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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-24
(45)【発行日】2025-04-01
(54)【発明の名称】グロメットインナ及びグロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20250325BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20250325BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20250325BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
B60R16/02 622
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021109799
(22)【出願日】2021-07-01
(65)【公開番号】P2023006924
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】森野 智
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-023354(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H01B 17/58
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに設けられた貫通孔を挿通する電線を保護するグロメットを筒状のグロメット本体とともに構成し、前記貫通孔に挿通されるとともに、前記電線が内側を挿通する筒状のインナー本体と、該インナー本体の一端側に配置されるとともに径外側方向に延伸するフランジ部とで構成され、該グロメット本体の端部に装着されるとともに、前記貫通孔に固定されるグロメットインナであって、
周方向に対して分離する分離体で構成され、
隣接する前記分離体を係止固定する係止固定部と、
周方向に沿って隣接する前記分離体の一方に設けられ、他方に向けて突出する嵌合凸部と、前記分離体の他方に設けられ、前記嵌合凸部が嵌合される凹状の嵌合凹部とを備え、
前記分離体は、前記インナー本体を構成するインナー分離部と、前記フランジ部を構成するフランジ分離部とで一体構成され、
前記係止固定部は、
隣接する前記インナー分離部の一方側に設けられた係止固定片と、
隣接する前記インナー分離部の他方側に設けられ、前記係止固定片が係止される被係止部とで構成され、
前記嵌合凸部として、前記インナー分離部における周方向の一端側から、隣接する前記インナー分離部に向けて突出するインナー凸部を備え、
前記嵌合凹部として、隣接する前記インナー分離部における他端側に設けられたインナー凹部を備え、
前記電線を挿通する方向を挿通方向とし、
前記係止固定片は、前記インナー分離部における周方向の一端側から、隣接する前記インナー分離部に向けて突出する平板状で構成され、
前記被係止部は、前記係止固定片が挿入される被挿入部で構成され、
前記インナー凸部は、前記係止固定片に比べて、前記挿通方向に対する長さが短く、
前記嵌合凸部と前記嵌合凹部との嵌合により、係止固定された前記分離体同士の位置ずれを防止する
グロメットインナ。
【請求項2】
前記係止固定部は、前記インナー本体における径外側に配置され、
前記インナー凹部は、前記係止固定部と対応する位置において、前記インナー本体における径内側を径外側に向けて窪ませて形成された
請求項1に記載のグロメットインナ。
【請求項3】
前記嵌合凸部として、前記フランジ分離部における周方向の一端側から、前記インナー本体の周方向に沿って突出するフランジ凸部を備え、
前記嵌合凹部として、隣接する前記フランジ分離部における他端側に設けられたフランジ凹部で備えた
請求項1又は請求項2に記載のグロメットインナ。
【請求項4】
前記フランジ凸部は、前記フランジ分離部における径内側端部に設けられた
請求項3に記載のグロメットインナ。
【請求項5】
前記インナー分離部における周方向の一方側に前記係止固定片が設けられ、
前記インナー分離部における周方向の他方側には、他の前記インナー分離部と枢動可能に連結された枢動部が設けられた
請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに記載のグロメットインナ。
【請求項6】
前記インナー本体は、前記枢動部を介して2つの前記インナー分離部が一体で構成され、
前記枢動部は、前記電線を挿通する挿通方向から視て円形状又は角丸長方形状に構成された円弧部分に設けられ、
前記嵌合凸部及び前記嵌合凹部は、前記枢動部と対向する位置に設けられた
請求項5に記載のグロメットインナ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載のグロメットインナと、
内部に電線を挿通させる筒状の前記グロメット本体とで構成され、
前記グロメットインナが、前記グロメット本体の端部に装着された
グロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、パネルに挿通される電線を保護するグロメットを構成するグロメットインナ及び、前記グロメットインナを装着したグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両本体に設けられた電気機器類と、車両本体に対して開閉自在に取り付けられているドアの内部に設けられた電気機器類とは、ドアパネル及びボディパネル(以下、「パネル」とする。)により隔てて配置されており、それぞれのパネルに設けられた挿通孔に挿通させた電線を介して電気的に接続されている。
【0003】
この電線は、例えば特許文献1に開示されているような筒状のグロメットに挿通させることにより、挿通孔の周縁部と干渉して損傷することを防止している。 詳述すると、特許文献1に開示されているグロメットは、パネルに対して取り付ける可撓性を有する樹脂製の取付部と、取付部に装着されるとともにパネルに設けた挿通孔に挿通させるグロメットインナとを有する。
【0004】
そして、取付部から挿通方向の前方に延出する電線固定部に電線をテープなどで固定した状態で電線固定部を挿通孔に挿通させ、取付部とグロメットインナとでパネルを挟み込むことにより、挿通孔の周縁部に電線が干渉して損傷することなく、電線を挿通孔に挿通させることができる。
【0005】
ところで、特許文献1に開示されているグロメットインナは、分離可能な略同形状の分離体で構成されるとともに、分離体における一方側の端面に係合凸部を有し、他方側の端面に係合凸部が嵌合可能な係合凹部を備えている。これにより、電線の所望の位置にグロメットインナを組み付けることができるとされている。しかしながら、特許文献1のように、分離体を嵌合させるグロメットインナでは、分離体における一方側及び他方側において、係合凸部と係合凹部とを嵌合させたとしても、分離体同士の位置ずれが起きる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-180019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、分離体の位置ずれを防止できるグロメットインナ及び、前記グロメットインナを装着したグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、パネルに設けられた貫通孔を挿通する電線を保護するグロメットを筒状のグロメット本体とともに構成し、前記貫通孔に挿通されるとともに、前記電線が内側を挿通する筒状のインナー本体と、該インナー本体の一端側に配置されるとともに径外側方向に延伸するフランジ部とで構成され、該グロメット本体の端部に装着されるとともに、前記貫通孔に固定されるグロメットインナであって、周方向に対して分離する分離体で構成され、隣接する前記分離体を係止固定する係止固定部と、周方向に沿って隣接する前記分離体の一方に設けられ、他方に向けて突出する嵌合凸部と、前記分離体の他方に設けられ、前記嵌合凸部が嵌合される凹状の嵌合凹部とを備え、前記分離体は、前記インナー本体を構成するインナー分離部と、前記フランジ部を構成するフランジ分離部とで一体構成され、前記係止固定部は、隣接する前記インナー分離部の一方側に設けられた係止固定片と、隣接する前記インナー分離部の他方側に設けられ、前記係止固定片が係止される被係止部とで構成され、前記嵌合凸部として、前記インナー分離部における周方向の一端側から、隣接する前記インナー分離部に向けて突出するインナー凸部を備え、前記嵌合凹部として、隣接する前記インナー分離部における他端側に設けられたインナー凹部を備え、前記電線を挿通する方向を挿通方向とし、前記係止固定片は、前記インナー分離部における周方向の一端側から、隣接する前記インナー分離部に向けて突出する平板状で構成され、前記被係止部は、前記係止固定片が挿入される被挿入部で構成され、前記インナー凸部は、前記係止固定片に比べて、前記挿通方向に対する長さが短く、前記嵌合凸部と前記嵌合凹部との嵌合により、係止固定された前記分離体同士の位置ずれを防止することを特徴とする。
【0009】
またこの発明は、上述のグロメットインナと、内部に電線を挿通させる筒状のグロメット本体とで構成され、前記グロメットインナが、前記グロメット本体の端部に装着されたグロメットである。
【0010】
前記インナー分離部は、2部品、又はそれ以上に分離されてもよい。
前記嵌合凸部及び前記嵌合凹部が設けられた箇所は特に限定されず、例えば、前記インナー本体や前記フランジ部に設けられてもよい。
【0011】
この発明によると、嵌合凸部と嵌合凹部を嵌合させることにより、電線が挿通する挿通方向、あるいは、挿通方向から視た放射方向に対応する径方向の位置ずれを防止できる。このため、グロメット本体に対して適切にグロメットインナを装着させることができ、適正にパネルにグロメットを固定できる。また、係止固定部を適切な位置に配置でき、隣接する分離体同士を確実に固定できる。
【0012】
また、前記分離体は、前記インナー本体を構成するインナー分離部と、前記フランジ部を構成するフランジ分離部とで一体構成され、前記係止固定部は、隣接する前記インナー分離部の一方側に設けられた係止固定片と、隣接する前記インナー分離部の他方側に設けられ、前記係止固定片が係止される被係止部とで構成されている。
【0013】
これによると、嵌合凸部と嵌合凹部によりインナー分離部同士の位置ずれを防止することにより、確実に係止固定片を被係止部に係止することができる。このため、グロメット本体に対してフランジ部を装着させる場合に、係止固定部が装着を阻害せず、グロメット本体に対して所望の位置にインナー本体を配置できる。したがって、確実にグロメットをパネルに固定することができる。
【0014】
さらにまた、前記嵌合凸部として、前記インナー分離部における周方向の一端側から、隣接する前記インナー分離部に向けて突出するインナー凸部を備え、前記嵌合凹部として、隣接する前記インナー分離部における他端側に設けられたインナー凹部を備えている。
【0015】
これによると、係止固定片及び被係止部と同じくインナー分離部に設けられたインナー凸部及びインナー凹部を嵌合することで、前記電線を挿通する挿通方向に対する前記インナー分離部同士の位置ずれをより確実に防止できる。したがって、フランジ分離部同士が挿通方向に位置ずれすることなく、確実にフランジ部をグロメット本体に対して装着させることができる。また、挿通方向に対する前記インナー分離部同士の位置ずれを防止することで、係止固定片と被係止部とをより確実に係止固定できる。
【0016】
また、前記電線を挿通する方向を挿通方向とし、前記係止固定片は、前記インナー分離部における周方向の一端側から、隣接する前記インナー分離部に向けて突出する平板状で構成され、前記被係止部は、前記係止固定片が挿入される被挿入部で構成され、前記インナー凸部は、前記係止固定片に比べて、前記挿通方向に対する長さが短い。
【0017】
これによると、係止固定片に対する被係止部の公差に比べ、インナー凸部に対するとインナー凹部の公差を小さくすることができる。このため、インナー凹部に対してインナー凸部を嵌合させることにより、より確実に挿通方向に対する位置ずれを防止できる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記係止固定部は、前記インナー本体における径外側に配置され、前記インナー凹部は、前記係止固定部と対応する位置において、前記インナー本体における径内側を窪ませて形成されてもよい。
【0019】
この発明により、嵌合凸部が電線と干渉することなく、インナー分離部同士の位置ずれを防止することができる。また、係止固定片を被挿入部に挿入した挿入状態において、係止固定部と対応する位置に嵌合凸部及び嵌合凹部とを配置することで、分離体同士の位置ずれを確実に防止しつつ、被挿入部における所望の位置に係止固定片を挿入させて、分離体同士を確実に固定できる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記嵌合凸部として、前記フランジ分離部における周方向の一端側から、前記インナー本体の周方向に沿って突出するフランジ凸部を備え、前記嵌合凹部として、隣接する前記フランジ分離部における他端側に設けられたフランジ凹部を備えてもよい。
【0021】
この発明によると、フランジ凸部とフランジ凹部とを嵌合させることで、フランジ分離部の径方向の位置ずれを防止することができるため、確実にフランジ部をグロメット本体に対して装着させることができる。また、フランジ分離部にフランジ凸部及びフランジ凹部を設けることにより、インナー本体の剛性を低下させることなく、径方向に対するインナー分離部の位置ずれを防止できる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記フランジ凸部は、前記フランジ分離部における径内側端部に設けられてもよい。
この発明により、フランジ凹部によりフランジ凸部が径方向の内側及び外側の両方に対して規制されるため、フランジ分離部及びインナー分離部同士を径方向に対する位置ずれを確実に防止できる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記インナー分離部における周方向の一方側に係止固定片が設けられ、前記インナー分離部における周方向の他方側には、他の前記インナー分離部と枢動可能に連結された枢動部が設けられてもよい。
【0024】
前記枢動部は、インナー分離部同士を一体に連結している場合や、インナー分離部に設けられた部品同士を組み合わせることにより枢動可能に構成される場合を含む。すなわち、インナー分離部は、枢動部を介して一体又は別体で構成されている場合を含む。
【0025】
インナー分離部が3つ以上の場合には枢動部が一又は複数あってもよい。例えば、インナー本体が3つのインナー分離部で構成されている場合、2つのインナー分離部同士は固定部で固定されており、残り1つのインナー分離部と固定部で固定された2つのインナー分離部とが枢動部で連結されていてもよい。
【0026】
この発明によると、一端側が枢動部で連結されているため、枢動部を介してインナー分離部を枢動させるだけで、嵌合凸部を嵌合凹部に嵌合させるとともに、他端側の係止固定片を被係止部に係止させてインナー分離部同士を固定できる。これにより、容易かつ確実に係止固定片を被係止部に正しく係止させて、分離体同士を固定できるとともに、分離体同士の位置ずれを防止することができる。また、容易に電線に対してインナー本体を組み付けることができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記インナー本体は、前記枢動部を介して2つの前記インナー分離部が一体で構成され、前記枢動部は、前記電線を挿通する挿通方向から視て円形状又は角丸長方形状に構成された円弧部分に設けられ、前記嵌合凸部及び前記嵌合凹部は、前記枢動部と対向する位置に設けられてもよい。
上述の円形状又は角丸長方形状とは、真円や楕円の他、卵型のオーバル形状、あるいは円弧部分と長辺部分とで構成されたトラック形状などを含む。
【0028】
この発明によると、枢動部と対向する円弧部分において、嵌合凸部がインナー本体の周方向に向けて突出することとなるため、枢動部を介して容易かつ確実に嵌合凸部と嵌合凹部とを嵌合させることができる。したがって、インナー分離部同士の位置ずれを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0029】
この発明により、容易かつ確実に固定できるグロメットインナ及び、前記グロメットインナを装着したグロメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】パネルに取り付けた状態のグロメットの概略斜視図。
図2】グロメットの概略分解斜視図。
図3】グロメットインナの概略斜視図。
図4】閉じた状態のグロメットインナの概略平面図及び、概略側面図、概略正面図。
図5】開いた状態のグロメットインナの概略平面図及び概略正面図。
図6】グロメットインナにおける係止固定部の概略断面図。
図7】開いた状態のグロメットインナを閉じる工程での係止固定部の概略断面図。
図8】閉じた状態のグロメットインナの概略断面図。
図9】閉じた状態のグロメットインナの概略断面図。
図10】他の実施形態におけるグロメットインナの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
グロメット1は、図1及び図2に示すように、ボディパネルPに設けられた貫通孔P1を挿通する電線WHを保護する保護部材である。このグロメット1は、筒状のグロメット本体10と、グロメット本体10の端部に装着されるとともに、貫通孔P1に固定されるグロメットインナ20で構成されている。以下、グロメット1及びグロメットインナ20について、図1から図9に基づいて説明する。
【0032】
図1は、ボディパネルPに取り付けた状態のグロメット1の概略斜視図を示し、図2はグロメット1の概略分解斜視図を示す。なお、図1及び図2では、グロメット1の構造を明確にするために、ボディパネルPは点線で表示し、便宜上透過した状態として図示する。
【0033】
図3(a)はグロメットインナ20を後方側上方から視た概略斜視図を示し、図3(b)はグロメットインナ20を前方側下方から視た概略斜視図を示す。図4(a)及び図4(b)、図4(c)は閉じた状態のグロメットインナ20の概略平面図及び概略側面図、概略正面図をそれぞれ示す。図5(a)及び図5(b)は開いた状態のグロメットインナ20の概略平面図及び概略正面図を示し、図5(c)は開いた状態のグロメットインナ20における係止部33の拡大概略正面図を示す。
【0034】
図6は開いた状態のグロメットインナ20における係止固定部25の概略断面図を示す。具体的には、図6(a)は図5(a)におけるA-A矢視断面図を示し、図6(b)は図5(a)におけるB-B矢視断面図を示す。
【0035】
図7は、開いた状態のグロメットインナ20を閉じて係止固定する工程での係止固定部25の概略断面図を示す。具体的には、図7(a)は図5(b)におけるC-C矢視断面図を示し、図7(b)は係止部33を被係止部43に挿入させた状態におけるC-C矢視断面図に対応する断面図を示す。図8(a)は閉じた状態のグロメットインナ20におけるC-C矢視断面図に対応する断面図を示し、図8(b)は図8(a)における係止固定部25の拡大断面図を示す。
【0036】
図9(a)は、閉じた状態のグロメットインナ20におけるA-A矢視断面図に対応する断面図を示し、図9(b)は図9(a)における係止固定部25の拡大断面図を示す。なお、図10(a)は、開いた状態の他の実施形態でのグロメットインナ20におけるA-A矢視断面図に対応する拡大断面図を示し、図10(b)は閉じた状態の他の実施形態でのグロメットインナ20における係止固定部25に対応する拡大断面図を示す。
【0037】
ここで、図1における上下方向を高さ方向Hとし、高さ方向Hと直交するとともにグロメット本体10を構成する円筒部11の延びる方向を長手方向Lとし、高さ方向H及び長手方向Lに直交する方向を幅方向Wとする。また、図1中において、高さ方向Hに沿って上側を上方Huとし、下側を下方Hdとし、長手方向Lに沿って左側を後方Lb、右側を前方Lfとし、幅方向Wに沿って右側を右方Wr、右側を左方Wlとする。
【0038】
グロメット1は、例えば、車両本体の後部に開口(図示省略する、また、以下において「後部開口」とする)を形成するボディパネルPと、ヒンジを介してボディパネルPに取り付けられることで後部開口を開閉自在に塞ぐバックドアパネル(図示省略)とを有する自動車において、ボディパネルPとバックドアパネルとを橋渡しするように取り付けられている。そして、ボディパネルP及びバックドアパネルにより隔てて配置される電気機器類同士(図示省略)を接続する電線WHが内部に挿通している。
【0039】
グロメット1は、図1及び図2に示すように、内部に電線WHを挿通させる筒状のグロメット本体10と、グロメット本体10の端部に装着されるとともに、前記貫通孔に固定されるグロメットインナ20とで構成されている。
【0040】
グロメット本体10は、可撓性の樹脂で形成された中空状の筒状体であり、図1及び図2に示すように、長尺状の円筒で形成された円筒部11と、円筒部11の一端側(前方Lf)に設けられたボディ側取付部12と、円筒部11の他端側(後方Lb)に設けられたバックドア側取付部13とで構成されている。
【0041】
円筒部11は、断面中空状に形成された円柱体であり、電気機器類同士を電気的に接続する電線WHを内部空間に挿通させることができる。なお、円筒部11の中央部分は蛇腹状に構成されており、ボディパネルPに対するバックドアパネルを開閉に合わせて湾曲させることができる。
【0042】
ボディ側取付部12は、円筒部11の一端側(前方Lf)と連結した中空状の筒状体であり、ボディパネルPに取り付けられる。また、ボディ側取付部12には、電線WHをテープ固定するためのテープ固定部121が高さ方向Hに沿って延出している。なお、ボディ側取付部12は、グロメットインナ20を装着可能に構成されている。
【0043】
バックドア側取付部13は、円筒部11の他端側(後方Lb)と連結した中空状の筒状体であり、バックドアパネルに取り付けられる。このバックドア側取付部13は、内部にグロメットインナ20とは異なる別のグロメットインナー(図示省略)を装着可能に構成されている。
【0044】
ボディ側取付部12に装着可能なグロメットインナ20は、図3に示すように、貫通孔P1に挿通されるとともに、電線WHが内側を貫通する筒状のインナー本体21と、インナー本体21の下端側に配置されるとともに径外側方向に延伸するフランジ部22とで構成されている。また、インナー本体21の外周面には、インナー係止部23が所定の位置に設けられている
【0045】
ここで、径方向とは、平面視において、長円状に構成された筒状のインナー本体21の中心軸から放射状に沿った方向であり、径外側とは、径方向に沿ってインナー本体21の中心軸から外側に向けた方向をさし、径内側とは、径方向に沿ってインナー本体21の中心軸に向けた方向をさす。
【0046】
インナー本体21は、図3及び図4(a)に示すように、平面視において長円状(トラック状)に構成された略円柱体であり、平面視で直線状に形成された長軸部211,211と、平面視で半円状に形成されるとともに、端部が長軸部211,211の両端を連結する前方円弧部212と後方円弧部213とで構成されている。
【0047】
インナー本体21は、ボディパネルPに設けられた貫通孔P1よりもわずかに縮径された長円状で構成されており、図4(b)に示すように、後方円弧部213が長軸部211,211及び前方円弧部212よりもわずかに高くなるように構成されている。なお、インナー本体21の上端部分は、上方に向かうに伴い外周面が径内側にわずかに傾いて構成されている。
【0048】
長軸部211,211、前方円弧部212及び後方円弧部213の中央部分は径内側に向けて窪んでおり、この窪んだ部分には、フランジ部22を組み付けたボディ側取付部12とともにボディパネルPを挟み込んでグロメット1をボディパネルPに固定するインナー係止部23が径外側に向けて突出している。
【0049】
インナー係止部23は、図3図4(a)乃至図4(c)に示すように、径内側に窪んだ長軸部211,211又は前方円弧部212、後方円弧部213の中央部分から径外側に延伸している第1支持部231と、第1支持部231の径外側と連結している第1弾性変形部232と、第1弾性変形部232から下方に向けて延出している第1係止爪部233とで一体に構成されている。
【0050】
第1支持部231は、長軸部211及び前方円弧部212の上端部分から径外側に向けて突出する板状体である。なお、後方円弧部213は前方円弧部212と比べて上方に突出しているため、後方円弧部213に対応する第1支持部231は、後方円弧部213の上端よりやや下方Hdから径外側に向けて突出している。
【0051】
第1弾性変形部232は、第1支持部231の先端(径外側端部)から下方Hdに向けて延伸されている。
第1係止爪部233は、外面が第1弾性変形部232の先端から下方Hdに向かうに伴い径外側に向けて広がるように形成されるとともに、内面が下方Hdに向かうに伴い緩やかに径外側に向けて広がっている。また、第1係止爪部233の下面は下方Hdに向かうに伴い径内側に向けて傾斜するテーパ形状で形成されている。
【0052】
このように構成されたインナー係止部23は、第1支持部231が径外側に突出しているとともに、第1支持部231の先端から第1弾性変形部232及び第1係止爪部233が下方Hdに延伸している。また、インナー係止部23(第1係止爪部233)と、長軸部211、211又は前方円弧部212、後方円弧部213との間には第1係止爪部233が径方向の内側に移動できる空間が形成されている。なお、第1係止爪部233の外面は、インナー本体21の外周面からわずかに突出するように構成されている。
【0053】
フランジ部22は、インナー本体21の下端から径外側に延伸した平面視長円状の平板である。このフランジ部22の一部分には、グロメットインナ20をボディ側取付部12に装着させた状態において、ボディ側取付部12と係止するように径内側に向けて切り欠いた切欠き部221が設けられている。また、インナー係止部23に対応する箇所には高さ方向Hに沿った挿通孔が設けられている。
【0054】
このように構成されたグロメットインナ20は、周方向に対して一部が分離する第1分離体30と第2分離体40とで構成されている。第1分離体30と第2分離体40は、前方Lfがヒンジ部24を介して連結するとともに、ヒンジ部24の反対側に設けられた係止固定部25で周方向に対して係止固定できるように構成されている。
【0055】
第1分離体30は、図5に示すように、高さ方向Hに沿って立設する、平面視において半長円状の筒状体である第1インナー分離部31と、第1インナー分離部31の下端から径方向の外側に延伸する第1フランジ分離部32とで構成されている。
【0056】
平面視において半長円状に形成された第1インナー分離部31は、インナー本体21における左方Wlの長軸部211と、前方円弧部212の左方Wlの一部、後方円弧部213の左方Wlの一部に対応している。詳述すると、第1インナー分離部31の前方Lfの端部に形成される円弧部分は、左方Wlの長軸部211から弧長の約4分の1の長さだけ延出する前方円弧部212に対応する。すなわち、第1インナー分離部31の前方Lfの端部は、前方Lfに設けられたインナー係止部23と左方Wlの長軸部211における前方Lfの端部との中間部分となる。
【0057】
一方で、第1インナー分離部31の後方Lbの端部に対応する円弧部分は、左方Wlの長軸部211から弧長の約4分の3の長さだけ延出する後方円弧部213に対応する。すなわち、第1インナー分離部31の前方Lfの端部は、後方Lbに設けられたインナー係止部23と右方Wrの長軸部211における後方Lbの端部との中間部分となる。
【0058】
このように半長円状に形成された第1インナー分離部31の前方Lf端部における径外側には、高さ方向Hに沿ってヒンジ部24が備えられ、第1インナー分離部31の後方Lbの端部には、係止固定部25を構成する係止部33が後方円弧部213の接線方向に沿って延出している。
【0059】
前方Lfの前方円弧部212における左方Wlに設けられたヒンジ部24は、第1分離体30と、後述する第2分離体40とを一体に連結しており、第1分離体30に対して第2分離体40を枢動自在に構成している。
【0060】
係止部33は、第1インナー分離部31の径外側に配置されている。より具体的には、係止部33は第1インナー分離部31の右方Wrの端部から突出する平板状の固定片331と、固定片331の先端から径外側に向けて突出する係止凸部332とで構成されている。
固定片331は、第1インナー分離部31の径方向中央部分から第1インナー分離部31の右方Wrの端部における後方円弧部213の接線方向に突出しており、基端側において略長方形状に形成される平板部331aと、平板部331aの先端から突出方向に向かうに伴い先細りする略等脚台形状の先細部331bとで構成されている。なお、平板部331aの下端は第1フランジ分離部32の上端に対応する位置に配置され、平板部331aの上端は第1支持部231よりもやや下方Hdに配置されている。
【0061】
このように構成された平板部331aには、高さ方向Hの両端から高さ方向Hに向けて立設する挿通側変形部34が備えられている(図6(a)参照)。詳述すると、挿通側変形部34は、固定片331の突出方向から視て、高さ方向Hに向けて突出するに伴い先細りする断面略三角形状に構成されている。
【0062】
係止凸部332は、先細部331bの高さ方向Hの中央部分において、固定片331の法線方向の外側に向けて突出している。具体的には、係止凸部332は、先細部331bの先端から平板部331aに向かうに伴い、固定片331の法線方向の外側に向けて突出する平面視略直角三角形状で構成されている。なお、係止凸部332の高さ方向Hの長さは、先細部331bの先端における高さ方向Hの長さの約半分程度である。
【0063】
また、平板部331aの基端側には、法線方向の内側に向けて突出する、すなわち、隣接する第2分離体40に向けて突出する略直方体状のインナー嵌合凸部35が設けられている。このインナー嵌合凸部35における高さ方向Hの長さは、平板部331aの高さ方向Hの長さよりも短くなるように形成されている。より具体的には、インナー嵌合凸部35の高さ方向Hに沿った長さは、先細部331bの先端部分における高さ方向Hに沿った長さのおよそ半分である。なお、インナー嵌合凸部35の係止部33の延出方向に沿った長さは、平板部331aの係止部33の延出方向に沿った長さの半分程度である。
【0064】
第1フランジ分離部32は、第1インナー分離部31の下端から径外側に向けて延伸しており、ヒンジ部24に対応する箇所には第1分離体30に対して第2分離体40の枢動できるように切込みが設けられている。また、第1フランジ分離部32における係止部33に対応する位置には、第1フランジ分離部32と同じ板厚を有するとともに、第1フランジ分離部32の径内側の端部から係止部33に沿って延出するフランジ凸部36が設けられている。
なお、フランジ凸部36は、径方向に対する第1フランジ分離部32の幅のおよそ半分であるとともに、係止部33の延出方向に対するインナー嵌合凸部35の長さと略等しい長さで構成されている。
【0065】
第2分離体40は、図5に示すように、高さ方向Hに沿って立設する、平面視において半長円状の筒状体である第2インナー分離部41と、第2インナー分離部41の下端から径方向の外側に延伸する第2フランジ分離部42とで構成されている。
【0066】
平面視において半長円状に形成された第2インナー分離部41は、インナー本体21における右方Wrの長軸部211と、前方円弧部212の前方Lfの一部、後方円弧部213の後方Lbの一部に対応する。詳述すると、第2インナー分離部41の後方Lbの端部に形成される円弧部分は、右方Wrの長軸部211から弧長の約4分の1の長さだけ延出する後方円弧部213に対応する。すなわち、第2インナー分離部41の後方Lbの端部は、後方Lbに設けられたインナー係止部23と右方Wrの長軸部211における後方Lbの端部との中間部分となる。
【0067】
一方で、第2インナー分離部41の前方Lfの端部に対応する円弧部分は、右方Wrの長軸部211から弧長の約4分の3の長さだけ延出する前方円弧部212に対応する。すなわち、第2インナー分離部41の前方Lfの端部は、前方Lfに設けられたインナー係止部23と左方Wlの長軸部211における前方Lfの端部との中間部分となる。
【0068】
このように構成された第2インナー分離部41の前方Lf端部における径外側には、高さ方向Hに沿ってヒンジ部24が備えられている。また、第1インナー分離部31と隣接する第2インナー分離部41の後方Lbの端部には、係止部33が係止される被係止部43が設けられている。なお、被係止部43は係止部33とともに、係止固定部25を構成している。
【0069】
被係止部43は、図6(b)に示すように、係止部33を挿通可能に構成された中空状の枠体であり、第2インナー分離部41から径外側に向けて立設する軸部431,431と、軸部431,431の径外側端部を連結する外側架橋部432と、軸部431,431の径内側端部を連結する内側架橋部433とで構成され、係止部33を挿通可能な挿通空間Sが形成されている。
【0070】
軸部431,431は、後方円弧部213の上端及び第2インナー分離部41における下端に対応する位置から、径外側に向けて立設している。この軸部431,431の間隔は、平板部331aの高さ方向Hの長さより長く、上方Huの挿通側変形部34の先端と下方Hdの挿通側変形部34の先端との距離よりも短くなるように構成されている。すなわち、係止部33を被係止部43に挿入させた場合に、挿通側変形部34が軸部431,431と干渉するように構成されている。なお、被係止部43の第2インナー分離部41の接線方向に対する長さは、平板部331aよりもわずかに短くなっている。
【0071】
また、被係止部43の径内側を構成する内側架橋部433には、軸部431,431の基端側中央部分を後方円弧部213の接線方向に向けて窪ませたインナー嵌合凹部44が設けられている。このインナー嵌合凹部44の高さ方向Hの長さは、挿通側変形部34の高さ方向Hの長さと略同じとなるように構成されており、係止部33を挿通空間Sに挿通させることでインナー嵌合凸部35がインナー嵌合凹部44に嵌合するように構成されている。
【0072】
なお、インナー嵌合凸部35及びインナー嵌合凹部44の高さ方向Hに対する長さは、係止部33及び被係止部43に対する高さ方向Hの長さよりも短く、インナー嵌合凹部44に対する挿通側変形部34の公差は被係止部43に対する係止部33の公差よりも小さく構成されている。
【0073】
第2フランジ分離部42は、第2インナー分離部41の下端から径方向の外側に向けて延伸しており、ヒンジ部24に対応する箇所には第1分離体30に対して第2分離体40を枢動できるように切込みが設けられている。また、第2フランジ分離部42における被係止部43に対応する位置には、第2フランジ分離部42の径方向の内側端部から第2フランジ分離部42の接線方向に沿って窪ませたフランジ凹部45が設けられている。
【0074】
フランジ凹部45は、径方向に対する第2フランジ分離部42の幅のおよそ半分であるとともに、フランジ凸部36の延出方向に対する長さと略等しい長さで構成されている。また、フランジ凹部45における径方向の外側は、一部が切り欠かれている。
【0075】
次に、このように構成された第2分離体40を、ヒンジ部24を枢動軸として第1分離体30に対して枢動させ、第1分離体30と第2分離体40とを係止固定する方法について簡単に説明する。
はじめに、グロメット本体10に挿通させ、テープ固定部121にテープ固定した電線WHにおける所定の位置に、第1分離体30と第2分離体40とが開いた状態のグロメットインナ20を配置する(図7(a)参照)。
【0076】
そして、ヒンジ部24を枢動軸として第1分離体30に対して第2分離体40を枢動させることで、係止部33の先端が被係止部43に形成された挿通空間Sに挿入される(図7(b)参照)。このとき、係止部33は後方円弧部213の接線方向に向けて突出しているとともに、先細部331bが先細り形状で構成されているため、第1分離体30に対して第2分離体40を枢動させるだけで、係止部33は挿通空間Sに案内される。
【0077】
さらに、第1分離体30に対して第2分離体40を枢動させることで、平板部331aが挿通空間Sに挿入され、挿通側変形部34,34が対向する対向部分である軸部431,431の内面と当接して、圧接変形することとなる。また、インナー嵌合凸部35及びフランジ凸部36がインナー嵌合凹部44及びフランジ凹部45に嵌合されることとなる(図8(a)及び(b)参照)。
【0078】
ここで、インナー嵌合凹部44に対する挿通側変形部34の公差が、被係止部43に対する係止部33の公差よりも小さいため、インナー嵌合凸部35がインナー嵌合凹部44に嵌合することで、高さ方向Hにおける所定の位置に第1分離体30と第2分離体40とが配置されることとなる。このため、係止部33が被係止部43における中央部分に配置され、上方Huの挿通側変形部34と下方Hdの34とが均一に軸部431,431の内面と当接する。したがって、挿通側変形部34,34が軸部431,431により均一に圧接変形され、係止部33と被係止部43との間の高さ方向Hのガタつきを防止することができる(図9(a)及び図9(b)参照)。さらには、インナー嵌合凸部35がインナー嵌合凹部44に嵌合することで、高さ方向Hに対する第1分離体30と第2分離体40との位置ずれを防止できる。
【0079】
また、係止部33を被係止部43に挿入する過程において、フランジ凸部36がフランジ凹部45に嵌合されるため、径方向に対する第1分離体30と第2分離体40との位置ずれを防止することができるとともに、フランジ凹部45に嵌合したフランジ凸部36及びインナー嵌合凹部44に嵌合したインナー嵌合凸部35とで、被係止部43に対する所望の位置に係止部33を配置することができる。これにより、第1分離体30及び第2分離体40の高さ方向H及び径方向の位置ずれを防止するのみならず、係止凸部332が外側架橋部432の中央部分に確実に係止され、被係止部43に対して係止部33を確実に係止固定することができる。
【0080】
また、第1分離体30に対して第2分離体40の高さ方向H及び径方向の位置ずれを防止することで、第1分離体30と第2分離体40とが高さ方向H及び径方向に対して所望の位置に配置されるため、グロメットインナ20の強度が低下することなく、かつグロメットインナ20をボディ側取付部12における所望の位置に装着させることができる。これにより、グロメット1をボディパネルPに確実に固定することができる。
【0081】
このようにグロメットインナ20は、ボディパネルPに設けられた貫通孔P1を挿通する電線WHを保護するグロメット1を筒状のグロメット本体10とともに構成する。このグロメットインナ20は、貫通孔P1に挿通されるとともに、電線WHが内側を挿通する筒状のインナー本体21と、インナー本体21の一端側に配置されるとともに径外側方向に延伸するフランジ部22とで構成され、グロメット本体10の端部に装着されるとともに、貫通孔P1に固定される。また、グロメットインナ20は、周方向に対して分離する第1分離体30及び第2分離体40で構成され、隣接する第1分離体30及び第2分離体40を係止固定する係止固定部25と、周方向に沿って隣接する第1分離体30及び第2分離体40のうちの第1分離体30に設けられ、他方に向けて突出するインナー嵌合凸部35及びフランジ凸部36と、第2分離体40に設けられ、インナー嵌合凸部35及びフランジ凸部36が嵌合される凹状のインナー嵌合凹部44及びフランジ凹部45とを備えている。そして、インナー嵌合凸部35及びフランジ凸部36とインナー嵌合凹部44及びフランジ凹部45との嵌合により、係止固定された第1分離体30及び第2分離体40同士の位置ずれを防止する。
【0082】
このように構成されたグロメットインナ20は、隣接する第1分離体30及び第2分離体40を係止固定させる場合において、インナー嵌合凸部35及びフランジ凸部36とインナー嵌合凹部44及びフランジ凹部45を嵌合させることにより、電線WHが挿通する高さ方向H、あるいは、高さ方向Hから視た放射方向に対応する径方向の位置ずれを防止できる。このため、グロメット本体10に対して適切にグロメットインナ20を装着させることができ、適正にボディパネルPにグロメット1を固定できる。また、係止固定部25を適切な位置に配置でき、隣接する第1分離体30及び第2分離体40同士を確実に固定できる。
【0083】
また、第1分離体30及び第2分離体40は、インナー本体21を構成する第1インナー分離部31及び第2インナー分離部41と、フランジ部22を構成する第1フランジ分離部32及び第2フランジ分離部42とで一体構成され、係止固定部25は、隣接する第1インナー分離部31及び第2インナー分離部41の一方側に設けられた係止部33と、隣接する第1インナー分離部31及び第2インナー分離部41の他方側に設けられ、係止部33が係止される被係止部43で構成されている。
【0084】
これにより、インナー嵌合凸部35及びフランジ凸部36とインナー嵌合凹部44及びフランジ凹部45により第1インナー分離部31及び第2インナー分離部41同士の位置ずれを防止でき、確実に係止部33を被係止部43に係止固定することができる。このため、グロメット本体10に対してフランジ部22を装着させる場合に、係止固定部25が装着を阻害せず、グロメット本体10に対して所望の位置にインナー本体21を配置できる。したがって、確実にグロメット1を貫通孔P1に固定することができる。
【0085】
また、インナー嵌合凸部35は、第1インナー分離部31における周方向の一端側から、隣接する第2インナー分離部41に向けて突出するように構成され、インナー嵌合凹部44は、第2インナー分離部41における他端側に設けられている。
【0086】
これにより、係止部33及び被係止部43と同じく第1インナー分離部31及び第2インナー分離部41に設けられたインナー嵌合凸部35及びインナー嵌合凹部44を嵌合することで、電線WHを挿通する高さ方向Hに対する係止部33及び被係止部43の位置ずれをより確実に防止できる。したがって、第1分離体30と第2分離体40が高さ方向Hに位置ずれすることなく、確実にフランジ部22をグロメット本体10に対して装着させることができる。また、高さ方向Hに対する係止部33及び被係止部43の位置ずれを防止することで、係止部33と被係止部43とをより確実に係止固定できる。
【0087】
さらにまた、電線WHを挿通する方向を高さ方向Hとし、係止部33は、第1インナー分離部31における周方向の一端側から、隣接する第2インナー分離部41に向けて突出する平板状で構成され、被係止部43は、係止部33が挿入されるように構成され、インナー嵌合凸部35は、係止部33に比べて、高さ方向Hに対する長さが短い。
【0088】
これにより、係止部33に対する被係止部43の公差に比べ、インナー嵌合凸部35に対するとインナー嵌合凹部44の公差を小さくすることができる。このため、インナー嵌合凹部44に対してインナー嵌合凸部35を嵌合させることにより、より確実に高さ方向Hに対する位置ずれを防止できる。
【0089】
また、係止固定部25は、インナー本体21における径外側に配置され、インナー嵌合凹部44は、係止固定部25と対応する位置において、インナー本体21における径内側を窪ませて形成されている。これにより、インナー嵌合凸部35が電線WHと干渉することなく、第1インナー分離部31及び第2インナー分離部41の位置ずれを防止することができる。また、係止部33を被係止部43に挿入した挿入状態において、係止固定部25と対応する位置にインナー嵌合凸部35及びインナー嵌合凹部44とを配置することで、第1分離体30及び第2分離体40の位置ずれを確実に防止しつつ、被係止部43における所望の位置に係止部33を挿入させて、第1分離体30及び第2分離体40を確実に固定できる。
【0090】
また、フランジ凸部36は、第1フランジ分離部32における周方向の一端側から、インナー本体21の周方向に沿って突出するように構成され、フランジ凹部45は、第1フランジ分離部32と隣接する第2フランジ分離部42における他端側に設けられている。
【0091】
このため、フランジ凸部36とフランジ凹部45とを嵌合させることで、第1フランジ分離部32と第2フランジ分離部42との径方向の位置ずれを防止することができ、確実にフランジ部22をグロメット本体10に対して装着させることができる。また、第1フランジ分離部32及び第2フランジ分離部42にフランジ凸部36及びフランジ凹部45を設けることにより、インナー本体21の剛性を低下させることなく、径方向に対する第1インナー分離部31及び第2インナー分離部41の位置ずれを防止できる。
【0092】
また、フランジ凸部36は、第1フランジ分離部32における径内側端部に設けられているため、フランジ凹部45によりフランジ凸部36が径方向の内側及び外側の両方に対して規制され、第1フランジ分離部32及び第2フランジ分離部42と、第1インナー分離部31及び第2インナー分離部41との径方向に対する位置ずれを確実に防止できる。
【0093】
また、第1インナー分離部31における周方向の一方側に係止部33が設けられ、第1インナー分離部31における周方向の他方側には、第2インナー分離部41と枢動可能に連結されたヒンジ部24が設けられている。
【0094】
これによると、第1インナー分離部31と第2インナー分離部41は、一端側がヒンジ部24で連結されているため、ヒンジ部24を介して第1インナー分離部31及び第2インナー分離部41を枢動させるだけで、インナー嵌合凸部35及びフランジ凸部36をインナー嵌合凹部44及びフランジ凹部45に嵌合させることができる。また、ヒンジ部24が設けられた側と反対側に設けた係止部33を被係止部43に挿入させるのみで第1インナー分離部31及び第2インナー分離部41同士を固定できる。これにより、容易かつ確実に係止部33を被係止部43に正しく挿入させて、第1分離体30及び第2分離体40を固定できるとともに、第1分離体30及び第2分離体40の位置ずれを防止することができる。また、容易に電線WHに対してインナー本体21を組み付けることができる。
【0095】
また、インナー本体21は、ヒンジ部24を介して2つの第1インナー分離部31及び第2インナー分離部41が一体で構成され、ヒンジ部24は、電線WHを挿通する高さ方向Hから視て角丸長方形状に構成された円弧部分に設けられ、インナー嵌合凸部35及びフランジ凸部36、インナー嵌合凹部44及びフランジ凹部45は、ヒンジ部24と対向する位置に設けられている。
【0096】
これにより、ヒンジ部24と対向する円弧部分において、インナー嵌合凸部35及びフランジ凸部36がインナー本体21の周方向に向けて突出しているため、ヒンジ部24を介して容易かつ確実にインナー嵌合凸部35及びフランジ凸部36をインナー嵌合凹部44及びフランジ凹部45に嵌合させることができる。したがって、第1分離体30及び第2分離体40の位置ずれを確実に防止できる。
【0097】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、パネルは、ボディパネルPに対応し、同様に
貫通孔は、貫通孔P1に対応し、
電線WHは、電線WHに対応し、
グロメットは、グロメット1に対応し、
グロメット本体は、グロメット本体10に対応し、
インナー本体は、インナー本体21に対応し、
フランジ部は、フランジ部22に対応し、
グロメットインナは、グロメットインナ20に対応し、
分離体は、第1分離体30及び第2分離体40に対応し、
係止固定部は、係止固定部25に対応し、
嵌合凸部は、インナー嵌合凸部35及びフランジ凸部36に対応し、
嵌合凹部は、インナー嵌合凹部44及びフランジ凹部45に対応し、
インナー分離部は、第1インナー分離部31及び第2インナー分離部41に対応し、
フランジ分離部は、第1フランジ分離部32及び第2フランジ分離部42に対応し、
係止固定片は、係止部33に対応し、
被係止部は、被係止部43に対応し、
インナー凸部は、インナー嵌合凸部35に対応し、
インナー凹部は、インナー嵌合凹部44に対応し、
挿通方向は、高さ方向Hに対応し、
被挿入部は、被係止部43に対応し、
フランジ凸部は、フランジ凸部36に対応し、
フランジ凹部は、フランジ凹部45に対応し、
係止固定片は、係止部33に対応し、
枢動部は、ヒンジ部24に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0098】
例えば、本実施形態において、グロメットインナ20は、ヒンジ部24を介して一体に形成された第1分離体30と第2分離体40とで構成されているが、例えば、ヒンジ部24の代わりに係止固定部25などの固定可能な構成を設け、第1分離体30と第2分離体40とを完全に分離できる構成としてもよいし、分離可能な第1分離体30と第2分離体40の端部に、ヒンジ部24の代わりに第1分離体30と第2分離体40とを枢動させることができる組付部材を設けてもよい。
【0099】
また、本実施形態では、グロメットインナ20を第1分離体30と第2分離体40の2部品に分離しているが、2部品に限定されず、3部品以上に分離してもよい。この場合、ヒンジ部24を複数設けてもよい。
【0100】
さらにまた、本実施形態では、係止部33を挿通空間Sに挿入させると、係止凸部332を外側架橋部432に係止させることで、係止部33と被係止部43とを係止固定しているが、第1分離体30と第2分離体40とを固定できればこの構成である必要はない。
【0101】
また、本実施形態において、挿通側変形部34は、平板部331aの高さ方向Hの両端に設けられているが、例えば平板部331aの上方Hu又は下方Hdの一方のみに設けてもよいし、平板部331aの代わりに軸部431の内壁から挿通空間Sに沿って立設させてもよい。
【0102】
さらにまた、挿通側変形部34の代わりとして、平板部331aの径方向(径外側)から径外側に向けて立設する径側変形部37を備えてもよい(図10(a)参照)。この径側変形部37は、平板部331aにおける径外側の面から、平板部331aの法線方向に沿って立設しており、係止部33を挿通空間Sに挿入することで、外側架橋部432に対して当接して圧接変形する(図10(b)参照)。これにより、径方向に対する第1分離体30と第2分離体40とのがたつきを防止できる。
なお、径側変形部37は外側架橋部432の内面から径内側に立設していてもよく、また、挿通側変形部34と径側変形部37の両方を備えた構成としてもよい。
【0103】
なお、フランジ凸部36とフランジ凹部45を設けることにより、径側変形部37が圧接変形した場合であっても、第1インナー分離部31と第2インナー分離部41との径方向の位置ずれを確実に防止できるため、グロメットインナ20をボディ側取付部12に対して確実に装着することができる。
【0104】
さらにまた、本実施形態では、グロメットインナ20は平面視において角丸長方形状に構成されているが、真円や楕円の他、卵型のオーバル形状などの円形状に構成されていてもよい。
【0105】
さらには、本実施形態における係止部33が第2インナー分離部41に設けられ、被係止部43が第1インナー分離部31に設けられていてもよいし、係止部33及び被係止部43、後方円弧部213の他の箇所や、後方円弧部213以外の箇所に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 グロメット
10 グロメット本体
20 グロメットインナ
21 インナー本体
22 フランジ部
24 ヒンジ部
25 係止固定部
30 第1分離体
31 第1インナー分離部
32 第1フランジ分離部
33 係止部
35 インナー嵌合凸部
36 フランジ凸部
40 第2分離体
41 第2インナー分離部
42 第2フランジ分離部
43 被係止部
44 インナー嵌合凹部
45 フランジ凹部
H 高さ方向
P ボディパネル
P1 貫通孔
WH 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10