(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20250326BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20250326BHJP
【FI】
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2021117298
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2024-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大橋 悠也
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-219239(JP,A)
【文献】特開2016-136608(JP,A)
【文献】特開2017-195242(JP,A)
【文献】特開2018-174237(JP,A)
【文献】特開2019-102725(JP,A)
【文献】特開2020-161705(JP,A)
【文献】特開2021-60296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00―11/00
G01R 19/00
H01L 23/58
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力する電圧を減圧する機能を有する第1のチップと、該第1のチップの出力信号を信号処理する機能を有する第2のチップが、ダイパッド上に搭載され、各チップ電極間および各チップ電極と外部引き出し用のリード端子とがワイヤ接続され、封止樹脂により封止されている半導体装置において、
前記リード端子は、前記ダイパッドを挟んで対向して配置された複数のリード端子からなる第1のリード列と第2のリード列を構成していることと、
前記第1のチップは抵抗素子を主な構成要素とし、該抵抗素子は、第1の抵抗素子と第2の抵抗素子とからなる第1の分圧抵抗列と、第3の抵抗素子と第4の抵抗素子とからなる第2の分圧抵抗列と、第5の抵抗素子からなる帰還抵抗とを含んでいることと、
前記第2のチップはオペアンプを主な構成要素とし、第1のオペアンプと第2のオペアンプとを含んでいることと、
前記第1のリード列のリード端子は2つのリード端子で構成され、該第1のリード列の一方のリード端子は、方形の前記第1のチップ上の前記第1のリード列側の一辺側に形成された2つの抵抗チップ電極の一方の抵抗チップ電極であって前記第1の分圧抵抗列の一端に接続する抵抗チップ電極に接続し、前記第1のリード列の他方のリード端子は、前記2つの抵抗チップ電極の他方の抵抗チップ電極であって前記第2の分圧抵抗列の一端に接続する抵抗チップ電極に接続し、
前記2つの抵抗チップ電極より前記一辺側と対向する別の一辺側に配置されている別の抵抗チップ電極のうち、前記第1の分圧抵抗列の第1の分圧電圧を出力する前記第1の抵抗素子と前記第2の抵抗素子の接続点である第1の直列接続点に接続する抵抗チップ電極と、前記第2の分圧抵抗列の第2の分圧電圧を出力する前記第3の抵抗素子と前記第4の抵抗素子の接続点である第2の直列接続点に接続する抵抗チップ電極とを、方形の前記第2のチップ上に形成された前記第1のチップ側の一辺側に配置されているオペアンプチップ電極のうち、前記第1のオペアンプの非反転入力端子および反転入力端子に接続するオペアンプチップ電極にそれぞれ接続し、基準電圧に接続される前記第1の分圧抵抗列の他端および前記第2の分圧抵抗列の他端に接続する抵抗チップ電極を前記第2のリード列のリード端子に接続し、
前記第2のチップ上に形成された前記第1のチップ側の一辺側に配置されているオペアンプチップ電極のうち、前記第1のオペアンプの出力端子に接続するオペアンプチップ電極と該第1のオペアンプの前記反転入力端子に接続するオペアンプチップ電極との間に前記帰還抵抗の両端に接続する抵抗チップ電極をそれぞれ接続し、前記第1の直列接続点に接続する抵抗チップ電極と、前記第2のチップ上に形成された前記第1チップ側の一辺側に配置されているオペアンプチップ電極のうち、前記第2のオペアンプの非反転入力端子に接続するオペアンプチップ電極とを接続し、前記第2のオペアンプの反転入力端子と接続する該第2のオペアンプの出力端子に接続されているオペアンプチップ電極を含む別のオペアンプチップ電極は、前記第2のリード列のリード端子に接続し、
前記第1のリード列のリード端子に印加される電圧を前記第1の分圧抵抗列および前記第2の分圧抵抗列により分圧し、前記第1の分圧電圧を前記第1のオペアンプの非転入力端子に出力し、前記第2の分圧電圧を前記第1のオペアンプの反転入力端子に出力し、前記第1のオペアンプで信号処理した出力信号を前記第2のリード列のリード端子から出力するとともに、前記第1の分圧電圧を前記第2のオペアンプの非反転入力端子に出力し、前記第2のオペアンプで信号処理した出力信号を前記第2のリード列のリード端子から出力することと、
前記第1のリード列の2つのリード端子は、該リード端子間に印加される電圧に耐える寸法だけ相互に離れて配置されていることと、
少なくとも前記第1のリード列の2つのリード端子間に前記封止樹脂が充填されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1のチップ上の前記第2のチップ側の表面に、あるいは前記第2のチップ上の前記第1のチップ側の表面に補助配線が配置されていることと、
前記第1のオペアンプの非反転入力端子と前記第2のオペアンプの非反転入力端子は、前記補助配線を経由して接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2いずれか記載の半導体装置において、
前記第2のリード列のいずれかのリード端子と、前記抵抗チップ電極あるいは前記オペアンプチップ電極は、前記ダイパッド上に搭載された中継チップを経由して接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2いずれか記載の半導体装置において、
前記第2のリード列のいずれかのリード端子と、前記抵抗チップ電極あるいは前記オペアンプチップ電極は、前記ダイパッド上に搭載されたESD保護素子を備えた中継チップを経由して接続されていることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチチップ型の半導体装置に関し、特にリード端子に高電圧が印加される半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリット車や電気自動車では、車両駆動用のバッテリが所定の駆動電圧を出力するように構成されており、バッテリの出力電圧を常に監視する必要がある。例えばハイブリット車の車両駆動用バッテリは出力電圧が200V程度で、さらにこれを昇圧して500V付近で使用される。そのため、異常電圧を監視するため電圧監視回路が必要となる。また近年では、1000Vを越える異常電圧を監視する高電圧監視回路が求められている。
【0003】
図7は、電圧検出回路を備えたモータ駆動装置の一例を示す。モータ駆動装置100は、車体から絶縁抵抗で分離された高電圧のバッテリBから出力される直流電圧(例えば200V)を昇圧コンバータ101により昇圧(例えば600Vに昇圧)し、その昇圧電圧を、平滑コンデンサ102を介してインバータ回路103によりモータ駆動用の3相交流電圧に変換して車両駆動用のモータMに供給する構成となっている。この種のモータ駆動装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
電圧検出回路200は、バッテリBの正極と負極との間の電圧を検出している。一般的に、電圧検出回路200は、
図8に示すようにオペアンプ201と抵抗素子202a~202eで構成することができ、端子B1と端子B2間に接続されるバッテリの正極と負極との間の電圧の検出信号を端子OUTから得ることができる。また本願出願人は、この種の電圧検出回路を半導体装置で構成する技術を開示している(特許文献2)。
【0005】
ところで、この種の電圧検出回路200を用いて車両用のバッテリの電圧検出を行う場合、バッテリを含めて電圧検出回路200は、接地の基準電位点となる車体から電気的に絶縁抵抗で分離されており、
図9に示すように理想的には無限大の抵抗値を持つ絶縁抵抗P1および絶縁抵抗P2が接続された構成と考えることができる。このような構成において、絶縁抵抗P1および絶縁抵抗P2が高抵抗の状態に維持されないと、周辺回路の誤動作や感電事故が発生する危険性がある。そのため、絶縁抵抗が高抵抗に維持されている状態を検出する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-201192号公報
【文献】特許第6541223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願出願人が先に提案した半導体装置では、バッテリの正極と負極との間の電圧は測定することはできたが、負極と接地との間の電圧あるいは正極と接地との間の電圧を測定することができなかった。本願発明は、バッテリの正極と負極間、および負極あるいは正極と接地間の電圧を監視、測定することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本願請求項1に係る発明は、入力する電圧を減圧する機能を有する第1のチップと、該第1のチップの出力信号を信号処理する機能を有する第2のチップが、ダイパッド上に搭載され、各チップ電極間および各チップ電極と外部引き出し用のリード端子とがワイヤ接続され、封止樹脂により封止されている半導体装置において、前記リード端子は、前記ダイパッドを挟んで対向して配置された複数のリード端子からなる第1のリード列と第2のリード列を構成していることと、前記第1のチップは抵抗素子を主な構成要素とし、該抵抗素子は、第1の抵抗素子と第2の抵抗素子とからなる第1の分圧抵抗列と、第3の抵抗素子と第4の抵抗素子とからなる第2の分圧抵抗列と、第5の抵抗素子からなる帰還抵抗とを含んでいることと、前記第2のチップはオペアンプを主な構成要素とし、第1のオペアンプと第2のオペアンプとを含んでいることと、前記第1のリード列のリード端子は2つのリード端子で構成され、該第1のリード列の一方のリード端子は、方形の前記第1のチップ上の前記第1のリード列側の一辺側に形成された2つの抵抗チップ電極の一方の抵抗チップ電極であって前記第1の分圧抵抗列の一端に接続する抵抗チップ電極に接続し、前記第1のリード列の他方のリード端子は、前記2つの抵抗チップ電極の他方の抵抗チップ電極であって前記第2の分圧抵抗列の一端に接続する抵抗チップ電極に接続し、前記2つの抵抗チップ電極より前記一辺側と対向する別の一辺側に配置されている別の抵抗チップ電極のうち、前記第1の分圧抵抗列の第1の分圧電圧を出力する前記第1の抵抗素子と前記第2の抵抗素子の接続点である第1の直列接続点に接続する抵抗チップ電極と、前記第2の分圧抵抗列の第2の分圧電圧を出力する前記第3の抵抗素子と前記第4の抵抗素子の接続点である第2の直列接続点に接続する抵抗チップ電極とを、方形の前記第2のチップ上に形成された前記第1のチップ側の一辺側に配置されているオペアンプチップ電極のうち、前記第1のオペアンプの非反転入力端子および反転入力端子に接続するオペアンプチップ電極にそれぞれ接続し、基準電圧に接続される前記第1の分圧抵抗列の他端および前記第2の分圧抵抗列の他端に接続する抵抗チップ電極を前記第2のリード列のリード端子に接続し、前記第2のチップ上に形成された前記第1のチップ側の一辺側に配置されているオペアンプチップ電極のうち、前記第1のオペアンプの出力端子に接続するオペアンプチップ電極と該第1のオペアンプの前記反転入力端子に接続するオペアンプチップ電極との間に前記帰還抵抗の両端に接続する抵抗チップ電極をそれぞれ接続し、前記第1の直列接続点に接続する抵抗チップ電極と、前記第2のチップ上に形成された前記第1チップ側の一辺側に配置されているオペアンプチップ電極のうち、前記第2のオペアンプの非反転入力端子に接続するオペアンプチップ電極とを接続し、前記第2のオペアンプの反転入力端子と接続する該第2のオペアンプの出力端子に接続されているオペアンプチップ電極を含む別のオペアンプチップ電極は、前記第2のリード列のリード端子に接続し、前記第1のリード列のリード端子に印加される電圧を前記第1の分圧抵抗列および前記第2の分圧抵抗列により分圧し、前記第1の分圧電圧を前記第1のオペアンプの非転入力端子に出力し、前記第2の分圧電圧を前記第1のオペアンプの反転入力端子に出力し、前記第1のオペアンプで信号処理した出力信号を前記第2のリード列のリード端子から出力するとともに、前記第1の分圧電圧を前記第2のオペアンプの非反転入力端子に出力し、前記第2のオペアンプで信号処理した出力信号を前記第2のリード列のリード端子から出力することと、前記第1のリード列の2つのリード端子は、該リード端子間に印加される電圧に耐える寸法だけ相互に離れて配置されていることと、少なくとも前記第1のリード列の2つのリード端子間に前記封止樹脂が充填されていることを特徴とする。
【0009】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載の半導体装置において、前記第1のチップ上の前記第2のチップ側の表面に、あるいは前記第2のチップ上の前記第1のチップ側の表面に補助配線が配置されていることと、前記第1のオペアンプの非反転入力端子と前記第2のオペアンプの非反転入力端子は、前記補助配線を経由して接続されていることを特徴とする。
【0010】
本願請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2いずれか記載の半導体装置において、前記第2のリード列のいずれかのリード端子と、前記抵抗チップ電極あるいは前記オペアンプチップ電極は、前記ダイパッド上に搭載された中継チップを経由して接続されていることを特徴とする。
【0011】
本願請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2いずれか記載の半導体装置において、前記第2のリード列のいずれかのリード端子と、前記抵抗チップ電極あるいは前記オペアンプチップ電極は、前記ダイパッド上に搭載されたESD保護素子を備えた中継チップを経由して接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体装置は、バッテリの正極と負極間の電圧を監視あるいは測定することができるとともに、負極と接地間の電圧あるいは正極と接地間の電圧を監視あるいは測定することができ、車載用部品の小型化の効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の半導体装置の電圧検出回路のブロック図である。
【
図2】本発明の半導体装置の電圧検出の説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施例の半導体装置の説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施例の半導体装置の断面構造の説明図である。
【
図5】本発明の第2の実施例の半導体装置の説明図である。
【
図6】本発明の第3の実施例の半導体装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る半導体装置は、高電圧が印加可能な半導体装置である。具体的には、1000V程度の高電圧を印加することができる半導体装置で、直接印加される高電圧の信号を減圧(降圧)する第1のチップと、第1のチップを経由した減圧(降圧)された信号を信号処理する第2のチップとに分けたマルチチップ構造としている。特に本発明では、第2のチップに複数のオペアンプを備える構成とし、本発明の半導体装置に接続されるバッテリの正極と負極間の電圧を検出できるだけでなく、負極と接地(車体)、正極と接地(車体)との電圧を検出して絶縁抵抗の抵抗値の低下の検知を可能とした構成としている。以下、本発明の実施例について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例について、1000Vを超える高電圧の検出と絶縁抵抗の抵抗値の低下を検知できる半導体装置を例にとり説明する。
図1は本発明の半導体装置装置の電圧検出回路のブロック図である。
【0016】
図1に示すように、直列に接続された抵抗素子2aと抵抗素子2b(第1の分圧抵抗列に相当)は、バッテリの負側の高電圧を分圧する素子で、端子B1がバッテリの負極に接続され、他端は基準電圧(VREF)に接続される。抵抗素子2aと抵抗素子2bの直列接続点N1(第1の直列接続点に相当)は、第1のオペアンプ1aの非反転入力端子に接続されている。ここで、抵抗素子が形成されている第1のチップ10とオペアンプが形成されている第2のチップ20とはそれぞれ別のチップで構成されているため、抵抗素子2aと抵抗素子2bの直列接続点N1とオペアンプ1aの非反転入力端子とは、ワイヤ3により接続されている。
【0017】
一方、直列に接続された抵抗素子2cと抵抗素子2d(第2の分圧抵抗列に相当)は、バッテリの正側の高電圧を分圧するための素子で、端子B2がバッテリの正極に接続され、他端は基準電圧(VREF)に接続される。抵抗素子2cと抵抗素子2dの直列接続点N2(第2の直列接続点に相当)は、第1のオペアンプ1aの反転入力端子に接続されている。抵抗素子2cと抵抗素子2dの直列接続点N2と第1のオペアンプ1aの反転入力端子とは、ワイヤ3により接続されている。
【0018】
抵抗素子2eは、第1のオペアンプ1aの増幅ゲインを決定するための帰還抵抗で、抵抗素子2eの一端は第1のオペアンプ1aの反転入力端子に接続し、他端は第1のオペアンプ1aの出力端子に、それぞれワイヤ3で接続されている。第1のオペアンプ1aの出力端子OUTは、端子B1と端子B2との間に接続されるバッテリの正極と負極間の電圧に相当する出力信号が出力される。この端子OUTは図示しない制御回路に接続され、その制御回路から
図7に示す昇圧コンバータ101やインバータ回路103の動作を制御する制御信号が出力され、モータMの駆動を制御することになる。
【0019】
また、抵抗素子2aと抵抗素子2bの直列接続点N1は、第2のオペアンプ1bの非反転入力端子に接続されている。第2のオペアンプ1bの反転入力端子は第2のオペアンプ1bの出力端子に接続され、第2のオペアンプ1bの出力端子VNOUTは、端子B1に接続されるバッテリの負極と基準電圧(VREF)間の電圧に相当する出力信号が出力される。
【0020】
より詳細に説明すると、
図2に示すように端子B1と端子B2間にバッテリBが接続する。バッテリBの負極(端子B1)と接地(GND)との絶縁抵抗P1が正常にが維持されている場合には、その間の絶縁抵抗P1の抵抗値R(P1)は理想的には無限大となるような非常に大きな値となる。一方、バッテリの負極と接地電位との絶縁抵抗P1が異常は場合には、その抵抗値R(P1)は小さくなる。同様にバッテリBの正極(端子B2)と接地(GND)との絶縁抵抗P2が正常に維持されている場合には、その間の絶縁抵抗P2の抵抗値R(P2)は非常に大きな値となり、絶縁状態が異常な場合には、その抵抗値R(P2)は小さくなる。
【0021】
例えば、
図2に示すバッテリBの電圧VBATTが1000Vで、接地電位との絶縁抵抗が正常に維持されている状態として、絶縁抵抗P1の抵抗値R(P1)が9MΩ、絶縁抵抗P2の抵抗値P(P2)が9MΩの場合、バッテリBの負極の電圧V(N)および正極の電圧V(P)は、
V(N)=‐R(P1)/{R(P1)+R(P2)}×VBATT=‐500V
V(P)=+R(P2)/{R(P1)+R(P2)}×VBATT=+500V
となる。
【0022】
ここで、絶縁抵抗P1の絶縁性が低下し、抵抗値R(P1)が1MΩに低下した場合には、バッテリBの負極の電圧V(N)および正極の電圧V(P)は、
V(N)=‐R(P1)/{R(P1)+R(P2)}×VBATT=‐100V
V(P)=+R(P2)/{R(P1)+R(P2)}×VBATT=+900V
となる。
【0023】
同様に、絶縁抵抗P2の絶縁性が低下し、抵抗値R(P2)が1MΩに低下した場合には、バッテリBの負極の電圧V(N)および正極の電圧V(P)は、
V(N)=‐R(P1)/{R(P1)+R(P2)}×VBATT=‐900V
V(P)=+R(P2)/{R(P1)+R(P2)}×VBATT=+100V
となる。
【0024】
このように絶縁抵抗P1および絶縁抵抗P2の抵抗値が低下した場合、バッテリBの負極の電圧V(N)および正極の電圧V(P)が変化する。そこで
図2に示す例では、電圧V(N)(端子B1の電圧)の変化を検知することで、絶縁抵抗P1および絶縁抵抗P2の抵抗値の状態を検知する構成としている。より具体的にはノードN1の電圧V(N1)の変化を出力端子VNOUTの出力電圧VNOUTから検知する。
【0025】
ここでノードN1の電圧V(N1)は、次のように表すことができる。
V(N1)=VNOUT
=R(2a)/{R(2a)+R(2b)}×VREF+R(2b)/{R(2a)+R(2b)}×V(N)
このように出力端子VNOUTの出力電圧VNOUTはバッテリBの負極の電圧V(N)に応じた信号となることがわかる。
【0026】
出力電圧VNOUT、基準電圧VREF、第1の抵抗素子の抵抗値R(2a)、第2の抵抗素子の抵抗値R(2b)は既知であるから、図示しない演算装置を用いてバッテリBの負極の電圧V(N)を算出すると、次のようになる。
V(N)=[1+{R(2A)/R(b)}]×VNOUT-R(2a)/R(2b)×VREF
【0027】
上述の説明の通り、絶縁抵抗P1の抵抗値が低下すると電圧V(N)は大きくなり、絶縁抵抗P2の抵抗値が低下すると電圧V(N)は小さくなることから、本発明の半導体装置の端子VNOUTの出力信号を監視することで、バッテリBの負極(端子B1)と接地(GND)の絶縁抵抗の状態、バッテリBの正極(端子B2)と接地(GND)の絶縁抵抗の状態を容易に検知可能となる。
【0028】
さらに必要に応じて、第2のオペアンプの出力信号となる端子OUTの出力信号からバッテリBの正極の電圧V(P)を得ることもでき、絶縁抵抗P1の抵抗値R(P1)、絶縁抵抗P2の抵抗値R(P2)を算出してもよい。
【0029】
なお上記説明では、端子B1にバッテリBの負極を接続し、端子B2にバッテリBの正極を接続した例について説明したが、バッテリBを逆に接続した場合であっても、同様にバッテリBの正極あるいは負極と接地(GND)の接続状態を検知することが可能となる。
【0030】
このように第2のオペアンプ1bの出力端子VNOUTの電圧を監視することで、バッテリの負極と接地間の絶縁抵抗が正常状態か、バッテリの負極と接地間、あるいはバッテリの正極と接地間の絶縁抵抗が異常状態かを検知することができる。出力端子VNOUTは、図示しない制御回路に接続され、所定の制御を行うように構成することができる。
【0031】
本発明の抵抗素子を備える第1のチップ10は、通常の半導体装置の製造工程で形成可能な抵抗素子(いわゆる薄膜抵抗素子)からなり、例えば、抵抗素子2aを36MΩ、抵抗素子2bを90kΩ、抵抗素子2cを36MΩ、抵抗素子2dを180kΩ、抵抗素子2eを180kΩとして形成する場合、第1のチップの大きさは、3.0mm×1.5mmの大きさで形成することができる。
【0032】
図3は、
図1で説明した電圧検出回路を、抵抗素子からなる第1のチップ10とオペアンプからなる第2のチップ20を用いて形成するためリードフレームに実装したときの接続状態を模式的に示している。なお第1のチップ10には、ワイヤ3により接続を容易にするために補助配線4を配置している。ワイヤ3は、第1のチップ10上に形成されている抵抗チップ電極、第2のチップ20上形成されているオペアンプチップ電極、リード端子とを接続している。詳細は後述する。
【0033】
図3に示すように、抵抗素子が形成されている第1のチップ10とオペアンプが形成されている第2のチップ20がダイパッド5上に実装されている。このリードフレームは、図面左側に2つのリード端子L1、L2(第1のリード列に相当)を備え、図面右側に7つのリード端子L4~L10とダイパッド5の2つの吊りリードL3、L11(第2のリード列に相当)を備えている。
【0034】
図2で説明した例では、リード端子L1はバッテリの負極に接続され、リード端子L2はバッテリの正極に接続される。抵抗素子2aと抵抗素子2bの直列回路は、一端をリード端子L1に接続され、他端をリード端子L10から所定の基準電位に接続される。抵抗素子2aと抵抗素子2bの接続点は、第2のチップ20に形成されている第1のオペアンプ1aの非反転入力端子に、ワイヤ3を用いて接続される。同様に抵抗素子2cと抵抗素子2dの直列回路は、一端をリード端子L2に接続され、他端をリード端子L10から基準電位に接続され、抵抗素子2cと抵抗素子2dの接続点は、第1のオペアンプ1aの反転入力端子に接続される。
【0035】
第2のチップ20に形成された第1のオペアンプ1aの出力端子は、ワイヤ3により第1のチップ10に形成されている抵抗素子2eの一端に接続される。この抵抗素子2eの他端は、抵抗素子2cと抵抗素子2dの接続点に接続し、ワイヤ3を用いて第2のチップに形成されている第1のオペアンプ1aの反転入力端子に接続することで、抵抗素子2eは第1のオペアンプ1aの帰還抵抗となる。
【0036】
さらに抵抗素子2aと抵抗素子2bの接続点は、第2のチップ20に形成されている第2のオペアンプ1bの非反転入力端子にワイヤ3を用いて接続される。
図3に示す例では、抵抗素子2aと抵抗素子2bの接続点は、第1のオペアンプ1aの非反転端子とも接続されており、この接続のためのワイヤ3との接触をさけるため、第1のチップ10に別に形成した補助配線4を経由した接続としている。なお、補助配線を第1のチップ10上に形成する代わりに第2のチップ上に形成して、補助配線により第1のオペアンプの非反転入力端子と第2のオペアンプの非反転入力端子とを接続すると、ワイヤ3による接続を少なくすることもできる。第2のオペアンプ1bの出力端子は、第2のオペアンプ1bの反転入力端子に接続されるとともに、リード端子L8に接続されている。
【0037】
第2のチップ20には、第1のオペアンプ1aおよび第2のオペアンプ1bの電源端子が形成されており、電源V+はリード端子L5に、電源V-はリード端子L9にそれぞれ接続され、各リード端子から電源電圧が供給される。
【0038】
第1のオペアンプ1aの出力端子は、ワイヤ3によりリード端子L4に直接接続することもできるが、第1のオペアンプ1aおよび第2のオペアンプ1bの電源V+とリード端子L5を接続するワイヤ3との接触を避けるため、第1のチップ10に別に形成した補助配線4を経由してワイヤ3によりリード端子L4に接続している。
【0039】
さらに高電圧が印加するリード端子L1とリード端子L2は、所定の沿面距離を確保するため、各リード端子に印加される電圧に応じて所定の寸法だけ離して配置される。本実施例では、第1のリード列に印加される電圧が第2のリード列に印加される電圧より大きいため、第1のリード列のリード端子L1とリード端子L2との間隔が、第2のリード列のリード端子の間隔より広く設定している。
【0040】
またリード端子L1は、リード端子L2との沿面距離を保つだけでなく、他のリード端子L4~L10との間でも所定の寸法だけ離れた位置に配置される。リード端子L2と他のリード端子L4~L10との間でも同様に所定の寸法だけ離れた位置に配置される。同様に沿面距離を保つため、ダイパッド5の吊りリードL3、L11についても、
図3に示すように図面右側(第2のリード列側)に配置されることになる。
【0041】
さらに、樹脂封止された半導体装置から外部に露出するリード端子L1とリード端子L2との間の放電を防止するため、リード端子間に、リード端子の厚さに相当する樹脂層6が充填されている。この樹脂層6の形成は、半導体装置本体の樹脂封止と同時に行うため、
図3に示すように第2のリード列側のリード端子間等にも樹脂層6が形成される場合を示している。
【0042】
より高電圧が印加される場合には、ダイパッド5を半導体装置本体から露出しない構造とするのが好ましい。
図4は、より高電圧が印加される場合に好適な半導体装置の断面構造を模式的に示す図である。
図4に示すように、ダイパッド5の裏面が封止樹脂から露出しないように吊りリードを加工することで容易にダイパッド5を半導体装置本体7内に封止することが可能となる。
【0043】
なお
図3に示す半導体装置は、リード端子L6、リード端子L7が未接続となっているが、補助配線4を用いない構造を実現するために使用してもよい。当然ながら、これら接続のないリード端子を除いた半導体装置とすることも可能である。
【実施例2】
【0044】
次に第2の実施例について説明する。上述の第1の実施例では、第1のチップ10に形成される抵抗チップ電極と第2のリード列のリード端子を直接ワイヤ3で接続する構造となっている。このようにワイヤ3が長い構造とすると、樹脂封止の際にワイヤ3に圧力が加わり、他のワイヤと接触する等の不具合が発生する場合がある。そこで本実施例では、
図5に示すように中継チップ30を経由して第1のチップ10上に形成される抵抗チップ電極と第2のリード列のリード端子L4、L10とを接続することを可能としている。
【0045】
中継チップ30は、
図5に示すように第1のチップ10上に形成した補助配線4と同様の補助配線4を形成した構造とすることができる。具体的には、中継チップ30の表面に補助配線4とその両端に接続のためのチップ電極を形成した構造とする。補助配線4を備えると、ワイヤ3の長さが短くなり、他のワイヤとの接触等の不具合の発生を防止することができる。
【実施例3】
【0046】
次に第3実施例について説明する。中継チップ30は、第1のチップ10と第2のリード列のリード端子との接続のために使用するだけとは限らない。例えば、
図6に示すように、上述の第2の実施例同様、中継チップ30を経由して第1のチップ10と第2のリード列のリード端子L4、L10を接続するのに加え、第2のチップ20と第2のリード列のリード端子との間も中継チップ30を経由して接続することができる。
【0047】
また静電気等のサージ電圧から半導体装置の内部回路を保護するため、
図6に示すようにESD保護素子を備える構造とするのが望ましい。これは、第2のチップ20には第1のオペアンプ1aおよび第2のオペアンプ1bの形成と同時にESD保護素子を形成することが容易であるが、第1のチップ10は高電圧が印加するため、表面に厚い絶縁膜を形成している。具体的には、一般的な半導体装置では表面に形成する酸化膜が0.7μm程度であるのに対し、1000Vを超える高電圧が印加される本発明の半導体装置では、5μm以上の厚い酸化膜を形成する必要がある。そのため、酸化膜の下の半導体基板にESD保護素子を形成すると、厚い酸化膜を除去してESD保護素子を露出させる必要がある。
【0048】
そこで、ESD保護素子8を中継チップ30上に形成している。このような中継チップ30は、一般的な半導体装置の製造工程により形成可能であるので、その表面に形成される酸化膜は厚くする必要はなく、ESD保護素子8を形成するのに好適である。
図6に示す構造の半導体装置では、第2のリード列のリード端子L10にサージ電圧が印加した場合であっても、ESD保護素子8により第1のチップ10の抵抗素子の破壊を防止することが可能となる。
【0049】
上記第2の実施例および第3の実施例においても、補助配線4を第1のチップ10上に形成する代わりに第2のチップ上に形成して、補助配線4により第1のオペアンプの非反転入力端子と第2のオペアンプの非反転入力端子とを接続することもできる。
【符号の説明】
【0050】
1a:第1のオペアンプ、1b:第2のオペアンプ、2a~2e:抵抗素子、3:ワイヤ、4:補助配線、5:ダイパッド、6:樹脂層、7:半導体装置本体、8:ESD保護素子、
100:モータ駆動装置、101:昇圧コンバータ、102:平滑コンデンサ、103:インバータ回路、
200:電圧検出回路、201:オペアンプ、202a~202e:抵抗素子