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特許7654427電界共鳴型無線送電装置及び電界共鳴型無線電力伝送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】電界共鳴型無線送電装置及び電界共鳴型無線電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20250325BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250325BHJP
【FI】
H02J50/05
H02J7/00 301D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021038961
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022138850
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】奥寺 暁大
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/125731(WO,A1)
【文献】特開2020-142336(JP,A)
【文献】特開2000-134809(JP,A)
【文献】特開2020-088896(JP,A)
【文献】特開2016-189686(JP,A)
【文献】特開2019-176591(JP,A)
【文献】特開2013-223303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 -50/90
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の送電側電極である第1の送電側電極及び第2の送電側電極を含む送電側電極ユニットと、
前記送電側電極ユニットから離間して配置される送電側コイルと、を備え
前記送電側電極と前記送電側コイルとを接続する送電側伝送線は、平衡線からなり、
前記送電側伝送線は、前記第1の送電側電極と接続される第1の送電側伝送線と、前記第2の送電側電極と接続される第2の送電側伝送線と、を有し、
前記送電側コイルは、前記第1の送電側伝送線と接続される第1の送電側コイルと、前記第2の送電側伝送線と接続される第2の送電側コイルと、を有し、
前記第1の送電側電極は、前記第1の送電側伝送線及び前記第1の送電側コイルを介して、交流電流を供給する電源本体の送電側の一方の端子に前記第1の送電側伝送線及び前記第1の送電側コイルの順に接続され、前記第2の送電側電極は、前記第2の送電側伝送線及び前記第2の送電側コイルを介して、前記電源本体の送電側の他方の端子に前記第2の送電側伝送線及び前記第2の送電側コイルの順に接続される、
電界共鳴型無線送電装置。
【請求項2】
前記一対の送電側電極が一対の平板電極である
請求項1に記載の電界共鳴型無線送電装置。
【請求項3】
前記電源本体を収容する電源筐体を更に備え、
前記送電側コイルが、前記電源筐体の内側に配置される
請求項1または請求項2に記載の電界共鳴型無線送電装置。
【請求項4】
前記電源本体を収容する電源筐体を更に備え、
前記送電側コイルが、前記送電側電極ユニットと前記電源筐体との間に配置される
請求項1または請求項2に記載の電界共鳴型無線送電装置。
【請求項5】
請求項1からの何れか1項に記載の電界共鳴型無線送電装置と、
前記電界共鳴型無線送電装置から電力が伝送される電界共鳴型無線受電装置と、
を備える
電界共鳴型無線電力伝送システム。
【請求項6】
前記電界共鳴型無線受電装置は、
前記一対の送電側電極に対応する一対の受電側電極からなる受電側電極ユニットと、
前記受電側電極ユニットから離間して配置される受電側コイルと、を有する
請求項に記載の電界共鳴型無線電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界共鳴型無線送電装置及び電界共鳴型無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や電気自動車等の普及に伴い、無線で電力を供給する、電界共鳴型無線電力伝送システムの開発が積極的になされている。送電側の電極と受電側の電極とからなるカプラにて電界共鳴させ無線で電力伝送する技術が提案されるに至っている。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6200446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
共振コイルが送電側電極あるいは受電側電極と一体に配置される場合、共振コイルを含めたカプラが大型化する。そして、伝送電力が大きいと、コイルの発熱が大きくなりカプラ部に放熱機構が必要になり、更にカプラが大型化するという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる電界共鳴型無線送電装置及び電界共鳴型無線電力伝送システムは、一対の送電側電極を含む電極ユニットと、電極ユニットから離間して配置される送電側コイルと、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、カプラ部のサイズ、重量を低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態にかかる電界共鳴型無線電力伝送システムのブロック図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる電界共鳴型無線電力伝送システムの回路構成の模式図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるカプラ本体部の断面構成図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる電源、送電側電極ユニット、受電側電極ユニットを示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態における効率、反射、損失を示す図である。
図6】本発明の一実施形態にかかるカプラ本体部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態にかかる電界共鳴型無線送電装置及び電界共鳴型無線電力伝送システムについて図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付す。図に示す直交座標系XYZにおいて、電極平面に平行な一方向をX軸方向、X方向に直交する平面内の方向をY軸方向、電極平面と直交する方向をZ軸方向とする。以下、適宜この座標系を利用して説明する。
【0009】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1に係る電界共鳴型無線送電装置及び電界共鳴型無線電力伝送システムSを図1から図5を参照して説明する。
【0010】
図1に本発明の一実施形態にかかる電界共鳴型無線電力伝送システムSのブロック図を示す。電界共鳴型無線電力伝送システムSは、電界共鳴型無線送電装置1と電界共鳴型無線受電装置2と、を備える。
【0011】
まず、電界共鳴型無線送電装置1の構成から説明する。電界共鳴型無線送電装置1は、電源筐体4と送電側電極ユニット301Aを備える。電源筐体4は、電源本体41、昇圧部6、送電側コイルL1、冷却装置42を有する。電源本体41から送出された電力は昇圧部6により昇圧される。昇圧部6は、電源本体41から出力された電圧を昇圧し、送電に適した電圧に変換する。昇圧された電力は、送電側コイルL1を介して送電側電極ユニット301Aに送電される。送電側電極ユニット301Aは、送電側コンデンサC12及び送電側カプラ本体部301を有する。送電された電力は送電側カプラ本体部301から電界共鳴型無線受電装置2に伝送される。冷却装置42は電源筐体4に具備された各装置を冷却する。
【0012】
電界共鳴型無線受電装置2の構成について説明する。電界共鳴型無線受電装置2は、受電側カプラ本体部302と、受電側リアクタンス調整回路32と、降圧部8と、整流回路9と、を備えており、負荷5に接続される。受電側カプラ本体部302は、送電側カプラ本体部301から無線伝送により電力を伝送される。受電側カプラ本体部302と受電側リアクタンス調整回路32とは受電側電極ユニット302Aを構成する。受電側カプラ本体部302によって受電された電力は、受電側リアクタンス調整回路32、降圧部8、整流回路9を介して負荷5に伝送される。降圧部8は送電された電圧を回路に適した電圧に変換する。整流回路9は交流で伝送されてきた電力を直流に変換する。負荷5とは、例えば蓄電池であり、産業機器や携帯電子機器等に採用されている。産業機器としては、電気自動車、携帯電子機器としては、ラップトップパソコン、スマートフォン、携帯音楽プレーヤ等が挙げられる。
【0013】
送電側リアクタンス調整回路31、送電側カプラ本体部301、受電側カプラ本体部302、受電側リアクタンス調整回路32は、カップリング部3を構成して、電界共鳴無線伝送をもたらす。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態にかかる電界共鳴型無線電力伝送システムSの回路構成の模式図である。図2に示す第1の送電側平板電極11と第2の送電側平板電極12は、送電側カプラ本体部301に保持されるものであり、第1の受電側平板電極21と第2の受電側平板電極22は受電側カプラ本体部302に保持されるものである。
【0015】
第1の送電側平板電極11と第1の受電側平板電極21との間に第1の容量Cm1が形成され、第2の送電側平板電極12と第2の受電側平板電極22との間に第2の容量Cm2が形成される。第1の送電側平板電極11と第2の送電側平板電極12との間には、電界の形成に伴う第1の浮遊容量C11が形成され、第1の受電側平板電極21と第2の受電側平板電極22との間には、電界の形成に伴う第2の浮遊容量C21が形成される。
【0016】
第1の送電側平板電極11と第2の送電側平板電極12との総称として、一対の送電側平板電極10と称する。第1の受電側平板電極21と第2の受電側平板電極22との総称として、一対の受電側平板電極20と称する。一対の送電側平板電極10と一対の受電側平板電極20とで形成される容量を総じて、Cmと称する。
【0017】
第1の送電側平板電極11は第1の送電側伝送線101及び第1の送電側コイルL11をこの順に介して電源本体41の送電側の一方の端子401に接続される。第2の送電側平板電極12は第2の送電側伝送線102及び送電側の第2の送電側コイルL12をこの順に介して電源本体41の送電側の他方の端子402に接続される。第1の送電側伝送線101と第2の送電側伝送線102とは、送電側コンデンサC12を介して接続されている。第1の送電側コイルL11、送電側の第2の送電側コイルL12、送電側コンデンサC12によって送電側リアクタンス調整回路31が形成されている。
【0018】
第1の送電側コイルL11と第2の送電側コイルL12とを総じて、送電側コイルL1と称する。第1の送電側伝送線101と第2の送電側伝送線102とを総じて、一対の送電側伝送線100と称する。
【0019】
第1の受電側平板電極21は第1の受電側伝送線201及び第1の受電側コイルL21をこの順に介して負荷5における受電側の一方の端子501に接続される。第2の受電側平板電極22は第2の受電側伝送線202及び第2の受電側コイルL22をこの順に介して負荷における受電側の他方の端子502に接続される。第1の受電側伝送線201と第2の受電側伝送線202とは、受電側コンデンサC22を介して接続されている。第1の受電側コイルL21、第2の受電側コイルL22、受電側コンデンサC22によって受電側リアクタンス調整回路32が形成されている。
【0020】
第1の受電側コイルL21と第2の受電側コイルL22とを総じて、受電側コイルL2と称する。第1の受電側伝送線201と第2の受電側伝送線202とを総じて、一対の受電側伝送線200と称する。
【0021】
上記のように、コイルとコンデンサとがカプラに対して設けられる容量結合型の無線電力伝送方式は、電界共鳴方式と称されるものである。
【0022】
図2に示す電源本体41からは交流が送電される。第1の容量Cm1、第2の容量Cm2に電荷は溜められ、あるいは放出されることで、電力は伝送される。第1の容量Cm1、第2の容量Cm2を介して電界共鳴型無線受電装置2に電力が伝達され、負荷5に電力が供給される。
【0023】
本実施の形態にかかる第1の送電側伝送線101は、リアクタンス調整回路を構成する第1の送電側コイルL11と送電側コンデンサC12との間が長く、また、本実施の形態にかかる第2の送電側伝送線102はリアクタンス調整回路を構成する第2の送電側コイルL12と送電側コンデンサC12との間が長い。送電側電極ユニット301Aから離間して第1の送電側コイルL11と第2の送電側コイルL12とが配置されている。送電側カプラ本体部301を有する筐体からは、第1の送電側伝送線101及び第2の送電側伝送線102が引き出されている。
【0024】
送電側コンデンサC12、第1の送電側平板電極11、第2の送電側平板電極12、その他図3及び図4に示す送電側筐体13及びハンドル17等が送電側電極ユニット301Aを構成する。第1の受電側コイルL21、第2の受電側コイルL22、受電側コンデンサC22、第1の受電側平板電極21、第2の受電側平板電極22等が、受電側電極ユニット302Aを構成する。
【0025】
本実施の形態にかかるカップリング部3は、受電側の電極が対向して間隙を有し当該間隙に送電側の電極を挿入させるスロットイン方式である。以下、このスロットイン方式の構成と動作とを図3を用いて説明する。図3において、電極平面と平行な方向にX軸、Y軸を取り、送電側平板電極が挿入される方向をX軸方向とする。電極平面と垂直な方向をZ軸方向とする。Z軸方向を上方向と称する。
【0026】
電界共鳴型無線受電装置2は、板状の第1の受電側筐体23と第2の受電側筐体24とを互いに対向して有する。第1の受電側筐体23と第2の受電側筐体24とは、対向する面に第1の受電側平板電極21と第2の受電側平板電極22とをそれぞれ有する。第1の受電側平板電極21と第2の受電側平板電極22とは、その表面が第3の高誘電率樹脂25と第4の高誘電率樹脂26とによりそれぞれ被覆されている。
【0027】
電界共鳴型無線送電装置1は、板状あるいは箱状の送電側筐体13を有する。送電側筐体13は上下の面に第1の送電側平板電極11と第2の送電側平板電極12とをそれぞれ有する。第1の送電側平板電極11と第2の送電側平板電極12とは、その表面が第1の高誘電率樹脂15と第2の高誘電率樹脂16とによりそれぞれ被覆されている。これらの高誘電率樹脂による電極の被覆は電気的な短絡を防止する。
【0028】
給電時には、電界共鳴型無線送電装置1の送電側筐体13及び第1の送電側平板電極11及び第2の送電側平板電極12が、第1の受電側筐体23と第2の受電側筐体24との間の間隙27に挿入される。そして、第1の受電側平板電極21と第1の送電側平板電極11とが対向して図2における第1の容量Cm1を形成し、第2の受電側平板電極22と第2の送電側平板電極12とが対向して図2における第2の容量Cm2を形成する。
【0029】
電界共鳴型無線送電装置1の第1の送電側平板電極11と第2の送電側平板電極12とは、送電側筐体13を挟んで対向しており、図2に示す第1の浮遊容量C11を形成する。更に、第1の送電側伝送線101と第2の送電側伝送線102との間を結んで送電側コンデンサC12が設けられている。送電側コンデンサC12は、第1の送電側コイルL11と比べると小さいので、送電側筐体13の中に設けられている。
【0030】
送電側電源からは交流が送電される。プラスの電圧が送出されて、第1の送電側平板電極11に電源からプラス電荷が蓄積されると、第1の容量Cm1を介して、第1の受電側平板電極21にマイナス電荷が誘起される。そして、マイナス電圧が受電側に伝達される。マイナスの電圧が送出されて、第1の送電側平板電極11に電源からマイナス電荷が蓄積されると、第1の容量Cm1を介して、第1の受電側平板電極21にプラス電荷が誘起される。そして、プラス電圧が受電側に伝達される。そして、交流電力が受電側に伝達されることとなる。第2の送電側平板電極12と第2の受電側平板電極22との間にあっても同様に交流電力が伝達される。以上のように、送電側からの電力は、第1の容量Cm1及び第2の容量Cm2を通して、受電側装置に伝達される。
【0031】
図1に示すように、第1の送電側コイルL11及び第2の送電側コイルL12を合わせた送電側コイルL1は、電源筐体4に収められている。送電側電極ユニット301Aには送電側コイルL1は存在しない。送電側カプラ本体部301は第1の送電側平板電極11及び第2の送電側平板電極12及び板状あるいは箱状の送電側筐体13のみからなる。送電側電極ユニット301Aは、送電側カプラ本体部301と送電側コンデンサC12とを有する。
【0032】
カプラ部を手に持って扱う用途が考えられる。図4に実施の一形態の斜視図を示す。受電ステーションにて例えば自動車の充電カプラに電界共鳴型無線送電装置のカプラを装填するような場合である。電源筐体4から一対の送電側伝送線100が出て、送電側電極ユニット301Aに延びている。送電側筐体13を介して一対の送電側伝送線100は、第1の送電側平板電極11及び図示されていない第2の送電側平板電極12に接続されている。送電側電極ユニット301Aは、手で操作されることから、ハンドル17を備えている。送電側電極ユニット301Aは、受電側電極ユニット302Aに挿入される。
【0033】
図示されていない送電側コイルL1は、電源筐体4の中に収められる。
【0034】
本実施の形態によれば、ハンドル17は単に棒状であり、コイルのような重量物を有さない。操作性の優れた電界共鳴型無線送電装置が実現される。
【0035】
電力が大きくなるとコイルの発熱は無視できない存在となる。送電側コイルL1を送電側カプラ本体部301と隣接して設けた構成の場合、冷却構造や放熱構造をカプラに設ける必要が出てきてサイズアップにつながるおそれがある。更に、電力が大きいと放熱が問題になる。例えば、ハンドル部に熱を逃がす機構になると、ハンドル部が熱くなり持てなくなる懸念もある。
【0036】
本実施の形態にかかる電界共鳴型無線送電装置においては、送電側コイルL1を電源筐体4の中に入れることで電源筐体4に備えられる冷却装置42の冷却機能を利用することが可能である。送電側電極ユニット301Aのハンドル部が熱くなることも、サイズが大きくなることも避けられる。
【0037】
一対の送電側伝送線100に同軸線を用いると、上記離間の限界距離が短くなる。このため、伝送線として平衡線を用いることが望ましい。伝送率の低下を抑えることが出来る。平衡線として、架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(Cross-linked polyethylene insulated Vinyl sheath cable、CVケーブル)を使用することが好ましい。同軸ケーブルより安価にもできる。
【0038】
本実施の形態における伝送の透過率、反射率、損失の状況を図5に示す。第1の送電側コイルL11及び送電側の第2の送電側コイルL12が送電側カプラ本体部301に隣接して設けられた比較例の結果を図5A図5B図5Cに示す。本実施の形態にかかる状況を図5D図5E図5Fに示す。図5A及び図5Dは効率を示す。図5B及び図5Eは反射率を示す。図5C及び図5Fは損失を示す。
【0039】
図5A図5Dとを比較すると、本実施の形態にかかる電界共鳴型無線送電装置では、効率の低下は5%に抑えられ、損失は3%の増加に抑えられている。延長分の寄生抵抗で効率が低下するが、上記した大きさ、重量、温度等のメリットを勘案すると、無視出来る効率の低下である。
【0040】
本実施の形態にかかる電界共鳴型無線電力伝送システムを自動車の給電システムに採用することが有効である。充電ステーションにあって、送電用のカプラを運転者が操作し、自動車に設けられた受電用カプラに挿入する。送電用カプラが軽量であり、容易に運転者が操作することが出来る。
【0041】
(変形例1)
送電側コイルL1を電源筐体4の中に設けるのではなく、送電側コイルL1のみを独立させることが好ましい。すなわち、送電側電極ユニット301Aと電源筐体4との間に送電側コイルL1を配置させることが好ましい。送電側コイルL1での発熱が冷却装置を必要せず、重量が問題ないレベルであれば、送電側コイルL1をケーブルの一部とみなして全体のシステムを構築することが出来る。
【0042】
(変形例2)
送電側コンデンサC12を送電側電極ユニット301Aに設けるのではなく、電源筐体4の中に設けることも好ましい。送電側電極ユニット301Aの大きさ、重量を更に小さくすることが出来る。
(変形例3)
送電側コンデンサC12のない構成を採ることもできる。一般的に共鳴させるためには、コンデンサ容量とコイルのインダクタンスとの積を最適化する必要があり、コンデンサ容量が小さいとそれだけインダクタンスが必要となり、コイルが大型化する。本実施の形態にあっては、送電側コイルL1は電源筐体4の中に備えられておりカプラ部のサイズ及び重量には影響しないので、送電側コイルL1の大型化は問題とならない。送電側コンデンサC12がないことで、より送電側電極ユニット301Aが小型軽量化される。
【0043】
(変形例4)
実施の形態1は、送電側コイルL1のみについて説明した。受電側コイルL2を受電側電極ユニット302Aから離すこと、更には、負荷5の筐体内に収納する構成が有効である。負荷5の筐体内にも、冷却装置が設けられているケースが多い。この場合には、受電側コイルL2の冷却を同時に行うことが出来る。送電側電極ユニット301Aと同様に、受電側電極ユニット302Aも薄型軽量とすることが出来る。変形例3と同様に、受電側コンデンサC22のない構成も好ましい。
【0044】
(変形例5)
上記のように実施の形態1、変形例1から変形例5を説明したが、これらを適宜組み合わせることが好ましい。送電側電極ユニット301A、受電側電極ユニット302Aのサイズ、重量を小さくすることが可能である。
【0045】
(実施の形態2)
実施の形態1では、送電側の電極及び受電側の電極は、互いに平行な平面上に配置されていた。本実施の形態2は、図6に示すように、第1の送電側平板電極11と第2の送電側平板電極12とを同一の平面上に並んで配置する。同様に、第1の受電側平板電極21と第2の受電側平板電極22とは同一の平面上に並んで配置される。
【0046】
第1の送電側平板電極11と12との間には電界が形成されており、図2に示す第1の浮遊容量C11が形成されている。第1の受電側平板電極21と第2の受電側平板電極22との間には電界が形成されており、第2の浮遊容量C21が形成されている。
【0047】
給電時には、電界共鳴型無線送電装置1の第1の送電側平板電極11は電界共鳴型無線受電装置2の第1の受電側平板電極21と対向し、電界共鳴型無線送電装置1の第2の送電側平板電極12は電界共鳴型無線受電装置2の第2の受電側平板電極22と対向する位置関係となることが好ましい。
【0048】
一対の送電側平板電極10は、第1の送電側コイルL11あるいは第2の送電側コイルL12を介して電源本体41に接続されており、一対の受電側平板電極20は、第1の受電側コイルL21あるいは第2の受電側コイルL22を介して負荷5に接続されている。
【0049】
第1の送電側平板電極11と第2の送電側平板電極12とで送電側カプラ本体部301を構成し、第1の受電側平板電極21と第2の受電側平板電極22とで受電側カプラ本体部302を構成する。
【0050】
上記実施の形態1及び実施の形態2においては、送電側及び受電側電極として、送電側平板電極及び受電側平板電極を適用している。ここにおいて、送電側電極と受電側電極とで容量を構成するのであれば、電極の形状は平板に限られない。例えば、曲線型あるいは球型の電極を採用することが出来る。
【0051】
以上説明した実施形態にかかる電界共鳴型無線送電装置によれば以下のような効果を奏する。
【0052】
電界共鳴型無線送電装置1は、一対の送電側電極10を含む送電側電極ユニット301Aと、送電側電極ユニット301Aから離間して配置される送電側コイルL1と、を備える。
【0053】
重量質量の大きい送電側コイルL1が送電側電極ユニット301Aから離間することで、送電側電極ユニット301Aが小型軽量化される。また、発熱源である送電側コイルL1により送電側電極ユニット301Aが熱くなることがない。あるいは、発熱源である送電側コイルL1を冷却するための冷却装置を送電側電極ユニット301Aに設ける必要がなく、この理由からも、送電側電極ユニット301Aが小型軽量化される。
【0054】
電界共鳴型無線送電装置1であって、電源本体41を収容する電源筐体4を更に備え、送電側コイルL1が、電源筐体4の内側に配置される。
【0055】
発熱体である送電側コイルL1を、電源筐体4内に設けられた冷却装置42により冷却することができる。
【0056】
電界共鳴型無線送電装置1は電源本体41を収容する電源筐体4を更に備え、送電側コイルL1が、電源筐体4から離間して配置される。
【0057】
電源筐体4の質量重量の増加を防止できる。
【0058】
電界共鳴型無線送電装置1であって、一対の送電側平板電極10と送電側コイルL1とを接続する一対の送電側伝送線100が平衡線からなる。
【0059】
伝送効率の低下が抑えられる。
【0060】
電界共鳴型無線電力伝送システムSは、上記の電界共鳴型無線送電装置1と、電界共鳴型無線送電装置1から電力が伝送される電界共鳴型無線受電装置2とを備える。
【0061】
送電側電極ユニット301Aが小型軽量であり、送電側コイルL1が電源筐体4内に設けられた冷却装置42により冷却され、伝送効率の高い、電界共鳴型無線電力伝送システムが得られる。
【0062】
電界共鳴型無線電力伝送システムは、一対の送電側平板電極に対応する一対の受電側平板電極からなる電極ユニットと、電極ユニットから離間して配置される受電側コイルと、を有する電界共鳴型無線受電装置を備える
【0063】
受電側電極ユニット302Aが小型軽量化される。
【0064】
本開示は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0065】
1 電界共鳴型無線送電装置、2 電界共鳴型無線受電装置、3 カップリング部、4 電源筐体、5 負荷、10 一対の送電側平板電極、11 第1の送電側平板電極、12 第2の送電側平板電極、20 一対の受電側平板電極、21 第1の受電側平板電極、22 第2の受電側平板電極、41 電源本体、301 送電側カプラ本体部、301A 送電側電極ユニット、302 受電側カプラ本体部、 302A 受電側電極ユニット、L1 送電側コイル、L11 第1の送電側コイル、L12 第2の送電側コイル、L2 受電側コイル、L21 第1の受電側コイル、L22 第2の受電側コイル、S 電界共鳴型無線電力伝送システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6