(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-25
(45)【発行日】2025-04-02
(54)【発明の名称】ICチップ移動検出システム、ICチップ移動検出方法、及び、ICチップ実装基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20250326BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20250326BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
G01B11/16 H
G01B11/00 C
H01L21/56 R
(21)【出願番号】P 2024213044
(22)【出願日】2024-12-06
【審査請求日】2024-12-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 達哉
(72)【発明者】
【氏名】内村 慶舟
(72)【発明者】
【氏名】市岡 揚一郎
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222210(JP,A)
【文献】特開2012-238775(JP,A)
【文献】特開2012-227308(JP,A)
【文献】特開2017-067992(JP,A)
【文献】特開2024-116824(JP,A)
【文献】国際公開第2024/018937(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111369505(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - 11/30
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップと配線基板との相対位置の移動を検出するICチップ移動検出システムであって、
第1時刻におけるICチップ及び配線基板を含む第1画像、及び、第1時刻の後の第2時刻における当該ICチップ及び当該配線基板を含む第2画像を撮影する撮影部と、
前記第1画像における前記配線基板の第1配線位置、及び、前記第2画像における前記配線基板の第2配線位置を特定する配線位置特定部と、
前記第1画像及び前記第2画像中の前記ICチップの表面の特徴点を用いて、前記第1画像における前記ICチップの第1チップ位置、及び、前記第2画像における前記ICチップの第2チップ位置を特定するチップ位置特定部と、
前記第1配線位置及び前記第1チップ位置に基づいて前記第1時刻における前記ICチップ及び前記配線基板の相対的な位置である第1相対位置を算出し、前記第2配線位置及び前記第2チップ位置に基づいて前記第2時刻における前記ICチップ及び前記配線基板の相対的な位置である第2相対位置を算出する相対位置算出部と、
前記第1相対位置及び前記第2相対位置に基づいて、前記ICチップ及び前記配線基板の相対的な位置関係の変化を検出する移動検出部と、
を備えるICチップ移動検出システム。
【請求項2】
前記配線位置特定部は、前記配線基板に設けられたアライメントマークの位置を特定することで、前記第1配線位置及び前記第2配線位置を特定する、
請求項1に記載のICチップ移動検出システム。
【請求項3】
前記配線位置特定部は、前記アライメントマークの画素値を用いて、前記第1配線位置及び前記第2配線位置を特定する、
請求項2に記載のICチップ移動検出システム。
【請求項4】
前記配線位置特定部は、前記アライメントマークの隣接する画素の画素値の差分を用いて、前記第1配線位置及び前記第2配線位置を特定する、
請求項2に記載のICチップ移動検出システム。
【請求項5】
前記アライメントマークは凸角又は凹角を有し、
前記配線位置特定部は、前記凸角又は凹角の位置を特定することで、前記第1配線位置及び前記第2配線位置を特定する、
請求項2に記載のICチップ移動検出システム。
【請求項6】
前記チップ位置特定部は、
前記第1画像及び前記第2画像中の前記ICチップの表面の特徴点を検出する特徴点検出部と、
前記第1画像中の前記特徴点と前記第2画像中の前記特徴点とを対応付ける対応付け部と、
対応付けられた前記特徴点の位置から、前記第1チップ位置及び前記第2チップ位置を特定する位置特定部と、
を有する請求項1に記載のICチップ移動検出システム。
【請求項7】
前記相対位置算出部は、複数の対応付けられた特徴点の移動を平均化することにより、前記第1相対位置及び前記第2相対位置を算出する、
請求項6に記載のICチップ移動検出システム。
【請求項8】
前記チップ位置特定部は、ORB(Oriented Fast Rotated Brief)により、前記特徴点を設定し、前記第1チップ位置及び前記第2チップ位置を特定する、
請求項6に記載のICチップ移動検出システム。
【請求項9】
前記第1時刻は、前記ICチップに対する樹脂封止工程をする前の時点であり、
前記第2時刻は、前記ICチップに対する樹脂封止工程をした後の時点である、
請求項1から8のいずれか1項に記載のICチップ移動検出システム。
【請求項10】
ICチップと配線基板との相対位置の移動を検出するICチップ移動検出方法であって、
第1時刻におけるICチップ及び配線基板を含む第1画像、及び、第1時刻の後の第2時刻における当該ICチップ及び当該配線基板を含む第2画像を撮影する撮影段階と、
前記第1画像における前記配線基板の第1配線位置、及び、前記第2画像における前記配線基板の第2配線位置を特定する配線位置特定段階と、
前記第1画像及び前記第2画像中の前記ICチップの表面の特徴点を用いて、前記第1画像における前記ICチップの第1チップ位置、及び、前記第2画像における前記ICチップの第2チップ位置を特定するチップ位置特定段階と、
前記第1配線位置及び前記第1チップ位置に基づいて前記第1時刻における前記ICチップ及び前記配線基板の相対的な位置である第1相対位置を算出し、前記第2配線位置及び前記第2チップ位置に基づいて前記第2時刻における前記ICチップ及び前記配線基板の相対的な位置である第2相対位置を算出する相対位置算出段階と、
前記第1相対位置及び前記第2相対位置に基づいて、前記ICチップ及び前記配線基板の相対的な位置関係の変化を検出する移動検出段階と、
を備えるICチップ移動検出方法。
【請求項11】
配線基板上にICチップを搭載する搭載段階と、
前記ICチップ及び前記配線基板を含む第1画像を第1時刻に撮影する第1撮影段階と、
前記ICチップを樹脂封止する封止段階と、
前記ICチップ及び前記配線基板を含む第2画像を第2時刻に撮影する第2撮影段階と、
前記第1画像における前記配線基板の第1配線位置、及び、前記第2画像における前記配線基板の第2配線位置を特定する配線位置特定段階と、
前記第1画像及び前記第2画像中の前記ICチップの表面の特徴点を用いて、前記第1画像における前記ICチップの第1チップ位置、及び、前記第2画像における前記ICチップの第2チップ位置を特定するチップ位置特定段階と、
前記第1配線位置及び前記第1チップ位置に基づいて前記第1時刻における前記ICチップ及び前記配線基板の相対的な位置である第1相対位置を算出し、前記第2配線位置及び前記第2チップ位置に基づいて前記第2時刻における前記ICチップ及び前記配線基板の相対的な位置である第2相対位置を算出する相対位置算出段階と、
前記第1相対位置及び前記第2相対位置に基づいて、前記ICチップ及び前記配線基板の相対的な位置関係の変化を検出する移動検出段階と、
を備えるICチップ実装基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ移動検出システム、ICチップ移動検出方法、及び、ICチップ実装基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「支持体と、該支持体上に形成された二層からなる接着剤樹脂層と、該接着剤樹脂層上に形成された絶縁層及び再配線層と、チップ層と、モールド樹脂層とを備える半導体装置であって、前記接着剤樹脂層が、前記支持体側から順に、光の照射により分解可能な樹脂を含む樹脂層Aと、非シリコーン系熱可塑性樹脂を含む樹脂層Bとからなり、前記光の照射により分解可能な樹脂は、主鎖に縮合環を含む樹脂であり、前記樹脂層Bは、25℃における貯蔵弾性率Eが1~500MPa及び引張破断強度が5~50MPaである半導体装置。」(請求項1)が記載されている。
特許文献2には、「下型に設けられたキャビティ凹部の内面がプロセス用離型フィルムにより被覆され、前記キャビティ凹部にモールド用の樹脂が供給された状態で、上型と前記下型とで被成形品をクランプして圧縮成形する樹脂モールド成形品の製造方法であって、金型に前記プロセス用離型フィルムと前記モールド用の樹脂と前記被成形品とをセットし、前記プロセス用離型フィルムを前記下型側からエア吸引して前記キャビティ凹部の内面にならってエア吸着する工程、任意選択で、前記上型と前記下型とを当接させて外部とエアシールしたキャビティを形成した状態で、前記キャビティに連通して設けた流路を介してエア吸引機構により前記キャビティから真空排気する工程、及び前記上型と前記下型とを圧縮成形位置まで型締めし、前記モールド用の樹脂を硬化させて前記被成形品を圧縮成形する工程、をこの順で有し、前記プロセス用離型フィルムの少なくとも一方向における、温度175℃で、100mm/分で37.5%伸長させたときの引張強度が1.0MPaから10.0MPaであり、かつ前記プロセス用離型フィルムを同条件で少なくとも一方向に37.5%伸長後に、2分間静止後、圧縮方向に100mm/分で原点方向へ戻したとき、荷重が0になるまでの変位である戻り値から、下記式(1)式にしたがって得られる復元率(%)が、30~80(%)である、上記樹脂モールド成形品の製造方法
戻り値/伸長長さ×100=復元率%・・・(1)。」(請求項1)が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2018-164002号公報
[特許文献2]特開2020-19264号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、ICチップと配線基板との相対位置の移動を検出するICチップ移動検出システムを提供する。ICチップ移動検出システムは、撮影部と、配線位置特定部と、チップ位置特定部と、相対位置算出部と、移動検出部とを備える。撮影部は、第1時刻におけるICチップ及び配線基板を含む第1画像を撮影してよい。撮影部は、第1時刻の後の第2時刻における当該ICチップ及び当該配線基板を含む第2画像を撮影してよい。配線位置特定部は、第1画像における配線基板の第1配線位置を特定してよい。配線位置特定部は、第2画像における配線基板の第2配線位置を特定してよい。チップ位置特定部は、第1画像及び第2画像中のICチップの表面の特徴点を用いて、第1画像におけるICチップの第1チップ位置、及び、第2画像におけるICチップの第2チップ位置を特定してよい。相対位置算出部は、第1配線位置及び第1チップ位置に基づいて第1時刻におけるICチップ及び配線基板の相対的な位置である第1相対位置を算出してよい。相対位置算出部は、第2配線位置及び第2チップ位置に基づいて第2時刻におけるICチップ及び配線基板の相対的な位置である第2相対位置を算出してよい。移動検出部は、第1相対位置及び第2相対位置に基づいて、ICチップ及び配線基板の相対的な位置関係の変化を検出してよい。
【0004】
上記において、配線位置特定部は、配線基板に設けられたアライメントマークの位置を特定することで、第1配線位置及び第2配線位置を特定してよい。
【0005】
上記において、配線位置特定部は、アライメントマークの画素値を用いて、第1配線位置及び第2配線位置を特定してよい。
【0006】
上記において、配線位置特定部は、アライメントマークの隣接する画素の画素値の差分を用いて、第1配線位置及び第2配線位置を特定してよい。
【0007】
上記において、アライメントマークは凸角又は凹角を有してよい。配線位置特定部は、凸角又は凹角の位置を特定することで、第1配線位置及び第2配線位置を特定してよい。
【0008】
上記において、チップ位置特定部は、特徴点検出部と、対応付け部と、位置特定部とを有してよい。特徴点検出部は、第1画像及び第2画像中のICチップの表面の特徴点を検出してよい。対応付け部は、第1画像中の特徴点と第2画像中の特徴点とを対応付けてよい。位置特定部は、対応付けられた特徴点の位置から、第1チップ位置及び第2チップ位置を特定してよい。
【0009】
上記において、相対位置算出部は、複数の対応付けられた特徴点の移動を平均化することにより、第1相対位置及び第2相対位置を算出してよい。
【0010】
上記において、チップ位置特定部は、ORB(Oriented Fast Rotated Brief)により、特徴点を設定し、第1チップ位置及び第2チップ位置を特定してよい。
【0011】
上記において、第1時刻は、ICチップに対する樹脂封止工程をする前の時点であってよい。第2時刻は、ICチップに対する樹脂封止工程をした後の時点であってよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、ICチップと配線基板との相対位置の移動を検出するICチップ移動検出方法を提供する。ICチップ移動検出方法は、撮影段階と、配線位置特定段階と、チップ位置特定段階と、相対位置算出段階と、移動検出段階とを備える。撮影段階において、第1時刻におけるICチップ及び配線基板を含む第1画像を撮影してよい。撮影段階において、第1時刻の後の第2時刻における当該ICチップ及び当該配線基板を含む第2画像を撮影してよい。配線位置特定段階において、第1画像における配線基板の第1配線位置を特定してよい。配線位置特定段階において、第2画像における配線基板の第2配線位置を特定してよい。チップ位置特定段階において、第1画像及び第2画像中のICチップの表面の特徴点を用いて、第1画像におけるICチップの第1チップ位置、及び、第2画像におけるICチップの第2チップ位置を特定してよい。相対位置算出段階において、第1配線位置及び第1チップ位置に基づいて第1時刻におけるICチップ及び配線基板の相対的な位置である第1相対位置を算出してよい。相対位置算出段階において、第2配線位置及び第2チップ位置に基づいて第2時刻におけるICチップ及び配線基板の相対的な位置である第2相対位置を算出してよい。移動検出段階において、第1相対位置及び第2相対位置に基づいて、ICチップ及び配線基板の相対的な位置関係の変化を検出してよい。
【0013】
本発明の第3の態様においては、ICチップ実装基板の製造方法を提供する。ICチップ実装基板の製造方法は、搭載段階と、第1撮影段階と、封止段階と、第2撮影段階と、配線位置特定段階と、チップ位置特定段階と、相対位置算出段階と、移動検出段階とを備える。搭載段階において、配線基板上にICチップを搭載してよい。第1撮影段階において、ICチップ及び配線基板を含む第1画像を第1時刻に撮影してよい。封止段階において、ICチップを樹脂封止してよい。第2撮影段階において、ICチップ及び配線基板を含む第2画像を第2時刻に撮影してよい。配線位置特定段階において、第1画像における配線基板の第1配線位置を特定してよい。配線位置特定段階において、第2画像における配線基板の第2配線位置を特定してよい。チップ位置特定段階において、第1画像及び第2画像中のICチップの表面の特徴点を用いて、第1画像におけるICチップの第1チップ位置、及び、第2画像におけるICチップの第2チップ位置を特定してよい。相対位置算出段階において、第1配線位置及び第1チップ位置に基づいて第1時刻におけるICチップ及び配線基板の相対的な位置である第1相対位置を算出してよい。相対位置算出段階において、第2配線位置及び第2チップ位置に基づいて第2時刻におけるICチップ及び配線基板の相対的な位置である第2相対位置を算出してよい。移動検出段階において、第1相対位置及び第2相対位置に基づいて、ICチップ及び配線基板の相対的な位置関係の変化を検出してよい。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係るICチップ移動検出システムの構成を示す。
【
図2】チップ位置特定部130の構成の一例を示す。
【
図3】本実施形態に係るICチップ実装基板の製造方法のフローの一例を示す。
【
図4】搭載段階における配線基板20の一例を示す。
【
図5】本実施形態に係る第1画像500の一例を示す。
【
図6】封止段階における配線基板20の一例を示す。
【
図7】本実施形態に係る第2画像700の一例を示す。
【
図8】S500における第1画像500の第1配線位置の特定方法の一例を示す。
【
図9】第1画像500における線 B '―B上の画素値のグラフの一例を示す。
【
図10】第1画像500における線 A '―A上の画素値のグラフの一例を示す。
【
図11】
図9のグラフにおける画素値の差分の一例を示す。
【
図13】S500における第2画像700の第2配線位置の特定方法の一例を示す。
【
図14】
図3に係るフローのS600のサブフローの一例を示す。
【
図15】第1画像500において検出された特徴点の一例を示す。
【
図16】第2画像700において検出された特徴点の一例を示す。
【
図17】第1画像500における第1相対位置の一例を示す。
【
図18】第2画像700における第2相対位置の一例を示す。
【
図19】移動検出部150によるS800の処理の一例を示す。
【
図20】実際のICチップ及びアライメント―マーク画像の一例を示す。
【
図21】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本実施形態に係るICチップ移動検出システム10の構成を示す。ICチップ移動検出システム10は、ICチップと配線基板との相対位置の移動を検出する。配線基板にICチップを搭載した後、樹脂封止等の別工程を行う場合がある。例えば、ICチップ移動検出システム10は、別工程においてICチップが配線基板に対して相対的な移動したか否か等を検出する。ICチップ移動検出システム10は、撮影部110、配線位置特定部120、チップ位置特定部130、相対位置算出部140及び移動検出部150を備える。
【0018】
ICチップ移動検出システム10は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。
【0019】
これに代えてICチップ移動検出システム10は、ICチップ移動検出用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。ICチップ移動検出システム10は、1台の装置(コンピュータ)により実装されてよく、又は、役割分担がされた複数台の装置により実現されてもよい。ICチップ移動検出システム10において、以下では特に説明しないが、メモリ/ハードディスク等が備えられ、処理に必要な情報は適宜記憶され、配線位置特定部120及びチップ位置特定部130等の各処理モジュール間で情報が伝達される。
【0020】
撮影部110は、ICチップ及び配線画像を含む画像を撮影する。例えば、撮影部110は、第1時刻におけるICチップ及び配線基板を含む第1画像、及び、第2時刻における当該ICチップ及び当該配線基板を含む第2画像を撮影する。第2時刻は、第1時刻の後に樹脂封止等の別工程を行った後の時刻であってよい。撮影部110は、撮像素子に接続され、撮像素子からの画像データを取得してよい。撮影部110は、撮影した画像データに対して必要に応じて画像処理を行って第1画像及び第2画像を取得してもよい。
【0021】
配線位置特定部120は、第1画像における配線基板の第1配線位置、及び、第2画像における配線基板の第2配線位置を特定する。例えば、配線位置特定部120は、配線基板に設けられたアライメントマークの位置を特定することで、第1配線位置及び第2配線位置を特定してよい。具体的な方法は後述する。
【0022】
チップ位置特定部130は、第1画像及び第2画像中のICチップの表面の特徴点を用いて、第1画像におけるICチップの第1チップ位置、及び、第2画像におけるICチップの第2チップ位置を特定する。例えば、チップ位置特定部130は、ORB(Oriented Fast Rotated Brief)により、特徴点を設定し、第1チップ位置及び第2チップ位置を特定してよい。
【0023】
図2は、チップ位置特定部130の構成の一例を示す。チップ位置特定部130は、特徴点検出部132、対応付け部134及び位置特定部136を有する。
【0024】
特徴点検出部132は、第1画像及び第2画像中のICチップの表面の特徴点を検出する。
【0025】
対応付け部134は、特徴点検出部132が検出した第1画像中の特徴点と第2画像中の特徴点とを対応付ける。
【0026】
位置特定部136は、対応付け部134に対応付けられた特徴点の位置から、第1チップ位置及び第2チップ位置を特定する。
【0027】
相対位置算出部140は、第1配線位置及び第1チップ位置に基づいて第1時刻におけるICチップ及び配線基板の相対的な位置である第1相対位置を算出する。相対位置算出部140は、第2配線位置及び第2チップ位置に基づいて第2時刻におけるICチップ及び配線基板の相対的な位置である第2相対位置を算出する。
【0028】
移動検出部150は、第1相対位置及び第2相対位置に基づいて、ICチップ及び配線基板の相対的な位置関係の変化を検出する。例えば、移動検出部150は、第1相対位置と第2相対位置の差分を、位置関係の変化として検出してよい。
【0029】
図3は、本実施形態に係るICチップ実装基板の製造方法のフローの一例を示す。ICチップ移動検出システム10は、例えば、S100~S800の各処理を実行することにより、ICチップ実装基板を製造する。また、S200~S800を実行することでICチップの移動検出を行う。S100~S800の処理の順番は変更されてよく、一部の処理を省略してもよい。
【0030】
まずS100において、配線基板上にICチップを搭載する搭載段階を実行する。配線基板は、基板上にICチップと接続するための再配線が設けられたものであってよい。例えば、基板は、シリコンウエア等の半導体ウエハ、樹脂基板、又は、ガラス基板等であってよい。基板は、ファンアウトパッケージ製造工程におけるキャリアとして機能し、後に剥離、除去されるものであってよい。基板及び再配線層の材料、形成方法及び設計等は特に限定されない。
【0031】
配線基板上には、1つのICチップ又は複数のICチップが搭載されてよい。搭載段階は、ICチップに設けられたバンプと再配線が接続するように実行されてよい。
【0032】
図4は、搭載段階における配線基板20の一例を示す。図示するように配線基板20は、キャリア30及び再配線層40を含む。再配線が設けられた再配線層40は、キャリア30の一面に設けられる。再配線層40を介してICチップ50が配線基板20上に搭載され、固定される。
【0033】
次にS200において、撮影部110は、ICチップ及び配線基板を含む第1画像を撮影する第1撮影段階を実行する。第1画像は、第1時刻において撮影されたものとする。
【0034】
撮影部110は、ICチップの少なくとも一部及び配線基板の少なくとも一部が同一画像内に含まれるように第1画像の撮影を実行する。撮影部110は、画像内に配線基板に設けられたアライメントマークが含まれるように第1画像を撮影してよい。アライメントマークは、配線基板の表面に設けられ、配線基板の位置の基準となる印であってよい。アライメントマークは、凸角又は凹角を有してよい。例えば、アライメントマークは、三角形、四角形、五角以上の多角形、十字形、又は、星型等であってよい。一例としてアライメントマークは直交する2つの直線の組を含む形状であってよい。
【0035】
撮影部110は、レンズ等の光学系を用いてICチップ及び配線基板が含まれる領域を拡大して撮影してよい。撮影部110は、ICチップ及び配線基板が後に移動したとしても、両者を一画像内に収められるように十分大きな画角で撮影してよい。
【0036】
撮影部110が撮影に用いる波長は特に限定されない。例えば、撮影部110は、可視光、赤外線、又は、X線により撮影を行ってよい。
【0037】
撮影部110は、ICチップ側(
図4の上側)から、第1画像を撮影してよい。これに代えて、撮影部110は、ICチップの反対側(
図4の下側)から、第1画像を撮影してよい。
【0038】
図5は、本実施形態に係る第1画像500の一例を示す。図示するように第1画像500は、配線基板20の再配線層530上に配置された十字形のアライメントマーク520、及び、ICチップ510の一部(例えば左下部分)を画像中に含む。
【0039】
複数のICチップ510が配線基板20に搭載される場合、S200の処理は1つのICチップに対してのみ実行してよい。これに代えて、全てのICチップ又は選択した2以上のICチップに対してS200の処理を実行してよい。複数のICチップに対してS200の処理を行った場合、ICチップごとに後続のS300~S800の処理を実行してよい。
【0040】
次にS300において、ICチップを樹脂封止する封止段階を実行する。封止段階において、ICチップの周辺を封止樹脂により封止する。ICチップ側(
図4の上側)から撮影部110が撮影をする場合は、封止樹脂は撮影に用いる波長に対して透明である。例えば、金型等を用いてICチップ周辺に溶融した樹脂を流し込み、その後、冷却すること等によって封止段階を実行してよい。必要に応じて、封止等に封止樹脂の一部を研削してもよい。研削を行うことにより、ICチップの移動量計測に必要な箇所が露出する場合、封止樹脂は撮影に用いる波長に対して不透明でも構わない。
【0041】
図6は、封止段階における配線基板20の一例を示す。図示するように、再配線層40の一面上において、ICチップ50の隣接する領域に封止樹脂60の領域を形成することで、ICチップ50を含むパッケージを製造する。
【0042】
次にS400において、撮影部110は、ICチップ及び配線基板を含む第2画像を撮影する第2撮影段階を実行する。第2画像は、第1時刻の後の第2時刻において撮影される。第2撮影段階で、撮影部110は、第1撮影段階で撮影したICチップと配線基板が含まれるように第2画像を撮影する。
【0043】
撮影部110は、第1撮影段階と同じ条件又は近い条件で第2撮影段階を実行してよい。例えば、撮影部110は、第1撮影段階で撮影したICチップ及び配線基板を、第1撮影段階と同じ距離(例えば、配線基板20と撮影部110の距離)、及び、同じ撮影角度(例えば、配線基板20の面に対する撮影部110の迎角、及び、配線基板20の平面内の回転角度等)で撮影することで、第2撮影段階を実行してよい。
【0044】
第2撮影段階が第1撮影段階と異なる条件で行われる場合、第2画像に対して画像処理を施すことで、第1撮影段階と同一条件で撮影した場合に得られる画像を取得してよい。例えば、第2撮影段階における配線基板20と撮影部110の距離が第1撮影段階よりも遠い場合、第2画像を所定倍率で拡大して、同一条件とした場合の画像を取得してよい。
【0045】
第1時刻はICチップに対する樹脂封止工程をする前の時点となり、第2時刻はICチップに対する樹脂封止工程をした後の時点となる。このように、撮影部110は、封止段階の前後における配線基板及びICチップの画像を取得する。
【0046】
図7は、本実施形態に係る第2画像700の一例を示す。図示するように第2画像700は、再配線層730上に配置された十字形のアライメントマーク720、及び、ICチップ710を画像中に含む。十字形のアライメントマーク720は
図5に示す第1画像500のアライメントマーク520に対応し、ICチップ710は
図5に示す第1画像500のICチップ510に対応する。
図5及び
図7に示す通り、アライメントマークとICチップとの相対的な位置関係は、封止段階の前後で移動している。具体的には、アライメントマークに対してICチップは、相対的に点線から実線の位置に移動している。
【0047】
撮影部110は、第1画像及び/又は第2画像に対して必要に応じて画像処理等を行ってよい。例えば、撮影部110は、第1画像及び/又は第2画像に対して、フィルタを適用してシャープネスを向上させる、色調を揃える、コントラストを揃える等の処理を実行してよい。
【0048】
次にS500において、配線位置特定部120は、配線位置特定段階を行う。配線位置特定部120は、第1画像における配線基板の位置である第1配線位置を特定する。配線位置特定部120は、第2画像における配線基板の位置である第2配線位置を特定する。配線位置特定部120は、配線基板のアライメントマークを用いて第1配線位置及び第2配線位置を特定してよい。
【0049】
配線位置特定部120は、アライメントマークの一部の位置を特定することで、第1配線位置及び第2配線位置を特定してよい。例えば、配線位置特定部120は、アライメントマークの凸角又は凹角の位置を特定することで、第1配線位置及び第2配線位置を特定してよい。一例として、配線位置特定部120は、凸角又は凹角を通過する直交する2直線の座標の少なくとも一部を特定し、2直線の特定した座標を組み合わせることで、凸角又は凹角の位置を特定してよい。
【0050】
配線位置特定部120は、アライメントマークの画素値を用いて、第1配線位置及び第2配線位置を特定してよい。一例として、配線位置特定部120は、アライメントマークの隣接する画素の画素値の差分を用いて、第1配線位置及び第2配線位置を特定してよい。
【0051】
図8は、S500における第1画像500の第1配線の特定方法の一例を示す。
図8は、第1画像500におけるアライメントマーク520を示す。ここで、配線位置特定部120は、アライメントマーク520における凹角540の位置を第1配線位置として特定してよい。ここで、
図8の横軸をX軸、縦軸をY軸として、凹角540の座標を(X1、Y1)と定義する。
【0052】
配線位置特定部120は、凹角540の位置を特定するために、アライメントマーク520において凹角540を通る2つの線分(X軸と平行なX線分550及びY軸と平行なY線分560)上の点の座標を特定する。例えば、配線位置特定部120は、Y軸と平行なY線分560上の点565のX座標を特定する。更に、配線位置特定部120は、X軸と平行なX線分550上の点555のY座標を特定する。なお、
図8では、アライメントマーク520において十字形が交差する部分でX線分550が左側部分と右側部分に分離しているが、両者は一直線を形成するものとする。同様にY線分560の上側部分と下側部分も一直線を形成するものとする。
【0053】
図9は、第1画像500における線B '―B上の画素値のグラフの一例を示す。横軸は線 B '―Bに沿った画素の位置を示し、縦軸は画素値を示す。画素位置0がB '側に対応し、画素位置が大きくなるに従ってB側に移動するものとする。
【0054】
画素値は、例えば、画素の輝度値であってよい。
図9では、特定の画素位置(701)で画素値が大きく上昇し、特定の画素位置(847)で画素値が大きく減少している。これは、線 B '―Bに沿ってアライメントマーク520上で画素値が大きくなり、他の領域(すなわち再配線層530)上で画素値が小さくなることを示す。
【0055】
配線位置特定部120は、B '側からB側に徐々に移動しながら隣接する画素同士の画素値の差分(又はその絶対値)を検出し、画素値の差分の最大値及び最小値を取る点を検出してもよい。配線位置特定部120は、画素値の差分がもっとも大きくなる変動点910の画素位置(701)をもって、凹角540のX座標X1としてよい。変動点910は、
図8のY線分上の点565に対応する。これに代えて、配線位置特定部120は、当該差分等が閾値を超えたか、及び/又は、閾値を下回ったか否かを判断し、最初に差分の絶対値が閾値を超える変動点910の画素位置(701)をもって、凹角540のX座標X1としてよい。
【0056】
図10は、第1画像500における線 A '―A上の画素値のグラフの一例を示す。横軸は線 A '―Aに沿った画素の位置を示し、縦軸は画素値を示す。画素位置0がA '側に対応し、画素位置が大きくなるに従ってA側に移動するものとする。
【0057】
図10では、特定の画素位置(188)で画素値が大きく上昇し、特定の画素位置(335)で画素値が大きく減少している。これは、線 A '―Aに沿ってアライメントマーク520上で画素値が大きくなり、他の領域(すなわち再配線層530)上で画素値が小さくなることを示す。
【0058】
配線位置特定部120は、A '側からA側に徐々に移動しながら隣接する画素同士の画素値の差分(又はその絶対値)を検出し、画素値の差分の最大値及び最小値を取る点を検出してもよい。配線位置特定部120は、画素値の差分が最も小さくなる変動点1010の画素位置(335)をもって、凹角540のY座標Y1としてよい。変動点1010は、
図8のX線分上の点555に対応する。これに代えて、配線位置特定部120は、当該差分等が閾値を超えたか、及び/又は、閾値を下回ったか否かを判断し、最初に差分の絶対値が閾値を超える変動点1010の画素位置(335)をもって、凹角540のY座標Y1としてよい。
【0059】
このようにして配線位置特定部120は、凹角540の座標(X1、Y1)を特定する。配線位置特定部120は、座標(X1、Y1)を第1配線位置としてよい。配線位置特定部120は、線分AA'上の画素、及び、線分BB'上の画素の画素値を用いて間接的に座標(X1、Y1)を算出する代わりに、凹角540を通るX軸方向の画素値及び凹角540を通るY軸方向の画素値を用いて、直接座標(X1、Y1)を特定してもよい。例えば、X1を与える点565を特定した後に、点565を通るY軸方向と平行な線の画素値を解析することにより、直接座標(X1、Y1)を特定してもよい。
【0060】
図11は、
図9のグラフにおける画素値の差分の一例を示す。
図11では、
図9において急に画素値が変動する変動点910の画素位置(701)と、画素位置(847)とにおいて、大きな上下のピークが検出されている。
【0061】
図12は、
図10のグラフにおける画素値の差分の一例を示す。
図12では、
図10において急に画素値が変動する画素位置(188)と、変動点1010に対応する画素位置(335)とにおいて、大きな上下のピークが検出されている。
【0062】
配線位置特定部120は、画素値の差分ではなく画素値自体によって配線位置を特定してもよい。例えば、配線位置特定部120は、画素値自体が閾値を超えたか及び/又は下回ったか否かのみによって配線位置を特定してよい。しかし、当該方法によると、画像の撮影条件次第で画素値が閾値に近い場合が生じ、そのような場合に配線位置を誤検出する可能性がある。しかし、画素値の差分を用いる場合には、誤検出の可能性を低減することができる。
【0063】
図13は、S500における第2画像700の第2配線位置の特定方法の一例を示す。配線位置特定部120は、
図8~
図12で説明した方法と同様の方法により、第2画像700におけるアライメントマーク720の凹角740の座標(X2、Y2)を特定してよい。配線位置特定部120は、座標(X2、Y2)を第2配線位置としてよい。
【0064】
次にS600において、チップ位置特定部130が、第1画像におけるICチップの第1チップ位置、及び、第2画像におけるICチップの第2チップ位置を特定するチップ位置特定段階を行う。チップ位置特定部130は、第1画像及び第2画像中のICチップの表面の特徴点を用いてチップ位置特定段階を実行してよい。
【0065】
図14は、
図3に係るフローのS600のサブフローの一例を示す。チップ位置特定部130は、S632~S636の処理を実行することにより、S600の処理を実行する。S632~S636に加えて別の処理が実行されてもよい。S632~S636の一部の処理が省略されてもよい。
【0066】
S632において、チップ位置特定部130の特徴点検出部132は、第1画像500のICチップ510及び第2画像700中のICチップ710の表面の特徴点を検出する。特徴点検出部132は、ICチップ510及びICチップ710の画像の特徴を用いて特徴点を設定してよい。特徴点検出部132は、既知のアルゴリズムによりICチップ上に特徴点を設定してよい。例えば、特徴点検出部132は、FASTアルゴリズムにより画像中のコーナー部分を特徴点として設定してよい。
【0067】
特徴点検出部132は、第1画像500及び第2画像700のそれぞれについて複数の特徴点を検出してよい。特徴点検出部132は、HARRISのコーナー評価手法により、複数の特徴点からより特徴が明確な特徴点を選抜してよい。
【0068】
図15は、第1画像500において検出された特徴点の一例を示す。例えば、特徴点検出部132は、第1画像500のICチップ510の領域から、5個の特徴点(特徴点572、特徴点574、特徴点576、特徴点578及び特徴点580)を検出したものとする。
【0069】
図16は、第2画像700において検出された特徴点の一例を示す。例えば、特徴点検出部132は、第2画像700のICチップ710の領域から、5個の特徴点(特徴点772、特徴点774、特徴点776、特徴点778及び特徴点780)を検出したものとする。
【0070】
次にS634において、対応付け部134は、第1画像500において検出された特徴点と、第2画像700において検出された特徴点とを対応付ける。例えば、対応付け部134は、既知の特徴点マッチング手法を用いて特徴点同士を対応付けてよい。一例として、対応付け部134は、ORB(Oriented FAST and Rotated BRIEF)を用いて、特徴点同士を対応付けてよい。
【0071】
例えば、対応付け部134は、特徴点572と特徴点772を対応付け、特徴点574と特徴点774を対応付け、特徴点576と特徴点776を対応付け、特徴点578と特徴点778を対応付け、特徴点580と特徴点780を対応付ける。
【0072】
次にS636において、位置特定部136は、対応付けられた特徴点の位置から、第1チップ位置及び第2チップ位置を算出する。例えば、位置特定部136は、第1画像500における特徴点572の位置(xa1、ya1)、特徴点574の位置(xb1、yb1)、特徴点576の位置(xc1、yc1)、特徴点578の位置(xd1、yd1)、及び、特徴点580の位置(xe1、ye1)の5箇所の重心を算出し、第1チップ位置(x1、y1)としてよい。
【0073】
例えば、位置特定部136は、第2画像700における特徴点772の位置(xa2、ya2)、特徴点774の位置(xb2、yb2)、特徴点776の位置(xc2、yc2)、特徴点778の位置(xd2、yd2)、及び、特徴点780の位置(xe2、ye2)の5箇所の重心を算出し、第2チップ位置(x2、y2)としてよい。
【0074】
次にS700において、第1相対位置及び第2相対位置を算出する相対位置算出段階を実行する。相対位置算出部140は、第1配線位置及び第1チップ位置に基づいて第1時刻におけるICチップ及び配線基板の相対的な位置である第1相対位置を算出する。例えば、相対位置算出部140は、第1配線位置(X1、Y1)と、第1チップ位置(x1、y1)との差分を算出することで、第1相対位置を算出してよい。
【0075】
図17は、第1画像500における第1相対位置の一例を示す。図示するように相対位置算出部140は、第1配線位置(X1、Y1)と重心590で表される第1チップ位置(x1、y1)とのベクトル差を算出することで、ベクトル595で表される第1相対位置(x1-X1、y1-Y1)を算出してよい。
【0076】
相対位置算出部140は、第2配線位置及び第2チップ位置に基づいて第2時刻におけるICチップ及び配線基板の相対的な位置である第2相対位置を算出する。例えば、相対位置算出部140は、第2配線位置(X2、Y2)と、第2チップ位置(x2、y2)との差分を算出することで、第2相対位置を算出してよい。
【0077】
図18は、第2画像700における第2相対位置の一例を示す。図示するように相対位置算出部140は、第2配線位置(X2、Y2)と重心790で表される第2チップ位置(x2、y2)とのベクトル差を算出することで、ベクトル795で表される第2相対位置(x2-X2、y2-Y2)を算出してよい。
【0078】
このように相対位置算出部140は、ICチップの特徴点の重心位置を用いて、複数の対応付けられた特徴点の移動を平均化することにより、第1相対位置及び第2相対位置を算出する。これに代えて、ICチップの各特徴点と配線位置との差分のベクトルを複数算出し、これらの複数のベクトルを平均化することで、第1相対位置及び第2相対位置を算出してもよい。
【0079】
次にS800において、移動検出部150が、第1相対位置及び第2相対位置に基づいて、ICチップ及び配線基板の相対的な位置関係の変化を検出する移動検出段階を行う。例えば、移動検出部150は、第1相対位置と第2相対位置の差分を、位置関係の変化として検出してよい。
【0080】
図19は、移動検出部150によるS800の処理の一例を示す。移動検出部150は、ベクトル595で表される第1相対位置(X1-x1、Y1-y1)と、ベクトル795で表される第2相対位置(X2-x2、Y2-y2)との差分となるベクトル990を算出してよい。移動検出部150は、係るベクトル990を、ICチップと配線基板との相対位置の移動として検出する。
【0081】
移動検出部150は、ベクトル990自体、ベクトル990の方向及び/又はベクトル990の絶対値を出力してよい。移動検出部150は、ベクトル990の絶対値が閾値を超えたか判断し、閾値を超えた場合に警告を出力してよい。これにより、ICチップ移動検出システム10は、封止段階等のICチップが動く可能性のある工程の前後で、ICチップが移動したことを検知することができる。
【0082】
ICチップが予め定められた量以上動いた場合には、封止段階等の移動の原因となった工程の条件等を見直す、製造中の製品を廃棄する、及び/又は、ICチップを元の位置に移動する等の処理を行ってよい。
【0083】
S800の後には、キャリア30を剥離する、半田ボールを再配線層40のICチップ50の裏側面に形成する、(ICチップ50が複数搭載されている場合)ダイシングを行い個片化する等の段階を更に行ってよい。これらの段階を追加で行うことでICチップ50が搭載されたファンアウトパッケージを製造することができる。
【0084】
本実施形態によれば、ICチップ表面の特徴点を用いたことにより、ICチップの位置をより正確に特定することができた。特徴点を用いる方法に代えて画像中のICチップの外縁部の座標を用いて、ICチップの位置を特定することも可能である。例えば、S500で説明した方法と同様に画像中のICチップ外縁の画素値又はその差分等を用いて、ICチップの位置を特定してもよい。
【0085】
一方でそのような方法を用いた場合、ICチップには奥行があり、焦点位置、影等の撮影条件のわずかな違い等に起因してICチップの外縁が正確に特定されない場合が生じる。
【0086】
図20は、実際のICチップ及びアライメント―マーク画像の一例を示す。図示するようにICチップ510の外縁部に相当する部分は画像中で黒くなっており、外縁を特定することは必ずしも容易ではない。例えば、ライン1020がICチップの外縁ともとれるし、ライン1030が外縁ともとれる。このように外縁に基づくICチップの特定は、位置の誤差を生じる原因となり得る。
【0087】
一方で、本実施形態によれば、画素値の差分を用いて配線基板の位置を特定することで、配線基板の位置を正確に特定することができる。このように本実施形態によれば、配線基板及びICチップのそれぞれに対して適切な方法で位置を特定することにより、ICチップの移動を高い精度で検出することができる。
【0088】
ICチップ移動検出システム10は、ICチップと配線位置との相対的な移動に加えて、ICチップの回転量も算出してよい。例えば、配線位置特定部120は、第1画像及び第2画像のそれぞれにおいて、配線位置を2箇所以上特定しておき、配線位置同士の位置関係から配線位置(またはアライメントマーク)の配線角度を特定し、チップ位置特定部130は複数の特徴点の位置関係からICチップのチップ角度を特定し、相対位置算出部140は第1画像における配線角度とチップ角度の差分と、第2画像における配線角度とチップ角度の差分とから、ICチップの回転を算出してよい。
【0089】
上記の実施形態の説明ではS100~S800を通じてICチップ実装基板としてファンアウトパッケージを製造する場合を主に説明したがこれに限られない。本実施形態において説明した方法は、配線とICチップを位置合わせする工程を含む他の多様なプロセスに適用できる。
【0090】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0091】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0092】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0093】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のコンピュータ等のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0094】
図21は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0095】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インターフェイス2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0096】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0097】
通信インターフェイス2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0098】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0099】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0100】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0101】
CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0102】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0103】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0104】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0105】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。「A及び/又はB」の表記は「A、B、又は、A及びC」を示すものであってよい。「A、B及び/又はC」の表記は「A、B及びCのいずれか1つか、又は、これらの2つ以上のいずれかの組み合わせ」を示すものであってよい。
【符号の説明】
【0106】
10 ICチップ移動検出システム
20 配線基板
30 キャリア
40 再配線層
50 ICチップ
60 封止樹脂
110 撮影部
120 配線位置特定部
130 チップ位置特定部
132 特徴点検出部
134 対応付け部
136 位置特定部
140 相対位置算出部
150 移動検出部
500 第1画像
510 ICチップ
520 アライメントマーク
530 再配線層
540 凹角
550 X線分
555 X線分上の点
560 Y線分
565 Y線分上の点
572 特徴点
574 特徴点
576 特徴点
578 特徴点
580 特徴点
590 重心
595 ベクトル
700 第2画像
710 ICチップ
720 アライメントマーク
730 再配線層
740 凹角
772 特徴点
774 特徴点
776 特徴点
778 特徴点
780 特徴点
790 重心
795 ベクトル
910 変動点
990 ベクトル
1010 変動点
1020 ライン
1030 ライン
2200 コンピュータ
2201 DVD-ROM
2210 ホストコントローラ
2212 CPU
2214 RAM
2216 グラフィックコントローラ
2218 ディスプレイデバイス
2220 入/出力コントローラ
2222 通信インターフェイス
2224 ハードディスクドライブ
2226 DVD-ROMドライブ
2230 ROM
2240 入/出力チップ
2242 キーボード
【要約】
【解決手段】第1及び第2時刻におけるICチップ及び配線基板を含む第1及び第2画像を撮影する撮影部と、第1及び第2画像における配線基板の第1及び第2配線位置を特定する配線位置特定部と、第1及び第2画像中のICチップの表面の特徴点を用いて、第1及び第2画像におけるICチップの第1及び第2チップ位置を特定するチップ位置特定部と、第1時刻におけるICチップ及び配線基板の相対的な位置である第1相対位置を算出し、第2時刻におけるICチップ及び配線基板の相対的な位置である第2相対位置を算出する相対位置算出部と、第1及び第2相対位置に基づいて、ICチップ及び配線基板の相対的な位置関係の変化を検出する移動検出部と、を備えるICチップ移動検出システムを提供する。
【選択図】
図1