IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

<>
  • 特許-排水システム 図1
  • 特許-排水システム 図2
  • 特許-排水システム 図3
  • 特許-排水システム 図4
  • 特許-排水システム 図5
  • 特許-排水システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】排水システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/22 20060101AFI20250324BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20250324BHJP
   F04D 29/60 20060101ALI20250324BHJP
【FI】
F04B53/22
C02F1/00 A
F04D29/60 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021131856
(22)【出願日】2021-08-13
(65)【公開番号】P2023026146
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2024-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘史
(72)【発明者】
【氏名】仙洞田 真二
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111102201(CN,A)
【文献】中国実用新案第209035950(CN,U)
【文献】中国実用新案第209230562(CN,U)
【文献】特開2017-122422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/00-53/22
F04C 2/00-29/12
F04D 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って延びるポンプ側回転軸を有するポンプと、
前記ポンプ側回転軸に接続される機器側回転軸を有する機器と、
前記ポンプの位置を基準として、前記第1方向に沿って延びるように設置されるレールと、
前記レール上に設置され、前記第1方向に沿って前記レール上を移動可能である台車と、
前記台車を前記レール上に固定するストッパと、
前記台車上に設置され、前記機器を懸垂支持するフレーム部材と、
前記フレーム部材に設けられ、前記フレーム部材に懸垂支持された前記機器の位置を、前記第1方向に沿って調整する第1位置調整機構と、
前記フレーム部材に設けられ、前記フレーム部材に懸垂支持された前記機器の位置を、前記第1方向と交差する第2方向に沿って調整する第2位置調整機構と、
前記フレーム部材に設けられ、前記フレーム部材に懸垂支持された前記機器の位置を、前記第1方向および前記第2方向のいずれとも交差する第3方向に沿って調整する第3位置調整機構と、
前記フレーム部材に固定可能に設けられ、前記機器を下側から支持するベース部材と、
を備えることを特徴とする排水システム。
【請求項2】
前記ベース部材を下側から支持するように前記フレーム部材に設けられる補助部材を備え、前記補助部材は、振動を吸収する素材で構成されている、請求項1に記載の排水システム。
【請求項3】
前記機器は、原動機または減速機である、請求項1または請求項2に記載の排水システム。
【請求項4】
排水システムにおいて実行される方法であって、
前記排水システムは、
第1方向に沿って延びるポンプ側回転軸を有するポンプと、
前記ポンプ側回転軸に接続される機器側回転軸を有する機器と、
前記ポンプの位置を基準として、前記第1方向に沿って延びるように設置されるレールと、
前記レール上に設置され、前記第1方向に沿って前記レール上を移動可能である台車と、
前記台車を前記レール上に固定するストッパと、
前記台車上に設置され、前記機器を懸垂支持するフレーム部材と、
前記フレーム部材に設けられ、前記フレーム部材に懸垂支持された前記機器の位置を、前記第1方向に沿って調整する第1位置調整機構と、
前記フレーム部材に設けられ、前記フレーム部材に懸垂支持された前記機器の位置を、前記第1方向と交差する第2方向に沿って調整する第2位置調整機構と、
前記フレーム部材に設けられ、前記フレーム部材に懸垂支持された前記機器の位置を、前記第1方向および前記第2方向のいずれとも交差する第3方向に沿って調整する第3位置調整機構と、
前記フレーム部材に固定可能に設けられ、前記機器を下側から支持するベース部材と、
を備え、
前記方法は、
前記ポンプの位置を基準として、前記第1方向に沿って延びるように前記レールを設置するステップと、
前記レール上に前記台車を設置し、前記第1方向に沿って前記レール上を移動させて、前記第1方向における前記機器の位置を粗調整し、前記台車を前記ストッパで前記レール上に固定するステップと、
前記第1位置調整機構を用いて、前記第1方向における前記機器の位置を微調整し、前記第2位置調整機構を用いて、前記第2方向における前記機器の位置を微調整し、前記第3位置調整機構を用いて、前記第3方向における前記機器の位置を微調整するステップと、
前記微調整を行った後に、前記ベース部材を前記フレーム部材に固定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
排水機場のポンプ設備は、主ポンプ、減速機、原動機、弁類、系統設備、電気設備など多数の機器を組み合わせることで構成されている。ポンプ設備を新設する場合、各機器は工場製作後、各々現地に搬入され、予め配置検討された通りに現地で据付されていくが、各機器を支持するための基礎コンクリートや鋼製架台の構築や、定められた精度で各機器同士を接続、調整する必要があり、各機器の搬入、据付、調整には相当な時間が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-231873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年、気候変動に伴い以前と比べ降雨量が増大し、排水機場の排水能力を超え、雨水を排水しきれずに河川の氾濫や都市の浸水被害が発生することが増えてきている。排水能力を増強するためには、既存設備より大型の排水ポンプ設備を設置する必要があるが、既存のスペースに既存ポンプより大きなポンプを配置することは容易ではない。また大型ポンプを設置した場合、ポンプ設備の整備時や故障時に排水能力が著しく低下するため、危険分散の観点においても課題がある。
【0005】
それらの課題に対し、既存ポンプ設備に比べて標準的に設計及び製作可能で既存ポンプ設備より小型のポンプ設備を、台数を増やして設けることにより、排水能力の増強、危険分散する方法が考えられる。しかし、既存設備の能力を維持しつつ、小型ポンプ設備を新設していくには、各機器の据付工数から考えると施工期間不足(非出水期期間に既存設備の撤去と複数台のポンプ設備の新設を行うことが困難)となり、施工期間の短縮が望まれる。また、既存ポンプ設備に小型ポンプ設備を増設する場合も考えられるが、限られた敷地内に吸込水槽などの土木構造を設けずに設置可能なポンプ設備も望まれる。
【0006】
既存ポンプ場を超える能力を排水能力を確保するために、標準的に設計、製作が可能な小型ポンプ設備を複数台新設していくには、施工期間の短縮が不可欠である。しかし、従来の方法では、各機器の位置調整、芯だし調整に時間がかかり施工期間不足に陥る可能性がある。そのため、簡単に短期間で位置調整、芯だし調整が可能なユニット構造が求められる。
【0007】
ユニット構造ではない一般的なポンプの据付方法では、配筋を構築し基礎コンクリートを打設した後、仮ライナーを使用し機器を設置、一次芯出しを行い、基礎ボルトを固定するが、その後、本ライナーを使用し二次芯出しを行い、基礎コンクリートの化粧仕上げを行う工程を経るため、施工期間が長くなるという課題がある。
【0008】
また一般的なユニット構造は、工場などで据付調整されたものがユニットとなり現地に搬入されるため、ポンプ他各機器の位置調整、水平度、芯だしにトラッククレーンを使用した場合、長期間にレンタルする必要があり経済性に劣る。また、ユニット内に天井クレーンを設置し、位置調整、水平度、芯だしも可能であるがユニット内のスペースが狭く天井クレーンが設置できない、またはユニット本体の強度を増す必要がありユニット構造が複雑になる。また、機器が故障した場合、短期間での交換が困難であり、機器を小型化、標準化したメリットが失われる。また、ユニット設置後に不同沈下により機器の傾きが生じた場合、多大な費用と工事期間が必要となる。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、短期間で位置調整や芯だし作業が可能であり、短期間で機器の据付が可能であって、据付にトラッククレーンなどの重機が必要なく、不同沈下により機器の傾きが生じた場合でも工期を短縮でき工事費を削減することのできる排水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の排水システムは、第1方向に沿って延びるポンプ側回転軸を有するポンプと、前記ポンプ側回転軸に接続される機器側回転軸を有する機器と、前記ポンプの位置を基準として、前記第1方向に沿って延びるように設置されるレールと、前記レール上に設置され、前記第1方向に沿って前記レール上を移動可能である台車と、前記台車を前記レール上に固定するストッパと、前記台車上に設置され、前記機器を懸垂支持するフレーム部材と、前記フレーム部材に設けられ、前記フレーム部材に懸垂支持された前記機器の位置を、前記第1方向に沿って調整する第1位置調整機構と、前記フレーム部材に設けられ、前記フレーム部材に懸垂支持された前記機器の位置を、前記第1方向と交差する第2方向に沿って調整する第2位置調整機構と、前記フレーム部材に設けられ、前記フレーム部材に懸垂支持された前記機器の位置を、前記第1方向および前記第2方向のいずれとも交差する第3方向に沿って調整する第3位置調整機構と、前記フレーム部材に固定可能に設けられ、前記機器を下側から支持するベース部材と、を備えている。
【0011】
この構成によれば、レール上に設置した台車を第1方向に沿って移動させることにより、第1方向における機器の位置が粗調整される。その後、第1位置調整機構を用いて、第1方向における機器の位置が微調整され、第2位置調整機構を用いて、第2方向における機器の位置が微調整され、第3位置調整機構を用いて、第3方向における機器の位置が微調整される。これにより、ポンプと機器との位置合わせ(ポンプ側回転軸と機器側回転軸との軸あわせ)を容易に行うことが可能になる。したがって、短期間で機器の位置調整や芯だし作業が可能であり、短期間で機器の据付が可能である。また、機器の据付にトラッククレーンなどの重機が必要ない。さらに、不同沈下により機器の傾きが生じた場合でも工期を短縮でき工事費を削減することができる。
【0012】
また、本発明の排水システムは、前記ベース部材を下側から支持するように前記フレーム部材に設けられる補助部材を備え、前記補助部材は、振動を吸収する素材で構成されてもよい。
【0013】
この構成によれば、ベース部材を支持する補助部材が設けられているので、懸垂支持された機器が落下するのを防止することができる。また、機器で振動が発生する場合であっても、補助部材によってその振動を吸収することができる。
【0014】
また、本発明の排水システムでは、前記機器は、原動機または減速機であってもよい。
【0015】
この構成によれば、ポンプと原動機との位置合わせ(ポンプの入力軸と原動機の出力軸との軸あわせ)、または、ポンプと減速機との位置合わせ(ポンプの入力軸と減速機の出力軸との軸あわせ)を容易に行うことが可能になる。
【0016】
本発明の方法は、排水システムにおいて実行される方法であって、前記排水システムは、第1方向に沿って延びるポンプ側回転軸を有するポンプと、前記ポンプ側回転軸に接続される機器側回転軸を有する機器と、前記ポンプの位置を基準として、前記第1方向に沿って延びるように設置されるレールと、前記レール上に設置され、前記第1方向に沿って前記レール上を移動可能である台車と、前記台車を前記レール上に固定するストッパと、前記台車上に設置され、前記機器を懸垂支持するフレーム部材と、前記フレーム部材に設けられ、前記フレーム部材に懸垂支持された前記機器の位置を、前記第1方向に沿って調整する第1位置調整機構と、前記フレーム部材に設けられ、前記フレーム部材に懸垂支持された前記機器の位置を、前記第1方向と交差する第2方向に沿って調整する第2位置調整機構と、前記フレーム部材に設けられ、前記フレーム部材に懸垂支持された前記機器の位置を、前記第1方向および前記第2方向のいずれとも交差する第3方向に沿って調整する第3位置調整機構と、前記フレーム部材に固定可能に設けられ、前記機器を下側から支持するベース部材と、を備え、前記方法は、前記ポンプの位置を基準として、前記第1方向に沿って延びるように前記レールを設置するステップと、前記レール上に前記台車を設置し、前記第1方向に沿って前記レール上を移動させて、前記第1方向における前記機器の位置を粗調整し、前記台車を前記ストッパで前記レール上に固定するステップと、前記第1位置調整機構を用いて、前記第1方向における前記機器の位置を微調整し、前記第2位置調整機構を用いて、前記第2方向における前記機器の位置を微調整し、前記第3位置調整機構を用いて、前記第3方向における前記機器の位置を微調整するステップと、前記微調整を行った後に、前記ベース部材を前記フレーム部材に固定するステップと、を含んでいる。
【0017】
この方法によっても、上記のシステムと同様、レール上に設置した台車を第1方向に沿って移動させることにより、第1方向における機器の位置が粗調整される。その後、第1位置調整機構を用いて、第1方向における機器の位置が微調整され、第2位置調整機構を用いて、第2方向における機器の位置が微調整され、第3位置調整機構を用いて、第3方向における機器の位置が微調整される。これにより、ポンプと機器との位置合わせ(ポンプ側回転軸と機器側回転軸との軸あわせ)を容易に行うことが可能になる。したがって、短期間で機器の位置調整や芯だし作業が可能であり、短期間で機器の据付が可能である。また、機器の据付にトラッククレーンなどの重機が必要ない。さらに、不同沈下により機器の傾きが生じた場合でも工期を短縮でき工事費を削減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、短期間で位置調整や芯だし作業が可能であり、短期間で機器の据付が可能であって、据付にトラッククレーンなどの重機が必要なく、不同沈下により機器の傾きが生じた場合でも工期を短縮でき工事費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態における排水システムの構成を示す説明図である。
図2】排水システムの据付手順(レール設置)の説明図である。
図3】排水システムの据付手順(台車設置)の説明図である。
図4】排水システムの据付手順(台車移動)の説明図である。
図5】排水システムの据付手順(X方向とY方向の位置調整)の説明図である。
図6】排水システムの据付手順(X方向とZ方向の位置調整)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の排水システムについて、図面を用いて説明する。本実施の形態では、排水機場のポンプ設備として用いられる排水システムの場合を例示する。
【0021】
本実施の形態の排水システムの構成を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の排水システムの構成を示す説明図である。図1に示すように、排水システム1は、ポンプ2と、ポンプ2に接続される原動機3とを備えている。ポンプ2の内部には、原動機3から回転駆動力が伝達されて回転するインペラ(図示せず)が設けられおり、原動機3の出力軸30が、ポンプ2の入力軸20に接続されている。なお、本実施の形態では、ポンプ2の入力軸20が延びる方向(図1における左右方向)をX方向と呼び、X方向に直交する奥行方向(図1における紙面方向)をY方向と呼び、X方向とY方向に直交する高さ方向(図1における上下方向)をZ方向と呼ぶ(図5および図6も参照)。
【0022】
また、排水システム1は、ポンプ2の位置を基準として設置されるレール4と、レール4上に設置される台車5と、台車5をレール4上に固定するストッパ40を備えている。レール4は、ポンプ2を起点としてX方向に沿って延びるように設置され、台車5は、X方向に沿ってレール4上を移動可能である。
【0023】
台車5の上には、原動機3を懸垂支持するフレーム部材6が設けれている。フレーム部材6は、正面視でゲート形状をしている前後一対(図1における左右一対)の門型部材60と、一対の門型部材60の上部においてX方向に差し渡される補強部材61とで構成されている。
【0024】
フレーム部材6には、フレーム部材6に懸垂支持された原動機3の位置を、X方向に沿って調整する第1位置調整機構7と、Y方向に沿って調整する第2位置調整機構8と、Z方向に沿って調整する第3位置調整機構9が設けられている。
【0025】
例えば、第1位置調整機構7は、フレーム部材6の上をX方向にスライド可能な1つの梁部材70で構成される。原動機3は、この梁部材70に支持体71を介して懸垂支持されており、梁部材70をX方向にスライドすることにより、原動機3をX方向にスライドすることができる(図5および図6参照)。
【0026】
また、第2位置調整機構8は、フレーム部材6の上をY方向にスライド可能な2つの梁部材80で構成される。2つの梁部材80は、それぞれ別々にY方向にスライド可能である。したがって、2つの梁部材80をそれぞれ別々にY方向にスライドすることにより、原動機3の幅にあわせて2つの梁部材80の間隔を調整することができる(図5参照)。また、原動機3は、2つの梁部材80にそれぞれ支持体81を介して懸垂支持されており、2つの梁部材80を一緒にY方向にスライドさせることにより、原動機3をY方向にスライドすることができる(図5参照)。本実施の形態では、1つの梁部材80に、2本の支持体81が設けられている。したがって、原動機3は、4本の支持体81によって懸垂支持されている。
【0027】
また、第3位置調整機構9は、原動機3を懸垂支持する支持体81に設けられる長さ伸縮機構で構成される。支持体81に設けられた長さ伸縮機構によって、支持体81の長さを調整することができる。原動機3を懸垂支持する支持体81の長さを変えることにより、原動機3をZ方向にスライドさせることができる。さらに、本実施の形態では、4本の支持体81のそれぞれの長さを変えることにより、横断方向でみた場合(ポンプ2から原動機3を正面にみた場合)の機器の傾きや、断面方向でみた場合(図1の紙面に垂直な方向でみた場合)の機器の傾きを調整することができる。
【0028】
また、排水システム1は、原動機3を下側から支持するベース部材10と、ベース部材10を下側から支持する補助部材11を備えている。ベース部材10は、原動機3を下側から支持した状態で、第2位置調整機構8の支持体81によって懸垂支持されている。また、ベース部材10は、フレーム部材6に対してボルトなど(図示せず)で固定可能である。補助部材11は、振動を吸収する素材で構成されている。なお、振動を吸収する素材としては、公知の素材を利用することができる。
【0029】
以上のように構成された排水システム1について、図面を参照してその据付手順を説明する。
【0030】
本実施の形態の排水システム1を据付する場合には、まず、図2に示すように、ポンプ2の位置を基準として、X方向に沿って延びるようにレール4を設置する。次に、図3に示すように、レール4上に台車5を設置する。そして、台車5の上にフレーム部材6を設置し、フレーム部材6に懸垂支持されるベース部材10に原動機3を設置する。このとき、原動機3の位置(X方向、Y方向、Z方向の位置)は、設計図等に基づいて定められた所定の位置に調整されている。その後、図4に示すように、X方向に沿ってレール4上を移動させて、X方向における原動機3の位置を粗調整し、台車5をストッパ40でレール4上に固定する。
【0031】
そして、図5および図6に示すように、第1位置調整機構7を用いて、X方向における原動機3の位置を微調整するとともに、第2位置調整機構8を用いて、Y方向における原動機3の位置を微調整する。また、第3位置調整機構9を用いて、Z方向における原動機3の位置を微調整する。このような微調整を行った後、ベース部材10をフレーム部材6に固定する(図1参照)。
【0032】
このような本実施の形態の排水システム1によれば、レール4上に設置した台車5をX方向に沿って移動させることにより、X方向における原動機3の位置が粗調整される。その後、第1位置調整機構7を用いて、X方向における原動機3の位置が微調整され、第2位置調整機構8を用いて、Y方向における原動機3の位置が微調整され、第3位置調整機構9を用いて、Z方向における原動機3の位置が微調整される。
【0033】
これにより、ポンプ2と原動機3との位置合わせ(ポンプ2の入力軸20と原動機3の出力軸30との軸あわせ)を容易に行うことが可能になる。したがって、短期間で原動機3の位置調整や芯だし作業が可能であり、短期間で原動機3の据付が可能である。また、原動機3の据付にトラッククレーンなどの重機が必要ない。さらに、不同沈下により原動機3の傾きが生じた場合でも工期を短縮でき工事費を削減することができる。
【0034】
この場合、レール4と台車5を用いているので、狭所への搬出入も容易である。さらに、原動機3がフレーム部材6に懸垂支持されているので、原動機3の下側からのメンテナンス作業も容易である。
【0035】
また、本実施の形態では、ベース部材10を支持する補助部材11が設けられているので、懸垂支持された原動機3が落下するのを防止することができる。また、原動機3で振動が発生する場合であっても、補助部材11によってその振動を吸収することができる。
【0036】
また、原動機3の更新などにより既設機器から外形寸法が変更された場合であっても、第2位置調整機構8の幅を調整することで、機器(外形寸法が変更された機器)の据付が可能になる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0038】
例えば、以上の説明では、ポンプ2と原動機3の位置合わせ(ポンプ2の入力軸20と原動機3の出力軸30との軸あわせ)を行う場合について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されない。図示は省略するが、ポンプと減速機の位置合わせ(ポンプの入力軸と減速機の出力軸との軸あわせ)を行う場合についても、同様に実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる排水システムは、短期間で位置調整や芯だし作業が可能であり、短期間で機器の据付が可能であって、据付にトラッククレーンなどの重機が必要なく、不同沈下により機器の傾きが生じた場合でも工期を短縮でき工事費を削減することができるという効果を有し、排水機場のポンプ設備等として用いられ、有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 排水システム
2 ポンプ
3 原動機(機器)
4 レール
5 台車
6 フレーム部材
7 第1位置調整機構
8 第2位置調整機構
9 第3位置調整機構
10 ベース部材
11 補助部材
20 入力軸(ポンプ側回転軸)
30 出力軸(機器側回転軸)
40 ストッパ
60 門型部材
61 補強部材
70 梁部材
71 支持体
80 梁部材
81 支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6