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特許7655171粉末成形体取り出し装置および粉末プレスシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】粉末成形体取り出し装置および粉末プレスシステム
(51)【国際特許分類】
   B30B 11/00 20060101AFI20250326BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20250326BHJP
   H01F 7/02 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
B30B11/00 G
H01F41/02 G
H01F7/02 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021155120
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023046501
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2024-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】春名 達哉
(72)【発明者】
【氏名】三好 啓太
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 忠弘
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-220499(JP,A)
【文献】特開2002-067108(JP,A)
【文献】特開2000-153399(JP,A)
【文献】特開2006-278919(JP,A)
【文献】特開2002-361495(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090841(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0020470(US,A1)
【文献】西独国特許出願公開第02629990(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/00
H01F 41/02
H01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の列に並んだ、凸面と、前記凸面の反対側に位置する平坦面とを有する複数の粉末成形体をプレス機のダイ上から取り出す、粉末成形体取り出し装置であって、
複数の列のうちの1列に並んだ複数の粉末成形体を吸着するように配列された複数の第1吸着部を有する、第1軸方向に延びる第1平行バーと、
複数の列のうちの他の1列に並んだ複数の粉末成形体を吸着するように配列された複数の第2吸着部を有する、前記第1軸方向に延びる第2平行バーと、
前記第1平行バーおよび前記第2平行バーを駆動して、前記前記第1吸着部と前記第2吸着部により、複数の列のうちの2列に並んだ前記粉末成形体の凸面を吸着する動作を実行する駆動装置と、
を備え、
前記第1吸着部と前記第2吸着部とは反対側を向いており、
前記駆動装置は、吸着動作時において、前記第1平行バーと前記第2平行バーとの間に、前記複数の列のうちの少なくとも1列に並んだ前記複数の粉末成形体が位置するように前記第1平行バーおよび前記第2平行バーを配置し、前記第1吸着部で前記複数の列のうちの1列に並んだ複数の粉末成形体を吸着するとともに、前記第2吸着部で前記複数の列のうちの他の1列に並んだ複数の粉末成形体を吸着させる、
粉末成形体取り出し装置。
【請求項2】
前記第1平行バーにおける前記複数の第1吸着部は、前記複数の列に並んだ前記複数の粉末成形体のうち、ある列に並んだ複数の粉末成形体を吸着する上側吸着部と、他の列に並んだ複数の粉末成形体を吸着する下側吸着部とを含み、前記上側吸着部と前記下側吸着部とは前記第1軸方向に沿って交互に並んでおり、
前記第2平行バーにおける前記複数の第2吸着部は、前記複数の列に並んだ前記複数の粉末成形体のうち、更に他の列に並んだ複数の粉末成形体を吸着する上側吸着部と、更に他の列に並んだ複数の粉末成形体を吸着する下側吸着部とを含み、前記上側吸着部と前記下側吸着部とは前記第1軸方向に沿って交互に並んでいる、
請求項1に記載の粉末成形体取り出し装置。
【請求項3】
前記駆動装置は、
前記第1平行バーの前記上側吸着部および前記下側吸着部の一方で、前記複数の列に並んだ前記複数の粉末成形体のうち、ある列に並んだ複数の粉末成形体を吸着し、前記第2平行バーの前記上側吸着部および前記下側吸着部の一方で、他の列に並んだ複数の粉末成形体を吸着させた後、
前記第1平行バーおよび前記第2平行バーの位置を変え、
前記第1平行バーの前記上側吸着部および前記下側吸着部の他方で、更に他の列に並んだ複数の粉末成形体を吸着し、前記第2平行バーの前記上側吸着部および前記下側吸着部の他方で、更に他の列に並んだ複数の粉末成形体を吸着させる動作を実行する、
請求項1または2に記載の粉末成形体取り出し装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、前記複数の第1吸着部および前記複数の第2吸着部によって、前記複数の粉末成形体のそれぞれが有する前記凸面を吸着させ、
前記複数の粉末成形体のそれぞれが有する前記平坦面が下を向くようにして前記複数の粉末成形体を載置面上に置く、
請求項1から3のいずれか1項に記載の粉末成形体取り出し装置。
【請求項5】
前記第1平行バーの前記複数の第1吸着部に対向するように前記第1軸方向に延びる第1補助部材と、
前記第2平行バーの前記複数の第2吸着部に対向するように前記第1軸方向に延びる第2補助部材と、
を更に備え、
前記駆動装置は、吸着動作時において、前記第1平行バーと前記第1補助部材との間に、1列に並んだ前記複数の粉末成形体が位置するように前記第1平行バーおよび前記第1補助部材を配置し、かつ、前記第2平行バーと前記第2補助部材との間に、1列に並んだ前記複数の粉末成形体が位置するように前記第2平行バーおよび前記第2補助部材を配置し、
前記第1補助部材は、前記複数の第1吸着部が前記凸面を吸着するとき、前記複数の粉末成形体の前記平坦面の位置移動を規制し、
前記第2補助部材は、前記複数の第2吸着部が前記凸面を吸着するとき、前記複数の粉末成形体の前記平坦面の位置移動を規制する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の粉末成形体取り出し装置。
【請求項6】
前記第1吸着部を含む前記第1平行バーの厚さは、隣接する列にある前記粉末成形体の厚さ方向における間隔よりも小さく、かつ、前記第2吸着部を含む前記第2平行バーの厚さは、隣接する列にある前記粉末成形体の厚さ方向における間隔よりも小さく、前記駆動装置は、吸着動作を行う前、前記第1平行バーと前記第2平行バーとの間隔の大きさを、各粉末成形体の厚さよりも大きくする、
請求項1から5のいずれか1項に記載の粉末成形体取り出し装置。
【請求項7】
凸面と、前記凸面の反対側に位置する平坦面とを有する複数の粉末成形体を作製する粉末プレスシステムであって、
プレス機と、
請求項1から6のいずれか1項に記載の粉末成形体取り出し装置と、
を備え、
前記プレス機は、
前記複数の粉末成形体をそれぞれ形成するための複数のキャビティを有するダイと、
前記複数のキャビティに充填された粉末をプレスする上パンチおよび下パンチと、
を備え、
前記粉末成形体取り出し装置は、
前記複数のキャビティ内で前記上下パンチによってプレスされて形成された前記複数の粉末成形体を、前記ダイ上から載置面上に移動せる、
粉末プレスシステム。
【請求項8】
上面視において、
前記複数のキャビティのそれぞれは、前記粉末成形体のそれぞれの前記凸面を規定する曲線と前記平坦面を規定する線分とを有し、
前記複数のキャビティは、互いに平行な第1の列、第2の列、第3の列、および第4の列に沿って並んだキャビティを含み、
前記第1および第2の列に沿って並ぶキャビティの前記曲線および前記線分は、それぞれ、各列の中央線に関して同じ側に位置し、
前記第3および第4の列に沿って並ぶキャビティの前記曲線および前記線分は、それぞれ、各列の中央線に関して同じ側に位置し、
前記第1および第2の列に沿って並ぶキャビティと前記第3および第4の列に沿って並ぶキャビティとの関係は対称であり、前記第2の列に並ぶキャビティの前記曲線と前記第3の列に並ぶキャビティの前記曲線とは対向し、
前記粉末成形体取り出し装置は、
前記第1平行バーの前記第1吸着部により、前記複数のキャビティにおける前記第1の列に沿って並んだキャビティで形成された粉末成形体の前記凸面を吸着し、前記第2平行バーの前記第2吸着部により、前記第3の列に沿って並んだキャビティで形成された粉末成形体の前記凸面を吸着し、前記第1および前記第3の列に沿って並んだキャビティで形成された粉末成形体を前記ダイ上から取り出し、
前記第1平行バーの前記第1吸着部により、前記複数のキャビティにおける前記第2の列に沿って並んだキャビティで形成された粉末成形体の前記凸面を吸着し、前記第2平行バーの前記第2吸着部により、前記第4の列に沿って並んだキャビティで形成された粉末成形体の前記凸面を吸着し、前記第2および前記第4の列に沿って並んだキャビティで形成された粉末成形体を前記ダイ上から取り出し、前記平坦面が前記載置面に接するように前記載置面上に置く、請求項7に記載の粉末プレスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、粉末成形体取り出し装置および粉末プレスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
R-T-B系焼結磁石(Rは希土類元素であり、Nd、PrおよびCeからなる群から選択される少なくとも1つを必ず含み、Tは遷移金属の少なくとも1つでありFeを必ず含む、Bはホウ素である)は、RFe14B型結晶構造を有する化合物の主相と、この主相の粒界部分に位置する粒界相および微量添加元素や不純物の影響により生成する化合物相とから構成されている。R-T-B系焼結磁石は、高い残留磁束密度B(以下、単に「B」と記載する場合がある)と、高い保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」と記載する場合がある)を示し、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られている。
【0003】
このため、R-T-B系焼結磁石は、電気自動車(EV、HV、PHV)等の自動車分野、風力発電等の再生可能エネルギー分野、家電分野、産業分野等のさまざまなモーターに使用されている。R-T-B系焼結磁石は、これらモーターの小型・軽量化、高効率・省エネルギー化(エネルギー効率の改善)に欠かせない材料である。また、R-T-B系焼結磁石は、モーター車用の駆動モーターに使用されており、内燃機関エンジン自動車から電気自動車へ代替されることで、二酸化炭素等の温室効モーター削減(燃料・排ガスの削減)による地球温暖化防止にも寄与している。このように、R-T-B系焼結磁石は、クリーンエネルギー社会の実現に大きく貢献している。
【0004】
R-T-B系焼結磁石は、合金粉末を準備する工程、合金粉末をプレス成形して粉末成形体を作製する工程、粉末成形体を焼結する工程などの工程を経て製造される。
【0005】
R-T-B系焼結磁石は、永久磁石型同期モーターに広く利用されている。このようなモーターでは、例えば、ステータのティースに巻かれた銅線(巻線)が形成する回転磁界によってトルクを発生させる。軟磁性材料から形成されたロータの鉄心(コア)には、複数のR-T-B系焼結磁石が取り付けられる。永久磁石同期モーターには、表面磁石型と埋込磁石型がある。例えば、埋込磁石型のモーターでは、ロータの鉄心内部に形成した複数の開口部(孔または凹部)のそれぞれに焼結磁石が埋め込まれて使用される。ロータの鉄心内部に設けられる磁石埋込用の開口部は、一般には、「かまぼこ型」または「弓型(アーク型)」と呼ばれるような曲面を含む形状を有していることがある。これは、モーターの回転動作中にロータ内部を通る磁束の分布を精密に制御することがモーターの性能を高めるために必要であり、焼結磁石の形状および配置が重要になるからである。
【0006】
特許文献1は、このようなR-T-B系焼結磁石の一例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-39251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プレス機によって「かまぼこ型」または「弓型(アーク型)」と呼ばれるような形状を有する粉末成形体を作製する場合、粉末成形体が曲面と平坦面を有するため、そのハンドリングが難しいという課題がある。特に、プレス機から粉末成形体を取り出す工程またはその後の工程において、粉末成形体が有する曲面の一部が破損したり変形したりすると、R-T-B系焼結磁石の製造歩留りが低下してしまう。このような問題は、必ずしもR-T-B系焼結磁石の製造技術に限定されず、プレス機によって「かまぼこ型」または「弓型(アーク型)」と呼ばれるような形状を有する種々の粉末成形体を作製する場合に生じ得る。
【0009】
本開示の実施形態は、このような課題を解決することが可能な、粉末成形体取り出し装置および粉末プレスシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の粉末成形体取り出し装置は、例示的な実施形態において、複数の列に並んだ、凸面と、前記凸面の反対側に位置する平坦面とを有する複数の粉末成形体をプレス機のダイ上から取り出す、取り出し装置であって、複数の列のうちの1列に並んだ複数の粉末成形体を吸着するように配列された複数の第1吸着部を有する、第1軸方向に延びる第1平行バーと、複数の列のうちの他の1列に並んだ複数の粉末成形体を吸着するように配列された複数の第2吸着部を有する、前記第1軸方向に延びる第2平行バーと、前記第1平行バーおよび前記第2平行バーを駆動して、前記第1吸着部と前記第2吸着部により、複数の列のうちの2列に並んだ前記粉末成形体の凸面を吸着する動作を実行する駆動装置と、を備える。第1吸着部と第2吸着部とは反対側を向いている。駆動装置は、吸着動作時において、第1平行バーと第2平行バーとの間に、複数の列のうちの少なくとも1列に並んだ複数の粉末成形体が位置するように第1平行バーおよび第2平行バーを配置し、第1吸着部で複数の列のうちの1列に並んだ複数の粉末成形体を吸着するとともに、第2吸着部で複数の列のうちの他の1列に並んだ複数の粉末成形体を吸着させる。
【0011】
ある実施形態において、第1平行バーにおける複数の第1吸着部は、複数の列に並んだ複数の粉末成形体のうち、ある列に並んだ複数の粉末成形体を吸着する上側吸着部と、他の列に並んだ複数の粉末成形体を吸着する下側吸着部とを含む。上側吸着部と下側吸着部とは第1軸方向に沿って交互に並んでいる。第2平行バーにおける複数の第2吸着部は、複数の列に並んだ複数の粉末成形体のうち、更に他の列に並んだ複数の粉末成形体を吸着する上側吸着部と、更に他の列に並んだ複数の粉末成形体を吸着する下側吸着部とを含む。上側吸着部と下側吸着部とは第1軸方向に沿って交互に並んでいる。
【0012】
ある実施形態において、前記駆動装置は、第1平行バーの上側吸着部および下側吸着部の一方で、複数の列に並んだ複数の粉末成形体のうち、ある列に並んだ複数の粉末成形体を吸着し、第2平行バーの上側吸着部および下側吸着部の一方で、他の列に並んだ複数の粉末成形体を吸着させた後、前記第1平行バーおよび前記第2平行バーの位置を変える。そして、第1平行バーの上側吸着部および下側吸着部の他方で、更に他の列に並んだ複数の粉末成形体を吸着し、第2平行バーの上側吸着部および下側吸着部の他方で、更に他の列に並んだ複数の粉末成形体を吸着させる動作を実行する。
【0013】
ある実施形態において、駆動装置は、複数の第1吸着部および複数の第2吸着部によって、複数の粉末成形体のそれぞれが有する凸面を吸着させ、複数の粉末成形体のそれぞれが有する平坦面が下を向くようにして複数の粉末成形体を載置面上に置く。
【0014】
ある実施形態において、第1平行バーの複数の第1吸着部に対向するように前記第1軸方向に延びる第1補助部材と、第2平行バーの複数の第2吸着部に対向するように前記第1軸方向に延びる第2補助部材とを更に備える。駆動装置は、吸着動作時において、第1平行バーと第1補助部材との間に、1列に並んだ複数の粉末成形体が位置するように第1平行バーおよび第1補助部材を配置し、かつ、第2平行バーと第2補助部材との間に、1列に並んだ複数の粉末成形体が位置するように第2平行バーおよび第2補助部材を配置する。第1補助部材は、複数の第1吸着部が凸面を吸着するとき、複数の粉末成形体の平坦面の位置移動を規制し、第2補助部材は、複数の第2吸着部が凸面を吸着するとき、複数の粉末成形体の平坦面の位置移動を規制する。
【0015】
ある実施形態において、前記第1吸着部を含む前記第1平行バーの厚さは、隣接する列にある前記粉末成形体の厚さ方向における間隔よりも小さく、かつ、前記第2吸着部を含む前記第2平行バーの厚さは、隣接する列にある前記粉末成形体の厚さ方向における間隔よりも小さく、前記駆動装置は、吸着動作を行う前、前記第1平行バーと前記第2平行バーとの間隔の大きさを、各粉末成形体(1)の厚さよりも大きくする。
【0016】
本開示の粉末プレスシステムは、例示的な実施形態において、凸面と、凸面の反対側に位置する平坦面とを有する複数の粉末成形体を作製する粉末プレスシステムであって、プレス機と、上記いずれかの粉末成形体取り出し装置とを備える。プレス機は、複数の粉末成形体をそれぞれ形成するための複数のキャビティを有するダイと、複数のキャビティに充填された粉末をプレスする上パンチおよび下パンチとを備える。粉末成形体取り出し装置は、複数のキャビティ内で上下パンチによってプレスされて形成された複数の粉末成形体を、ダイ上から載置面上に移動せる。
【0017】
ある実施形態では、上面視において、複数のキャビティのそれぞれは、粉末成形体のそれぞれの凸面を規定する曲線と平坦面を規定する線分とを有する。複数のキャビティは、互いに平行な第1の列、第2の列、第3の列、および第4の列に沿って並んだキャビティを含む。第1および第2の列に沿って並ぶキャビティの曲線および線分は、それぞれ、各列の中央線に関して同じ側に位置する。第3および第4の列に沿って並ぶキャビティの曲線および線分は、それぞれ、各列の中央線に関して同じ側に位置する。第1および第2の列に沿って並ぶキャビティと第3および第4の列に沿って並ぶキャビティとの関係は対称である。第2の列に並ぶキャビティの曲線と第3の列に並ぶキャビティの曲線とは対向している。粉末成形体取り出し装置は、第1平行バーの第1吸着部により、複数のキャビティにおける第1の列に沿って並んだキャビティで形成された粉末成形体の凸面を吸着し、第2平行バーの第2吸着部により、第3の列に沿って並んだキャビティで形成された粉末成形体の凸面を吸着し、第1および第3の列に沿って並んだキャビティで形成された粉末成形体を前記ダイ上から取り出す。第1平行バーの第1吸着部により、複数のキャビティにおける第2の列に沿って並んだキャビティで形成された粉末成形体の凸面を吸着し、第2平行バーの第2吸着部により、第4の列に沿って並んだキャビティで形成された粉末成形体の凸面を吸着し、第2および第4の列に沿って並んだキャビティで形成された粉末成形体をダイ上から取り出し、平坦面が載置面に接するように載置面上に置く。
【発明の効果】
【0018】
本開示の実施形態によれば、プレス機によって「かまぼこ型」または「弓型(アーク型)」と呼ばれるような形状を有する種々の粉末成形体を作製した後、粉末成形体の曲面部分を吸着して取り出し動作を行うことにより、粉末成形体の平坦部分を下にして載置面の上に置くことが可能になる。その結果、粉末成形体の変形または損傷が生じることを抑制し、製造歩留りの向上が可能になる。
【0019】
また、本開示の実施形態によれば、プレス機のダイ上から複数の列に沿って並んだ複数の粉末成形体を効率的に取り出すが可能になるため、ダイにおけるキャビティの配列密度を高めることが可能になる。また、ダイに磁場を印加する場合、磁束の乱れを抑制し、キャビティを密に配置することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本開示の実施形態における粉末プレスシステムの構成例を模式的に示す図である。
図2図2は、プレス機によって作製される粉末成形体の構成例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、ダイにおける複数のキャビティの配置例を模式的に示す上面図である。
図4図4は、プレス工程中における上パンチ、ダイ、および下パンチの配置関係を模式的に示す断面図である。
図5図5は、プレス工程中における上パンチ、ダイ、および下パンチの配置関係を模式的に示す断面図である。
図6図6は、プレス工程中における上パンチ、ダイ、および下パンチの配置関係を模式的に示す断面図である。
図7図7は、プレス機における上パンチ、ダイ、および下パンチの配置関係を模式的に示す断面図である。
図8図8は、本開示の実施形態における粉末成形体取り出し装置の構成例を模式的に示す上面図である。
図9図9は、上記粉末成形体取り出し装置の構成例を模式的に示す側面図である。
図10図10は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す上面図である。
図11図11は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す上面図である。
図12図12は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す上面図である。
図13図13は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す上面図である。
図14図14は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す上面図である。
図15図15は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す正面図である。
図16図16は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す正面図である。
図17図17は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す正面図である。
図18図18は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す正面図である。
図19図19は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す正面図である。
図20図20は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す正面図である。
図21図21は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す正面図である。
図22図22は、粉末成形体取り出し装置の動作を模式的に示す正面図である。
図23図23は、載置面72上に置かれた粉末成形体1の配置例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示による粉末成形体取り出し装置と、粉末成形体取り出し装置を備える粉末プレスシステムの実施形態を説明する。
【0022】
まず、図1を参照して、本開示の実施形態における粉末プレスシステムの構成例を説明する。図1は、本実施形態における粉末プレスシステム100の構成例を模式的に示す図である。粉末プレスシステム100は、粉末成形体を作製するプレス機10と、プレス機10で作製された粉末成形体をプレス機から取り出す粉末成形体取り出し装置20とを備える。図には、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸が示されている。
【0023】
次に、図1に加えて、図2から図7を参照しながら、本実施形態におけるプレス機10の構成および動作の例を説明する。
【0024】
図2は、プレス機10によって作製される粉末成形体1の構成例を示す斜視図である。図2に示されるように、粉末成形体1は、凸面1aと、凸面1aの反対側に位置する平坦面1bとを有しており、「かまぼこ型」または「弓型(アーク型)」と呼ばれるような形状を有する。図2は、粉末成形体1の長さL、厚さT、幅Wが示されている。図1において、粉末成形体1は、その長さLの方向がY軸方向に平行となるように配列されている。
【0025】
図1のプレス機10は、複数の粉末成形体1をそれぞれ形成するための複数のキャビティを有するダイ4と、複数のキャビティに充填された粉末をプレスする上パンチ11および下パンチ12とを備える。上パンチ11、下パンチ12、およびダイ4の少なくとも2つは、それぞれ、不図示の駆動装置によって駆動されることにより、上パンチ11、下パンチ12、およびダイ4の間に相対的に位置関係が制御され得る。例えば、下パンチ12が固定され、上パンチ11およびダイ4のそれぞれが独立して上下動作を行うように構成されていてもよい。あるいは、ダイ4が固定され、上パンチ11および下パンチ12のそれぞれが独立して上下動作を行うように構成されていてもよい。
【0026】
図3は、ダイ4における複数のキャビティ2の配置例を模式的に示す上面図である。ダイ4は、図3に示すように、複数の粉末成形体1をそれぞれ形成するための複数のキャビティ2を有する。各キャビティ2は、Y軸方向に垂直な平面(ZX面に平行な平面)における断面の輪郭がY軸方向に沿って一様な形状を有している。ダイ4において、各キャビティ2の上下方向(Y軸方向)における両端は開放されており、両端からそれぞれ上パンチ11および下パンチ12が挿入される。上パンチ11および下パンチ12は、キャビティ2の内壁に整合する側面を有しており、Y軸方向に垂直な平面(ZX面に平行な平面)における断面の輪郭がY軸方向に沿って一様な形状を有している。
【0027】
図3に示される上面視において、複数のキャビティ2のそれぞれは、粉末成形体1のそれぞれの凸面1a(図2参照)を規定する曲線2aと、平坦面1b(図2参照)を規定する線分2bとを有している。また、図3の例における複数のキャビティ2は、互いに平行な第1の列a、第2の列b、第3の列c、および第4の列dに沿って並んだキャビティ2を含む。図3において、各列a,b,c,dは、Z軸に平行であり、各列に7個のキャビティ2が並んでいる。ダイ4が有するキャビティ2の列の個数、および、各列におけるキャビティ2の個数は、図3の例に限定されない。
【0028】
図3の上面視において、第1の列aおよびの第2の列bに沿って並ぶキャビティ2の曲線2aおよび線分2bは、それぞれ、各列の中央線(一点鎖線)に関して同じ側に位置している。より具体的には、第1の列aおよび第2の列bに沿って並ぶキャビティ2では、曲線2aが、ダイ4の中央を通る対称軸4Cに近い側に配置され、線分2bは、対称軸4Cから遠い側に配置されている。
【0029】
また、第3の列cおよび第4の列dに沿って並ぶキャビティ2の曲線2aおよび線分2bは、それぞれ、各列の中央線(一点鎖線)に関して同じ側に位置している。より具体的には、第3の列cおよび第4の列dに沿って並ぶキャビティ2でも、曲線2aが対称軸4Cに近い側に配置され、線分2bは、対称軸4Cから遠い側に配置されている。
【0030】
このように、本開示の実施形態において、第1の列aおよび第2の列bに沿って並ぶキャビティ2と、第3の列cおよび第4の列dに沿って並ぶキャビティ2との関係は、ダイ4の中央を横切る対称軸4Cに関して対称である。なお、第2の列bに並ぶキャビティ2の曲線2aと前記第3の列cに並ぶキャビティ2の曲線2aとは対向している。
【0031】
図3には、一対の配向磁場印加装置16が記載されている。ダイ4は、一対の配向磁場印加装置16の間に配置されている。配向磁場印加装置16は、X軸方向に沿った水平な配向磁場を形成する。配向磁場による磁束の分布は、図3における対称軸4Cに関して対称であり、各キャビティ2の内部に所望の磁場を適切に形成することが可能になる。
【0032】
図4から図7は、プレス工程の各状態における、上パンチ11、ダイ4、および下パンチ12の配置関係を模式的に示す断面図である。図4の状態において、上パンチ11は、ダイ4から離れた位置にある。ダイ4のキャビティ2の下部は、下パンチ12の先端部分によって塞がれている。この状態において、キャビティ2は、上部が開放された空間を形成している。この開放された上部から粉末がキャビティ2の内部に充填される。粉末は、例えば、前述したR-T-B系焼結磁石用の合金粉末である。
【0033】
図4の状態におけるダイ4および下パンチ12に対して、上パンチ11の位置を相対的に降下させ、上パンチ11をキャビティ2の内部に上方から挿入する。こうして、各キャビティ2の内部で粉末をプレスして粉末を圧縮する。その結果、各キャビティ2の内部で粉末成形体1を作製することができる。
【0034】
図5は、各キャビティ2の内部において、上パンチ11と下パンチ12との間で粉末が圧縮成形されて、粉末成形体1が形成された状態を示している。
【0035】
その後、図6に示すように、上パンチ11および下パンチ12をダイ4に対して相対的に上昇させ、ダイ4から離れた位置に戻す。このとき、上パンチ11および下パンチ12を静止させたまま、ダイ4を降下させてもよい。こうして、粉末成形体1の大部分をキャビティ2から排出させ、粉末成形体1をダイ4上に配列した状態にすることができる。この後、上パンチ11を上昇させることにより、図7に示すように、ダイ4上に複数の粉末成形体1が並んだ状態が得られる。図7の例において、下パンチ12の上端面は、ダイ4の上面よりも低い位置にある。そのため、ダイ4の上面においてキャビティ2の位置には凹部が形成されており、各粉末成形体1の下端部は、その凹部の壁面によって保持された状態にある。但し、下パンチ12の上端部とダイ4の上面は同じ位置でも良い。
【0036】
上述したように、本実施形態において、複数の列にそって並ぶキャビティ2は、ダイ4の中央を横切る対称軸4Cに関して対称である。これにより各キャビティ2の内部に所望の磁場を適切に形成することが可能になる。そして、本実施形態では、ダイ4の中央を横切る対称軸4Cに関して対称に配置された複数のキャビティ2内で、上下パンチ11、12によってプレスされて形成された複数の粉末成形体1の凸面1aを後述する粉末成形体取り出し装置20によってプレス機10から取出し、粉末成形体1の平坦部分を下にして載置面の上に置く。これにより、後工程(例えば焼結工程)の移動時などに粉末成形体1どうしの接触による粉末成形体の変形または損傷を抑制することができる。さらに、本発明者らの検討によると、粉末成形体の平坦部分を下にして焼結を行うことで、得られた焼結磁石の変形(反り)を抑制できることが分かった。
【0037】
次に、図8から図22を参照して、粉末成形体取り出し装置20の構成および動作の例を説明する。
【0038】
まず、図8および図9を参照して、粉末成形体取り出し装置20の構成例を説明する。図8および図9は、それぞれ、本実施形態における粉末成形体取り出し装置の構成例を模式的に示す上面図および側面図である。
【0039】
粉末成形体取り出し装置20は、複数のキャビティ2内で上下パンチ11、12によってプレスされて形成された複数の粉末成形体1を、ダイ4の上から載置面上に移動せるように構成されている。具体的には、図8および図9に示されるように、第1軸(Z軸)方向に延びる第1平行バー21と、第2平行バー22とを備えている。第1平行バー21は、ダイ4上に並ぶ粉末成形体1の複数の列のうちの、1列に並んだ複数の粉末成形体1を吸着するように配列された複数の第1吸着部31を有する。また、第2平行バー22は、ダイ4上に並ぶ粉末成形体1の複数の列のうちの、他の1列に並んだ複数の粉末成形体を吸着するように配列された複数の第2吸着部32を有する。そして、第1吸着部31と第2吸着部32とは反対側を向いている。具体的には、図8の上面視において、第1吸着部31の吸着面は、X軸の正方向を向いているのに対して、第2吸着部32の吸着面は、X軸の負方向を向いている。
【0040】
なお、プレス機10から取り出された粉末成形体1が置かれる載置面は、例えば、テーブル、台、搬送用のキャリヤまたはケース、ベルトコンベアなどの上面であり得る。
【0041】
粉末成形体取り出し装置20は、第1平行バー21および第2平行バー22を駆動して、第1吸着部31と第2吸着部32により、複数の列のうちの2列に並んだ粉末成形体1の凸面1aを吸着する動作を実行する駆動装置51、52を備える。駆動装置51、52は、吸着動作時において、第1平行バー21と第2平行バー22との間に、複数の列のうちの少なくとも1列に並んだ複数の粉末成形体1が位置するように第1平行バー21および第2平行バー22を配置する。そして、第1吸着部31で1列に並んだ複数の粉末成形体1を吸着するとともに、第2吸着部32で他の1列に並んだ複数の粉末成形体1を吸着させる。駆動装置51、52の動作例の詳細については、後述する。
【0042】
図9に示されるように、本実施形態では、第1平行バー21における複数の第1吸着部31は、複数の列に並んだ複数の粉末成形体1のうち、ある列に並んだ複数の粉末成形体1を吸着する上側吸着部と、他の列に並んだ複数の粉末成形体1を吸着する下側吸着部とを含む。吸着のために2系統のエア流路を第1平行バー21内に設けるためには、上側吸着部と下側吸着部とが、第1軸(Z軸)方向に沿って交互に並んでいることが好ましい。
【0043】
また、第2平行バーにおける複数の第2吸着部32は、複数の列に並んだ複数の粉末成形体1のうち、更に他の列に並んだ複数の粉末成形体1を吸着する上側吸着部と、更に他の列に並んだ複数の粉末成形体1を吸着する下側吸着部とを含む。同様に、上側吸着部と下側吸着部とは第1軸(Z軸)方向に沿って交互に並んでいることが好ましい。
【0044】
本実施形態における粉末成形体取り出し装置20は、第1平行バー21の複数の第1吸着部31に対向するように第1軸(Z軸)方向に延びる第1補助部材(41)と、第2平行バーの複数の第2吸着部32に対向するように第1軸(Z軸)方向に延びる第2補助部材(42)と、を更に備える。第1補助部材(41)および第2補助部材(42)の働きについては、後述する。
【0045】
次に、図10から図22を参照しながら、粉末成形体取り出し装置20の構成および動作の例を詳細に説明する。
【0046】
まず、図10を参照する。ダイ4上には、図10図7参照)に示すような状態で複数の列に粉末成形体1が並んでいる。具体的には、互いに平行な第1の列a、第2の列b、第3の列c、および第4の列dに沿って、粉末成形体1が並んでいる。この例において、粉末成形体1の個数は7×4=28個であり、これらは、プレス機10による1回のプレス工程によって作製される。
【0047】
図7の工程の段階では、粉末成形体取り出し装置20は、例えば図10に示されるように、ダイ4からZ軸の負方向に離れた位置にある。その後、駆動装置51、52が、第1平行バー21および第2平行バー22をZ軸の正方向に移動させる。これにより、図11に示されるように、第1平行バー21と第2平行バー22との間に、第2の列bに並んだ複数の粉末成形体1が位置するように、第1平行バー21および第2平行バー22が配置される。より詳細には、第1平行バー21のZ軸方向における位置は、第1吸着部31が第1の列aに並んだ複数の粉末成形体1を吸着することが可能な位置に決められる。同様に、第2平行バー22は、第2吸着部32が第3の列cに並んだ複数の粉末成形体1を吸着することが可能な位置に決められる。この段階では、第1吸着部31と粉末成形体1との間には、隙間が存在し、第2吸着部32と粉末成形体1との間にも、隙間が存在する。
【0048】
駆動装置51は、第1平行バー21と第1補助部材41との間に、第1の列aに並んだ複数の粉末成形体1が位置するように、第1平行バー21および第1補助部材41を配置する。同様に、駆動装置52は、第2平行バー22と第2補助部材42との間に、第3の列cに並んだ複数の粉末成形体1が位置するように、第2平行バー22および第2補助部材42を配置する。
【0049】
図15は、この段階における、粉末成形体1と第1および第2平行バー21、22との配置関係を示す正面図である。ここで、「正面図」とは、例えば図14のZ軸の正方向の側から負方向の側に視線を向けた対象物を視たときの図であり、Y軸の正方向を鉛直上方の方向に合わせている。図16から図22も同様である。
【0050】
図15から明らかなように、吸着動作を実行する直前の段階において、第1平行バー21と第2平行バー22との間隔の大きさは、粉末成形体1の厚さよりも大きい。また、第1吸着部31を含む第1平行バー21の厚さ(粉末成形体1の厚さ方向に平行な方向におけるサイズ)は、隣接する列にある粉末成形体1の厚さ方向における間隔よりも小さい。同様に、第2吸着部32を含む第2平行バー22の厚さは、隣接する列にある粉末成形体1の厚さ方向における間隔よりも小さい。このように本実施形態では、隣接する列にある粉末成形体1の間には、2本の平行バー21、22がそれぞれ挿入されている。そして、第1吸着部と第2吸着部とは反対側を向いており、駆動装置は、吸着動作時において、第1平行バー21と第2平行バー22との間に、複数の列のうちの少なくとも1列に並んだ複数の粉末成形体1が位置するように第1平行バー21および第2平行バー22を配置している。すなわち、第1平行バー21の第1吸着部により吸着される列と第2平行バー22の第2吸着部が吸着される列との間に、隣接するその他の列が位置するように、2本の平行バー21、22がそれぞれ挿入されている。これにより平行バー21と22の間には少なくともその他の列における幅の分の隙間が生じている。これに対し、例えば、第2の列bに並んだ粉末成形体1の凸面1aを第1平行バー21によっての第1吸着部で吸着する動作と、第3の列cに並んだ粉末成形体1の凸面1aを第2平行バー22の第2吸着部によって吸着する動作とを同時に実行しようとすると、第1平行バー21が吸着する列と第2平行バー22が吸着する列との間には隣接するその他の列がない。このような第1平行バー21と第2平行バー22が隣り合う状態の場合、プレス機10から粉末成形体1を取り出す時やその後、載置面の上に粉末成形体1を置く時に、例えば、第2平行バー22の第2吸着部によって吸着された粉末成形体1が、第1平行バー21に接触したり、第1平行バー21の第1吸着部に吸着された粉末成形体1に接触したりするなどして欠け(損傷)が発生する場合がある。また、欠けの発生を抑制しようとすると、第1平行バー21と第2平行バー22が隣り合わないように第2の列bと第3の列cとの間隔を拡大する必要がある。このような列の間隔の拡大は、プレス機10のダイ4の大型化を招くため好ましくない。ダイ4が大型化すると、プレス機10も大型化するため、設備費用が大幅に増大する可能性がある。さらに、ダイ4が大型化すると、所望の磁場を適切に形成することが困難になる可能性がある。これに対し、本実施形態では、ダイ4を大型化することなく、第1平行バー21と第2平行バー22が隣り合わないようにすることができるため、プレス機10から粉末成形体1を取り出す時やその後の載置面の上に粉末成形体1を置く時における欠けの発生を抑制することが可能となる。
【0051】
次に、図16に示されるように、吸着動作を実行する。吸着動作時において、第1補助部材41は、複数の第1吸着部31が複数の粉末成形体1の凸面1aを吸着するとき、各粉末成形体1の平坦面1bの位置移動を規制する。同様に、第2補助部材42は、複数の第2吸着部32が複数の粉末成形体1の凸面1aを吸着するとき、各粉末成形体1の平坦面1bの位置移動を規制する。このような位置移動の規制は、駆動装置51、52が、第1補助部材41および第2補助部材42をX軸方向に移動させて、粉末成形体1の平坦面1bに接触させることにより実現し得る。
【0052】
この後、図17に示すように、第1の列aおよび第3の列cにあった粉末成形体1は、それぞれ、第1平行バー21および第2平行バー22に吸着された状態でY軸方向に上昇し、ダイ4から離れる。このとき、第1平行バー21の第1吸着部31および第2平行バー22の第2吸着部32のそれぞれが有する上側吸着部および下側吸着部の一方で、粉末成形体1が吸着されている。言い換えると、第1平行バー21の第1吸着部31および第2平行バー22の第2吸着部32のそれぞれが有する上側吸着部および下側吸着部の他方には、粉末成形体1が吸着されていない。図12は、このような状態を示している。
【0053】
この後、図13に示すように第1平行バー21および第2平行バー22の位置を変える。そして、第1平行バー21における上側吸着部および前記下側吸着部の他方で、更に他の列(第2の列b)に並んだ複数の粉末成形体1を吸着する。同様に、第2平行バー22の上側吸着部および前記下側吸着部の他方で、更に他の列(第4の列d)に並んだ複数の粉末成形体1を吸着させる動作を実行する。
【0054】
これらの一連の動作は、図18および図19に示される。図14は、4つの列に並んだ粉末成形体1を第1平行バー21および第2平行バー22によって吸着した状態を示している。この後、駆動装置51、52の働きにより、第1平行バー21および第2平行バー22は、複数の粉末成形体1を吸着したまま、図14の位置からZ軸方向の負方向に移動させられる。
【0055】
次に、図20に示すように第1平行バー21と第2平行バー22との間隔を拡大した後、図21に示すように第1平行バー21および第2平行バー22をそれぞれ中心軸(Z軸に平行な軸)の周りに回転させる。こうして、図22に示すように、各粉末成形体1の平坦面1bを台70の載置面72に対向させ、その後、平坦面1bが載置面72に接するように載置面72上に置く。
【0056】
図23は、載置面72上に置かれた粉末成形体1の配置例を模式的に示す平面図である。図23に示されるように、各粉末成形体1の凸面1aが上方を向いた状態にある。本実施形態では、第1平行バー21の第1吸着部31および第2平行バー22の第2吸着部32の上側吸着部で粉末成形体1の中央部を吸着し、また、第1平行バー21の第1吸着部31および第2平行バー22の第2吸着部32の下側吸着部で粉末成形体1の中央部を吸着している。言い換えると、上側吸着部で粉末成形体1を吸着するときにおける2本の平行バー21、22の高さ(Y軸方向における位置)は、下側吸着部で粉末成形体1を吸着するときにおける2本の平行バー21、22の高さ(Y軸方向における位置)よりも低い。このため。各平行バー21、22に吸着された粉末成形体1の高さは、Z軸方向に沿って、交互に変化する。その結果、図21および図22に示すように各平行バー21、22を回転したから、載置面72に置かれた粉末成形体1のX軸方向における位置は、図23に示されるように、Z軸方向に沿って交互に変化する。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示粉末成形体取り出し装置および粉末プレスシステムは、電気自動車(EV、HV、PHV)用モーター、産業機器用モーターなどの各種モーターや家電製品など多種多様な用途で使用される永久磁石の製造に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23