(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび排気システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20250321BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20250321BHJP
H01L 21/318 20060101ALN20250321BHJP
H01L 21/316 20060101ALN20250321BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/44 E
H01L21/318 B
H01L21/316 X
(21)【出願番号】P 2023502468
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007518
(87)【国際公開番号】W WO2022181664
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2021027405
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】西田 政哉
(72)【発明者】
【氏名】角崎 友彦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 文恵
(72)【発明者】
【氏名】前田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】桑田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 文一
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-32610(JP,A)
【文献】特開2005-64306(JP,A)
【文献】特開2007-314846(JP,A)
【文献】特開平4-103767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0144333(US,A1)
【文献】特開2004-183096(JP,A)
【文献】特開平2-61068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/44
H01L 21/318
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内の基板に対して第1ガスを供給する第1ガス供給ラインと、
第1ポンプに接続され、前記基板に対して供給された前記第1ガスを排気する第1排気ラインと、
前記第1排気ラインに設けられた第1バルブと、
前記処理室内の前記基板に対して第2ガスを供給する第2ガス供給ラインと、
第2ポンプに接続され、前記基板に対して供給された前記第2ガスを排気する第2排気ラインと、
前記第2排気ラインに設けられた第2バルブと、
前記第1排気ラインが所定の状態に遷移したことを検出したとき、前記基板に対して供給された前記第1ガスを、前記第2排気ラインを介して前記第2ポンプに向けて排気する第1のライン変更処理を行うように、前記第1バルブおよび前記第2バルブを制御することが可能な制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記第1排気ラインに第3バルブを介して接続されるとともに、前記第2排気ラインに第4バルブを介して接続されるバイパスラインを有し、
前記制御部は、前記第1排気ラインが所定の状態に遷移したことを検出したとき、前記第1排気ライン内の前記第1ガスを、前記バイパスラインおよび前記第2排気ラインを介して前記第2ポンプに向けて排気する第2のライン変更処理を行うように、前記第3バルブおよび前記第4バルブを制御することが可能に構成される
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記処理室内で前記基板を処理している間は前記第1のライン変更処理を行い、前記第1のライン変更処理の後に前記第2のライン変更処理を行うように、前記第1バルブから前記第4バルブまでの各バルブを制御することが可能に構成される
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記処理室内での前記基板の処理が行われていないとき、前記第3バルブおよび前記第4バルブを開けて、前記第1排気ライン内の雰囲気を、前記バイパスラインを介して前記第2排気ラインから排気する第3のライン変更処理を行うように、前記第3バルブおよび前記第4バルブを制御することが可能に構成される
請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第3のライン変更処理を、前記第1バルブと前記第2バルブの両方を実質的に閉じた状態で行う様に前記第1バルブと前記第2バルブとを制御することが可能に構成される
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ラインを有し、
前記制御部は、前記不活性ガス供給ラインから前記処理室内に前記不活性ガスを供給して前記第1排気ラインから排気したときの前記第1排気ライン内の圧力状態を検出することにより、前記第1排気ラインが所定の状態に遷移したか否かを判定することが可能に構成される
請求項1から5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1排気ラインが所定の状態に遷移したか否かの判定を、前記第1ガスの供給前に行うことが可能に構成される
請求項1から6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1排気ラインが所定の状態に遷移したか否かの判定を、前記第1ガスの供給と前記第2ガスの供給との間に行うことが可能に構成される
請求項1から7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1排気ラインが所定の状態に遷移したか否かの判定を、前記第2ガスの供給後に行うことが可能に構成される
請求項1から8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1排気ラインが所定の状態に遷移したことの検出に応じてアラーム報知を行うことが可能に構成される
請求項1から9のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記アラーム報知の後、前記処理室内の前記基板に対する処理が終了するまで、当該処理を継続して行うことが可能に構成される
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記処理室内の前記基板に対する処理の終了後、次の基板処理を開始させない状態とすることが可能に構成される
請求項10または11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記アラーム報知の情報と前記アラーム報知がされた状態で処理された前記基板の情報とのいずれか一方または両方を上位装置に送信することが可能に構成される
請求項10から12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記第1ガスは、前記基板上に形成しようとする膜を構成する主元素を含むガスである
請求項1から13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記第1ガスは、シリコン含有ガスである
請求項1から14のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記第1ガスは、ハロシラン系ガスである
請求項1から15のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記第2ガスは、前記基板上に形成しようとする膜を構成する主元素を含まないガスである
請求項1から16のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記第2ガスは、炭素含有ガス、酸素含有ガス、並びに、窒素および水素含有ガスのうちの少なくともいずれかを含む
請求項1から17のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記第2ガスは、炭素含有ガス、酸素含有ガス、並びに、窒素および水素含有ガスのいずれも含む
請求項1から18のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記制御部は、前記処理室内に、シリコン含有ガス、炭素含有ガス、酸素含有ガス、並びに、窒素および水素含有ガスのうちの少なくともいずれかが、間欠的かつ非同時に供給する様に前記第1ガス供給ラインと第2ガス供給ラインとを制御することが可能に構成される
請求項1から19のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項21】
前記制御部は、前記処理室内に、シリコン含有ガス、炭素含有ガス、酸素含有ガス、並びに、窒素および水素含有ガスのいずれも、間欠的かつ非同時に供給する様に前記第1ガス供給ラインと第2ガス供給ラインとを制御することが可能に構成される
請求項1から20のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項22】
処理室内の基板に対して第1ガス供給ラインから第1ガスを供給する工程と、
第1ポンプに接続された第1排気ラインを介して前記基板に対して供給された前記第1ガスを排気する工程と、
前記処理室内の前記基板に対して第2ガス供給ラインから第2ガスを供給する工程と、
第2ポンプに接続された第2排気ラインを介して前記基板に対して供給された前記第2ガスを排気する工程と、
前記第1排気ラインが所定の状態に遷移したことを検出したとき、前記基板に対して供給された前記第1ガスを、前記第2排気ラインを介して前記第2ポンプに向けて排気するように、前記第1排気ラインに設けられた第1バルブおよび前記第2排気ラインに設けられた第2バルブを制御する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項23】
処理室内の基板に対して第1ガス供給ラインから第1ガスを供給する工程と、
第1ポンプに接続された第1排気ラインを介して前記基板に対して供給された前記第1ガスを排気する工程と、
前記処理室内の前記基板に対して第2ガス供給ラインから第2ガスを供給する工程と、
第2ポンプに接続された第2排気ラインを介して前記基板に対して供給された前記第2ガスを排気する工程と、
前記第1排気ラインが所定の状態に遷移したことを検出したとき、前記基板に対して供給された前記第1ガスを、前記第2排気ラインを介して前記第2ポンプに向けて排気するように、前記第1排気ラインに設けられた第1バルブおよび前記第2排気ラインに設けられた第2バルブを制御する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項24】
処理室内の基板に対して第1ガス供給ラインから第1ガスを供給させる手順と、
第1ポンプに接続された第1排気ラインを介して前記基板に対して供給された前記第1ガスを排気させる手順と、
前記処理室内の前記基板に対して第2ガス供給ラインから第2ガスを供給させる手順と、
第2ポンプに接続された第2排気ラインを介して前記基板に対して供給された前記第2ガスを排気させる手順と、
前記第1排気ラインが所定の状態に遷移したことを検出したとき、前記基板に対して供給された前記第1ガスを、前記第2排気ラインを介して前記第2ポンプに向けて排気するように、前記第1排気ラインに設けられた第1バルブおよび前記第2排気ラインに設けられた第2バルブを制御させる手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項25】
基板処理装置と、第1ポンプと、第2ポンプと、を備える排気システムであって、
前記基板処理装置は、
処理室内の基板に対して第1ガスを供給する第1ガス供給ラインと、
前記第1ポンプに接続され、前記基板に対して供給された前記第1ガスを排気する第1排気ラインと、
前記第1排気ラインに設けられた第1バルブと、
前記処理室内の前記基板に対して第2ガスを供給する第2ガス供給ラインと、
前記第2ポンプに接続され、前記基板に対して供給された前記第2ガスを排気する第2排気ラインと、
前記第2排気ラインに設けられた第2バルブと、
前記第1排気ラインが所定の状態に遷移したことを検出したとき、前記基板に対して供給された前記第1ガスを、前記第2排気ラインを介して前記第2ポンプに向けて排気する第1のライン変更処理を行うように、前記第1バルブおよび前記第2バルブを制御することが可能な制御部と、
を有する排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程で用いられる基板処理装置として、例えば、処理室内から原料を排気する第1排気系と、処理室内から反応体を排気する第2排気系とを有して、排気系のメンテナンス頻度を低下させるように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、排気系の状態によっては所望の処理条件が得られないおそれがあるところ、その場合であっても処理結果の特性悪化を抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、 処理室内の基板に対して第1ガスを供給する第1ガス供給ラインと、
第1ポンプに接続され、前記基板に対して供給された前記第1ガスを排気する第1排気ラインと、
前記第1排気ラインに設けられた第1バルブと、
前記処理室内の前記基板に対して第2ガスを供給する第2ガス供給ラインと、
第2ポンプに接続され、前記基板に対して供給された前記第2ガスを排気する第2排気ラインと、
前記第2排気ラインに設けられた第2バルブと、
前記第1排気ラインが所定の状態に遷移したことを検出したとき、前記基板に対して供給された前記第1ガスを、前記第2排気ラインを介して前記第2ポンプに向けて排気する第1のライン変更処理を行うように、前記第1バルブおよび前記第2バルブを制御することが可能な制御部と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、排気系が所定の状態に遷移しても、所望の処理条件に近い雰囲気を構築でき、処理結果の特性悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の処理炉を示す縦断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の処理炉を示す横断面図であり、
図1のA-A断面で示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の制御部を示すブロック図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の排気系の処理動作を示す説明図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の成膜処理時における排気系切り替えの処理動作を示す説明図であり、(a)は通常運用時を示す図、(b)は所定の状態に遷移した後を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る基板処理装置のバイパスライン使用時における排気系切り替えの処理動作を示す説明図であり、(a)は通常運用時を示す図、(b) は所定の状態に遷移した後を示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る基板処理装置のメンテナンス前における排気系切り替えの処理動作を示す説明図である。
【0008】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面上の各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
まず、本開示の一実施形態に係る基板処理装置の構成について説明する。
ここでは、基板処理装置の一例として、半導体装置の製造工程の一工程で使用される基板処理装置であって、一度に複数枚の基板に対して成膜処理等を行うバッチ式の縦型装置である基板処理装置について説明する。
【0010】
(処理炉)
図1に示すように、本実施形態に係る基板処理装置は、処理炉202を備えて構成されている。
【0011】
処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0012】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。
【0013】
反応管203の筒中空部には、処理室201が形成されている。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。
【0014】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217すなわちウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0015】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される断熱板218が水平姿勢で多段に支持されている。
【0016】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0017】
(ガス供給系) 処理室201内には、ノズル249a,249bが、反応管203の下部側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。
【0018】
ガス供給管232a,232bには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232c,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232dには、上流方向から順に、MFC241c,241dおよびバルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。
【0019】
ノズル249a,249bは、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0020】
(第1ガス供給ライン)
ガス供給管232aからは、第1ガスである原料ガスとして、所定元素(主元素)およびハロゲン元素を含むハロゲン系原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。つまり、ガス供給管232aは、処理室内201のウエハ200に対して、第1ガスである原料ガスを供給する第1ガス供給ラインとして機能する。
【0021】
原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。ハロゲン元素には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。すなわち、ハロゲン系原料ガスには、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基が含まれる。ハロゲン系原料ガスとしては、例えば、所定元素としてのシリコン(Si)およびClを含むハロシラン原料ガス、すなわち、クロロシラン原料ガスを用いることができる。クロロシラン原料ガスとしては、例えば、ヘキサクロロジシラン(Si2C6、略称:HCDS)ガスを用いることができる。また、原料ガスとしては、HCDSガスの他、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:STC)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のSi-Cl結合を含むクロロシラン原料ガスを用いることができる。
【0022】
つまり、第1ガスである原料ガスは、ウエハ200上に形成しようとする膜(例えば、Si含有膜)を構成する主元素(例えば、Si)を含むガスである。具体的には、第1ガスである原料ガスは、例えば、Si含有ガスである。さらに具体的には、第1ガスである原料ガスは、例えば、クロロシラン系ガス等のハロシラン系ガスである。
【0023】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料供給系(ハロシラン原料供給系)が構成される。
【0024】
(第2ガス供給ライン)
ガス供給管232bからは、第2ガスである反応体ガスとして、窒素(N)を含むガス(窒化ガス、窒化剤)が、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。つまり、ガス供給管232bは、処理室内201のウエハ200に対して、第2ガスである反応体ガスを供給する第2ガス供給ラインとして機能する。
【0025】
反応体ガスを構成する窒化剤としては、例えば窒化水素系ガスを用いることができ、例えば、アンモニア(NH3)ガスを用いることができる。また、反応体ガスとしては、NH3ガスの他、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等のN-H結合を含む窒化水素系ガスを用いることができる。
【0026】
つまり、第2ガスである反応体ガスは、ウエハ200上に形成しようとする膜(例えば、Si含有膜)を構成する主元素(例えば、Si)を含まないガスである。具体的には、第2ガスである反応体ガスは、例えば、C3H6等のC含有ガス、O2等のO含有ガス、並びに、NおよびH含有ガスのうちの少なくともいずれかを含むものである。また、第2ガスである反応体ガスは、例えば、C含有ガス、O含有ガス、並びに、NおよびH含有ガスのいずれも含むものであってもよい。
【0027】
主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、反応体供給系(窒化剤供給系)が構成される。
【0028】
(不活性ガス供給ライン)
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。つまり、ガス供給管232c,232dは、処理室内201に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ラインとして機能する。
【0029】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、キセノン(Xe)ガスの少なくとも1つ以上を用いることができる。
【0030】
主に、ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ243c,243dにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0031】
(ガス排気系)
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231の上流側には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245が設けられている。排気管231の下流側は、排気管231a,231bに分岐している。
【0032】
図1に斜線で示すように、排気管231の外周、および、排気管231a,231bの上流側部分の外周には、それぞれ、これらを加熱する加熱手段(加熱機構)として、例えばリボン状のヒータ231hが巻き付けられている。
【0033】
(第1排気ライン)
排気管231aは、第1の真空排気装置としての真空ポンプ246aに接続されている。そして、真空ポンプ246aの作動により、排気管231を介して、処理室201内の気管231aは、第1ガスである原料ガスを排気する第1排気ラインとして機能する。
【0034】
排気管231aには、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244aがそれぞれ設けられている。APCバルブ244aは、第1排気ラインに設けられた第1バルブとして機能するもので、真空ポンプ246aを作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、さらに、真空ポンプ246aを作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。
【0035】
主に、排気管231、排気管231a、APCバルブ244aにより、第1排気系が構成される。真空ポンプ246aを第1排気ラインに含めて考えてもよい。
【0036】
また、排気管231のAPCバルブ244aの後段(真空ポンプ246a側)に、第1圧力計247aを設けてもよい。この場合、第1圧力計247aを、第1排気ラインに含めて考えてもよい。
【0037】
(第2排気ライン)
排気管231bは、第2の真空排気装置としての真空ポンプ246bに接続されている。そして、真空ポンプ246bの作動により、排気管231を介して、処理室201内のウエハ200に対して供給された反応体ガスを排気するように構成されている。つまり、排気管231bは、第2ガスである反応体ガスを排気する第2排気ラインとして機能する。
【0038】
排気管231bには、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPCバルブ244bが設けられている。APCバルブ244bは、第2排気ラインに設けられた第2バルブとして機能するもので、真空ポンプ246bを作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、さらに、真空ポンプ246a,246bを作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。
【0039】
主に、排気管231、排気管231b、APCバルブ244bにより、第2排気系が構成される。真空ポンプ246bを第2排気ラインに含めて考えてもよい。
【0040】
また、排気管231bのAPCバルブ244bの後段(真空ポンプ246b側)に、第2圧力計247bを設けてもよい。この場合、第2圧力計247bを、第2排気ラインに含めて考えてもよい。
【0041】
第1排気系、第2排気系のいずれか、または、これら全体を排気系と称することもできる。圧力センサ245、ヒータ231hを排気系に含めて考えてもよい。
【0042】
なお、第1排気系と第2排気系とは、交互に切り替えられながら用いられる。すなわち、処理室201内から原料を含む雰囲気を排気する際には第1排気系が用いられ、処理室201内から反応体を含む雰囲気を排気する際には第2排気系が用いられる。
【0043】
(バイパスライン)
排気管231aのAPCバルブ244aよりも下流側と、排気管231bのAPCバルブ244bよりも下流側には、これらの間を接続するバイパスライン233が設けられている。バイパスライン233は、排気管231aに第3バルブとしてのバルブ244cを介して接続されるとともに、排気管231bに第4バルブとしてのバルブ244dを介して接続されている。
【0044】
バイパスライン233におけるバルブ244c,244dの間には、分岐点が設けられている。そして、分岐した先は、ガス供給管232aに接続された配管248aに設けられたバルブ248bを介して、図示せぬガス供給源に接続されており、バイパスライン233に対して所定ガス(ここでは原料ガス)が供給されるようになっている。
【0045】
(コントローラ)
本実施形態に係る基板処理装置は、制御部(制御手段)としてのコントローラ121を備えて構成されている。
【0046】
図3に示すように、コントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0047】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0048】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241h、バルブ243a~243h,244c,244d、圧力センサ245、APCバルブ244a,244b、真空ポンプ246a,246b、ヒータ207,231h、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0049】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241hによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243h,244c,244d,248bの開閉動作、APCバルブ244a,244bの開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244a,244bによる圧力調整動作、真空ポンプ246a,246bの起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、ヒータ231hの温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御することが可能に構成されている。
【0050】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0051】
(排気システム)
以上のように構成された基板処理装置は、真空排気装置としての真空ポンプ246a,246bとともに、排気システムを構成するようになっている。つまり、本開示における排気システムは、基板処理装置と、第1ポンプとしての真空ポンプ246aと、第2ポンプとしての真空ポンプ246bと、を備えて構成されている。
【0052】
(2)基板処理工程の手順
次に、上述した構成の基板処理装置を用い、半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上にシリコン窒化膜(SiN膜)を形成する場合の手順を説明する。以下の説明に於いて、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ121により制御される。
【0053】
なお、本明細書に於いて、「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合、すなわち表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合がある。また、本明細書に於いて「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、即ち積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
【0054】
したがって、本明細書に於いて「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書に於いて「ウエハ上に所定の層(または膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(または膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(または膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0055】
また、本明細書に於いて「基板」という言葉を用いた場合も「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明に於いて、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
【0056】
以下、基板処理工程について説明する。
【0057】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。その後、複数枚のウエハ200を支持したボート217を、ボートエレベータ115によって持ち上げて、処理室201内へ搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0058】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、第1排気系および第2排気系より処理室201内を真空排気(減圧排気)する。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244a,244bがそれぞれフィードバック制御される。真空ポンプ246a,246bは、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態をそれぞれ維持する。
【0059】
また、処理室201内のウエハ200が所定の温度(成膜温度)となるように、ヒータ207によってウエハ200を加熱する。この際、処理室201内が所定の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、排気管231内、および、APCバルブ244a,244bよりも上流側の排気管231a,231b内が所定の温度(原料吸着を抑制することのできる温度)となるように、ヒータ231hによってこれらを加熱する。ヒータ207,231hによる上述の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0060】
また、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。ボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0061】
(成膜ステップ)
その後、成膜ステップとして、次のステップ1A,2Aを順次実行する。
【0062】
[ステップ1A]
このステップでは、ウエハ200に対して、第1ガス(原料ガス)を供給する。具体的には、
図4の上段左に示すように、APCバルブ244bを全閉(フルクローズ)とし、APCバルブ244aを開いた状態で、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231を介し、排気管231aより、すなわち、第1排気系より排気される。このとき、ウエハ200に対して原料ガスが供給される。このとき同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ不活性ガスを流す。不活性ガスは、原料ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231aより排気される。また、ノズル249b内への原料ガスの侵入を防止するため、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231aより排気される。
【0063】
ここで、原料ガスとして、クロロシランガスを用いている場合、ウエハ200に対して原料ガスを供給することで、ウエハ200の最表面上に、Clを含むSi含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、Clを含むSi層であってもよいし、原料ガス分子の吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。以下、Clを含むSi含有層を、単にSi含有層とも称する。
【0064】
ウエハ200上にSi含有層が形成されたら、バルブ243aを閉じ、原料ガスの供給を停止する。このとき、
図4の上段右に示すように、APCバルブ244a,244bの開閉状態を、
図4の上段左に示す状態のままそれぞれ所定時間維持する。これにより、処理室201内に残留する原料ガスを、第1排気系より排気する。このとき、バルブ243c,243dは開いたままとして、不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内、排気管231内、排気管231a内からの残留ガス(原料ガス)の排気が促される。
【0065】
[ステップ2A] ステップ1Aが終了した後、ウエハ200に対して、第2ガス(反応体ガス)を供給する。このステップでは、
図4の下段左に示すように、APCバルブ244aを全閉とし、APCバルブ244bを開いた状態で、バルブ243b~243dの開閉制御を、ステップ1Aにおけるバルブ243a,243c,243dの開閉制御と同様の手順で行い、ガス供給管232b内へ反応体ガスを流す。反応体ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231を介し、排気管231bより、すなわち、第2排気系より排気される。このとき、ウエハ200に対して反応体ガスが供給される。
【0066】
ここで、反応体ガスとして、NH3ガスを用いている場合、ウエハ200に対して反応体ガスを供給することで、ウエハ200上に形成されたSi含有層の少なくとも一部を改質(窒化)させることができる。これにより、ウエハ200上に、SiおよびNを含む層、すなわち、シリコン窒化層(SiN層)が形成される。SiN層を形成する際、Si含有層に含まれていたCl等の不純物は、改質反応の過程においてこの層から分離し、少なくともClを含むガス状物質を構成して処理室201内から排出される。これにより、SiN層は、Si含有層に比べてCl等の不純物が少ない層となる。
【0067】
ウエハ200上にSiN層が形成されたら、バルブ243bを閉じ、反応体ガスの供給を停止する。このとき、
図4の下段右に示すように、APCバルブ244a,244bの開閉状態を、
図4の下段左に示す状態のままそれぞれ所定時間維持する。これにより、処理室201内に残留する反応体ガスを、第2排気系より排気する。このとき、バルブ243c,243dは開いたままとして、処理室201内、排気管231内、排気管231b内からの残留ガス(反応体ガス)の排気を促進させる。
【0068】
[所定回数実施]
上述したステップ1A,2Aを交互に行うサイクルを所定回数(n回(nは1以上の整数))行うことで、処理室201内には、原料ガスと反応体ガスとが間欠的かつ非同時に所定回数流れる。これにより、ウエハ200上に、所定膜厚の膜(例えば、SiN膜)を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。
【0069】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ウエハ200上へのSiN膜の形成が終了したら、ガス供給管232c,232dのそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、第1排気系および第2排気系より処理室201内を真空排気する。これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気を不活性ガスに置換し(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力を常圧に復帰させる(大気圧復帰)。
【0070】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219を下降させ、反応管203の下端を開口させる。そして、処理済のウエハ200を、ボート217に支持された状態で、反応管203の下端から反応管203の外部に搬出する(ボートアンロード)。処理済のウエハ200は、ボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0071】
(3)排気系異常時の処理動作
上述したように、基板処理工程では、処理室201内のウエハ200に対して、第1ガス(原料ガス)および第2ガス(反応体ガス)を供給して、ウエハ200上に所望の層(例えば、SiN層)を形成する。その際に、基板処理装置は、第1排気ラインである排気管231aを有する第1排気系と、第2排気ラインである排気管231bを有する第2排気系と、を備えている。そして、各排気管231a,231bが第1ポンプとしての真空ンプ仕様となっている。そのため、ウエハ200に対して原料ガスと反応体ガスとを供給する場合であっても、原料ガスは第1排気系で排気し、反応体ガスは第2排気系で排気するといったように、各ガスを別々に排気することができる。これにより、排気系に蓄積する副生成物量を低減させて、ポンプメンテナンスが必要となるまでの期間を延長させることが可能となるので、その結果として排気系のメンテナンス頻度を低下させることが可能となる。
【0072】
ただし、デュアルポンプ仕様の場合であっても、長期間にわたって基板処理装置を運用していると、副生成物の蓄積等が発生し、排気ラインを含む排気系の性能低下が起こり得る。排気系の性能低下としては、例えば、真空ポンプの性能低下、バルブの性能低下、排気管の性能(コンダクタンス)の低下等の少なくとも一つが挙げられる。特に、第1ポンプである真空ポンプ246aについては、副生成物が付着しやすいことから、他に比べて故障発生率が高くなることが予想され、故障発生による排気系の性能低下を招くことが懸念される。
【0073】
排気系の性能低下は、処理室201内で所望の成膜ができなくなる要因となり得る。具体的には、例えば、排気量の低下により、処理室201内で原料ガスが分解する前に排気をすることができず、処理室201内でパーティクル発生してしまい、その結果としてカバレッジ悪化等が生じてしまうおそれがある。つまり、排気系の性能低下は、ウエハ200上に成膜した膜の特性悪化を招き得る。
【0074】
そこで、本実施形態に係る基板処理装置においては、コントローラ121が排気系の状態を監視しており、排気系が所定の状態に遷移すると、コントローラ121が以下のような制御処理を行うようになっている。以下、コントローラ121による制御処理について説明する。ここで排気系の状態とは、各バルブの開度、第1排気ラインの圧力、第2排気ラインの圧力、ポンプ246a、246bの状態の少なくとも1つ以上を含み得る。
【0075】
(成膜処理時)
上述した基板処理工程の成膜ステップにおけるステップ1Aでは、
図5(a)に示すように、コントローラ121は、APCバルブ244aを開いた状態(図中における白丸の状態)としつつ、APCバルブ244bを全閉(フルクローズ)の状態(図中における黒丸の状態)とする。また、コントローラ121は、バイパスライン233における各バルブ244c,244dについても、全閉(フルクローズ)の状態とする。これにより、原料ガスは、真空ポンプ246aの作動により、第1排気ラインとしての排気管231aを通じて、第1排気系によって排気されることになる。
【0076】
このとき、コントローラ121は、第1排気ラインとしての排気管231aが所定の状態であるか否かを監視している。ここでいう所定の状態とは、排気管231aを通じて行う排気について、異常が生じる可能性が高い状態のことをいう。具体的には、例えば、以下に説明する(i)~(v)のうちの少なくとも一つの状態が該当し得る。
【0077】
(i)排気管231aを通じて行う排気について、排気量の低下が生じると、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したと判定する。排気量の低下の有無は、例えば、圧力計245と第1圧力計247aのいずれかまたは両方が、予め規定された排気時の圧力-時間曲線等に基づき、所定圧力に到達するまでの時間を検出するか、または、定められた時間内に所定の圧力範囲に入らないことを検出することで、判定を行うようにすればよい。なお、圧力の測定は、ステップ1Aの間であれば、圧力計245と第1圧力計247aのいずれかまたは両方を用いて行われる。ステップ1A以外であれば、第1圧力計247aを用いて測定される。
【0078】
(ii)排気管231aに接続する真空ポンプ246aについて、その真空ポンプ246aの突発的な停止が発生すると、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したと判定する。真空ポンプ246aの突発的な停止の有無は、例えば、コントローラ121が真空ポンプ246aの作動状態を監視しつつ、その真空ポンプ246aからのアラーム信号等を検出することで、判定を行うようにすればよい。
【0079】
(iii)排気管231aに接続する真空ポンプ246aについて、ポンプ負荷の増大が生じると、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したと判定する。ポンプ負荷の増大の有無は、例えば、真空ポンプ246aの負荷電流値を監視しつつ、ポンプ負荷が増えると電流値も上昇するので、負荷電流値を所定閾値と比較することで、判定を行うようにすればよい。
【0080】
(iv)排気管231aに設けられたAPCバルブ244aについて、バルブ開度不良が生じると、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したと判定する。バルブ開度不良の有無は、例えば、バルブ開度不良があると弁開度を調整しても処理室201内の圧力を所望通りに調整できないので、APCバルブ244aに対する弁開度調整信号と処理室201内の圧力検出結果とに基づいて、判定を行うようにすればよい。
【0081】
なお、APCバルブ244aの開度の不良は、第1圧力計247aを用いて、第1排気管231a内の圧力検出結果に基づいて判定してもよい。例えば、第1圧力計247aの値が、所定の圧力以上の場合は、APCバルブ244aが開いていると判定する。ここで、所定の圧力とは、例えば、10Pa~100Pa程度の圧力である。また、第1圧力計247aの値が、所定の圧力以下の場合は、APCバルブ244aが閉じていると判定する。この場合の所定の圧力とは例えば、0.1Pa~1Pa程度の圧力である。
【0082】
(v)排気管231aに設けられたAPCバルブ244aについて、バルブ固着が生じると、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したと判定する。バルブ固着の有無は、例えば、上述したバルブ開度不良の場合と同様に判定するか、または、APCバルブ244aの作動状態を監視しつつ、そのAPCバルブ244aからのアラーム信号等を検出することで、判定を行うようにすればよい。
【0083】
以上のような(i)~(v)の少なくとも一つに該当すると、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したと判定する。そして、排気管231aが所定の状態に遷移したことを検出すると、コントローラ121は、ガスの流れを変更するライン変更処理(以下、第1のライン変更処理という。)を行う。第1のライン変更処理は、ウエハ200に対して供給された原料ガスを、第1排気ラインとしての排気管231aではなく、第2排気ラインとしての排気管231bを介して、真空ポンプ246bに向けて排気する処理である。つまり、第1のライン変更処理は、第1排気系よる排気を、第2排気系よる排気に切り替える処理である。
【0084】
具体的には、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したことを検出すると、
図5(b)に示すように、APCバルブ244aを全閉の状態としつつ、APCバルブ244bを開いた状態とするように、それぞれの動作を制御する。このとき、バイパスライン233における各バルブ244c,244dは、全閉の状態のままとする。
【0085】
このようなバルブ制御動作により、ウエハ200に対して供給された原料ガスは、真空ポンプ246bの作動により、第2排気ラインとしての排気管231bを通じて、第2排気系によって排気されることになる。
【0086】
したがって、排気管231aが所定の状態に遷移した場合(例えば、排気量が低下した場合)であっても、第1排気系から第2排気系へ排気経路を切り替えることにより、処理室201内では、所望の成膜条件に近い雰囲気を構築することができ、ウエハ200上に成膜した膜の特性悪化が生じてしまうのを抑制することができる。
【0087】
具体的には、例えば、真空ポンプ246aが故障し停止したときに出すアラーム信号を検知することで、デュアルポンプ仕様において片側のポンプが故障した場合は残りのポンプのみで成膜を続けることが可能となり、その結果として製品ロットアウトを防止することができる。つまり、例えば突発的なポンプ故障等があっても、これに応じて排気ラインを自動的に切り替えることで、ウエハ200に対する処理を続行することが可能となるのである。
【0088】
(バイパスライン使用時)
上述した基板処理工程の成膜ステップにおけるステップ1Aが終了し、原料ガスが処理室201内を流れていないときには、
図6(a)に示すように、排気管231aに対して、バイパスライン233から所定ガスとしての原料ガスを供給するようにしてもよい。具体的には、コントローラ121は、APCバルブ244aを全閉(フルクローズ)の状態(図中における黒丸の状態)としつつ、バイパスライン233におけるバルブ244cを開いた状態(図中における白丸の状態)とする。また、コントローラ121は、APCバルブ244bおよびバイパスライン233におけるバルブ244dについても、全閉(フルクローズ)の状態とする。また、第1ガス供給ラインに接続された配管248aに設けられたバルブ248bを開けた状態とする。これにより、第1ガス供給ライン内に存在する原料ガスを、配管248aを介してバイパスライン233に原料ガスを排気することができる。バイパスライン233に排気された原料ガスは、排気管231aから、ポンプ246aに排気される。
【0089】
このときも、コントローラ121は、上述した通常運用時の場合と同様に、排気管231aが所定の状態に遷移したことを検出すると、ガスの流れを変更するライン変更処理(以下、第2のライン変更処理という。)を行う。第2のライン変更処理は、第1ガス供給ライン内の原料ガスを、第1排気ラインとしての排気管231aではなく、バイパスライン233および第2排気ラインとしての排気管231bを介して、真空ポンプ246bに向けて排気する処理である。つまり、第2のライン変更処理は、第1排気系よる排気を、バイパスライン233を利用しつつ第2排気系よる排気に切り替える処理である。
【0090】
具体的には、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したことを検出すると、
図6(b)に示すように、バイパスライン233におけるバルブ244cを全閉の状態としつつ、バイパスライン233におけるバルブ244dを開いた状態とするように、それぞれの動作を制御する。このとき、APCバルブ244a,244bは、全閉の状態のままとする。
【0091】
このようなバルブ制御動作により、第1ガス供給ライン内の原料ガスは、真空ポンプ246bの作動により、バイパスライン233および第2排気ラインとしての排気管231bを通じて、第2排気系によって排気されることになる。
【0092】
したがって、排気管231aが所定の状態に遷移した場合(例えば、排気量が低下した場合)であっても、排気経路を切り替えることにより、第1ガス供給ライン内に存在する、原料ガスや、特性が変化した原料ガスを、処理室201を介することなく、バイパスライン233および排気管231bを通じて排気することが可能となる。これにより、特性が変化した原料ガスを処理室201へ供給することを抑制でき、所望の成膜条件に近い雰囲気を構築して、成膜した膜の特性悪化を抑制する上で、非常に有効となる。なお、ここで、特性(性質)が変化した原料ガスとは、一部が分解したガス、凝集したガス、原料の濃度の異なるガス、圧力が異なるガス、の少なくとも1つ以上を意味する。
【0093】
(第1のライン変更処理と第2のライン変更処理との関係)
上述したように、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したことを検出すると、処理室201内でウエハ200を処理している間は第1のライン変更処理を行い、その第1のライン変更処理の後に第2のライン変更処理を行うように、APCバルブ244a,244bおよびバルブ244c,244dの開閉動作を制御する。つまり、排気管231aが所定の状態に遷移すると、成膜処理中においては原料ガスを第2排気ラインとしての排気管231bから排気し、成膜後のバイパスラインパージにおいては原料ガスを含む残留ガスをバイパスライン233から排気管231bへの経路で排気する。
【0094】
このように、第1のライン変更処理の後に第2のライン変更処理を行うようにすれば、バイパスライン233内のガス排気を成膜後に行うことになるので、成膜処理中における処理環境の急激な変化を抑制することができる。処理環境の急激な変化とは、バイパスライン233を介して排気管231aに排気した原料ガスが、何らかの原因で、処理室201方向に逆流してしまうことや、排気管231a内に想定外の状態の原料ガスが入りこみ成膜処理に影響を与えること等を意味する。したがって、処理室201内で処理するウエハ200について、そのウエハ200毎(バッチ毎)の処理均一性を向上させることができる。
【0095】
(装置メンテナンス前)
本実施形態に係る基板処理装置においては、上述した基板処理工程を実行していないタイミングで、装置メンテナンス(例えば、ポンプ、バルブ、配管等の交換)を行うことがある。装置メンテナンスを行うためには、その前に、第1排気ラインとしての排気管231aにおける残留ガスを排気する必要が生じる。
【0096】
そのため、コントローラ121は、装置メンテナンス前において、排気管231aが所定の状態に遷移したことを検出すると、以下のような制御処理を行う。すなわち、処理室201内でのウエハ200の処理が行われていないとき、コントローラ121は、ガスの流れを変更するライン変更処理(以下、第3のライン変更処理という。)を行う。第3のライン変更処理は、第1排気ラインとしての排気管231a内の雰囲気を、バイパスライン233を介して、第2排気ラインとしての排気管231bから排気する処理である。
【0097】
具体的には、コントローラ121は、処理室201内でのウエハ200の処理が行われていない装置メンテナンス前のタイミングで、
図7に示すように、バイパスライン233における各バルブ244c,244dを開けた状態とするように、それぞれの動作を制御する。このとき、APCバルブ244a,244bについては、閉じた状態とする。つまり、第3のライン変更処理では、APCバルブ244a,244bの両方を実質的に閉じた状態で、バイパスライン233における各バルブ244c,244dを開けた状態とする。
【0098】
このようなバルブ制御動作により、排気管231a内の雰囲気は、真空ポンプ246bの作動により、バイパスライン233および排気管231bを通じて、第2排気系によって排気されることになる。
【0099】
したがって、装置メンテナンス前において、排気管231aが所定の状態に遷移しても、排気経路を切り替えることにより、排気管231a内の雰囲気(例えば、残留原料ガス)を、処理室201を介することなく、バイパスライン233および排気管231bを通じて排気することが可能となる。つまり、排気管231a内で発生したパーティクルや、性質が変化してしまった原料ガス等が、処理室201内に入ってしまうことを抑制できる。そのため、処理室201内における処理環境の変化を抑制することができる。
【0100】
(状態遷移判定)
上述した第1のライン変更処理、第2のライン変更処理および第3のライン変更処理は、いずれも、排気管231aが所定の状態に遷移したことに応じて行う。そのために、コントローラ121は、排気管231aの状態を監視しつつ、排気管231aが所定の状態に遷移したか否かを判定する。かかる判定は、既述のように(i)~(v)の少なくとも一つに該当するか否かによって行うことが考えられるが、以下の説明のように行ってもよい。
【0101】
例えば、コントローラ121は、排気管231aの状態判定にあたり、不活性ガス供給系を構成する不活性ガス供給ラインとしてのガス供給管232c,232dから、処理室内201に不活性ガスとしての不活性ガスを供給する。そして、その不活性ガスを第1排気ラインである排気管231aから排気したときの当該排気管231a内の圧力状態を検出する。その結果、排気管231a内の圧力状態が、予め規定された正常状態から外れていると、排気管231aが所定の状態に遷移したと判定する。ここで、排気管231a内の圧力は、圧力計245と第1圧力計247aのいずれかまたは両方で測定される。
【0102】
つまり、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したか否かの判定を、不活性ガス供給ラインからの不活性ガスの供給を利用して行う。このように、不活性ガスの供給を利用して判定を行えば、原料ガスや反応体ガス等の処理ガスの供給途中で、第1のライン変更処理等が行われることがなく、その結果として想定外の成膜が行われることを回避することができる。
【0103】
また、例えば、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したか否かの判定を、第1ガス(原料ガス)の供給前に行うようにしてもよい。原料ガスの供給前には、基板処理工程における成膜ステップの開始前、複数回のサイクルを繰り返す途中での原料ガスの供給前等が含まれる。このように、原料ガスの供給前に判定を行えば、原料ガスの供給途中で第1のライン変更処理等が行われることがなく、その結果として想定外の成膜が行われることを回避することができる。
【0104】
また、例えば、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したか否かの判定を、第1ガス(原料ガス)の供給と、第2ガス(反応体ガス)の供給との間に行うようにしてもよい。このように、原料ガスの供給と反応体ガスの供給との間に判定を行えば、反応体ガスの供給途中で第1のライン変更処理等が行われることがなく、その結果として想定外の成膜が行われることを回避することができる。
【0105】
また、例えば、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したか否かの判定を、第2ガス(反応体ガス)の供給後に行うようにしてもよい。反応体ガスの供給後には、基板処理工程における成膜ステップの終了後、複数回のサイクルを繰り返す途中での反応体ガスの供給後(原料ガスの供給前)等が含まれる。このように、反応体ガスの供給後に判定を行えば、反応体ガスの供給途中で第1のライン変更処理等が行われることがなく、その結果として想定外の成膜が行われることを回避することができる。また、成膜処理後に判定することで、次のウエハ200への成膜処理を実行可能か否かを判別できるようになる。また、サイクル中の判定であれば、N番目のサイクルでライン変更処理が行われたという事実を容易に把握し得るようになる。
【0106】
(アラーム報知)
コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したことを検出すると、第1のライン変更処理等を行うが、その際にアラーム報知を行うようにしてもよい。つまり、コントローラ121は、排気管231aが所定の状態に遷移したことの検出に応じてアラーム報知を行うものであってもよい。
【0107】
アラーム報知は、状態遷移した旨の報知を行い得るものであれば、例えば、スピーカを利用した音出力、ライトを利用した光の表示出力、ディスプレイ画面を利用した文字や画像等による表示出力、通信回線を利用した上位装置等へのアラーム信号の出力等のいずれによるものであってもよい。
【0108】
このようなアラーム報知を行うことによって、その報知先となる基板処理装置の利用者は、基板処理が所望条件とは異なる条件で行われていることや、基板処理装置が異常状態であること等を、容易かつ的確に認識することができる。
【0109】
アラーム報知を行う場合に、コントローラ121は、そのアラーム報知を行った後、処理室201内のウエハ200に対する処理が終了するまで、当該処理を継続して行うようにしてもよい。さらに、コントローラ121は、処理室201内のウエハ200に対する処理の終了後、次の基板処理を開始させない状態とするようにしてもよい。つまり、コントローラ121は、アラーム報知に基づいて、継続中の処理は終了させるが、新たな処理は開始させずに、基板処理装置をレシピ開始前の状態で止めるホールド状態とするようにしてもよい。
【0110】
このように、アラーム報知に応じて基板処理装置をホールド状態とすれば、次の新たな処理を開始させずに止めることができ、所望条件とは異なる条件での基板処理が行われてしまうのを未然に防止することができる。
【0111】
また、アラーム報知を行う場合に、コントローラ121は、アラーム報知を行った旨の情報に加えて、そのアラーム報知がされた状態で処理されたウエハ200の情報を、通信回線を利用して上位装置(ホスト装置)へ送信可能に構成されていてもよい。このように、アラーム報知がされた状態で処理されたウエハ200の情報を送信可能にすれば、上位装置の側では、送信されたウエハ200の情報を基に、歩留まり悪化要因の特定が容易となる。
【0112】
なお、コントローラ121は、必ずしもアラーム報知の情報とウエハ200の情報との両方を送信するものである必要はなく、これらの少なくとも一方を上位装置へ送信可能に構成されたものであってもよい。その場合であっても、上位装置の側では、基板処理装置や処理ウエハ200の状態把握を行う上で有用な情報が得られるようになる。
【0113】
(4)本実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0114】
(a)本実施形態によれば、第1排気ラインとしての排気管231aが所定の状態に遷移したことを検出したとき、ウエハ200に対して供給された原料ガスを、第2排気ラインとしての排気管231bを介して排気する第1のライン変更処理を行う。したがって、排気管231aが所定の状態に遷移した場合であっても、第1排気系から第2排気系へ排気経路を切り替えることにより、処理室201内では、所望の成膜条件に近い雰囲気を構築することができ、ウエハ200上に成膜した膜の特性悪化が生じてしまうのを抑制することができる。具体的には、例えば突発的なポンプ故障等があっても、これに応じて排気ラインを自動的に切り替えることで、ウエハ200に対する処理を続行することが可能となる。
【0115】
(b)本実施形態によれば、第1排気ラインとしての排気管231aが所定の状態に遷移したことを検出したとき、第1ガス供給ラインに存在する原料ガスを、バイパスライン233および第2排気ラインとしての排気管231bを介して排気する第2のライン変更処理を行う。したがって、排気管231aが所定の状態に遷移した場合であっても、排気経路を切り替えることにより、第1ガス供給ライン内に存在する、特性が変化した原料ガスを、処理室201を介することなく、バイパスライン233および排気管231bを通じて排気することが可能となる。このことによっても、所望の成膜条件に近い雰囲気を構築して、成膜した膜の特性悪化を抑制する上で、非常に有効となる。
【0116】
(c)本実施形態によれば、処理室201内でウエハ200を処理している間は第1のライン変更処理を行い、その第1のライン変更処理の後に第2のライン変更処理を行う。したがって、バイパスライン233内のガス排気を成膜後に行うことになるので、成膜処理中における処理環境の急激な変化を抑制することができ、処理室201内で処理するウエハ200について、そのウエハ200毎(バッチ毎)の処理均一性を向上させることができる。
【0117】
(d)本実施形態によれば、処理室201内でのウエハ200の処理が行われていないとき、第1排気ラインとしての排気管231a内の雰囲気を、バイパスライン233を介して、第2排気ラインとしての排気管231bから排気する第3のライン変更処理を行う。したがって、装置メンテナンス前において、排気管231aが所定の状態に遷移しても、排気経路を切り替えることにより、排気管231a内の雰囲気(例えば、残留原料ガス)を、処理室201を介することなく、バイパスライン233および排気管231bを通じて排気することが可能となる。つまり、排気管231a内で発生したパーティクルや、性質が変化してしまった原料ガス等が処理室201内に入ってしまうことを抑制でき、その結果として処理室201内における処理環境の変化を抑制することができる。
【0118】
(e)本実施形態によれば、排気管231aの状態判定にあたり、不活性ガス供給ラインとしてのガス供給管232c,232dから処理室内201に不活性ガスとしての不活性ガスを供給し、その不活性ガスを排気管231aから排気したときの当該排気管231a内の圧力状態を検出することにより、排気管231aが所定の状態に遷移したか否かを判定する。このように、不活性ガスの供給を利用して排気管231aの状態判定を行えば、原料ガスや反応体ガス等の処理ガスの供給途中で、第1のライン変更処理等が行われることがなく、その結果として想定外の成膜が行われることを回避することができる。
【0119】
(f)本実施形態によれば、排気管231aが所定の状態に遷移したか否かの判定を、第1ガス(原料ガス)の供給前に行う。したがって、原料ガスの供給途中で第1のライン変更処理等が行われることがなく、その結果として想定外の成膜が行われることを回避することができる。
【0120】
(g)本実施形態によれば、排気管231aが所定の状態に遷移したか否かの判定を、第1ガス(原料ガス)の供給と、第2ガス(反応体ガス)の供給との間に行う。したがって、反応体ガスの供給途中で第1のライン変更処理等が行われることがなく、その結果として想定外の成膜が行われることを回避することができる。
【0121】
(h)本実施形態によれば、排気管231aが所定の状態に遷移したか否かの判定を、第2ガス(反応体ガス)の供給後に行う。したがって、反応体ガスの供給途中で第1のライン変更処理等が行われることがなく、その結果として想定外の成膜が行われることを回避することができる。また、成膜処理後に判定することで、次のウエハ200への成膜処理を実行可能か否かを判別できるようになる。また、サイクル中の判定であれば、N番目のサイクルでライン変更処理が行われたという事実を容易に把握し得るようになる。
【0122】
(i)本実施形態によれば、第1排気ラインとしての排気管231aが所定の状態に遷移したことの検出に応じてアラーム報知を行う。したがって、その報知先となる基板処理装置の利用者は、基板処理が所望条件とは異なる条件で行われていることや、基板処理装置が異常状態であること等を、容易かつ的確に認識することができる。
【0123】
(j)本実施形態によれば、アラーム報知を行った後、処理室201内のウエハ200に対する処理が終了するまで、当該処理を継続して行う。そして、処理室201内のウエハ200に対する処理の終了後、次の基板処理を開始させない状態とする。したがって、アラーム報知に基づいて、継続中の処理は終了させるが、新たな処理は開始させずに、基板処理装置をレシピ開始前の状態で止めるホールド状態とすることになり、所望条件とは異なる条件での基板処理が行われてしまうのを未然に防止することができる。
【0124】
(k)本実施形態によれば、アラーム報知の情報とアラーム報知がされた状態で処理されたウエハ200の情報とのいずれか一方または両方を上位装置に送信可能である。したがって、上位装置の側では、基板処理装置や処理ウエハ200の状態把握を行う上で有用な情報が得られ、特に、送信されたウエハ200の情報を基に、歩留まり悪化要因の特定が容易となる。
【0125】
(l)本実施形態において、第1ガスである原料ガスは、ウエハ200上に形成しようとする膜を構成する主元素を含むガスであり、具体的にはSi含有ガスであり、さらに具体的にはクロロシラン系ガス等のハロシラン系ガスである。また、第2ガスである反応体ガスは、ウエハ200上に形成しようとする膜を構成する主元素を含まないガスであり、具体的にはC含有ガス、O含有ガス、並びに、NおよびH含有ガスのうちの少なくともいずれかを含むものである。また、第2ガスである反応体ガスは、例えば、C含有ガス、O含有ガス、並びに、NおよびH含有ガスのいずれも含むものであってもよい。このような種類のガスを用いることによって、処理中に第1排気ラインとしての排気管231aが異常状態となるリスクがある。しかしながら、排気管231aが所定の状態に遷移すると第1のライン変更処理等を行うことで、第1排気ラインとしての排気管231aが異常状態になったとしても、ウエハ200に対する処理を続行することが可能となる。
【0126】
(m)本実施形態において、処理室201内には、Si含有ガス、C含有ガス、O含有ガス、並びに、NおよびH含有ガスのうちの少なくともいずれかが、間欠的かつ非同時に供給される。また、処理室201内には、Si含有ガス、C含有ガス、O含有ガス、並びに、NおよびH含有ガスのいずれも、間欠的かつ非同時に供給されることもある。このような処理は、処理時間が長くなる傾向があり、処理中に第1排気ラインとしての排気管231aが異常状態となるリスクがある。しかしながら、排気管231aが所定の状態に遷移すると第1のライン変更処理等を行うことで、第1排気ラインとしての排気管231aが異常状態になったとしても、ウエハ200に対する処理を続行することが可能となる。
【0127】
(5)変形例等
以上、本開示の一実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0128】
例えば、上述の実施形態においては、排気管231aが第1排気ラインであり、排気管231bが第2排気ラインであり、真空ポンプ246aが第1ポンプであり、真空ポンプ246bが第2ポンプである場合を例に挙げたが、これらの対応関係は逆であっても適用可能である。つまり、コントローラ121は、排気管231bが所定の状態に遷移したか否かを検出し、その結果に応じて排気系を切り替える制御を行うものであってもよい。
【0129】
また、第2ガスである反応体ガスとして酸素を含むガス(酸化剤)を加える場合がある。酸化剤としては、H2Oガスの他、過酸化水素(H2O2)ガス等のO-H結合を含むO含有ガスや、酸素(O2)ガス、オゾン(O3)ガス、水素(H2)ガス+O2ガス、H2ガス+O3ガス等のO-H結合を含まずO-O結合を含むO含有ガスを用いることができる。また、第2ガスである反応体ガスとして、触媒や炭素を含むガスを加える場合がある。このような触媒や、炭素を含むガスとしては、ピリジンガスの他、アミノピリジン(C5H6N2、pKa=6.89)ガス、ピコリン(C6H7N、pKa=6.07)ガス、ルチジン(C7H9N、pKa=6.96)ガス、ピペラジン(C4H10N2、pKa=9.80)ガス、ピペリジン(C5H11N、pKa=11.12)ガス等の環状アミン系ガスや、トリエチルアミン((C2H5)3N、略称:TEA、pKa=10.7)ガス、ジエチルアミン((C2H5)2NH、略称:DEA、pKa=10.9)ガス、モノエチルアミン((C2H5)NH2、略称:MEA、pKa=10.6)ガス、トリメチルアミン((CH3)3N、略称:TMA、pKa=9.8)ガス、ジメチルアミン((CH3)2NH、略称:DMA、pKa=10.8)ガス、モノメチルアミン((CH3)NH2、略称:MMA、pKa=10.6)ガス等の鎖状アミン系ガスを用いることができる。
【0130】
また、上述の実施形態においては、基板処理工程としてウエハ200上への成膜処理を行う場合を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、ガスの供給および排気を要する処理であれば、他の処理にも適用可能である。他の処理としては、例えば、拡散処理、酸化処理、窒化処理、酸窒化処理、還元処理、酸化還元処理、エッチング処理、加熱処理等が有る。
【0131】
また、上述の実施形態においては、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置にも好適に適用できる。さらに、上述の実施形態においては、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、例えば、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置にも好適に適用できる。
【符号の説明】
【0132】
121 コントローラ(制御部)
200 ウエハ(基板)
201 処理室
232a,232b ガス供給管
233 バイパスライン
231a,231b 排気管
244a,244b APCバルブ
244c,244d バルブ
246a,246b 真空ポンプ