(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】辛味成分含有液状調味料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20250325BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20250325BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L27/10 E
(21)【出願番号】P 2024502666
(86)(22)【出願日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2023026373
(87)【国際公開番号】W WO2024019076
(87)【国際公開日】2024-01-25
【審査請求日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2022115833
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘 佑介
(72)【発明者】
【氏名】平向 由佳子
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-320264(JP,A)
【文献】特開2001-258497(JP,A)
【文献】特開2014-003978(JP,A)
【文献】特開2006-197891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)及び(2)及び(3)の要件を満たす、ジヒドロカプサイシンを含む液状調味料であって、
前記液状調味料がトウガラシ抽出物を含み、前記液状調味料の酢酸換算酸度が0.05質量%以上であり、前記ジヒドロカプサイシンの由来が、トウガラシ抽出物であり、
前記トウガラシ抽出物がエタノール及び/又は油脂を含む抽出溶媒により抽出されたものであり、前記ジヒドロカプサイシンを液部に含有する、液状調味料。
(1)ナトリウム含量が0.01質量%以上20質量%以下であること;
(2)ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が20以下であること;及び
(3)ジヒドロカプサイシン濃度が0.001質量ppm以上150質量ppm以下であること
【請求項2】
以下の(1)及び(2)及び(3)の要件を満たす、ジヒドロカプサイシンを含む液状調味料であって、
前記液状調味料がトウガラシ抽出物を含み、前記液状調味料が果汁を含有し、果汁含有率(ストレート果汁換算)が0.05質量%以上であり、前記ジヒドロカプサイシンの由来が、トウガラシ抽出物であり、
前記トウガラシ抽出物がエタノール及び/又は油脂を含む抽出溶媒により抽出されたものであり、前記ジヒドロカプサイシンを液部に含有する、液状調味料。
(1)ナトリウム含量が0.01質量%以上20質量%以下であること;
(2)ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が20以下であること;及び
(3)ジヒドロカプサイシン濃度が0.001質量ppm以上150質量ppm以下であること
【請求項3】
以下の(1)及び(2)及び(3)の要件を満たす、ジヒドロカプサイシンを含む液状調味料であって、
前記液状調味料がトウガラシ抽出物を含み、前記液状調味料中の、酢酸換算酸度に対するクエン酸含量の割合が0.05以上であり、前記ジヒドロカプサイシンの由来が、トウガラシ抽出物であり、
前記トウガラシ抽出物がエタノール及び/又は油脂を含む抽出溶媒により抽出されたものであり、前記ジヒドロカプサイシンを液部に含有する、液状調味料。
(1)ナトリウム含量が0.01質量%以上20質量%以下であること;
(2)ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が20以下であること;及び
(3)ジヒドロカプサイシン濃度が0.001質量ppm以上150質量ppm以下であること
【請求項4】
以下の(1)及び(2)及び(3)の要件を満たす、ジヒドロカプサイシンを含む液状調味料であって、
前記液状調味料がトウガラシ抽出物を含み、前記液状調味料中の、ジヒドロカプサイシン濃度に対する酢酸換算酸度の割合が0.1以上であり、前記ジヒドロカプサイシンの由来が、トウガラシ抽出物であり、
前記トウガラシ抽出物がエタノール及び/又は油脂を含む抽出溶媒により抽出されたものであり、前記ジヒドロカプサイシンを液部に含有する、液状調味料。
(1)ナトリウム含量が0.01質量%以上20質量%以下であること;
(2)ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が20以下であること;及び
(3)ジヒドロカプサイシン濃度が0.001質量ppm以上150質量ppm以下であること
【請求項5】
以下の(1)及び(2)及び(3)の要件を満たす、ジヒドロカプサイシンを含む液状調味料であって、
前記液状調味料がトウガラシ抽出物を含み、前記ジヒドロカプサイシンの由来が、トウガラシ抽出物であり、
前記トウガラシ抽出物がエタノール及び/又は油脂を含む抽出溶媒により抽出されたものであり、前記ジヒドロカプサイシンを液部に含有する、液状調味料(ただし、前記ジヒドロカプサイシンの由来がカプシカムフルテッセンス種の唐辛子である液状調味料、及び唐辛子由来のカプサイシン類と、水と、pH調整剤と、を含有しており、レトルト加熱処理されたレトルト調味液であって、本レトルト調味液のpHは6.0~6.9であり、前記カプサイシン類の含有割合は、0.2~30質量ppmであることを特徴とするレトルト調味液を除く)。
(1)ナトリウム含量が0.01質量%以上20質量%以下であること;
(2)ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が20以下であること;及び
(3)ジヒドロカプサイシン濃度が0.001質量ppm以上150質量ppm以下であること
【請求項6】
前記トウガラシ抽出物が、エタノール及び/又は油脂の含量が50質量%以上の抽出溶媒による抽出物であり、当該トウガラシ抽出物を、前記液状調味料中のジヒドロカプサイシン濃度が0.001質量ppm以上150質量ppm以下となるように配合して製造される、請求項1から5のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項7】
前記トウガラシ抽出物が、エタノール又は油脂を抽出溶媒とした抽出物であり、当該トウガラシ抽出物を、前記液状調味料中のジヒドロカプサイシン濃度が0.001質量ppm以上150質量ppm以下となるように配合して製造される、請求項1から5のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項8】
前記液状調味料中のジヒドロカプサイシン濃度が0.005質量ppm以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項9】
前記液状調味料の酢酸換算酸度が0.05質量%以上である、請求項2から5のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項10】
前記液状調味料中の、ジヒドロカプサイシン濃度に対する酢酸換算酸度の割合が0.1以上である、請求項1から3、及び5のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項11】
前記液状調味料中の油脂含量が80質量%以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項12】
前記液状調味料中の、酢酸換算酸度に対するクエン酸含量の割合が0.05以上である、請求項1、2、4、及び5のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項13】
果汁をさらに含有し、果汁含有率(ストレート果汁換算)が0.05質量%以上である、請求項1、3、4、及び5のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項14】
前記果汁が柑橘果汁である、請求項2に記載の液状調味料。
【請求項15】
前記液状調味料中のD-リモネン濃度が50質量ppm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項16】
前記トウガラシ抽出物の水分含量が95質量%以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項17】
アミノ酸及び核酸の少なくとも1種をさらに含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の液状調味料。
【請求項18】
以下の(a)、(b)、(c)及び(d)の段階を含む、トウガラシ抽出物を含む液状調味料の製造方法。
(a)トウガラシを
エタノール及び/又は油脂を含む抽出溶媒に添加する段階
(b)トウガラシから
エタノール及び/又は油脂を含む抽出溶媒を用いてジヒドロカプサイシンを抽出し、トウガラシ抽出物を調製する段階
(c)段階(b)で調製したトウガラシ抽出物を、ナトリウム含量が0.01質量%以上20質量%以下、及びナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が20以下である液状調味料に添加し、ジヒドロカプサイシン濃度が0.001質量ppm以上150質量ppm以下の液状調味料を得る段階
(d)段階(b)で調製したトウガラシ抽出物のpHと、段階(c)で得られる液状調味料のpHの低下差分が0.1以上10.0以下となるようにpHを調整する段階
【請求項19】
以下の(a’)、(b’)、(c’)及び(e)の段階を含む、トウガラシ抽出物を含む液状調味料の製造方法。
(a’)トウガラシをエタノール及び/又は油脂の含量が50質量%以上の抽出溶媒に添加する段階
(b’)トウガラシからエタノール及び/又は油脂の含量が50質量%以上の抽出溶媒を用いてジヒドロカプサイシンを抽出し、トウガラシ抽出物を調製する段階
(c’)段階(b’)で調製したトウガラシ抽出物を、ナトリウム含量が0.01質量%以上20質量%以下、及びナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が20以下である液状調味料に添加し、ジヒドロカプサイシン濃度が0.001質量ppm以上150質量ppm以下の液状調味料を得る段階
(e)前記(a’)、(b’)、及び(c’)のいずれかの段階で、液状調味料の酢酸換算酸度を0.05質量%以上に調整する段階
【請求項20】
以下の(a’)、(b’)及び(c’)の段階を含む、トウガラシ抽出物を含み、酢酸換算酸度が0.05質量%である液状調味料の製造方法。
(a’)トウガラシをエタノール及び/又は油脂の含量が50質量%以上の抽出溶媒に添加する段階
(b’)トウガラシからエタノール及び/又は油脂の含量が50質量%以上の抽出溶媒を用いてジヒドロカプサイシンを抽出し、トウガラシ抽出物を調製する段階
(c’)段階(b’)で調製したトウガラシ抽出物を、ナトリウム含量が0.01質量%以上20質量%以下、及びナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が20以下である液状調味料に添加し、ジヒドロカプサイシン濃度が0.001質量ppm以上150質量ppm以下の液状調味料を得る段階
【請求項21】
トウガラシ抽出物とトウガラシを分離する段階をさらに含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩味を立てつつ、塩による収斂味が抑えられ、辛味と辛味以外の味とのバランスがとれた液状調味料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
味は、塩味、甘味、酸味、苦味、及びうま味の5つの基本味で構成されており、これらの基本味の組み合わせと強弱は、飲食品の美味しさを決定する重要な要素となっている。このような飲食品に辛味成分を入れると、上記の各呈味成分の影響で辛味が弱くなったり、また、反対に、辛味成分によって、その他の味を損ねてしまうということがある。よって、辛味調味料を調製する際には、辛味と辛味以外の味とのバランスをとることが求められている。
【0003】
これまで、辛味成分と塩味、酢味を調整することで、酢酸臭が著しく改善され、風味がさらに向上することが明らかになっている(特許文献1)。しかし塩による収斂味や辛味と辛味以外の味とのバランスが改善されたものではなかった。また一般に、辛味を抑える目的で糖を添加して甘味を出すことが行われているが、糖の種類や量によっては、辛味が増強されることが知られており(特許文献2)、また、甘さが後を引いたり、甘味の方が塩味に勝って塩味の立ちが悪くなることがある。一方、塩には辛味の物足りなさを補う効果があることが一般に知られているが、糖が存在すると、これらの効果が薄れたり、塩による収斂味が生じたり、辛味と辛味以外の味とのバランスが崩れてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-123402号公報
【文献】特開平8-242805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、塩味を立てつつ、塩による収斂味が抑えられ、辛味と辛味以外の味とのバランスがとれた液状調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ジヒドロカプサイシンを含むこと、ナトリウム含量を所定値以上にすること、ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合を所定値以下にすることによって、塩味を立てつつ、塩による収斂味が抑えられ、辛味と辛味以外の味とのバランスがとれた液状調味料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明における「塩味を立てる」とは、塩味を際立たせること、塩味を強調することをいう。ジヒドロカプサイシンが塩による収斂味を抑えることで、ジヒドロカプサイシンを添加しない状態よりも塩味がより強く感じられるような状態を表す。「鼻から抜ける辛味」とは、食品を口に入れたときに喉から鼻腔を通じて辛味が感じられること、辛みが鼻腔を刺激することをいう。例えばチリソースを食べた時のような感覚を表す。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]以下の(1)及び(2)の要件を満たす、ジヒドロカプサイシンを含む液状調味料。
(1)ナトリウム含量が0.01質量%以上20質量%以下であり、その下限は通常0.01質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.07質量%以上、又は0.1質量%以上、又は0.3質量%以上、又は0.5質量%以上、又は0.6質量%以上、又は0.7質量%以上、又は0.8質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.2質量%以上、又は1.5質量%以上、又は1.8質量%以上、又は2.0質量%以上、又は2.2質量%以上、又は2.4質量%以上、又は2.5質量%以上、又は2.6質量%以上、又は2.7質量%以上であってもよく、その上限は限定はされないが、20質量%以下、又は15質量%以下、又は10質量%以下、又は8.5質量%以下、又は8.0質量%以下、又は7.5質量%以下、又は7.0質量%以下、又は6.5質量%以下、又は6.0質量%以下、又は5.5質量%以下、又は5.0質量%以下、又は4.5質量%以下、又は4.0質量%以下、又は3.5質量%以下であること;及び
(2)ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が0.05以上20以下であり、その上限は通常20以下、又は19以下、又は18以下、又は15以下、又は13以下、又は12以下、又は11以下、又は10以下、又は9.0以下、又は8.0以下、又は7.0以下、又は6.0以下、又は5.5以下、又は5.0以下、又は4.5以下、又は4.0以下、又は3.5以下であってもよく、その下限は限定はされないが、0.05以上、又は0.1以上、又は0.2以上、又は0.3以上、又は0.5以上、又は0.7以上、又は1.0以上、又は1.5以上、又は2.0以上、又は2.5以上であること
[2]前記液状調味料中のジヒドロカプサイシン濃度が0.005質量ppm以上150質量ppm以下であり、その下限は、通常0.005質量ppm以上、又は0.01質量ppm以上、又は0.03質量ppm以上、又は0.05質量ppm以上、又は0.07質量ppm以上、又は0.1質量ppm以上、又は0.15質量ppm以上、又は0.2質量ppm以上、又は0.25質量ppm以上、又は0.3質量ppm以上、又は0.35質量ppm以上、又は0.4質量ppm以上であってもよく、その上限は、限定はされないが、150質量ppm以下、又は100質量ppm以下、又は80質量ppm以下、又は50質量ppm以下、又は30質量ppm以下、又は20質量ppm以下、又は15質量ppm以下、又は10質量ppm以下、又は8.0質量ppm以下、又は6.0質量ppm以下、又は5.0質量ppm以下、又は4.0質量ppm以下、又は3.0質量ppm以下である、[1]に記載の液状調味料。
[3]前記ジヒドロカプサイシンを液部に含有する、[1]又は[2]に記載の液状調味料。
[4]前記液状調味料の酢酸換算酸度が0.05質量%以上10質量%以下であり、その下限は、通常0.05質量%以上、又は0.06質量%以上、又は0.07質量%以上、又は0.08質量%以上、又は0.09質量%以上、又は0.1質量%以上、又は0.2質量%以上、又は0.3質量%以上、又は0.4質量%以上、又は0.6質量%以上、又は0.8質量%以上、又は1.0質量%以上であってもよく、その上限は、限定はされないが、10質量%以下、又は7.5質量%以下、又は5.0質量%以下、又は4.0質量%以下、又は3.5質量%以下、又は3.0質量%以下である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[5]前記液状調味料中の、ジヒドロカプサイシン濃度に対する酢酸換算酸度の割合が0.1以上1000以下であり、その下限は、通常0.1以上、又は0.12以上、又は0.15以上、又は0.17以上、又は0.2以上、又は0.25以上、又は0.5以上、又は0.75以上、又は1.0以上、又は1.25以上、又は1.5以上、又は2.0以上、又は2.5以上、又は3.0以上であってもよく、その上限は、限定はされないが、1000以下、又は750以下、又は500以下、又は250以下、又は100以下、又は75以下、又は50以下である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[6]前記液状調味料中の油脂含量が0.01質量%以上80質量%以下であり、その上限は、通常80質量%以下、又は75質量%以下、又は70質量%以下、又は65質量%以下であってもよく、その下限は、限定はされないが、0.01質量%以上、又は0.02質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.05質量%以上である、[1]から[5]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[7]前記液状調味料中の、酢酸換算酸度に対するクエン酸含量の割合が0.05以上100以下であり、その下限は通常0.05以上、又は0.07以上、又は0.1以上、又は0.15以上、又は0.2以上、又は0.25以上、又は0.3以上であってもよく、その上限は、限定はされないが、100以下、又は95以下、又は90以下、又は85以下である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[8]果汁をさらに含有し、果汁含有率(ストレート果汁換算)が0.05質量%以上100質量%以下であり、その下限は、通常0.05質量%以上、又は0.1質量%以上、又は0.15質量%以上、又は0.2質量%以上であってもよく、その上限は、100質量%以下、又は90質量%以下である、[1]から[7]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[9]前記果汁が柑橘果汁である、[1]から[8]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[10]前記液状調味料中のD-リモネン濃度が0.01質量ppm以上50質量ppm以下であり、その上限は通常50質量ppm以下、又は45質量ppm以下、又は40質量ppm以下であってもよく、その下限は、0.01質量ppm以上、又は0.02質量ppm以上、又は0.03質量ppm以上、又は0.05質量ppm以上である、[1]から[9]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[11]前記ジヒドロカプサイシンの由来が、ジヒドロカプサイシン含有抽出物である、[1]から[10]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[12]前記ジヒドロカプサイシン含有抽出物が、エタノール又は油脂を含む抽出溶媒による抽出物である、[11]に記載の液状調味料。
[13]前記ジヒドロカプサイシン含有抽出物の水分含量が0.01質量%以上95質量%以下であり、その上限は、通常95質量%以下、又は94質量%以下、又は93質量%以下、又は92質量%以下、又は91質量%以下、又は90質量%以下、又は89質量%以下、又は85質量%以下、又は80質量%以下、又は75質量%以下であってもよく、その下限は、特に制限されるものではないが、0.01質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.1質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上、又は2.0質量%以上、又は2.5質量%以上、又は3.0質量%以上、又は3.5質量%以上、又は4.0質量%以上、又は4.5質量%以上、又は5.0質量%以上、又は10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上である、[1]から[12]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[14]アミノ酸及び核酸の少なくとも1種をさらに含有する、[1]から[13]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[15]前記核酸として5’-イノシン酸二ナトリウムを含有する、[1]から[14]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[16]前記5’-イノシン酸二ナトリウム含量が0.01質量%以上10質量%以下であり、その下限は、通常0.01質量%以上、又は0.02質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.06質量%以上、又は0.07質量%以上、又は0.08質量%以上、又は0.09質量%以上であってもよく、その上限は、限定はされないが、10質量%以下、又は7.5質量%以下、又は5.0質量%以下、又は4.0質量%以下、又は3.5質量%以下、又は3.0質量%以下である、[1]から[15]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[17]コハク酸及びコハク酸ナトリウムの少なくとも1種を含有する、[1]から[16]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[18]前記コハク酸含量が0.001質量%以上1.0質量%以下であり、その上限は、通常1.0質量%以下、又は0.7質量%以下、又は0.5質量%以下、又は0.3質量%以下、又は0.1質量%以下、又は0.09質量%以下、又は0.08質量%以下、又は0.07質量%以下であってもよく、その下限は、限定はされないが、0.001質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.01質量%以上、又は0.02質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.04質量%以上である、[1]から[17]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[19]前記コハク酸ナトリウム含量が0.001質量%以上1.0質量%以下であり、その上限は、通常1.0質量%以下、又は0.8質量%以下、又は0.6質量%以下、又は0.5質量%以上以下、又は0.4質量%以下、又は0.3質量%以下、又は0.2質量%以下、又は0.1質量%以下であり、その下限は、限定はされないが、0.001質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.01質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.07質量%以上である、[1]から[18]のいずれか一項に記載の液状調味料。
[20]以下の(a)、(b)及び(c)の段階を含む、ジヒドロカプサイシン含有抽出物を含む液状調味料の製造方法。
(a)ジヒドロカプサイシン含有植物素材を抽出溶媒に添加する段階
(b)ジヒドロカプサイシン含有植物素材から抽出溶媒を用いてジヒドロカプサイシンを抽出し、ジヒドロカプサイシン含有抽出物を調製する段階
(c)段階(b)で調製したジヒドロカプサイシン含有抽出物を、ナトリウム含量が0.01質量%以上20質量%以下であり、その下限は通常0.01質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.07質量%以上、又は0.1質量%以上、又は0.3質量%以上、又は0.5質量%以上、又は0.6質量%以上、又は0.7質量%以上、又は0.8質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.2質量%以上、又は1.5質量%以上、又は1.8質量%以上、又は2.0質量%以上、又は2.2質量%以上、又は2.4質量%以上、又は2.5質量%以上、又は2.6質量%以上、又は2.7質量%以上であってもよく、その上限は限定はされないが、20質量%以下、又は15質量%以下、又は10質量%以下、又は8.5質量%以下、又は8.0質量%以下、又は7.5質量%以下、又は7.0質量%以下、又は6.5質量%以下、又は6.0質量%以下、又は5.5質量%以下、又は5.0質量%以下、又は4.5質量%以下、又は4.0質量%以下、又は3.5質量%以下、及びナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が0.05以上20以下であり、その上限は通常20以下、又は19以下、又は18以下、又は15以下、又は13以下、又は12以下、又は11以下、又は10以下、又は9.0以下、又は8.0以下、又は7.0以下、又は6.0以下、又は5.5以下、又は5.0以下、又は4.5以下、又は4.0以下、又は3.5以下であってもよく、その下限は限定はされないが、0.05以上、又は0.1以上、又は0.2以上、又は0.3以上、又は0.5以上、又は0.7以上、又は1.0以上、又は1.5以上、又は2.0以上、又は2.5以上である液状調味料に添加する段階
[21]前記抽出溶媒が、エタノール又は油脂を含む、[20]に記載の製造方法。
[22]前記段階(b)により得られたジヒドロカプサイシン含有抽出物の水分含量が0.01質量%以上95質量%以下であり、その上限は、通常95質量%以下、又は94質量%以下、又は93質量%以下、又は92質量%以下、又は91質量%以下、又は90質量%以下、又は89質量%以下、又は85質量%以下、又は80質量%以下、又は75質量%以下であってもよく、その下限は、特に制限されるものではないが、0.01質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.1質量%以上、又は0.5質量%、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上、又は2.0質量%以上、又は2.5質量%以上、又は3.0質量%以上、又は3.5質量%以上、又は4.0質量%以上、又は4.5質量%以上、又は5.0質量%以上、又は10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上である、[20]又は[21]に記載の製造方法。
[23]ジヒドロカプサイシン含有抽出物とジヒドロカプサイシン含有植物素材を分離する段階をさらに含む、[20]から[22]のいずれか一項に記載の製造方法。
【0009】
本願は、2022年7月20日に出願された日本国特許出願2022-115833号の優先権を主張するものであり、該特許出願の明細書に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塩味を立てつつ、塩による収斂味が抑えられ、辛味と辛味以外の味とのバランスがとれた液状調味料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、数値範囲の規定について複数の上限値及び/又は複数の下限値を示す場合、特に明示されない場合であっても少なくとも上限規定の最大値と下限規定の最小値とを組み合わせた数値範囲の規定が直接的に記載されているものとし、さらに当該上限値のうち任意の上限値と当該下限値のうち任意の下限値とを組み合わせて得られる全ての数値範囲が本発明の一実施形態に含まれるものとする。また、本明細書において、「~」で結ばれた数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に示されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「~」で結ぶことができるものとする。
【0012】
本発明において、「湿潤質量換算」(単に「湿潤質量基準」と称する場合もある。)とは、試料の水分を含む湿潤質量を分母、試料中の対象成分の含有質量を分子として算出される、試料中の対象成分の含有比率を表す。また、本発明における割合規定において、特に指定なく単に「質量%」及び「質量ppm」と記載される場合、「湿潤質量換算」の割合を表す。
【0013】
1.液状調味料
本発明は、ジヒドロカプサイシンを含有する液状調味料(以下、「本発明の液状調味料」という)であって、(1)ナトリウム含量が0.01質量%以上であること、(2)ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が20以下であることを特徴とする。
【0014】
<液状調味料>
本発明において「液状調味料」とは、常温(20℃)において液状の物性を有する調味料をいう。本発明の液状調味料としては、ポン酢、たれ類、つゆ類、ソース類、ドレッシング等が挙げられる。
【0015】
本発明における「液状」とは、ボストウィック粘度計による測定温度20℃、測定時間10秒での粘度測定値が0cm超となる流動性を有することが好ましい。ボストウィック粘度計による粘度測定値は、具体的には、KO式ボストウィック粘度計(深谷鉄工所社製、トラフ長28.0cm)を用いて測定することができる。測定時には水準器を用いて装置を水平に設置し、ゲートを閉じた後リザーバーに20℃に温度調整したサンプルを満量まで充填し、ゲートを開くためにトリガーを押し下げると同時に時間を計測し、10秒経過時点でのトラフ内の材料の流下距離を測定する。
【0016】
<ジヒドロカプサイシン>
本発明の液状調味料に含有させるジヒドロカプサイシン(体系名:N-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-8-メチルノナンアミド、英文表記:Dihydrocapsaicin)は、分子式C18H29NO3(分子量:307.434)を有し、CAS登録番号は、19408-84-5である。
【0017】
本発明の液状調味料は、ジヒドロカプサイシンを含有することで、塩味を立てつつ、塩による収斂味が抑えられ、辛味と辛味以外の味とのバランスがとれるという本発明の効果が奏される。その原因は定かではないが、ジヒドロカプサイシンが塩味の感じ方を変えることで塩による収斂味が抑えられると考えられる。
【0018】
ここで、「収斂味(astringent taste、astringency)」とは、食品を口に含んだ時に口中をしめつけるような感じを与える味をいう。収斂味は、味覚の神経細胞を刺激することにより感じる味とは異なり、口中の細胞を収縮させることにより感じる触覚に近い感覚である。例えば、赤ワインにはブドウ由来のタンニンに由来する渋味が特徴とされているが、収斂味はこの渋味や苦味やえぐみと似ているものの異なる感覚である。
【0019】
本発明の液状調味料中のジヒドロカプサイシン濃度は、湿潤質量換算で、例えば、0.001質量ppm以上150質量ppm以下の範囲であればよい。具体的には、その下限は、通常0.001質量ppm以上であるが、0.005質量ppm以上、又は0.01質量ppm以上が好ましく、0.03質量ppm以上がより好ましく、0.05質量ppm以上がさらに好ましく、0.07質量ppm以上、又は0.1質量ppm以上、又は0.15質量ppm以上、又は0.2質量ppm以上、又は0.25質量ppm以上、又は0.3質量ppm以上、又は0.35質量ppm以上、又は0.4質量ppm以上が特に好ましく、一方、その上限は、限定はされないが、150質量ppm以下が好ましく、100質量ppm以下がより好ましく、80質量ppm以下がさらに好ましく、50質量ppm以下、又は30質量ppm以下、又は20質量ppm以下、又は15質量ppm以下、又は10質量ppm以下、又は8.0質量ppm以下、又は6.0質量ppm以下、又は5.0質量ppm以下、又は4.0質量ppm以下、又は3.0質量ppm以下が特に好ましい。
【0020】
本発明の液状調味料中のジヒドロカプサイシン濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて以下の手順にて測定することができる。
5gの試料と内部標準液(ジフェニールアミン50ppm)1mLにメタノールを添加して25mLにメスアップする。得られた試料懸濁液に対して、40kHz、水温25℃で30分間超音波処理を行った後、2時間以上冷蔵後、上下に10回振って上清を0.45μmフィルターでろ過したろ液を測定に供する。
以下の条件に従って、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、ジヒドロカプサイシンのピーク面積を分析する。メタノールで希釈したカプサイシン濃度が67質量%、ジヒドロカプサイシン濃度が30質量%である標品サンプル(富士フィルム和光純薬株式会社 和光1級 型番030-11353)に試料と同濃度で内部標準液を添加して同様に分析し、内部標準法によりジヒドロカプサイシン濃度を算出する。
<HPLC条件>
測定機器:高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製、機種LC-20AC)
移動相(1)アセトニトリル水溶液、流速1.0mL/min
移動相(2)0.1%リン酸水溶液、流速1.0mL/min
カラム:Cadeza CD-C18 150x4.6mm
カラム温度:40℃
検出:UV-VIS検出器 SPD-20A(島津製作所社製)
【0021】
本発明の液状調味料において、ジヒドロカプサイシンは、当該液状調味料の液部に溶解されている状態が好ましい。ここで、「液部」とは、液状調味料を遠心分離(3000Gで10分間)して得られた上清をいう。
【0022】
なお、本発明の液状調味料に含まれるジヒドロカプサイシンは、液状調味料の原料となる食用植物等の食材に含まれるものでもよく、本発明の液状調味料の製造時に、当該食材とは別に添加されるものでもよく、本発明の液状調味料の製造に伴い生じるものであってもよい。或いはこれらのうち2種以上の由来によるジヒドロカプサイシンが合計された結果として、本発明における所定の含量及び/又は割合を満たすものであってもよい。本発明の液状調味料の製造時に外部からジヒドロカプサイシンを添加する場合、精製抽出された高純度の製剤を添加してもよく、ジヒドロカプサイシンを含む何らかの加工品(例えば抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当該液状調味料に含有されるジヒドロカプサイシンの過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましく、植物素材加工品由来であることが好ましく、植物素材抽出物由来であることがより好ましい。ここで、ジヒドロカプサイシン含有植物素材としては、例えば、トウガラシ、コショウなどが挙げられるが、トウガラシが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。植物素材加工品とは、ジヒドロカプサイシン含有植物素材の乾燥物、粉砕物、抽出物、精製物等をいうが、抽出物が好ましい。抽出物は、例えば、トウガラシを抽出溶媒に添加し、静置した後、ろ過を行うことによって調製できる。あるいは、トウガラシを添加した抽出溶媒を特定の温度に加熱した後静置する、又は、攪拌しながら一定温度で保持することによっても調製できる。本発明におけるジヒドロカプサイシン含有抽出物とは、ジヒドロカプサイシン含有植物素材から抽出溶媒を用いてジヒドロカプサイシンを抽出したものである。なお、植物素材加工品はジヒドロカプサイシン含有植物素材のみを用いてもよく、ジヒドロカプサイシン含有植物素材とジヒドロカプサイシンを含有しない素材(例えばニンニクなど)を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
また、ジヒドロカプサイシン含有抽出物は、ジヒドロカプサイシン含有植物素材を抽出溶媒よりも相対的に多く含有するペースト状物であって、ペーストに含まれる抽出溶媒にジヒドロカプサイシンが抽出されたペースト状抽出物であってもよい。具体的には、抽出溶媒(例えば油脂、特に油脂全体において液体状油脂(20℃で液体状の油脂)が50質量%以上、又は75質量%以上、又は100質量%含有する油脂)が10質量%~50質量%(特に25±10質量%)、抽出溶媒よりも相対的に多いジヒドロカプサイシン含有植物素材(例えばトウガラシ)を20質量%~70質量%(特に30±10質量%)程度含有し、加熱混合によって抽出溶媒とジヒドロカプサイシン含有植物素材とが一体のペースト状となったペースト状抽出物であってもよい。また、当該ペースト状抽出物に、ジヒドロカプサイシンを含有しない素材(例えばニンニク)を20質量%~70質量%(特に45±10質量%)含有する態様であってもよい。
【0024】
トウガラシを使用する場合、トウガラシ属(Capsicum属)植物であればその品種や形態は特に限定されるものでなく、また、トウガラシの品種としては、例えば、タカノツメ種、テンタカ種、ホンタカ種、チリー種などを挙げることができる。なお、本発明において抽出原料として使用するトウガラシ部位は、トウガラシ植物体においてジヒドロカプサイシンを含有する部位であればどこでもよいが、果実が好ましい。
【0025】
上記抽出溶媒としては、ジヒドロカプサイシンを抽出することができる溶媒であれば特に限定はされないが、後引く辛さの好ましさの観点から、疎水性が高い抽出溶媒を用いることが好ましく、例えば、エタノール又は油脂を含有する溶媒が挙げられる。本発明における油脂とは後述する「油脂」をいう。ここで、「後引く辛さ」とは、口に入れてから数秒たっても持続する辛さをいう。
【0026】
抽出溶媒中のエタノール含量は特に制限されないが、湿潤質量換算で、例えば、0.01質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的には、その上限は100質量%以下、95質量%以下、90質量%以下とすることができ、その下限は0.01質量%以上、0.05質量%以上とすることができる。また、上記エタノール含量の規定を充足する場合において、その残分(100からエタノール含量を差し引いた残分)のうち所定割合以上が水であってもよい。具体的には50質量%以上が水であってもよく、75質量%以上が水であってもよく、100質量%すなわち残分の全てが水であってもよい。また、ジヒドロカプサイシン抽出時の抽出溶媒が上記規定を充足する態様であってもよい。
【0027】
抽出溶媒中の油脂含量は特に制限されないが、湿潤質量換算で、例えば、0.01質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的には、その上限は100質量%以下、95質量%以下、90質量%以下とすることができ、その下限は0.01質量%以上、0.05質量%以上とすることができる。また、上記油脂含量の規定を充足する場合において、その残分(100から油脂含量を差し引いた残分)のうち所定割合以上が水であってもよい。具体的には残分の50質量%以上が水であってもよく、75質量%以上が水であってもよく、100質量%すなわち残分の全てが水であってもよい。また、ジヒドロカプサイシン抽出時の抽出溶媒が上記規定を充足する態様であってもよい。
【0028】
さらに、上記油脂含量とエタノール含量との合計に対するその残分(100から油脂含量とエタノール含量とを差し引いた残分)のうち所定割合以上が水であってもよい。具体的には残分の50質量%以上が水であってもよく、75質量%以上が水であってもよく、100質量%すなわち残分の全てが水であってもよい。
【0029】
また本発明におけるジヒドロカプサイシン含有抽出物の水分含量は特に制限されないが、湿潤質量換算で、例えば、0.01質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的には、その上限は、通常100質量%以下、又は95質量%以下、又は94質量%以下、又は93質量%以下、又は92質量%以下、又は91質量%以下、又は90質量%以下、又は89質量%以下、又は85質量%以下、又は80質量%以下、又は75質量%以下が好ましい。一方、ジヒドロカプサイシン含有抽出物の水分含量の下限は、特に制限されるものではないが、0.01質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.1質量%以上、又は0.5質量%、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上、又は2.0質量%以上、又は2.5質量%以上、又は3.0質量%以上、又は3.5質量%以上、又は4.0質量%以上、又は4.5質量%以上、又は5.0質量%以上、又は10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上とすることができる。また、上記水分含量の規定を充足する場合において、その残分(100から水分含量を差し引いた残分)のうち所定割合以上が疎水性の高い溶媒(例えばエタノール及び/又は油脂、特にエタノール)であることでジヒドロカプサイシンをより効率的に抽出することができるため好ましい。具体的には残分の50質量%以上が疎水性の高い溶媒(例えばエタノール及び/又は油脂、特にエタノール)であってもよく、75質量%以上が疎水性の高い溶媒(例えばエタノール及び/又は油脂、特にエタノール)であってもよく、100質量%すなわち残分の全てが疎水性の高い溶媒(例えばエタノール及び/又は油脂、特にエタノール)であってもよい。また、ジヒドロカプサイシン抽出時の抽出溶媒が上記規定を充足する態様であってもよい。
【0030】
本発明において、「水分含量」とは、日本食品標準成分表2020年版(八訂)に準じてカールフィッシャー法で測定した値を表す。また、以下の方法でも同様の測定が可能である。本発明において、液状調味料中の各種原料の湿潤質量換算含水率は、液状調味料の合計量に対する液状調味料中の水分量の割合を意味する。また、本発明において、液状調味料中の各種原料の湿潤質量換算含水率は、液状調味料の各種原料の質量に対する液状調味料中の各種原料の水分量の割合を意味する。その数値は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、減圧加熱乾燥法で90℃に加温することで測定する。具体的には、予め恒量になったはかり容器(W0)に適量の試料を採取して秤量し(W1)、常圧において、所定の温度(より詳しくは90℃)に調節した減圧電気定温乾燥器中に、はかり容器の蓋をとるか、口を開けた状態で入れ、扉を閉じ、真空ポンプを作動させて、所定の減圧度において一定時間乾燥し、真空ポンプを止め、乾燥空気を送って常圧に戻し、はかり容器を取り出し、蓋をしてデシケーター中で放冷後、質量をはかる。そのようにして恒量になるまで乾燥、放冷、秤量する(W2)ことを繰り返し、(W1-W2)/(W1-W0)で水分含量(湿潤質量換算含水率)(質量%)を求める。また、(W2―W0)を求めることで、試料の乾燥重量を測定することもできる。
【0031】
ジヒドロカプサイシンを溶媒で抽出する場合、ジヒドロカプサイシン含有植物素材(乾燥重量)に対する抽出溶媒含量の割合は特に制限されないが、例えば0.01以上100000以下の範囲とすることができる。より具体的には、その下限は0.01以上、又は0.05以上、又は0.1以上、又は0.2以上とすることができ、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上、その上限は100000以下、80000以下、50000以下、25000以下とすることができる。
【0032】
ジヒドロカプサイシンをエタノール含有溶媒で抽出する場合、ジヒドロカプサイシン含有植物素材(乾燥重量)に対するエタノール含量の割合は特に制限されないが、例えば0.01以上100000以下の範囲とすることができる。より具体的には、その下限は0.01以上、又は0.05以上、又は0.1以上、又は0.2以上とすることができ、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上、その上限は100000以下、80000以下、50000以下、25000以下とすることができる。
【0033】
ジヒドロカプサイシンを油脂含有溶媒で抽出する場合、ジヒドロカプサイシン含有植物素材(乾燥重量)に対する油脂含量の割合は特に制限されないが、例えば0.01以上100000以下の範囲とすることができる。より具体的には、その下限は0.01以上、又は0.05以上、又は0.1以上、又は0.2以上とすることができ、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上、その上限は100000以下、又は80000以下、又は50000以下、又は25000以下とすることができる。
【0034】
ジヒドロカプサイシン含有抽出物は、そのまま本発明の液状調味料に用いることができるが、必要に応じて濃縮処理、熱風乾燥、蒸気乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等の乾燥処理、分離精製処理、脱色処理等に供して、濃縮物や乾燥物等にしたものを用いてもよい。
【0035】
本発明の液状調味料に対するジヒドロカプサイシン含有抽出物の添加量は、液状調味料中における前記ジヒドロカプサイシン濃度を満たすように添加する限り制限されないが、湿潤質量換算で、例えば0.001質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的には、その下限は0.001質量%、又は0.005質量%以上、又は0.01質量%以上とすることができ、その上限は100質量%以下、又は95質量%以下、又は90質量%以下とすることができる。
【0036】
ジヒドロカプサイシン含有抽出物中のジヒドロカプサイシン濃度は特に制限されないが、湿潤質量換算で、例えば0.001質量ppm以上90質量ppm以下の範囲とすることができる。より具体的には、その下限は0.001質量ppm以上、0.005質量ppm以上、0.01質量ppm以上、0.02質量ppm以上とすることができ、その上限は90質量ppm以下、又は85質量ppm以下、又は80質量ppm以下とすることができる。
【0037】
<ナトリウム>
本発明の液状調味料は、塩味を立てつつ、辛味と辛味以外の味とのバランスをとるという観点から、ナトリウムを所定量以上含有する。その原因は定かではないが、ナトリウムが辛味をマスキングすることで、その結果として本発明の効果を奏していると考えられる。
【0038】
本発明の液状調味料中のナトリウム含量は、湿潤質量換算で、例えば0.01質量%以上20質量%以下の範囲であればよい。具体的には、その下限は通常0.01質量%以上であるが、0.03質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.07質量%以上、又は0.1質量%以上、又は0.3質量%以上、又は0.5質量%以上、又は0.6質量%以上、又は0.7質量%以上、又は0.8質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.2質量%以上、又は1.5質量%以上、又は1.8質量%以上、又は2.0質量%以上、又は2.2質量%以上、又は2.4質量%以上、又は2.5質量%以上、又は2.6質量%以上、又は2.7質量%以上が好ましい。一方、その上限は限定はされないが、20質量%以下、又は15質量%以下、又は10質量%以下、又は8.5質量%以下、又は8.0質量%以下、又は7.5質量%以下、又は7.0質量%以下、又は6.5質量%以下、又は6.0質量%以下、又は5.5質量%以下、又は5.0質量%以下、又は4.5質量%以下、又は4.0質量%以下、又は3.5質量%以下とすることができる。
【0039】
本発明の液状調味料中のナトリウム含量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)の「ナトリウム」に準じ、原子吸光法を用いて測定する。
【0040】
本発明において、「ナトリウム」とは、ナトリウムイオンをいい、日本食品標準成分表2015年版(七訂)の「ナトリウム」に準じ、原子吸光法を用いて測定したものである。なお、本発明の液状調味料に含まれるナトリウムは、液状調味料の原料となる食材に含まれるものでもよく、本発明の液状調味料の製造時に、当該食材とは別に添加されるものでもよく、本発明の液状調味料の製造に伴い生じるものであってもよい。或いはこれらのうち2種以上の由来によるナトリウムが合計された結果として、前記の所定の含量及び/又は割合を満たすものであってもよい。本発明の液状調味料の製造時に外部からナトリウムを添加する場合、精製抽出された高純度の製剤に含有された状態のナトリウムを添加してもよく、ナトリウムを含む何らかの加工品(例えば食塩や抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当該液状調味料に含有されるナトリウムの過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましい。ナトリウムイオンを含むものとしては、例えばナトリウム塩が挙げられる。ナトリウム塩は、ナトリウムカチオンといくつかの無機酸又は有機酸の共役塩基アニオンで構成される塩である。ナトリウム塩としては、飲食品に適用可能なナトリウム塩であれば特に限定はされないが、例えば、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等が挙げられる。これらのナトリウム塩は、食塩、風味原料(鰹だし、昆布だし、昆布エキス、畜肉エキス、家禽エキス、魚介エキスなど)、アミノ酸系調味料(グルタミン酸ナトリウム等)、核酸系調味料(イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等)、有機酸系調味料(コハク酸ナトリウム等)の形態で使用してもよい。
【0041】
<可溶性炭水化物>
本発明の液状調味料は、可溶性炭水化物がナトリウムによりもたらされる上記効果を阻害するという観点から、ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合を所定値以下にする。
【0042】
本発明の液状調味料中の、ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合は、例えば0.05以上20以下の範囲であればよい。具体的には、その上限は通常20以下であるが、19以下、又は18以下、又は15以下、又は13以下、又は12以下、又は11以下、又は10以下、又は9.0以下、又は8.0以下、又は7.0以下、又は6.0以下、又は5.5以下、又は5.0以下、又は4.5以下、又は4.0以下、又は3.5以下が好ましい。一方、その下限は限定はされないが、0.05以上、又は0.1以上、又は0.2以上、又は0.3以上、又は0.5以上、又は0.7以上、又は1.0以上、又は1.5以上、又は2.0以上、又は2.5以上とすることができる。
【0043】
本発明の液状調味料中の可溶性炭水化物含量は、液状調味料中における前記ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合を満たすように添加する限り制限されないが、湿潤質量換算で、例えば0.01質量%以上60質量%以下の範囲とすることができる。具体的には、その上限は、通常60質量%以下であるが、50質量%以下、又は47質量%以下、又は45質量%以下、又は42質量%以下、又は40質量%以下、又は37質量%以下、又は35質量%以下、又は32質量%以下、又は30質量%以下、又は27質量%以下、又は25質量%以下、又は22質量%以下、又は20質量%以下、又は17質量%以下、又は15質量%以下、又は12質量%以下、又は10質量%以下、又は9.5質量%以下、又は9.0質量%以下、又は8.5質量%以下、又は8.0質量%以下とすることができる。一方、その下限は限定はされないが、0.01質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.1質量%以上、又は0.3質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上、又は2.0質量%以上、又は2.5質量%以上とすることができる。
【0044】
本発明の液状調味料中の可溶性炭水化物含量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)における「利用可能炭水化物(ぶどう糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖及びトレハロース)」の測定方法に準じて高速液体クロマトグラフ法を用いて測定し、各測定値を濃度既知の単糖類又は少糖類(2~10糖)標準品との含量と比較して得られた数値を合計することで求める。
【0045】
本発明において「可溶性炭水化物」とは、水に可溶な炭水化物をいい、単糖類及び少糖類(単糖が2~10個結合した糖類)の総称をいう。従って、それよりもはるかに多くの糖が結合したでんぷんは含まれない。
【0046】
本発明の液状調味料に含まれる可溶性炭水化物は、液状調味料の原料となる食用植物等の食材に含まれるものでもよく、本発明の液状調味料の製造時に、当該食材とは別に添加されるものでもよく、本発明の液状調味料の製造に伴い生じるものであってもよい。或いはこれらのうち2種以上の由来による可溶性炭水化物が合計された結果として、前記の所定の含量及び/又は割合を満たすものであってもよい。本発明の液状調味料の製造時に外部から可溶性炭水化物を添加する場合、精製抽出された高純度の製剤を添加してもよく、可溶性炭水化物を含む何らかの植物素材加工品(例えば抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当該液状調味料に含有される可溶性炭水化物の過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましく、食用植物由来であることがより好ましい。
【0047】
<酢酸換算酸度>
本発明の液状調味料は、味に深みがでるという観点から、ジヒドロカプサイシン濃度に対する酢酸換算酸度の割合が所定値以上とすることができる。ここで、「味の深み」とは、複数の基本味が合わさった、複合的な味わいをいう。
【0048】
本発明の液状調味料の酢酸換算酸度は、特に制限されないが、湿潤質量換算で、例えば、0.01質量%以上10質量%以下の範囲とすることができる。具体的には、その下限は、通常0.01質量%であるが、0.02質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.06質量%以上、又は0.07質量%以上、又は0.08質量%以上、又は0.09質量%以上、又は0.1質量%以上、又は0.2質量%以上、又は0.3質量%以上、又は0.4質量%以上、又は0.6質量%以上、又は0.8質量%以上、又は1.0質量%以上が好ましい。一方、その上限は、限定はされないが、10質量%以下、又は7.5質量%以下、又は5.0質量%以下、又は4.0質量%以下、又は3.5質量%以下、又は3.0質量%以下とすることができる。また上記規定を充足する場合において、喫食中の調味料温度が常温以下(例えば、20℃以下で、下限は特に制限されないが0℃以上)又は低温(例えば15℃以下で、下限は特に制限されないが0℃以上)となるような用途に用いる常温喫食調味料又は低温喫食調味料であることで、本願発明の効果である収斂味の抑制に加えて酢酸の揮発が抑制されるため、酢酸によるむせを抑えつつ辛味と辛味以外の味とのバランスがとれた調味料とすることができる。具体的には冷しうどんや冷やしそうめんなどの麺類のつけ汁や、下ゆでなどの前処理を施した食材を冷蔵処理や氷冷してから喫食する冷し鍋のつゆや、冷しゃぶのかけだれなどの用途が挙げられる。
【0049】
本発明において、酢酸換算酸度は、試料の採取を重量で行なう以外は、醸造酢の日本農林規格(令和元年12月13日農林水産省告示第1626号)に規定された「酸度」の測定方法に準じて測定する。具体的には、中和滴定法により試料中の水素イオン濃度を測定し、その数値に1価のカルボン酸である酢酸の分子量(60.05g/mol)を掛け合わせることで算出することができる。例えば、クエン酸濃度が0.20質量%の溶液の場合、酢酸換算酸度は0.19質量%となる。
【0050】
本発明において、「酢酸換算酸度」とは、本発明の液状調味料に含まれる全ての酸を酢酸に換算した酸度(%)をいう。なお、本発明の液状調味料に含まれる酸は、液状調味料の原料となる食用植物等の食材に含まれるものでもよく、本発明の液状調味料の製造時に、当該食材とは別に添加されるものでもよく、本発明の液状調味料の製造に伴い生じるものであってもよい。或いはこれらのうち2種以上の由来による酸が合計された結果として、前記の所定の含量及び/又は割合を満たすものであってもよい。本発明の液状調味料の製造時に外部から酸を添加する場合、精製抽出された高純度の製剤を添加してもよく、酸を含む何らかの植物素材加工品(例えば抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当該液状調味料に含有される酸の過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましい。
【0051】
また、本発明の液状調味料中の、ジヒドロカプサイシン濃度に対する酢酸換算酸度の割合は、特に制限されないが、例えば、0.01以上1000以下の範囲とすることができる。具体的には、その下限は、通常0.01以上であるが、0.05以上、又は0.07以上、又は0.1以上、又は0.12以上、又は0.15以上、又は0.17以上、又は0.2以上、又は0.25以上、又は0.5以上、又は0.75以上、又は1.0以上、又は1.25以上、又は1.5以上、又は2.0以上、又は2.5以上、又は3.0以上が好ましく、一方、その上限は、限定はされないが、1000以下、又は750以下、又は500以下、又は250以下、又は100以下、又は75以下、又は50以下とすることができる。
【0052】
<油脂>
本発明の液状調味料は、甘さの後引きが低減されるという観点から、油脂を含有してもよい。「甘さの後引き」とは、口に入れてから数秒たっても持続する甘さをいう。
【0053】
本発明の液状調味料中における油脂含量は特に制限されないが、湿潤質量換算で、例えば、0.01質量%以上80質量%以下の範囲とすることができる。具体的には、その上限は、通常80質量%以下であるが、75質量%以下、又は70質量%以下、又は65質量%以下が好ましく、一方、その下限は、限定はされないが、0.01質量%以上、又は0.02質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.05質量%以上とすることができる。
【0054】
本発明の液状調味料中の油脂含量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、ジエチルエーテルによるソックスレー抽出法で測定する。
【0055】
本発明の液状調味料中に含まれる油脂は、液状調味料の原料となる食用植物等の食材に含まれるものでもよく、本発明の液状調味料の製造時に、当該食材とは別に添加されるものでもよく、本発明の液状調味料の製造に伴い生じるものであってもよい。或いはこれらのうち2種以上の由来による油脂が合計された結果として、前記の所定の含量及び/又は割合を満たすものであってもよい。本発明の液状調味料の製造時に外部から油脂を添加する場合、精製抽出された高純度の油脂を添加してもよく、油脂を含む何らかの植物素材加工品(例えば抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当該液状調味料に含有される油脂の過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましく、食用植物由来であることがより好ましい。油脂の例としては、ごま油、菜種油、高オレイン酸菜種油、大豆油、パーム油、パームステアリン、パームオレイン、パーム核油、パーム分別油(PMF)、綿実油、コーン油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、サフラワー油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、香味油、ココナッツオイル、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、サラダ油、キャノーラ油、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油、乳脂、ギー、カカオバター等が挙げられる。これらの油脂は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本発明に用いる油脂は、1種の材料に由来するものであってもよく、2種以上の材料に由来するものであってもよい。また、油脂として、20℃において液体状の油脂を所定値以上用いる態様であっても良く、油脂全体の50質量%以上値、又は75質量%以上、又は100質量%が液体状の油脂であってもよい。また、油脂として、20℃において固体状の油脂を所定値以上用いる態様であってもよく、油脂全体の50質量%以上、又は75質量%以上、又は100質量%が固体状の油脂であってもよい。上記固体状油脂の規定を充足する場合において、喫食中の調味料温度が高温(50℃以上)となるような用途に用いる高温喫食調味料であることで、本願発明の効果である収斂味の抑制に加えて、溶解した油脂により辛みにコクを感じることができ、辛味と辛味以外の味とのバランスがとれた調味料とすることができる。具体的にはうどんやにゅうめんなどの温麺類のつけ汁や、食材を加熱しながら喫食する鍋のつゆや、焼き魚のかけだれなどの用途が挙げられる。
【0056】
また、ジヒドロカプサイシン抽出溶媒における油脂が上記規定を充足する態様であってもよく、抽出溶媒以外で液状調味料に含まれる油脂が上記規定を充足する態様であってもよい。
【0057】
<クエン酸>
本発明の液状調味料は、すっきりした辛さをもたらすという観点から、クエン酸を含有してもよく、酢酸換算酸度に対するクエン酸含量の割合が所定値以上であることが好ましい。
【0058】
本発明の液状調味料中の、酢酸換算酸度に対するクエン酸含量の割合は特に制限されないが、例えば、0.01以上100以下の範囲とすることができる。具体的には、その下限は通常0.01以上であるが、0.03以上、又は0.05以上、又は0.07以上、又は0.1以上、又は0.15以上、又は0.2以上、又は0.25以上、又は0.3以上が好ましく、一方、その上限は、限定はされないが、100以下、又は95以下、又は90以下、又は85以下とすることができる。
【0059】
本発明の液状調味料中のクエン酸含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、具体的には後述の実施例に記載の手法で測定する。
【0060】
本発明において、「クエン酸」とは、液状調味料中の原料又は添加物に由来するクエン酸分子とクエン酸イオンをいい、クエン酸含量とは、これらの合計濃度を表す。
【0061】
本発明の液状調味料に含まれるクエン酸は、液状調味料の原料となる食用植物等の食材に含まれるものでもよく、本発明の液状調味料の製造時に、当該食材とは別に添加されるものでもよく、本発明の液状調味料の製造に伴い生じるものであってもよい。或いはこれらのうち2種以上の由来によるクエン酸が合計された結果として、前記の所定の含量及び/又は割合を満たすものであってもよい。本発明の液状調味料の製造時に外部からクエン酸を添加する場合、精製抽出された高純度の製剤を添加してもよく、クエン酸を含む何らかの植物素材加工品(例えば抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当該液状調味料に含有されるクエン酸の過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましく、食用植物由来であることがより好ましい。クエン酸分子及びクエン酸イオンを含むものの例としては、果汁や有機酸系調味料、クエン酸塩が挙げられ、これらから単離された製剤として組成物に配合されたものであってもよい。クエン酸塩としては、例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム及びこれらの水和物(クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸三カリウム一水和物等)が挙げられる。
【0062】
<果汁含有率>
本発明の液状調味料中の果汁含有率(ストレート果汁換算)は特に制限されないが、湿潤質量換算で、例えば、0.05質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。具体的には、その下限は、通常0.05質量%以上であるが、0.1質量%以上、又は0.15質量%以上、又は0.2質量%以上が好ましく、一方、その上限は、100質量%以下、又は90質量%以下とすることができる。
【0063】
本発明において「果汁」とは、果実の搾汁液又は抽出等によって得られる果実の液部をいい、果実を裏ごし又はすりおろし処理したピューレ、おろしを使用する場合は、その内の液部をいう。本発明の液状調味料に使用する果汁としては、例えば、柑橘(例えば、レモン、バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジ、グレープフルーツ、ライム、シークワーサー、ダイダイ、ユズ、カボス、スダチ、シトロン、ブッシュカン、ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、スウィーティー、デコポン、イヨカン、タンカン、セミノール、ブンタン、マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、紀州ミカン、キンカン、ユコウ、ザボン、バンペイユ等)、リンゴ、パイナップル、桃、ぶどう、いちご、梨、バナナ、キウイ、カシス、アセロラ、ブルーベリー、ラズベリー、柿、アプリコット、グアバ、プラム、マンゴー、パパイヤ、ライチ等に由来する果汁が挙げられる。これらの果汁は、1種又は2種以上を用いることができる。また、上記果汁は、凍結、濃縮、還元等の加工を行ったものも用いることもできる。
【0064】
また、上記果汁は、クエン酸含量が湿潤質量換算で、0.1質量%以上、又は0.25質量%以上、又は0.5質量%以上、又は0.75質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であることが好ましく、果汁のJAS規格(果実飲料の日本農林規格 平成25年12月24日農林水産省告示第3118号)においてクエン酸規格として規格されている果汁が好ましく、なかでもレモン果汁、ライム果汁、カボス果汁が好ましい。また上記果汁は、糖度が1.0質量%以上、又は1.5質量%以上、又は2.0質量%以上、又は2.5質量%以上であることが好ましく、果汁のJAS規格(果実飲料の日本農林規格 平成25年12月24日農林水産省告示第3118号)において糖度規格として規格されている果汁が好ましく、なかでも柑橘果汁(糖度規格がない果汁を除く)又はリンゴ果汁が好ましい。また上記果汁は、D-リモネン濃度が0.1質量ppm以上、又は0.5質量ppm以上、又は1.0質量ppm以上であることが好ましく、柑橘果汁が好ましい。
【0065】
本発明において、「果汁含有率(ストレート果汁換算)」とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁を100%としたときの質量%濃度をいい、飲食品に配合される果汁の含有率(質量%)に、果汁の濃縮倍率を乗じて算出することができる。例えば、濃縮倍率が5倍であるリンゴ果汁を飲食品に10質量%で配合した場合には、果汁含有率(ストレート換算)は50質量%となる。また、各果汁の濃縮倍率は、例えば、JAS規格(果実飲料の日本農林規格 平成25年12月24日農林水産省告示第3118号)に示される各種果実のストレート果汁の糖用屈折計示度の基準又は酸度基準の最低値に基づいて、換算することができる。
【0066】
<D-リモネン>
本発明の液状調味料は、鼻から抜ける辛味を低減するという観点から、D-リモネンを含有してもよく、D-リモネン濃度が所定値以下であることが好ましい。
【0067】
本発明の液状調味料中のD-リモネン濃度は、特に制限されないが、湿潤質量換算で、例えば、0.01質量ppm以上70質量ppm以下の範囲とすることができる。具体的には、その上限は通常70質量ppm以下であるが、65質量ppm以下、又は60質量ppm以下、又は55質量ppm以下、又は50質量ppm以下、又は45質量ppm以下、又は40質量ppm以下が好ましく、一方、その下限は、0.01質量ppm以上、又は0.02質量ppm以上、又は0.03質量ppm以上、又は0.05質量ppm以上とすることができる。
【0068】
本発明の液状調味料中のD-リモネン濃度は、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS)を用いて、具体的には後述の実施例に記載の手法で測定する。
【0069】
D-リモネン(CAS番号:5989-27-5)は単環式モノテルペンの一種であり、典型的には、柑橘類の皮に含まれ、レモン様の芳香を有する香気成分である。本発明の液状調味料に含まれるD-リモネンは、液状調味料の原料となる食用植物等の食材に含まれるものでもよく、本発明の液状調味料の製造時に、当該食材とは別に添加されるものでもよく、本発明の液状調味料の製造に伴い生じるものであってもよい。或いはこれらのうち2種以上の由来によるD-リモネンが合計された結果として、前記の所定の含量及び/又は割合を満たすものであってもよい。本発明の液状調味料の製造時に外部からD-リモネンを添加する場合、精製抽出された高純度の製剤を添加してもよく、D-リモネンを含む何らかの植物素材加工品(例えば抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当該液状調味料に含有されるD-リモネンの過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましく、食用植物由来であることがより好ましい。D-リモネンを含有するものとしては、例えば香料や果汁、エキス等を挙げることができる。液状調味料への添加が少量で済むことから、香料が好ましい。香料の種類は特に限定されないが、柑橘系香料であることが好ましく、柑橘系香料の中ではレモン香料、又はオレンジ香料であることがより好ましい。
【0070】
<アミノ酸、核酸>
本発明の液状調味料は、塩カドや塩によるえぐみを低減するという観点から、アミノ酸又は核酸の少なくとも1種を含有してもよい。
【0071】
本発明において、「アミノ酸」とは、アミノ酸とその塩をいい、アミノ酸の種類は特に限定されない。本発明の液状調味料に含まれるアミノ酸は、液状調味料の原料となる食材に含まれるものでもよく、本発明の液状調味料の製造時に、当該食材とは別に添加されるものでもよく、本発明の液状調味料の製造に伴い生じるものであってもよい。或いはこれらのうち2種以上の由来によるアミノ酸が合計された結果として、所定の含量及び/又は割合を満たすものであってもよい。本発明の液状調味料の製造時に外部からアミノ酸を添加する場合、精製抽出された高純度の製剤を添加してもよく、アミノ酸を含む何らかの素材加工品(例えば抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当該液状調味料に含有されるアミノ酸の過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましい。アミノ酸を含むものとしては、例えばアミノ酸系調味料が挙げられ、アミノ酸系調味料の例としては、L-グルタミン酸ナトリウム、DL-アラニン、グリシン、L-又はDL-トリプトファン、L-フェニルアラニン、L-又はDL-メチオニン、L-リシン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アルギニン等が挙げられる。これらのアミノ酸は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。各アミノ酸はL体であってもよく、D体であってもよく、L体とD体とを任意の比率で含むDL体であってもよいが、L体が好ましい。本発明の液状調味料中のアミノ酸含量は特に制限されないが、湿潤質量換算で、例えば、0.01質量%以上30質量%以下の範囲とすることができる。具体的には、その下限は、通常0.01質量%以上であるが、0.02質量%以上、又は0.04質量%以上、又は0.06質量%以上、又は0.08質量%以上、0.09質量%以上が好ましく、一方、その上限は、30質量%以下、又は25質量%以下、又は20質量%以下とすることができる。
【0072】
本発明において、「核酸」とは、核酸とその塩をいう。本発明の液状調味料に含まれる核酸は、液状調味料の原料となる食材に含まれるものでもよく、本発明の液状調味料の製造時に、当該食材とは別に添加されるものでもよく、本発明の液状調味料の製造に伴い生じるものであってもよい。或いはこれらのうち2種以上の由来による核酸が合計された結果として、所定の含量及び/又は割合を満たすものであってもよい。本発明の液状調味料の製造時に外部から核酸を添加する場合、精製抽出された高純度の製剤を添加してもよく、核酸を含む何らかの素材加工品(例えば抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当該液状調味料に含有される核酸の過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましい。核酸を含むものとしては、例えばアミノ酸系調味料が挙げられ、核酸系調味料の例としては、例えば、5’-イノシン酸二ナトリウム、5’-グアニル酸二ナトリウム、5’-ウリジル酸二ナトリウム、5’-シチジル酸二ナトリウム、5’-リボヌクレオチドカルシウム、5’-リボヌクレオチド二ナトリウム等が挙げられ、なかでも甘味を付与できるため、5’-イノシン酸二ナトリウム又は5’-グアニル酸二ナトリウムが好ましく、5’-イノシン酸二ナトリウムがより好ましい。これらの核酸は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0073】
本発明の液状調味料中の核酸(例えば5’-イノシン酸二ナトリウムと5’-グアニル酸二ナトリウムの合計値、特に5’-イノシン酸二ナトリウム含量、5’-グアニル酸二ナトリウム含量)は、特に制限されないが、湿潤質量換算で、例えば、0.01質量%以上10質量%以下の範囲とすることができる。具体的には、その下限は、通常0.01質量%以上であるが、0.02質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.06質量%以上、又は0.07質量%以上、又は0.08質量%以上、又は0.09質量%以上が好ましい。一方、その上限は、限定はされないが、10質量%以下、又は7.5質量%以下、又は5.0質量%以下、又は4.0質量%以下、又は3.5質量%以下、又は3.0質量%以下とすることができる。
【0074】
<コハク酸、コハク酸ナトリウム>
本発明の液状調味料は、コハク酸及びコハク酸ナトリウムの少なくとも1種を含有してもよい。
【0075】
本発明の液状調味料中のコハク酸含量は、特に制限されないが、後引く渋味が生じる観点から、所定濃度以下であることが好ましい。具体的には、湿潤質量換算で、例えば、0.001質量%以上1.0質量%以下の範囲とすることができる。具体的には、その上限は、通常1.0質量%以下であるが、0.7質量%以下、又は0.5質量%以下、又は0.3質量%以下、又は0.1質量%以下、又は0.09質量%以下、又は0.08質量%以下、又は0.07質量%以下が好ましい。一方、その下限は、限定はされないが、0.001質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.01質量%以上、又は0.02質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.04質量%以上とすることができる。尚、「後引く渋味」とは、口に入れてから数秒たっても持続する渋味をいう。
【0076】
本発明の液状調味料中のコハク酸ナトリウム含量は、特に制限されないが、後引く渋味が生じる観点から、所定濃度以下であることが好ましい。具体的には、湿潤質量換算で、例えば、0.001質量%以上1.0質量%以下の範囲とすることができる。具体的には、その上限は、通常1.0質量%以下であるが、0.8質量%以下、又は0.6質量%以下、又は0.5質量%以下、又は0.4質量%以下、又は0.3質量%以下、又は0.2質量%以下、又は0.1質量%以下が好ましい。一方、その下限は、限定はされないが、0.001質量%以上、又は0.003質量%以上、又は0.005質量%以上、又は0.007質量%以上、又は0.01質量%以上、又は0.03質量%以上、又は0.05質量%以上、又は0.07質量%以上とすることができる。
【0077】
2.液状調味料の製造方法
本発明の液状調味料の製造方法は、特に限定されるものではなく、前記の各種要件を充足する液状調味料が得られる限りにおいて、任意の方法を用いることができるが、例えば、ジヒドロカプサイシン含有抽出物を液状調味料に添加することによって、本発明の液状調味料を効率的に製造することが可能である。
【0078】
本発明の液状調味料の製造方法の好ましい態様は、以下の(a)、(b)及び(c)の段階を含む。
(a)ジヒドロカプサイシン含有植物素材を抽出溶媒に添加する段階
(b)ジヒドロカプサイシン含有植物素材から抽出溶媒を用いてジヒドロカプサイシンを抽出し、ジヒドロカプサイシン含有抽出物を調製する段階
(c)段階(b)で調製したジヒドロカプサイシン含有抽出物を、ナトリウム含量が0.01質量%以上、及びナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が20以下である液状調味料に添加する段階
【0079】
段階(a)では、ジヒドロカプサイシン含有植物素材を抽出溶媒に添加する。ここで、抽出溶媒としては、特に限定されないが、後引く辛さの好ましさの観点から、疎水性が高い抽出溶媒を用いることが好ましく、例えば、エタノール又は油脂を含有する溶媒が挙げられる。また、抽出溶媒のpHは、ジヒドロカプサイシンの抽出効率の観点から、1.0以上11.0以下に調整することが好ましい。より具体的には、抽出溶媒のpHは11.0以下、10.5以下、10.0以下が好ましく、その下限は特に制限されないが、通常1.0以上、1.5以上、2.0以上、2.5以上が好ましい。
【0080】
本発明の方法において、ジヒドロカプサイシン含有植物素材を抽出溶媒に添加する段階(a)とともに、抽出溶媒のpHを上記範囲に調整する段階を含んでもよい。具体的には、抽出溶媒のpHの調整方法は、ジヒドロカプサイシン含有植物素材を抽出溶媒に添加する段階の後に抽出溶媒のpHを調整する段階を行う方法であってもよく、予めpHが所定範囲に調整された抽出溶媒にジヒドロカプサイシン含有植物素材を添加する方法であってもよい。pHの調整に際しては、抽出溶媒にpH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、グルコン酸カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)を溶解させることでpHを調整することができる。
【0081】
段階(b)では、ジヒドロカプサイシン含有植物素材から抽出溶媒を用いてジヒドロカプサイシンを抽出し、ジヒドロカプサイシン含有抽出物を調製する。ジヒドロカプサイシン含有植物素材はトウガラシなどジヒドロカプサイシンを含有する植物素材であれば、その品種や形態は特に限定されない。抽出とは、溶媒を用いて原料中に含まれる溶媒に可溶な成分を分離する操作を指す。ジヒドロカプサイシン含有抽出物は、ジヒドロカプサイシン含有植物素材を抽出溶媒に添加し、静置した後、ろ過を行うことによって調製できる。あるいは、ジヒドロカプサイシン含有植物素材を添加した抽出溶媒を特定の温度に加熱した後静置する、又は、攪拌しながら一定温度で保持することによっても調製できる。また、ジヒドロカプサイシン含有抽出物は、ジヒドロカプサイシン含有植物素材を抽出溶媒よりも相対的に多く含有するペースト状物であって、ペーストに含まれる抽出溶媒にジヒドロカプサイシンが抽出されたペースト状抽出物であってもよい。
【0082】
また、抽出溶媒を任意で加熱してもよい。加熱条件は特に限定されないが、加熱温度は例えば50℃以上200℃以下の範囲とすることができ、処理時間は例えば30秒以上120分間未満の範囲とすることができる。より具体的に、加熱温度の下限は、例えば50℃以上、又は55℃以上、又は60℃以上、又は65℃以上、又は70℃以上、又は75℃以上、又は80℃以上、又は85℃以上、又は90℃以上、又は95℃以上、その上限は通常200℃以下、又は190℃以下、又は180℃以下、又は170℃以下、又は160℃以下であればよく、加熱時間の下限は、例えば30秒以上、又は1分間以上、又は2分間以上、その上限は例えば120分間未満、110分間未満、100分間未満、90分間未満、又は80分間未満、又は70分間未満であればよい。一般的に加熱温度と加熱時間とは略相互依存の関係にもあり、加熱温度を高くするほど加熱時間は概ね短くて済む一方で、加熱時間を長くするほど加熱温度は概ね低くて済む傾向がある。よって、斯かる加熱温度及び加熱時間の関係を考慮し、それぞれ適切な範囲となるように設定すればよい。具体的には70℃以上200℃以下の範囲で110分間未満の加熱抽出を行ってもよく、80℃以上200℃以下の範囲で100分間未満の加熱抽出を行ってもよく、85℃以上200℃以下の範囲で90分間未満の加熱抽出を行ってもよい。
【0083】
また抽出溶媒にジヒドロカプサイシン含有植物素材及び抽出溶媒以外の食材を混合して段階(b)を行ってもよく、ジヒドロカプサイシンを抽出した後に、他の食材を添加したものを、ジヒドロカプサイシン含有抽出物としてもよい。また、段階(b)により得られたジヒドロカプサイシン含有抽出物は、ジヒドロカプサイシン含有植物素材と抽出溶媒を混合した後、固液分離によりジヒドロカプサイシン含有植物素材から採取することが好ましい。
【0084】
段階(c)では、段階(b)で得られたジヒドロカプサイシン含有抽出物を、ナトリウム含量が0.01質量%以上、及びナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合が20以下である液状調味料に添加する。段階(a)、段階(b)及び段階(c)は、別々に行われてもよく、2つ以上の段階が同時に行われてもよい。
【0085】
さらに、段階(c)では、段階(b)の抽出段階後に得られたジヒドロカプサイシン含有抽出物(単に「段階(b)抽出物」と称する場合がある)のpHを相対的に酸性側に調整することが好ましい。その技術的意義は段階(b)抽出物のpHを抽出段階から相対的に酸性側に調整することで、本発明の構成成分を固定化するためである。より具体的には、段階(b)抽出物(すなわち段階(b)の抽出段階後に得られたジヒドロカプサイシン含有抽出物)のpHと、段階(c)で得られる液状調味料のpHの低下差分が0.1以上10.0以下となるようにpHを調整することができる。より具体的には、その下限は0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上であってもよく、その上限は10.0以下、9.0以下、8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、4.0以下、3.0以下、2.0以下であってもよい。
【0086】
また、段階(c)において相対的に酸性側に調整された後のジヒドロカプサイシン含有抽出物のpHが所定の範囲に調整されていてもよい。具体的には、段階(c)において相対的に酸性側に調整された後のジヒドロカプサイシン含有抽出物のpHが2.0以上7.0未満となるように調整してもよい。より具体的には、その下限は2.0以上、2.5以上、3.0以上であればよく、その上限は特に制限されないが、通常7.0未満、6.5未満、6.0未満、5.5未満、5.0未満、4.6未満、4.0未満であればよい。
【0087】
また、本発明の方法において、段階(b)抽出物のpH調整に際しては、抽出溶媒にpH調整剤(例えば乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)を溶解させることでpHを相対的に酸性側に調整する方法であってもよく、抽出対象であるジヒドロカプサイシン含有植物素材からの抽出成分によって段階(b)抽出物のpHを相対的に酸性側に調整する方法であってもよく、ジヒドロカプサイシン含有抽出物に食品を添加するもしくは食品にジヒドロカプサイシン含有抽出物を添加することで食品の有する緩衝能によってジヒドロカプサイシン含有抽出物を含有する食品全体のpHを相対的に酸性側に調整する方法であってもよい。
【0088】
上記液状調味料には、ジヒドロカプサイシンを含み、ナトリウム含量、ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物の割合が上記した数値範囲内に入る限りにおいて、上記以外に、風味原料(鰹だし、昆布だし、鰹エキス、昆布エキス、魚介エキス、果汁など)、旨味調味料(醤油、魚醤、たん白加水分解物、酵母エキスなど)、乳化剤、増粘剤、野菜(ニンニク、ショウガ、オニオンなど)や野菜抽出物、酒精あるいは酒類などを、適宜配合することができる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されない。
【0090】
(試験例1)ナトリウム含量と、ナトリウム含量に対する可溶性炭水化物含量の割合の影響
(1)試料の調製
原料は、食塩として精製塩、可溶性炭水化物として上白糖、酢酸として醸造酢((株)ミツカン製、酢酸換算酸度15質量%)、クエン酸としてレモン果汁(クエン酸含量6.5質量%)、油脂としてこめ油を用いた。ジヒドロカプサイシンとして、トウガラシ10gを90%含水エタノール100gに攪拌しながら混合し、90℃15分間静置した後、ろ紙No2で濾過して得られたエタノール抽出物(ジヒドロカプサイシン含量0.024質量%、抽出後の水分含量82質量%)を用いた。これらの各原料を、表1-1、表1-2、及び表1-3に示すジヒドロカプサイシン(表中、「DC」と記載することもある)濃度、ナトリウム(表中、「Na」と記載することもある)含量、可溶性炭水化物含量、クエン酸含量、酢酸換算酸度、及び油脂含量となるように水に添加し、試験区1~26の試料を調製した。また、ジヒドロカプサイシンとして、エタノール抽出物に代えて、トウガラシ100gをサラダ油100g(湿潤質量換算)に攪拌しながら混合し、160℃15分静置した後、ろ紙No2で濾過して得られた油脂抽出物(ジヒドロカプサイシン含量0.024質量%、抽出後の水分含量35質量%)を用いる以外は、上記と同様にして試料を調製した。
【0091】
(2)試料中の成分含量の測定
(2-1)ジヒドロカプサイシン濃度
ジヒドロカプサイシン濃度は、次の方法により測定した。
5gの試料と内部標準液(ジフェニールアミン50ppm)1mLにメタノールを添加して25mLにメスアップした。得られた試料懸濁液に対して、40kHz、水温25℃で30分間超音波処理を行った後、2時間以上冷蔵後、上下に10回振って上清を0.45μmフィルターでろ過したろ液を測定に供した。以下の条件に従って、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、ジヒドロカプサイシンのピーク面積を分析した。また、メタノールで希釈したカプサイシン濃度が67質量%、ジヒドロカプサイシン濃度が30質量%である標品サンプル(富士フィルム和光純薬株式会社 和光1級 型番030-11353)に試料と同濃度で内部標準液を添加して同様に分析し、内部標準法によりジヒドロカプサイシン濃度を算出した。
<HPLC条件>
測定機器:高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製、機種LC-20AC)
移動相(1)アセトニトリル水溶液、流速1.0mL/min
移動相(2)0.1%リン酸水溶液、流速1.0mL/min
カラム:Cadeza CD-C18 150x4.6mm
カラム温度:40℃
検出:UV-VIS検出器 SPD-20A(島津製作所社製)
【0092】
(2-2)ナトリウム含量
ナトリウム含量は、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」の「ナトリウム」に準じ、原子吸光法を用いて測定した。
【0093】
(2-3)可溶性炭水化物含量
可溶性炭水化物及び単糖(グルコース、フルクトース含量)含量は、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」における「利用可能炭水化物(ぶどう糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖及びトレハロース)」の測定方法に準じて高速液体クロマトグラフ法を用いて測定し、各測定値を濃度既知の単糖類又は少糖類(2~10糖)標準品との含量と比較して得られた数値を合計することで求めた。
【0094】
(2-4)酢酸換算酸度の測定
酢酸換算酸度は、試料の採取を重量で行なう以外は、醸造酢の日本農林規格に規定された「酸度」の測定方法に準じて、中和滴定法によりサンプル中の水素イオン濃度を測定し、その数値に1価のカルボン酸である酢酸の分子量(60.05g/mol)を掛け合わせることで算出した。
【0095】
(2-5)クエン酸含量の測定
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、以下の条件にてクエン酸の含量を測定した。
<HPLC条件>
高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製、機種LC-10ADVP)
移動相(1)4mMp-トルエンスルホン酸水溶液、流速0.9mL/min
移動相(2)4mMp-トルエンスルホン酸、80μMEDTAを含む16mMBis-Tris水溶液、流速0.9mL/min
カラム:Shodex KC810P+KC-811×2(昭和電工社製)
カラム温度:50℃
検出:UV260nm
【0096】
(2-6)油脂含量の測定
油脂含量は、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」に準じ、ジエチルエーテルによるソックスレー抽出法で測定した。
【0097】
(2-7)水分含量の測定
水分含量は、日本食品標準成分表2020年版(八訂)に準じてカールフィッシャー法
で測定した。
【0098】
(3)官能評価試験
(1)で調製した試料について、以下の手順によりその官能評価を行った。
まず、各官能試験を行う官能検査員として、予め食品の味、食感や外観などの識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味、食感や外観などの品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜した。具体的には、下記A)~C)の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、食品の味や食感といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜した。
【0099】
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。
【0100】
次に、選抜した官能検査員10名にて、各試験区の試料の「塩による収斂味の抑制」、「塩味の立ち」、「総合評価(味のバランス)」の各評価項目について、下記の評価基準により官能評価を行った。「塩による収斂味の抑制」については、各試験区でジヒドロカプサイシンを添加しなかったものを対照とした。各項目の評価は、5段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか一つ選択する方式で評価した。評価結果の集計は、10名のスコアの算術平均値を算出し、小数点以下は四捨五入した。なお、全ての試験区について、品温20℃で評価を行った。
【0101】
<塩による収斂味の抑制>
5:対照より、塩による収斂味が顕著に抑えられており、好ましい。
4:対照より、塩による収斂味が抑えられており、やや好ましい。
3:対照より、塩による収斂味がやや抑えられており、許容範囲。
2:対照より、塩による収斂味がやや抑えられておらず、やや好ましくない。
1:対照より、塩による収斂味が抑えられておらず、好ましくない。
【0102】
<塩味の立ち>
5:塩味が非常に立っている。
4:塩味が立っている。
3:塩味がやや立っている。
2:塩味がやや立っていない。
1:塩味が立っていない。
【0103】
<総合評価(味のバランス)>
5:辛味と辛味以外の味とのバランスが非常にとれており、好ましい。
4:辛味と辛味以外の味とのバランスがとれており、やや好ましい。
3:辛味と辛味以外の味とのバランスがややとれており、許容範囲。
2:辛味と辛味以外の味とのバランスがややとれておらず、やや好ましくない。
1:辛味と辛味以外の味とのバランスがとれておらず、好ましくない。
【0104】
また、合わせて「味の深み」、「すっきりした辛さ」、「甘さの後引き低減」についても上記項目と同様の手順にて評価し、5点は++、4点は+とした。「甘さの後引き低減」については、各試験区で油脂を添加しなかったものを対照とした。
【0105】
<味の深み>
5:味が非常に深い。
4:味が深い。
3:味がやや深い。
2:味がやや深くない。
1:味が深くない。
【0106】
<すっきりした辛さ>
5:すっきりした辛さが非常に感じられる。
4:すっきりした辛さが感じられる。
3:すっきりした辛さがやや感じられる。
2:すっきりした辛さがやや感じられない。
1:すっきりした辛さが感じられない。
【0107】
<甘さの後引き低減>
5:対照より、甘さの後引きが顕著に低減しており、好ましい。
4:対照より、甘さの後引きが低減しており、やや好ましい。
3:対照より、甘さの後引きがやや低減しており、許容範囲。
2:対照より、甘さの後引きがやや低減しておらず、やや好ましくない。
1:対照より、甘さの後引きが低減しておらず、好ましくない。
【0108】
各試験区の試料の成分含量(DC濃度(質量ppm)、Na含量(質量%)、可溶性炭水化物含量(質量%)、クエン酸含量(質量%)、酢酸換算酸度(質量%)、及び油脂含量(質量%))の各測定値、これらの測定値をもとに算出した可溶性炭水化物含量/Na含量、DC濃度/Na含量、DC濃度/(可溶性炭水化物含量/Na含量)、酢酸換算酸度/DC濃度、クエン酸含量/酢酸換算酸度、及び油脂含量/可溶性炭水化物含量の各算出値、ならびに官能評価試験結果を表1-1、表1-2、及び表1-3に示す。
【0109】
なお、ジヒドロカプサイシンとして、油脂抽出物を用いた試料についても同様の結果が得られた。また、全ての試験区においてコハク酸及びコハク酸ナトリウムの含量がいずれも1.0質量%以下であり、後引く渋味を感じない品質であった(以下の試験例2~4の全ての試験区についても同様)。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
(試験例2)ジヒドロカプサイシンの影響
(1)試料の調製
試験例1と同様の原料を用い、各原料を、表2-1及び表2-2に示すジヒドロカプサイシン濃度、ナトリウム含量、可溶性炭水化物含量、クエン酸含量、酢酸換算酸度、及び油脂含量となるように水に添加し、試験区27~43の試料を調製した。
【0114】
(2)試料中の成分含量の測定
試料中の各成分含量は、試験例1と同様に測定した。
【0115】
(3)官能評価試験
(1)で調製した試料について、試験例1と同様にして官能評価を行った。
各試験区の試料の成分含量(DC濃度(質量ppm)、Na含量(質量%)、可溶性炭水化物含量(質量%)、クエン酸含量(質量%)、酢酸換算酸度(質量%)、及び油脂含量(質量%))の各測定値、これらの測定値をもとに算出した可溶性炭水化物含量/Na含量、DC濃度/Na含量、DC濃度/(可溶性炭水化物含量/Na含量)、酢酸換算酸度/DC濃度、クエン酸含量/酢酸換算酸度、及び油脂含量/可溶性炭水化物含量の各算出値、ならびに官能評価試験結果を表2-1及び表2-2に示す。
【0116】
【0117】
【0118】
(試験例3)酢酸換算酸度、クエン酸含量、油脂含量の影響
(1)試料の調製
試験例1と同様の原料を用い、各原料を、表3-1、表3-2及び表3-3に示すジヒドロカプサイシン濃度、ナトリウム含量、可溶性炭水化物含量、クエン酸含量、酢酸換算酸度、及び油脂含量となるように水に添加し、試験区44~78の試料を調製した。
【0119】
(2)試料中の成分含量の測定
試料中の成分含量は、試験例1と同様に測定した。
【0120】
(3)官能評価試験
(1)で調製した試料について、試験例1と同様にして官能評価を行った。
各試験区の試料の成分含量(DC濃度(質量ppm)、Na含量(質量%)、可溶性炭水化物含量(質量%)、クエン酸含量(質量%)、酢酸換算酸度(質量%)、及び油脂含量(質量%))の各測定値、これらの測定値をもとに算出した可溶性炭水化物含量/Na含量、DC濃度/Na含量、DC濃度/(可溶性炭水化物含量/Na含量)、酢酸換算酸度/DC濃度、クエン酸含量/酢酸換算酸度、及び油脂含量/可溶性炭水化物含量の各算出値、ならびに官能評価試験結果を表3-1、表3-2及び表3-3に示す。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
(試験例4)液状調味料における検討
(1)液状調味料の調製
表4-1に示す組成に従って原料(質量%)を配合し、表4-2及び表4-3に示すジヒドロカプサイシン濃度、ナトリウム含量、可溶性炭水化物含量、クエン酸含量、酢酸換算酸度、油脂含量、及びD-リモネン濃度となるように水に溶解し、試験区A~Hの液状調味料(ぽん酢醤油、たれ、つゆ)を調製した。なお、表4-1中、「配合」とあるのは、その原料を液状調味料に添加したことを意味する。ジヒドロカプサイシンは、実施例1で用いたエタノール抽出物の他に、トウガラシ35g(湿潤質量換算)をサラダ油350g(湿潤質量換算)に攪拌しながら混合し、160℃15分静置した後、ろ紙No2で濾過して得られた油脂抽出物(ジヒドロカプサイシン含量0.0031質量%、抽出後の水分含量7.0質量%)、各抽出物の原料として使用した乾燥粉末トウガラシ(ジヒドロカプサイシン含量0.3質量%、水分含量1.7質量%)を用いた。クエン酸は、表4-2及び表4-3に記載されたクエン酸含量となるように、適宜市販品を添加することで調整した。またD-リモネンは、表4-2及び表4-3に記載されたD-リモネン濃度となるように、適宜市販品を添加することで調整した。
【0125】
【0126】
(2)液状調味料中の成分含量の測定
D-リモネン以外の液状調味料中の成分含量は、試験例1と同様に測定した。
D-リモネン濃度は、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ分析質量分析法(SPME-GC-MS)を用いて、以下の条件にて測定した。
【0127】
〔D-リモネンの測定方法・条件〕
〔1〕D-リモネンの分離濃縮方法
以下の条件に従って、固相マイクロ抽出法で香気成分の分離濃縮を行う。
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー StableFlex 50/30μm,DVB/Carboxen/PDMS(SUPELCO社製)
・揮発性成分抽出装置
PAL3 RSI120(CTC Analytics社製)
予備加熱:40℃15min
攪拌速度:300rpm
揮発性成分抽出:40℃20min
脱着時間:10分
【0128】
〔2〕D-リモネンの測定方法
ガスクロマトグラフ法及び質量分析法を用い、以下の条件に従って、D-リモネンのピーク面積の比を測定した。
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器:Agilent 7980B GC System (Agilent Technologies社製)
・GCカラム:DB-WAX (Agilent Technologies社製) 長さ30m,口径0.25mm,膜厚0.25μm
・キャリア:Heガス、ガス流量1.0mL/min
・温度条件:35℃(5min)保持→120℃まで5℃/min昇温→220℃まで15℃/min昇温→6分間保持
<質量分析条件>
・測定機器:Agilent 7000C GC/MS Triple Quad(Agilent Technologies社製)
・イオン化方式:EI(イオン化電圧70eV)
・スキャン質量:29.0~350.0
【0129】
〔3〕成分の定量方法(外部標準法)
無水エタノールで希釈した濃度既知のD-リモネン(配合に使用したものと同一のもの)を、標品サンプルとして分析し、検出されたピーク面積をもとに検量線を作成した。分析サンプルの分析結果を検量線にあてはめ、含量を算出した。具体的には、定量イオンm/z=136.0、確認イオンm/z=93、107、121に基づいて各試料中の成分ピークを特定し、ピーク面積を求めた。なお、本発明における「m/z」とは、各成分のm/z中心値における-0.3~+0.7の範囲において検出された値をいう。得られた各成分のピーク面積から、溶媒での希釈率を考慮して、各試料に含まれる各成分の濃度を算出した。
【0130】
(3)官能評価試験
(1)で調製した液状調味料中について、試験例1と同様にして官能評価を行った。また、合わせて「鼻から抜ける辛味」や「後引く辛さの好ましさ」についても評価して、コメントを記載した。「鼻から抜ける辛味」については、各試験区でD-リモネンを添加しなかったものを対照とした。なお、試験区Gについては、品温60℃でも評価を行ったが、品温20℃と同様の結果となった。
【0131】
各試験区の試料の成分含量(DC濃度(質量ppm)、Na含量(質量%)、可溶性炭水化物含量(質量%)、クエン酸含量(質量%)、リモネン濃度(質量ppm)、酢酸換算酸度(質量%)、及び油脂含量(質量%))の各測定値、これらの測定値をもとに算出した可溶性炭水化物含量/Na含量、DC濃度/Na含量、DC濃度/(可溶性炭水化物含量/Na含量)、酢酸換算酸度/DC濃度、クエン酸含量/酢酸換算酸度、及び油脂含量/可溶性炭水化物含量の各算出値、ならびに官能評価試験結果を表4-2及び表4-3に示す。
【0132】
【0133】
【0134】
本発明は、ぽん酢醤油、たれ類、つゆ類などの液状調味料の製造分野において利用できる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書に組み入れるものとする。