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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20250327BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
G03G21/00 530
G03G15/20 555
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021112032
(22)【出願日】2021-07-06
(65)【公開番号】P2023008457
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2024-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓正
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聖治
(72)【発明者】
【氏名】岡本 潤
(72)【発明者】
【氏名】池田 保
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良州
(72)【発明者】
【氏名】今田 高広
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-066500(JP,A)
【文献】特開2014-081488(JP,A)
【文献】特開2013-178487(JP,A)
【文献】特開2018-180483(JP,A)
【文献】特開2007-171251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0272739(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
13/34
15/00
15/20
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接触して記録媒体を通過させるニップ部を形成する2つの回転体と、前記2つの回転体のうちの少なくとも一方を加熱する加熱源を有する加熱装置と、
前記加熱装置に送風する送風装置と、
前記2つの回転体のうちの少なくとも一方の温度を検知する温度検知部と、
前記ニップ部に前記記録媒体が存在するか否かを検知する記録媒体検知部と、
画像形成装置本体に開閉可能に設けられたカバーと、
前記カバーの開閉を検知する開閉検知部を備え、
異常により前記加熱源の発熱が停止した後、前記開閉検知部によって前記カバーの開放が検知されていない状態において、前記送風装置が前記加熱装置へ送風すると共に、前記記録媒体検知部によって前記ニップ部に前記記録媒体が存在しないことが検知された場合は、前記2つの回転体が回転し、
前記開閉検知部によって前記カバーの開放が検知される前に、前記温度検知部の検知温度があらかじめ設定された閾値以下となった場合は、前記送風装置の風量を低下させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記送風装置の送風と前記2つの回転体の回転は、前記開閉検知部によって前記カバーの開放が検知されるまで継続し、前記開閉検知部によって前記カバーの開放が検知された場合、前記送風装置の送風を停止すると共に、前記2つの回転体が回転する場合は、各回転体の回転を停止する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記開閉検知部によって前記カバーの開放が検知される前に、前記温度検知部の検知温度があらかじめ設定された第1閾値以下となった場合は、前記送風装置の風量を低下させ、
前記開閉検知部によって前記カバーの開放が検知される前に、前記温度検知部の検知温度が前記第1閾値よりも低い温度に設定された第2閾値以下となった場合は、前記送風装置の送風を停止すると共に、前記2つの回転体が回転する場合は、各回転体の回転を停止する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
異常により前記加熱源の発熱が停止した後に回転する前記2つの回転体の回転速度は、通常時に記録媒体が前記ニップ部を通過するときの前記2つの回転体の回転速度よりも遅い請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記送風装置は、最小記録媒体通過領域の幅方向外側において前記2つの回転体の少なくとも一方へ送風する請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
記温度検知部によって検知される温度は、最小記録媒体通過領域の幅方向外側において検知される前記2つの回転体の少なくとも一方の温度である請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記加熱装置は、
第1回転体と、
前記第1回転体の外周面に接触して記録媒体を通過させるニップ部を形成する第2回転体と、
前記第1回転体を加熱する加熱源を備える定着装置である請求項1から6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置の一例として、無端状ベルト又はローラなどの一対の回転体によって用紙を挟みながら加熱し、用紙上の画像を定着させる定着装置が知られている。
【0003】
定着装置においては、用紙が通過しない非通紙領域の熱が用紙によって奪われにくい傾向にあるため、複数枚の用紙を連続通紙した場合に、非通紙領域における回転体の熱が次第に蓄積し、温度上昇が顕著となる問題がある。このような問題に対して、従来の画像形成装置においては、定着装置の温度上昇を抑制するため、ファンなどの送風装置を用いて回転体の非通紙領域へ送風することが行われている(例えば特許文献1:特開2012-118487号公報参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の画像形成装置においては、画像形成装置の駆動が停止すると、送風装置の送風動作も停止するため、画像形成装置の駆動停止後に、定着装置へ送風することができず、定着装置の冷却を十分に行えない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、互いに接触して記録媒体を通過させるニップ部を形成する2つの回転体と、前記2つの回転体のうちの少なくとも一方を加熱する加熱源を有する加熱装置と、前記加熱装置に送風する送風装置と、前記2つの回転体のうちの少なくとも一方の温度を検知する温度検知部と、前記ニップ部に前記記録媒体が存在するか否かを検知する記録媒体検知部と、画像形成装置本体に開閉可能に設けられたカバーと、前記カバーの開閉を検知する開閉検知部を備え、異常により前記加熱源の発熱が停止した後、前記開閉検知部によって前記カバーの開放が検知されていない状態において、前記送風装置が前記加熱装置へ送風すると共に、前記記録媒体検知部によって前記ニップ部に前記記録媒体が存在しないことが検知された場合は、前記2つの回転体が回転し、前記開閉検知部によって前記カバーの開放が検知される前に、前記温度検知部の検知温度があらかじめ設定された閾値以下となった場合は、前記送風装置の風量を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、異常発生後においても、加熱装置の冷却を効果的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】定着装置における通紙領域を示す図である。
図3】送風装置の構成を示す平面図である。
図4】送風装置の構成を示す側面図である。
図5】制御システムを示すブロック図である。
図6】画像形成装置に設けられたカバーと、その開閉を検知する開閉検知部を示す図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る送風ファン及び回転体の各動作のタイミングチャートを示す図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る送風ファン及び回転体の制御方法のフローチャートを示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る送風ファン及び回転体の各動作のタイミングチャートを示す図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る送風ファン及び回転体の制御方法のフローチャートを示す図である。
図11】本発明の第3実施形態に係る送風ファン及び回転体の各動作のタイミングチャートを示す図である。
図12】送風ファン及び温度センサを定着部材側に配置した例を示す図である。
図13】送風ファン及び温度センサを定着部材側と加圧部材側の両方に配置した例を示す図である。
図14】本発明を適用可能な他の定着装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0009】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字及び図形などの意味を持つ画像を形成するだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を形成することも意味する。まず、図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0010】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置1は、用紙などのシート状の記録媒体に画像を形成する画像形成部2と、記録媒体に画像を定着させる定着部3と、記録媒体を画像形成部2へ供給する記録媒体供給部4と、記録媒体を装置外へ排出する記録媒体排出部5を備えている。
【0011】
画像形成部2には、表面に画像を担持する像担持体としての感光体6と、感光体6の表面を帯電させる帯電部材7と、感光体6の表面に静電潜像を形成する露光部材8と、感光体6の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像剤供給部材9と、感光体6の表面を清掃するクリーニング部材10と、記録媒体に画像を転写する転写部材11が設けられている。
【0012】
定着部3においては、転写された画像を記録媒体に定着させる定着装置20が設けられている。定着装置20は、ハロゲンヒータなどの加熱源によって加熱される定着部材21と、定着部材21に対して相対的に加圧される加圧部材22などを備えている。定着部材21及び加圧部材22は、ローラ又は無端状ベルトなどの回転体であり、互いに接触してニップ部を形成している。
【0013】
記録媒体供給部4には、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙カセット12と、給紙カセット12から用紙Pを送り出す給紙ローラ13が設けられている。以下、「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は、紙(用紙)だけでなくOHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。また、「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙及びアート紙など)、トレーシングペーパなども含まれる。
【0014】
記録媒体排出部5には、用紙Pを画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ14と、排紙ローラ14によって排出された用紙Pを載置する排紙トレイ15が設けられている。
【0015】
次に、図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置1の印刷動作について説明する。
【0016】
印刷動作が開始されると、画像形成部2において、感光体6が回転を開始し、帯電部材7によって感光体6の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは、端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光部材8が感光体6の表面を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して、感光体6の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像剤供給部材9からトナーが供給され、感光体6上にトナー画像が形成される。
【0017】
感光体6上に形成されたトナー画像は、感光体6の回転に伴って感光体6と転写部材11とが接触する転写ニップに至り、転写ニップにおいて用紙Pに転写される。この用紙Pは、記録媒体供給部4から供給されたものである。記録媒体供給部4においては、給紙ローラ13が回転することにより、給紙カセット12に収容されている用紙Pが1枚ずつ送り出される。送り出された用紙Pは、上記転写ニップに至るまでにタイミングローラ対16に接触し、一旦搬送が停止される。その後、用紙Pは、タイミングローラ対16によって感光体6上のトナー画像とタイミングを合わせて転写ニップへ搬送される。そして、転写ニップにおいて、感光体6上のトナー画像が用紙Pに転写される。また、トナー画像の転写が行われた後、感光体6上に残留するトナーは、クリーニング部材10によって除去される。
【0018】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置20へ搬送され、定着部材21と加圧部材22との間(ニップ部)に進入する。そして、用紙Pは、定着部材21及び加圧部材22によって挟持されながら搬送されることにより、用紙P上のトナー画像が、加熱及び加圧され、用紙Pに定着される。その後、用紙Pは、排紙ローラ14によって排紙トレイ15に排出され、一連の印刷動作が完了する。
【0019】
図2は、本実施形態に係る定着装置における通紙領域を示す図である。
【0020】
図2に示されるように、本実施形態に係る定着装置20においては、少なくとも2種類の幅W1,W2の用紙P1,P2が通紙可能に構成されている。この例においては、幅が異なる2種類の用紙P1,P2が通紙される場合が示されているが、通紙可能な用紙の種類は、3種類以上であってもよい。また、ここでいう用紙の幅とは、用紙が搬送される搬送方向Yとは直交又は交差する方向であって、定着部材21及び加圧部材22の長手方向又は回転軸方向と同じ方向における用紙の幅を意味する。
【0021】
また、図2に示されるように、本実施形態に係る定着装置20においては、いずれのサイズの用紙であっても良好な定着処理が行えるように、加熱源23が、最大幅W1の用紙P1が通過する最大通紙領域(最大記録媒体通過領域)Aの幅方向全体に渡って配置されている。本実施形態における加熱源23は、定着部材21の内側に配置されるハロゲンヒータであるが、カーボンヒータ又はセラミックヒータなどの他の輻射加熱式ヒータであってもよい。また、加熱源として、IH(電磁誘導加熱)方式の加熱源を用いてもよい。また、加熱源は、定着部材21の内側のほか、加圧部材22の内側に設けられていてもよい。
【0022】
このように、本実施形態においては、加熱源23が最大通紙領域Aの幅方向全体に渡って配置されているため、各種用紙を全体的に均一に加熱でき、良好な定着処理を行うことが可能である。しかしながら、最大幅の用紙P1よりも小さい最小幅の用紙P2が通紙される場合は、その用紙P2が通過しない非通紙領域B(通紙領域Cの幅方向外側の領域)において、定着部材21及び加圧部材22が温度上昇しやすくなる。すなわち、非通紙領域Bにおいては、通紙に伴う熱の消費がされにくく、蓄熱しやすい傾向にあるため、最大幅よりも小さい幅の用紙が複数枚連続通紙された場合は、非通紙領域Bにおける温度上昇が顕著となる。その結果、定着部材21又は加圧部材22の温度が耐熱温度を超える虞がある。そこで、本実施形態においては、非通紙領域Bにおける定着部材21及び加圧部材22の温度上昇を抑制するため、下記のような送風装置(冷却装置)が設けられている。
【0023】
図3及び図4に、本実施形態に係る送風装置(冷却装置)の構成を示す。
【0024】
図3に示されるように、本実施形態においては、加圧部材22の長手方向両端側にそれぞれ送風装置30が配置されている。具体的に、各送風装置30は、気流を発生させる気流発生部材としての送風ファン31と、送風ファン31から加圧部材22の外周面に向かって気流を案内する流路形成部材としてのダクト32を備えている。各ダクト32の送風口32aは、非通紙領域Bにおいて、加圧部材22の外周面に対向又は近接するように配置されている。なお、図3に示される非通紙領域Bは、図2に示される最大幅よりも小さい幅W2の用紙P2が通紙される際の非通紙領域であり、非通紙領域の一例を示すものである。従って、通紙される用紙の種類に応じて幅が異なる複数の非通紙領域が存在する場合は、選択した非通紙領域の位置及び幅に応じてダクト32の送風口32aの大きさ及び位置を適宜設定すればよい。
【0025】
このように、本実施形態においては、各ダクト32の送風口32aが、非通紙領域Bにおける加圧部材22の外周面に対向又は近接するように配置されているため、各送風ファン31の回転により気流が発生すると、各ダクト32の送風口32aから非通紙領域Bにおける加圧部材22の外周面へ気流が吹き付けられる。これにより、加圧部材22の非通紙領域Bが冷却される。また、加圧部材22の非通紙領域Bが冷却されることにより、加圧部材22と接触する定着部材21の非通紙領域Bも間接的に冷却される。その結果、定着部材21及び加圧部材22のそれぞれの非通紙領域Bにおける温度上昇が抑制される。特に、図3に示される例のように、各ダクト32の送風口32aが、送風方向の下流側に向かって広がるように形成されている場合は、広い範囲に渡って気流を吹き付けることができるので、効果的な冷却が可能である。なお、本実施形態においては、図4に示されるように、各送風装置30が、ニップ部Nよりも用紙搬送方向Yの下流側において送風するように配置されされているが、各送風装置30は、ニップ部Nよりも用紙搬送方向Yの上流側において送風するように配置されていてもよい。また、送風ファンに代えて、吸引ファンを気流発生部材として用いてもよい。
【0026】
ところで、画像形成装置の駆動中に紙詰まり又は故障などの異常が発生した場合は、一般的に、画像形成装置の駆動が一旦停止される。このため、画像形成部における作像動作、記録媒体供給部などにおける用紙搬送動作、定着部における定着動作、及び、記録媒体排出部における排紙動作などの各種動作は、途中であったとしても一旦停止される。
【0027】
通常は、その後、使用者又はサービスマンなどの作業者による復旧作業が行われることになる。その際、作業者は、詰まった用紙の除去、あるいは、部品交換などのために、画像形成装置内に手を差し入れて復旧作業を行うが、画像形成装置の駆動が停止し、定着装置が備える定着部材及び加圧部材の回転が停止した直後は、定着装置及びその周辺が熱くなっている可能性がある。そのため、作業者が復旧作業を開始するまでに定着装置を冷却することが好ましい。しかしながら、これまでの画像形成装置においては、画像形成装置の駆動が停止すると、冷却装置の駆動も停止するため、定着装置を効果的に冷却することができなかった。
【0028】
そこで、本発明に係る画像形成装置においては、異常により画像形成装置の駆動が停止した後であっても、定着装置を効果的に冷却できるように、次のような制御システムが採用されている。
【0029】
図5は、本実施形態に係る送風装置及び定着装置の制御システムを示すブロック図である。
【0030】
図5に示されように、本実施形態に係る画像形成装置は、送風ファン31を回転させる駆動源33と、定着部材21及び加圧部材22を回転させる駆動源26を制御する制御部40を備えている。制御部40は、例えば、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などを有するマイクロコンピュータであり、送風ファン31の駆動源33、定着部材21及び加圧部材22の駆動源26の制御のほか、画像形成部における作像動作、記録媒体供給部における給紙動作、定着部における定着動作、及び、記録媒体排出部における排紙動作などの各種動作の制御も行う。
【0031】
制御部40は、送風ファン31の送風動作(回転)の開始及び停止を制御すると共に、回転数も制御することによって風量(回転速度)の調整も行う。ここで、「風量」とは、送風ファン31が単位時間当たりに移動させる空気量のことであり、風量Q(m/h)は、通過風速V(m/s)と通過面積A(m)の乗数で表される。具体的に、風量は、熱線式風速計又はベーン式風速計などを用いて計測できる。また、制御部40は、定着部材21及び加圧部材22の回転の開始及び停止に加え、回転速度の制御も行う。
【0032】
図5に示されるように、制御部40は、温度検知部70の検知温度と、記録媒体検知部60の検知信号と、開閉検知部50の検知信号に基づいて上記各駆動源33,26を制御する。
【0033】
温度検知部70は、図3に示される通紙領域C及び非通紙領域Bのそれぞれに配置された各温度センサ24,25を有している。一方の温度センサ24は、少なくとも最小通紙領域(最小記録媒体通過領域)の幅方向外側で、かつ、最大通紙領域(最大記録媒体通過領域)の幅方向内側に配置され、他方の温度センサ25は、少なくとも最小通紙領域の幅方向内側に配置されていればよい。ここで、通紙領域の「幅方向内側」とは、通紙領域に対してその幅方向(図3における矢印X方向)に直交する方向に存在する空間を意味する。これに対して、通紙領域の「幅方向外側」とは、通紙領域に対してその幅方向に直交する方向に存在する空間の外側の空間を意味する。
【0034】
また、各温度センサ24,25は、加圧部材22の外周面に対して非接触に対向配置されている(図4参照)。この場合、各温度センサ24,25は、加圧部材22近傍の雰囲気温度を検知する。なお、各温度センサ24,25は、加圧部材22の外周面に接触し、加圧部材22の表面温度を検知する接触式の温度センサでもよい。
【0035】
記録媒体検知部60は、図4に示される定着入口センサ61及び定着出口センサ62を有している。定着入口センサ61は、ニップ部Nの用紙搬送方向Yの上流側近傍において用紙Pを検知し、定着出口センサ62は、ニップ部Nの用紙搬送方向Yの下流側近傍において用紙Pを検知する。制御部40は、これらのセンサ61,62の少なくとも一方の検知信号に基づいて、用紙Pがニップ部Nに存在するか否かを判定する。すなわち、定着入口センサ61及び定着出口センサ62の少なくとも一方によって用紙Pが検知されたタイミングと、用紙Pの長さ及び搬送速度から、制御部40は、用紙Pがニップ部Nを通過したか否か(用紙Pがニップ部Nに存在するか否か)を判定することが可能である。定着入口センサ61及び定着出口センサ62は、用紙に対して接触することにより検知する接触式のセンサであってもよいし、用紙に対して接触しないで検知する非接触式のセンサであってもよい。
【0036】
開閉検知部50は、図6に示される画像形成装置本体100に設けられたカバー18の開閉を検知するセンサである。開閉検知部50は、例えば、カバー18が開放されたときに遮光部材が退避することにより光を透過して信号を出力する透過型フォトセンサ、あるいは、スプリング及びヒンジレバーを備えたアクチュエータの動作を感知するマイクロスイッチなどである。また、開閉検知部50は、カバー18が開放された状態を直接的に検知するものに限らず、カバー18が閉鎖された状態を検知することにより、カバーの18の開放状態を間接的に検知するものであってもよい。すなわち、開閉検知部50は、カバー18の開放状態及び閉鎖状態の少なくとも一方を検知できればよい。
【0037】
図7は、送風ファンの動作、定着装置が備える各回転体(定着部材及び加圧部材)の動作のタイミングチャートを示す図である。
【0038】
図7において、(a)は定着装置の非通紙領域における温度、(b)は定着装置の通紙領域における温度、(c)は送風ファンの作動状態(出力量)、(d)はニップ部に用紙が存在しない場合の定着部材及び加圧部材の回転動作、(e)はニップ部に用紙が存在する場合の定着部材及び加圧部材の回転動作を示す。通紙領域及び非通紙領域において検知される定着装置の温度は、加圧部材22の温度でもよいし、定着部材21の温度でもよい。
【0039】
また、図7において、横軸上のタイミング(1)は、画像形成装置が通常の作像動作を行っている状態から、異常により画像形成装置の駆動が停止し、定着装置が備える加熱源への電力供給及び各回転体(定着部材、加圧部材)の回転が停止したタイミングを示す。また、タイミング(2)は、作業者が復旧作業のために画像形成装置本体の上記カバー18を開けた際に、カバー18の開放が上記開閉検知部50によって検知されたタイミングを示す。
【0040】
以下、図7に示されるタイミングチャートと、図8に示されるフローチャートに基づき、本実施形態に係る送風装置30及び定着装置20の制御方法について説明する。
【0041】
本実施形態に係る画像形成装置おいて、駆動中に紙詰まり又は故障などの異常が発生した場合は、一般的な画像形成装置と同様、画像形成装置の駆動が一旦停止し、画像形成装置の各種動作が停止する。具体的に、異常により停止する各種動作には、画像形成部における作像動作、記録媒体供給部における給紙動作、定着部における定着動作、及び、記録媒体排出部における排紙動作などが含まれる。また、異常により停止する定着動作には、加熱源への給電(加熱源の発熱)のほか、定着部材及び加熱部材の回転なども含まれる。
【0042】
ここで、従来の画像形成装置においては、異常により画像形成装置の駆動が停止すると、送風ファンの駆動(回転)を含む種々の駆動が停止する。これに対して、本実施形態に係る画像形成装置においては、従来とは異なり、異常により画像形成装置の各種動作が停止した場合であっても(図8のSTEP1)、上記制御部40が送風ファン31の送風動作(回転)を継続するように制御する(図8のSTEP2)。
【0043】
さらに、本実施形態に係る画像形成装置においては、異常により画像形成装置の駆動が停止した後、上記記録媒体検知部60(定着入口センサ61及び定着出口センサ62)によってニップ部に用紙が存在するか否かが検知される(図8のSTEP3)。その結果、記録媒体検知部60によってニップ部に用紙が存在しないことが検知された場合は、制御部40が定着部材21及び加圧部材22の回転を開始するように制御する(図8のSTEP4)。この場合、定着部材21及び加圧部材22が回転しながら、送風ファン31による送風が継続される。
【0044】
一方、記録媒体検知部60によってニップ部に用紙が存在することが検知された場合は、定着部材21及び加圧部材22の回転は開始されない。従って、この場合は、定着部材21及び加圧部材22を回転させずに、送風ファン31の送風による冷却のみを行う。
【0045】
その後、上記温度検知部70によって検知された温度のうち、非通紙領域における加圧部材22の温度が、あらかじめ設定された閾値T以下となった場合は(図7参照)、制御部40が、送風ファン31の回転速度を遅くし、風量を次第に低下させる(図8のSTEP5~7)。
【0046】
その後、送風ファン31の送風動作、ニップ部に用紙が無い場合の定着部材21及び加圧部材22の回転動作は、カバー18の開放が上記開閉検知部50によって検知されるまで継続される(図8のSTEP8)。一方、カバー18の開放が開閉検知部50によって検知された場合は、制御部40によって送風ファン31の送風動作(回転)と定着部材21及び加圧部材22の回転動作が停止され(図8のSTEP9)、異常発生後の送風装置及び定着装置の制御が終了する。
【0047】
上記のように、本発明の実施形態においては、異常により画像形成装置の駆動が停止した後(異常により定着装置20が備える加熱源23の発熱が停止した後)であっても、送風ファン31の送風動作(回転)が継続されるため、加圧部材22の非通紙領域Bに気流が吹き付けられる。これにより、画像形成装置の駆動停止後(定着装置が備える加熱源23の発熱停止後)においても、定着部材21及び加圧部材22の冷却を効果的に行うことができ、その後、作業者が復帰作業を行う際の安全性が向上する。さらに、ニップ部に用紙が存在しない場合は、送風ファン31による送風に加え、定着部材21及び加圧部材22を回転させることにより、定着部材21及び加圧部材22の冷却をより効果的に行うことができる。一方、ニップ部に用紙が存在する場合は、定着部材21及び加圧部材22を回転させないことにより、画像形成装置の搬送動作が停止した状態で用紙が定着装置から搬送されることによる紙詰まりが生じないようにする。
【0048】
異常停止後(異常による加熱源23の発熱停止後)の定着部材21及び加圧部材22の回転速度は、通常時に用紙がニップ部を通過するときの定着部材21及び加圧部材22の回転速度よりも遅く設定されていることが好ましい。また、通常時の定着部材21及び加圧部材22の回転速度が複数設定されている場合は、その中でも最も遅い回転速度よりも、異常停止後の回転速度が遅く設定されることが好ましい。通常の印刷稼動時においては、定着部材21及び加圧部材22が比較的高速に回転するため、異常停止後においても定着部材21及び加圧部材22を同様に高速に回転させると、回転距離が無駄に多くなり、定着装置の寿命を縮めることになるからである。このため、異常停止後の定着部材21及び加圧部材22の回転速度を遅くすることにより、無駄な回転を抑制でき、定着装置の寿命が短くなるのを防止できる。
【0049】
また、本実施形態においては、温度検知部70によって検知された知温度があらかじめ設定された閾値T以下となった場合は、風量を低下させることにより、省エネ性が向上する。すなわち、検知温度があらかじめ設定された閾値T以下となった場合は、作業者が高温部に接触する虞が低減し、多い風量のまま送風を行う必要が無くなるので、風量を低下させることにより、送風ファン31の駆動(回転)に必要な電力を削減できる。このように、本実施形態に係る構成によれば、安全性の向上に加え、省エネ性の向上も図れる。
【0050】
ここで、上記図7に示される例においては、検知温度が閾値T以下になった場合、送風ファン31の風量が一定の割合で連続的に低下するように制御されるが、風量の低下は連続的である以外に、段階的又は断続的であってもよい。また、風量の低下は、必ずしも一定の割合で行う必要は無く、検知温度などに基づいて風量を変動的に低下させてもよい。また、このような風量の制御は、送風ファン31の回転速度を変化させるほか、シャッタなどにより上記ダクト32の開口面積を変化させることによっても可能である。
【0051】
続いて、上述の実施形態(第1実施形態)とは異なる本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、主に上述の実施形態とは異なる部分について説明し、それ以外の部分については基本的に同様の構成であるので適宜説明を省略する。
【0052】
図9及び図10は、本発明の第2実施形態に係る制御方法を示すタイミングチャート及びフローチャートである。
【0053】
図9に示されるように、本発明の第2実施形態においては、検知温度の閾値として、2つの閾値T1,T2があらかじめ設定されている。一方の閾値T1は、上記実施形態において設定された閾値と同じであり、送風ファン31の風量を低下させるタイミングの基準となる第1閾値(第1基準温度)である。もう一方の閾値T2は、第1閾値よりも低い温度に設定された閾値であり、送風ファン31の送風動作(回転)と定着部材21及び加圧部材22の回転を停止させるタイミングの基準となる第2閾値(第2基準温度)である。例えば、第2閾値T2は、定着部材21又は加圧部材22に対して万が一作業者が触れたとしても、安全性を確保できる温度に設定されている。
【0054】
本実施形態において、異常により画像形成装置の駆動が停止した後、送風ファン31の風量調整(風量低下)を行うまでの制御(図10のSTEP1~STEP7)は、基本的に上記第1実施形態の制御と同じである。すなわち、異常により画像形成装置の駆動が停止した後(定着装置が備える加熱源の発熱停止後)、送風ファン31による送風を継続し、さらに、ニップ部に用紙が存在しない場合は、定着部材21及び加圧部材22を回転させる。その後、温度検知部70によって検知された温度が第1閾値T1以下になった場合は、送風ファン31の風量を低下させる。
【0055】
その後、温度検知部70によって検知された温度が、第2閾値T2以下になった場合は、送風ファン31の送風動作(回転)を停止させる(図10のSTEP8~10)。また、定着部材21及び加圧部材22の回転が行われている場合は、これらの回転動作も併せて停止させる。これにより、第2実施形態おける異常発生後の一連の制御が終了する。なお、本実施形態において、温度検知部70によって検知された温度が第2閾値T2以下となる前に、開閉検知部50によってカバー18の開放が検知された場合は、そのタイミングで送風ファン31の送風動作(回転)と、定着部材21及び加圧部材22の回転動作を停止させる。
【0056】
このように、本発明の第2実施形態においては、温度検知部70によって検知された温度が第1閾値T1以下となった場合は、風量を低下させ、さらに、検知温度が第2閾値T2以下となった場合は、送風を停止することにより、省エネ性がより一層向上する。すなわち、カバー18が開放される前であっても、定着部材21又は加圧部材22の温度が送風を必要としない程度(第2閾値T2)まで低下した場合は、送風を停止させることにより、送風ファン31の駆動(回転)に必要な電力を削減できる。また、併せて定着部材21及び加圧部材22の回転も停止させることにより、これらに供給される消費電力の削減もできる。
【0057】
なお、本実施形態においては、上記第1実施形態と同じように、第1閾値T1及び第2閾値T2と比較される検知温度を、加圧部材22の非通紙領域における温度としているが、閾値と比較される検知温度は、加圧部材22の通紙領域における温度、あるいは、定着部材21の通紙領域又は非通紙領域における温度であってもよい。
【0058】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態においては、送風ファン31による送風が、異常による画像形成装置の駆動停止前から駆動停止後に亘って継続して行われているが(図7図9参照)、図11に示される本発明の第3実施形態のように、送風ファン31による送風は、画像形成装置の駆動停時又は駆動停止後に開始されてもよい。また、図11に示される例のように、ニップ部に用紙が介在しない場合の定着部材21及び加圧部材22の回転は、異常発生時に一旦停止させることなく、継続して行ってもよい。
【0059】
また、図12に示される例のように、各送風装置30及び各温度センサ24,25は、加圧部材22側ではなく、定着部材21側に配置されてもよい。この場合、異常による画像形成装置の駆動停止後、各送風装置30によって定着部材21の外周面へ送風される。
【0060】
さらに、図13に示される例のように、各送風装置30及び各温度センサ24,25は、定着部材21側及び加圧部材22側の両方に配置されてもよい。
【0061】
また、送風装置30によって送風される定着装置は、上記図3及び図4に示されるような構成に限らない。例えば、定着装置は、図14に示されような、定着回転体(第1回転体)としての無端状の定着ベルト81と、加圧回転体(第2回転体)としての加圧ローラ82と、加熱源としての板状のヒータ83と、ヒータ83を保持する加熱源保持部材としてのヒータホルダ84と、ヒータホルダ84を支持する支持部材としてのステー85を備える構成であってもよい。この場合、加圧ローラ82が定着ベルト81を介してヒータ83に圧接されることにより、定着ベルト81と加圧ローラ82との間にニップ部Nが形成される。このような定着装置80を備える画像形成装置においても、本発明を適用することにより、定着ベルト及び加圧ローラを効果的に冷却できる。
【0062】
また、本発明は、定着装置を冷却する場合に限らず、定着装置以外の加熱装置を冷却する場合においても適用可能である。例えば、本発明は、インクジェット式の画像形成装置において、用紙に吐出されたインクなどの液体を乾燥させるために用紙を加熱する乾燥装置(加熱装置)を冷却する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 画像形成装置
18 カバー
20 定着装置(加熱装置)
21 定着部材(第1回転体)
22 加圧部材(第2回転体)
23 加熱源
30 送風装置
31 送風ファン(気流発生部材)
32 ダクト(流路形成部材)
40 制御部
50 開閉検知部
60 記録媒体検知部
70 温度検知部
100 画像形成装置本体
N ニップ部
P 用紙(記録媒体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【文献】特開2012-118487号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14