(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】全固体二次電池用バインダー組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20250326BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20250326BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20250326BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20250326BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20250326BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20250326BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20250326BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M4/13
C08L33/06
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2020563013
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2019047714
(87)【国際公開番号】W WO2020137434
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2018248081
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100119079
【氏名又は名称】伊藤 佐保子
(72)【発明者】
【氏名】松尾 祐作
(72)【発明者】
【氏名】園部 健矢
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-055049(JP,A)
【文献】特開2013-179040(JP,A)
【文献】特開2011-054439(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103730(WO,A1)
【文献】特開2013-008611(JP,A)
【文献】特開平04-114074(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146916(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/139
H01M 10/0562
H01M 10/0565
H01M 4/13
C08L 33/06
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体、老化防止剤及び有機溶媒を含む全固体二次電池用バインダー組成物であって、
前記重合体が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を
32質量%以上95質量%以下、α,β-不飽和ニトリル単量体単位を2質量%以上30質量%以下及び疎水性単量体単位を3質量%以上60質量%以下含有し、ゲル量が50質量%以下である重合体であり、
前記重合体100質量部に対する前記老化防止剤の量が0.005質量部以上0.5質量部以下である、
全固体二次電池用バインダー組成物。
【請求項2】
前記老化防止剤が、フェノール系老化防止剤及び有機リン系老化防止剤からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の全固体二次電池用バインダー組成物。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の全固体二次電池用バインダー組成物及び固体電解質を含む、全固体二次電池固体電解質層用スラリー組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の全固体二次電池用バインダー組成物、固体電解質及び電極活物質を含む、全固体二次電池電極用スラリー組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の全固体二次電池固体電解質層用スラリー組成物を用いて形成した全固体二次電池用固体電解質層。
【請求項6】
請求項4に記載の全固体二次電池電極用スラリー組成物を用いて形成した電極合材層を備える、全固体二次電池用電極。
【請求項7】
請求項5に記載の全固体二次電池用固体電解質及び請求項6に記載の全固体二次電池用電極の少なくとも一方を備える、全固体二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池用バインダー組成物、全固体二次電池固体電解質層用スラリー組成物、全固体二次電池電極用スラリー組成物、全固体二次電池用固体電解質層、全固体二次電池用電極及び全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の二次電池は、携帯情報端末や携帯電子機器等の携帯端末に加えて、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等、様々な用途での需要が増加している。そして、用途の広がりに伴い、二次電池には安全性の更なる向上が要求されている。
【0003】
そこで、安全性の高い二次電池として、引火性が高くて漏洩時の発火危険性が高い有機溶媒電解質に替えて固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。
【0004】
ここで、全固体二次電池は、正極及び負極の間に固体電解質層を有するものである。電極(正極、負極)は、電極活物質(正極活物質、負極活物質)、バインダー及び固体電解質を含むスラリー組成物を集電体上に塗布し、乾燥させて、集電体上に電極合材層(正極合材層、負極合材層)を設けることにより形成することができ、固体電解質層は、バインダー及び固体電解質を含むスラリー組成物を、電極又は離型基材の上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。全固体二次電池は、正極と負極とを、正極の正極合材層と負極の負極合材層とが固体電解質層を介して対向するように積層し、一般にプレス加工を経て作製される。
【0005】
従来、電極用又は固体電解質層用のスラリー組成物に含まれるバインダーの工夫により、全固体二次電池の性能向上を図る試みがなされている。
特許文献1には、バインダーに、粒子構造を有するポリマーと水溶性ポリマーを併用することにより、全固体二次電池の出力特性及び充放電サイクル特性を向上させることが記載されている。
【0006】
特許文献2~3には、バインダーに、アミド結合、ウレア結合、ウレタン結合及びイミド結合から選ばれるハードセグメントとソフトセグメントとを有するポリマーを用いることにより、加圧によらずに、固体電解質層に係る界面抵抗の上昇を抑制することが記載されている。
【0007】
特許文献4には、バインダーに、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド及び/又はポリエステルを用い、酸化防止剤を配合することにより、固体電解質やバインダーの酸化劣化を防止し、長期使用における性能低下を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2017/47378号
【文献】国際公開第2015/46313号
【文献】特開2015-88480号公報
【文献】特開2018-88306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2及び3では、特定のポリマーの調製が必要であり、実施に際して負荷が大きく、特許文献4では、さらに、酸化防止のため、バインダーに対し多量の酸化防止剤が配合されており、全固体二次電池の出力特性等への影響の懸念がある。
一方、特許文献1が目的とする出力特性及び充放電サイクル特性は、電気自動車や大型蓄電池等への応用も期待される全固体二次電池の特性のうち、特に着目されている特性であり、サイクル特性については高温領域での一層の向上が求められている。
【0010】
本発明の目的は、出力特性及び高温サイクル特性に優れた全固体二次電池をもたらすことができる、全固体二次電池用バインダー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、全固体二次電池用バインダー組成物において、バインダーとして特定の重合体を用い、特定量の老化防止剤を組み合わせることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明は、上記課題を有利に解決するものであり、
重合体、老化防止剤及び有機溶媒を含む全固体二次電池用バインダー組成物であって、
前記重合体が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を25質量%以上95質量%以下含有し、ゲル量が50質量%以下である重合体であり、
前記重合体100質量部に対する前記老化防止剤の量が0.005質量部以上0.5質量部以下である、
全固体二次電池用バインダー組成物に関する。
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を25質量%以上95質量%以下含有し、ゲル量が50質量%以下である重合体を、以下「(メタ)アクリル系重合体」ともいい、前記重合体100質量部に対し0.005質量部以上0.5質量部以下の量の老化剤を、以下「特定量の老化防止剤」ともいう。
【0013】
本明細書において、「全固体二次電池用バインダー組成物」は、全固体二次電池用スラリー組成物(全固体二次電池固体電解質層用スラリー組成物、全固体二次電池電極用スラリー組成物)を製造する際の材料を意味し、バインダー及び有機溶媒を含む。本発明の全固体二次電池用バインダー組成物は、バインダーが上記(メタ)アクリル系重合体であり、特定量の老化防止剤が配合されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の全固体二次電池用バインダー組成物が、全固体二次電池において、出力特性及び高温サイクル特性に優れた全固体二次電池をもたらすメカニズムは明らかではないが、以下のように推察することができる。
本発明の全固体二次電池用バインダー組成物は、これを用いた全固体二次電池用固体電解質層用スラリー組成物や全固体二次電池電極用スラリー組成物に対して、主に(メタ)アクリル系重合体に基づき分散性を付与するとともに、主に特定量の老化防止剤に基づき、それらのスラリー組成物を用いて形成される層に可塑性を付与する。このため、スラリー組成物塗工時のレベリング性が向上し、かつスラリー組成物乾燥後に形成される層の基材への密着性が向上する。これによって、全固体二次電池に優れた出力特性がもたらされる。
ここで、上記特定量の老化防止剤による可塑性の付与は、上記スラリー組成物を用いて形成される層中の各成分間のすべりを、特定量の老化防止剤が良好にすることによるものであり、同様の作用により、電池の製造過程で各層に圧力が負荷された際にも、特定量の老化防止剤は各層の内部応力を低減させる。これによって、充放電サイクルを繰り返した場合に、各層中の内部応力の存在が顕在下してサイクル特性を劣化させるといった事態が回避され、全固体二次電池に高温領域におけるサイクル特性の向上がもたらされる。
【0015】
上記のとおり、本発明の全固体二次電池用バインダー組成物を用いれば、プレス加工時の各層の内部応力を低減させることができる。また、スラリー組成物乾燥後に形成される層の密着性が向上するため、プレス加工時の圧力を低下させたり、バインダーの量を相対的に減らし、電極活物質や固体電解質の量を相対的に増やすことが可能となる。このように、本発明の全固体二次電池用バインダー組成物は、プレス加工という全固体二次電池の製造を前提とした電池性能(プレス性)の向上に効果的である。
【0016】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
本明細書において、「単量体単位」とは「その単量体由来の構造単位」を意味する。また、「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味し、単量体単位の含有割合は、重合体全体を100質量%とし、それに占める割合で表わされる。
本明細書において、「ゲル量」は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0017】
本発明の全固体二次電池用バインダー組成物においては、上記重合体が、さらにα,β-不飽和ニトリル単量体単位を含むことが好ましい。バインダーとして、さらにα,β-不飽和ニトリル単量体単位を含有する重合体を用いることにより、一層良好な分散性をスラリー組成物に付与することができ、それにより出力特性を効果的に向上させることができる。本発明の全固体二次電池用バインダー組成物においては、α,β-不飽和ニトリル単量体単位を2質量%以上30質量%以下で含有する重合体を用いることがさらに好ましい。
【0018】
本発明の全固体二次電池用バインダー組成物においては、上記重合体が、さらに疎水性単量体単位を含むことが好ましい。本明細書において、「疎水性単量体単位」とは、「その単量体自体の水への溶解性(25℃)が1g/1L以下であり、かつ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及びα,β-不飽和ニトリル単量体単位以外の単量体単位」を意味する。バインダーとして、さらに疎水性単量体単位を含有する重合体を用いることにより、一層良好な分散性をスラリー組成物に付与することができ、それにより出力特性を効果的に向上させることができる。本発明の全固体二次電池用バインダー組成物においては、疎水性単量体単位を3質量%以上60質量%以下で含有する重合体を用いることがさらに好ましい。
【0019】
本発明の全固体二次電池用バインダー組成物は、上記老化防止剤が、フェノール系老化防止剤及び有機リン系老化防止剤からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これらの老化防止剤を用いることにより、プレス性を効果的に向上させることができ、それにより高温サイクル特性を一層向上させることができる。
【0020】
本発明は、上記のいずれかの全固体二次電池用バインダー組成物及び固体電解質を含む、全固体二次電池固体電解質層用スラリー組成物に関する。本発明の全固体二次電池固体電解質用スラリー組成物は、分散性及びプレス性に優れ、全固体二次電池において、優れた出力特性及び高温サイクル特性をもたらすことができる。
【0021】
本発明は、上記のいずれかの全固体二次電池用バインダー組成物、電極活物質及び固体電解質を含む、全固体二次電池電極用スラリー組成物に関する。本発明の全固体二次電池電極用スラリー組成物は、分散性及びプレス性に優れ、全固体二次電池において、優れた出力特性及び高温サイクル特性をもたらすことができる。
【0022】
本発明は、上記全固体二次電池固体電解質層用スラリー組成物を用いて形成した全固体二次電池用固体電解質層に関する。本発明の全固体二次電池用固体電解質層は、全固体二次電池において、優れた出力特性及び高温サイクル特性をもたらすことができる。
【0023】
本発明は、上記全固体二次電池電極用スラリー組成物を用いて形成した電極合材層を備える、全固体二次電池用電極に関する。本発明の全固体二次電池用電極は、全固体二次電池において、優れた出力特性及び高温サイクル特性をもたらすことができる。
【0024】
本発明の全固体二次電池は、上記全固体二次電池用固体電解質層及び上記全固体二次電池用電極の少なくとも一方を備えるものであり、優れた出力特性及び高温サイクル特性を有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、出力特性及びサイクル特性に優れた全固体二次電池をもたらすことができる、全固体二次電池用バインダー組成物が提供される。
また、本発明によれば、出力特性及びサイクル特性に優れた全固体二次電池をもたらすことができる、全固体二次電池固体電解質層用スラリー組成物、全固体二次電池電極用スラリー組成物、全固体二次電池用固体電解質層及び全固体二次電池用電極が提供される。
本発明の全固体二次電池は、優れた出力特性及び高温サイクル特性を有しており、産業上有用性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の全固体二次電池用バインダー組成物は、全固体二次電池用スラリー組成物(全固体二次電池固体電解質層用スラリー組成物、全固体二次電池電極用スラリー組成物)を製造する際の材料として用いられる。
本発明の全固体二次電池固体電解質層用スラリー組成物は、全固体二次電池の固体電解質層を形成する際に用いられ、また、本発明の全固体二次電池電極用スラリー組成物は、全固体二次電池の電極合材層(正極合材層、負極合材層)を形成する際に用いられる。
本発明の全固体二次電池用電極(正極、負極)は、上記電極合材層(正極合材層、負極合材層)を備える。
本発明の全固体二次電池は、本発明の全固体二次電池用固体電解質層及び本発明の全固体二次電池用電極の少なくとも一方を備える。
【0027】
(全固体二次電池用バインダー組成物)
本発明の全固体二次電池用バインダー組成物は、重合体、老化防止剤及び有機溶媒を含む全固体二次電池用バインダー組成物であって、前記重合体が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を25質量%以上95質量%以下含有し、ゲル量が50質量%以下であり、前記重合体100質量部に対する前記老化防止剤の量が0.005質量部以上0.5質量部以下である。
【0028】
<(メタ)アクリル系重合体>
本発明における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を25質量%以上95質量%以下含有し、ゲル量が50質量%以下である重合体((メタ)アクリル系重合体)は、バインダー成分である。バインダー成分は、固体電解質層に含まれる成分同士を結着させたり、電極合材層に含まれる成分同士を結着させ、合材層から脱離しないように保持するための成分である。(メタ)アクリル系重合体は、1種又は2種以上の任意の比率での組み合わせであることができる。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位における(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート等のアクリル酸アルコキシエステル;2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、2-(パーフルオロペンチル)エチルアクリレート等の2-(パーフルオロアルキル)エチルアクリレート;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、へプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、n-テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル;2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート等のメタクリル酸アルコキシエステル;2-(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、2-(パーフルオロペンチル)エチルメタクリレート等の2-(パーフルオロアルキル)エチルメタクリレート;ベンジルアクリレート;ベンジルメタクリレート;等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体には、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸のジエステルも包含され、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等のイタコン酸の低級アルキルジエステル等が挙げられる。中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イタコン酸ジブチルが好ましく、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレートがより好ましい。これらは、1種又は2種以上の任意の比率での組み合わせであることができる。
【0030】
(メタ)アクリル系重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合は、25質量%以上95質量%以下である。バインダー組成物を用いたスラリー組成物における固体電解質等の分散状態が良好で、優れたレベリング性が得られ、出力特性の向上において有利である点から、好ましくは28質量%以上であり、より好ましくは30質量%であり、さらに好ましくは32質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは83質量%以下である。
【0031】
(メタ)アクリル系重合体のゲル量は、50質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは0%である。上記上限値以下であれば、バインダー組成物が有機溶媒に溶解しやすく、スラリー組成物において、固体電解質等の良好な分散状態を得やすい。ゲル量は、重合体における単量体の種類及び量、重合の際に使用される連鎖移動剤の種類及び量、重合温度等によって制御することができる。
【0032】
本発明における(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を25質量%以上95質量%以下で含み、ゲル量が50質量%以下であることが重要である。この点を満たす限り、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位以外の単量体単位の種類及び含有割合は、任意とすることができる。
【0033】
(メタ)アクリル系重合体は、さらにα,β-不飽和ニトリル単量体単位を含むことが好ましい。α,β-不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリル等が挙げられる。中でも、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。α,β-不飽和ニトリル単量体は、1種又は2種以上の任意の比率の組み合わせであることができる。
【0034】
α,β-不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%が特に好ましく、また、30質量%以下が好ましく、28質量%がより好ましく、26質量%以下が特に好ましい。上記下限値以上であれば、バインダー組成物を用いたスラリー組成物における、固体電解質等の分散状態を一層良好なものとし、効果的に出力特性を向上させることができる。上記上限値以下であれば、重合体が有機溶媒に溶解しやすい点で有利である。
【0035】
(メタ)アクリル系重合体は、さらに疎水性単量体単位を含むことができる。疎水性単量体単位としては、芳香族ビニル単量体単位、共役ジエン単量体単位、オレフィン単量体単位等が挙げられる。疎水性単量体単位は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、α,β-不飽和ニトリル単量体を包含しないこととする。疎水性単量体単位は、1種又は2種以上の任意の比率の組み合わせであることができる。
【0036】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系単量体等が挙げられる。中でも、スチレン、ビニルナフタレンが好ましい。
共役ジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン等の炭素数4以上の共役ジエン化合物が挙げられる。中でも、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。
オレフィン単量体としては、1-オレフィン単量体が挙げられ、1-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等が挙げられ、中でもエチレンが好ましい。オレフィン単量体単位は、共役ジエン単量体単位を水素化して得られる構造単位(共役ジエン水素化物単位)であることができ、中でも、1,3-ブタジエン単量体単位、イソプレン単量体単位を水素化して得られる構造単位である1,3-ブタジエン水素化物単位、イソプレン水素化物単位が好ましい。
【0037】
疎水性単量体単位の含有割合は、スラリー組成物における固体電解質等に対する一層の分散性の付与と、出力特性の一層の向上の点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、12質量%以上がさらに好ましく、14質量%以上が特に好ましく、また、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、45質量%以下が特に好ましい。また、上限及び下限が上記範囲であれば、全固体二次電池電極用スラリー組成物に用いた場合、電極活物質、導電材の分散性の向上を容易に図ることができる。
【0038】
(メタ)アクリル系重合体は、上記の各種単量体単位以外のその他の単量体単位を含んでいてもよい。その他の単量体単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸単量体;アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のアミド単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン単量体;N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル単量体;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有単量体;等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上の任意の比率の組み合わせであることができる。
【0039】
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位25質量%以上95質量%以下と、α,β-不飽和ニトリル単量体単位、疎水性単量体単位及びその他の単量体から選択される1つ以上とから構成されていることができる。α,β-不飽和ニトリル単量体単位、疎水性単量体単位及びその他の単量体の好適な量及び種類は、上記のとおりである。
【0040】
(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、スラリー保存安定性の点から、5万以上が好ましく、10万以上がより好ましく、また、スラリー分散性の点から、500万以下が好ましく、200万以下がより好ましい。
本明細書において、「重量平均分子量」は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0041】
(メタ)アクリル系重合体の調製方法は、特に限定されず、上記の単量体を含む単量体組成物を重合して(メタ)アクリル系重合体を得ることができる。単量体組成物中の各単量体の含有割合は、重合体の各単量体単位の含有割合に基づき定めることができる。
重合様式は、特に限定されず、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法等が挙げられる。各重合法において、必要に応じて、乳化剤、重合開始剤等を使用することができる。オレフィン単量体単位は、共役ジエン単量体単位を水素添加することにより導入することができる。水素添加の様式は、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。
【0042】
<老化防止剤>
本発明の全固体二次電池用バインダー組成物は老化防止剤を含む。老化防止剤は、特に限定されず、フェノール系老化防止剤、有機リン系老化防止剤、アミン系老化防止剤、キノン系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、フェノチアジン系老化防止剤等が挙げられる。一層良好な密着性が得られ、効果的にプレス性を向上することができる点から、フェノール系老化防止剤、有機リン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤、ホスファイト系老化防止剤がより好ましい。老化防止剤は、1種又は2種以上の任意の比率での組み合わせであることができる。老化防止剤は、フェノール系老化防止剤及び有機リン系老化防止剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、少なくともフェノール系老化防止剤を含むことがより好ましい。
【0043】
フェノール系老化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル(別名:オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、スチレン化フェノール、2,2'-メチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、p-クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチルー4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン等の硫黄非含有のフェノール系老化防止剤;2,2'-チオビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス-(6-t-ブチル-o-クレゾール)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(別名:2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)、4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-t-ブチルフェノール(別名:2,6-ジ-t-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール)等の硫黄含有のフェノール系老化防止剤等が挙げられる。硫黄非含有のフェノール系老化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルが好ましく、硫黄含有のフェノール系老化防止剤としては、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノールが好ましい。これらは、1種又は2種以上の任意の比率での組み合わせであることができる。硫黄含有のフェノール系老化防止剤と硫黄非含有のフェノール系老化防止剤を併用することもできる。
【0044】
有機リン系老化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(別名;サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト))、トリス(ノニルフェニルホスファイト)、トリス(モノ(又はジ)ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等のホスファイト系老化防止剤;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のホスファフェナントレン環を有する老化防止剤が挙げられる。ホスファイト系老化防止剤が好ましく、プレス性の向上の点から、長鎖アルキル(例えば、炭素原子数9以上)を有するホスファイト系老化防止剤がより好ましく、例えば、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(ノニルフェニルホスファイト)、トリス(モノ(又はジ)ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
【0045】
アミン系老化防止剤としては、ビス(4-t-ブチルフェニル)アミン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンとの反応物、1-(N-フェニルアミノ)-ナフタレン、ジフェニルアミン誘導体、ジアルキルジフェニルアミン類、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、混合ジアリル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン化合物等が挙げられる。
【0046】
キノン系老化防止剤としては、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-t-オクチルハイドロキノン、2,6-ジ-n-ドデシルハイドロキノン、2-n-ドデシル-5-クロロハイドロキノン、2-t-オクチル-5-メチルハイドロキノン等のハイドロキノン化合物等が挙げられる。
【0047】
硫黄系老化防止剤としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-トリジプロピオネート等が挙げられる。
【0048】
フェノチアジン系老化防止剤としては、フェノチアジン、10-メチルフェノチアジン、2-メチルフェノチアジン、2-トリフルオロメチルフェノチアジン等が挙げられる。
【0049】
<有機溶媒>
本発明の全固体二次電池用バインダー組成物は、有機溶媒を含む。有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;酢酸ブチル、酪酸ブチル等のエステル類が挙げられ、酪酸ブチル、キシレンが好ましい。有機溶媒は、1種又は2種以上の任意の比率の組み合わせであることができる。
【0050】
(メタ)アクリル系重合体が水系分散液として得られた場合には、水系分散液の溶媒を上記有機溶媒で溶媒交換することができる。溶媒交換の方法は、特に限定されず、ロータリーエバポレーターに水系分散液及び有機溶媒を入れ、減圧して所定の温度にて溶媒交換及び脱水操作を行う方法が挙げられる。
【0051】
<その他の成分>
本発明の全固体二次電池用バインダー組成物は、上記成分以外に、レべリング剤、補強材、消泡剤、老化防止剤、界面活性剤、分散剤等の成分を含有することができる。これらの成分は、公知のものを使用することができる。また、本発明の効果を損なわない限り、(メタ)アクリル系重合体以外のバインダーを含有していてもよく、例えば、フッ化ビニリデン(VDF)単量体単位及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)単量体単位より選ばれる単量体単位を含む重合体(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン)(PHFP)等)、スチレン-ブタジエン系共重合体(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン系共重合体(NBR)、水素化NBR、ゲル量50%超の重合体が挙げられる。
【0052】
<バインダー組成物の組成・粘度>
本発明の全固体二次電池用バインダー組成物においては、老化防止剤を、上記重合体100質量部に対し、0.005質量部以上0.5質量部以下で使用することが重要である。老化防止剤の含有量は、プレス性を向上させてサイクル特性を向上させる点からは、0.0085質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、また、出力特性の観点からは、0.3質量部以下が好ましく、0.2質量部以下がより好ましい。
なお、バインダー組成物中の老化防止剤の特定には、例えば、高速液体クロマトグラフィー/質量分析法を用いることができ、その際、高速原子衝撃法(FAB)を利用することができる。また、バインダー組成物中の老化防止剤の定量は、例えば、高速液体クロマトグラフィーを用いた検量線法によって行うことができる。
バインダー組成物の固形分濃度は、5質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0053】
バインダー組成物は、粘度(ブルックフィールドB型粘度計、60rpm、25℃)を2000mPa・s以下とすることができ、好ましくは1800mPa・s以下である。経時安定性の点から、粘度は、50mPa・s以上が好ましく、500mPa・s以上がより好ましい。
【0054】
<バインダー組成物の調製方法>
本発明の全固体二次電池用バインダー組成物の調製方法は、特に限定されず、上記の(メタ)アクリル系重合体、老化防止剤及び任意のその他の成分を有機溶媒中で混合する方法が挙げられる。
(メタ)アクリル系重合体が水系分散液として得られた場合には、水系分散液の溶媒を上記有機溶媒で溶媒交換し、溶媒交換の前又は後で、老化防止剤及びその他の成分を混合することにより、バインダー組成物を得ることができる。溶媒交換の方法は、特に限定されず、ロータリーエバポレーターに水系分散液及び有機溶媒を入れ、減圧して所定の温度にて溶媒交換及び脱水操作を行う方法が挙げられる。老化防止剤の混合のタイミングは特に限定されず、有機溶媒交換の前後のいずれでもよい。バインダー組成物の濃度調整のために、溶媒交換の後に、有機溶媒をさらに加えてもよい。
【0055】
(全固体二次電池固体電解質層用スラリー組成物)
本発明の全固体二次電池固体電解質層用スラリー組成物(以下「固体電解質層用スラリー組成物」ともいう。)は、上記全固体二次電池用バインダー組成物及び固体電解質を含む。
【0056】
<固体電解質>
固体電解質は、リチウムイオン等の電荷担体の伝導性を有していれば、特に限定されず、無機固体電解質及び高分子無機固体電解質が挙げられる。固体電解質は、1種又は2種以上の任意の比率の組み合わせであることができ、無機固体電解質と高分子無機固体電解質との混合物であってもよい。
【0057】
<<無機固体電解質>>
無機固体電解質は、特に限定されず、結晶性の無機イオン伝導体、非晶性の無機イオン伝導体が挙げられる。例えば、全固体二次電池が全固体リチウムイオン二次電池の場合、無機固体電解質としては、結晶性の無機リチウムイオン伝導体、非晶性の無機リチウムイオン伝導体が好ましい。
【0058】
以下、全固体二次電池が全固体リチウムイオン二次電池である場合を例にとって説明するが、本発明はこの場合に限定されない。
結晶性の無機リチウムイオン伝導体としては、Li3N、LISICON(Li14Zn(GeO4)4)、ペロブスカイト型Li0.5La0.5TiO3、ガーネット型Li7La3Zr2O10、LIPON(Li3+yPO4-xNx)、Thio-LISICON(Li3.75Ge0.25P0.75S4)等が挙げられる。非晶性の無機リチウムイオン伝導体としては、ガラスLi-Si-S-O、Li-P-S等が挙げられる。
【0059】
中でも、無機固体電解質の導電性の点から、非晶性の無機リチウムイオン伝導体が好ましく、リチウムイオン電導性が高く、内部抵抗の低下を図ることができる点から、Li及びPを含む非晶性の硫化物がより好ましい。
【0060】
Li及びPを含む非晶性の硫化物は、電池の内部抵抗低下及び出力特性向上という点から、Li2SとP2S5とからなる硫化物ガラスがより好ましく、Li2S:P2S5のモル比が65:35~85:15であるLi2SとP2S5との混合原料から製造された硫化物ガラスが特に好ましい。このような混合原料をメカノケミカル法によって反応させて得られる硫化物ガラスセラミックスも好適に用いることができる。リチウムイオン伝導度を高い状態で維持する点からは、混合原料は、Li2S:P2S5のモル比が68:32~80:20であることが好ましい。
【0061】
無機固体電解質のリチウムイオン伝導度は、特に限定されず、1×10-4S/cm以上が好ましく、1×10-3S/cm以上がさらに好ましい。
【0062】
Li及びPを含む非晶性の硫化物無機固体電解質は、イオン伝導性を低下させない程度において、上記Li2S、P2S5の他に出発原料としてAl2S3、B2S3及びSiS2からなる群より選ばれる少なくとも1種の硫化物を含むことができる。これにより、無機固体電解質中のガラス成分を安定化させることができる。
同様に、無機固体電解質は、Li2S及びP2S5に加え、Li3PO4、Li4SiO4、Li4GeO4、Li3BO3及びLi3AlO3からなる群より選ばれる少なくとも1種のオルトオキソ酸リチウムを含んでいてもよい。これにより、無機固体電解質中のガラス成分を安定化させることができる。
【0063】
無機固体電解質の個数平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、また、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、7μm以下がさらに好ましく、5μm以下が特に好ましい。上記下限値以上であれば、ハンドリングが容易であるとともに、スラリー組成物を用いて形成される層の接着性を十分に高めることができる。一方、上記上限値以下であれば、無機固体電解質の表面積を十分に確保し、全固体二次電池の出力特性を十分に向上させることができる。
本明細書において、無機固体電解質の「個数平均粒子径」は、100個の無機固体電解質について、それぞれ電子顕微鏡にて観察し、JIS Z8827-1:2008に従って粒子径を測定し、平均値を算出することにより求めることができる。
【0064】
<<高分子無機固体電解質>>
高分子無機固体電解質としては、ポリエチレンオキサイド誘導体及びポリエチレンオキサイド誘導体を含む重合体、ポリプロピレンオキサイド誘導体及びポリプロピレンオキサイド誘導体を含む重合体、リン酸エステル重合体、ならびにポリカーボネート誘導体及びポリカーボネート誘導体を含む重合体等に電解質塩を含有させたものが挙げられる。
【0065】
全固体二次電池が全固体リチウムイオン二次電池の場合、電解質塩は、特に限定されず、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)等の含フッ素リチウム塩が挙げられる。
【0066】
<その他の成分>
固体電解質層用スラリー組成物は、上記成分以外に、レべリング剤、補強材、消泡剤、老化防止剤等の成分を含有することができる。これらの成分は、公知のものを使用することができる。
固体電解質層用スラリー組成物は、スラリー組成物の調製時に任意に追加された有機溶媒を含むことができ、追加する溶媒としては、バインダー組成物に関して挙げられた有機溶媒を使用することができる。具体的には、酪酸ブチル、キシレンが好ましい溶媒として挙げられる。
【0067】
<固体電解質層用スラリー組成物の組成・粘度>
固体電解質層用スラリー組成物に含まれるバインダー組成物の量は、固体電解質100質量部に対して、バインダー組成物中の(メタ)アクリル系重合体が0.1質量部以上となる量が好ましく、0.5質量部以上となる量がより好ましく、また、7質量部以下となる量が好ましく、5質量部以下となる量がより好ましい。
【0068】
固体電解質層用スラリー組成物の粘度(ブルックフィールドB型粘度計、60rpm、25℃)は、500mPa・s以上が好ましく、1000mPa・s以上がより好ましく、また、10000mPa・s以下が好ましく、6000mPa・s以下がより好ましい。
【0069】
<固体電解質層用スラリー組成物の調製方法>
固体電解質層用スラリー組成物の調製方法は、特に限定されず、上記のバインダー組成物、固体電解質、任意の追加の有機溶媒、任意のその他の成分を混合する方法が挙げられる。
【0070】
(全固体二次電池電極用スラリー組成物)
本発明の全固体二次電池電極用スラリー組成物(以下「電極用スラリー組成物」ともいう。)は、上記全固体二次電池バインダー組成物、固体電解質及び電極活物質を含む。
【0071】
<固体電解質>
固体電解質については、上記固体電解質層用スラリー組成物における記載が適用され、当該記載中の例示や好適例として挙げられたものを使用することができる。
【0072】
<電極活物質>
電極活物質は、全固体二次電池の電極において電子の受け渡しをする物質であり、全固体二次電池が全固体リチウムイオン二次電池の場合には、電極活物質として、通常、リチウムを吸蔵及び放出し得る物質を用いる。
以下、全固体二次電池が全固体リチウムイオン二次電池である場合について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0073】
正極活物質は、特に限定されず、無機化合物からなる正極活物質、有機化合物からなる正極活物質が挙げられる。正極活物質は、1種又は2種以上の任意の比率の組み合わせであることができ、無機化合物と有機化合物との混合物であってもよい。
【0074】
無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物(リチウム含有複合金属酸化物)、遷移金属硫化物等が挙げられる。上記遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が挙げられる。正極活物質に使用される無機化合物としては、Co-Ni-Mnのリチウム含有複合金属酸化物(Li(Co Mn Ni)O2)、Ni-Co-Alのリチウム含有金属複合酸化物、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO2)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2、LiMn2O4)、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、LiFeVO4等のリチウム含有複合金属酸化物;TiS2、TiS3、非晶質MoS2等の遷移金属硫化物;Cu2V2O3、非晶質V2O-P2O5、MoO3、V2O5、V6O13等の遷移金属酸化物;等が挙げられる。これらの化合物は、部分的に元素置換されたものであってもよい。
【0075】
有機化合物からなる正極活物質としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N-フルオロピリジニウム塩等が挙げられる。
【0076】
負極活物質としては、グラファイト、コークス等の炭素の同素体が挙げられる。炭素の同素体からなる負極活物質は、金属、金属塩、酸化物等との混合体や被覆体の形態であることもできる。負極活物質としては、ケイ素、スズ、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の酸化物又は硫酸塩;金属リチウム;Li-Al、Li-Bi-Cd、Li-Sn-Cd等のリチウム合金;リチウム遷移金属窒化物;シリコーン;等も挙げられる。
【0077】
電極活物質の個数平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、また、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。上記下限値以上であれば、ハンドリングが容易であるとともに、得られる電極合材層の接着性を十分に高めることができる。一方、上記上限値以下であれば、電極活物質の表面積を十分に確保し、全固体二次電池の出力特性を十分に向上させることができる。
本明細書において、電極活物質の「個数平均粒子径」は、100個の電極活物質について、それぞれ電子顕微鏡にて観察し、JIS Z8827-1:2008に従って粒子径を測定し、平均値を算出することにより求めることができる。
【0078】
<導電材>
電極用スラリー組成物は、導電材を含有することができる。導電材を含有することにより、電極合材層中において電極活物質同士の電気的接触の確保を容易にすることができる。導電材としては、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック等)、単層又は多層のカーボンナノチューブ(多層カーボンナノチューブにはカップスタック型が含まれる)、カーボンナノホーン、気相成長炭素繊維、ポリマー繊維を焼成後に破砕して得られるミルドカーボン繊維、単層又は多層のグラフェン、ポリマー繊維からなる不織布を焼成して得られるカーボン不織布シート等の導電性炭素材料;各種金属のファイバー又は箔等が挙げられる。中でも、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックが好ましい。導電材は、1種又は2種以上の任意の比率の組み合わせであることができる。
【0079】
<その他の成分>
電極用スラリー組成物は、上記成分以外に、レべリング剤、補強材、消泡剤、界面活性剤、分散剤等の成分を含有することができる。これらの成分は、公知のものを使用することができる。
電極用スラリー組成物は、スラリー組成物の調製時に任意に追加された有機溶媒を含むことができ、追加する溶媒としては、バインダー組成物に関して挙げられた有機溶媒を使用することができる。具体的には、酪酸ブチル、キシレンが好ましい溶媒として挙げられる。
【0080】
<電極用スラリー組成物の組成・粘度>
電極用スラリー組成物に含まれる固体電解質の量は、電極活物質と固体電解質との合計量(100質量%)中に占める固体電解質の比率が10質量%以上となる量が好ましく、20質量%以上となる量がより好ましく、また、70質量%以下となる量が好ましく、60質量%以下となる量がより好ましい。上記下限値以上であれば、イオン伝導性を十分に確保し、電極活物質を有効に活用して、全固体二次電池の容量を十分に高めることができる。また、上記上限値以下であれば、電極活物質の量を十分に確保し、全固体二次電池の容量を十分に高めることができる。
【0081】
電極用スラリー組成物に含まれるバインダー組成物の量は、電極活物質と固体電解質との合計量100質量部に対して、バインダー組成物中の(メタ)アクリル系重合体が0.1質量部以上となる量が好ましく、0.5質量部以上となる量がより好ましく、また、7質量部以下となる量が好ましく、5質量部以下となる量がより好ましい。
【0082】
電極用スラリー組成物の粘度(ブルックフィールドB型粘度計、60rpm、25℃)は、500mPa・s以上が好ましく、1000mPa・s以上がより好ましく、また、10000mPa・s以下が好ましく、6000mPa・s以下がより好ましい。
【0083】
<電極用スラリー組成物の調製方法>
スラリー組成物の調製方法は、特に限定されず、上記のバインダー組成物、固体電解質、電極活物質、任意の導電材、任意の追加の有機溶媒、任意のその他の成分を混合する方法が挙げられる。導電材を使用する場合、バインダー組成物と導電材をあらかじめ混合し、これに固体電解質、電極活物質等を添加してもよい。
【0084】
(全固体二次電池用固体電解質層)
本発明の全固体二次電池用固体電解質層(以下「固体電解質層」ともいう。)は、本発明の全固体二次電池固体電解質層用スラリー組成物を用いて形成されたものであり、例えば、固体電解質層用スラリー組成物を適切な基材の表面に塗布して塗膜を形成した後、形成した塗膜を乾燥することにより得られる。
【0085】
本発明の固体電解質層は、少なくとも、固体電解質、(メタ)アクリル系重合体及び老化防止剤を含み、これらの成分の含有割合は、通常、固体電解質層用スラリー組成物中の含有割合と等しい。
【0086】
固体電解質層を形成する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
1)本発明の固体電解質層用スラリー組成物を電極上(通常、電極合材層の表面。以下同じ。)に塗布し、次いで乾燥することで、電極上に固体電解質層を形成する方法;
2)本発明の固体電解質層用スラリー組成物を基材上に塗布し、乾燥した後、得られた固体電解質層を電極上に転写することで、電極上に固体電解質層を形成する方法;及び、
3)本発明の固体電解質層用スラリー組成物を基材上に塗布し、乾燥して得られた固体電解質層用スラリー組成物の乾燥物を粉砕して粉体とし、次いで、得られた粉体を層状に成型することで、自立可能な固体電解質層を形成する方法。
【0087】
上記1)~3)の方法で用いられる、塗布、乾燥、転写、粉砕、成型等の方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0088】
例えば、塗布の方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り等が挙げられる。
【0089】
例えば、乾燥の方法としては、温風、熱風又は低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線等の照射による乾燥が挙げられる。乾燥条件は、適宜設定することができ、乾燥温度としては、50℃以上250℃以下が好ましく、80℃以上200℃以下が好ましい。乾燥時間は、特に限定されず、通常10分以上60分以下の範囲で行われる。
【0090】
なお、乾燥後の固体電解質層をプレスすることにより固体電解質層を安定させてもよい。プレス方法は、特に限定されず、金型プレスやカレンダープレス等の方法が挙げられる。
【0091】
固体電解質層スラリー組成物の塗布量は、特に限定されず、所望の電極合材層の厚み等に応じて適宜設定することができる。
固体電解質層の厚みは、特に限定されず、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、また、1000μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましく、600μm以下がさらに好ましい。上記下限以上であれば、正極と負極の短絡を十分防止することができ、また、上記下限値以下であれば、内部抵抗の低下の点から有利である。
【0092】
(全固体二次電池用電極)
本発明の全固体二次電池用電極(以下「電極」ともいう。)は、本発明の全固体二次電池電極用スラリー組成物を用いて形成されたものであり、例えば、電極用スラリー組成物を集電体の表面に塗布して塗膜を形成した後、形成した塗膜を乾燥することにより、集電体と、集電体上の電極合材層とを備える電極を得ることができる。
【0093】
本発明の電極は、少なくとも、固体電解質、電極活物質、(メタ)アクリル系重合体及び老化防止剤を含み、これらの成分の含有割合は電極用スラリー組成物中の含有割合と通常、等しい。
【0094】
集電体は、電気導電性を有し、かつ電気化学的に耐久性のある材料であれば、特に限定されない。耐熱性の点から、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等の金属材料が好ましく、中でも、正極用としてはアルミニウムが特に好ましく、負極用としては銅が特に好ましい。集電体の形状は、特に限定されず、厚さ0.001mm以上0.5mm以下程度のシート状のものが好ましい。集電体は、電極合材層との接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用することが好ましい。粗面化方法としては、特に限定されず、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線等を備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、集電体と電極合材層との接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
【0095】
電極用スラリー組成物を塗布する方法は、特に限定されず、固体電解質層用スラリー組成物の塗布に関して挙げられた方法を利用することができる。
電極用スラリー組成物を乾燥する方法は、特に限定されず、固体電解質層用スラリー組成物の乾燥に関して挙げられた方法を利用することができる。
乾燥後の電極をプレスすることにより電極を安定させてもよい。プレス方法は、特に限定されず、金型プレスやカレンダープレス等の方法が挙げられる。
【0096】
電極用スラリー組成物の塗布量は、特に限定されず、所望の電極合材層の厚み等に応じて適宜設定することができる。
電極合材層の目付量は、特に限定されず、1.0mg/cm2以上が好ましく、より好ましくは5.0mg/cm2以上であり、また、30.0mg/cm2以下が好ましく、25.0mg/cm2以下がより好ましい。
【0097】
(全固体二次電池)
本発明の全固体二次電池は、本発明の固体電解質層及び電極(正極、負極)の少なくとも1つを備える。すなわち、本発明の全固体二次電池は、固体電解質層、正極及び負極の少なくとも1つが、本発明のバインダー組成物を含むスラリー組成物(固体電解質層の場合は、固体電解質層用スラリー組成物であり、正極又は負極の場合は、電極用スラリー組成物)を用いて形成されたものである。
【0098】
ここで、本発明の全固体二次電池に使用し得る、本発明の電極に該当しない電極は、特に限定されず、任意の全固体二次電池用電極を用いることができる。
【0099】
また、本発明の全固体二次電池に使用し得る、本発明の固体電解質層に該当しない固体電解質層は、特に限定されず、任意の固体電解質層を用いることができる。
【0100】
本発明の全固体二次電池は、正極と負極とを、正極の正極合材層と負極の負極合材層とが固体電解質層を介して対向するように積層し、任意に加圧して積層体を得た後、電池形状に応じて、そのままの状態で、あるいは巻く、折る等して電池容器に入れ、封口することにより得ることができる。必要に応じて、エキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、リード板等を電池容器に入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をすることもできる。電池の形状は、特に限定されず、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型等が挙げられる。
【0101】
全固体二次電池の製造において、固体電解質層又は電極合材層の形成段階、各層を積層した段階、電池セルの組立段階等の全固体二次電池の製造工程のいずれかにおいて、通常、プレス加工が行われる。このプレス加工は、一般的には、50MPa以上1500MPa以下の圧力で行われるが、本発明のバインダー組成物を用いることにより、形成される層(固体電解質層、電極合材層)に優れたプレス性が付与されているため、全固体二次電池において、優れた出力特性及び高温サイクル特性を実現することが可能となる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。実施例及び比較例における、重合体の重量平均分子量、単量体単位の含有割合及びゲル量の測定は、以下のようにして行った。スラリー組成物のレベリング性、密着性(ピール強度)、全固体二次電池の電池特性(出力特性、高温サイクル特性)の評価は、以下のようにして行った。
【0103】
<重合体中の重量平均分子量>
各実施例及び比較例において調製した重合体の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー(装置:東ソー社製、型番「HLC8220」)を用いて得たポリスチレン換算分子量に基づいて算出した。高速液体クロマトグラフィーに際しては、3本連結したカラム(昭和電工社製、型番「Shodex KF-404HQ」、カラム温度:40℃、キャリア:流速0.35ml/分のテトラヒドロフラン)、ならびに検出器として示差屈折計及び紫外検出器を用いた。分子量の較正は、標準ポリスチレン(ポリマーラボラトリー社製、標準分子量:500~3,000,000)の12点で実施した。
【0104】
<重合体中の単量体単位の含有割合>
後述する実施例8において調製したバインダー組成物100gを、メタノール1Lで凝固させた後、温度60℃で12時間真空乾燥した。得られた乾燥重合体を1H-NMRで分析した。得られた分析値に基づいて、バインダー組成物中の重合体に含まれる各単量体単位及び構造単位の含有割合(質量%)を算出した。他の実施例及び比較例の単量体単位の含有割合は、単量体組成物中の各単量体の含有割合(仕込み量)と実質的に同じである。
【0105】
<ゲル量(THF不溶解分量)>
各実施例及び比較例のバインダー組成物の調製における、単量体の重合後、老化防止剤を混合する前の反応液(実施例8については、水素化反応後、濃縮し、老化防止剤を混合する前の水分散液)を、50%湿度、23℃~25℃の環境下で乾燥させて、厚み3±0.3mmのフィルムを作製した。作製したフィルムを5mm角に裁断して複数のフィルム片を用意し、これらのフィルム片を約1g精秤した。精秤されたフィルム片の重量をW0とした。次いで、精秤されたフィルム片を、100gのテトラヒドロフラン(THF)に25℃で24時間浸漬した。その後、THFからフィルム片を引き揚げ、引き揚げたフィルム片を105℃で3時間真空乾燥して、その重量(不溶解分の重量)W1を計測した。そして、下記式に従って、THF不溶解分量を算出し、ゲル量(質量%)とした。
ゲル量(質量%)=W1/W0×100
【0106】
<レベリング性>
内径30mm、高さ120mm の平底円筒型透明ガラス管を用意し、管底からの高さが55mm及び85mmの位置に2本の標線(以下、高さが55mmの位置の標線を「A線」、高さが85mmの位置の標線を「B線」という。)を付した。
実施例及び比較例で得られたスラリー組成物を、上記ガラス管のA線まで充填し、ゴム栓をした後、25℃環境下で10分間直立状態のまま放置した。
その後、ガラス管を水平状態に倒してからスラリー組成物の液面の先端がB線を通過するまでの時間tを測定し、以下の基準でレベリング性を評価した。時間tが短い程、塗工時のレベリング性に優れていることを示す。
A:時間tが1秒未満
B:時間tが1秒以上5秒未満
C:時間tが5秒以上10秒未満
D:時間tが10秒以上
【0107】
<密着性(ピール強度)>
実施例及び比較例で得られた電極又は固体電解質層を備える銅箔を、幅2.5cm、長さ10cmの矩形に切り出して試験片とし、試験片の電極合材層又は固体電解質層表面にセロハンテープを貼り付けた後、試験片の一端からセロハンテープを50mm/分の速度で180°方向に引き剥がしたときの応力を測定した。測定を10回行い、その平均値を求めて、これをピール強度(N/m)とし、以下の基準で密着性を評価した。ピール強度の平均値が大きい程、密着性に優れていることを示す。
A:ピール強度の平均値が20N/m以上
B:ピール強度の平均値が15N/m以上20N/m未満
C:ピール強度の平均値が10N/m以上15N/m未満
D:ピール強度の平均値が10N/m未満
【0108】
<電池特性:出力特性>
実施例及び比較例で作製した全固体二次電池を、0.1Cの定電流法によって4.3Vまで充電し、その後0.1Cにて3.0Vまで放電し、0.1C放電容量を求めた。その後0.1Cにて4.3Vまで充電し、その後10Cにて3.0Vまで放電し、10C放電容量を求めた。
10セルについて同様に測定を行い、0.1C放電容量の平均値を0.1C放電容量a、10C放電容量の平均値を10C放電容量bとし、0.1C放電容量aに対する10C放電容量bの比(b/a(%))で表される容量比を求め、下記の基準で評価した。この値が大きい程、内部抵抗が小さく、出力特性に優れることを示す。
A:容量比50%以上
B:容量比40%以上50%未満
C:容量比30%以上40%未満
D:容量比30%未満
【0109】
<電池特性:高温サイクル特性>
実施例及び比較例で作製した全固体二次電池について、60℃にて、0.1Cで3Vから4.3Vまで充電し、次いで0.1Cで4.3Vから3Vまで放電する充放電を、100サイクル繰り返し行った。5サイクル目の0.1C放電容量cに対する100サイクル目の0.1C放電容量dの比(d/c(%))で表わされる容量維持率を求め、下記の基準で評価した。この値が大きい程、放電容量減が少なく、高温サイクル特性に優れることを示す。
A:容量維持率60%以上
B:容量維持率50%以上60%未満
C:容量維持率40%以上50%未満
D:容量維持率30%以上40%未満
【0110】
(実施例1:本発明の負極を備える全固体二次電池)
<(メタ)アクリル系重合体及びバインダー組成物の調製>
撹拌機を備えたセプタム付き1Lフラスコにイオン交換水100部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部を加え、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した後、重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS)0.25部をイオン交換水20.0部に溶解させ加えた。
一方、別の容器でイオン交換水40部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、そしてスチレン(St)15部、n-ブチルアクリレート(BA)80部、アクリロニトリル(AN)5部を混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を3時間かけて、上記セプタム付き1Lフラスコに連続的に添加して重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、さらに80℃で3時間撹拌して反応を終了した。
次いで、この反応液に、反応液中の固形分100部当たり、フェノール系老化防止剤として3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル(老化防止剤1)0.08部、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(老化防止剤2)0.02部を加えて混合した。
続いて、得られた重合体の水分散液に、キシレンを適量添加して混合物を得た。その後、80℃にて減圧蒸留を実施して混合物から水及び過剰なキシレンを除去し、バインダー組成物(固形分濃度:8%)を得た。
【0111】
<負極用スラリー組成物の調製>
負極活物質としてのグラファイト(個数平均粒子径:20μm)65部と、固体電解質としてのLi2SとP2S5とからなる硫化物ガラス(Li2S/P2S5=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.9μm)30部と、導電材としてのアセチレンブラック3部と、上記バインダー組成物(固形分2部相当量)とを混合して、得られた混合液にキシレンを加えて、固形分濃度60%の組成物を調製した。この組成物を遊星式混練機で混合して、負極合材層用スラリー組成物を得た。得られた負極用スラリー組成物を用いて、レベリング性を評価した。
【0112】
<負極の作製>
集電体としての銅箔の表面に、上記負極用スラリー組成物を塗布し、120℃で30分間乾燥することで、集電体としての銅箔の片面に負極合材層(目付け量:10.0mg/cm2)を有する負極を得た。得られた負極を用いて、密着性を評価した。
【0113】
<正極用スラリー組成物の調製>
正極活物質としてのCo-Ni-Mnのリチウム複合酸化物系の活物質NMC532(LiNi5/10Co2/10Mn3/10O2、個数平均粒子径:10.0μm)65部と、固体電解質としてのLi2SとP2S5とからなる硫化物ガラス(Li2S/P2S5=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.9μm)30部と、導電材としてのアセチレンブラック3部と、老化防止剤を配合しないこと以外は実施例1と同様にして調製したバインダー組成物(正極合材層用)(固形分2部相当量)とを混合し、得られた混合液にキシレンを加えて、固形分濃度75%の組成物を調製した。この組成物を遊星式混練機で60分混合し、さらにキシレンで固形分濃度70%に調整した後に遊星式混練機で10分間混合して、正極用スラリー組成物を得た。
【0114】
<正極の作製>
集電体としてのアルミニウム箔の表面に、上記正極用スラリー組成物を塗布し、120℃で30分間乾燥することで、集電体としてのアルミニウム箔の片面に正極合材層(目付け量:18.0mg/cm2)を有する正極を得た。
【0115】
<固体電解質層用スラリー組成物の調製>
固体電解質としてのLi2SとP2S5とからなる硫化物ガラス(Li2S/P2S5=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.9μm)98部と、老化防止剤を配合しないこと以外は実施例1と同様にして調製したバインダー組成物(固形分2部相当量)とを混合し、得られた混合液にキシレンを加えて、固形分濃度60%の組成物を調製した。この組成物を遊星式混練機で混合して、固体電解質層用スラリー組成物を得た。
【0116】
<固体電解質層の作製>
上記固体電解質層用スラリー組成物を、基材としての剥離シート上で乾燥させ、剥離シート上から剥離させた乾燥物を乳鉢ですりつぶし粉体を得た。得られた粉体0.05mgを10mmφの金型に入れて、200MPaの圧力で成型することで、厚みが500μmのペレット(固体電解質層)を得た。
【0117】
<全固体二次電池の作製>
上記のようにして得られた負極、正極を、それぞれ10mmφで打ち抜いた。打ち抜いた後の正極と負極で、上記のようにして得られた固体電解質層を挟み(この際、各電極の電極合材層が固体電解質層に接する)、200MPaの圧力でプレスして全固体二次電池用の積層体を得た。得られた積層体を、評価用セル内に配置して(拘束圧:40Mpa)、全固体二次電池を得た。そして、得られた全固体二次電池のセル特性を評価した。
【0118】
実施例1~7、9~12、比較例1~3では、実施例1と同様にして、バインダー組成物、負極合材層用スラリー組成物、正極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、負極、正極、全固体二次電池を製造したが、単量体組成物における各単量体の種類及び量、老化防止剤の種類及び量については、表1に示す種類及び量とした。なお、正極合材層用スラリー組成物及び固体電解質層用スラリー組成物に使用したバインダー組成物は、老化防止剤を配合しないこと以外は、各実施例及び比較例における負極合材層用スラリー組成物用のバインダー組成物と同様にして調製したものである。作製した全固体二次電池について、実施例1と同様に電池のセル特性を評価した。結果を表1に示す。
【0119】
表中の老化防止剤は、以下のとおりである。
フェノール系老化防止剤
老化防止剤1:3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル
老化防止剤2:4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール
老化防止剤3:4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-t-ブチルフェノール
老化防止剤4:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール
ホスファイト系老化防止剤
老化防止剤5:3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン
【0120】
(実施例8)
下記のようにして(メタ)アクリル系重合体を調製し、バインダー組成物を得たことを除き、実施例1と同様にして、負極用スラリー組成物、正極用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、固体電解質層、負極、正極及び全固体二次電池を製造し、電池のセル特性を評価した。結果を表1に示す。(メタ)アクリル系重合体における単量体単位の含有割合の測定方法は上記のとおりである。
【0121】
反応器に、乳化剤としてオレイン酸カリウム2部、安定剤としてリン酸カリウム0.1 部、水150部を仕込み、さらにアクリロニトリル(AN)19部、1,3-ブタジエン(BD)48部、ブチルアクリレート(BA)33部及び分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン0.31部を加えて、活性剤として硫酸第一鉄0.015部及び重合開始剤としてパラメンタンハイドロパーオキサイド0.05部の存在下に、10℃で乳化重合を開始した。重合転化率が85% になった時点で、単量体100部当たり0.2部のヒドロキシルアミン硫酸塩を添加して重合を停止させた。
重合停止に続いて、加温し、減圧下、80℃で、水蒸気蒸留により、未反応単量体を回収し、重合体の水分散液を得た。
【0122】
得られた重合体の水分散液400mL(全固形分:48g)を、撹拌機付きの1リットルオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流して水分散液中の溶存酸素を除去した。その後、水素化反応触媒として、酢酸パラジウム50mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水180mLに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を50℃に加温し、6時間水素化反応させた。
内容物を常温に戻し、系内を窒素雰囲気とした後、エバポレータを用いて、固形分濃度が40%となるまで濃縮して、(メタ)アクリル系重合体の水分散液を得た。
次いで、この(メタ)アクリル系重合体の水分散液に、水分散液中の固形分100部当たり、フェノール系老化防止剤として3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル(老化防止剤1)0.08部、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(老化防止剤2)0.02部を加えて混合した。
続いて、老化防止剤を添加した水分散液に、キシレンを適量添加して混合物を得た。その後、90℃にて減圧蒸留を実施して混合物から水及び過剰なキシレンを除去し、バインダー組成物(固形分濃度:8%)を得た。
【0123】
(実施例13)
本発明のバインダー組成物を含む正極用スラリー組成物を調製し、このスラリー組成物を用いて形成した正極合材層を備える正極を作製した。
【0124】
<正極用スラリー組成物の調製>
次いで、正極活物質としてのCo-Ni-Mnのリチウム複合酸化物系の活物質NMC532(LiNi5/10Co2/10Mn3/10O2、個数平均粒子径:10.0μm)65部と、固体電解質としてのLi2SとP2S5とからなる硫化物ガラス(Li2S/P2S5=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.9μm)30部と、導電材としてのアセチレンブラック3部と、実施例1において調製したバインダー組成物(固形分2部相当量)とを混合し、得られた混合液にキシレンを加えて、固形分濃度75%の組成物を調製した。この組成物を遊星式混練機で60分混合し、さらにキシレンで固形分濃度70%に調整した後に遊星式混練機で10分間混合して、正極用スラリー組成物を得た。得られた正極用スラリー組成物を用いて、レベリング性を評価した。
【0125】
<正極の作製>
集電体としてのアルミニウム箔の表面に、上記正極用スラリー組成物を塗布し、120℃で30分間乾燥することで、集電体としてのアルミニウム箔の片面に正極合材層(目付け量:18.0mg/cm2)を有する正極を得た。得られた正極を用いて、密着性を評価した。
【0126】
(実施例14)
本発明のバインダー組成物を含む固体電解質層用スラリー組成物を調製した。
【0127】
<固体電解質層用スラリー組成物の調製>
固体電解質としてのLi2SとP2S5とからなる硫化物ガラス(Li2S/P2S5=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.9μm)98部と、実施例1において調製したバインダー組成物(固形分2部相当量)とを混合し、得られた混合液にキシレンを加えて、固形分濃度60%の組成物を調製した。この組成物を遊星式混練機で混合して、固体電解質層用スラリー組成物を得た。得られた固体電解質層用スラリー組成物を用いて、レベリング性を評価した。
【0128】
<固体電解質層の作製>
上記固体電解質層用スラリー組成物を、銅箔に塗布し、120℃30分間乾燥することで、銅箔上に厚みが100μmの固体電解質層を得た。得られた銅箔上の固体電解質層を用いて、密着性を評価した。
【0129】
【0130】
実施例1~12に示されるように、本発明の全固体二次電池用バインダー組成物を用いた負極用スラリー組成物は、レベリング性及び密着性に優れ、これを用いることにより、優れた出力特性及び高温サイクル特性を有する全固体二次電池が得られることが確認された。優れたレベリング性及び密着性については、実施例13及び14において、本発明の全固体二次電池用バインダー組成物を正極用スラリー組成物及び固体電解質層用スラリー組成物に用いたときにも得られることが確認された。
老化防止剤を含まないバインダー組成物を用いた比較例1では、得られた全固体二次電池は、出力特性及び高温サイクル特性について劣っていた。
また、比較例2~3は、老化防止剤を用いたものであるが、バインダーが本発明の範囲から外れており、レベリング性及び密着強度に劣り、また、得られた全固体二次電池は、出力特性及び高温サイクル特性について劣っていた。