】
熱可塑性ポリマーが、十分な強度の化学線による照射時に光分解開裂を受けやすい結合を含むと記載されている場合、いくつかの実施形態では、これらのポリマーは、少なくとも1つの波長で約0.1J/cm~約300J/cmの範囲のエネルギーで、好ましくは少なくとも1つの波長で、約0.5J/cm~約250J/cm又は約1.5J/cm~約250J/cmの範囲で、少なくとも1つの波長の化学線によって活性化されるものを包含する。追加の実施形態は、活性化エネルギーが0.1~0.5J/cm、0.5~1J/cm、1~1.5J/cm、1.5~2J/cm、2~2.5J/cm、2.5~3J/cm、3~3.5J/cm、3.5~4J/cm、4~4.5J/cm、4.5~5J/cm、5~5.5J/cm、5.5~6J/cm、6~6.5J/cm、6.5~7J/cm、7~7.5J/cm、7.5~8J/cm、8~9J/cm、9~10J/cm、10~25J/cm、25~50J/cm、50~100J/cm、100~150J/cm、150~200J/cm、200~250J/cm、250~300J/cmの1つ又は複数の範囲であるものを包含する、あるいは、範囲は、上述の範囲の任意の2つ以上、例えば0.1~250J/cm、又は0.5~100J/cmにより定義される。2つ、3つ、4つ、若しくはそれ以上の波長又は波長範囲による同時又は連続照射もまた、さらなる独立した実施形態と見なされる。
【0051】
化学シーラント
本開示の文脈において、及び本明細書の他の場所に記載されるように、用語「化学シーラント」は、一官能性又は多官能性の有機、無機、又は有機金属化合物を含む1つ又は複数の化学物質を指し、熱可塑性基材の表面に結合すると、そこへの塗料、接着剤、又は表面処理フィルムの接着を促進できる、あるいは実際に塗料、接着剤、又は表面処理フィルムに結合した、ペンダント(アルキル、アルケニル、アルキニル、若しくは(ヘテロ)アリール等)又はヘテロ原子官能基を提示し、それによって、熱可塑性基材と塗料、接着剤、又は表面処理フィルムとの間に結合部(例えば、化学共有結合)を形成する。
【0052】
このように、化学シーラントは調整可能な接着促進剤と見なすことができ、化学シーラントを適切に選択することにより、いかなる熱可塑性基材も、広範囲の潜在的な塗料、接着剤、又は表面処理フィルムに接着できるようになる。追加で又は代わりに、化学シーラントは、熱可塑性基材と潜在的な塗料、接着剤、又は表面処理フィルムとの間の結合剤と見なされる場合がある。本発明者らは、化学シーラーの使用が、おそらく表面の反応性の高い官能基の数を増やすことよって、より低い温度での結合を可能にし、様々な塗料又は他の化学物質への新しい結合の形成が、室温又はわずかに高い温度で起こり得ることを発見した。これらの特徴は、本発明の方法及び製品において使用される熱可塑性材料及び感熱性材料の範囲の拡張を可能にする。
【0053】
さらに、活性化された熱可塑性基材は、(UV光、プラズマ、又はUV光とプラズマの組み合わせによって活性化されるかどうかにかかわらず)、典型的に、短期間だけ化学的に活性化されたままであるが、これらの化学シーラント複合構造を使用すると、この化学的活性が大幅に長期間保持されるため、熱可塑性基材を機能化するための製造選択肢が著しくに改善される。
【0054】
そのような化学物質の様々な例は、本明細書の他の場所に記載されている。用語「化学シーラント」は、広く定義することができるが、特定の独立した実施形態では、こうした化学シーラントは、以下を包含する1つ又は複数のヘテロ原子含有官能基を有する有機又は有機金属化合物から成る、本質的に成る、又は含むことができる。
(i)1つ、2つ又はそれ以上のエポキシ又はオキセタン部分;
(ii)1つ、2つ又はそれ以上のグリシジルエーテル部分;
(iii)1つ、2つ又はそれ以上のカルボン酸、カルボキシエステル、カルボキシ無水物、アミド又はラクタム部分;
(iv)1つ、2つ又はそれ以上のヒドロキシリン酸部分;
(v)1つ、2つ又はそれ以上の-OH、-SH又は-NH部分;
(vi)1つ、2つ又はそれ以上のシラノール、アルコキシシラノール、又はアルコキシシラン部分;
(vii)1つ、2つ又はそれ以上のイソシアネート部分;及び/又は
(viii)1つ、2つ又はそれ以上のアルコキシチタネート又はアルコキシジルコネート部分。
【0055】
化学シーラントにおけるこれらの官能基の各組み合わせは、独立した実施形態を表す。有機又は有機金属化合物が化合物ごとに2つ以上の機能的部分を有する場合、これらの機能的部分は同じであっても異なっていてもよい。化学シーラントと熱可塑性基材との段階的反応を可能にするために、化合物あたりの2つの機能部分は、異なるか、又は少なくとも作用の反応速度論若しくは作用機序のいずれかに関して異なる反応性を有することが好ましいと想定され得る。すなわち、所与の化合物が2つの異なる機能的部分を含有し、第1の機能的部分が活性化された熱可塑性表面と優先的に反応し、第2の機能的部分を未反応のままにするか、又は塗料、接着剤、若しくは表面仕上げ等の第2の材料への結合に利用できるようにすることが好ましい。したがって、非限定的な2つの例では、化学シーラントは、(a)上記(i)~(viii)に列挙された部分のいずれか2つ以上(例えば、エポキシシラン);あるいは(b)上記(i)~(viii)に列挙された1つ又は複数の部分と、1つ又は複数のアルキル、アルケニル、アルキニル、又は(ヘテロ)アリール部分(例えば、オレフィン性ヒドロキシホスフェート)を含有する。
【0056】
用語「化学シーラント」はまた、1つ又は複数の化学物質を指してもよい。化学シーラントは、化学シーラント化合物(又はその前駆体)と、取り扱い及び/又は適切な仕上げを促進するために存在する適切な溶媒及び添加剤(例えば、粘度調整剤、充填剤、粘着付与剤等)との混合物として塗布されてもよい。
【0057】
特定の独立した実施形態では、化合物としての化学シーラントは、1つ、2つ、又はそれ以上のエポキシ又はオキセタン部分を有する有機化合物又は有機金属化合物から成るか、本質的にそれから成るか、又はそれらを含む。独立した実施形態では、そのような例示的なエポキシ又はオキセタンは、ビスフェノールA、F、S、E、及びM樹脂のジグリシジルエーテル;エポキシノボラック;モノフェノール、ジフェノール、トリフェノール、及びポリフェノールのグリシジルエーテル;テトラフェノールエタンのグリシジルエーテル;ヒドロキシル-フェニル-メタンベースのエポキシ樹脂;ナフタレンベースのエポキシ;アミノフェノールのトリグリシジルエーテル;メチレンジアニリンのテトラグリシジルエーテル;脂肪族ポリオールのグリシジルエーテル;脂環式エポキシ;ハロゲン、シリコン、及びリンで修飾されたエポキシ;並びにゴム(ブタジエン、ブタジエンアクリロニトリルコポリマー等)で修飾されたエポキシを包含する。好ましい実施形態では、化学シーラントは、1つ、2つ又はそれ以上のグリシジルエーテル部分を有する有機化合物又は有機金属化合物であるか、あるいはそれらを含む。
【0058】
特定の独立した実施形態では、化学シーラントは、1つ、2つ又はそれ以上のカルボン酸、カルボキシエステル、カルボキシ無水物、アミド又はラクタム部分を有する有機化合物又は有機金属化合物ら成るか、本質的にそれから成るか、又はそれらを含む。このグループ内の例示的な実施形態は、任意で置換されたHOC-R-COH、(式中、Rは、脂肪族(直鎖、分岐鎖、若しくは環状)又は芳香族C-C24モノカルボキシ酸(例えば、脂肪酸を介したギ酸、酢酸、プロピオン酸等)であることができる)、任意で置換されたC-C18ジカルボキシ酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、イタコン酸、グルコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸)(任意で1つ又は複数のヒドロキシ基で置換される)を包含するモノカルボン酸、ジカルボン酸、及びポリカルボン酸;脂肪族及び芳香族の天然及び非天然アミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシンロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン);無水フタル酸、ピロメリット酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物、ナフタレン四酢酸二無水物を包含するが、これらに限定されない。
【0059】
特定の独立した実施形態では、化学シーラントは、1つ、2つ又はそれ以上のヒドロキシリン酸部分を有する有機化合物又は有機金属化合物ら成るか、本質的にそれから成るか、又はそれらを含む。このグループ内の例示的な実施形態は、C1-12-アルキル二水素ホスフェート等のモノ-及びジ-アルキルホスフェートエステル;ジ-C1-12-アルキル水素ホスフェート;C1-12-アルキルジホスフェート;C1-12-トリアルキルホスフェート;C2-12-アルケニル二水素ホスフェート等のモノ-及びジ-アルケニルホスフェートエステル;ジ-C2-12アルケニル水素ホスフェート;C2-12-アルケニルジホスフェート;C2-12-トリアルケニルホスフェート;フィチン酸;及びフィチン酸を包含するが、これらに限定されない。
【0060】
特定の独立した実施形態では、化学シーラントは、1つ、2つ又はそれ以上の-OH、-SH又は-NH部分を有する有機化合物又は有機金属化合物ら成るか、本質的にそれから成るか、又はそれらを含む。このグループ内の例示的な実施形態は、ジオール、トリオール、ポリオール、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アルカノールアミン、グリコールアミン、ヒドロキシチオール、ジチオール、ヒドロキシアルキルチオール、アミンアルキルチオール、アルキルジチオール;例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、任意でアルコキシル化又はアミノ化されたグリセロール、任意でアルコキシル化又はアミノ化されたネオペンチルグリコール等;任意でアルコキシル化又はアミノ化されたトリメチロールプロパン、任意でアルコキシル化又はアミノ化されたペンタエリスリトール;任意でアルコキシル化又はアミノ化されたソルビトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、イソマルト又は他の糖アルコール;アルキル化又はアルコキシル化されたグリコールアミン;ジエチレングリコールアミン、メトキシポリエチレングリコールアミン;d-グルカミン;ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール、ヘキサンジチオール、2,2'-チオジエタンチオール、メルカプトエタノール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、2-メルカプトベンジルアルコール、システアミンを包含するが、これらに限定されない。
【0061】
特定の独立した実施形態では、化学シーラントは、1つ、2つ又はそれ以上のシラノール、アルコキシシラノール又はアルコキシシラン部分を有する有機化合物又は有機金属化合物ら成るか、本質的にそれから成るか、又はそれらを含む。このグループ内の例示的な実施形態は、式RSi(OH)4-xの化合物、式中、Rは、独立してC1-12アルコキシ、C1-12アルキル、C7-18アリールオキシ、C7-18アリール、C7-18アルコキシアリール、C7-18アルカリル、C7-18アラルキルであり、xは独立して、1、2、又は3である;例えば、トリメチルシラノール、エポキシシランオリゴマー、及びジフェニルシランジオール;並びに、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリアルコキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを包含するエポキシ、アミン、メタクリロキシ、アクリロキシ、ウレイド、イソシアネート、イソシアヌレート、チオールを包含する有機官能基を含有するアルコキシシランを包含する多官能性シランを包含するが、これらに限定されない。
【0062】
特定の独立した実施形態では、化学シーラントは、1つ、2つ又はそれ以上のイソシアネート部分を有する有機化合物又は有機金属化合物ら成るか、本質的にそれから成るか、又はそれらを含む。
【0063】
特定の独立した実施形態では、化学シーラントは、1つ、2つ又はそれ以上のアルコキシチタネート又はアルコキシジルコネート部分を有する有機化合物又は有機金属化合物ら成るか、本質的にそれから成るか、又はそれらを含む。
【0064】
接着剤、塗料、又は表面処理フィルムをさらに含む積み重ねられた複合構造
本明細書の他の場所で説明されているように、複合構造は、熱可塑性基材、化学シーラント、及び接着剤、塗料(プライマー、中間、若しくはトップコート層)、又は表面処理フィルム層等のさらなる材料の積み重ねられた複合構造を含んでもよく、シーラントは、熱可塑性基材と接着剤、塗料、プライマー又は表面処理フィルム層との間に配置及び/又は接着されている。こうした実施形態では、接着剤、塗料又は表面処理フィルム層は、第1面がシーラントに結合され、第2面が第1面の反対側にあることを特徴とする。これは、接着剤、塗料、又は表面処理フィルム層の第2面が、さらに追加の材料に結合することによってさらに機能化され得る(例えば、接着剤の第2面は、第3の材料に結合されてよく、プライマーコーティングの第2面は、トップコート塗料コーティングで上塗りしてよく、又は表面処理層の第2面は、塗装若しくは他の方法で機能化されてよい)。
さらなる実施形態を提供する。
【0065】
この接着剤、塗料、又は表面処理フィルム層の化学的性質は、化学シーラントのペンダント官能基の性質に応じて柔軟に選択され、熱可塑性若しくは熱硬化性ポリマー、又は他の材料を含んでよい。
【0066】
例えば、接着剤、塗料、プライマー、又は表面処理フィルム層は、ベンゾオキサジン、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、エポキシ、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、シアノアクリレート、(メタクリル)アクリルアミド、エポキシアクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、トリアジン、ビニルエステル、又はそれらのコポリマー若しくは混合物、好ましくは(メタ)アクリレート、エポキシ、又はポリウレタンポリマー若しくはコポリマーを含むという観点から説明されてよい。接着剤及び塗料として使用するための特に有用な材料には、エポキシ、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びポリウレタンが包含される。
【0067】
接着剤、塗料、又は表面処理フィルム層をさらに含む複合構造は、これらの材料が塗布されるがまだ未硬化であり、独立して、材料が部分的又は完全に硬化される実施形態が包含される。この場合も、硬化状態は、塗布された材料に対する勾配として存在すると見なしてよい。別の言い方をすれば、別個の実施形態では、接着剤、塗料、又は表面処理フィルム層は、独立して、提供されたまま存在してよく、又は塗布された材料がさらに硬化(例えば、重合又は架橋)するのを可能にするいくつかの工程が取られた後、若しくは時間が経過した後に存在してよい。
【0068】
接着剤、塗料、又は表面処理フィルム層をさらに含む複合構造のこの文脈内で、これらの材料はエポキシを含んでよい。好ましいエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、F、S、E、及びM樹脂のジグリシジルエーテル;エポキシノボラック;一価、二価、三価、及び多価フェノールのグリシジルエーテル;テトラフェノールエタンのグリシジルエーテル;ヒドロキシルフェニルメタンベースのエポキシ樹脂;ナフタレンベースのエポキシ樹脂;アミノ-フェノール樹脂のトリグリシジルエーテル;メチレンジアニリン樹脂のテトラグリシジルエーテル;脂肪族ポリオールのグリシジルエーテル;脂環式エポキシ樹脂;全てのエポキシタイプの変更されたグレード(ハロゲン、ケイ素、リンを含有する);ゴム(ブタジエン、ブタジエンアクリロニトリルコポリマー等)を使用した全てのエポキシタイプの強化グレード/付加物の1つ又は複数を包含するエポキシ樹脂を包含するが、これらに限定されない。
【0069】
接着剤、塗料、又は表面処理フィルム層をさらに含む複合構造のこの文脈内で、これらの材料は、(メタ)アクリルを含んでよい。アクリレート又はメタクリレート成分に基づくものを包含する適切な(メタクリレート)アクリレートとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、t-ブチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、アクリルアミド、n-メチルアクリルアミド、ラウリルメタクリレート及びステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートが挙げられる。
【0070】
他の適切なアクリレート又はメタクリレートは、以下の式Iに示されるような多量体のアクリレート及びメタクリレートである。
【0071】
【化1】
【0072】
式中、RはH、ハロゲン、又はC-C20アルキルであってよくCHが適切であり、Rは、複数のモノマーアクリレート及び/又はメタクリレートを結合することができ;
は、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、C-C20シクロアルキル、任意で環中に少なくとも1つのC-C不飽和結合を有するC-C20シクロアルキル、C-C20アリール、C-C20ヘテロアリール、ウレタン、尿素、グリコール、エーテル、ポリエーテル又はグリシジル成分、及びそれらの組み合わせから成る群から選択されてよく、任意でヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C-Cアルコキシ、及び/又はC-Cチオアルコキシのうちの少なくとも1つで1回以上置換される;
nは、1、2、3、又は4のアクリレート単位であり得る。例としては、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート並びにエトキシル化ビスフェノールジアクリレート及びジメタクリレートが挙げられる。
【0073】
さらに適切な(メタ)クリレートは、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン10(メタ)アクリレート及びジ(メタ)アクリレートのような二官能性又は三官能性(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(「HPMA」)、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(「TMPTMA」)、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(「TRIEGMA」)、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジ-(ペンタメチレングリコール)ジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジグリセロールテトラメタクリレート、テトラメチレンジメタクリレート、エチレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びエトキシル化ビスフェノールA(メタ)アクリレート(「EBIPMA」)等のビスフェノール-モノ及びジ(メタ)アクリレート、並びにエトキシル化ビスフェノール-F(メタ)アクリレート等のビスフェノールFモノ及びジ(メタ)アクリレートを包含する多官能性(メタ)アクリレートから選択されてよいが、これらに限定されない。
【0074】
アクリレート又はメタクリレート組成物は、硬化性成分、適切にはマレイン酸塩、フマル酸塩若しくはマレイミド成分又はそれらの組み合わせを含んでよい。例としては、モノ-2-(アクリロイルオキシ)エチルマレエート、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、無水マレイン酸、マレイン酸、トキシル酸、フマル酸、フマラミド、フマリルニトリル、塩化フマリル、亜鉛、カルシウム及びマグネシウムのフマル酸モノエチルエステル塩、2,5-ピロールジオン及び1,1'-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド、あるいはそれらの組み合わせが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0075】
本複合構造によって企図される塗料又は接着剤は、強化剤成分をさらに含んでよい。強化剤成分の例としては、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBRゴム)、ポリウレタン、スチレン/ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエン/メタクリレートゴム、クロロプレンゴム又はブタジエンゴム等の合成ゴム、天然ゴム、スチレン/ポリブタジエン/スチレン合成ゴム等のスチレン熱可塑性エラストマー、ポリアクリレート又はポリメタクリレートエラストマー、メタクリレート/アクリレートブロックコポリマー又はポリスチレン/EPDM(エチレン/プロピレン/共役ジエンコポリマー)合成ゴム等のオレフィン熱可塑性エラストマーが挙げられる。塩素化及びクロロスルホン化ポリエチレンエラストマーも使用できる。
【0076】
熱可塑性又は熱硬化性表面処理フィルム
本明細書に記載されるように、さらなる実施形態は、化学シーラントによって一緒に接着された、熱可塑性基材と熱可塑性又は熱硬化性表面処理フィルムを含む複合構造を含むものを包含する。化学シーラントと表面処理フィルムとの間の結合は、本質的に物理的又は化学的であってよい。すなわち、表面処理フィルムは、化学シーラントに隣接して単純に配置され、手動で、又はそれぞれの表面の欠陥の物理的相互貫入によって、所定の位置に保持されてよい。実施形態では、これらの表面間の結合は、反応する共有結合によるものを包含し、本質的により化学的であり、熱可塑性樹脂の活性化表面の官能基が表面形成フィルムのそれぞれの結合部分に提示される。
【0077】
この場合も、表面処理フィルムは、熱可塑性又は熱硬化性フィルムを含んでよいが、好ましい実施形態では、表面処理フィルムは、熱硬化性フィルムであり、熱硬化性表面処理フィルムは、高分子化学の当業者によって一般に理解されるように、熱硬化性ポリマーを含む。好ましい実施形態では、熱硬化性表面処理フィルムは、航空宇宙産業でこの文脈で典型的に使用される(プレ)ポリマーシステム(例えば、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、エポキシ、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ビニルエステル、又はそれらのコポリマー若しくは混合物、好ましくは(メタ)アクリレート、エポキシ、又はポリウレタンポリマーあるいはコポリマー)を含む。
【0078】
機能/性能と作業性の両方の観点から、エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムが好ましいようである。この文脈において、特定の実施形態では、エポキシベースの表面処理フィルムは、ビスフェノールA、F、S、E、及びM樹脂のジグリシジルエーテル;エポキシノボラック;一価、二価、三価、及び多価フェノールのグリシジルエーテル;テトラフェノールエタンのグリシジルエーテル;ヒドロキシルフェニルメタンベースのエポキシ樹脂;ナフタレンベースのエポキシ樹脂;アミノ-フェノール樹脂のトリグリシジルエーテル;メチレンジアニリン樹脂のテトラグリシジルエーテル;脂肪族ポリオールのグリシジルエーテル;脂環式エポキシ樹脂;全てのエポキシタイプの変更されたグレード(ハロゲン、ケイ素、リンを含有する);ゴム(ブタジエン、ブタジエンアクリロニトリルコポリマー等)を使用した全てのエポキシタイプの強化グレード/付加物の1つ又は複数を包含するエポキシ樹脂を包含するが、これらに限定されない。本発明者らは、本発明の方法において、特に限定的ではないが、PEEK基材を用いて、ロックタイト(登録商標)EA9845エアロ、ロックタイト(登録商標)EA9845LC、ロックタイト(登録商標)EA9845P&P、ロックタイト(登録商標)EA9845LC P&P、及びロックタイト(登録商標)EA9837.1エポキシベースの複合材料表面処理フィルムで良好な結果を見たので、これらは好ましい実施形態と見なされる。他の独立した実施形態では、ロックタイトEA9837.1エアロ、ロックタイトEA9837.1BLKエアロ、ロックタイトEA9837.1LSエアロ、ロックタイトEA9845エアロ、ロックタイトEA9845LCエアロ、ロックタイトEA9845LAエアロ、ロックタイトEA9845P&Pエアロ、及びロックタイトEA9845LC P&P、並びにテンカーテTC235SF-1、エアログライド表面処理フィルム、サイテックからのサーフェースマスター905、並びにヘクセルからのリダックス641として指定されたエポキシベースの表面処理フィルムもこれらの用途で使用できる。
【0079】
独立した実施形態には、熱可塑性表面に接着されたときに、熱硬化性表面処理フィルムがまだ未硬化であるか、部分的に硬化されているか、又は完全に硬化されているものが包含される。これらの硬化段階のそれぞれは、処理の様々な段階で現れてよい。
【0080】
典型的に、熱硬化性表面処理フィルムは、塗布される場合、12.5~12,500ミクロン(0.5~500ミル)、好ましくは12.5~1250ミクロン(0.5~50ミル)の範囲の総厚を有する。他の実施形態では、総厚は、12.5~25ミクロン、25~50ミクロン、50~75ミクロン、75~100ミクロン、100~125ミクロン、125~150ミクロン、150~175ミクロン、175~200ミクロン、200~250ミクロン、250~300ミクロン、300~400ミクロン、400~450ミクロン、450~500ミクロン、500~1000ミクロン、1000~1500ミクロン、1500~2000ミクロン、2000~2500ミクロン、2500~5000ミクロン、5000~7500ミクロン、7500~10,000ミクロン、10,000~12,500ミクロンの範囲、又はこれらの範囲の2つ以上の組み合わせ、例えば、25~500ミクロン、50~300ミクロン、又は約25~125ミクロンで表されてよい。
【0081】
他の実施形態では、熱硬化性表面処理フィルムは、0.005~0.15lb./ft(psf)又は24g/m~730g/mの範囲の面積質量を有することができる。代わりに又は追加で、この面積質量は、25~50g/m、50~100g/m、100~200g/m、200~300g/m、300~400g/m、400~500g/m、500~600g/m、600~700g/m、又は700~730g/mの1つ又は複数の範囲により定義されてよい。航空機用途においては、好ましい範囲は、0.005~0.01psf(25~50g/m)、0.005~0.02psf(25~100g/m)、0.005~0.03psf(25~150g/m)、0.005~0.04psf(25~200g/m)、0.005~0.05psf(25~250g/m)、又は0.005~0.06psf(25~300g/m)、又はこれらの範囲の2つ以上のいくつかの組み合わせを包含する。
【0082】
熱可塑性基材の場合と同様に、熱硬化性表面処理フィルムも、熱硬化性ポリマー又はプレポリマーマトリックスに組み込まれる1つ又は複数の有機、無機、又は金属添加剤、例えば、流動剤、レオロジー調整剤、密度調整剤、防腐剤、顔料、着色剤等のような添加剤を含む複合材料である。ある実施形態では、これらの添加剤は、連続繊維若しくは細断繊維、ウィスカー、ナノ材料、粒子状鉱物、セラミック、衝撃改質剤、及び/又は充填若しくは中空カプセルを包含する。少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤は、ナノ、マイクロ、及び/若しくはマクロ寸法の粉末、粒子、ビーズ、フレーク、ウィスカー、又は繊維を含有してよく、少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤は、例えば、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズ、ジルコニウム、又はアルミニウムの炭化物、窒化物若しくは酸化物、炭素、銅、ニッケル、Sn-Zn、又はステンレス鋼、又はアラミドを包含する、セラミック、ポリマー、ガラス、又はそれらの金属/半金属材料又は合金、又はコーティングされたハイブリッド材料を含む。これらの充填剤は、表面処理フィルムの厚さ寸法全体に実質的に均一に分布させてよく、又はその第1面若しくは第2面の1つに集中させてよい。これらの粒子状充填剤は、本明細書に記載の機能性材料、例えば、セラミック、ポリマー、ガラス、又は金属/半金属材料又はそれらの合金のうちの1つ又は複数を含んでよい。
【0083】
代わりに又は追加で、こうした表面処理フィルムは、熱硬化性樹脂に含有される1つ又は複数の有機、無機、又は金属の繊維、メッシュ、布、又は多孔質シートを含んでよい。
【0084】
このような繊維は、アルミナ、アラミド、ホウ素、炭素、ガラス、炭化ケイ素、又はそれらの混合物の連続繊維若しくは細断繊維又はウィスカーを包含する強化繊維として機能してよい。ガラス及び/又は炭素繊維が特に好ましい。
【0085】
1つ又は複数の有機又は無機の繊維、布、織物、メッシュ、又は多孔質シートは、熱硬化性樹脂又は(プレ)ポリマーに含有されてよく、あるいは熱硬化性表面処理フィルムの第2面上又はその下に配置された1つ又は複数の剥離可能な有機又は無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含んでよい。こうした剥離可能な材料の使用は、熱硬化性表面処理フィルムの第1面の反対側の第2面からの、剥離可能な布、織物、メッシュ、又はシートの後続する除去を可能にし、後続の塗装に適した新しい表面を提供する。本開示の特定の実施形態では、複合構造は、そのような剥離可能な層が除去され、塗装即応表面を露呈するものである。
【0086】
更なる実施形態では、複合構造は、この塗装即応表面に塗料又は他の充填若しくは未充填又はクリアコート仕上げが塗布された構造であり、すなわち、熱硬化性表面処理フィルムの第2面がそのように塗装又はコーティングされている。塗料が最終的な表面構成に適合する限り、塗料の選択は制限されない。好ましい塗料は、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリウレタン、又はそれらのコポリマー若しくは混合物を含むものである。露出した表面への塗料の結合は、選択した塗料の性質に応じて、物理的又は化学的、あるいはその両方であり得る。露出された表面は、剥離プロセスの結果として、本明細書に記載のプロセスがない場合よりも高濃度の反応性化学基が表面に付着することが予想される。結果として、露出面と塗料との間に生じる結合は、塗料との化学的相互作用の寄与が、プロセスがない場合よりも高くなり、それによってより一体的な結合が提供される可能性が高いと予想される。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「布」は、織られた又は織られていない材料を指す。用語「フィルム」は、その通常の意味と一致して、平らなポリマーセクションを意味する。布又はフィルムのサイズは、シート、テープ、又は連続ロールを包含するように変化してよい。フィルムは、多孔性、半透性、又は非多孔性であってよい。非多孔質の穴あきフィルムが好ましい。布とフィルムの両方は、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(p-フェニレンサルファイド)(PPS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、フッ素化若しくはペルフルオロ化ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又はテフロン(登録商標))、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF又はテドラー(登録商標))等)、又はそれらの混合物若しくはコポリマーを含む材料を包含してよい。好ましい例示的な布は、ポリエステル、ポリアミド、炭素繊維、ガラス又は他の無機繊維又はケブラー(登録商標)を含んでよい。ポリエステル、ナイロン、又はそれらの混合物は、この目的の布又はフィルムに特に有用である。布又はフィルムのそれぞれは、接着性樹脂をラミネートすることによってコーティング又は含浸してよい。樹脂は、表面処理フィルム組成物の5~50重量%又は10~40重量%であってよい。布又はフィルムのポリマー表面は、任意でシリカ、シロキサン、酸化アルミニウム又は金属でコーティングされてよく、あるいはプラズマ又はシランで処理されてよい。
【0088】
布又はフィルムは、単層又は多層の布構造であってよい。布が織られている場合、織布は、しっかりと織られたモノフィラメント又はマルチフィラメントのトウを含む。最終的な塗装製品に望まれる仕上がりに適合する、滑らかな仕上がりを提供するために、しっかりと織られた高密度の織物が好ましい。したがって、好ましい織物としては、平織り、ハーネスサテン織り、クロウフットサテン織り、又はツイルが挙げられ、クロウフットサテン織りスタイルが最も好ましい。ポリマーフィルムは、究極に閉じた織物(ultimate closed weave)及びカレンダー加工された布(calendared fabric)として想定されてよく、ポリマーフィルムは、高度にカレンダー加工された閉じた織布(highly calendared, closed weave fabrics)よりも大幅に小さい表面粗さを提供する。
【0089】
織りの堅さは、1インチ当たりの縦糸端及び横糸端の観点から説明することができ、両方の用語は、織布の業者によって容易に理解される。本発明の布又はフィルムは、1インチ当たり少なくとも80の縦糸端、又は1インチ当たり少なくとも100、120、140若しくは160の縦糸端、並びに1インチ当たり少なくとも40の横糸端、又は1インチ当たり少なくとも60、80若しくは100の横糸端を独立して含有するものを含む。例えば、布又はフィルムが1インチ当たり少なくとも約80の縦糸端及び1インチ当たり少なくとも約40の横糸端を含有する場合、良好な結果が得られる。より好ましい実施形態は、1インチ当たり少なくとも120の縦糸端及び1インチ当たり少なくとも60の横糸端で織られた布の織物を包含する。こうした織物は、例えば、ノースカロライナ州グリーンズボロのプレシジョン・ファブリックス・グループから市販されており、「細かい表面の印象」を提供することを特徴とするものが最も好ましい。例示的な組成は、60004/56111ポリエステル、51789/52006ナイロン、及び2008/56115ナイロン材料を包含する。繊維又は糸の太さは、縦糸端/横糸端のパラメータを考慮して、布全体の厚さに適合して、最小限に開いた織物を提供するようなものである。
【0090】
代わりに又は追加で、熱硬化性表面処理フィルムは、第2の機能性材料の1つ又は複数のシートを含んでよく、その少なくとも一部は、多孔質織布又は不織布、エキスパンド金属箔又はポリマーフィルム、格子、メッシュ、スクリーン又はウェブの形態である。特定の好ましい実施形態では、追加の機能性材料のこれらの多孔質シートは、表面処理フィルムの中又は上に存在する。したがって、表面処理フィルムは、任意で、単機能性(例えば、導電性金属フィラメント若しくは繊維も含有する)又は多機能性であり得る。このような追加の材料は、落雷保護、電流散逸、EMIシールド、又は熱伝達用途での使用に適した導電性材料を包含する。
【0091】
すなわち、いくつかの実施形態では、これらの追加の機能性材料は、機能性材料の複数のシートとして存在してよく、又は単一のシートが複数の異なる機能を有する材料(いわゆるハイブリッド材料を包含する)を含んでよい。上記の剥離可能な多孔質シートは、1つの機能的能力(すなわち、剥離性)を提供するが、ここで使用される文脈において、用語「機能的」は、強度の向上、EMIシールド材料、及び最終的に接着される基材への静的及び落雷保護を提供するために、性能を改善するフィルムにいくつかの特性(例えば、衝撃安定性、寸法安定性、電気伝導率、及び熱伝達能力)を与えるシート材料の属性を指す。さらに、表現「第2の機能性材料の少なくとも1つのシート」は、剥離不可能な機能性材料の1つ又は複数のシートであり得、剥離可能な布又はシートと区別される。すなわち、こうした第2の機能性材料は、(a)以下に説明するように、1つ又は複数の(剥離不可能な)機能性材料の1枚のシート;(b)同一の(剥離不可能な)機能性材料の2枚以上のシート;(c)異なる(剥離不可能な)材料の2枚以上のシート;又は(d)2つ以上の(剥離不可能な)機能性材料の2枚以上のシートを包含する実施形態を表す。
【0092】
さらに、第2の機能性材料の多孔質シートは、織布及びエクスパンドフィルムを含んでよいが、さらに、これらのシートは、剥離可能な多孔質シートに有用なものと同一又は類似の材料を包含する、連続又は細断された有機若しくは無機繊維の不織布、メッシュ、スクリーン、又はウェブも含んでよい。すなわち、1つ又は複数のフッ素化又はペルフルオロ化ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又はテフロン(登録商標))、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF又はテドラー(登録商標))等)、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(p-フェニレンサルファイド)、ポリ塩化ビニル、又はそれらのコポリマー若しくは混合物も含んでよい。他の有用な有機材料には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、又はそれらのコポリマー若しくは混合物が、単独で、又はこの目的のために記載された他の材料のいずれかと混合して含有される。アラミド(例えば、ケブラー(登録商標)繊維)及びイミド繊維(例えば、カプトン(登録商標))もまた、この用途で魅力的である。第2の機能性材料は、硬化後及び最終使用時に多機能表面処理フィルムに残ることが意図されているため、これらのシートの物理的完全性又は織りの性質は、剥離可能な材料よりも重要ではない;すなわち、それらは剥離操作に耐える必要はない。
【0093】
機能性材料はまた、セラミック又はガラス繊維(例えば、酸化物、炭化物、窒化物、酸炭化物、酸窒化物、炭窒化物、又はアルミニウム、ホウ素、ケイ素及び/又はチタンを含む酸炭窒化物)、サーメット繊維、炭素、金属繊維(例えば、アルミニウム、銅、鉄、銀、スズ、亜鉛、又は混合物、合金)、あるいはこれらの材料を含むコーティングされたハイブリッドを含んでよい。例示的な材料には、アルミナ、アラミド、ホウ素、炭素、ガラス、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、コーティングされたハイブリッド又はそれらの混合物の繊維又はウィスカー、好ましくはガラス、炭素又は金属でコーティングされた繊維が包含される。本明細書で使用されるとき、用語「繊維」には、マクロ、ミクロ、又はナノ次元のものが包含され、ウィスカーとしても知られる細長い単結晶を通るワイヤーが包含される。いくつかの場合では、これらの材料は、例えば炭素コーティングされた金属、ガラス、又はポリマー;金属コーティングされたポリマー、炭素、又はガラス;ポリマーコーティングされたガラス、炭素、又は金属等を包含する、様々な材料クラスの複合材料である。いくつかの場合では、機能性材料は導電性である。いくつかの実施形態では、機能性材料は、表面処理フィルムに磁気特性を付与する。
【0094】
このより一般的な説明内の特定の実施形態では、複合構造は、以下の2つ以上を含む多機能固体複合材料である接着された熱硬化性表面処理フィルムを含む。
(a)前記第2面上又はその下に配置された第1の剥離可能な布、織物、メッシュ、又は多孔質シート;
(b)落雷保護、電流散逸、EMIシールド、又は熱伝達用途での使用に適した少なくとも1つの導電性材料;
(c)ナノ、マイクロ、及び/又はマクロ寸法の粉末、粒子、ビーズ、フレーク、ウィスカー、又は繊維を含む少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤、前記少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤は、例えば、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズ、ジルコニウム、又はアルミニウムの炭化物、窒化物又は酸化物、炭素、銅、ニッケル、Sn-Zn、又はステンレス鋼、又はアラミドを包含する、セラミック、ポリマー、ガラス、又はそれらの金属/半金属材料又は合金を含む;及び、任意で
(d)当技術分野で知られているUV耐性ポリマー又はUV安定化添加剤。
【0095】
複合構造の物理的特性
本明細書に開示される複合構造はまた、それらの物理的属性の1つ又は複数によって、例えば、熱可塑性及び熱硬化性材料の直接結合の強度によって特徴付けられてよい。
【0096】
例えば、いくつかの実施形態では、複合構造は、調製時とエージング後の両方での濡れ性によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、実施例3に記載の条件下で、調製時又は8ヶ月の熟成後のいずれか又は両方で、密封された表面は、50°~60°の範囲、60°~70°の範囲、70°~80°の範囲、又は前述の範囲のいずれか2つ以上の範囲のHPLCグレードの水との接触角を示す。他の実施形態では、こうしたエージング後の接触角は、最初に調製された試料の接触角の少なくとも80%、90%、95%、又はそれ以上である。
【0097】
例えば、いくつかの実施形態では、さらに接着剤又は塗料を含む複合構造は、ASTM D3359-09に従う45°クロスハッチテープ試験のような、標準クロスハッチテープ試験を使用して測定した、化学シーラントを介した熱可塑性基材への接着強度によって特徴付けられる。これらの独立した実施形態のいくつかでは、塗料又は接着剤は、試験で少なくとも3B、4B、又は5Bのスコアを示す。この試験の詳細は、実施例に記載されている。
【0098】
特定の他の実施形態では、複合構造は接着剤をさらに含み、結合は、ASTMD5528に準拠したダブルカンチレバービーム試験を使用して測定した場合、少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000J/mから約1500J/mまでの破壊靭性G1C値を示すものとして特徴付けられ得る。
【0099】
ある特定の実施形態では、複合構造は、表面処理フィルムをさらに含み、表面処理フィルムは。ASTM D3359-09に従う45°クロスハッチテープ試験で少なくとも3B、4B又は5Bのスコアを付けるのに十分な強度で、熱可塑性基材に接着される。その条件は、実施例でより完全に説明されている。
【0100】
複合構造の作製方法
この時点まで、本開示は複合構造を説明してきたが、本開示はこれらの構造を作製する方法も包含する。代替の実施形態は、具体的に開示された複合構造に関して記載されたものとは異なる場合でも、以下の方法から誘導される又は誘導可能な構造を包含する。
【0101】
ここに記載されているように、本開示は、直接結合された熱可塑性-熱硬化性複合材料を調製する方法を包含する。前記方法は、
(a)熱可塑性基材の表面に、前記熱可塑性基材の表面を活性化するのに十分な化学線及び/又はプラズマを照射すること;
(b)前記熱可塑性基材の活性化された表面に、化学シーラントを塗布し、化学シーラントの表面を有する化学的に密封された熱可塑性基材を形成すること;並びに
(c)任意で化学的に密封された熱可塑性基材を加熱すること;
を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、方法は、化学的に密封された熱可塑性基材の加熱をさらに含む。さらなる他の実施形態では、化学シーラントは、化学シーラントから揮発性溶媒を除去する、及び/又は、化学部分の少なくとも1つと活性化された熱可塑性表面との間の化学反応を強制するのに十分な時間、周囲温度(例えば、25~25℃)から150℃の範囲の温度で、熱可塑性基材に硬化される。
【0103】
これらの実施形態は、本明細書の他の場所に記載されている熱可塑性基材及び表面処理フィルムのいずれかを使用する方法を包含する。
【0104】
これらの実施形態はまた、本明細書の他の場所で説明されているように、化学線の使用を包含する。完全を期すために、これらは、化学線が、約10nm~約450nmの範囲、好ましくは約200nm~約350の範囲の1つ又は複数の波長で十分な強度で適用される場合を包含するものとしてここで部分的に繰り返される。適切なサブ範囲は、本明細書の他の場所で説明されている。同様に、化学線は、約0.1J/cm~約300J/cmの範囲のエネルギーで少なくとも1つの波長で、好ましくは少なくとも1つの波長で約0.5J/cm~約250J/cm又は約1.5J/cm~約250J/cmの範囲、又はここに記載されている追加の具体化された範囲の任意の1つ又は複数で、1つ又は複数の波長で適用されてよい。
【0105】
さらに、化学線は、約2~約600秒又は約10~約60秒の範囲の時間、約2mW/cm~約3000mW/cm、約2mW/cm~約2000mW/cm、約300mW/cm~約600mW/cmの1つ又は複数の範囲の割合で、又は好ましくは約40~500mW/cmの範囲の割合で適用されてよい。特定の他の実施形態では、化学線は、約2~約5mW/cm、約5~約10mW/cm、約10~約25mW/cm、約25~約50mW/cm、約50~約100mW/cm、約100~約200mW/cm、約200~約300mW/cm、約300~約400mW/cm、約400~約500mW/cm、約500~約600mW/cm、約600~約700mW/cm、約700~約800mW/cm、約800~約900mW/cm、約900~約1000mW/cm、約1000~約2000mW/cm、約2000~約3000mW/cmの1つ又は複数の範囲で記載される割合で、1つ又は複数の波長で適用されてよい。いくつかの実施形態では、範囲は約2~2000mW/cm、又は好ましくは約40~500mW/cmである。
【0106】
これらのエネルギーを送達するのに必要な時間は、基材の性質及びエネルギーが基材に送達される速度に依存する。連続的に移動する生産ライン、例えば、連続する基材が光源を通過してそれらを活性化する場合、より速い活性化が望ましい場合がある。曝露時間は、約0.1秒~約360分、例えば、約0.5秒~約180分、又は約0.5秒~約30分、又は約3秒~約19分、又は約240秒未満であってよい。スループットの観点から、曝露時間は約0.1秒~約360分であることが好ましい。
【0107】
追加で又は代わりに、化学線は、1つ又は複数の波長で、前述の割合の1つ又は複数で、約2~約5秒間、約5~約10秒間、約10~約20秒間、約20~約30秒間、約30~約40秒間、約40~約60秒間、約60~約80秒間、約80~約100秒間、約100~約200秒間、約200~約300秒間、約300~約400秒間、約400~約500秒間、約500~約600秒間又はさらに長く約20分間まで、約60分間まで、又は約360分間までの1つ又は複数の範囲で定義される時間、適用されてよい。
【0108】
個々の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の結合対を調製するために必要なエネルギーは、結合される材料の性質と、こうした化学活性化に利用できる時間によって異なる。良好な結果が達成されており、以下の処理後に一般的に利用可能であると考えられている:
UV-A(320~390nm) - 200mW/cm×30秒=6000mJ/cm=6J/cm
UV-B(280~320nm) - 306mW/cm×30秒=9180mJ/cm=9.2J/cm
UV-C(100~260nm) - 70mW/cm×30秒=2100mJ/cm=2.1J/cm
UV-V(395~445nm - 200mW/cm×30秒=6J/cm
以下の範囲は、より一般的ではないにしても、少なくとも試験された材料に対して、個別に又は集合的に適切であることを示唆している:
UV-A(320~390nm) - 100~400mW/cm×10~120秒=1~48J/cm
UV-B(280~320nm) - 10~300mW/cm×10~120秒=0.1~36J/cm
UV-C(100~260nm) - 5~200mW/cm×10~120秒=0.5~24J/cm
UV-V(395~445nm) - 50~400mW/cm×10~120秒=0.5~48J/cm
これらの範囲のそれぞれを独立して使用する照射は、独立した実施形態と見なされる。
【0109】
化学線が言及される本発明の全ての態様において、化学線は、結合される基材を照射するように意図的に及び/又は特別に配置された光源からのものである。いくつかの例では、光源は、基材から1メートル以内、例えば、基材から30cm以内にある。明確にするために、こうした光源からの化学線による照射は、自然光、オーバーヘッドライトからの光等の周囲光の使用を包含することを意図せず、いくつかの実施形態では特に除外する。
【0110】
当業者によって認識されるように、こうした用途で使用されるガスプラズマは、任意の数のガス又はガスの混合物のエネルギーを与えられた形態、例えば、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、1つ又は複数を含むガス分子のエネルギーを与えられた形態を含む。酸素原子、水素、窒素、四フッ化炭素、六フッ化硫黄、アルゴン、ヘリウム、及びそれらの混合物を含み、これらの組成物は、本開示の実施形態に含まれる。酸素(空気を包含する)を含むプラズマが好ましい。これらのガスは、典型的に、例えば、50~60Hz等の極低周波数から、40KHz~13.5MHzの高無線周波数まで、又はさらには2~4GHz等のマイクロ波周波数までの範囲の周波数を有する振動電場を適用することによってプラズマに励起される。本開示では、DCは、1KHz~5KHz、5KHz~10KHz、10KHz~15KHz、15KHz~20KHz、20KHz~25KHz、25KHz~30KHz、30KHz~35KHz、35KHz~40KHz、40KHz~45KHz、又は45KHz~50KHzの1つ又は複数で規定される範囲の周波数を有するプラズマであることが好ましい。航空宇宙用途では、ここで企図されているように、プラズマは、30W~600Wの範囲の出力を有するが、独立した実施形態では、プラズマ出力は、この範囲内の任意の20年以上の増分(すなわち、10Wの範囲として定義される「10年増分」)、例えば、50W~300W又は100~600Wで定義できる。プラズマは、0.13mbar~50bar(0.013KPa~5MPa)の範囲の圧力下で基材の表面に衝突してよいが、独立した実施形態では、範囲は、この範囲内、例えば、1mbar~1bar(1000mbar)又は1bar~5barの任意の2つ以上の単位ミリバール増分で定義できる。
【0111】
本明細書に記載の方法は、熱可塑性基材内に活性剤を組み込むことを必要としない。また、これらの方法では、化学エッチング(例えば、酸エッチング)、物理的摩耗(例えば、サンド/グリットブラスト)、又は他の処理(例えば、火炎)等、表面に物理的変化を生じさせて接着性を向上させる処理も必要としない。
【0112】
特に明記しない限り、熱可塑性基材の表面は、いくつかの実施形態では、照射及び/又はプラズマ処理は、超周囲温度(例えば、20℃~25℃、25℃~30℃、30℃~40℃、40℃~50℃、又は50℃~60℃の1つ又は複数の範囲)で行われるが、それ以外の場合では周囲温度及び条件で照射及び/又はプラズマ処理される。追加で又は代わりに、別個の実施形態では、照射は、酸素がない状態、真空状態、周囲空気、又は酸素が豊富な環境で行ってよい。表面は、同時に又は連続して、又は同時及び連続処理の両方のサイクルで、UV照射及びプラズマ処理されてよい。
【0113】
照射及び/又はプラズマ処理は、熱可塑性基材の表面全体又はパターン化された部分のいずれかに行ってよい。例えば、これらの活性化は、後続の結合のために活性化される表面の領域、及び後続の結合のために活性化されない表面の領域を作成するために選択的に適用されてよい。化学線/プラズマを透過して後続の結合領域のために活性化される表面の領域を作成する領域、及び化学線/プラズマを遮断して後続の結合のために活性化されない表面の領域を作成する領域を有するマスクを使用することができる。小さな領域又は大きな領域を、必要に応じて様々な機器(スポット放射線源から多数の放射線源まで)で処理できる。結合する領域だけが放射線に曝露される必要がある。パターン化様式又は斑点様式で行われる場合、表面処理フィルムは、実質的にそれらの活性化された部分にのみ、又は非活性化された部分よりも実質的に多く付着する。
【0114】
特定の理論の正しさに拘束されることを意図せずに、化学線照射及び/又はプラズマは、これらのヘテロ原子結合の少なくともいくつかを破壊することによって熱可塑性表面を活性化し、それによって活性化ペンダント-OH、-SH、-C(O)H、-C(O)OH、又は-C(O)-NH部分を提供し、表面処理フィルムに反応性基が提示されると、クロスポリマー結合を形成することが可能である。
【0115】
熱可塑性表面を活性化した後、化学シーラントは、表面が放置時に不動態化される前に、任意で熱及び/又は圧力と共に、適用される。後続の材料(例えば、接着剤、塗料、及び表面処理フィルム)は、従来どおりに塗布できる。表面処理フィルムの場合、熱可塑性表面が活性化されると、表面処理フィルムは、圧力及び任意で熱と共に加えられる。特定の実施形態では、適用される圧力は、約0.05MPa~1.2MPaの範囲、又は0.05MPa~0.1MPa、0.1MPa~0.2MPa、0.2MPa~0.3MPa、0.3MPa~0.4MPa、0.4MPa~0.5MPa、0.5MPa~0.6MPa、0.6MPa~0.7MPa、0.7MPa~0.8MPa、0.8MPa~0.9MPa、0.9MPa~1.0MPa、1.0MPa~1.1MPa、1.1MPa~1.2MPa、若しくは前述の範囲の2つ以上の組み合わせの1つ又は複数の範囲、例えば0.4MPa~0.8MPa又は0.6MPa~0.7MPaの1つ又は複数の圧力である。圧力は、30分~60分、60分~90分、90分~120分、120分~180分、180分~240分、又はそれ以上の範囲の時間適用されてよい。特定の実施形態では、熱可塑性基材と熱硬化性表面処理フィルムの複合構造は、この圧力処理中に加熱される。他の実施形態では、外部熱は加えられないが、加えられる場合、構造の温度は、150℃~160℃、160℃~170℃、170℃~180℃、180℃~190℃、190℃~200℃の1つ又は複数の温度、例えば、170℃~180℃の範囲に加熱される。独立した実施形態では、熱は、実施例に記載されているように静的に又は上昇速度で、記載されている時間の一部又は全てに適用される。
【0116】
結合後、熱可塑性基材とそれぞれのコーティングとの間の結合強度は、本明細書の他の場所で説明されている結合測定基準と一致している。
【0117】
これらの複合構造を組み込んだ物品
複合構造及びそれらを製造する方法に加えて、本開示は、これらの複合構造を含む全ての物品を企図する。複合構造はあらゆるサイズの物品に適しているが、大きな構造には特に魅力的である。企図される構造には、一次構造要素、二次構造要素、外部要素、内部要素、並びに商業用及び個人用航空機及び航空宇宙用途、自動車、ウォータークラフト(船舶を包含する)、鉄道車両及びタンカー、並びに貯蔵タンクのいずれかの1つ又は複数のうちの1つであってよい構造が包含される。
【0118】
すなわち、本明細書に記載の複合構造のいずれかを含む航空機部品は、本開示の範囲内であると見なされる。これらには、航空機の尾翼、翼、胴体、又はプロペラ、及び他の翼のある若しくは翼のない航空機又は宇宙船の対応する機構が包含されるが、これらに限定されない。
【0119】
さらに、本明細書に記載の任意の複合構造を含む、自動車、自転車、オートバイ、トラック、又はウォータークラフト等の陸上車両の構成要素もまた、本開示の範囲内であると見なされる。これらには、フード、フェンダー、バンパー、ハル、又はフレームが包含されるが、これらに限定されない。
【0120】
用語
本開示では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形の参照を含み、数値への参照は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、少なくともその値を包含する。したがって、例えば、「材料」への言及は、当業者に知られているそのような材料及びその同等物の少なくとも1つへの言及である。
【0121】
値が「約」という記述子を使用して近似値として表される場合、その値は別の実施形態を形成することが理解されよう。一般に、用語「約」の使用は、開示された主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化することができ、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈で解釈されるべき近似を示す。当業者は、これを日常の問題として解釈することができるであろう。場合によっては、値に使用される有効数字の数が、単語「約」の範囲を決定する1つの非限定的な方法であってよい。他の場合には、一連の値で使用される漸次的変化を使用して、各値の「約」という用語で使用可能な意図された範囲を決定してよい。存在する場合、全ての範囲は包括的で組み合わせ可能である。つまり、範囲に示されている値への参照には、その範囲内の全ての値が包含される。
【0122】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されている本開示の特定の特徴もまた、単一の実施形態で組み合わせて提供されてよい。すなわち、明らかに互換性がないか、又は具体的に除外されない限り、個々の実施形態は、他の実施形態と組み合わせることができると見なされ、そのような組み合わせは別の実施形態である。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本開示の様々な特徴はまた、別個に又は任意のサブコンビネーションで提供されてよい。最後に、実施形態は、一連の工程の一部、又はより一般的な構造の一部として説明されてよいが、前記各工程は、他の工程と組み合わせることができる独立した実施形態と見なしてもよい。
【0123】
「含む」、「本質的に成る」、及び「から成る」という移行用語は、特許用語で一般的に受け入れられている意味でそれらを暗示することを意図している。つまり、(i)「包含する」、「含有する」又は「によって特徴付けられる」と同義である「含む」は、包括的又は自由形式であり、追加の、引用されていない要素又は方法ステップを除外するものではない。(ii)「から成る」は、クレームで指定されていない要素、工程、又は成分を除外する。(iii)「本質的に成る」は、クレームの範囲を、クレームされた発明の「基本的及び新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない」特定の材料又は工程に限定する。「含む」(又はその同等物)という句に関して記載された実施形態はまた、実施形態として、「から成る」及び「本質的に成る」に関して独立して記載されるものを提供する。「本質的にから成る」という観点から提供されるこれらの実施形態の場合、基本的及び新規の特徴は、本明細書に記載の、又は特定の組成物若しくは方法ステップに関連する複合構造を提供するための方法又は組成物/システムの容易な操作性である。
【0124】
リストが提示されるとき、特に明記しない限り、そのリストの個々の要素、及びそのリストの全ての組み合わせは、別個の実施形態であることが理解されるべきである。例えば、「A、B、又はC」として提示される実施形態のリストは、C1-3と同様に、別個の実施形態としての「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」又は「A、B、又はC」の実施形態を包含するものとして解釈されるべきである。
【0125】
(メタ)アクリル若しくは[メタ]アクリル又は(プレ)ポリマー等の材料を説明するための丸括弧又は角括弧の使用は、丸括弧又は角括弧で囲まれた用語又は句の有無を暗示することを意図している。例えば、用語「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルの一方又は両方を指す。そして、用語「(プレ)ポリマー」は、ポリマー又はプレポリマーの一方又は両方を指す(後者は、有機成分の性質に応じて、モノマー又はオリゴマー、あるいは非架橋ポリマーさえも含む)。
【0126】
本明細書全体を通して、関連技術の当業者によって理解されるように、単語はそれらの通常の意味を与えられるべきである。しかしながら、誤解を避けるために、特定の用語の意味は具体的に定義又は明確化される。
【0127】
用語「化学線」は、熱可塑性組成物又は表面を活性化する入射化学線照射の能力を包含する、光化学反応を生成し得る電磁放射の波長を指す。本開示の様々な実施形態において、本明細書の他の場所に記載される特定の範囲に加えて、用語「化学線」はまた、UV-A(約315~400nm又は320~390nm)及びUV-B(280~315nm又は280~320nm)として特徴付けられる少なくとも1つの波長を有する光又は放射線を包含する。他の実施形態では、化学線は、UV-C(約100~280nm)、UV-V(395~445nm)、近紫外線(NUV;300~400nm)、中紫外線(MUV;200~300nm)、遠紫外線(FUV;122-200nm)、真空紫外線(VUV;10~200nm)、又は極紫外線(EUV;10~120nm)として特徴付けられる少なくとも1つの波長を有する光又は放射線を包含する。
【0128】
本開示の文脈において、用語「カルボン酸部分」は、ペンダントカルボン酸、-C(O)OH基を指す。同様に、カルボキシエステル、カルボキシ無水物、アミド又はラクタム部分という用語は、それぞれ、対応する官能基、すなわち、-C(O)OR、-C(O)-OC(O)-R、-C(O)N(R')を指し、それぞれここで、Rはアルキル又はアリールであり、R'は独立してH、アルキル、又はアリールである。
【0129】
本開示の文脈において、用語「複合構造」は、熱可塑性基材と熱硬化性表面処理フィルムとの間の直接結合から生じる層状構造を指す。熱可塑性基材と熱硬化性表面処理フィルム自体の両方も、その用語(すなわち、添加剤、充填剤、繊維等を含むポリマー又はプレポリマーマトリックス)の真の意味での複合材料と見なしてもよいことを認識している。用語「複合材料」がこれらの文脈で全部として使用されている場合、これらは、本明細書では、複合熱可塑性基材又は複合表面処理フィルムのいずれかと呼ばれる。
【0130】
本明細書で使用される用語「化学シーラント」は、一官能性、二官能性又は多官能性の有機、無機、又は有機金属化合物を含む1つ又は複数の化学物質を指し、熱可塑性基材の表面に接着すると、そこへの塗料、接着剤、又は表面処理フィルムの接着を促進できる、あるいは実際に塗料、接着剤、又は表面処理フィルムに結合した、ペンダント(アルキル又はアリール等)あるいは官能基を提示し、それによって、熱可塑性基材と塗料、接着剤、又は表面処理フィルムとの間に結合部(例えば、化学共有結合)を形成する。そのような化学物質の様々な例は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0131】
従来理解されているように、用語「硬化した」は、ポリマー鎖の架橋によってポリマー材料の強化又は硬化をもたらす化学プロセスを指す。これは、熱硬化性ポリマーの製造と強く関連している。硬化は、熱、放射線、電子ビーム、又は化学添加物の影響を受け得る。本明細書で使用されるとき、用語「部分的に硬化した」は、元のポリマー又はプレポリマー材料のそれと比較した、架橋の程度の任意の増加を指す。
【0132】
「任意の」又は「任意で」は、その後に記載する状況が発生しても発生しなくてもよいことを意味し、そのため、記載には、状況が発生する場合と発生しない場合が包含される。
【0133】
用語「方法」及び「プロセス」は、本開示内で交換可能であると見なされる。
【0134】
用語「光分解」、「光分解の」等は、UV光の使用による熱可塑性表面の制御された活性化を指し、その間に特定の化学結合、典型的にはヘテロ原子を含む化学結合が切断され、それによって表面を未処理の表面よりも化学的に活性にする官能基が生成する。これらのより化学的に活性な官能基は、表面処理フィルムの硬化中に熱硬化性表面処理フィルムと結合可能であるか、又は結合する。
【0135】
本明細書で使用される用語「プラズマ」は、典型的にはイオン化された原子又は分子、より典型的には酸素原子又は分子を含む、エネルギーを与えられた気相を指す。プラズマは、典型的に、熱可塑性表面と相互作用できる短波紫外線(真空UV、又は略してVUV)範囲のエネルギーを与えられた原子、分子、イオン、電子、フリーラジカル、及び光子を含有する。使用するガスが酸素の場合、プラズマを使用して特定の化学結合を切断し、基材(この場合は熱可塑性基材)の表面を洗浄すると共に、本明細書で説明するさらなる処理によって表面を活性化することができる。この用語の追加の説明は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0136】
本明細書で使用されるとき、用語「樹脂」は、硬化時に固体材料に変換される液体、典型的には粘性又は高粘度の材料の従来の意味を有する。
【0137】
用語「表面処理フィルム」は、航空宇宙工学の分野でよく知られている、固体形態の複合材料を指し、典型的に、面積重量が0.150ポンド/平方フィート未満であり、総厚が25~12,500ミクロン(1~500ミル)の範囲である。これらは典型的に、航空機の基材表面に塗布され、航空宇宙用途に必要な表面品質を提供する。ある実施形態では、表面処理フィルムへの言及は、ポリマー又はプレポリマーマトリックスに組み込まれる1つ又は複数の有機、無機、又は金属添加剤、例えば、流動剤、レオロジー調整剤、密度調整剤、防腐剤、顔料、着色剤等の添加剤中のそのような複合材料を意味する。他の実施形態では、表面処理フィルムは、追加で又は代わりに熱硬化性樹脂に含有される1つ又は複数の有機、無機、又は金属繊維、メッシュ、布、又は多孔質シートを含んでよい。エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムでは、熱硬化性樹脂はエポキシベースの樹脂を含む。表面処理フィルムは、任意で、単機能(例えば、導電性金属フィラメント若しくは繊維を含有する)又は多機能(以前の用途のように)であり得る。
【0138】
本明細書で使用されるとき、用語「熱可塑性」は、特定の高温で柔軟又は成形可能になり、冷却すると固化するプラスチックポリマー材料である。航空宇宙用途で使用されるような、本開示内で考慮される熱可塑性プラスチックは、典型的に高温でこうした変質を受ける。この標識に包含される特定の種類の材料は、本明細書の他の場所に開示されており、これらに限定されないが、(メタ)アクリル、アクリロニトリル(アクリロニトリルブタジエンスチレンを包含する)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリアミド、ポリアミドイミド(PAI、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリベンズイミダゾール、ポリカーボネート、ポリ乳酸(ポリラクチド)、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン(アセタールとしても知られている)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン、ポリヒドロキシアルカノエートポリイミド、ポリケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、及びポリフッ化ビニリデンのポリマーを包含する。
【0139】
用語「熱硬化性(thermosetting)」又は「熱硬化可能な(thermosettable)」は、本明細書では、従来の意味で使用され、硬化中に架橋ネットワークによって不可逆的に硬化する(すなわち、「熱硬化性(thermoset)」)ポリマー若しくはプレポリマー又は樹脂を指す。架橋(メタ)アクリル、(メタ)アクリルアミド、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、エポキシ、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ビニルエステル、フェノール、アミノ及びフラン樹脂、又はそれらのコポリマー若しくは混合物は、これらの種類の材料の非限定的な例である。
【0140】
業界の慣例として、「熱硬化性(thermoset)」又は「熱硬化性(thermoset(ting))」という用語のいずれかを、硬化の程度に関係なく、ポリマー又は表面処理フィルムの性質を説明するために広く使用してよい。用語「熱硬化性(thermoset(ting))」は、部分的又は完全に硬化した(熱硬化性(thermoset))材料と、未硬化又は硬化度の低い(熱硬化性(thermosetting)又は熱硬化可能な(thermosettable))材料の両方を包含する。明らかに、硬化の程度はあらゆる材料のスペクトルであるが、当業者は、それらの使用の文脈においてこれらの用語の意味を区別することができるであろう。
【0141】
「熱硬化性(thermosetting)又は熱硬化可能な(thermosettable)表面処理フィルム」あるいは「熱硬化性(thermoset(ting))フィルム」は、それぞれ引用されたポリマー又はプレポリマーを含む、固体複合材料である。こうした表面処理フィルムは、ポリマー及び/又はプレポリマー並びにポリマー又はプレポリマーマトリックスに包含される1つ又は複数の有機、無機、又は金属添加剤、例えば、流動剤、レオロジー調整剤、密度調整剤、防腐剤、顔料、着色剤等のような添加剤を含む。これらの表面処理フィルムはまた、任意で、ポリマー又はプレポリマーマトリックスの1つの表面内又はその上に含有される1つ以上の有機、無機、若しくは金属繊維、メッシュ、布、又は多孔質シートを含んでよい。エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムでは、熱硬化性樹脂はエポキシベースの樹脂を含む。表面処理フィルムは、任意で、単機能性(例えば、導電性金属フィラメント若しくは繊維を含有する)又は多機能性(本明細書の他の場所で説明されるように)であり得る。用語「熱硬化性(thermosetting)又は熱硬化可能な(thermosettable)表面処理フィルム」及び「熱硬化性(thermoset)表面処理フィルム」は、硬化の程度が異なる表面処理フィルム組成物を指すことを理解されたい。明確にするために、これらの用語は、それらが発生する文脈で考慮されるべきである。
【0142】
以下の実施形態のリストは、前の説明と置換したり交換したりするのではなく、補足することを意図している。
【0143】
実施形態1
その表面に直接結合された化学シーラントを含む熱可塑性基材を含む複合構造。この実施形態の特定の態様では、直接結合は、熱可塑性基材の熱可塑性表面と化学シーラントコーティング層の第1面との間の境界面を規定し、化学シーラントコーティング層は、化学シーラントコーティング層の第1面の反対側の第2面をさらに含む。
【0144】
特に指定しない限り、熱可塑性表面は、熱可塑性基材と同一であるか化学的に一致する。用語「化学的に一致する」は、表面の結合部位のいくつかが光分解活性化によって変化したとしても、基材のポリマービルディングブロックと表面のポリマービルディングブロックが同一であることを意味する。
【0145】
この実施形態のいくつかの態様では、複合構造は、本明細書の他の場所で説明されているように、調製時とエージング後の両方での濡れ性を示す。例えば、いくつかの態様では、密封された表面は、調製時又は8か月のエージング後のいずれか又は両方で、50°~80°の範囲のHPLCグレードの水との接触角を示し、及び/あるいはこうしたエージング後の接触角は、最初に調製された試料の接触角の少なくとも80%である。これらの範囲の追加の態様は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0146】
実施形態2
前記熱可塑性基材が、独立して、
(a)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、若しくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリアリールエーテルケトン;
(b)カルボニル基に直接結合したフェニル基を含有するポリマー、任意で前記カルボニル基は、ポリアクリルアミド(PARA)等のアミド基の一部である;
(c)ポリフェニレンスルファイド(PPS);
(d)ポリフェニレンオキシド(PPO);又は
(e)ポリエーテルイミド(PEI)を含む、実施形態1の複合構造。
【0147】
実施形態3
前記熱可塑性基材が、十分な強度の化学線の照射時にその結合が少なくとも部分的な光分解開裂を受けやすい熱可塑性ポリマーを含み、前記化学線が、約10nm~約500nm又は約100nm~約450nmの範囲、好ましくは約200nm~約350nmの範囲の少なくとも1つの波長を有する放射線を包含する、実施形態1又は2の複合構造。この実施形態の追加の態様には、本明細書の他の場所に記載されているこれらの範囲のサブ範囲が包含される。
【0148】
実施形態4
前記熱可塑性基材は、その結合が、少なくとも1つの波長で約0.1J/cm~約300J/cmの範囲、好ましくは少なくとも1つの波長で約0.5J/cm~約250J/cm又は約1.5J/cm~約250J/cmの範囲のエネルギーで、少なくとも1つの波長(任意で1、2、3、又は4つの波長)の化学線を照射すると少なくとも部分的な光分解開裂を受けやすい熱可塑性ポリマーを含む、実施形態1~3のいずれかの複合構造。この実施形態の追加の態様には、本明細書の他の場所に記載されているこれらの範囲のサブ範囲が包含される。
【0149】
実施形態5
前記化学シーラントが、前記熱可塑性基材のパターン化された部分に直接結合する、実施形態1~4のいずれかの複合構造。この化学基の独立した例は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0150】
実施形態6
前記化学シーラントが、1つ、2つ又はそれ以上のエポキシ又はオキセタン部分を有する有機化合物又は有機金属化合物である、あるいはこれらを含む、実施形態1~5のいずれかの複合構造。この化学基の独立した例は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0151】
実施形態7
前記化学シーラントが、1つ、2つ又はそれ以上のグリシジルエーテル部分を有する有機化合物又は有機金属化合物である、あるいはこれらを含む、実施形態1~6のいずれかの複合構造。この化学基の独立した例は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0152】
実施形態8
前記化学シーラントが、1つ、2つ又はそれ以上のカルボン酸、カルボキシエステル、カルボキシ無水物、アミド又はラクタム部分を有する有機化合物又は有機金属化合物である、あるいはこれらを含む、実施形態1~7のいずれかの複合構造。この化学基の独立した例は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0153】
実施形態9
前記化学シーラントが、1つ、2つ又はそれ以上のヒドロキシリン酸部分を有する有機化合物又は有機金属化合物である、あるいはこれらを含む、実施形態1~8のいずれかの複合構造。この化学基の独立した例は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0154】
実施形態10
前記化学シーラントが、1つ、2つ又はそれ以上の-OH、-SH又は-NH部分を有する有機化合物又は有機金属化合物である、あるいはこれらを含む、実施形態1~9のいずれかの複合構造。この化学基の独立した例は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0155】
実施形態11
前記化学シーラントが、1つ、2つ又はそれ以上のシラノール、アルコキシシラノール又はアルコキシシラン部分を有する有機化合物又は有機金属化合物である、あるいはこれらを含む、実施形態1~10のいずれかの複合構造。この化学基の独立した例は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0156】
実施形態12
前記化学シーラントが、1つ、2つ又はそれ以上のイソシアネート部分を有する有機化合物又は有機金属化合物である、あるいはこれらを含む、実施形態1~11のいずれかの複合構造。この化学基の独立した例は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0157】
実施形態13
前記化学シーラントが、1つ、2つ又はそれ以上のアルコキシチタネート又はアルコキシジルコネート部分を有する有機化合物又は有機金属化合物である、あるいはこれらを含む、実施形態1~12のいずれかの複合構造。この化学基の独立した例は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0158】
実施形態14
接着剤、塗料(プライマー、中間、若しくはトップコート層)、又は表面処理フィルム層をさらに含み、前記シーラントが、前記熱可塑性基材と前記接着剤、塗料又は表面処理フィルム層との間に配置されて、これらを結合し、前記接着剤、塗料又は表面処理フィルム層が、前記シーラントに結合した第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有することを特徴とする、実施形態1~13のいずれかの複合構造。
【0159】
実施形態15
前記接着剤、塗料又は表面処理フィルム層が、熱可塑性又は熱硬化性ポリマーを含む、実施形態14の複合構造。
【0160】
実施形態16
前記接着剤、塗料、プライマー、又は表面処理フィルム層が、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、シアノアクリレート、エポキシ、エポキシアクリレート、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、トリアジン、ビニルエステル、又はそれらのコポリマー又は混合物、好ましくは(メタ)アクリレート、エポキシ、又はポリウレタンポリマーを含む、実施形態14又は15のいずれかの複合構造。
【0161】
実施形態17
前記接着剤、塗料又は表面処理フィルム層が塗布されているが、未硬化(すなわち、未架橋)又は未固化(塗料が架橋しないが、それでも完全なフィルムである場合)である、実施形態14~16のいずれかの複合構造。
【0162】
実施形態18
前記接着剤、塗料又は表面処理フィルム層が硬化又は完全に固化する、実施形態14~16のいずれかの複合構造。
【0163】
実施形態19
前記接着剤又は塗料が、複合構造に十分に接着しており、ASTM D3359-09に従う45°クロスハッチテープ試験で少なくとも3B、4B、又は5Bのスコアを示す、実施形態14~18のいずれかの複合構造。その条件は、実施例により完全に記載されている。
【0164】
実施形態20
前記熱硬化性表面処理フィルムがエポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムである、実施形態14~18のいずれかの複合構造。
【0165】
実施形態21
前記表面処理フィルム自体が、熱可塑性又は熱硬化性ポリマー内に、1つ又は複数の有機若しくは無機繊維、布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含む固体複合材料である、実施形態14~18又は20のいずれかの複合構造。
【0166】
実施形態22
前記表面処理フィルムが、表面処理フィルムの第2面上又はその下に配置された1つ又は複数の剥離可能な有機若しくは無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含む固体複合材料である、実施形態14~18、20又は21のいずれかの複合構造。
【0167】
実施形態23
前記表面処理フィルムが、熱硬化性樹脂内に含有された1つ又は複数の有機若しくは無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含み、落雷保護、電流散逸、EMIシールド、又は熱伝達用途において使用するのに適した少なくとも1つの導電性材料をさらに含む固体複合材料である、実施形態14~18又は20~22のいずれかの複合構造。
【0168】
実施形態24
前記表面処理フィルムが、1つ又は複数の有機若しくは無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含む固体複合材料であり、熱可塑性又は熱硬化性ポリマー内に含有された衝撃改質剤として使用するのに適した少なくとも1つの粒子状物質をさらに含む、実施形態14~18又は20~23のいずれかの複合構造。
【0169】
実施形態25
前記表面処理フィルムが、ASTM D3359-09に従う45°クロスハッチテープ試験で少なくとも3B、4B、又は5Bのスコアを示すのに十分な強度で熱可塑性基材に接着する、実施形態14~18又は20~24のいずれかの複合構造。その条件は実施例により十分に記載されている。
【0170】
実施形態26
前記表面処理フィルムの第2面が、塗料でコーティングされる、実施形態14~18又は20~24のいずれかの複合構造。
【0171】
実施形態27
(a)熱可塑性基材の表面を、前記熱可塑性基材の表面を活性化するのに十分な化学線及び/又はプラズマに曝露すること;
(b)前記熱可塑性基材の活性化表面に化学シーラントを塗布して、前記化学シーラントの表面を有する、化学的に密封され活性化された熱可塑性基材を形成すること;並びに
(c)任意で、前記化学的に密封された熱可塑性基材を加熱すること;
を含む、複合構造を製造する方法。
【0172】
この実施形態の特定の独立した態様では、照射は、本明細書の他の場所に記載されているように、周囲又は超周囲の温度及び条件で、酸素の非存在下、真空条件下、周囲空気中、又は酸素が豊富な環境で行われる。
【0173】
この実施形態の特定の独立した態様では、照射又はプラズマ処理は、本明細書の他の場所に記載されている条件のいずれか1つ又は複数の下で行われる。
【0174】
実施形態28
化学的に密封された熱可塑性基材を加熱することをさらに含む、実施形態27の方法。
【0175】
実施形態29
前記熱可塑性基材が:
(a)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、若しくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリアリールエーテルケトン;
(b)カルボニル基に直接結合したフェニル基を含有するポリマー、任意で前記カルボニル基はポリアクリルアミド(PARA)等のアミド基の一部である;
(c)ポリフェニレンサルファイド(PPS);
(d)ポリフェニレンオキシド(PPO);又は
(e)ポリエーテルイミド(PEI);
を含む、実施形態27又は28の方法。
【0176】
実施形態30
前記表面処理フィルムが、エポキシベースの熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムであり、対応する熱硬化性表面処理フィルムが、エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムである、実施形態27~29のいずれかの方法。
【0177】
実施形態31
前記化学線が、約10nm~約450nmの範囲、好ましくは約200nm~約350nmの範囲の1つ又は複数の波長で、十分な強度で適用される、実施形態27~30のいずれかの方法。この実施形態の追加の態様には、本明細書の他の場所に記載されているこれらの範囲のサブ範囲が包含される。
【0178】
実施形態32
前記化学線が、少なくとも1つの波長で約0.5J/cm~約300J/cmの範囲、好ましくは少なくとも1つの波長で約0.5J/cm~約250J/cm又は約1.5J/cm~約250J/cmの範囲のエネルギーで、1つ又は複数の波長で適用される、実施形態27~31のいずれかの方法。この実施形態の追加の態様には、本明細書の他の場所に記載されているこれらの範囲のサブ範囲が包含される。同様に、この実施形態の追加の態様は、本明細書の他の場所で説明及び記載されている化学線の適用の速度及び時間を包含する。
【0179】
実施形態33
前記化学シーラントの第2面への、接着剤、塗料(プライマー、中間、若しくはトップコート層)、又は表面処理フィルム層の塗布をさらに含む、実施形態27~32のいずれかの方法。
【0180】
実施形態34
前記接着剤、塗料(プライマー、中間、若しくはトップコート層)又は表面処理フィルム層を硬化又は融合することをさらに含む、実施形態33の方法。
【0181】
実施形態35
前記接着剤、塗料、又は表面処理フィルムが、ASTM D3359-09に従う45°クロスハッチテープ試験で少なくとも3B、4B、又は5Bのスコアを示すのに十分な強度で熱可塑性基材に接着する、実施形態27~34のいずれかの方法。その条件は、実施例にさらに十分に記載されている。代わりに又は追加で、複合構造は、接着剤をさらに含み、結合は、ASTMD5528に準拠したダブルカンチレバービーム試験を使用して測定した場合、少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000J/mから約1500J/mまでの破壊靭性G1C値を示すものとして特徴付けられてよい。
【0182】
実施形態36
実施形態27~35のいずれかの方法で調製される複合構造。
【0183】
実施形態37
実施形態1~26のいずれかの複合構造を含む、航空機又は航空宇宙船の部品。この実施形態の特定の態様では、航空機部品は、航空機の尾翼、翼、胴体、又はプロペラを含む。
【0184】
実施形態38
実施形態1~26のいずれかの複合構造を含む、自動車、自転車、オートバイ、トラック、又はウォータークラフト等の陸上車両の陸上車両の部品又は部分。この実施形態の特定の態様では、部品はフード、フェンダー、バンパー、ハル、又はフレームを含む。
【実施例
【0185】
標準的な適用条件
【0186】
標準的な試験条件下で、イソプロパノールワイプを使用して熱可塑性基材の表面を洗浄し、ほこりを除去した。洗浄後、そのように示されている場合は、熱可塑性基材の表面に、所定の時間とエネルギーで、水銀D型電球(鉄ドープ)を取り付けたUVALOC1000光源を使用してUV光を照射するか、又はプラズマ処理した。
【0187】
塗料又は接着剤を塗布した場合、その塗布は従来の方法(スプレー、ブラシ等)を使用して行った。
【0188】
表面処理フィルムを塗布した後、表面処理フィルムを熱可塑性表面上に重ね、そのアセンブリを、次の手順に従って、標準の真空バッグ/オートクレーブプロセスで統合した。
(1)アルミコールプレートをアセトンで拭き取り洗浄した後、プレートの端以外に離型剤を塗布した。
(2)プレートの縁を真空パテで裏打ちした。
(3)最初に、片面粘着性(OST)表面処理フィルムをその粘着性側から熱可塑性基材上に配置して試験片を作成し、部品/試験片を事前に配置した。その後、フィルム材料(ナイロンフィルム)、試験片、穴あきテフロン(登録商標)フィルム、及びブリーザークロスの配列を使用して、試験片をコールプレートの縁の内側に配置した。
(4)真空ラインベントをプレートに配置し、アセンブリ全体をナイロンフィルムで覆った。ナイロンフィルムをパテに押し込み、密封した。真空引きし密封の品質を試験した。
(5)袋に入れたプレート全体をオートクレーブ内に置いた。
(6)試験片を以下の条件下で硬化した。温度177℃、傾斜速度1.7℃/分、圧力0.31MPa、時間120分。
この統合後、アセンブリを取り外し、目視検査し、接着性を試験した。
【0189】
標準試験条件
クロスハッチ試験法で接着性能を評価した。試験を以下のように行った。
(1)図1のように切削工具で試験片をスクライブした。図1では、コーティング(表面処理フィルム)を通して基材まで切断した。切削工具は、鋭利なかみそりの刃、メス、又はナイフであることができる。この試験では、2セットの平行スクライブ間の角度が45±5度であり、平行スクライブが約3.05mm離れている、45度のクロスハッチスクライブを作成した。
(2)図1に示すようにマスキングテープ(3Mテープ番号250)を貼り付けた。テープ自体のロールを使用して、テープをしっかりと押し付けた。
(3)パネルにテープを貼り付けてから1分後、テープを1回の急激な動きで取り外し、パネルに対して垂直に引っ張った。
(4)試験領域を、ASTM D3359-09に従って視覚的に検査し、評価した。クロスハッチ評価の範囲は0Bから5Bであり、0Bは最悪の状態であり、除去された領域の割合が65%超過である。評価の分類を表Aにまとめる。
【0190】
【表1】
【0191】
熱可塑性基材の前処理 - 一般手順:特に指定しない限り、標準的な条件は、熱可塑性基材の表面をイソプロパノールワイプで拭いてほこりを除去することである。洗浄後、そのように示されている場合は、熱可塑性基材の表面に、水銀D型電球(鉄ドープ)を取り付けたUVALOC1000光源を使用して、所定の時間でUV光を照射した。露光時間は、典型的に、基材を、約200nm~約400nmの範囲の波長で、0.1J/cm~約300J/cmの範囲のエネルギーで、10~60秒の時間、UV光に露光することであった。
【0192】
そのように示されている場合は、プラズマ活性化は、典型的に、周波数が21KHzであり、プラズマ出力が400Wで、ガス圧が3.5バール(350KPa)であるDC-Arc乾燥空気プラズマを適用することを含む。プラズマの移動速度は2.5mm/秒~25mm/秒であった。プラズマパラメータは次のとおりである。ノズル:14度、距離:8~12.7mm、圧力3.5~50psi。
【0193】
活性化後、活性化された表面を、化学シーラーで、好ましくは噴霧によって処理したが、ワイプ、ブラッシング、及び浸漬等の他の塗布技術も使用した。シーラーの硬化は、シーラーの化学的性質に応じて、室温及び/又は高温で行われた。
【0194】
実施例で使用される材料
熱可塑性基材:これらの実施例で使用された熱可塑性基材は、熱可塑性粉末織布のいくつかの層から作成された熱可塑性統合ラミネート(TPCL)であった。粉末織布は、高靭性炭素繊維(テナックス-E HTA40 E13 3K 200tex)とPEEKマトリックス(42重量%)で構成されていた。布は、面積重量285g/m、パネル総厚1.5mmの5ハーネスパターンを有していた。
【0195】
エポキシベースの塗料プライマー:実施例で使用されたプライマーは、航空宇宙産業の複合航空機表面に塗布するために設計されたクロムフリーのエポキシプライマー塗料であった。これは溶剤ベースの製品であり、ポリウレタントップコート及びエポキシプライマーと適合性があり、使用温度は-54℃~177℃で、室温(25℃)にて7日間で硬化する。
【0196】
シランベースのシーラー:シランベースのシーラーは、ゾルゲル技術に基づくシランベースの有機金属、クロムフリーの水系製品であった。これは、2部系であり、H触媒された、アルコキシシランエポキシ成分を含み、室温及び177℃の高温で硬化する。スプレー、ブラシ、ワイプ等の様々な塗布方法が使用された。
【0197】
クロムフリーのエポキシベースシーラー:クロムフリーのエポキシベースの製品は、各部に反応物を有する2部の水系であり、組み合わせてシーラーを形成することができる。硬化は高温硬化である(120及び177℃)。
【0198】
ロックタイトEA9696エアロ:この材料は、フィルムにキャストされ、高靭性と121℃までの使用温度用に設計された変性エポキシ樹脂を含有する、事前に触媒されたエポキシ樹脂を含むエポキシフィルム接着剤である。フィルムは網状である。それは107~129℃で硬化した。
【0199】
活性化熱可塑性基材の塗装 - 一般手順
塗料は、典型的に、化学的に密封された表面にスプレーしたが、他の方法(ブラッシング又はローリング)も使用した。塗布後、塗料は、室温で数時間から数日で硬化した。上昇させた硬化温度150及び200゜Fを、およそ30~60分間使用した。接着性を、クロスハッチ試験法を使用して試験した。
【0200】
接着剤の熱可塑性基材への結合 -一般手順:
接着剤は、典型的に、化学的に密封された表面にスプレーしたが、他の方法(ブラッシング又はローリング)も使用した。フローティングローラーピール試験及び潜在的にGCダブルカンチレバービーム(破壊靭性)試験を包含する複数の試験法で接着性能を評価した。
【0201】
表面処理フィルムを化学的に密封された表面上に物理的に重ね、真空熱処理を行って、表面処理フィルムを化学的に密封された熱可塑性基材に接着させた。接着性を、クロスハッチ試験法を使用して試験した。
【0202】
実施例1:熱可塑性基材と接着剤の間の接着力の増加に対する化学シーラーの効果
実施例1.1:スコープ:シーラー+接着剤:
破壊靭性(G1C)測定は、接着剤と基材との間の接着性を評価するための標準的な試験の1つである。特定の硬化温度でいくつかの接着剤を使用して、熱硬化性基材と熱可塑性PEEK基材を接着すると、PEEKパネルのUV活性化(87.56)があっても、UV活性化なし(52.53)でも、接着性が低下することがわかった。PEEKへの接着性が悪かったため、G1C値は非常に低かった。対照的に、PEEK基材のUV活性化後に塗布された化学シランベースのシーラーを使用すると、劇的に高いG1C(1085.75)値をもたらし、PEEK側への接着が大幅に改善されたことを示している。
【0203】
実施例1.2:一般的な適用手順
UV活性化した場合としない場合、化学シーラントを使用した場合と使用しない場合で、熱可塑性複合基材テナックス‐ETPCL PEEK-HTA40を、エポキシベースの熱硬化性複合スキンに結合するための試験が行われた。接着性を、ASTM D5528に従って、ダブルカンチレバービーム(DCB)試験によって破壊靭性エネルギー(G1C)を測定することによって評価した。次の手順に従って、熱可塑性基材を熱硬化性プリプレグに共結合することによって、試料を準備した。
【0204】
第1に、基材をIPA(イソプロピルアルコール)で2回洗浄し、各拭き取り後に10分間乾燥した。次に、洗浄した基材を、任意で、290mW/cmで30秒間のUV照射によって活性化した。次に、化学シランベースの有機金属シーラーを塗布した。シランシーラーを、1分間拭くことによって適用し、表面を湿らせ、次にそれを1時間乾燥した。次に、硬化を室温で1時間行った。第4工程では、上記の標準的な真空バッグ/オートクレーブプロセスを使用して圧密を行った。第5工程では、ASTMD5528に準拠したダブルカンチレバービームテストで接着性能を評価した。
【0205】
実施例1.3:結果
試料1.1:UV活性化していない熱可塑性基材とシランシーラーを、一般的な適用手順に従って炭素繊維強化エポキシスキンに共結合した。破壊靭性評価では、G1C値は52.53(J/m)であった。
【0206】
試料1.2:UV活性化した熱可塑性基材(シランシーラーなし)を、一般的な適用手順に従って炭素繊維強化エポキシスキンに共結合した。破壊靭性評価では、G1C値は87.56(J/m)であった。
【0207】
試料1.3:UV活性化した熱可塑性基材とシランシーラーを、一般的な適用手順に従って炭素繊維強化エポキシスキンに共結合した。破壊靭性評価では、G1C値は1085.78(J/m)であった。
【0208】
実施例2:熱可塑性基材と塗料との接着性の増加に対する化学シーラーの効果
実施例2.1:一般的な適用手順
エポキシベースの塗料プライマー(PPGエアロスペースコーティングからのDeSoto512X310)を使用して、UV活性化をした場合としない場合で、化学的に密封された熱可塑性複合基材テナックス-E TPCL PEEK-HTA40を直接塗布した塗料の接着性をテストするための試験を実施した。
【0209】
基材をイソプロピルアルコールで2回洗浄し、各拭き取り後に10分間乾燥させた。そのように処理した場合、洗浄した基材を、290mW/cmで30秒間のUV照射によって活性化した。そのように処理した場合、シランベースのシーラーとクロムフリーエポキシシーラー(ロックタイトEA9296NC)を別々の試料に塗布した。
【0210】
シランシーラーを、1分間拭くことによって適用し、表面を湿らせ、次にそれを1時間乾燥した。次に、室温で1時間、又は高温(65.5又は177℃)で30分間硬化した。シランシーラーの最終乾燥厚さは0.5~0.7μmであった。
【0211】
1.8mmの流体ノズルサイズのサイフォンフィードタイプガンであるスプレーガン(キャンベルハウスフェルドディテールスプレーガンモデル#DH5500)を使用して、クロムフリーのエポキシシーラーを塗布した。プライミング中、入口空気圧は約0.34MPaに設定され、部品は基材表面から約15.2cm離れたところからガンで噴霧された。フィッシャーデルタアイソスコープモデル#FMP10を使用して、渦電流を介して隣接するアルミニウムの「ウィットネス」パネルの乾燥プライマーの厚さを非破壊的に測定した。室温で30分間乾燥した後、製品を177℃で1時間硬化した。乾燥した厚さは約1~2.5μmであり、表に示されている得られた評価は、この範囲の厚さに対して有効である。
【0212】
熱可塑性基材のそれぞれの密封された表面に、20~25μmの標的厚さでプライマー塗料を塗布した。塗料の乾燥又は硬化は、塗料プライマーのTDSに従って行われた。エポキシベースのプライマーの場合、プライマーを室温(25℃)で7日間硬化した。
【0213】
試料は、本明細書の他の場所に記載されているクロスハッチ試験法を使用して、それらの接着特性について評価された。
【0214】
実施例2.2:結果(表1参照)
試料2.1:
エポキシベースのプライマーを、一般的な適用手順に従って、UV活性化なし又はシーラーが塗布されていない熱可塑性基材に噴霧した。クロスハッチ評価では、0Bの評価が得られた。
【0215】
試料2.2:
エポキシベースのプライマーを、UV活性化されていない熱可塑性樹脂に塗布したが、シーラーは塗布されなかった。クロスハッチ評価では、0Bの評価が得られた。
【0216】
試料2.3:
エポキシベースのプライマーを、UV活性化されていない熱可塑性基材に塗布し、両方とも一般的な適用手順に従って、シランシーラーを塗布し、周囲温度(25℃)で硬化した。クロスハッチ評価では、0Bの評価が得られた。
【0217】
試料2.4:
エポキシベースのプライマーを、UV活性化された熱可塑性基材に塗布し、一般的な適用手順に従って、シランシーラーを塗布し、周囲温度(25℃)で硬化した。クロスハッチ評価では、2Bの評価が得られた。
【0218】
試料2.5:
エポキシベースのプライマーを、UV活性化されていない熱可塑性基材に塗布し、一般的な適用手順に従って、シランシーラーを塗布し、高温(65.5℃)で硬化した。クロスハッチ評価では、0Bの評価が得られた。
【0219】
試料2.6:
エポキシベースのプライマーを、UV活性化された熱可塑性基材に塗布し、一般的な適用手順に従って、シランシーラーを塗布し、高温(65.5℃)で硬化した。クロスハッチ評価では、4Bの評価が得られた。
【0220】
試料2.7:
エポキシベースのプライマーを、UV活性化された熱可塑性基材に塗布し、一般的な適用手順に従って、シランシーラーを塗布し、高温(177℃)で硬化した。クロスハッチ評価では、4Bの評価が得られた。
【0221】
試料2.8:
エポキシベースのプライマーを、UV活性化された熱可塑性基材に塗布し、一般的な適用手順に従って、シランシーラーを塗布し、室温(25℃)で乾燥し、UV照射により硬化(UV処理と同様の条件)で硬化した。クロスハッチ評価では、4Bの評価が得られた。
【0222】
試料2.9:
エポキシベースのプライマーを、UV活性化されていない熱可塑性基材に塗布し、一般的な適用手順に従って、クロムフリーエポキシシーラーを塗布及び高温(177℃)で硬化した。クロスハッチ評価では、0Bの評価が得られた。
【0223】
試料2.10:
エポキシベースのプライマーを、UV活性化された熱可塑性基材に塗布し、一般的な適用手順に従って、クロムフリーエポキシシーラーを塗布及び高温(177℃)で硬化した。クロスハッチ評価では、4Bの評価が得られた。
【0224】
【表2】
【0225】
実施例3:熱可塑性基材のUV及びプラズマ活性化の維持に対するシランベースのシーラーの効果
プラズマ活性化が時間の経過とともに衰退することはよく知られている問題であるため、プラズマ活性化基材は、かなり短い時間でさらなる処理(結合/塗装)が行われるべきである。試験を、本明細書の他の場所に記載されている方法を使用して実施した。これらの実験では、接着角と接触角の両方から、(表面の活性を反映するものとして濡れ性を使用することにより)、化学シーラントを使用すると、長期間にわたって化学活性を保持できることがわかった。
【0226】
実施例3.1:結果の要約
プラズマ活性化表面:未処理のPEEK基材の初期接触角は、64°の接触角と不十分な塗料接着性を示した(0B)。プラズマ活性化後、基材の接触角は約13°であり、塗装が可能であり、良好な接着が得られた(4B)。
【0227】
活性化されたプラズマサンプルの接触角は、活性化の部分的又は完全な喪失を反映して、エージング(例えば、8か月)後に元の値(58°)に戻った。エージングした試験片の塗料の密着性も悪かった(1B)。
【0228】
この観察とは対照的に、プラズマ活性化後に化学シランベースのシーラーを塗布すると、プラズマ活性化がこの同じ期間にわたって保存され、8ヶ月後に試料を塗装することを可能にする試料を提供し、良好な塗料接着性(4B)が得られた。
【0229】
UV活性化表面:UV活性化により、接触角も低くなり(54°)、時間の経過とともに(例えば、8か月)、接触角は元の値(64°)に戻った。
【0230】
対照的に、UV活性化され、UV活性化後に化学シランベースのシーラーで処理された試料は、経時的に保存された活性化を示し、8ヶ月後に試料を塗装することが可能な表面を有し、良好な塗料接着性(4B)が得られた。
【0231】
実施例3.2:一般的な適用手順
シランベースの化学シーラントを使用した場合と使用しない場合の、熱可塑性PEEK基材のUV/プラズマ活性化の保存に対するさまざまなパラメータの影響をテストするための試験を実施した。この目的のために、化学シーラントを使用した場合と使用しない場合で、未処理及び処理済みのPEEK基材をエージングして、時間の経過に伴う基材の失活を評価し、シーラントの保存効果を証明した。
【0232】
エージングによる処理済み基材の失活を評価するために、HPLCグレードの水滴と基材との間の接触角をBTG LABSのサーフェイスアナリスト3001で測定した。エージング後の熱可塑性基材の活性化を調べるために、塗装された基材のクロスハッチ接着試験を実施した。全ての実験は、標準的な手順に従って実施された。様々な処理レジームの前後に、HPLCグレードの水滴と基材との間の接触角を測定した。塗布すると示されている場合、化学シランベースのシーラーは、化学シランベースの有機金属シーラーであった。シランシーラーを、1分間拭くことによって適用し、表面を湿らせ、次にそれを1時間乾燥した。次に、室温で1時間、又は高温(65.5又は177℃)で30分間硬化を行った。シランシーラーの最終乾燥厚さは0.5~0.7μmであった。フィッシャーデルタアイソスコープモデル#FMP10を使用して、隣接するアルミニウムの「ウィットネス」パネルの乾燥シーラントの厚さを非破壊的に測定した。
【0233】
表面処理した場合としない場合の、化学シーラントを使用した場合と使用しない場合の、PEEK基材を、リアルタイムエージングのためにアルミニウム中間層を備えたビニール袋に密封した。密封された標本を、太陽光に曝露することなく室温で保存した。8か月のエージング後、HPLCグレードの水滴と未処理の基材及びUV/プラズマ処理された基材との接触角を再測定した。エージング後、1.8mmの流体ノズルサイズのサイフォンフィードタイプガンであるスプレーガン(キャンベルハウスフェルドディテールスプレーガンモデル#DH5500)を使用して、エポキシベースの塗料プライマーエポキシベースの塗料プライマー(PPGエアロスペースコーティングからのDeSoto512X310)を、全ての熱可塑性基材の表面(未処理、新しい及びエージングしたUV/プラズマ処理基材を包含する)に塗布した。プライミング中、入口空気圧は約0.34MPaに設定され、部品は基材表面から約15.2cm離れたところからガンで噴霧された。乾燥塗料プライマーの目標厚さは約20~25μmであった。塗料の乾燥又は硬化は、室温(25℃)で7日間硬化させた塗料プライマーのTDSに従って行った。接着は、本明細書の他の場所に記載されているクロスハッチ法を使用して行われた。
【0234】
実施例3.3:結果(表2を参照)
試料3.1:処理なし:初期接触角(対照)
【0235】
シランシーラーなしの未処理のPEEK基材の接触角を、一般的な適用手順に従って表面分析器によって測定した。平均接触角の値は約64度であった。
【0236】
試料3.2:処理なし:8か月後の接触角(対照)
【0237】
エージングされた未処理のPEEK基材(シランシーラーなし)の接触角を、一般的な適用手順に従って表面分析器によって測定した。平均接触角の値は約64度であった。
【0238】
試料3.3:プラズマ(エージングなし):接触角
【0239】
シランシーラーなしの新しいプラズマ活性化PEEK基材の接触角を、一般的な適用手順に従って表面分析器によって測定した。平均接触角の値は約13度であった。
【0240】
試料3.4:プラズマ+エージング:接触角
【0241】
シランシーラーなしのエージングされたプラズマ活性化PEEK基材の接触角を、一般的な適用手順に従って表面分析器によって測定した。エージング後、プラズマ処理基材の表面エネルギーは低下し、接触角の値は、未処理の基材の値にほぼ達した。平均接触角の値は約58度であった。
【0242】
試料3.5:UV(エージングなし):接触角
【0243】
シランシーラーなしの新しいUV活性化PEEK基材の接触角を、一般的な適用手順に従って表面分析器によって測定した。平均接触角の値は約54度であった。
【0244】
試料3.6:UV+エージング:接触角
【0245】
シランシーラーなしのエージングされたUV活性化PEEK基材の接触角を、一般的な適用手順に従って表面分析器によって測定した。エージング後、UV処理基材の表面エネルギーは低下し、接触角の値は、未処理の基材の値にほぼ達した。平均接触角の値は約65度であった。
【0246】
試料3.7:未処理の(エージングなし)+塗料:クロスハッチ
【0247】
エポキシベースのプライマーを、一般的な適用手順に従って、シランシーラーなしで、新しい未処理の熱可塑性基材に噴霧した。クロスハッチ評価では、0Bの評価が得られた。
【0248】
試料3.8:未処理+エージング+塗料:クロスハッチ
【0249】
エポキシベースのプライマーを、一般的な適用手順に従って、シランシーラーなしで、エージングされた未処理の熱可塑性基材に噴霧した。クロスハッチ評価では、0Bの評価が得られた。
【0250】
試料3.9:プラズマ(エージングなし)+塗料:クロスハッチ
【0251】
エポキシベースのプライマーを、一般的な適用手順に従って、シランシーラーなしで、新しいプラズマ活性化熱可塑性基材に噴霧した。クロスハッチ評価では、4Bの評価が得られた。
【0252】
エポキシベースのプライマーを、一般的な適用手順に従って、シランシーラーなしで、エージングされたプラズマ活性化熱可塑性基材に噴霧した。クロスハッチ評価では、1Bの評価が得られた。
【0253】
試料3.11:プラズマ(エージングなし)+シーラー+塗料:クロスハッチ
【0254】
エポキシベースのプライマーを、一般的な適用手順に従って、シランシーラーありで、新しいプラズマ活性化熱可塑性基材に噴霧した。クロスハッチ評価では、4Bの評価が得られた。
【0255】
試料3.12:プラズマ+シーラー+エージング+塗料:クロスハッチ
【0256】
エポキシベースのプライマーを、一般的な適用手順に従って、シランシーラーありで、エージングされたプラズマ活性化熱可塑性基材に噴霧した。クロスハッチ評価では、4Bの評価が得られた。
【0257】
試料3.13:UV(エージングなし)+塗料:クロスハッチ
【0258】
エポキシベースのプライマーを、一般的な適用手順に従って、シランシーラーなしで、新しいUV活性化熱可塑性基材に噴霧した。クロスハッチ評価では、0Bの評価が得られた。
【0259】
試料3.14:UV+エージング+塗料:クロスハッチ
【0260】
エポキシベースのプライマーを、一般的な適用手順に従って、シランシーラーなしで、エージングされたUV活性化熱可塑性基材に噴霧した。クロスハッチ評価では、0Bの評価が得られた。
【0261】
試料3.15:UV(エージングなし)+シーラー+塗料:クロスハッチ
【0262】
エポキシベースのプライマーを、一般的な適用手順に従って、シランシーラーありで、新しいUV活性化熱可塑性基材に噴霧した。クロスハッチ評価では、4Bの評価が得られた。
【0263】
試料3.16:UV+シーラー+エージング+塗料:クロスハッチ
【0264】
エポキシベースのプライマーを、一般的な適用手順に従って、シランシーラーありで、エージングされたUV活性化熱可塑性基材に噴霧した。クロスハッチ評価では、4Bの評価が得られた。
【0265】
【表3】
【0266】
当業者が理解するように、これらの教示を考慮して、本開示の多くの修正及び変更が可能であり、そのようなもの全てが本明細書で企図される。本明細書で引用された全ての参考文献は、少なくとも提示された文脈でのそれらの教示のために、参照により本明細書に組み込まれる。

図1