(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】注出具、及び容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/40 20060101AFI20250321BHJP
【FI】
B65D47/40
(21)【出願番号】P 2022505110
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006030
(87)【国際公開番号】W WO2021177038
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2020037472
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】田村 正和
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-079544(JP,A)
【文献】特開2016-093960(JP,A)
【文献】特開2016-068477(JP,A)
【文献】特開平08-217118(JP,A)
【文献】特開2015-160628(JP,A)
【文献】特開2003-001736(JP,A)
【文献】特開昭48-035381(JP,A)
【文献】米国特許第04493427(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に取り付けられ、当該容器本体に貯蔵されている油性の液体を注ぐための注出口を備える注出具であって、
前記注出口の外側のうち、少なくとも前記液体を注いだ際に前記液体が通過する位置の外側が撥油加工されて
おり、
前記注出口の内側のうち、少なくとも前記液体を注いだ際に前記液体が通過する位置の内側が親油性を有する、
注出具。
【請求項2】
前記液体を前記注出口から注いだ後、前記液体の注出を止めた際に、前記液体が前記親油性を有する部分に集まろうとし、前記注出口の出口付近に存在していた液体が前記注出口の内側に引き寄せられるように構成されている、請求項1に記載の注出具。
【請求項3】
前記注出口の頂面のうち、少なくとも前記液体を注いだ際に前記液体が通過する位置の頂面が撥油加工されている、請求項1または2に記載の注出具。
【請求項4】
前記注出口は、当該注出口の先端の縁が外側に広がった後に折り返している形状を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の注出具。
【請求項5】
前記注出口は、当該注出口の先端の縁が外側に広がる形状を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の注出具。
【請求項6】
前記注出口の内側に凹部および凸部の少なくとも一方を形成すること
で親油加工が施されている、請求項
1に記載の注出具。
【請求項7】
前記撥油加工は、撥油剤を前記注出口にコーティングすることで施される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の注出具。
【請求項8】
前記撥油加工は、前記注出口の原料である樹脂材料に微粒子を添加することで施される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の注出具。
【請求項9】
前記注出具は、前記注出口の外周を囲むように設けられた溝部を備え、
前記溝部は、前記注出口の外側をつたって液だれした液体を受けるとともに、当該受けた液体を前記溝部を通して前記容器本体に戻すように構成されており、
前記溝部のうち、少なくとも前記液体が通過する位置に撥油加工が施されている、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の注出具。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の注出具と、
前記液体を貯蔵している容器本体と、を備える、
容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は注出具、及び容器に関し、特に油性の液体に用いられる注出具、及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食用油、ドレッシング等の油性の液体は、容器から注いだ際に液体の一部が注出口の周囲に残存し、この残存した液体が容器の外側を流れて液だれする場合がある。特許文献1には、液切れ性に優れた注出口の構造に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように特許文献1には、液切れ性に優れた注出口の構造に関する技術が開示されている。しかしながら、注出口の構造を特許文献1に開示されている構造とした場合であっても、油性の液体のように粘度の高い液体の場合には、液だれの発生を十分に抑制することができないという問題がある。
【0005】
上記課題に鑑み本発明の目的は、油性の液体を注いだ際に液だれが発生することを抑制することが可能な注出具、及び容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる注出具は、容器本体に取り付けられ、当該容器本体に貯蔵されている油性の液体を注ぐための注出口を備える注出具であって、前記注出口の外側のうち、少なくとも前記液体を注いだ際に前記液体が通過する位置の外側が撥油加工されている。
【0007】
本発明の一態様にかかる容器は、上述の注出具と、油性の液体を貯蔵している容器本体と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、油性の液体を注いだ際に液だれが発生することを抑制することが可能な注出具、及び容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態にかかる容器を説明するための側面図である。
【
図2】実施の形態にかかる注出具を説明するための側面図である。
【
図3】実施の形態にかかる注出具を示す断面図および上面図である。
【
図4】実施の形態にかかる注出具を用いて液体を注いだ場合を説明するための断面図である。
【
図5】従来技術にかかる注出具を用いて液体を注いだ場合を説明するための断面図である。
【
図6】実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す断面図である。
【
図7】実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す断面図である。
【
図8】実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す断面図である。
【
図9】実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す断面図である。
【
図10】実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す断面図である。
【
図11】実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す断面図である。
【
図12】
図11に示す構成例にかかる注出具を用いて液体を注いだ場合を説明するための断面図である。
【
図13A】実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す断面図である。
【
図13B】実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す断面図である。
【
図13C】実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す断面図である。
【
図14】実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す断面図である。
【
図15】実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す上面図である。
【
図16】
図15に示す注出具の切断線XVI-XVIにおける断面図である。
【
図17】実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態にかかる容器を説明するための側面図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかる容器1は、注出具2と、液体を貯蔵している容器本体3と、を備える。注出具2は、容器本体3に取り付けられ、容器本体3に貯蔵されている油性の液体を注ぐために用いられる。
【0011】
容器本体3に貯蔵される液体は、油性の液体である。ここで油性の液体とは、食用油、ドレッシング等の油分を含む液体である。例えば、食用油としては、亜麻仁油、エゴマ油、オリーブ油、グレープシード油、コーン油、ごま油、こめ油、大豆油、なたね油、パーム油、ひまわり油、べに花油、綿実油、落花生油等が挙げられる。なお、本発明は、常温において液状である油性の液体であれば、これらに限定されることなく任意の液体に使用することができる。また、本発明は粘性のある練り状の材料(例えば、練り状のマーガリン等)にも適用することができる。
【0012】
容器本体3は、例えば、樹脂製容器、紙製容器、ガラス製容器等を用いて構成することができる。樹脂製容器の材料には、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等を用いることができる。
【0013】
図1に示すように、注出具2は容器本体3の上部に取り付けられている。注出具2は、容器本体3と一体的に形成されていてもよい。例えば、樹脂製の容器1の場合は、注出具2と容器本体3とが一体となった形状の金型を用いて成型することで、注出具2と容器本体3とを一体的に形成することができる。また、注出具2は、容器本体3と分離可能に構成されていてもよい。例えば、容器1内の液体を使用した後に、注出具2(例えば、プラスチック)と容器本体3(例えば、紙やガラス)とを分離して、各々別々に廃棄できるようにしてもよい。
【0014】
図2は、本実施の形態にかかる注出具を説明するための側面図である。
図3は、本実施の形態にかかる注出具を示す断面図および上面図である。なお、
図3では蓋体11の図示を省略している。以降の
図4~
図14においても同様である。
【0015】
図2に示すように、本実施の形態にかかる注出具2は、注出口10および蓋体11を備える。
図3に示すように、注出口10は内部に開口部19を備える円筒形状の構造体である。容器本体3に貯蔵されている油性の液体は、注出口10に設けられている開口部19を通過して容器1の外に注がれる。
図2に示すように、蓋体11はヒンジ12を介して注出口10に取り付けられている。つまり、蓋体11は、ヒンジ12を用いて、回動可能な状態で注出口10に取り付けられており、これにより注出口10の上面を開閉することができる。
図1は注出口10が閉じている状態を示しており、
図2は注出口10が開いている状態を示している。
【0016】
なお、
図1、
図2では、蓋体11がヒンジ12を介して注出口10に取り付けられている構成例を示したが、本実施の形態では、蓋体11が注出口10に螺合するように構成してもよい。この場合は、蓋体11を回転させることで、注出口10から蓋体11を取り外したり、蓋体11で注出口10に蓋をしたりすることができる。また、
図2、
図3では、注出口10の形状が円筒形状である場合を例示したが、本実施の形態では、注出口10の形状は円筒形状以外であってもよい。例えば、注出口10は、平面視した際の形状が楕円形であってもよく、四角形などの多角形であってもよい。
【0017】
本実施の形態では、
図2、
図3に示すように、注出口10の外側に撥油加工13を施している。このように、注出口10の外側に撥油加工13を施すことで、油性の液体を注いだ際に液だれが発生することを抑制することができる。なお、
図3では撥油加工13の場所を明示するために、注出口10の表面に対して撥油加工13を施した部分が厚くなるように図示しているが、実際には、撥油加工13を施した部分は注出口10の表面に対して薄くなるように構成されている。
【0018】
図5は、従来技術にかかる注出具を用いて液体を注いだ場合を説明するための断面図である。
図5の左図に示すように、従来技術にかかる注出具102を用いて注出口110から液体121を注いだ場合は、注出口110の外側に液体121の一部が回り込んだ状態で液体121が注がれる(液体が回り込んでいる箇所を符号122で示す)。
【0019】
その後、
図5の右図に示すように、液体121の注出を止めるために注出具102を垂直に戻そうとすると、注出口110の外側に回り込んでいた液体122が注出具102の外側に残存し、この残存した液体123が注出具102(容器)の外側を流れて液だれする。特に、油性の液体のように粘度の高い液体の場合には、このような液だれの発生が顕著になる。
【0020】
これに対して本実施の形態にかかる発明では、
図2、
図3に示すように、注出口10の外側に撥油加工13を施しているので、油性の液体を注いだ際に液だれが発生することを抑制することができる。以下、
図4を用いて詳細に説明する。
【0021】
図4は、本実施の形態にかかる注出具を用いて液体を注いだ場合を説明するための断面図である。
図4の左図に示すように、本実施の形態にかかる注出具2を用いて注出口10から液体21を注いだ場合は、注出口10の外側に撥油加工13を施しているので、注出口10の外側に液体21の一部が回り込むことを抑制することができる。すなわち、注出口10の外側に撥油加工13を施した場合は、注出口10の外側に液体21が付着することを撥油加工13によって抑制することができる。したがって、注出口10の外側に液体21の一部が回り込むことを抑制することができる。
【0022】
このように本実施の形態では、注出口10の外側に液体21の一部が回り込むことを抑制することができるので、
図4の右図に示すように、液体21の注出を止めるために注出具2を垂直に戻した際に液だれが発生することを抑制することができる。すなわち、本実施の形態では、注出口10の外側に撥油加工13を施しているので、注出口10の外側に液体22が残存することを抑制することができる。したがって、液だれが発生することを抑制することができる。
【0023】
なお、
図1では、容器本体3の上部に注出具2を取り付けた例を示したが、本実施の形態では、容器本体の上部に斜面を有する紙容器(つまり、上部に屋根形状を有する紙容器)の斜面に取り付けても良い。このように屋根形状を有する容器の斜面に注出口2を取り付けた場合は、容器本体を置いた状態において、注出口2の開口部が水平でないため、液だれしやすい。特に容器本体に入っている液体が満タンに近い場合は、容器を少し傾けただけで注出口2から液体が注がれるため、液だれしやすい。よって、このような屋根形状を有する容器の斜面に本実施の形態にかかる注出口2を取り付けた場合は、本発明の効果が特に顕著にあらわれる。
【0024】
また、
図2~
図4では、注出口10の外側の全周に撥油加工13を施した例を示したが、本実施の形態では、注出口10の外側のうち、少なくとも液体21を注いだ際に液体が通過する位置の外側に撥油加工を施せばよい。例えば、注出口10の外周のうち、液体21を注いだ際に液体が通過する側の半周に撥油加工13を施してもよい。
【0025】
また、本実施の形態において撥油加工13とは、油をはじく加工、換言すると、油の接触角が大きくなるような加工であり、例えば、撥油剤を注出口10の表面にコーティングすることで施すことができる。例えば、撥油剤には、フッ素系の撥油剤、シリコーン系の撥油剤、テフロン系の撥油剤等を使用することができる。
【0026】
また、本実施の形態では、注出口10の原料である樹脂材料に微粒子を添加することで撥油加工13を施してもよい。このように、注出口10の原料である樹脂材料に微粒子を添加することで、成型後の注出口10の表面に凹凸を形成することができ、撥油性を付与することができる。例えば、微粒子には、金属酸化物等の無機材料(例えば、シリカ、アルミナなど)、樹脂硬化物等の有機材料などを用いることができる。微粒子の粒径については、撥油性を付与できる粒径であれば特に限定されることはないが、例えば、5μm以上100μm以下とすることができる。
【0027】
以上で説明した本実施の形態にかかる発明により、油性の液体を注いだ際に液だれが発生することを抑制することが可能な注出具、及び容器を提供することができる。
【0028】
次に、本実施の形態にかかる注出具の他の構成例について説明する。
本実施の形態では、
図6に示す注出具2aのように、注出口10の外側と注出口10の頂面(注出口10の先端側の面)に撥油加工13aを施してもよい。このように、注出口10の頂面にも撥油加工13aを施すことで、注出口10の頂面に液体が付着することを抑制でき、液だれの発生を効果的に抑制することができる。
【0029】
また、本実施の形態では、
図7に示す注出具2bのように、注出口10の外側、注出口10の頂面(注出口10の先端側の面)、及び注出口10の内側に撥油加工13bを施してもよい。このように、注出口10の内側にも撥油加工13bを施すことで、注出口10の内側に液体が付着することを抑制でき、液だれの発生を効果的に抑制することができる。
【0030】
例えば、本実施の形態では、注出口10の全表面に撥油加工13bを施してもよい。例えば、注出具2bを製造する際の原料として撥油性の材料を用いることで、製造後の注出口10の全表面を撥油性とすることができる。例えば、シリコーン樹脂を用いて注出具2bを製造することで、注出口10の全表面を撥油性とすることができる。
【0031】
また本実施の形態では、注出口10の外側と内側(注出口10の頂面を除く)に撥油加工を施すようにしてもよい(不図示)。
【0032】
また、本実施の形態では、
図8に示す注出具2cのように、注出口10cの形状を、注出口10cの先端の縁が外側に広がった後に折り返している形状としてもよい。この場合は、
図8に示す注出具2cのように、注出口10cの先端の折り返している部分の下側に撥油加工14を施す。なお、本明細書において、注出口10cの撥油加工14を施している部分は、注出口10cの外側(外周)とも表現することができる(つまり、注出口10cの外側の面と連続的につながっている)。
図8に示す注出具2cでは、注出口10cの形状が液だれを抑制する形状であり、また、注出口10cの外側に撥油加工14を施しているので、液だれの発生を効果的に抑制することができる。
【0033】
また、本実施の形態では、
図9に示す注出具2dのように、
図8に示した注出具2cの先端の折り返している部分の下側に撥油加工14を施すとともに、折り返している部分の上側にも撥油加工15を施してもよい。なお、本明細書において、注出口10cの撥油加工15を施している部分は、注出口10cの内側(内周)とも表現することができる(つまり、注出口10cの内側の面と連続的につながっている)。
図9に示す注出具2dでは、注出口10cの形状が液だれを抑制する形状であり、また、注出口10cの外側と内側にそれぞれ撥油加工14、15を施しているので、液だれの発生を効果的に抑制することができる。
【0034】
また、本実施の形態では、
図10に示す注出具2eのように、注出口10eの形状を、注出口10eの先端の縁が外側に広がる形状としてもよい。この場合は、
図10に示す注出具2eのように、注出口10eの先端の縁に撥油加工13eを施す。つまり、
図10に示す注出具2eの構成は、
図7に示した注出具2bの注出口10の先端の縁を外側に広げた構成に対応している。
図10に示す注出具2eでは、注出口10eの形状が液だれを抑制する形状であり、また、注出口10eの先端に撥油加工13eを施しているので、液だれの発生を効果的に抑制することができる。なお、
図10に示す注出具2eにおいて、外側のみに撥油加工を施してもよく(
図3に対応)、外側と頂面に撥油加工を施してもよい(
図6に対応)。
【0035】
なお、
図6~
図10に示した他の構成例においても、注出口10のうち、少なくとも液体を注いだ際に液体が通過する位置に撥油加工を施してもよい。
【0036】
本実施の形態にかかる他の構成例について更に説明する。
以下では撥油加工に加えて、親油加工を施した構成例について説明する。
【0037】
本実施の形態では、
図11に示す注出具2fのように、注出口10の外側に撥油加工13fを施すとともに、注出口10の内側に親油加工17fを施してもよい。このような構成とすることで、液だれの発生を効果的に抑制することができる。ここで親油加工17fとは、油とのぬれ性を高くする加工、換言すると、油の接触角が小さくなるような加工であり、例えば、親油剤を注出口10の表面にコーティングすることで施すことができる。
【0038】
図12は、
図11に示す構成例にかかる注出具を用いて液体を注いだ場合を説明するための断面図である。
図12の左図に示すように、
図11に示す注出具2fを用いて注出口10から液体21を注いだ場合は、注出口10の外側に撥油加工13fを施しているので、注出口10の外側に液体21が回り込んで付着することを抑制することができる。
【0039】
その後、
図12の右図に示すように、液体21の注出を止めるために注出具2fを垂直に戻そうとすると、親油加工17fを施した部分(注出口10の出口付近の内側)に液体21が集まろうとする。つまり、親油加工17fを施した部分は液体21に対するぬれ性が高いので、液体21が親油加工17fを施した部分に集まろうとする。このため、注出具2fを垂直に戻そうとした際に、注出口10の出口付近(特に頂面)に存在していた液体が、注出口10の内側に引き寄せられる(内側に引き寄せられた液体を符号22で示している)。したがって、注出口10の外側と頂面に液体が残存することを抑制することができ、液だれが発生することを効果的に抑制することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、注出口10の出口付近の内側に凹部および凸部の少なくとも一方を形成することで親油加工を施してもよい。すなわち、
図13に示す注出具2gのように、注出口10の外側に撥油加工13gを施すとともに、注出口10の内側に凹部31および凸部32の少なくとも一方を形成することで親油加工を施してもよい。
図13Aは、注出口10の出口付近の内側に凹部31を形成した構成例を示している。
図13Bは、注出口10の出口付近の内側に凸部32を形成した構成例を示している。
図13Cは、注出口10の出口付近の内側に凹部31と凸部32を形成した構成例を示している。
【0041】
このように、注出口10の出口付近の内側に凹部31および凸部32の少なくとも一方を形成した場合は、液体の表面張力により、注出口10の表面の凹部31および凸部32に液体が吸い寄せられ、凹部31および凸部32に液体が留まろうとする。このため、注出口10の内側に親油性を付与することができる。
【0042】
なお、
図13A~
図13Cに示した構成例は一例であり、本実施の形態では、形成する凹部31および凸部32の数は任意に決定することができる。例えば、注出具2gを射出成形で作製する場合は、凹部および凸部の少なくとも一方を備えた金型を用いることで、注出具2gを作製する際に、注出口10の内側に凹部および凸部の少なくとも一方を形成することができる。
【0043】
また、
図14に示す注出具2hのように、本実施の形態では、注出口10の外側と注出口10の頂面(注出口10の先端側の面)に撥油加工13hを施すとともに、注出口10の内側に親油加工17hを施してもよい。このような構成とすることで、液だれの発生を効果的に抑制することができる。
【0044】
なお、
図11~
図14に示した構成例においても、注出口10のうち、少なくとも液体を注いだ際に液体が通過する位置に撥油加工、親油加工を施してもよい。
【0045】
また、
図11、
図14に示した構成(親油加工17f、17hを備える構成)において、注出口10を構成している材料自体に親油性の材料を用いた場合は、親油加工17f、17hを施すことなく、注出口10の内側を親油性にすることができる。この場合は、コーティングや凹凸形成による親油加工が不要になる。本発明では、このように注出口10を製造する際の原料に親油性の材料を用いることで、親油加工を施してもよい。例えば、プラスチックは撥水親油性を備える。また、ガラスおよび紙は、親水親油性を備える。
【0046】
次に、本実施の形態にかかる他の構成例について更に説明する。
図15は、本実施の形態にかかる注出具の他の構成例を示す上面図である。
図16は、
図15に示す注出具の切断線XVI-XVIにおける断面図である。
【0047】
図15、
図16に示す注出具202は、本体部210と蓋体211とを備える。本体部210の内側には注出口213が設けられている。注出口213の中央部には開口部219が設けられている。
図16の断面図に示すように、注出口213は、先端の縁214が外側に広がった形状を有する(
図8、
図9参照)。容器本体に貯蔵されている液体は、注出口213に設けられている開口部219を通過して容器の外に注がれる。なお、
図16では、栓220が取り付けられた状態の断面図を示している。注出具202を使用する際は、栓220を上方向に引いて取り除くことで、容器内部が開口部219を介して外部とつながる。
【0048】
図15、
図16に示すように、蓋体211はヒンジ212を介して本体部210に取り付けられている。つまり、蓋体211は、ヒンジ212を用いて、回動可能な状態で本体部210に取り付けられており、これにより本体部210(注出口213)の上面を開閉することができる。
【0049】
また、
図15、
図16に示す注出具202は、蓋体211の内側に内蓋216が設けられている。内蓋216は、蓋体211を用いて本体部210を閉じた際に、注出口213と当接するように構成されている。このような構成とすることで、内蓋216を用いて開口部219に栓をすることができる。また、本体部210の外周は蓋体211の外周と嵌合するように構成されている。したがって、
図15、
図16に示す注出具202は、蓋体211を用いて本体部210を閉じた際に、本体部210の内側と外周の両方で栓をすることができる。したがって、開口部219から外部に液体が漏れることを効果的に抑制することができる。
【0050】
また、
図15、
図16に示すように、注出具202は、注出口213の外側に溝部221を有する。溝部221は、注出口213から液体を注いだ際に、注出口213の先端の縁214から注出口213の外側に液だれした液体を受ける機能を有する。
図16では、注出口213の縁214から液だれした液体の流れを矢印で示している。また、溝部221の外壁部224の上部は内側に傾くように構成されている。これにより、注出口213を傾けた際に、溝部221から本体部210の外側に液体が液だれすることを抑制することができる。
【0051】
図17に示すように、溝部221は注出口213の外周を囲むように設けられている。また、溝部221は、ヒンジ212側の連結部222において開口部219とつながるように構成されている。よって、注出口213を傾けて液体を注出口213から注出した後、注出口213を水平に戻すと、注出口213の縁214から液だれした液体は、溝部221に一時的に溜まり、その後、注出口213の外周の溝部221を流れ、連結部222を通過して開口部219へと流れる。なお、
図17では、液体が流れている箇所をハッチングで示している。
【0052】
また、
図15~
図17に示す注出具202では、溝部221に撥油加工を施している。例えば、注出口213の外周を取り囲むように設けられた溝部221のうち、少なくとも液体が通過する位置に撥油加工を施してもよい。また溝部221全体に撥油加工を施してもよい。このように撥油加工を施すことで、溝部221に溜まった液体が、注出口213の外周の溝部221を流れやすくすることができる。したがって、液だれした液体を、溝部221を介して容器内部に戻りやすくすることができる。溝部221に撥油加工を施す際も、上述した方法と同様の方法を用いることができる。
【0053】
なお、
図15~
図17に示す注出具202においても、他の構成例と同様に注出口213に撥油加工(親油加工を含んでもよい)を施している。注出口213に撥油加工や親油加工を施す点については、他の構成例と同様であるので重複した説明は省略する。
【0054】
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【0055】
この出願は、2020年3月5日に出願された日本出願特願2020-37472を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0056】
1 容器
2、2a~2h 注出具
3 容器本体
10、10c、10e 注出口
11 蓋体
12 ヒンジ
13、13a~13h、14、15 撥油加工
17f、17h 親油加工
19 開口部
21 液体
31 凹部
32 凸部
202 注出具
210 本体部
211 蓋体
212 ヒンジ
213 注出口
214 縁
216 内蓋
219 開口部
221 溝部
222 連結部
224 外壁部