(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】誘電体選択性改善のためのフッ素を含有しないタングステンの原子層堆積
(51)【国際特許分類】
C23C 16/08 20060101AFI20250326BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20250326BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20250326BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20250326BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20250326BHJP
H01L 23/532 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
C23C16/08
C23C16/455
H01L21/285 C
H01L21/88 B
H01L21/88 M
H01L21/90 A
(21)【出願番号】P 2022574429
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 US2021035865
(87)【国際公開番号】W WO2021247979
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-02-01
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー, イラニット
(72)【発明者】
【氏名】リン, チー-チョウ
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ケディ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ウェン ティン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シー チャン
(72)【発明者】
【氏名】ガンディコッタ, シュリーニヴァース
(72)【発明者】
【氏名】スリイラム, マンディアム
(72)【発明者】
【氏名】シェン, チェンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚美
(72)【発明者】
【氏名】レン, ホー
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-145409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0027780(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/08
C23C 16/455
H01L 21/285
H10D 64/60
H01L 21/3205
H01L 21/768
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
フッ素を含有しないタングステン前駆体の流れと、第1の還元剤の流れと、を含む第1のプロセス条件に基板表面を曝露して、前記基板表面上に、タングステン原子の5%以下がゼロ価のタングステン原子であるタングステン含有膜を形成することと、
第2の還元剤の流れを含む第2のプロセス条件に前記タングステン含有膜を曝露して、前記基板表面上の前記タングステン含有膜を金属タングステン膜に還元することと
を含み、
前記第1のプロセス条件は、前記第1の還元剤の流量が、前記フッ素を含有しないタングステン前駆体の流量の5%~70%の範囲内にあることを含
み、且つ
前記基板表面が、誘電体表面及び導電表面を含む、方法。
【請求項2】
前記フッ素を含有しないタングステン前駆体が、実質的にハロゲン化タングステンからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フッ素を含有しないタングステン前駆体が、五塩化タングステン(WCl
5)又は六塩化タングステン(WCl
6)のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の還元剤が、水素(H
2)、シラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)、トリシラン(Si
3H
8)、テトラシラン(Si
4H
10)又はアンモニア(NH
3)のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の還元剤が、水素(H
2)、シラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)、トリシラン(Si
3H
8)、テトラシラン(Si
4H
10)又はアンモニア(NH
3)のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の還元剤及び前記第2の還元剤が、同じ反応種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の還元剤は、流量が50~500sccmの範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記金属タングステン膜が、前記誘電体表面に対して前記導電表面上に選択的に形成される、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記基板表面には、底部及び側壁を有する構造が形成されており、前記構造の前記底部が前記導電表面を含み、前記構造の前記側壁が前記誘電体表面を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属タングステン膜が前記構造を充填する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記誘電体表面が、窒化ケイ素、酸化ケイ素のうちの1つ以上を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記導電表面が、窒化チタン、チタンアルミニウム、アルミニウム、又はチタンのうちの1つ以上を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のプロセス条件と前記第2のプロセス条件との間にパージすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記基板表面が、前記第1のプロセス条件及び前記第2のプロセス条件の間、400℃~550℃の範囲内の温度で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のプロセス条件への曝露の前に、前記基板表面上に核形成層を形成することをさらに含み、前記核形成層の形成と前記第1のプロセス条件との間に、前記基板表面が空気に曝露されない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
方法であって、
タングステン原子の5%以下がゼロ価のタングステン原子であるタングステン含有膜を基板上に形成することであって、前記基板が導電表面及び誘電体表面を有し、前記タングステン含有膜が前記誘電体表面に対して選択的に前記導電表面上に形成し、前記タングステン含有膜が、フッ素を含有しないタングステン前駆体の流れと、第1の還元剤の流れと、を含む第1のプロセス条件に前記基板を曝露することによって形成され、前記第1の還元剤の流量が前記フッ素を含有しないタングステン前駆体の流量の5%~70%の範囲内にある、タングステン含有膜を基板上に形成することと、
タングステン原子の5%以下がゼロ価のタングステン原子である前記タングステン含有膜を含む前記基板を、第2の還元剤の流れを含む第2のプロセス条件に曝露することによって、前記タングステン含有膜を金属タングステン膜に変換することと
を含む、方法。
【請求項17】
方法であって、
誘電体表面及び導電表面を有する基板を、第1のプロセス条件及び第2のプロセス条件に順次曝露して、前記導電表面上に選択的に金属タングステン膜を堆積させることであって、
前記第1のプロセス条件が、前記導電表面上に、タングステン原子の5%以下がゼロ価のタングステン原子であるタングステン含有膜を形成するために、フッ素を含有しないタングステン前駆体の流れと、第1の還元剤の流れと、を含み、前記第2のプロセス条件が、前記導電表面上の前記タングステン含有膜を金属タングステン膜に還元するために、第2の還元剤の流れを含む、
前記導電表面上に選択的に金属タングステン膜を堆積させること
を含み、
前記第1のプロセス条件は、前記第1の還元剤の流量が、前記フッ素を含有しないタングステン前駆体の流量の5%~70%の範囲内にあることを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、電子デバイス製造分野に関し、特に、集積回路(IC)製造に関する。特に、本開示の実施形態は、表面構造を金属膜で充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、基板表面上に複雑なパターンの物質層を生成するプロセスによって可能となる。基板上にパターニングされた材料を生成するには、所望の材料を堆積させるための制御された方法が必要である。1つの表面上に、異なる表面に対して選択的に膜を堆積させることが、パターニング及び他の用途にとって有用である。
【0003】
金属堆積のための従来の方法では、誘電体表面に対する選択性が乏しいことに悩まされることが多い。加えて、単一ウエハ処理環境では、原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)プロセスについてスループットが低いことに悩まされる可能性がある。
【0004】
FINFET方式による高誘電率メタルゲートでは、テクノロジーノードが14nm以下になるにつれて、充填する必要があるフィーチャ(feature)が極端に小さくなる。六フッ化タングステン(WF6)ベースの化学気相堆積(CVD:chemical vapor deposition)/ALDタングステン膜はフッ素を導入し、バリア層及び核形成層を設けずにゲート上に直接堆積させることができない。寸法が縮小するにつれて、バリア層及び核形成層が、狭いフィーチャ内の空間の大部分を占める。これら膜の高い抵抗率は、得られるデバイスの性能に影響を与える。
【0005】
したがって、選択的金属堆積のための改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の1つ以上の実施形態は、基板を処理する方法を対象とする。基板表面が、フッ素を含有しないタングステン前駆体の流れと、第1の還元剤の流れと、含む第1のプロセス条件に曝露されて、基板表面上にタングステン含有膜が形成される。タングステン含有膜は、タングステン金属を実質的に含有しない。タングステン含有膜が、第2の還元剤の流れを含む第2のプロセス条件に曝露されて、基板表面上のタングステン含有膜が金属タングステン膜に還元される。
【0007】
本開示のさらなる実施形態は、金属タングステン膜を形成する方法を対象とする。タングステン金属を実質的に含有しないタングステン含有膜が、基板上に形成される。基板は、導電表面及び誘電体表面を有し、タングステン含有膜が、誘電体表面に対して選択的に導電表面上に形成する。タングステン含有膜は、フッ素を含有しないタングステン前駆体の流れと、第1の還元剤の流れと、を含む第1のプロセス条件に基板を曝露することによって形成される。フッ素を含有しないタングステン前駆体と、第1の還元剤とは、流量比が10:1~1:2.5の範囲内にある。タングステン金属を実質的に含有しないタングステン含有膜を含む基板を、第2の還元剤の流れを含む第2のプロセス条件に曝露することによって、タングステン含有膜が金属タングステン膜に変換される。
【0008】
本開示のさらなる実施形態は、金属タングステン膜を形成する方法を対象とする。誘電性表面及び導電表面を有する基板が、第1のプロセス条件及び第2のプロセス条件に順次曝露されて、導電表面上に選択的に金属タングステン膜が堆積させられる。第1のプロセス条件が、導電表面上にタングステン含有膜を形成するために、フッ素を含有しないタングステン前駆体の流れと、第1の還元剤の流れと、を含む。タングステン含有膜は、タングステン金属を実質的に含有しない。第2のプロセス条件が、導電表面上のタングステン含有膜を金属タングステン膜に還元するために、第2の還元剤の流れを含む。
【0009】
本開示の上述の特徴を詳しく理解できるように、先に簡単に要約した本開示のより詳細な説明を、実施形態を参照することによって得ることができる。幾つかの実施形態が添付の図面に示されている。しかしながら、本開示は他の等しく有効な実施形態も許容しうることから、添付の図面は本開示の典型的な実施形態を示しているにすぎず、したがって、本開示の範囲を限定すると見做すべきではないことに注意されたい。本明細書に記載の実施形態は、限定ではなく例示のために添付の図面に記載されており、図面においては同様の要素が類似した参照符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の1つ以上の実施形態に係る例示的な処理方法を示す。
【
図2】本開示の1つ以上の実施形態に係る処理方法の間の半導体デバイスの概略的な断面図を示す。
【
図3】本開示の1つ以上の実施形態に係る処理方法の間の半導体デバイスの概略的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面において、類似した構成要素及び/又は特徴は、同一の参照符号を有しうる。さらに、同じ種類の様々な構成要素は、参照符号の後のダッシュ、及び同様の構成要素を区別する第2の符号によって区別することができる。明細書中で第1の参照符号のみが使用される場合には、明細書の記載は、第2の参照符号に関わりなく、同じ第1の参照符号を有する類似した構成要素のいずれにも適用されうる。
【0012】
本開示の幾つかの例示的な実施形態について説明する前に、本開示が、以下の明細書の記載において記載される構成又は処理ステップの詳細事項に限定されないと理解されたい。本開示は、他の実施形態も対応可能であり、様々なやり方で実践又は実行することが可能である。
【0013】
本明細書では、「基板(substrate)」は、製造プロセス中に表面上に膜処理が実施される任意の基板、又は基板上に形成された任意の材料表面を指す。例えば、処理が実施されうる基板表面は、用途にしたがって、ケイ素、酸化ケイ素、歪みシリコン、シリコンオンインシュレータ(SOI:silicon on insulator)、炭素がドープされた酸化ケイ素、アモルファスシリコン、ドープされたケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイアといった材料、並びに金属、金属窒化物、金属合金、及び他の導電性材料といった任意の他の材料を含む。基板は半導体ウエハを含むが、これに限定されない。基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化、アニール、及び/又はベイクするために、基板が前処理プロセスに曝露されうる。基板自体の表面上で直接膜処理を行うことに加えて、本開示では、開示された任意の膜処理ステップが、以下でより詳細に開示される基板上に形成された下層に対して実施されてもよく、「基板表面(substrate surface)」という用語は、文脈が示すように、こうした下層を含むことが意図されている。したがって例えば、膜/層又は部分的な膜/層が基板表面に堆積している場合には、新たに堆積した膜/層の露出表面が基板表面となる。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、「前駆体(precursor)」、「反応体(reactant)」、「反応性ガス(reactive gas)」等の用語は、基板表面と反応しうる任意のガス種を表わすために、交換可能に使用される。
【0015】
本明細書では、「ライナ(liner)」という用語は、開口部の側壁及び/又は下面の少なくとも一部分に沿って共形に形成された層を指し、これにより、当該層の堆積前の開口部のかなりの部分が、当該層の堆積後に充填されていないままである。幾つかの実施形態において、ライナが、開口部の側壁及び下面の全体に沿って形成されうる。
【0016】
本開示の1つ以上の実施形態は、選択性が高い堆積プロセスを対象とする。幾つかの実施形態では、金属充填用途について堆積速度が速い。幾つかの実施形態では、選択性及び堆積速度を向上させるために、フッ素を含有しない金属前駆体が使用される。幾つかの実施形態では、第1のALDステップに還元剤を組み込んで、誘電体に対する選択性を向上させ、さらに、同等の膜性能(例えば、ステップカバレッジ、間隙充填)で堆積速度を上げる。幾つかの実施形態は、高スループットのALDプロセスによって、選択性が高いフッ素を含有しないタングステンの堆積を提供する。
【0017】
本開示の幾つかの実施形態は、第1のALDステップに還元剤を組み込む原子層堆積方法を提供する。特定の動作理論に束縛されることなく、還元剤を含めることで、主還元ALDステップにおいて、前駆体を熱分解して当該前駆体の様々な誘導体とすることができ、その際に前駆体の還元が大幅に増大すると考えられる。
【0018】
本開示の1つ以上の実施形態では、様々なガス(例えば、H2、SiH4、Si2H6、Si4H10、NH3)が、金属(例えば、タングステン(W))前駆体投与に組み込まれる。幾つかの実施形態において、還元剤の組み込みによって、誘電体に対する金属堆積の選択性が改善され、金属還元の速度が加速する。
【0019】
幾つかの実施形態における、ALDによるフッ素を含有しないタングステン(FFW:Fluorine-Free Tungsten)によって、従来の高抵抗の核形成層(例えば、SiH4又はB2H6 ALD W、20~30Å)及び厚いフッ素バリア(例えば、TiN、30~50Å)が置換及び/又は削減される。幾つかの実施形態において、FFWは抵抗が低く、ステップカバレージが良好で、フッ素バリア特性が優れており、従来のWF6ベースのバルクW充填と統合することが可能である。幾つかの実施形態では、許容しうる膜性能又は他のメトリクス(指標値)(例えば、不均一性、ステップカバレッジ、粒子)を維持しつつ、スループットを改善する。
【0020】
本開示の1つ以上の実施形態は、FFW膜の堆積速度が速い方法を対象とする。H2、SiH4、Si2H6、Si4H12、NH3のような還元剤の小さな並行流(coflow)が、W前駆体ALD投与ステップに加えられる。幾つかの実施形態において、ALDによる水素(H2)の並行流を用いたFFWの成長が、(例えば、400℃から550℃までの範囲の、又は460℃から475℃までの)適当な温度において起きる。
【0021】
FFWを成長させるためのタングステン前駆体には、塩化タングステン及び還元剤としての水素が含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、FFWが、導電層(例えばTiN又はTiAl膜)上に成長する。1つ以上の実施形態において、ALDプロセスが、W前駆体投与量への曝露を含み、これには、50~500sccmのH2の並行流、W前駆体のパージ、H2投与、H2パージが伴う。アルゴン(Ar)又は他の適切な不活性ガスが、幾つかの実施形態において、前駆体キャリア及びパージのために使用される。
【0022】
幾つかの実施形態において、FFWの堆積速度が、TiN膜上及びTiAl膜上で2倍(2x)以上向上する。幾つかの実施形態において、FFWの堆積速度の向上に起因して、膜のスループットが向上する。幾つかの実施形態において、FFW核形成層が堆積させられ、続いて、同じチャンバ内でエアブレイク(air break、空気への露出)無しで、FFWが速い堆積速度で堆積させられる。
【0023】
1つ以上の実施形態において、W前駆体に伴う少量の還元剤(H2)では、CVD W膜成長が示されない。いかなる特定の動作理論にも拘束されることなく、十分な還元剤が無ければ、W前駆体は完全には金属Wに還元されないと考えられる。さらに、少量の還元物質では、W前駆体の一部が、様々なW前駆体の誘導体に還元され、当該様々なW前駆体の誘導体は、反応性が低く、少量のH2流では金属Wに容易に還元されないと考えられる。基板表面上に堆積したタングステン前駆体の誘導体が、金属タングステンに還元される。
【0024】
図1~
図3を参照すると、本開示の1つ以上の実施形態は、金属膜240を堆積させる方法100を対象とする。
図2は、基板200の表面202上に金属膜240を堆積させる方法100、例えば、ブランケット堆積プロセスを示している。
【0025】
図3は、金属膜240が1つの表面上に、第2の表面に対して優先的に堆積させられる選択的堆積プロセスを示している。
図3に示される基板200は、第1の表面(導電表面205)を含む第1の材料(導電性材料204)と、第2の表面(誘電体表面207)を含む第2の材料(誘電材料206)と、を含む。
【0026】
図3は、表面構造212が形成された基板200を示している。表面構造212は、任意の適切な構造(例えば、ビア又はトレンチ)でありうる。図示される実施形態において、上記構造212は、導電表面205によって形成された底部と、誘電体表面207によって形成された側壁と、を有する。
図3は、例示のために単一のフィーチャを有する基板を示しているが、当業者は、1より多いフィーチャが存在しうることが分かるであろう。フィーチャの形状は、ピーク、トレンチ、及び円筒状のビアを含むが、これらには限定されない任意の適切な形状とすることができる。特定の実施形態において、フィーチャがトレンチである。他の特定の実施形態において、フィーチャがビアである。この点に関して、「フィーチャ(feature)」という用語は、任意の意図的な表面の凹凸を意味している。フィーチャの適切な例には、上部、2つの側壁、及び底部を有するトレンチと、上部、及び表面から上方に延在する2つの側壁を有するピークと、底が開いており表面から下方に延在する側壁を有するビアと、が含まれるが、これらには限定されない。フィーチャは、任意の適切なアスペクト比(フィーチャの幅に対するフィーチャの深さの比率)を有しうる。幾つかの実施形態において、アスペクト比が、おおよそ5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、又は40:1と等しく又はこれらよりも大きい。1つ以上の実施形態において、アスペクト比が10:1よりも大きい。
【0027】
方法100は、4つの下位プロセスを含む原子層堆積(ALD)プロセス110を含む。当業者は、4より多い又は少ない下位プロセスをALDプロセス110に含めることができ、本開示が、図示されるプロセスに限定されないことが分かるであろう。
図3に示すALDプロセス110では、誘電性表面207及び導電表面205を有する基板が、第1のプロセス条件112及び第2のプロセス条件116に順次曝露されて、金属タングステン膜240が導電表面205上に選択的に堆積させられる。
【0028】
方法100では、基板200が、プロセス112において第1のプロセス条件に曝露される。第1のプロセス条件は、基板表面202上にタングステン含有膜220を形成するために、フッ素を含有しないタングステン前駆体の流れと、第1の還元剤の流れと、を含む。
図3が、第1の材料の表面(導電性材料204の導電表面205)上のタングステン含有膜220の形成を示している。
【0029】
タングステン含有膜220は、実質的にタングステン金属を含有しない。このように使用されるとき、「タングステン金属(tungsten metal)」という用語は、タングステン含有膜220中のゼロ価のタングステン原子を指している。このように使用されるとき、「タングステン金属を実質的に含有しない(substantially free of tungsten metal)」という表現は、タングステン含有膜220中のタングステン原子の5%、2%、1%又は0.5%以下がゼロ価のタングステン原子であることを意味している。
【0030】
幾つかの実施形態において、第1のプロセス条件が、フッ素を含有しないタングステン前駆体を含む。幾つかの実施形態において、フッ素を含有しないタングステン前駆体が、ハロゲン化タングステンを含み又は実質的にハロゲン化タングステンからなる。明細書中及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、「~から実質的になる(consists essentially of)」という表現は、活性(又は反応性)種が、モル基準で95%、98%、99%又は99.5%以上の記載される種を含むことを意味している。幾つかの実施形態において、ハロゲン化タングステンが、五塩化タングステン(WCl5)又は六塩化タングステン(WCl6)のうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態において、フッ素を含有しないタングステン前駆体が、WOCl4又はWO2Cl2といったタングステンオキシハロゲン化物前駆体を含む。他の実施形態において、第1のプロセス条件が、フッ素を含有しないハロゲン化タングステン前駆体、又は塩素を含有しないハロゲン化タングステン前駆体からなる群から選択されたタングステン前駆体を含み、例えば、五臭化タングステン(WBr5)又は六臭化タングステン(WBr6)を含む。
【0031】
第1のプロセス条件が、タングステン前駆体と反応する第1の還元剤を含む。第1の還元剤(第1の還元物質とも称する)は、水素(H2)又はアンモニア(NH3)又はヒドラジン(N2H4)などの、水素含有ガスといった反応性ガスと、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、又は窒素(N2)といったキャリアガスと、を含む。幾つかの実施形態において、キャリアガスが不活性ガスである。幾つかの実施形態において、第1のガスが、金属タングステン前駆体ガス、反応性ガス、及びキャリアガスからなり又は実質的にこれらからなる。幾つかの実施形態において、第1のガスが、塩素を含有しないハロゲン化タングステン前駆体、フッ素を含有しないハロゲン化タングステン前駆体、水素含有ガス、及び不活性ガスからなり又は実質的にこれらからなる。幾つかの実施形態において、第1の還元剤が、水素(H2)、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)、テトラシラン(Si4H10)又はアンモニア(NH3)のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【0032】
幾つかの実施形態のタングステン前駆体が、キャリアガス中で処理チャンバの処理領域内へと流される。固体又は液体の前駆体の場合、幾つかの実施形態の前駆体がアンプル内で保持され、キャリアガスの流れがアンプルを通過して、前駆体を運ぶ。幾つかの実施形態において、キャリアガスが不活性ガスを含む。幾つかの実施形態において、キャリアガスが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素、クリプトン、又はキセノンのうちの1つ以上を含み、又は実質的にこれらからなる。本明細書では、金属前駆体の流量とは、金属前駆体を含むキャリアガスの流量である。
【0033】
幾つかの実施形態に係る処理チャンバの処理領域内への総流量は、金属前駆体の流量と第1の還元剤の流量を合わせたものである。幾つかの実施形態において、メイクアップガス(make-up gas)が処理領域内へと流され、金属前駆体及び第1の還元剤がメイクアップガス流に加えられる。幾つかの実施形態において、メイクアップガス流が、金属前駆体又は第1の還元剤のいずれかよりも遥かに大きい流量である。幾つかの実施形態において、メイクアップガス流が、前駆体の流れ又は第1の還元剤の流れの10倍(10x)より大きい流量を有する。
【0034】
幾つかの実施形態において、タングステン前駆体及び第1の還元剤の流量が、タングステン金属を実質的に含有しないタングステン含有膜を提供するよう構成されている。幾つかの実施形態において、第1の還元剤は、流量が50~500sccmの範囲内にある。当業者には分かるように、メイクアップガスの流量は、第1の還元剤に対するタングステン前駆体の比率を変更しない。メイクアップガス流は、タングステン前駆体及び/又は第1の還元剤の全体的な濃度を変更することが可能である。
【0035】
幾つかの実施形態において、第1のプロセス条件は、第1の還元剤の流量が、フッ素を含有しないタングステン前駆体の流量の5%~70%の範囲内にある。
【0036】
幾つかの実施形態において、フッ素を含有しないタングステン前駆体と第1の還元剤とは、流量比が10:1~1:2.5の範囲内にある。
【0037】
誘電材料206、及び誘電材料206の誘電体表面207が、任意の適切な誘電材料を含む。幾つかの実施形態において、誘電材料206及び誘電体表面207は、窒化ケイ素、酸化ケイ素のうちの1つ以上を含む。
【0038】
導電性材料204、及び導電性材料204の導電表面205が、任意の適切な導電性材料を含む。幾つかの実施形態において、導電性材料204、及び導電性材料204の導電表面205が、窒化チタン、チタンアルミニウム、アルミニウム又はチタンのうちの1つ以上を含む。
【0039】
幾つかの実施形態において、方法100が、ALDプロセス110の一部としてパージプロセス114を含む。パージプロセス114は、処理チャンバの処理領域から未反応の金属前駆体又は第1の還元剤を除去する任意の適切なパージプロセスとすることができる。幾つかの実施形態において、パージプロセス114は、金属前駆体のためのキャリアガスとして使用されるのと同じ不活性ガスを流すことを含む。
【0040】
方法100は、ALDプロセス110の一部として第2のプロセス条件116への曝露を含む。第2のプロセス条件116は、基板表面上のタングステン含有膜220を、金属タングステン膜240に還元するよう構成されている。換言すれば、幾つかの実施形態において、タングステン金属を実質的に含有しないタングステン含有膜220を、第2の還元剤の流れを含む第2のプロセス条件に曝露することによって、タングステン含有膜220が金属タングステン膜240に変換される。
【0041】
幾つかの実施形態において、第2のプロセス条件が、第2の還元剤を含む。幾つかの実施形態において、第2の還元剤が、第1の還元剤と同じ種である。幾つかの実施形態において、第2の還元剤が、第1の還元剤とは異なる種である。第2の還元剤の濃度は、第1の還元剤濃度と同じであってよく、又は第1の還元剤濃度異なっていてよい。
【0042】
幾つかの実施形態において、第2の還元剤が、水素(H2)、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)、テトラシラン(Si4H10)又はアンモニア(NH3)のうちの1つ以上を含む。
【0043】
幾つかの実施形態において、方法100が、ALDプロセス110の一部としてパージプロセス118を含む。パージプロセス118は、処理チャンバの処理領域から未反応の金属前駆体又は第1の還元剤を除去する任意の適切なパージプロセスとすることができる。幾つかの実施形態において、パージプロセス118は、金属前駆体のためのキャリアガスとして使用されたのと同じ不活性ガスを流すことを含む。幾つかの実施形態において、パージプロセス118が、パージプロセス114と同じ不活性ガスを流すことを含む。幾つかの実施形態において、金属前駆体のためのキャリアガスとして使用される不活性ガス、還元剤のためのキャリア/希釈ガス(存在する場合)、メイクアップガス及びパージガスが、同じ種を含む。
【0044】
幾つかの実施形態において、
図3に示すように、金属タングステン膜240が、誘電体表面207に対して選択的に導電表面205上に形成される。幾つかの実施形態において、金属タングステン膜240が、(
図3に示すように)間隙充填プロセスにおいて構造212を充填する。
【0045】
幾つかの実施形態の金属タングステン膜240が、第1のプロセス条件における第1の還元剤を含まない実質的に同様のプロセスの堆積速度の2倍以上の速度で堆積する。
【0046】
幾つかの実施形態の基板200の温度が、ALDプロセス110全体にわたって維持される。幾つかの実施形態において、基材200の温度が、第1のプロセス条件112及び第2のプロセス条件116の間、400℃~550℃の範囲内の温度に維持される。幾つかの実施形態において、ALDプロセス110中の基板200の温度が、400℃~550℃、又は425℃~525℃、又は450℃~500℃の範囲内に維持される。
【0047】
幾つかの実施形態において、方法100及び
図2に示すように、任意選択的な核形成層230が、第1のプロセス条件212への曝露の前に、基板表面202上に形成される。幾つかの実施形態において、基板表面202が、核形成層230の形成と第1のプロセス条件212との間に空気に曝露されない。
【0048】
他の実施形態において、金属前駆体が、他の適切な金属膜を形成しうる。適切な金属膜には、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、ランタン(La)、イリジウム(Ir)、又はこれらの任意の組合せ、のうちの1つ以上を含むがこれらには限定されない膜が含まれる。幾つかの実施形態の他の金属膜のために選択される金属前駆体が、フッ素を含有しない金属ハロゲン化物を含み、又は実質的に当該金属ハロゲン化物からなる。
【0049】
ALDプロセス110の完了後に、判定ポイント120が、幾つかの実施形態の方法100の一部として検査される。堆積した金属タングステン膜240が所定の厚さに達し又は所定のALDサイクル数に達した場合には、方法100が終了し、又は任意選択的な堆積後プロセス130に移る。所定の条件が満たされていない場合には、方法100はALDプロセス110を繰り返す。
【0050】
幾つかの実施形態において、堆積後プロセス130がアニーリングプロセスを含む。
【0051】
先の明細書では、本開示の実施形態が、本開示の特定の例示的な実施形態を参照しながら記載されてきた。以下の特許請求の範囲に記載される本開示の実施形態のより広い思想及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に様々な変更を加えられることが明らかとなろう。これに対応して、本明細書及び図面は、限定を意味するのではなく、例示を意味すると見なすべきである。