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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/06 20060101AFI20250326BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20250326BHJP
   B29C 48/05 20190101ALI20250326BHJP
   B29C 48/345 20190101ALI20250326BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20250326BHJP
【FI】
B29B9/06
C08J3/12 Z CEY
B29C48/05
B29C48/345
B29C48/25
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023540804
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 KR2023000736
(87)【国際公開番号】W WO2023149681
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0015673
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ヨン・チン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・チョル・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ビン・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ソク・キム
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/054564(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0048842(KR,A)
【文献】特開平10-137615(JP,A)
【文献】国際公開第2021/075921(WO,A1)
【文献】特開2010-051857(JP,A)
【文献】国際公開第2021/101277(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/030129(WO,A1)
【文献】特開2005-096448(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0062459(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 9/06
C08J 3/12
B29C 48/05
B29C 48/345
B29C 48/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側にホッパーが形成されて重合された含水ゲルまたは再造粒された含水ゲルが供給され、その内部に供給された含水ゲルを他側に移送する移送空間が形成されたボディと、
前記移送空間に回転可能に配置され、その外周面にスクリューが形成されて前記含水ゲルを一側から他側に移送する第1回転軸と、
前記スクリューの他側において前記ボディに固定的に取り付けられ、スクリューによって移送された含水ゲルが通過する複数のプレカッターホールが形成されたプレカッターと、
前記ボディ内において前記プレカッターの他側に回転可能に配置され、第1回転軸に連結されて第1回転軸と共に回転し、プレカッターホールを通過した含水ゲルを一次的に切断する第1カッターと、
前記第1カッターの他側において前記ボディに固定的に取り付けられ、第1カッターで一次的に切断された含水ゲルが通過する複数の第1貫通ホールが形成された第1ホールプレートと、
前記第1回転軸と同軸上に配置され、第1回転軸とは独立して回転可能に配置される第2回転軸と、
前記ボディ内において前記第1ホールプレートの他側に回転可能に配置され、前記第2回転軸に連結されて第2回転軸と共に回転し、第1貫通ホールを通過した含水ゲルを2次的に切断する第2カッターと、
前記第2カッターの他側において前記ボディに固定的に取り付けられ、第2カッターで2次的に切断された含水ゲルが通過する複数の第2貫通ホールが形成された第2ホールプレートと、を含む、高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置。
【請求項2】
前記第1回転軸に駆動力を伝達する第1駆動モータと、
前記第2回転軸に駆動力を伝達する第2駆動モータと、をさらに含む、請求項1に記載の高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置。
【請求項3】
前記第1駆動モータはボディの一側に配置され、前記第1回転軸はボディの一側面を貫通して第1駆動モータに連結され、
前記第2駆動モータはボディの他側に配置され、前記第2回転軸はボディの他側面を貫通して第2駆動モータに連結される、請求項2に記載の高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置。
【請求項4】
前記第2回転軸の回転速度は、前記第1回転軸の回転速度より速い、請求項1に記載の高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置。
【請求項5】
前記第1回転軸の回転速度は100rpm~300rpmであり、前記第2回転軸の回転速度は1000rpm~1750rpmである、請求項1に記載の高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置。
【請求項6】
前記第2ホールプレートの厚さは、前記第1ホールプレートの厚さより小さい、請求項1に記載の高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置。
【請求項7】
前記第2ホールプレートの剛性を補強するために、前記第2ホールプレートに少なくとも1つのリブを備えた、請求項に記載の高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置。
【請求項8】
前記第1ホールプレートの厚さは7mm~35mmであり、前記第2ホールプレートの厚さは3mm~10mmである、請求項に記載の高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2022年2月7日付の韓国特許出願第10-2022-0015673号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置に関し、より詳しくは、互いに異なる速度で回転する第1カッターおよび第2カッターで含水ゲルを順次切断して微粉発生量を減らして物性を向上させる高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)は、アクリル酸と苛性ソーダとを反応させて製造する白色粉末状の高分子物質であり、SAPの自重の5百倍から1千倍程度の水分を吸収することができる。高吸水性樹脂は水を吸収すればゼリーに似た形に変形し、外部からある程度の圧力が加えられても水を排出せずに貯蔵できる機能を有する合成高分子物質である。
【0004】
高吸水性樹脂分子は網模様の網状構造を有しており、分子間の多くの孔によって水をよく吸収することができる。水と高吸水性樹脂の内部のイオン濃度の差によって、水は高吸水性樹脂の内部に移動(浸透圧現象によって)する。水分子が高吸水性樹脂の内部に流入すれば、内部に固定された陰イオンが反発力によって一定の空間を占めようとしながら、高分子鎖の空間が膨張して水をより多く吸収(静電的反発力)できるようになるのである。
【0005】
このような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始めて、現在は、子供用紙おむつなどの衛生用品のほか、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料として幅広く使用されている。
【0006】
高吸水性樹脂は、重合反応を経て得られた含水ゲル(hydrogel)または含水ゲル状重合体(hydrogel polymer)を細切、乾燥、粉砕、分級および表面処理を行った後、粉末状の製品として市販される。この時、乾燥された重合体の切断、粉砕および粉末化段階において約150μm以下の粒子の大きさを有する微粉(fines)が発生することがある。前記微粉を含む高吸水性樹脂は低下した物性を示すことができるので、前記微粉を水で再造粒した後、細切工程に投入して製品化させる。しかし、再造粒された微粉は重合反応後の高吸水性樹脂に比べて全般的に物性が低下し、製品全体の物性を低下させる。また、微粉発生量が増加するほど工程負荷が大きくなり、生産性が低下する。
【0007】
この背景技術欄に記載された内容は発明の背景に対する理解を深めるために作成されたものであり、この技術が属する分野で通常の知識を有する者にすでに知られている従来技術でない内容を含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、含水ゲルの移送速度に比例する速度で回転する第1カッターと、単位時間当たりの含水ゲルとの衝突回数に比例する速度で回転する第2カッターとを用いて含水ゲル粒子の凝集による損傷を最小化して微粉発生量を減らし、かつ、粒子を小型化できる高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置は、一側にホッパーが形成されて重合された含水ゲルまたは再造粒された含水ゲルが供給され、その内部に供給された含水ゲルを他側に移送する移送空間が形成されたボディと、前記移送空間に回転可能に配置され、その外周面にスクリューが形成されて前記含水ゲルを一側から他側に移送する第1回転軸と、前記スクリューの他側において前記ボディに固定的に取り付けられ、スクリューによって移送された含水ゲルが通過する複数のプレカッターホールが形成されたプレカッターと、前記ボディ内において前記プレカッターの他側に回転可能に配置され、第1回転軸に連結されて第1回転軸と共に回転し、プレカッターホールを通過した含水ゲルを一次的に切断する第1カッターと、前記第1カッターの他側において前記ボディに固定的に取り付けられ、第1カッターで一次的に切断された含水ゲルが通過する複数の第1貫通ホールが形成された第1ホールプレートと、前記第1回転軸と同軸上に配置され、第1回転軸とは独立して回転可能に配置される第2回転軸と、前記ボディ内において前記第1ホールプレートの他側に回転可能に配置され、前記第2回転軸に連結されて第2回転軸と共に回転し、第1貫通ホールを通過した含水ゲルを2次的に切断する第2カッターと、前記第2カッターの他側において前記ボディに固定的に取り付けられ、第2カッターで2次的に切断された含水ゲルが通過する複数の第2貫通ホールが形成された第2ホールプレートと、を含み得る。
【0010】
前記含水ゲル微粒化装置は、前記第1回転軸に駆動力を伝達する第1駆動モータと、前記第2回転軸に駆動力を伝達する第2駆動モータと、をさらに含み得る。
【0011】
前記第1駆動モータはボディの一側に配置され、第1回転軸はボディの一側面を貫通して第1駆動モータに連結され、前記第2駆動モータはボディの他側に配置され、第2回転軸はボディの他側面を貫通して第2駆動モータに連結される。
【0012】
前記第2回転軸の回転速度は第1回転軸の回転速度より速くてもよい。
【0013】
一実施形態で、第1回転軸の回転速度は100rpm~300rpmであり、第2回転軸の回転速度は1000rpm~1750rpmであり得る。
【0014】
第2貫通ホールの直径は、第1貫通ホールの直径以下であり得る。
【0015】
一実施形態で、第1貫通ホールの直径は3mm~20mmであり、第2貫通ホールの直径は3mm~16mmであり得る。
【0016】
第2ホールプレートの厚さは、第1ホールプレートの厚さより小さくてもよい。
【0017】
前記第2ホールプレートの剛性を補強するために、第2ホールプレートには少なくとも1つのリブが設けられる。
【0018】
一実施形態で、第1ホールプレートの厚さは7mm~35mmであり、第2ホールプレートの厚さは3mm~10mmであり得る。
【0019】
他の一実施形態で、前記第2貫通ホールの厚さとリブの厚さの合計は第2ホールプレートの厚さと同じであり得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、含水ゲルの移送速度に比例する相対的に遅い速度で回転する第1カッターと、単位時間当たりの含水ゲルの衝突回数に比例する相対的に速い速度で回転する第2カッターとを用いて含水ゲル粒子の凝集による損傷を最小化し、かつ、含水ゲル粒子を小型化し、微粉発生量を減らすことができる。
【0021】
すなわち、第1カッターの回転速度を遅く制御し、第2カッターの回転速度を速く制御することによってカット部内に含水ゲルが堆積することを防止し、かつ、第2カッターと含水ゲルの衝突回数を増加させることができる。したがって、含水ゲル粒子の凝集を抑制することができ、含水ゲルと第2カッターとの衝突回数のみを増加させることができる。
【0022】
また、微粉発生量を減らすことができるので、生産性が向上する。
【0023】
さらに、カット部の上側にプレカッターを配置して回転しながら移送される含水ゲルから回転成分を減少させることができる。したがって、制御された方式で含水ゲルのカッティングを行うことができる。
【0024】
その他に本発明の実施例によって得られるか予測される効果については本発明に係る詳細な説明で直接的または暗示的に開示する。すなわち、本発明の実施例により予測される多様な効果については後述する詳細な説明内で開示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本明細書の実施例は類似の参照符号が同一または機能的に類似の要素を指称する添付する図面と関連する以下の説明を参照してよりよく理解されることができる。
【0026】
図1】本発明の実施例による高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置の断面図である。
図2】本発明の実施例による高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置で用いられるプレカッターの正面図である。
図3】本発明の実施例による高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置で用いられる第1ホールプレートの側面図である。
図4図3に示す第1ホールプレートの正面図である。
図5】本発明の実施例による高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置で用いられる第2ホールプレートの側面図である。
図6図5に示す第2ホールプレートの正面図である。
【0027】
上記で参照された図面は必ずしも縮尺に合わせて図示されたものではなく、本発明の基本原理を例示する多様な好ましい特徴の多少簡略な表現を提示するものとして理解されなければならない。例えば、特定のサイズ、方向、位置、および形状を含む本発明の特定の設計の特徴が特定の意図された応用と使用環境によって一部決定される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ここで使用される用語は単に特定の実施例を説明するための目的であり、本発明を制限することを意図しない。ここで使用される単数形は文脈上明らかに別に表示されない限り、複数形をまた含むことを意図する。「含む」および/または「含有する」という用語は、本明細書で使用される場合、言及された特徴、整数、段階、作動、構成要素および/またはコンポーネントの存在を特定するが、他の特徴、整数、段階、作動、構成要素、コンポーネントおよび/またはこれらのグループのうちの1つ以上の存在または追加を排除しないことを理解することができる。ここで使用される用語の「および/または」は、関連して羅列された項目の任意の1つまたはすべての組み合わせを含む。
【0029】
本発明の明細書に使用される用語「重合体」、または「高分子」は、水溶性エチレン系不飽和単量体が重合した状態であることを意味し、すべての水分含量範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前の状態のものとして含水率(水分含量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル状重合体と指称することができる。
【0030】
また、「高吸水性樹脂」は、文脈によって前記重合体またはベース樹脂自体を意味するか、または前記重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたものをすべて包括するものとして使用される。
【0031】
本発明の実施例による高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置は、互いに異なる速度で回転する第1カッターと第2カッターを用いて1次および2次微粒化段階を一度に行うことができる。また、前記第1カッターの回転速度は、含水ゲルの移送速度に比例する相対的に遅い速度であり、前記第2カッターの回転速度は、単位時間当たりの含水ゲルの衝突回数に比例する相対的に速い速度であるので、含水ゲル粒子の凝集による損傷を最小化し、かつ、含水ゲル粒子を小型化し、微粉発生量を減らすことができる。また、カット部の上側にプレカッターを配置して回転しながら移送される含水ゲルから回転成分を減少させることができる。したがって、制御された方式で含水ゲルの微粒化を行うことができる。
【0032】
以下、本発明の実施例による高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置を添付する図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
本発明の実施例による高吸水性樹脂の製造装置は、重合反応器、微粒化装置、乾燥器、粉砕装置、および表面架橋装置を含む。
【0034】
前記重合反応器は内部架橋剤、および重合開始剤の存在下で単量体組成物の重合反応を起こして含水ゲル状重合体を形成する。
【0035】
前記重合反応は、含水ゲル状重合体を形成する反応であって、酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および重合開始剤を含む単量体組成物に対して重合を行って、前記酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤が架橋重合した重合体を形成する反応である。
【0036】
架橋重合体を構成する前記水溶性エチレン系不飽和単量体は高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体であり得る。非制限的な例として、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は下記化学式1で表される化合物であり得る。
【0037】
[化学式1]
-COOM
【0038】
前記化学式1中、Rは不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、Mは水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0039】
好ましくは、前記単量体はアクリル酸、メタクリル酸、およびこれら酸の1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択される1種以上であり得る。このように水溶性エチレン系不飽和単量体としてアクリル酸またはその塩を使用する場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができるため有利である。この他にも前記単量体としては、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどを使用することができる。
【0040】
ここで、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は酸性基を有する。一例による高吸水性樹脂の製造においては、前記酸性基のうち少なくとも一部が中和剤によって中和した単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を形成した。具体的には、前記酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、重合開始剤および中和剤を混合する段階で前記水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基のうち少なくとも一部を中和した。
【0041】
他の一例による高吸水性樹脂の製造においては、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基が中和していない状態で重合を先に行って重合体を形成する。
【0042】
酸性基が中和していない状態の水溶性エチレン系不飽和単量体(例えば、アクリル酸)は常温で液体状態であり、溶媒(水)と混和性(miscibility)が高くて単量体組成物で混合溶液の状態で存在する。しかし、酸性基が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体は常温で固体状態であり、溶媒(水)の温度によって他の溶解度を有し、低温であるほど溶解度が低くなる。
【0043】
このように酸性基が中和していない状態の水溶性エチレン系不飽和単量体は、酸性基が中和した単量体より溶媒(水)に対する溶解度または混和度が高くて低い温度でも析出されず、そのため、低温で長時間重合をすることに有利である。これにより、前記酸性基が中和していない状態の水溶性エチレン系不飽和単量体を用いて長時間重合を行ってより高分子量を有し、分子量分布が均一な重合体を安定的に形成することができる。
【0044】
また、より長い鎖の重合体形成が可能で、重合や架橋化が不完全で架橋化されていない状態で存在する水可溶成分の含有量が減る効果を達成することができる。
【0045】
また、このように単量体の酸性基が中和していない状態で重合を先に行って重合体を形成し、中和後に界面活性剤の存在下で微粒化するか、微粒化と同時に前記重合体に存在する酸性基を中和させると界面活性剤が前記重合体の表面に多量に存在して重合体の粘着性を低くする役割を十分に果たすことができる。
【0046】
前記単量体組成物のうち前記水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度は、重合時間および反応条件などを考慮して適宜調節することができ、約20~約60重量%、または約30~約40重量%にすることができる。
【0047】
本明細書で使用する用語「内部架橋剤」は、後述する高吸水性樹脂粒子の表面を架橋させるための表面架橋剤と区別するために使用する用語であり、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合を架橋させて重合させる役割を果たす。前記段階での架橋は表面または内部を区別せずに行われるが、後述する高吸水性樹脂粒子の表面架橋工程が行われる場合、最終的に製造された高吸水性樹脂粒子の表面は表面架橋剤によって架橋された構造からなり、内部は前記内部架橋剤によって架橋された構造からなる。
【0048】
前記内部架橋剤としては、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合時架橋結合の導入を可能にするものであれば、いかなる化合物も使用可能である。非制限的な例として、前記内部架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、またはエチレンカーボネートなどの多官能性架橋剤を単独使用または2以上を併用できるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、この中でポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを使用することができる。
【0049】
このような内部架橋剤の存在下で前記水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合は、重合開始剤、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの存在下で行うことができる。
【0050】
前記単量体組成物で、このような内部架橋剤は前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~5重量部で使用することができる。例えば、前記内部架橋剤は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01重量部以上、または0.05重量部以上、または0.1重量部以上であり、5重量部以下、または3重量部以下、または2重量部以下、または1重量部以下、または0.7重量部以下で使用することができる。前記内部架橋剤の含有量が過度に低い場合、架橋が十分に起こらず適正水準以上の強度の実現が難しく、前記内部架橋剤の含有量が過度に高い場合、内部架橋密度が高くなり、所望する保水能の実現が難しい。
【0051】
このような内部架橋剤を用いて形成された重合体は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体が重合して形成された主鎖が前記内部架橋剤によって架橋する形態の3次元網状構造を有する。このように、重合体が3次元網状構造を有する場合、内部架橋剤によって追加架橋していない2次元線状構造の場合に比べて、高吸水性樹脂の諸般物性である保水能および加圧吸収能が顕著に向上することができる。
【0052】
前記単量体組成物に対して重合を行って重合体を形成する段階(段階1)は、バッチ式反応器(batch type reactor)で行うことができる。
【0053】
通常の高吸水性樹脂の製造方法で重合方法は、重合エネルギー源によって大きく熱重合および光重合に分かれ、通常熱重合を行う場合はニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行うことができ、光重合を行う場合は移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行うか、底が平らな容器で行うことができる。
【0054】
一方、前記のような重合方法は概して短い重合反応時間(例えば、1時間以下)により重合体の分子量が大きくなくて広い分子量分布を有する重合体が形成される。
【0055】
なお、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器または底が平らな容器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル重合体の形態はベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状の重合体が得られ、重合体シートの厚さは注入される単量体組成物の濃度および注入速度または注入量に応じて変わるが、通常約0.5~約5cmの厚さで得られる。
【0056】
しかし、シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度の単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、生産性のためにシート状の重合体厚さを厚くする場合には重合反応が全厚さにわたって等しく起きず、高品質の重合体形成が難しくなる。
【0057】
また、前記コンベヤーベルトを備えた反応器攪拌軸を有する反応器での重合は重合結果物が移動しながら新しい単量体組成物が反応器に供給されて連続式で重合が行われるので、重合率が異なる重合体が混ざり、そのため単量体組成物全体で均一な重合が行われにくく全体的な物性低下が起こる。
【0058】
しかし、バッチ式反応器で静置式により重合を行うことによって重合率が異なる重合体が混ざる恐れが少なく、そのため、均一な品質を有する重合体を得ることができる。
【0059】
また、前記重合段階は所定の体積を有するバッチ式反応器で行われ、コンベヤーベルトを備えた反応器で連続式で重合を行う場合より長時間、例えば6時間以上の間重合反応を行う。前記のような長時間の重合反応時間にもかかわらず、未中和状態の水溶性エチレン系不飽和単量体に対して重合を行うので、長時間重合を行っても単量体がよく析出されず、そのため、長時間重合を行うことに有利である。
【0060】
なお、本発明のバッチ式反応器での重合は熱重合方法を用いるため、前記重合開始剤は熱重合開始剤を使用する。
【0061】
前記熱重合開始剤としては過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選択される1つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤についてはOdianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley、1981)」,p203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0062】
このような重合開始剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して2重量部以下で使用することができる。すなわち、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存するモノマーが多量抽出され得るので好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が前記範囲より高い場合、ネットワークをなす高分子鎖が短くなって水可溶成分の含有量が高くなり、加圧吸収能が低くなるなど樹脂の物性が低下し得るので好ましくない。
【0063】
一方、一実施形態において、前記開始剤とレドックス(Redox)カップルをなす還元剤を共に投入して重合を開始することができる。
【0064】
具体的には、前記開始剤と還元剤は重合体溶液に投入されたとき、互いに反応してラジカルを形成する。
【0065】
形成されたラジカルは単量体と反応し、前記開始剤と還元剤の間の酸化-還元反応は反応性が非常に高いので、微量の開始剤および還元剤のみを投入しても重合が開始されて工程温度を高める必要がなく低温重合が可能であり、重合体溶液の物性変化を最小化させることができる。
【0066】
前記酸化-還元反応を用いた重合反応は、常温(25℃)付近またはそれ以下の温度でも円滑に起こり得る。一例として、前記重合反応は5℃以上25℃以下、または5℃以上20℃以下の温度で行うことができる。
【0067】
前記開始剤として過硫酸塩系開始剤を使用する場合、還元剤はメタ重亜硫酸ナトリウム(Na);テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);硫酸鉄(II)とEDTAの混合物(FeSO/EDTA);ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(Sodium formaldehyde sulfoxylate);およびジナトリウム2-ヒドロキシ-2-スルフィノアセテート(Disodium 2-hydroxy-2-sulfinoacteate)からなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0068】
一例として、開始剤として過硫酸カリウムを使用し、還元剤としてジナトリウム2-ヒドロキシ-2-スルフィノアセテートを使用するか;開始剤として過硫酸アンモニウムを使用し、還元剤としてテトラメチルエチレンジアミンを使用するか;開始剤として過硫酸ナトリウムを使用し、還元剤としてホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムを使用することができる。
【0069】
前記開始剤として過酸化水素系開始剤を使用する場合、還元剤はアスコルビン酸(Ascorbic acid);スクロース(Sucrose);亜硫酸ナトリウム(NaSO)メタ重亜硫酸ナトリウム(Na);テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);硫酸鉄(II)とEDTAの混合物(FeSO/EDTA);ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(Sodium formaldehyde sulfoxylate);ジナトリウム2-ヒドロキシ-2-スルフィノアセテート(Disodium 2-hydroxy-2-sulfinoacteate);およびジナトリウム2-ヒドロキシ-2-スルホアセテート(Disodium 2-hydroxy-2-sulfoacteate)からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0070】
前記単量体組成物は、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0071】
そして、前記単量体を含む単量体組成物は、例えば、水などの溶媒に溶解した溶液状態であり得、このような溶液状態の単量体組成物中の固形分含有量、すなわち単量体、内部架橋剤および重合開始剤の濃度は重合時間および反応条件などを考慮して適宜調節することができる。例えば、前記単量体組成物内の固形分含有量は10~80重量%、または15~60重量%、または30~50重量%であり得る。
【0072】
この時、使用できる溶媒は上述した成分を溶解できればその構成の限定なく使用することができ、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどより選択される1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
このような方法で得られた重合体は、未中和状態のエチレン系不飽和単量体を用いて重合することにより前述のように高分子量を有し、分子量分布が均一な重合体を形成することができ、水可溶成分の含有量を低減することができる。
【0074】
このような方法で得られた重合体は含水ゲル重合体状態で、含水率が30~80重量%であり得る。例えば、前記重合体の含水率は30重量%以上、または45重量%以上、または50重量%以上であり、かつ、80重量%以下、または70重量%以下、または60重量%以下であり得る。
【0075】
前記重合体の含水率が過度に低い場合、後の粉砕段階で適切な表面積を確保することが難しく効果的に粉砕されず、前記重合体の含水率が過度に高い場合、後の粉砕段階で受ける圧力が増加して所望の粒度まで粉砕しにくいこともある。
【0076】
一方、本明細書全体における「含水率」は、全体重合体の重量に対して占める水分の含有量であり、重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によってクラム状態の重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後、180℃に維持する方式で総乾燥時間は温度上昇段階の5分を含めて40分に設定して含水率を測定する。
【0077】
次に、前記重合体の少なくとも一部の酸性基を中和させる段階(段階2)が行われる。
【0078】
この時、中和剤としては、酸性基を中和させ得る水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどの塩基性物質を使用することができる。
【0079】
また、前記重合体に含まれた酸性基中の前記中和剤によって中和した程度を指す中和度は、50~90モル%、または60~85モル%、または65~85モル%、または65~75モル%であり得る。前記中和度の範囲は、最終物性によって変わり得るが、中和度が過度に高いと高吸水性樹脂の吸収能が減少し得、粒子表面のカルボキシル基の濃度が過度に低くて後続工程での表面架橋がうまく行われにくく、加圧下吸収特性または通液性が減少し得る。逆に、中和度が過度に低いと高分子の吸収力が大きく落ちるだけでなく、取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を示し得る。
【0080】
前記段階2と同時に、または前記段階2の実行前後に界面活性剤の存在下で、前記重合体を微粒化して含水高吸水性樹脂粒子を製造する段階が行われる(段階3)。
【0081】
前記段階は、界面活性剤の存在下で前記重合体を微粒化する段階であり、前記重合体をミリメートルの大きさでチョッピングするのではなく、細切と凝集が同時に行われる段階であって、重合体に適切な粘着性を付与することによって細切された1次粒子が凝集した形状の2次凝集粒子を製造する段階である。このような段階で製造された2次凝集粒子である含水高吸水性樹脂粒子は表面積が大きく増加して吸収速度が顕著に改善されることができる。
【0082】
このように前記重合体と界面活性剤を混合した後に、前記界面活性剤の存在下で前記重合体を微粒化して高吸水性樹脂粒子および界面活性剤が混合された状態で細切および凝集した2次凝集粒子形態である含水高吸水性樹脂粒子を製造することができる。
【0083】
ここで、「含水高吸水性樹脂粒子」は、水分含量(含水率)が約30重量%以上の粒子であって、重合体が乾燥工程なしで粒子形態で細切および凝集したものであるので、前記重合体と同様に30~80重量%の含水率を有することができる。
【0084】
前記界面活性剤は、下記化学式2で表される化合物またはその塩を使用できるが、本発明はこれに限定されるものではない:
【0085】
【化1】
【0086】
前記化学式2中、
Aは炭素数5~21のアルキルであり、
は-OCO-、-COO-、または-COOCH(R)COO-であり、
は-CH-、-CHCH-、-CH(R)-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
ここで、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキルであり、
nは1~3の整数であり、
Cはカルボキシル基である。
【0087】
この時、前記界面活性剤は、前記化学式2で表されるカルボン酸およびその金属塩からなる群より選択される1種以上である。具体的には、前記界面活性剤は、前記化学式2で表されるカルボン酸、前記化学式2で表されるカルボン酸のアルカリ金属塩および前記化学式2で表されるカルボン酸のアルカリ土類金属塩からなる群より選択される1種以上である。より具体的には、前記界面活性剤は、前記化学式2で表されるカルボン酸、前記化学式2で表されるカルボン酸のアルカリ金属塩および前記化学式2で表されるカルボン酸のアルカリ土類金属塩の一つである。
【0088】
前記化学式2中、Aは、疎水性を示す部分であり、炭素数5~21の線状または分枝状アルキル基であり得るが、Aが線状構造のアルキル基である場合、粉砕された粒子の凝集を抑制し、分散性を向上させる側面からより有利である。Aが炭素数5未満のアルキル基である場合、鎖長が短いため粉砕された粒子の凝集制御が効果的に行われない問題があり、Aが炭素数21以上のアルキル基である場合、前記界面活性剤の移動性(mobility)が減少して重合体に効果的に混合せず、界面活性剤の費用上昇によって組成物の単価が高くなる問題がある。
【0089】
具体的には、前記化学式2中、Aは、炭素数5~21の線状アルキル、すなわち、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デカニル、n-ウンデカニル、n-ドデカニル、n-トリデカニル、n-テトラデカニル、n-ペンタデカニル、n-ヘキサデカニル、n-ヘプタデカニル、n-オクタデカニル、n-ノナデカニル、n-イコサニル、またはn-ヘンエイコサニルである。
【0090】
より具体的には、Aは炭素数6~18の線状アルキルである。例えば、Aは-C13、-C1123、-C1225、-C1735、または-C1837である。
【0091】
また、前記化学式2中、(B-B)部分は、C部分だけでは不足し得る重合体表面に対する吸着性能を向上させる役割を果たす部分であり、Bの炭素数が3個以上の場合にはB部分とC部分の距離が遠くなり、重合体に対する吸着性能が低下することがある。
【0092】
この時、RおよびRはそれぞれ独立して、線状または分枝状の炭素数1~4のアルキルであり、より具体的には、RおよびRはそれぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチルであり得るが、前記界面活性剤が高吸水性樹脂粒子に吸着するという側面から、界面活性剤の分子構造がバルキー(bulky)でないのが有利であるので、RおよびRは全てメチルであり得る。
【0093】
また、前記化学式2中、nは1、2または3である。より具体的には(B-B)の個数を意味するnは、(B-B)部分がC部分に対する吸着性能を補強するためのものであること、および前記界面活性剤が重合体に効果的に吸着するための分子長さを考慮すると、nは1であることが好ましい。
【0094】
具体的には、前記化学式2中、B
【0095】
【化2】
【0096】
であり、ここで、*は隣り合う原子との結合サイトである。
【0097】
例えば、B
【0098】
【化3】
【0099】
であり得る。
【0100】
また、前記化学式2中、B
【0101】
【化4】
【0102】
であり、ここで、*は隣り合う原子との結合サイトである。この時、C部分と共に架橋重合体に対する界面活性剤の吸着性能を向上させる側面からB
【0103】
【化5】
【0104】
であることが好ましい。
【0105】
また、前記化学式2中、C部分は親水性を示す部分であり、カルボキシル基(COOH)であり、ただし、前記界面活性剤が塩である場合、カルボキシレート基(COO)である。
【0106】
言い換えると、前記界面活性剤は、下記化学式2aで表される化合物であり得る:
【0107】
【化6】
【0108】
前記化学式2a中、
Mは、H、アルカリ金属の1価陽イオン、またはアルカリ土類金属の2価陽イオンであり、
kは、MがHまたはアルカリ金属の1価陽イオンであれば1であり、アルカリ土類金属の2価陽イオンであれば2であり、
A、B、Bおよびnに対する説明は、前記化学式2で定義した通りである。
【0109】
より具体的には、前記界面活性剤が前記化学式2で表されるカルボン酸のアルカリ金属塩の場合、前記界面活性剤は下記化学式2’で表される:
【0110】
【化7】
【0111】
前記化学式2’中、
はアルカリ金属、例えば、ナトリウムまたはカリウムであり、
A、B、Bおよびnに対する説明は前記化学式2で定義した通りである。
【0112】
また、前記界面活性剤が前記化学式2で表されるカルボン酸のアルカリ土類金属塩の場合、前記界面活性剤は下記化学式2’’で表される:
【0113】
【化8】
【0114】
前記化学式2’’中、Mはアルカリ土類金属、例えばカルシウムであり、
A、B、Bおよびnに対する説明は前記化学式2で定義した通りである。
【0115】
一方、前記界面活性剤は、前記重合体100重量部に対して0.01~10重量部で使用される。前記界面活性剤が過度に少なく使用される場合、前記重合体の表面に均一に吸着せず、粉砕後に粒子の再凝集現象が発生し、前記界面活性剤が過度に多く使用される場合、最終的に製造される高吸水性樹脂の諸般物性が低下する。例えば、前記界面活性剤は、前記重合体100重量部に対して0.01重量部以上、0.015重量部以上、または0.1重量部以上であり、かつ、5重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、または1重量部以下で使用される。
【0116】
このような界面活性剤を重合体に混合する方法は、前記重合体にこれらを均一に混合できる方法であれば特に限定されず、適宜採択して使用することができる。具体的には、前記界面活性剤を乾式で混合するか、溶媒に溶解させた後に溶液状態で混合するか、または前記界面活性剤を溶融させた後に混合することができる。
【0117】
この中で、例えば、前記界面活性剤は溶媒に溶解した溶液状態で混合されることができる。この時、溶媒としては無機溶媒または有機溶媒に制限なくすべての種類を用いることができるが、乾燥過程の容易性と溶媒回収システムのコストを考えると、水が最も適切である。また、前記溶液は、前記界面活性剤と重合体を反応槽に入れて混合するか、ミキサーに重合体を入れて溶液を噴射する方法、連続的に運転するミキサーに重合体と溶液を連続的に供給して混合する方法などを用いることができる。
【0118】
一方、一実施形態によれば、前記重合体の少なくとも一部の酸性基を中和させる段階(段階2)と、界面活性剤の存在下で、前記重合体を微粒化して含水高吸水性樹脂粒子を製造する段階(段階3)は順次に、または同時に行うことができる。
【0119】
すなわち、重合体に中和剤を投入して酸性基を先に中和させた後、中和した重合体に界面活性剤を投入して界面活性剤が混合された重合体を微粒化するか、重合体に中和剤と界面活性剤を同時に投入して重合体に対して中和および微粒化を行うこともできる。または、界面活性剤を先に投入し、中和剤を後に投入することもできる。または、中和剤と界面活性剤を入れ替えて交互に投入することもできる。
【0120】
一方、重合体全体に対する均一な中和のために中和剤の投入と微粒化工程の間には一定の時間差を置くことが好ましい。
【0121】
前記界面活性剤のうちの少なくとも一部または相当量は、前記含水高吸水性樹脂粒子の表面に存在し得る。
【0122】
ここで、前記界面活性剤が含水高吸水性樹脂粒子の表面に存在することの意味は、前記界面活性剤のうちの少なくとも一部または相当量が前記含水高吸水性樹脂粒子の表面に吸着または結合されていることを意味する。具体的には、前記界面活性剤は、前記高吸水性樹脂の表面に物理的または化学的に吸着していることができる。より具体的には、前記界面活性剤の親水性官能基は、前記高吸水性樹脂表面の親水性の部分に双極子-双極子相互作用(Dipole-dipole interaction)などの分子間の力によって物理的に吸着している。このように、前記界面活性剤の親水性の部分は前記高吸水性樹脂粒子の表面に物理的に吸着して表面を取り囲み、界面活性剤の疎水性の部分は樹脂粒子の表面に吸着しないので、樹脂粒子は一種のミセル(micelle)構造の形態として界面活性剤がコートされている。これは前記界面活性剤が前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合工程中に投入されるのではなく、重合体形成後の微粒化段階で投入されるからであり、前記界面活性剤が重合工程中に投入されて重合体内部に前記界面活性剤が存在する場合に比べて界面活性剤としての役割を忠実に果たすことができ、粉砕と凝集が同時に起こり、微細粒子が凝集した形態で表面積が大きい粒子が得られる。
【0123】
一実施形態において、前記重合体を微粒化して含水高吸水性樹脂粒子を製造する段階は2回以上行うことができる。
【0124】
例えば、微粒化段階を2回行うとき、前記重合体を1次微粒化する段階と、前記1次微粒化された重合体よりさらに小さい平均粒径を有するように2次微粒化する段階とを含み得る。このように微粒化段階を2回以上行う場合、一連の微粒化段階で以前の微粒化段階より重合体がさらに小さい平均粒径を有するようにする方式で行うことができる。
【0125】
一実施形態において、前記1次および2次微粒化段階は、以下で説明する微粒化装置によって行われる。
【0126】
前記界面活性剤と混合した重合体を微粒化装置を用いて粉砕を行う場合、より小さい粒度分布が具現され、その後、乾燥および粉砕工程をよりマイルドな条件で行うことができ、したがって、微粉発生を防止し、かつ、高吸水性樹脂の物性を向上させることができる。
【0127】
その後、微粒化された含水ゲルを乾燥して、乾燥高吸水性樹脂粒子を製造する段階(段階4)を行う。
【0128】
前記段階4は、界面活性剤の存在下で前記重合体を微粒化して得られた含水高吸水性樹脂粒子の水分を乾燥させる段階である。
【0129】
一例による高吸水性樹脂の製造方法において、前記乾燥段階は高吸水性樹脂の含水率が10重量%未満になるまで行われるが、他の一例による高吸水性樹脂の製造方法においては、高吸水性樹脂の含水率が10重量%以上、例えば、約10~約20重量%、または約10~約15重量%となるように乾燥する。
【0130】
このために前記乾燥段階で使用される乾燥器内の温度は約150℃以下、例えば、約80℃~約150℃であり、比較的低温で行うことができる。乾燥器内の温度が過度に低い場合、乾燥時間が過度に長くなり、前記乾燥温度が過度に高い場合、所望の含水率より低い含水率を有する高吸水性樹脂が得られる。
【0131】
この時、乾燥は、流動式(moving type)で行われる。このような流動式(moving type)乾燥は、乾燥される間の物質の流動の有/無であり静置式乾燥とは区別される。
【0132】
前記流動式(moving type)乾燥は、乾燥体を機械的に攪拌しながら乾燥させる方式をいう。この時、熱風が物質を通過する方向は物質の循環方向と同じであってもよく、異なってもよい。または、物質は乾燥器内部で循環し、乾燥器外部の別途のパイプ管に熱媒介流体(熱媒流)を通過させて物質を乾燥させることもできる。
【0133】
反面、静置式乾燥は、空気が通る多孔鉄板などの底に乾燥させようとする物質を停止させた状態で、下から上へ熱風が物質を通過して乾燥させる方式をいう。
【0134】
したがって、前記段階で乾燥させようとする短い時間内に均一な乾燥を完了できるという側面から流動式乾燥方式で含水高吸水性樹脂を乾燥することが好ましい。
【0135】
このような流動式乾燥方式によって乾燥が可能な装置としては、横型ミキサー(Horizontal-type Mixer)、ロータリーキルン(Rotary kiln)、パドルドライヤ(Paddle Dryer)、スチームチューブドライヤー(Steam tube dryer)、または一般的に用いられる流動式乾燥器などを用いることができる。
【0136】
次に、前記乾燥高吸水性樹脂粒子を粉砕して高吸水性樹脂粒子を製造する段階(段階5)を行う。
【0137】
具体的には、前記粉砕段階は、乾燥高吸水性樹脂粒子を粉砕して正常粒子水準の粒度、すなわち、150μm~850μmの粒径を有するように行われる。
【0138】
このために用いられる粉砕機は、具体的には、竪型粉砕機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、ロータリーカッターミル(Rotary cutter mill)、カッターミル(Cutter mill)、ディスクミル(Disc mill)、シュレッドクラッシャー(Shred crusher)、クラッシャー(Crusher)、チョッパー(chopper)またはディスクカッター(Disc cutter)などであり得、上述した例に限定されない。
【0139】
または、粉砕機としてピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることもできるが、上述した例に限定されるものではない。
【0140】
一方、本発明の製造方法では微粒化段階で従来のチョッピング段階でより小さい粒度分布の高吸水性樹脂粒子を実現できるため、より少ない粉砕力でマイルドな条件で粉砕を行っても正常粒度の含有量が非常に高い高吸水性樹脂を形成することができ、微粉生成比率が大きく減ることができる。しかも、粉砕工程を省略することもできる。
【0141】
上記のように製造された高吸水性樹脂粒子は、総重量に対して150μm~850μmの粒径を有する高吸水性樹脂粒子、すなわち、正常粒子を89重量%以上、90重量%以上、92重量%以上、93重量%以上、94重量%以上、または95重量%以上含むことができる。このような樹脂粒子の粒径は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格のEDANA WSP 220.3方法に従って測定することができる。
【0142】
また、前記高吸水性樹脂粒子は、総重量に対して150μm未満の粒径を有する微粉を約10重量%未満、具体的には約5重量%未満、より具体的には約3%未満で含むことができる。これは従来の製造方法により高吸水性樹脂を製造する場合、約10重量%~約20重量%の微粉を有することとは対照的である。
【0143】
前記高吸水性樹脂粒子を粉砕する段階の後に、前記粉砕された高吸水性樹脂粒子を粒径によって分級する段階をさらに含むことができる。
【0144】
また、前記高吸水性樹脂粒子を粉砕および/または分級した後に表面架橋剤の存在下で、前記高吸水性樹脂粒子の表面のうちの少なくとも一部に表面架橋層を形成する段階をさらに含むことができる。前記段階によって、前記高吸水性樹脂粒子に含まれている架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋され、前記高吸水性樹脂粒子の表面のうちの少なくとも一部に表面架橋層が形成される。
【0145】
以下、図1図6を参照して、前記1次および2次微粒化段階で用いられる本発明の実施例による高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置10をより詳しく説明する。
【0146】
図1は、本発明の実施例による高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置10の断面図である。
【0147】
図1に示すように、本発明の実施例による高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置10は、ボディ100と、第1、第2駆動モータ110、120と、カット部とを含む。
【0148】
ボディ100は、その内部に含水ゲルが移送される移送空間106と、重合された含水ゲルまたは再造粒された含水ゲルが粉砕および圧着されて微粒化されるカッティング空間が形成される。また、前記カッティング空間に隣り合うように配置され、微粒化された含水ゲルを排出する排出空間104が形成される。前記移送空間106は、ボディ100の長手方向に沿って一側部から他側部まで形成され、カッティング空間は、ボディ100の長手方向の他側部に形成され、排出空間104は、前記カッティング空間に対してボディ100の長手方向の他側に形成され、移送空間106、カッティング空間および排出空間104が含水ゲルの移動に沿って順次形成される。したがって、含水ゲルは、移送空間106内でボディ100の長手方向に沿って移送され、カッティング空間で微粒化され、排出空間104から排出される。前記移送空間106と排出空間104との間のボディ100の内部にはカッティング空間が位置し、前記カッティング空間にカット部が配置される。
【0149】
前記ボディ100の一側の上部には移送空間106と連結されたホッパー102が形成され、重合反応器から排出された含水ゲルまたは再造粒された含水ゲルは、前記ホッパー102を通してボディ100の内部、すなわち、移送空間106に投入される。前記ボディ100の他側には排出空間104が形成され、カット部によって微粒化された含水ゲルは前記排出空間104を通じて排出される。
【0150】
前記ボディ100の移送空間106には第1回転軸112が回転可能に配置され、前記排出空間104には第2回転軸122が回転可能に配置される。第1回転軸112と第2回転軸122は同軸上に配置され、カッティング空間まで延長される。第1回転軸112はカット部の一方の回転部材に連結され、第2回転軸122はカット部の他方の回転部材に連結される。第1回転軸112の末端と第2回転軸122の末端は互いに離隔して第1、第2回転軸112、122のうちの一方の回転が第1、第2回転軸112、122のうちの他方の回転に影響を及ぼさない。すなわち、第1、第2回転軸112、122は、互いに独立して制御される。
【0151】
前記ボディ100の一側には第1駆動モータ110が配置され、前記第1駆動モータ110は第1回転軸112に連結される。すなわち、移送空間106に配置された第1回転軸112の一端は前記ボディ100の一側面を貫通して前記第1駆動モータ110に連結され、前記第1回転軸112の他端はカッティング空間まで延長される。第1回転軸112の外周面には少なくとも1つのスクリュー114が形成されている。あるいは、第1回転軸112は、スクリュー114が該外周面に形成された軸に連結され、前記軸に動力を伝達することができる。第1駆動モータ110が第1回転軸112に駆動力を提供して第1回転軸112が回転すると、スクリュー114が第1回転軸112と共に回転しながら移送空間106内の含水ゲルをカット部に向かって長手方向の他側に移送する。
【0152】
前記ボディ100の他側には第2駆動モータ120が配置され、第2駆動モータ120は第2回転軸122に連結される。すなわち、排出空間104に配置された第2回転軸122の一端はボディ100の他側面を貫通してカッティング空間まで延長され、第2回転軸122の他端は第2駆動モータ120に連結される。
【0153】
上述のように、前記第2回転軸122の一端は前記第1回転軸112の他端と長手方向に離隔して第1回転軸112の回転と第2回転軸122の回転は互いに独立している。すなわち、第1駆動モータ110による第1回転軸112の回転速度は、第2駆動モータ120による第2回転軸122の回転速度とは独立して、特に、異なるように制御されることができる。
【0154】
カット部はカッティング空間内に配置され、スクリュー114によって移送された含水ゲルを細切および圧着して排出空間104から排出される。カット部は、プレカッター130と、第1、第2カッター140、160と、第1、第2ホールプレート150、170とを含む。プレカッター130、第1カッター140、第1ホールプレート150、第2カッター160、および第2ホールプレート170は長手方向に沿って一側から他側に順次配置される。したがって、移送空間106から長手方向に沿ってカッティング空間に移送された含水ゲルは、プレカッター130、第1カッター140、第1ホールプレート150、第2カッター160、および第2ホールプレート170を順次通過しながら微粒化され、微粒化された含水ゲルは排出空間104から排出される。
【0155】
図2は、本発明の実施例による高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置で用いられるプレカッター130の正面図である。図2に示すように、プレカッター130はほぼ円板形状であり、前記少なくとも1つのスクリュー114の他側にボディ100に固定されている。前記プレカッター130の中央部には前記第1回転軸112が回転可能に貫通する中央孔が形成され、前記中央孔の径方向外側には複数のプレカッターホール134が円周方向に沿って形成される。図2には、複数のプレカッターホール134が同じ形状を有し、等間隔に配置されていることを示しているが、プレカッターホール134の形状および配置は、図2に示す実施例に限定されない。
【0156】
プレカッター130は、回転するスクリュー114によって回転しながら長手方向に移送される含水ゲルの移動中の回転成分を減少させ、前記含水ゲルを長手方向に第1カッター140に供給する。より詳しくは、スクリュー114によって含水ゲルは回転しながら長手方向にプレカッター130に供給される。プレカッター130は回転せず、ボディ100に固定されているので、含水ゲルがプレカッターホール134を通過するとき、プレカッターホール134間の仕切りによって含水ゲルの移動中の直進成分は影響を受けず、回転成分は減少する。含水ゲルの移動中の回転成分が減少すると、第1カッター140と含水ゲルの衝突回数を第1カッター140の回転速度に応じて制御することができ、含水ゲルが第1、第2ホールプレート150、170を通過するとき、含水ゲルに加わる圧力が減少する。したがって、プレカッター130は、制御された方式で含水ゲルの細切および圧着が行われるようにし、含水ゲル粒子の損傷を減らして物性を向上させる。ここで、プレカッター130の主な機能は、含水ゲルの細切および圧着ではなく、含水ゲルの移動中の回転成分を減少させることであるので、プレカッターホール134の大きさは、第1、第2ホールプレート150、170に形成された第1、第2貫通ホール152、172の大きさより相対的に大きくても構わない。
【0157】
再び図1を参照すると、第1カッター140は、前記プレカッター130の他側に離隔して配置される。前記第1カッター140は、複数の第1カッターナイフ刃が備えられ、前記第1回転軸112の他端に連結される。したがって、第1カッター140は、第1駆動モータ110によって回転しながらプレカッター130を通過した含水ゲルを細かく破砕する。そのために前記第1回転軸112の他端は、前記プレカッター130を貫通して前記第1カッター140に結合する。前記第1カッター140は、相対的に遅い回転速度で回転しながら含水ゲルを1次粉砕する。一例において、第1カッター140(すなわち、第1回転軸112)の回転速度は約100rpm~300rpmであり得るが、これに限定されない。また、第1カッター140には6個の第1カッターナイフ刃が備えられ、第1カッターナイフ刃は、長手方向に対して約45~60度傾いているが、第1カッターナイフ刃の個数および第1カッターナイフ刃の傾斜角度はこれに限定されない。
【0158】
第1カッター140によって1次的に粉砕された含水ゲルは、第1ホールプレート150に移送される。
【0159】
図3は、本発明の実施例による高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置で用いられる第1ホールプレート150の側面図であり、図4は、図3に示す第1ホールプレート150の正面図である。図3および図4に示すように、第1ホールプレート150は、前記第1カッター140の他側に第1設定ギャップだけ離隔して配置される。第1ホールプレート150は前記ボディ100に固定され、複数の第1貫通ホール152が長手方向に形成される。第1カッター140によって1次破砕された含水ゲルは、複数の第1貫通ホール152を通過して第2カッター160に排出される。第1貫通ホール152を通過した含水ゲルの大きさは、第1貫通ホール152の大きさに対応し、含水ゲルの移送速度は、第1カッター140(すなわち、第1回転軸112)の回転速度に対応(比例)する。一例において、第1ホールプレート150の厚さは約7mm~35mmであり、第1貫通ホール152の直径は約3mm~20mmであり、第1貫通ホール152の開口率(ホールプレートの面積に対する貫通ホールの総面積の比率)は約30%~55%であり得るが、これに限定されない。
【0160】
再び図1を参照すると、第2カッター160は、前記第1ホールプレート150の他側に離隔して配置される。前記第2カッター160は、複数の第2カッターナイフ刃が備えられ、前記第2回転軸122の一端に連結される。したがって、第2カッター160は、第2駆動モータ120によって回転しながら第1ホールプレート150を通過した含水ゲルをさらに細かく破砕する。そのために前記第2回転軸122の一端は第2ホールプレート170を貫通して前記第2カッター160に結合する。前記第2カッター160は、相対的に速い回転速度で回転しながら含水ゲルを2次粉砕する。一例において、第2カッター160(すなわち、第2回転軸122)の回転速度は約1000rpm~1750rpmであり得るが、これに限定されない。ここで、第2カッター160(すなわち、第2回転軸122)の回転速度は、単位時間当たりの含水ゲルと第2カッター160の衝突回数に対応(比例)する。第1カッター140または第1回転軸112の回転速度を相対的に遅くなるように設定して含水ゲルの移送速度を増加させずに、第2カッター160または第2回転軸122の回転速度を相対的に速く設定して単位時間当たりの含水ゲルと第2カッター160の衝突回数を増加させる。これにより、カット部に含水ゲルが堆積しないので、含水ゲル粒子を小型化し、微粉発生量を減らすことができる。一方、第2カッター160には6個の第2カッターナイフ刃が備えられ、第2カッターナイフ刃は、長手方向に対して約45~60度傾いているが、第2カッターナイフ刃の個数および第2カッターナイフ刃の傾斜角度はこれに限定されない。
【0161】
第2カッター140によって2次粉砕された含水ゲルは、第2ホールプレート170に移送される。
【0162】
図5は、本発明の実施例による高吸水性樹脂の含水ゲル微粒化装置で用いられる第2ホールプレート170の側面図であり、図6は、図5に示す第2ホールプレート170の正面図である。図5および図6に示すように、第2ホールプレート170は、前記第2カッター160の他側に第2設定ギャップだけ離隔して配置される。第2ホールプレート170は前記ボディ100に固定され、複数の第2貫通ホール172が長手方向に形成される。第2カッター160によって2次破砕された含水ゲルは、複数の第2貫通ホール172を通過して排出空間104に排出される。第2貫通ホール172を通過した含水ゲルの大きさは第2貫通ホール172の大きさに対応する。一例において、第2貫通ホール172の直径は約3mm~16mmであり、第2貫通ホール172の開口率(ホールプレートの面積に対する貫通ホールの総面積の比率)は約30%~55%であり得るが、これに限定されない。また、第2貫通ホール172の直径を第1貫通ホール152の直径より小さく設定して排出空間104に排出される含水ゲルの大きさをさらに減らすことができる。
【0163】
第2ホールプレート170の厚さが厚いと、第2ホールプレート170を通過する時に含水ゲルに加わる圧力が増加し、これは含水ゲルの物性を低下させる。したがって、第2ホールプレート170の厚さが薄いほど含水ゲルの物性が向上する。一例において、第2ホールプレート170の厚さは約3mm~10mmであり得るが、これに限定されない。
【0164】
一方、第2ホールプレート170の厚さが薄いと、第2貫通ホール172を通過する時に含水ゲルから受ける圧力によって第2ホールプレート170が破損するおそれがある。したがって、第2ホールプレート170には少なくとも1つのリブ174が備えられ、第2ホールプレート170の剛性を補強することができる。図5および図6において、4つのリブが十字架形態に第2ホールプレート170の他側面に配置されていることを示しているが、リブの個数および配置はこれに限定されない。一例において、前記第2貫通ホール172の厚さとリブ174の厚さの合計は第2ホールプレート170の厚さと同じであり得るが、これに限定されない。
【0165】
第2ホールプレート170の中央部には中央孔が形成され、排出空間104に配置された第2回転軸122の一端は、前記中央孔を貫通して第2カッター160に結合する。
【0166】
以下、本発明の実施例による微粒化装置10の作動を説明する。
【0167】
重合反応器から排出された含水ゲルまたは再造粒された含水ゲルがホッパー102を通じてボディ100の移送空間106に投入されると、第1駆動モータ110が作動する。これにより、第1回転軸112とスクリュー114が回転しながら含水ゲルをカット部に向かって移送し、第1回転軸112に結合された第1カッター140が回転する。ここで、含水ゲルの移送速度は、第1回転軸112または第1カッター140の回転速度に対応する。
【0168】
また、第2駆動モータ120が作動して、第2回転軸122および第2カッター160も回転する。ここで、単位時間当たりの含水ゲルと第2カッター160の衝突回数は、第2回転軸122または第2カッター160の回転速度に対応する。
【0169】
まず、スクリュー114によって移送された含水ゲルは、カット部でプレカッター130のプレカッターホール134を通過し、含水ゲルの移動中の回転成分が減少する。プレカッター130のプレカッターホール134を通過した含水ゲルは、第1駆動モータ110によって回転する第1カッター140の第1カッターナイフ刃に衝突して小さいサイズの粒子に1次粉砕される。第1カッター140によって1次粉砕された含水ゲル粒子の大きさが第1貫通ホール152の直径より小さくなると、前記含水ゲル粒子は、第1貫通ホール152を通過して第2カッター160に移送される。
【0170】
前記含水ゲル粒子は、第2駆動モータ120によって回転する第2カッター160の第2カッターナイフ刃に衝突してより小さいサイズの粒子に2次粉砕される。上述したように、第2カッター160の回転速度が第1カッター140の回転速度より速いので、第1カッター140と含水ゲルの衝突回数より第2カッター160と含水ゲルの衝突回数がさらに多い。したがって、含水ゲル粒子は、第2カッター160によってより小さいサイズで2次粉砕される。第2カッター160によって2次粉砕された含水ゲル粒子の大きさが第2貫通ホール172の直径より小さくなると、前記含水ゲル粒子は排出空間104に排出される。
【0171】
一方、スクリュー114の回転、すなわち、含水ゲルの移送速度は第1駆動モータ110によって制御され、第2カッター160の回転、すなわち、含水ゲルと第2カッター160の衝突回数は第2駆動モータ120によって制御されるので、含水ゲルの移送速度と含水ゲルと第2カッター160との衝突回数は独立して制御される。好ましくは、含水ゲルの移送速度に対応する第1駆動モータ110の回転速度は相対的に遅くなり、含水ゲルと第2カッター160の衝突回数に対応する第2駆動モータ120の回転速度は相対的に速くなる。言い換えると、第1駆動モータ110の回転速度は、第2駆動モータ120の回転速度より遅くなるように制御される。したがって、含水ゲルの移送速度を増加させずに含水ゲルと第2カッターの衝突回数を増加させることができる。
【0172】
例えば、含水ゲルの粒子をさらに小さくするか、または含水ゲルの粒子の球形度を増加させるために第2駆動モータ120の速度を増加させることで、第2カッター160と含水ゲルの衝突回数を増加させることができる。この場合、第1駆動モータ110の速度は増加しないので、含水ゲルの移送速度は増加しない。結局、カット部への含水ゲルの移送速度が増加しないので、カット部に含水ゲルが堆積しない。これにより、含水ゲル粒子の凝集による損傷を最小化し、かつ、含水ゲル粒子を小型化することができ、微粉発生量を減らすことができる。
【0173】
また、含水ゲル粒子を小型化できるので、後続の粉砕工程を省略することができ、粒子の吸収速度が遅くなることを防止することができる。
【0174】
本発明の実施例では2つの駆動モータを用いることを例示したが、必ずしもこれに限定されない。例えば、1つの駆動モータが第1ギア比を有する第1方向転換手段により第1回転軸112に連結され、第2ギア比を有する第2方向転換手段により第2回転軸122に連結される。この場合にも、第1回転軸112の回転速度は相対的に遅くなり、第2回転軸122の回転速度は相対的に速くなるように第1、第2ギア比を設定することができる。
【0175】
(実施例1)
重合反応器で重合されたポリアクリル酸吸水性樹脂を本発明の実施例による微粒化装置10で微粒化を行った。第1貫通ホール152の直径および厚さ、第2貫通ホール172の直径、厚さおよびリブ174の個数、第1カッター140の回転速度および第2カッター160の回転速度は表1の通りである。
【0176】
【表1】
【0177】
微粒化装置10で微粒化した後、150μm未満の大きさを有する微粉発生量を測定した結果、約8%の微粉が発生した。ここで、微粉発生量は、微粒化装置10に投入された含水ゲルの全体質量に対する微粉の質量百分率で表す。
【0178】
(比較例1)
実施例1と同様に、重合反応器で重合されたポリアクリル酸吸水性樹脂を従来の細切装置で細切した。従来の細切装置は、1つの駆動モータに連結された1つの回転軸で含水ゲルの移送および細切を行い、細切された含水ゲル粒子は、1つのホールプレートを通過した後、排出空間に排出された。ここで、貫通ホールの直径および厚さはそれぞれ8mm、10mmであり、カッターの回転速度は150rpmである。
【0179】
従来の細切装置で細切した後、微粉発生量を測定した結果、約14%の微粉が発生した。
【0180】
したがって、実施例1の微粒化装置10で微粒化を行うと、比較例1の細切装置で細切した場合に比べて、微粉発生量が約42.9%減少することが分かった。
【0181】
(実施例2)
再造粒されたポリアクリル酸吸水性樹脂を本発明の実施例による微粒化装置10で微粒化を行った。第1貫通ホール152の直径および厚さ、第2貫通ホール172の直径、厚さおよびリブ174の個数、第1カッター140の回転速度および第2カッター160の回転速度は表2の通りである。
【0182】
【表2】
【0183】
再造粒された含水ゲルは硬度が大きくなるので、実施例1に比べて第1貫通ホールの直径、第1、第2カッターの回転速度が増加した。
【0184】
微粒化装置10で微粒化した後、150μm未満の大きさを有する微粉発生量を測定した結果約、9.4%の微粉が発生した。
【0185】
(比較例2)
実施例2と同様に、再造粒された含水ゲルを従来の細切装置で細切した。従来の細切装置は、1つの駆動モータに連結された1つの回転軸で含水ゲルの移送および細切を行い、細切された含水ゲル粒子は1つのホールプレートを通過した後、排出空間に排出された。ここで、貫通ホールの直径および厚さはそれぞれ20mm、35mmであり、カッターの回転速度は200rpmである。
【0186】
従来の細切装置で細切した後、微粉発生量を測定した結果、約16.3%の微粉が発生した。
【0187】
したがって、実施例2の微粒化装置10で再造粒された含水ゲルの微粒化を行うと、比較例2の細切装置で細切した場合に比べて、微粉発生量が約42.3%減少することが分かった。
【0188】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されず、本発明の実施例から当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により容易に変更されて均等であると認められる範囲のすべての変更を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6