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  • 特許-宇宙施設の隔壁構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】宇宙施設の隔壁構造
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/54 20060101AFI20250327BHJP
   B64G 1/60 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
B64G1/54
B64G1/60
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023547958
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2021033712
(87)【国際公開番号】W WO2023042251
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】広島 芳春
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0060718(US,A1)
【文献】特開2011-121476(JP,A)
【文献】米国特許第3291333(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/54
B64G 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙空間に設置された宇宙施設を、外部空間から遮蔽する隔壁構造であって、
前記宇宙施設の内部空間が所定の空気圧となるように、前記宇宙施設の周囲を封密的に覆う与圧壁と、
前記与圧壁の外周側に、前記与圧壁から間隔を開けて設けられ、前記与圧壁の外周を防護する防護壁と、
を備え、
前記与圧壁と前記防護壁との間に形成された外壁空間は、前記与圧壁に交差する向きの仕切板により複数の分割区域に区分され、
少なくとも一つの前記分割区域に水を充填する
宇宙施設の隔壁構造。
【請求項2】
前記与圧壁と前記防護壁との間を区分する中間壁を更に備え、
前記与圧壁と前記中間壁の間の第1の空間、及び前記中間壁と前記防護壁の間の第2の空間をそれぞれ前記仕切板により複数の分割区域に区分し、前記第1の空間の分割区域、及び前記第2の空間の分割区域のうちの少なくとも一つに水を充填する
請求項1に記載の宇宙施設の隔壁構造。
【請求項3】
前記宇宙施設は円筒形状をなし、前記円筒形状の径方向における断面の、前記宇宙施設の進行方向を基準とした所定角度の範囲となる前記外壁空間に水を充填する
請求項1または2に記載の宇宙施設の隔壁構造。
【請求項4】
前記外壁空間は、前記宇宙施設で使用する水を貯留する貯水タンクである
請求項1または2に記載の宇宙施設の隔壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙施設の隔壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙放射線に含まれる高エネルギー粒子(主に、陽子)が地球の大気中の酸素及び窒素の原子核に衝突すると、中性子線が発生して地上に降り注ぐ。非特許文献1には、地上に降り注いだ中性子線により、地上に置かれた電子機器に誤動作や回路素子の焼損を引き起こすことが開示されている。
【0003】
一方、宇宙空間に敷設されている宇宙施設(例えば、有人の宇宙施設)では、その周囲を覆う外壁に宇宙放射線が衝突して中性子線が発生し、宇宙施設内に進入して上記と同様の現象が発生する。宇宙施設では、地上とは異なり、大気層を通過することによる減衰が発生しない。このため、宇宙放射線が電子機器に与える影響が地上の場合よりも大きくなる。
【0004】
非特許文献2には、宇宙施設で使用する電子機器を、地上で使用する電子機器よりも、宇宙放射線に対して耐性が強い部品を使用する、或いは、電子機器システムを二重化するなどの対策を採ることにより、宇宙放射線が電子機器に与える影響を低減することが開示されている。
【0005】
非特許文献3には、宇宙施設内での宇宙放射線を低減する方法として、施設内に設置されているウェットタオルを使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】庄司、西田「パワーデバイスの宇宙放射線破壊耐量に関する研究」電気学会技術開発レポート、2016
【文献】宇宙航空研究開発機構「宇宙転用可能部品の宇宙適用ハンドブック」、JERG-2-023、2015 年 5月制定
【文献】小平「ウェットタオルを用いた宇宙滞在中の宇宙放射線被ばくの低減法」、Isotope News、2014年8月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献2に開示された方法では、電子機器の設置コストが高くなるという問題が発生する。また、非特許文献3に開示された方法では、ある程度の宇宙放射線を低減できるものの、その効果は小さく根本的な解決には至らない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、宇宙施設に進入する宇宙放射線を減衰させることが可能な宇宙施設の隔壁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の宇宙施設の隔壁構造は、宇宙空間に設置された宇宙施設を、外部空間から遮蔽する隔壁構造であって、前記宇宙施設の内部空間が所定の空気圧となるように、前記宇宙施設の周囲を封密的に覆う与圧壁と、前記与圧壁の外周側に、前記与圧壁から間隔を開けて設けられ、前記与圧壁の外周を防護する防護壁と、を備え、前記与圧壁と前記防護壁との間に形成された外壁空間の少なくとも一部に、水を充填する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、宇宙施設に進入する宇宙放射線を減衰させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る隔壁構造が搭載された宇宙施設の断面を模式的に示す説明図である。
図2A図2Aは、外壁空間内を真空とし、防護壁に100[MeV]の陽子を照射したときの、陽子の軌跡を示す説明図である。
図2B図2Bは、外壁空間内に水を充填し、防護壁に100[MeV]の陽子を照射したときの、陽子の軌跡を示す説明図である。
図3A図3Aは、2枚のアルミ合金板の空間内を真空とし、100[MeV]の陽子を照射したときの、2枚のアルミ合金板を通過した陽子及び中性子のエネルギーを示すグラフである。
図3B図3Bは、2枚のアルミ合金板の空間内に水を充填し、100[MeV]の陽子を照射したときの、2枚のアルミ合金板を通過した陽子及び中性子のエネルギーを示すグラフである。
図4A図4Aは、2枚のアルミ合金板の空間内を真空とし、150[MeV]の陽子を照射したときの、2枚のアルミ合金板を通過した陽子及び中性子のエネルギーを示すグラフである。
図4B図4Bは、2枚のアルミ合金板の空間内に水を充填し、150[MeV]の陽子を照射したときの、2枚のアルミ合金板を通過した陽子及び中性子のエネルギーを示すグラフである。
図5A図5Aは、2枚のアルミ合金板の空間内を真空とし、200[MeV]の陽子を照射したときの、2枚のアルミ合金板を通過した陽子及び中性子のエネルギーを示すグラフである。
図5B図5Bは、2枚のアルミ合金板の空間内に水を充填し、200[MeV]の陽子を照射したときの、2枚のアルミ合金板を通過した陽子及び中性子のエネルギーを示すグラフである。
図6図6は、エネルギー分布が1~200[MeV]で一様な陽子を、外壁空間内に照射したときの、外壁空間内を通過した陽子の割合を示すグラフである。
図7図7は、外壁空間内に水を充填する第1の実施例を示す説明図である。
図8図8は、外壁空間内に水を充填する第2の実施例を示す説明図である。
図9図9は、外壁空間内に水を充填する第3の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る隔壁構造が搭載された宇宙施設の断面を模式的に示す説明図である。
【0013】
本実施形態に係る宇宙施設100は、例えば人工衛星などの宇宙空間に敷設される有人施設である。図1に示すように宇宙施設100は、外部空間に対して封密的に遮蔽されている。宇宙施設100は、円筒形状を有している。従って、図1に示す断面図において、宇宙施設100は円形状をなしている。なお、宇宙施設100は円筒形状に限定されるものではなく、その他の閉塞された空間を有する形状であってもよい。
【0014】
図1に示すように、宇宙施設100には断面がリング形状の与圧壁11が設けられている。宇宙施設100の、与圧壁11により囲まれた空間が内部空間14とされている。内部空間14は、与圧壁11により囲まれた閉塞空間である。与圧壁11は、宇宙施設100の内部空間14が所定の空気圧となるように、宇宙施設100の周囲を封密的に覆っている。
【0015】
与圧壁11の外周には宇宙空間を浮遊するゴミや残骸などのデブリによる与圧壁11の損傷を防止する防護壁12が設けられている。防護壁12は、与圧壁11の外周側に、与圧壁11から間隔L1を開けて設けられ、与圧壁11の外周を防護する。与圧壁11と防護壁12との間は、外壁空間15とされている。即ち、宇宙施設100の周囲は、与圧壁11と防護壁12の二重構造となっている。外壁空間15は、与圧壁11と防護壁12により囲まれた閉塞空間である。本実施形態では、外壁空間15を貯水タンクとして使用することにより宇宙放射線を減衰させる。
【0016】
有人の宇宙施設では、飲料水などの生活用水が使用される。例えば、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を搬入する補給機「こうのとり6号」では、一回に600リットルの飲料水を輸送しているため、それまで存在していた水を含めて1000リットル程度の水が存在している。本実施形態では、この水を使用して宇宙放射線を減衰させる。
【0017】
与圧壁11及び防護壁12は、例えばアルミ合金で形成されている。アルミ合金とは、アルミニウムに、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)などを含めることにより強度を高めた合金である。
【0018】
なお、図1に示す断面図において、内部空間14と外壁空間15の比率は、実際の宇宙施設100の比率を表していない。理解を促進するため、内部空間14に対して外壁空間15の厚さ、即ち間隔L1を誇張して記載している。
【0019】
本実施形態では、外壁空間15内の少なくとも一部に水を充填し、充填した水により宇宙放射線の進入を抑制する。外壁空間15内に充填する水は、宇宙施設で使用する飲料水などの生活用水である。即ち、外壁空間15は、宇宙施設100で使用する水を貯留する貯水タンクとしての機能を有している。
【0020】
次に、外壁空間15内を真空にした場合及び水を充填した場合における、宇宙放射線の減衰について説明する。図2A図2Bは、防護壁12に100[MeV]の陽子Prを照射したときの、陽子Prの軌跡を示す説明図であり、図2Aは外壁空間15内が真空の場合、図2Bは外壁空間15内に水を充填した場合を示している。
【0021】
図2Aに示すように、外壁空間15内が真空の場合には、防護壁12の外側から照射された陽子Prは、外壁空間15内でほとんど減衰せずに防護壁12及び与圧壁11を通過して内部空間内に進入している。
【0022】
一方、図2Bに示すように、外壁空間15内に水が充填されている場合には、防護壁12の外側から照射された陽子Prは、外壁空間15内に充填されている水の層で減衰し、内部空間内にはほとんど進入していない。
【0023】
図3A図5Bは、外壁空間15を模擬するために、2枚のアルミ合金板を10cmの間隔を開けて平行に配置した装置を準備し、2枚のアルミ合金板の間の空間を真空とした場合、及び空間に水を充填した場合において、2枚のアルミ合金板を通過した陽子及び中性子のエネルギーを示すグラフである。例えば、周知の粒子輸送シミュレータ「PHITS」を使用してシミュレーションを行うことにより結果を得ることができる。
【0024】
図3A図5Bにおいて、破線は中性子のエネルギーを示し、実線は陽子のエネルギーを示している。
【0025】
図3A図3Bは、照射する陽子のエネルギーを100[MeV]とした場合において、2枚のアルミ合金板の間の空間内を真空とした場合、及び空間内に水を充填した場合に、2枚のアルミ合金板を通過した陽子、中性子のエネルギーを示している。
【0026】
図3Aに示すように、空間内を真空とした場合には、2枚のアルミ合金板を通過した陽子のエネルギーの最大値は90[MeV]に達している。これに対して図3Bに示すように、空間内に水を充填した場合には、2枚のアルミ合金板を通過した陽子のエネルギーの最大値は10[MeV]程度である。
【0027】
図4A図4Bは、照射する陽子のエネルギーを150[MeV]とした場合において、2枚のアルミ合金板の間の空間内を真空とした場合、及び空間内に水を充填した場合に、2枚のアルミ合金板を通過した陽子、中性子のエネルギーを示している。
【0028】
図4Aに示すように、空間内を真空とした場合には、2枚のアルミ合金板を通過した陽子のエネルギーの最大値は140[MeV]に達している。これに対して図4Bに示すように、空間内に水を充填した場合には、2枚のアルミ合金板を通過した陽子のエネルギーの最大値は100[MeV]程度である。
【0029】
図5A図5Bは、照射する陽子のエネルギーを200[MeV]とした場合において、2枚のアルミ合金板の間の空間内を真空とした場合、及び空間内に水を充填した場合に、2枚のアルミ合金板を通過した陽子、中性子のエネルギーを示している。
【0030】
図5Aに示すように、空間内を真空とした場合には、2枚のアルミ合金板を通過した陽子のエネルギーの最大値は190[MeV]に達している。これに対して図5Bに示すように、空間内に水を充填した場合には、2枚のアルミ合金板を通過した陽子のエネルギーの最大値は140[MeV]程度である。即ち、2枚のアルミ合金板の間の空間内に水を充填することにより、2枚のアルミ合金板を通過する陽子のエネルギーを著しく低減できていることが理解される。
【0031】
図6は、エネルギー分布が1~200[MeV]で一様な陽子を、2枚のアルミ合金板に照射したときの、2枚のアルミ合金板を通過した陽子の割合を示すグラフである。図6に示す曲線S1は2枚のアルミ合金板の間の空間内を真空とした場合、曲線S2は空間内に水を充填した場合を示している。
【0032】
図6から理解されるように、空間内が真空の場合(曲線S1)には、100[MeV]以上で陽子はほとんど減少していない。つまり、縦軸に示す「進入陽子の割合」がほぼ1.0(100%)となっている。これに対して、空間内に水を充填している場合には、140[MeV]以上の陽子は存在せず、それ以下のエネルギーでも0.8(80%)以下になっていることが理解される。即ち、2枚のアルミ合金板(図1に示す与圧壁11及び防護壁12)で囲まれる2枚のアルミ合金板の間の空間(図1に示す外壁空間15)内に水を充填することにより、外壁空間15内を通過する陽子の数、及び陽子のエネルギーが減衰している。
【0033】
次に、図7図8図9を参照して、外壁空間15内に水を充填する実施例について説明する。
【0034】
[第1の実施例]
図7は、外壁空間15内に水を充填する第1の実施例を示す説明図である。図中、ハッチングで示す領域は、水を充填している領域を示している。第1の実施例では、図7に示すように外壁空間15内の全体に水を充填する。即ち、宇宙施設100の内部空間14の周囲全体に水を充填することにより、外部空間の全方向から照射される宇宙放射線の進入を抑制することができる。
【0035】
[第2の実施例]
図8は、外壁空間15内に水を充填する第2の実施例を示す説明図である。第2の実施例では、図8に示すように外壁空間15内を周囲方向に沿って複数の分割区域に区分する。具体的には、図8に示すように、円筒形状を有する宇宙施設の、軸方向に伸びる複数(図では12枚)の仕切板17を設置して、外壁空間15内を円周方向に沿って12個の分割区域18に区分する。
【0036】
このうち、宇宙放射線Raが照射される方向に存在する分割区域18内に、水を充填する。図8に示す例では、連続する3つの分割区域18-1、18-2、18-3に水を充填する例を示している。即ち、外壁空間15を複数の分割区域18に区分し、分割区域18のうち、少なくとも一つの分割区域18に、水を充填する。このような構成とすることにより、外壁空間15の容量に対して、貯留する水量が少ない場合でも、宇宙施設100に照射される宇宙放射線Raを効率良く遮蔽することができる。即ち、宇宙放射線が到来する方向を予め認識し、この到来方向を向く分割区域18内に水を充填することにより、少ない水量で宇宙放射線を減衰することができる。なお、水を充填する分割区域18は3個に限定されるものではなく、2個以下、或いは4個以上であってもよい。
【0037】
また、水を充填する分割区域18を、図1に示すように、宇宙施設100が飛行する方向を中心として所定の角度となる範囲に設定してもよい。例えば、所定の角度を150°とした場合には、宇宙施設100の飛行方向を中心として150°となる範囲の分割区域18に水を充填してもよい。即ち、宇宙施設100は円筒形状をなし、この円筒形状の径方向における断面の、宇宙施設100の進行方向(飛行方向)を基準とした所定角度の範囲となる外壁空間15に水を充填してもよい。
【0038】
[第3の実施例]
図9は、外壁空間15内に水を充填する第3の実施例を示す説明図である。第3の実施例では、図9に示すように、外壁空間15内の与圧壁11と防護壁12との間に、中間壁13を設けることにより、外壁空間15内を径方向に2分割する。即ち、中間壁13は、与圧壁11と防護壁12との間を区分する。与圧壁11と中間壁13との間の空間を第1の空間31とし、中間壁13と防護壁12との間の空間を第2の空間32とする。
【0039】
更に、前述した第2の実施例と同様に、仕切板17を設置することにより、第1の空間31及び第2の空間32内を、周囲方向に沿って複数の分割区域18に区分する。
【0040】
このうち、宇宙放射線Raが照射される方向に存在する分割区域18内に、水を充填する。図9に示す例では、4つの分割区域18-11、18-12、18-13、18-14に水を充填する例を示している。即ち、与圧壁11と防護壁12との間を区分する中間壁13を更に備え、与圧壁11と中間壁13で区分される第1の空間31、及び中間壁13と防護壁12で区分される第2の空間32をそれぞれ複数の分割区域18に区分し、第1の空間31の分割区域、及び第2の空間32の分割区域のうちの少なくとも一つの分割区域18に水を充填する。
【0041】
このような構成とすることにより、水を充填する層が厚い領域、薄い領域を適宜設定することができ、より多くの宇宙放射線Raが照射される領域に水を充填することができる。このため、外壁空間15内に貯留する水量が少ない場合でも、宇宙施設100に照射される宇宙放射線Raを効率良く遮蔽することができる。
【0042】
このように、本実施形態に係る隔壁構造は、宇宙空間に設置された宇宙施設100を、外部空間から遮蔽する隔壁構造であって、宇宙施設100の内部空間14が所定の空気圧となるように、宇宙施設100の周囲を封密的に覆う与圧壁11と、与圧壁11の外周側に、与圧壁11から間隔を開けて設けられ、与圧壁11の外周を防護する防護壁12と、を備え、与圧壁11と防護壁12との間に形成された外壁空間15の少なくとも一部に、水を充填する。
【0043】
このため、宇宙施設100の外部から宇宙施設100の内部空間14に進入する宇宙放射線のエネルギーを低減することができ、内部空間14で使用する電子機器に生じる誤動作、及び素子の焼損を防止することができる。
【0044】
本実施形態では、与圧壁11と防護壁12で覆われる外壁空間15を複数の分割区域18に区分し、少なくとも一つの分割区域18に水を充填する。このため、宇宙施設100の周囲で、宇宙放射線が照射される方向を特定し、この方向に存在する分割区域18に水を充填することにより、充填する水の量が少なく外壁空間15内全体に水を充填できない場合であっても、効率よく宇宙放射線のエネルギーを低減することができる。
【0045】
本実施形態では図1に示したように、宇宙施設100は円筒形状をなし、円筒形状の径方向における断面の、宇宙施設100の進行方向を基準とした所定角度(例えば、150°)の範囲となる外壁空間15に水を充填する。即ち、宇宙施設100の進行方向を中心として所定角度となる分割区域18に水を充填することにより、より多くの宇宙放射線が照射される方向からの放射線を低減することができる。
【0046】
本実施形態では、図9に示したように、与圧壁11と防護壁12との間を区分する中間壁13を備えており、与圧壁11と中間壁13の間の第1の空間31、及び中間壁13と防護壁12の間の第2の空間32をそれぞれ複数の分割区域18に区分し、第1の空間31の分割区域18、及び第2の空間32の分割区域18のうちの少なくとも一つに水を充填する。このため、円筒形状をなす宇宙施設100の径方向において、水を充填する厚みを変化させることができ、宇宙放射線の進入を低減することが可能になる。
【0047】
本実施形態では、外壁空間15を、宇宙施設100内で使用する水を貯留する貯水タンクとしている。このため、宇宙施設100内での必需品となる生活用水を、宇宙放射線を遮蔽するための水として使用することができ、宇宙施設100を利用する際に要するコストを低減することが可能になる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0049】
11 与圧壁
12 防護壁
13 中間壁
14 内部空間
15 外壁空間
17 仕切板
18 分割区域
31 第1の空間
32 第2の空間
100 宇宙施設
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9