(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-21
(45)【発行日】2025-03-31
(54)【発明の名称】非対称線状カーボネートおよび非対称線状カーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 68/06 20200101AFI20250324BHJP
C07C 69/96 20060101ALI20250324BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20250324BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250324BHJP
【FI】
C07C68/06
C07C69/96 Z
B01J31/02 101Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2023548962
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 KR2022018473
(87)【国際公開番号】W WO2023096301
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】10-2021-0162578
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0154684
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チュン-ポム
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン-チョル
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-143747(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107394270(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103633369(CN,A)
【文献】特開平10-338663(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107445836(CN,A)
【文献】特開2017-101023(JP,A)
【文献】特開平9-239270(JP,A)
【文献】特開2000-281630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 68/06- 68/065
C07C 69/96
B01J 21/00- 38/74
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属アルコキシド触媒下で、異なる2種の対称線状カーボネートをエステル交換反応させて非対称線状カーボネートを製造する段階を含み、
前記金属アルコキシド触媒の金属は、アルミニウム(Al)および/またはマグネシウム(Mg)であり、
前記異なる2種の対称線状カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート及びジブチルカーボネートからなる群から選択された2種である、非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項2】
前記異なる2種の対称線状カーボネートは、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートであり、
前記非対称線状カーボネートは、エチルメチルカーボネートである、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法
。
【請求項3】
前記エステル交換反応は、無溶媒工程で行われる、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記金属アルコキシド触媒は、下記化学式1で表される、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法:
[化学式1]
(XO-R)
a
前記化学式1中、
Xは、アルミニウム(Al)および/またはマグネシウム(Mg)であり、
Rは、炭素数1~10のアルキル基であり、
aは、2以上の整数である。
【請求項5】
前記金属アルコキシド触媒は、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムtert-ブトキシド、マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド、マグネシウムtert-ブトキシドおよびカルシウムメトキシドからなる群から選択された一つ以上である、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項6】
前記金属アルコキシド触媒の含有量は、前記異なる2種の対称線状カーボネート100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下である、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記エステル交換反応は、70℃以上150℃以下の温度で行われる、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項8】
前記ジメチルカーボネートおよび前記ジエチルカーボネートのモル比は、1:0.5~1:1.5である、請求項2に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項9】
前記非対称線状カーボネートを回収する段階をさらに含む、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年11月23日付の韓国特許出願第10-2021-0162578号および2022年11月17日付の韓国特許出願第10-2022-0154684号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、非対称線状カーボネートおよび非対称線状カーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオンバッテリーの液溶媒は、リチウムイオンがよく溶け、移動がスムーズでなければならないため、塩に対する高い溶解度と低い粘度が要求される。そこで、塩をよく溶解する環状カーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボーネイトなど)と低い粘度を有する線状カーボネート(エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボーネイトなど)を混合して使用する。
【0004】
特に非対称線状カーボネートであるエチルメチルカーボネート(EMC)は、他の溶媒と比較して、エネルギー貯蔵密度、充電容量、充放電回数、安定性などに優れて、最も好まれる溶媒である。
【0005】
このようなエチルメチルカーボネートを製造する方法としては、塩基性触媒の存在下でアルキルクロロホルメート(alkyl chloroformate)およびアルコールのエステル反応を利用する方法があるが、前記方法はエステル反応が非常に激しく、ホスゲンとビスフェノール-Aなどの猛毒性化合物を出発物質として使用しなければならない問題点がある。
【0006】
かかる問題点を補完するために、対称線状カーボネートとアルコールのエステル交換反応を利用する方法があるが、3種の線状カーボネートおよび2種のアルコールを含む反応生成物から最終目的化合物は、エチルメチルカーボーネイトなどの非対称線状カーボネートを複雑な工程で分離精製しなければならないという問題点がある。
【0007】
従って、高付加価値のエチルメチルカーボネートを最終的に分離精製し易いように製造する方法の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、エステル交換反応の工程が無溶媒(Sovent Free)工程で進行可能であり、これにより最終反応物から高付加価値の非対称線状カーボネートを分離精製し易い非対称線状カーボネートの製造方法と、このような製造方法で製造された高純度の非対称線状カーボネートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、金属アルコキシド触媒下で、異なる2種の対称線状カーボネートをエステル交換反応させて非対称線状カーボネートを製造する段階;を含み、前記金属アルコキシドの金属は、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、コバルト(Co)、カルシウム(Ca)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、レニウム(Re)、スカンジウム(Sc)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)およびバナジウム(V)からなる群から選択された一つ以上の非対称線状カーボネートの製造方法を提供する。
【0010】
また、本明細書では、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、コバルト(Co)、カルシウム(Ca)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、レニウム(Re)、スカンジウム(Sc)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)およびバナジウム(V)からなる群から選択された一つ以上の金属を含む金属アルコキシド触媒を含む非対称線状カーボネートを提供する。
【0011】
以下、発明の具体的な実現例に係る非対称線状カーボネートおよび非対称線状カーボネートの製造方法についてより詳細に説明する。
【0012】
但し、これは発明の一例として提示されるものであり、これによって発明の権利範囲が限定されるものではなく、発明の権利範囲内で実現例に対する様々な変形が可能であることは、当業者に自明である。
【0013】
本明細書において、明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0014】
本明細書において使用される単数形は、文言が明らかに反対の意味を示さない限り複数形も含む。
【0015】
本明細書において使用される「含む」の意味は、特定特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化するものであり、他の特定特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を排除するものではない。
【0016】
また、本明細書において記述する製造方法を構成する段階は、順次または連続的であることを明示したり、他の特別な言及がある場合でなければ、一つの製造方法を構成する一つの段階と他の段階が明細書上に記述された順序に制限されて解釈されない。従って、当業者が容易に理解できる範囲内で、製造方法の構成段階の順序を変化させることができ、この場合、それに付随する当業者に自明な変化は、本発明の範囲に含まれるものである。
【0017】
発明の一実現例によれば、金属アルコキシド触媒下で、異なる2種の対称線状カーボネートをエステル交換反応させて非対称線状カーボネートを製造する段階;を含み、前記金属アルコキシドの金属は、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、コバルト(Co)、カルシウム(Ca)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、レニウム(Re)、スカンジウム(Sc)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)およびバナジウム(V)からなる群から選択された一つ以上の非対称線状カーボネートの製造方法を提供する。
【0018】
本発明者らは、エチルメチルカーボーネイトなどの対称線状カーボネートの製造方法に関する研究を進め、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、コバルト(Co)、カルシウム(Ca)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、レニウム(Re)、スカンジウム(Sc)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)およびバナジウム(V)からなる群から選択された一つ以上の金属を含む金属アルコキシド触媒下で、異なる2種の対称線状カーボネートをエステル交換反応させて非対称線状カーボネートを製造する場合、無溶媒(Sovent Free)工程でエステル交換反応が行われて非対称線状カーボネートが多量に生成され、最終反応物に異なる2種の対称線状カーボネートおよび非対称線状カーボネートを含む3種の線状カーボネートが大部分含まれており、このことから前記非対称線状カーボネートの分離精製が容易であることを実験を通じて確認し、本発明を確認した。
【0019】
一方、リチウムおよびナトリウムなどのアルカリ金属を含む金属アルコキシド触媒下でエステル交換反応が行われる場合、最終生成物には3種の線形カーボーネイトの他にもメタノールおよびエタノールなどの2種以上のアルコール溶媒が追加的に形成され、最終目的とする化合物である非対称線状カーボネートをより複雑な工程で分離精製しなければならないという問題がある。
【0020】
しかし、前記一実現例に係る非対称線状カーボネートの製造方法で使用される金属アルコキシド触媒は、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、コバルト(Co)、カルシウム(Ca)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、レニウム(Re)、スカンジウム(Sc)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)およびバナジウム(V)からなる群から選択された一つ以上の金属で含まれ、このような金属アルコキシド触媒下でエステル交換反応が行われる。
【0021】
従来のリチウムおよびナトリウムなどのアルカリ金属を含む金属アルコキシド触媒の場合、例えばナトリウムエトキシド(sodium ethoxide)の場合、エタノールのような極性(polar)溶媒なしでは非極性(non-polar)溶媒に溶解しないため、エステル交換反応進行時にエタノールなどの極性溶媒が必須に必要である。
【0022】
一方、前記一実現例に係る非対称線状カーボネートの製造方法に使用される金属アルコキシド触媒の場合、例えばアルミニウムエトキシドまたはマグネシウムエトキシドなどの場合には、ジメチルカーボネート(DMC)およびジエチルカーボネート(DEC)のような線状カーボネートにも容易に溶解するため、エタノールなどの極性溶媒が不要であるため、最終的な反応生成物に前記ナトリウムエトキシドなどを使用する場合に比べてメタノールおよびエタノールなどのアルコール溶媒が顕著に少なく含まれ、最終的な反応生成物から容易に非対称線状カーボネートを分離精製することができる。
【0023】
具体的に、前記一実現例において非対称線状カーボネートの製造方法は、前記異なる2種の対称線状カーボネートをエステル交換反応させて非対称線状カーボネートを製造することができる。
【0024】
前記異なる2種の対称線状カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートおよびジブチルカーボネートからなる群から選択された2種であってもよく、例えば、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボーネイトであってもよい。
【0025】
また、前記非対称線状カーボネートは、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、ブチルエチルカーボネートまたはブチルプロピルカーボーネイトであってもよい。
【0026】
また、前記エステル交換反応は、前記金属アルコキシド触媒下で行われるため、無溶媒工程で進行することができる。これにより、最終反応物に他の溶媒が殆ど含まれず、異なる2種の対称線状カーボネートと反応物である非対称線状カーボネートが大部分含まれ、このような最終反応物から非対称線状カーボネートの分離精製が容易に行われる。
【0027】
特に、前記非対称線状カーボネートの製造方法は、最終反応物に共沸の高いアルコールが含まれる割合が低く、後続工程で蒸留を通じて非対称線状カーボネートの回収が容易になり得る。
【0028】
前記金属アルコキシド触媒は、下記化学式1で表すことができる。
【0029】
[化学式1]
(XO-R)a
【0030】
前記化学式1中、
Xは、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、コバルト(Co)、カルシウム(Ca)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、レニウム(Re)、スカンジウム(Sc)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)およびバナジウム(V)からなる群から選択されたいずれかであり、
Rは、炭素数1~10のアルキル基であり、
aは、2以上の整数であってもよい。
【0031】
また、Rは、エチル、メチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチルまたはsec-ペンチルであってもよい。
【0032】
または、aは、2以上10以下の整数であってもよい。
【0033】
前記金属アルコキシド触媒の一実施例として、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムtert-ブトキシド、マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド、マグネシウムtert-ブトキシドおよびカルシウムメトキシドからなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0034】
前記金属アルコキシド触媒は、前記異なる2種の対称線状カーボネート100重量部に対して、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.5重量部以上で含まれ、10.0重量部以下、8.0重量部以下、6.0重量部以下、5.0重量部以下で含まれることができる。
【0035】
前記金属アルコキシド触媒の含有量が、10.0重量部を超えても反応が追加的に活性化されず非経済的および非効率的であり、前記ヘテロ環構造の塩基触媒の含有量が少な過ぎるとエステル交換反応速度が低下し得る。
【0036】
一方、前記非対称線状カーボネートの製造方法において、前記異なる2種の対称線状カーボネートは、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボーネイトであってもよく、前記ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートのモル比は、1:0.5~1:1.5、1:0.7~1:1.3、1:0.9~1:1.1であってもよい。前記ジメチルカーボネート対比ジエチルカーボネートの含有量が少な過ぎたり多過ぎたりすると、最終製造されるエチルメチルカーボネートへの転換率が顕著に少なくなり得る。
【0037】
前記一実現例の非対称線状カーボネートの製造方法において、前記エステル交換反応は、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上の温度で行われてもよく、150℃以下、140℃以下、130℃以下の温度で行われてもよい。
【0038】
また、前記エステル交換反応は、1時間以上、2時間以上、3時間以上の間進行されてもよく、12時間以下、11時間以下、10時間以下、8時間の間進行されてもよい。
【0039】
また、前記エステル交換反応は、1気圧以上、2気圧以上、3気圧以上の気圧条件で行われてもよく、10気圧以下、9気圧以下、8気圧以下、7気圧以下の気圧条件で行われてもよい。
【0040】
また、前記一実現例に係る非対称線形エステル製造方法は、前記非対称線状カーボネートを回収する段階をさらに含むことができる。
【0041】
前記エステル交換反応が完了した後、反応生成物には、好ましくは3種の線状カーボネートが存在することができ、例えば異なる2種の対称線状カーボネートと、非対称線状カーボネートを含むことができる。また、前記反応生成物には、アルコール溶媒が顕著に少なく含まれ、最終的な反応生成物から容易に非対称線状カーボネートを分離精製することができる。
【0042】
例えば、前記非対称線状カーボネートは、常圧または減圧蒸留法で、反応生成物から分離することができる。即ち、反応生成物を常圧または減圧蒸留させると、沸点が低い化合物から沸点が高い化合物の順に蒸留が開始され、最終的に高純度の非対称線状カーボネートを回収することができる。
【0043】
例えば、反応生成物に、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが含まれる場合、これを蒸留すると、反応生成物がジメチルカーボネート(沸点:90℃)、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(沸点:127℃)の順に分離され、80%以上、85%以上、90%以上または99.9%以上の高純度のエチルメチルカーボネートを回収することができる。この時分離されたジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートは、回収して再利用することができる。
【0044】
本発明の他の実現例によれば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、コバルト(Co)、カルシウム(Ca)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、レニウム(Re)、スカンジウム(Sc)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)およびバナジウム(V)からなる群から選択された一つ以上の金属を含む金属アルコキシド触媒を含む非対称線状カーボネートを提供する。
【0045】
前記金属アルコキシド触媒は、下記化学式1で表すことができる。
【0046】
[化学式1]
(XO-R)a
【0047】
前記化学式1中、
Xは、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、コバルト(Co)、カルシウム(Ca)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、レニウム(Re)、スカンジウム(Sc)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)およびバナジウム(V)からなる群から選択されたいずれかであり、
Rは、炭素数1~10のアルキル基であり、
aは、2以上の整数であってもよい。
【0048】
また、Rは、エチル、メチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチルまたはsec-ペンチルであってもよい。
【0049】
または、aは、2以上10以下の整数であってもよい。
【0050】
前記金属アルコキシド触媒の一実施例として、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムtert-ブトキシド、マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド、マグネシウムtert-ブトキシドおよびカルシウムメトキシドからなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0051】
また、前記非対称線状カーボネートは、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、ブチルエチルカーボネートまたはブチルプロピルカーボーネイトであってもよい。
【0052】
前記金属アルコキシド触媒の含有量は、前記非対称線状カーボネート100重量部に対して、0.01重量部以上、0.05重量部以上、0.10重量部以上、0.50重量部以上で含まれてもよく、5.00重量部以下、3.00重量部以下、1.00重量部以下で含まれてもよい。
【発明の効果】
【0053】
本発明は、高い転換率で高純度および高付加価値の非対称線状カーボネートを提供し、エステル交換反応を無溶媒工程で進行し、最終反応物から高付加価値の非対称線状カーボネートを分離精製し易く、工程の管理が容易で、大量生産が可能な非対称線状カーボネートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するだけであり、本発明の内容が下記実施例によって限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
100mLのフラスコにジメチルカーボネート(DMC)1.0モル、ジエチルカーボネート(DEC)1.0モル、パウダー形態のアルミニウムトリエトキシド(Al(OEt)3)触媒0.3重量%を投入した。その後、フラスコの内部温度を120℃に昇温し、3時間反応させた。
【0056】
(実施例2)
アルミニウムトリエトキシド(Al(OEt)3)触媒0.3重量%の代わりに、パウダー形態のマグネシウムジエトキシド(Mg(OEt)2)触媒0.3重量%を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でエチルメチルカーボネートを製造した。
【0057】
(比較例1)
アルミニウムトリエトキシド(Al(OEt)3)触媒0.3重量%の代わりに、パウダー形態のナトリウムエトキシド(NaOEt)触媒0.3重量%を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でエチルメチルカーボネートを製造した。
【0058】
(比較例2)
アルミニウムトリエトキシド(Al(OEt)3)触媒0.3重量%の代わりに、ナトリウムエトキシド(NaOEt)触媒が20%の濃度で溶解した溶液(NaOEt 20% in EtOH)1.5重量%を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でエチルメチルカーボネートを製造した。
【0059】
(比較例3)
アルミニウムトリエトキシド(Al(OEt)3)触媒0.3重量%の代わりに、液状のチタンテトラエトキシド(Ti(OEt)4)が20%の濃度で溶解した溶液(Ti(OEt)
4
20% in EtOH)1.5重量%を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でエチルメチルカーボネートを製造した。
【0060】
<実験例>
1.ガスクロマトグラフ(GC)分析結果
前記実施例および比較例のエステル交換反応後、ガスクロマトグラフ(GC)で分析し、生成物および残余物を確認してその結果を下記表1に示した。
【0061】
【0062】
前記表1を参考すると、アルミニウムトリエトキシドおよびマグネシウムジエトキシドをそれぞれ触媒として使用した実施例1および2は、反応結果としてDMC、EMCおよびDEC以外には他の溶媒であるメタノール(MeOH)およびエタノール(EtOH)がほとんど形成されず、このことからEMCの回収が容易であることが予測できる。
【0063】
一方、パウダー形態のナトリウムエトキシド触媒を使用する比較例1は、メタノール(MeOH)およびエタノール(EtOH)が共に形成される反面、EMCが全く生産されなかったことを確認した。また、ナトリウムエトキシド触媒が溶解された溶液を使用した比較例2は、EMCが生産されたが、実施例1および2に比べて、メタノール(MeOH)およびエタノール(EtOH)が多く形成され、このことからEMCの回収が容易ではないことを予測することができる。また、チタンテトラエトキシド触媒を使用する比較例3は、メタノール(MeOH)およびエタノール(EtOH)が多く形成されるだけでなく、EMCが12.6モル%と少なく製造されたことを確認した。
【0064】
2.イオン分析結果
前記実施例および比較例のエステル交換反応後、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)および燃焼イオンクロマトグラフィー(C-IC)で分析し、生成物および残留物を確認し、その結果を下記表2および表3に示した。
【0065】
【0066】
【0067】
前記表2および3を参考すると、実施例1および2は、最も多く含まれている金属イオン不純物がそれぞれアルミニウムおよびマグネシウムであり、こられの含有量が902ppb以下であるの対して、比較例1~3は、金属イオン不純物であるナトリウムおよびチタニウムの含有量がそれぞれ32,414ppb、67,661ppbおよび9,753ppbで、比較例1~3は、金属イオン不純物が実施例1および2に比べて顕著に多く含まれていることを確認した。また、このような金属イオン不純物含有量が多い比較例1~3は、エチルメチルカーボネートの精製が困難であることを予測することができる。