(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-26
(45)【発行日】2025-04-03
(54)【発明の名称】高分子化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/038 20060101AFI20250327BHJP
C08F 212/02 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
G03F7/038 601
C08F212/02
(21)【出願番号】P 2021081707
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2023-04-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】増永 恵一
(72)【発明者】
【氏名】船津 顕之
(72)【発明者】
【氏名】小竹 正晃
(72)【発明者】
【氏名】井上 直也
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/017248(WO,A1)
【文献】特開2019-204048(JP,A)
【文献】特開2004-323704(JP,A)
【文献】特開2004-143281(JP,A)
【文献】特開2010-002633(JP,A)
【文献】国際公開第2011/115190(WO,A1)
【文献】特開2008-197606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
C08F 212/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学増幅ネガ型レジスト組成物に用いられる1種もしくは2種以上の繰り返し単位を含む高分子化合物の製造方法であって、
2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体を少なくとも1種以上重合させて前記高分子化合物を得る高分子化合物の製造方法であって、
前記2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体から得られる繰り返し単位のうちの少なくとも一種を、下記一般式(A2)で表される繰り返し単位A2とすることを特徴とする高分子化合物の製造方法。
【化1】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。A
1は、単結合、又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH
2-が-O-で置換されていてもよい。R
1は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。W
1は、水素原子、若しくは炭素数1~10の脂肪族ヒドロカルビル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、該脂肪族ヒドロカルビル基を構成する-CH
2-が、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-で置換されていてもよい。Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基若しくは飽和ヒドロカルビルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15の飽和ヒドロカルビル基又は置換基を有してもよいアリール基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。yは、0~2の整数である。uは、0又は1である。fは、0≦f≦5+2y-gを満たす整数である。gは、1~3の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学増幅型レジスト組成物及びそれを用いたレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。このうち、0.2μm以下のパターンの加工では、もっぱら酸を触媒とした化学増幅レジストが使用されている。また、露光源として紫外線、遠紫外線、電子線(EB)等の高エネルギー線が用いられており、特に超微細加工技術として利用されているEBリソグラフィーは、半導体製造用のフォトマスクを作製する際のフォトマスクブランクの加工方法としても不可欠となっている。
【0003】
酸性側鎖を有する芳香族骨格を多量に有するポリマー、例えばポリヒドロキシスチレンは、KrFエキシマレーザー用レジスト材料として有用であるが、波長200nm付近の光に対して大きな吸収を示すため、ArFエキシマレーザー用レジスト材料としては使用されなかった。しかし、ArFエキシマレーザーによる加工限界よりも小さなパターンを形成するための有力な技術であるEB用レジスト材料や、極端紫外線(EUV)用レジスト材料としては高いエッチング耐性が得られる点で重要な材料となっている。
【0004】
このようなフォトリソグラフィーに用いるレジスト組成物としては、露光部を溶解させてパターンを形成するポジ型及び露光部を残してパターンを形成するネガ型があり、それらは必要とするレジストパターンの形態に応じて使いやすい方が選択される。化学増幅ネガ型レジスト組成物は、通常、水性のアルカリ現像液に溶解する高分子化合物、露光光により分解されて酸を発生する酸発生剤、及び酸を触媒として高分子化合物間に架橋を形成して高分子化合物を前記現像液に不溶化させる架橋剤(場合によっては高分子化合物と架橋剤は一体化している)を含んでいるものや、高分子化合物の極性変化によって前記現像液に不溶化させるものを含んでいるものがあり、更に、通常、露光で発生した酸の拡散を制御するための塩基性化合物が加えられる。
【0005】
前記水性のアルカリ現像液に溶解する高分子化合物を構成するアルカリ可溶性単位としては、フェノール類に由来する単位が挙げられる。従来、このようなタイプのポジ型レジスト組成物やネガ型レジスト組成物は、特にKrFエキシマレーザー光による露光用として多数が開発されてきた。しかし、これらは、露光光が150~220nmの波長である場合にフェノール類に由来する単位が光の透過性を持たないことから、ArFエキシマレーザー光用のものとしては使用されなかった。ところが、近年、より微細なパターンを得るための露光方法であるEBやEUVといった短波長露光用のポジ及びネガ型レジスト組成物として再び注目されており、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4が報告されている。
【0006】
ところで、前記フォトリソグラフィーにおいて、レジスト感度やパターンプロファイルの制御のために、レジスト組成物に使用する酸発生剤や酸拡散制御剤である塩基性化合物の選択や組み合わせ、プロセス条件等の変更による種々の改善が検討されてきた。例えば、特許文献5及び特許文献6が報告されている。
【0007】
一方で、パターンの微細化が進む上で、現像後のレジスト残渣による欠陥が問題となり、スカム残渣やレジストパターン間でのブリッジの要因となることから、半導体製造プロセスにとって重要な歩留まり低下となる恐れがあり、欠陥低減の改善が強く望まれている。その改良処方として、特許文献7、特許文献8にポリマー中の未反応単量体を除去することや特許文献9、特許文献10ではろ過での除去方法が示されているが、ポリマー中の未反応単量体を除去する手法としては、特別な晶出工程や水洗分液等を用いることであるが、必要な成分まで取り除かれてポリマーの素性が変わってしまう恐れがあることや、収率の低下及び場合によってポリマーから低分子成分を狙い通り取り除くのが困難であるといった問題がある。
【0008】
また、カラムクロマトグラフィーやろ過では生産性の問題がある上、2~8量体程度のオリゴマーを完全に除去することは困難である。実質的にモノマー成分よりも現像残渣に影響のあるオリゴマー成分の除去が重要であり、特に14nmノード以降の半導体プロセスにおける先端リソグラフィーにおいてはこれらの手法は不十分であり、更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2006-201532号公報
【文献】特開2006-215180号公報
【文献】特開2008-249762号公報
【文献】特開2008-95009号公報
【文献】特開2016-65016号公報
【文献】特開2016-200805号公報
【文献】特開2003-270788号公報
【文献】特開2006-274276号公報
【文献】特開2011-70033号公報
【文献】特開2005-189789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、良好な解像性、パターン形状、ラインエッジラフネスを満足しつつ、マスク欠陥の起因となる現像残渣欠陥を抑制することができる化学増幅型レジスト組成物、及びこれを用いたレジストパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明では、
化学増幅型レジスト組成物であって、
(A)1種もしくは2種以上の繰り返し単位を含む高分子化合物であって、前記繰り返し単位のうちの少なくとも1種以上の繰り返し単位が、2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体が重合した繰り返し単位である高分子化合物
を含有するものである化学増幅型レジスト組成物を提供する。
【0012】
このようなものであれば、ポリマーの段階で精製を行うのではなく、重合前単量体の段階でオリゴマー成分の抑制された材料の重合物であるので、良好な解像性、パターン形状、ラインエッジラフネスを満足しつつ、マスク欠陥の起因となる現像残渣欠陥を抑制することができる化学増幅型レジスト組成物となる。
【0013】
また、前記化学増幅型レジスト組成物が化学増幅ポジ型レジスト組成物であり、かつ、
前記(A)成分が、下記一般式(A1)で表される繰り返し単位A1を含む高分子化合物であって、前記繰り返し単位A1が2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体が重合した繰り返し単位であることが好ましい。
【化1】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~6のアルコキシ基である。A
2は、単結合、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~11のアルキレン基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合又はエステル結合が介在していてもよい。sは、0又は1である。tは、0~2の整数である。cは、0≦c≦5+2t-eを満たす整数である。dは、0又は1である。eは、1~3の整数である。rは、0又は1である。Xは、eが1の場合には酸不安定基であり、eが2以上の場合には水素原子又は酸不安定基であるが、少なくとも1つは酸不安定基である。)
【0014】
また、前記化学増幅型レジスト組成物が化学増幅ネガ型レジスト組成物であり、かつ、
前記(A)成分が、下記一般式(A2)で表される繰り返し単位A2を含む高分子化合物であって、前記繰り返し単位A2が2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体が重合した繰り返し単位であることが好ましい。
【化2】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。A
1は、単結合、又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH
2-が-O-で置換されていてもよい。R
1は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。W
1は、水素原子、若しくは炭素数1~10の脂肪族ヒドロカルビル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、該脂肪族ヒドロカルビル基を構成する-CH
2-が、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-で置換されていてもよい。Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基若しくは飽和ヒドロカルビルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15の飽和ヒドロカルビル基又は置換基を有してもよいアリール基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。yは、0~2の整数である。uは、0又は1である。fは、0≦f≦5+2y-gを満たす整数である。gは、1~3の整数である。)
【0015】
これら露光により発生した酸の作用によって反応を起こす繰り返し単位は、レジスト組成物において欠陥に与える影響が大きい。したがって、これら繰り返し単位を与える重合性単量体中におけるオリゴマーを抑制することによって、本発明の効果を最大化することができる。
【0016】
また、前記(A)成分が、下記一般式(A3)で表される繰り返し単位A3を含む高分子化合物であってもよい。
【化3】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
11は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。A
1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH
2-が-O-で置換されていてもよい。sは、0又は1である。wは、0~2の整数である。aは、0≦a≦5+2w-bを満たす整数である。bは、1~3の整数である。)
【0017】
また、前記(A)成分が、下記一般式(A4)~(A11)で表される繰り返し単
位A4~A11から選ばれる少なくとも1つを含む高分子化合物であってもよい。
【化4】
(式中、R
Bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Z
1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、-O-Z
11-、-C(=O)-O-Z
11-又は-C(=O)-NH-Z
11-であり、Z
11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、又はフェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
2は、単結合又は-Z
21-C(=O)-O-であり、Z
21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Z
31-、-C(=O)-O-Z
31-又は-C(=O)-NH-Z
31-であり、Z
31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
4は、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。k
1及びk
2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Z
4が単結合のとき、k
1及びk
2は0である。R
21~R
38は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R
21及びR
22が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
23及びR
24、R
26及びR
27又はR
29及びR
30が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。R
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。Xa
-は、非求核性対向イオンである。)
【0018】
また、前記(A)成分が、下記一般式(A12)、(A13)及び(A14)で表される繰り返し単
位A12~A14から選ばれる少なくとも1つを含む高分子化合物であってもよい。
【化5】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
13及びR
14は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~8のアルコキシ基、又はハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~8のアルキルカルボニルオキシ基である。R
15は、アセチル基、アセトキシ基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~20のアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~20のアルコキシ基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~20のアシルオキシ基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数2~20のアルキルチオアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基、又はスルホニル基である。A
3は、単結合、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。o及びpは、それぞれ独立に、0~4の整数である。hは、0又は1の整数である。jは、0~5の整数である。kは、0~2の整数である。)
【0019】
本発明における(A)成分としては、このような高分子化合物を好適に用いることができる。
【0020】
また、前記化学増幅型レジスト組成物が化学増幅ポジ型レジスト組成物であり、かつ、
前記(A)成分が、前記一般式(A1)で表される繰り返し単位A1及び下記一般式(A3)で示される繰り返し単位A3を含み、かつ、下記一般式(A4)~(A11)で表される繰り返し単位A4~A11を含まない高分子化合物であることが好ましい。
【化6】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
11は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。A
1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH
2-が-O-で置換されていてもよい。sは、0又は1である。wは、0~2の整数である。aは、0≦a≦5+2w-bを満たす整数である。bは、1~3の整数である。)
【化7】
(式中、R
Bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Z
1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、-O-Z
11-、-C(=O)-O-Z
11-又は-C(=O)-NH-Z
11-であり、Z
11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、又はフェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
2は、単結合又は-Z
21-C(=O)-O-であり、Z
21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Z
31-、-C(=O)-O-Z
31-又は-C(=O)-NH-Z
31-であり、Z
31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
4は、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。k
1及びk
2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Z
4が単結合のとき、k
1及びk
2は0である。R
21~R
38は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R
21及びR
22が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
23及びR
24、R
26及びR
27又はR
29及びR
30が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。R
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。Xa
-は、非求核性対向イオンである。)
【0021】
本発明の化学増幅型レジスト組成物を化学増幅ポジ型レジスト組成物とする場合、(A)成分をこのようなものとすることができる。
【0022】
また、前記化学増幅型レジスト組成物が化学増幅ネガ型レジスト組成物であり、かつ、
前記(A)成分が、前記一般式(A2)で表される繰り返し単位A2及び下記一般式(A3)で示される繰り返し単位A3を含み、かつ、下記一般式(A4)~(A11)で表される繰り返し単位A4~A11を含まない高分子化合物であることが好ましい。
【化8】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
11は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。A
1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH
2-が-O-で置換されていてもよい。sは、0又は1である。wは、0~2の整数である。aは、0≦a≦5+2w-bを満たす整数である。bは、1~3の整数である。)
【化9】
(式中、R
Bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Z
1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、-O-Z
11-、-C(=O)-O-Z
11-又は-C(=O)-NH-Z
11-であり、Z
11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、又はフェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
2は、単結合又は-Z
21-C(=O)-O-であり、Z
21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Z
31-、-C(=O)-O-Z
31-又は-C(=O)-NH-Z
31-であり、Z
31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
4は、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。k
1及びk
2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Z
4が単結合のとき、k
1及びk
2は0である。R
21~R
38は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R
21及びR
22が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
23及びR
24、R
26及びR
27又はR
29及びR
30が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。R
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。Xa
-は、非求核性対向イオンである。)
【0023】
また、前記(A)成分が、下記一般式(A2-1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(A2-2)で表される繰り返し単位のいずれか又は両方、下記一般式(A3-1)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(A5-1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
【化10】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基若しくは飽和ヒドロカルビルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15の飽和ヒドロカルビル基又は置換基を有してもよいアリール基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。gは、1~3の整数である。bは、1~3の整数である。R
Bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Z
2は、単結合又は-Z
21-C(=O)-O-であり、Z
21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。R
23~R
25は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R
23及びR
24が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【0024】
本発明の化学増幅型レジスト組成物を化学増幅ネガ型レジスト組成物とする場合、(A)成分をこのようなものとすることができる。
【0025】
また、前記(A)成分の高分子化合物が2種以上の重合性単量体の重合物であり、かつ、全ての前記重合性単量体に含まれる2~6量体の残存オリゴマーが、合わせて5000ppm以下であることが好ましい。
【0026】
(A)成分がこのようなものであれば、現像残渣欠陥の発生をより確実に抑制することができる。
【0027】
また本発明の化学増幅型レジスト組成物は、更に、(B)酸発生剤を含むものであることが好ましい。
【0028】
このようなものとすれば、化学増幅型レジスト組成物としてより好適なものとなる。
【0029】
また本発明では、上記の化学増幅型レジスト組成物が塗布されたものであるフォトマスクブランクを提供する。
【0030】
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、特に、基板としてフォトマスクブランクスを用いたパターン形成に有用である。
【0031】
また本発明では、
(1)上記の化学増幅型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及び
(3)アルカリ現像液を用いて前記パターンを照射したレジスト膜を現像する工程
を含むレジストパターンの形成方法を提供する。
【0032】
このようなパターン形成方法であれば、本発明の化学増幅型レジスト組成物を用いているので、良好な解像性、パターン形状、ラインエッジラフネスを満足しつつ、マスク欠陥の起因となる現像残渣欠陥を抑制することができる。
【0033】
このとき、前記高エネルギー線を、ArFエキシマレーザー光、KrFエキシマレーザー光、極端紫外線又は電子線とすることが好ましい。
【0034】
高エネルギー線としては、このようなものを好適に用いることができる。
【0035】
また、前記基板の最表面を、クロム、ケイ素、タンタル、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン、及びスズの少なくとも一つを含む材料からなるものとすることが好ましい。
【0036】
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、基板の種類によることなく、現像残渣を低減することができる。
【0037】
また本発明では、
化学増幅型レジスト組成物に用いられる1種もしくは2種以上の繰り返し単位を含む高分子化合物の製造方法であって、
2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体を少なくとも1種以上重合させて前記高分子化合物を得る高分子化合物の製造方法を提供する。
【0038】
このようにすれば、ポリマーの段階で精製を行うのではなく、重合前単量体の段階でオリゴマー成分の抑制された材料を用いることで、良好な解像性、パターン形状、ラインエッジラフネスを満足しつつ、マスク欠陥の起因となる現像残渣欠陥を抑制することができる化学増幅型レジスト組成物に用いられる高分子化合物を製造することができる。
【0039】
また、前記2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体から得られる繰り返し単位のうちの少なくとも一種を、下記一般式(A1)で表される繰り返し単位A1とすることが好ましい。
【化11】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~6のアルコキシ基である。A
2は、単結合、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~11のアルキレン基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合又はエステル結合が介在していてもよい。sは、0又は1である。tは、0~2の整数である。cは、0≦c≦5+2t-eを満たす整数である。dは、0又は1である。eは、1~3の整数である。rは、0又は1である。Xは、eが1の場合には酸不安定基であり、eが2以上の場合には水素原子又は酸不安定基であるが、少なくとも1つは酸不安定基である。)
【0040】
また、前記2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体から得られる繰り返し単位のうちの少なくとも一種を、下記一般式(A2)で表される繰り返し単位A2とすることが好ましい。
【化12】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。A
1は、単結合、又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH
2-が-O-で置換されていてもよい。R
1は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。W
1は、水素原子、若しくは炭素数1~10の脂肪族ヒドロカルビル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、該脂肪族ヒドロカルビル基を構成する-CH
2-が、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-で置換されていてもよい。Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基若しくは飽和ヒドロカルビルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15の飽和ヒドロカルビル基又は置換基を有してもよいアリール基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。yは、0~2の整数である。uは、0又は1である。fは、0≦f≦5+2y-gを満たす整数である。gは、1~3の整数である。)
【0041】
これら露光により発生した酸の作用によって反応を起こす繰り返し単位は、レジスト組成物において欠陥に与える影響が大きいので、これら繰り返し単位を与える重合性単量体中におけるオリゴマーを抑制することが好ましい。
【発明の効果】
【0042】
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、ポリマーの段階で精製を行うのではなく、重合前単量体の段階でオリゴマー成分の抑制された材料の重合物を含むことで、良好な解像性、パターン形状、ラインエッジラフネスを満足しつつ、マスク欠陥の起因となる現像残渣欠陥を抑制することができる化学増幅型レジスト組成物及びレジストパターンの形成方法を提供することができる。
【0043】
本発明の化学増幅型レジスト組成物を用いたパターン形成方法は、高い解像性、LERの低減されたパターン形成を満足しつつ現像残渣欠陥を抑制できるため、微細加工技術、特にArF、KrF、EUV、EBリソグラフィー等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
上述のように、良好な解像性、パターン形状、ラインエッジラフネスを満足しつつ、マスク欠陥の起因となる現像残渣欠陥を抑制することができる化学増幅型レジスト組成物の開発が求められていた。
【0045】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定の重合性単量体を用いて重合した繰り返し単位を有する高分子化合物をレジスト組成物に導入した場合、良好な解像性、パターン形状、ラインエッジラフネスを満足しつつ、マスク欠陥の起因となる現像残渣欠陥を抑制できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0046】
即ち、本発明は、化学増幅型レジスト組成物であって、
(A)1種もしくは2種以上の繰り返し単位を含む高分子化合物であって、前記繰り返し単位のうちの少なくとも1種以上の繰り返し単位が、2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体が重合した繰り返し単位である高分子化合物
を含有するものである化学増幅型レジスト組成物である。
【0047】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
[化学増幅型レジスト組成物]
本発明のレジスト組成物は、化学増幅型レジスト組成物であって、(A)1種もしくは2種以上の繰り返し単位を含む高分子化合物であって、前記繰り返し単位のうちの少なくとも1種以上の繰り返し単位が、2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体が重合した繰り返し単位である高分子化合物を含有するものである化学増幅型レジスト組成物である。
【0049】
[(A)高分子化合物]
本発明に使用される高分子化合物(A)を得るため、一般的には高分子化合物を重合するために合成した重合性単量体について精製を行う。精製方法としては特に制限されないが、水洗、分液、蒸留、再結晶、ろ過、限外ろ過、遠心分離、高速液体クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー等により行うことができる。
【0050】
(A)成分中、少なくとも1種の繰り返し単位において、重合性単量体に含まれる2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは300ppm以下、きわめて好ましくは200ppm以下、とりわけ好ましくは100ppm以下であり、オリゴマーとしては2~6量体、特に2~4量体について制御することが好ましい。
【0051】
また、精製段階や精製後の抜き取りに溶液化のための加熱が必要な場合及び精製後に長期保管する際には、安定剤としてTBCやBHT等の重合禁止剤を添加しても良い。
【0052】
上記オリゴマー成分が1000ppmを超える重合性単量体のみを用いて重合した高分子化合物をレジスト組成物として使用した場合、現像残渣欠陥が発生し、半導体製造プロセスにとって重要な歩留まり低下となる恐れがある。
【0053】
なお、残存オリゴマーの分析は、LC-MSにて測定することができる。
【0054】
(A)成分の高分子化合物中、2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体が重合した繰り返し単位の割合は特に限定されないが、好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上、さらに好ましくは20mol%以上、きわめて好ましくは30mol%以上、とりわけ好ましくは40mol%以上、なおいっそう好ましくは80mol%以上、さらになおいっそう好ましくは100mol%である。
【0055】
また、(A)成分の高分子化合物に含まれる1種もしくは2種以上の繰り返し単位のうち、どの繰り返し単位を2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体が重合した繰り返し単位とするかは任意である。即ち、例えば、(A)成分の高分子化合物中に含まれる繰り返し単位として後述するもののうちのいずれであってもよい。
【0056】
本発明に使用される重合性単量体として、露光により発生した酸の作用によって、酸脱離基が脱離反応を起こし、アルカリ性現像液に対して可溶化する機構を有する単位を与える重合性単量体、又は酸脱離基が脱離反応を起こし、アルカリ性現像液に対して不溶化する機構を有する単位を与える重合性単量体に含まれる2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、きわめて好ましくは200ppm以下、とりわけ好ましくは100ppm以下であり、オリゴマーの制御としても2~4量体のオリゴマーについて制御することが好ましい。露光により発生した酸の作用によって反応を起こす単位は、レジスト組成物において欠陥に与える影響が大きいため、オリゴマーの抑制が重要である。
【0057】
<繰り返し単位A1>
本発明の化学増幅型レジスト組成物として、化学増幅ポジ型レジスト組成物の場合、酸脱離基が脱離反応を起こし、アルカリ性現像液に対して可溶化する機構を有する単位として、下記一般式(A1)で表される繰り返し単位A1を含むことが好ましい。またこのとき、前記繰り返し単位A1が2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体が重合した繰り返し単位であることが好ましい。
【0058】
【化13】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~6のアルコキシ基である。A
2は、単結合、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~11のアルキレン基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合又はエステル結合が介在していてもよい。sは、0又は1である。tは、0~2の整数である。cは、0≦c≦5+2t-eを満たす整数である。dは、0又は1である。eは、1~3の整数である。rは、0又は1である。Xは、eが1の場合には酸不安定基であり、eが2以上の場合には水素原子又は酸不安定基であるが、少なくとも1つは酸不安定基である。)
【0059】
繰り返し単位A1は、芳香環に結合したフェノール性ヒドロキシ基の少なくとも1つが酸不安定基で保護されたもの、芳香環に結合したカルボキシル基が酸不安定基で保護されたもの、あるいは(メタ)アクリレートに含まれるカルボキシル基が酸不安定基で保護されたものである。このような酸不安定基としては、既に公知の多数の化学増幅型レジスト組成物で用いられてきた、酸によって脱離して酸性基を与えるものであれば、特に限定されることなくいずれも使用することができる。
【0060】
本発明に係る(A)成分の高分子化合物に含まれる繰り返し単位のうち、上記一般式(A1)中の繰り返し単位で表される酸不安定基を有する繰り返し単位は、フェノール性水酸基、好ましくはヒドロキシスチレン、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートの水酸基の水素原子を置換したものであり、これを得るためのモノマーは特開2014-219657号公報中の段落[0029]に記載のモノマーを例示することができ、上記一般式(A1)中の繰り返し単位で表されるdが1の場合における酸不安定基を有する繰り返し単位は、カルボキシル基、特には(メタ)アクリレートの水酸基の水素原子を置換したものであり、これを得るためのモノマーは特開2014-219657号公報中の段落[0028]に記載のモノマーを例示することができる。
【0061】
酸不安定基の構造としては、同じく特開2014-219657号公報中の段落[0030]~[0082]に記載のモノマーを例示することができる。酸不安定基の好ましい構造としては、下記に示す式(H-3)-1~(H-3)-19を具体的に挙げることができる。
【0062】
【0063】
式(H-3)-1~(H-3)-19中、RL43は同一又は異種の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数6~20のフェニル基等のアリール基を示す。RL44、RL46は水素原子、又は炭素数1~20の飽和ヒドロカルビル基である。RL45は炭素数6~20のフェニル基等のアリール基を示す。前記飽和ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。また、前記アリール基としては、フェニル基等が好ましい。RFは、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。nは、1~5の整数である。
【0064】
前記酸不安定基として3級アルキル基を選択すると、レジスト膜厚が、例えば、10~100nmになるように成膜され、45nm以下の線幅を持つような微細パターンを形成した場合にも、LERが小さなパターンを与えるため好ましい。前記3級アルキル基としては、得られた重合用のモノマーを蒸留によって得るために、炭素数4~18のものであることが好ましい。また、前記3級アルキル基の3級炭素が有するアルキル置換基としては、エーテル基やカルボニル基のような酸素含有官能基を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~20のアルキル基が挙げられ、前記3級炭素のアルキル置換基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0065】
前記3級炭素のアルキル置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラヒドロフラン-2-イル基、7-オキサノルボルナン-2-イル基、シクロペンチル基、2-テトラヒドロフリル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、3-オキソ-1-シクロヘキシル基が挙げられる。
【0066】
また、これらを置換基として有する3級アルキル基としては、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1-アダマンチル-1-メチルエチル基、1-メチル-1-(2-ノルボルニル)エチル基、1-メチル-1-(テトラヒドロフラン-2-イル)エチル基、1-メチル-1-(7-オキサノルボルナン-2-イル)エチル基、1-メチルシクロペンチル基、1-エチルシクロペンチル基、1-プロピルシクロペンチル基、1-イソプロピルシクロペンチル基、1-シクロペンチルシクロペンチル基、1-シクロヘキシルシクロペンチル基、1-(2-テトラヒドロフリル)シクロペンチル基、1-(7-オキサノルボルナン-2-イル)シクロペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-エチルシクロヘキシル基、1-シクロペンチルシクロヘキシル基、1-シクロヘキシルシクロヘキシル基、2-メチル-2-ノルボニル基、2-エチル-2-ノルボニル基、8-メチル-8-トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、8-エチル-8-トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3-メチル-3-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、3-エチル-3-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、2-メチル-2-アダマンチル基、2-エチル-2-アダマンチル基、2-イソプロピル-2-アダマンチル基、1-メチル-3-オキソ-1-シクロヘキシル基、1-メチル-1-(テトラヒドロフラン-2-イル)エチル基、5-ヒドロキシ-2-メチル-2-アダマンチル基、5-ヒドロキシ-2-エチル-2-アダマンチル基等が挙げられ、好ましくは、以下に示す構造である。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
また、下記一般式(B2-1)で表されるアセタール基は、酸不安定基としてよく利用され、パターンと基板の界面が比較的矩形であるパターンを安定して与える酸不安定基として有用な選択肢である。
【0072】
【0073】
式中、R16は、水素原子、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基である。Yは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~30のアルキル基である。
【0074】
R16は、酸に対する分解性基の感度の設計に応じて適宜選択される。例えば、比較的高い安定性を確保した上で強い酸で分解するという設計であれば水素原子が選択され、比較的高い反応性を用いてpH変化に対して高感度化という設計であれば直鎖状のアルキル基が選択される。レジスト組成物に配合する酸発生剤や塩基性化合物との組み合わせにもよるが、末端に比較的大きなアルキル基が置換され、分解による溶解性変化が大きく設計されている場合には、R16としてアセタール炭素との結合を持つ炭素が2級炭素であるものが好ましい。2級炭素によってアセタール炭素と結合するR16の例としては、イソプロピル基、sec-ブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等を挙げることができる。
【0075】
前記アセタール基のうち、より高い解像性を得るためには、Yは、炭素数7~30の多環式アルキル基であることが好ましい。また、Yが多環式アルキル基である場合、該多環式環構造を構成する2級炭素とアセタール酸素との間で結合を形成していることが好ましい。環構造の2級炭素上で結合している場合、3級炭素上で結合している場合に比べて、ポリマーが安定な化合物となり、レジスト組成物として保存安定性が良好となり、解像力も劣化することがない。また、Yが炭素数1以上の直鎖状のアルキル基を介在した1級炭素上で結合している場合と比べても、ポリマーのガラス転移温度(Tg)が良好なものとなり、現像後のレジストパターンがベークにより形状不良を起こすことがない。
【0076】
一般式(B2-1)で表されるアセタール基の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R16は、前記と同じである。
【0077】
【0078】
繰り返し単位A1は、(A)成分の高分子化合物の全繰り返し単位に対し、5~70モル%の範囲で導入されることが好ましく、5~60モル%の範囲で導入されることがより好ましい。
【0079】
<繰り返し単位A2>
本発明の化学増幅型レジスト組成物として、化学増幅ネガ型レジスト組成物の場合、酸脱離基が脱離反応を起こし、アルカリ性現像液に対して不溶化する機構を有する単位として、下記一般式(A2)で表される繰り返し単位A2を含むことが好ましい。またこのとき、前記繰り返し単位A2が2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体が重合した繰り返し単位であることが好ましい。
【0080】
【化21】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。A
1は、単結合、又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH
2-が-O-で置換されていてもよい。R
1は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。W
1は、水素原子、若しくは炭素数1~10の脂肪族ヒドロカルビル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、該脂肪族ヒドロカルビル基を構成する-CH
2-が、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-で置換されていてもよい。Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基若しくは飽和ヒドロカルビルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15の飽和ヒドロカルビル基又は置換基を有してもよいアリール基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。yは、0~2の整数である。uは、0又は1である。fは、0≦f≦5+2y-gを満たす整数である。gは、1~3の整数である。)
【0081】
繰り返し単位A2は、高エネルギー線の照射を受けた際、酸発生剤より発生する酸の作用により酸脱離性基が脱離反応を起こし、アルカリ不溶化及びポリマー間の架橋反応を誘発する繰り返し単位である。繰り返し単位A2の作用により、ネガ化反応をより効率的に進めることができるため、解像性能を向上させることができる。
【0082】
W1で表される炭素数1~10の脂肪族ヒドロカルビル基、又は置換基を有してもよいアリール基(脂肪族1価炭化水素基又は1価芳香環基)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、メチルカルボニル基、フェニル基等が挙げられる。
【0083】
Rx又はRyとして好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びその構造異性体や、これらの水素原子の一部がヒドロキシ基又はアルコキシ基で置換されたものが挙げられる。
【0084】
yは0~2の整数であるが、0である場合にはベンゼン環、1である場合にはナフタレン環、2である場合にはアントラセン環である。
【0085】
A1で表されるアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。前記アルキレン基がエーテル結合を含む場合には、一般式(A2)中のuが1である場合にはエステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、uが0である場合には主鎖と結合する原子がエーテル結合となってもよく、該エーテル結合に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。
【0086】
繰り返し単位A2としては、下記一般式(A2-1)、(A2-2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0087】
【化22】
(式中、R
A、Rx、Ry及びgは、前記と同じ。)
【0088】
繰り返し単位A2の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記例中、Meはメチル基であり、Acはアセチル基である。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
繰り返し単位A2の含有量は、(A)成分の高分子化合物を構成する全繰り返し単位中、その下限は、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、その上限は、70モル%が好ましく、60モル%がより好ましい。
【0095】
<繰り返し単位A3>
本発明の化学増幅型レジスト組成物に使用する(A)成分の高分子化合物は、更に、下記一般式(A3)で表される繰り返し単位A3を含むことが好ましい。
【0096】
【化28】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
11は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。A
1は、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH
2-が-O-で置換されていてもよい。sは、0又は1である。wは、0~2の整数である。aは、0≦a≦5+2w-bを満たす整数である。bは、1~3の整数である。)
【0097】
リンカー(-CO-O-A1-)を有しない場合(すなわち一般式(A3)中、sが0かつA1が単結合の場合)、繰り返し単位A3の好ましい例としては、3-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、5-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン、6-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。これらのうち、より好ましくは下記一般式(A3-1)で表される繰り返し単位等である。
【0098】
【0099】
リンカー(-CO-O-A1-)を有する場合、繰り返し単位A3の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
【0101】
繰り返し単位A3は、1種のみでも、複数種を組み合わせて使用してもよい。繰り返し単位A3は、(A)成分の前記高分子化合物の全繰り返し単位中、10~95モル%の範囲で導入されることが好ましく、30~85モル%の範囲で導入されることがより好ましい。ただし、後述する本発明で使用する、ポリマーにより高いエッチング耐性を与える一般式(A12)及び一般式(A13)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つ以上を含み、その単位が置換基としてフェノール性ヒドロキシ基を有する場合には、その比率も加えて前記範囲内とされることが好ましい。
【0102】
<繰り返し単位A4~A11>
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、更に、下記一般式(A4)~(A11)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。
【0103】
【化31】
(式中、R
Bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Z
1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、-O-Z
11-、-C(=O)-O-Z
11-又は-C(=O)-NH-Z
11-であり、Z
11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、又はフェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
2は、単結合又は-Z
21-C(=O)-O-であり、Z
21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Z
31-、-C(=O)-O-Z
31-又は-C(=O)-NH-Z
31-であり、Z
31は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~20の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
4は、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。k
1及びk
2は、それぞれ独立に、0又は1であるが、Z
4が単結合のとき、k
1及びk
2は0である。R
21~R
38は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R
21及びR
22が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
23及びR
24、R
26及びR
27又はR
29及びR
30が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。R
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。Xa
-は、非求核性対向イオンである。)
【0104】
一般式(A5、A9)中、Z2が-Z21-C(=O)-O-である場合、Z21で表されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基(2価炭化水素基)としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
【0106】
繰り返し単位A4、A8において、Xa-で表される非求核性対向イオンの例としては、特開2010-113209号公報や特開2007-145797号公報に記載されたものが挙げられる。また、繰り返し単位A5、A9において、RHFが水素原子である場合の具体例としては、特開2010-116550号公報に記載されたものが挙げられ、RHFがトリフルオロメチル基である場合の具体例としては、特開2010-77404号公報に記載されたものが挙げられる。繰り返し単位A6、A10としては、特開2012-246265号公報や特開2012-246426号公報に記載されたものが挙げられる。
【0107】
繰り返し単位A7、A11を与えるモノマーのアニオン部位の好ましい例としては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
【0109】
【0110】
一般式(A4)~(A11)中、R21~R38は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、特開2010-116550号公報の[0022]、[0023]段落に例示されたものと同様のものが挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基の炭素-炭素結合間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0111】
また、R21及びR22が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R23及びR24、R26及びR27、又はR29及びR30が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。このとき形成される環としては、以下に示すもの等が挙げられる。
【0112】
【化35】
(式中、R
32は、R
21~R
38で表される基と同じである。)
【0113】
一般式(A5)~(A7)中、スルホニウムカチオンの具体的な構造としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
一般式(A9)~(A11)中、ヨードニウムカチオンの具体的な構造としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
【0134】
繰り返し単位A4~A11は、高エネルギー線の照射により酸を発生させる単位である。これらの単位がポリマー中に含まれることで、酸拡散が適度に抑制され、LERが低減されたパターンを得ることができると考えられる。また、これらの単位がポリマーに含まれていることで、真空中でのベーク時に露光部から酸が揮発し、未露光部へ再付着するという現象が抑制され、LERの低減や、ネガ型であれば未露光部での望まないネガ化反応抑制による欠陥の低減等に効果的であり、ポジ型であれば膜べりによる形状劣化低減等に効果的であると考えられる。繰り返し単位A4~A11の含有量としては、前記高分子化合物を構成する全繰り返し単位中、0.1~30モル%が好ましく、0.5~20モル%がより好ましい。
【0135】
<繰り返し単位A12~A14>
(A)成分の前記高分子化合物は、エッチング耐性を向上させる目的で、下記一般式(A12)~(A14)で表される繰り返し単位A12~A14から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。
【0136】
【化55】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
13及びR
14は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~8のアルコキシ基、又はハロゲン置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~8のアルキルカルボニルオキシ基である。R
15は、アセチル基、アセトキシ基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~20のアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~20のアルコキシ基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~20のアシルオキシ基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数2~20のアルキルチオアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基、又はスルホニル基である。A
3は、単結合、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~10のアルキレン基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。o及びpは、それぞれ独立に、0~4の整数である。hは、0又は1の整数である。jは、0~5の整数である。kは、0~2の整数である。)
【0137】
A3で表されるアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。前記アルキレン基がエーテル結合を含む場合には、一般式(A14)中のhが1である場合にはエステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、hが0である場合には主鎖と結合する原子がエーテル性酸素となってもよく、該エーテル性酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記アルキレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0138】
R15として好ましくは、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基及びその構造異性体、シクロペンチル基、シクロへキシル基、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基及びその炭化水素部の構造異性体、シクロペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、特にメトキシ基及びエトキシ基が有用である。また、アシルオキシ基は、ポリマーの重合後でも容易に化学修飾法で導入することができ、ベースポリマーのアルカリ現像液に対する溶解性の微調整に有利に用いることができる。前記アシルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基及びその構造異性体、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。炭素数が20以下であれば、ベース樹脂としてのアルカリ現像液に対する溶解性を制御・調整する効果(主に、下げる効果)を適切なものとすることができ、スカム(現像欠陥)の発生を抑制することができる。また、前述の好ましい置換基の中で、特にモノマーとして準備しやすく、有用に用いられる置換基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基が挙げられる。
【0139】
一般式(A14)中、kは0~2の整数であり、0の場合はベンゼン骨格、1の場合はナフタレン骨格、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。kが0の場合、好ましくはjは0~3の整数であり、kが1又は2の場合、好ましくはjは0~4の整数である。
【0140】
hが0かつA3が単結合である場合、つまり芳香環が高分子化合物の主鎖に直接結合した、すなわちリンカーのない場合、繰り返し単位A14の好ましい例としては、スチレン、4-クロロスチレン、4-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-ブロモスチレン、4-アセトキシスチレン、2-ヒドロキシプロピルスチレン、2-ビニルナフタレン、3-ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。
【0141】
また、hが1である場合、つまりリンカーとしてエステル骨格を有する場合、繰り返し単位A14の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
【0143】
【0144】
繰り返し単位A12~A14のうち少なくとも1つを構成単位として使用した場合には、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチングやパターン検査の際の電子線照射耐性を高めるという効果が得られる。
【0145】
繰り返し単位A12~A14は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。エッチング耐性を向上させるという効果を得るためには、繰り返し単位A12~A14の含有量は、(A)成分の前記高分子化合物を構成する全繰り返し単位中、その下限は、2モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、その上限は、35モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。
【0146】
<密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位>
(A)成分の前記高分子化合物は、レジスト膜の特性の微調整を行うために、ラクトン構造、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基等の密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位やその他の繰り返し単位を含んでもよい。前記密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位の例として、下記式(b1)~(b3)で表される単位が挙げられる。
【0147】
【化58】
(式中、R
Aは、前記と同じ。J
1は、-O-又はメチレン基である。J
2は、水素原子又はヒドロキシ基である。J
3は、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~4のアルキル基である。nは、0~3の整数である。)
【0148】
これらの単位は、酸性を示さず、基板に対する密着性を与える単位や溶解性を調整する単位として補助的に用いることができる。
【0149】
(A)成分の前記高分子化合物が繰り返し単位A4~A11を含まない場合、高分子化合物中の繰り返し単位A3の含有量は、25~95モル%が好ましく、40~85モル%がより好ましい。繰り返し単位A12~A14の含有量は、0~30モル%が好ましく、3~20モル%がより好ましい。繰り返し単位A1又はA2の含有量は、5~70モル%が好ましく、5~60モル%がより好ましい。なお、他の繰り返し単位を0~30モル%、好ましくは0~20モル%含んでもよい。
【0150】
(A)成分の前記高分子化合物が繰り返し単位A4~A11を含む場合、高分子化合物中の繰り返し単位A3の含有量は、25~94.5モル%が好ましく、36~85モル%がより好ましい。繰り返し単位A12~A14の含有量は、0~30モル%が好ましく、3~20モル%がより好ましい。繰り返し単位A1又はA2の含有量は、5~70モル%が好ましく、5~60モル%がより好ましい。また、繰り返し単位A1又はA2、A12、A13、A14の含有量の合計は、60~99.5モル%が好ましい。繰り返し単位A4~A11の含有量は、0.5~20モル%が好ましく、1~10モル%がより好ましい。なお、他の繰り返し単位を0~30モル%、好ましくは0~20モル%含んでもよい。
【0151】
ポジ型レジストを構築する際、(A)成分の前記高分子化合物としては、下記一般式(A1-1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(A3-1)で表される繰り返し単位及び、下記一般式(A7-1)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0152】
【化59】
(式中、R
A、R
B、Z
4、R
29、R
30、R
31、及びbは、前記と同じ。R
50は、酸不安定基である。)
【0153】
また、ポジ型レジストを構築する際、(A)成分の前記高分子化合物としては、前記(A)成分が、前記一般式(A1)で表される繰り返し単位A1及び前記一般式(A3)で示される繰り返し単位A3を含み、かつ、前記一般式(A4)~(A11)で表される繰り返し単位A4~A11を含まない高分子化合物であることが好ましい。
【0154】
また、ネガ型レジストを構築する際、(A)成分の前記高分子化合物としては、下記一般式(A2-1)又は下記一般式(A2-2)で表される繰り返し単位、下記一般式(A3-1)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(A5-1)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0155】
【化60】
(式中、R
A、R
B、Z
2、R
23、R
24、R
25、Rx、Ry、b及びgは、前記と同じ。)
【0156】
また、ネガ型レジストを構築する際、(A)成分の前記高分子化合物としては、前記一般式(A2)で表される繰り返し単位A2及び前記一般式(A3)で示される繰り返し単位A3を含み、かつ、前記一般式(A4)~(A11)で表される繰り返し単位A4~A11を含まない高分子化合物であることが好ましい。
【0157】
(A)成分の前記高分子化合物は、繰り返し単位A4~A11を含まないものと、繰り返し単位A4~A11を含むものとを併用してもよい。この場合、繰り返し単位A4~A11を含まないポリマーの配合量は、繰り返し単位A4~A11を含むポリマー100質量部に対し、2~5,000質量部が好ましく、10~1,000質量部がより好ましい。
【0158】
また、本発明に使用される(A)成分の高分子化合物が2種以上の重合性単量体の重合物であるときは、使用する全ての重合性単量体に含まれる2~6量体の残存オリゴマーがあわせて5000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは3000ppm以下であり、特に2~4量体のオリゴマーについて制御することが好ましい。全ての重合性単量体に含まれる2~6量体の残存オリゴマーが5000ppm以下であれば、現像残渣欠陥が発生し、半導体製造プロセスにとって重要な歩留まり低下となるのをより確実に防ぐことができる。
【0159】
(A)成分の前記高分子化合物を構成する全繰り返し単位中、繰り返し単位A1~A14は、70モル%以上を占めることが好ましく、80モル%以上を占めることがより好ましい。これによって、特にフォトマスク基板作製のために用いられる本発明の化学増幅型レジスト組成物として必要となる特性が確実に得られる。
【0160】
ポジ型レジスト組成物をフォトマスク作製に使用する場合、最先端世代における塗布膜厚は150nm以下、好ましくは100nm以下である。前記ポジ型レジスト組成物を構成するベースポリマーの設計として、アルカリ現像液に対する溶解速度は8nm/min以下、好ましくは6nm/min以下、更に好ましくは5nm/min以下である。先端世代においては基板への塗布膜が薄膜領域(100nm以下)の場合、アルカリ現像に対するパターン膜減りの影響が大きくなり、ポリマーのアルカリ溶解速度が8nm/minより大きい場合にはパターンが崩壊してしまい、微細パターンの形成が出来なくなる。特に、欠陥無き事を要求されるフォトマスク作製においては現像プロセスが強い傾向があるため顕著である。なお、本発明においてベースポリマーのアルカリ現像液に対する溶解速度は、直径200mm(8inch)のシリコンウエハーにポリマー溶液をスピンコーティングし、100℃で90秒ベーク後、2.38%のTMAH水溶液で100秒現像した際の膜減り量から算出した値である。
【0161】
また、ネガ型レジスト組成物をフォトマスク作製に使用する場合、最先端世代における塗布膜厚は150nm以下、好ましくは100nm以下である。前記ネガ型レジスト組成物を構成するベースポリマーのアルカリ現像液(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液)に対する溶解速度は、一般的にレジスト残渣による欠陥をより少なくするために強現像プロセスである場合が多く、微細パターンを形成させるために、好ましくは80nm/秒以下、より好ましくは50nm/秒以下である。また、例えばウエハーからLSIチップを作製する場合において、EUV露光プロセスにて本発明のネガ型レジスト組成物を使用する際には、50nm以下といった細線をパターニングする必要があるため塗布膜厚を100nm以下にする場合が多く、薄膜であるが故に現像によってパターンの劣化が考えられることから、使用するポリマーの溶解速度は、好ましくは80nm/秒以下、より好ましくは50nm/秒以下である。一方、KrF露光プロセスにおいては目的にもよるが、塗布膜厚が200nm以上と厚膜になる場合が多く、その際において使用するポリマーの溶解速度は90nm/秒以上に設計することが好ましい。
【0162】
(A)成分の前記高分子化合物は、公知の方法によって、必要に応じて保護基で保護した各単量体を共重合させ、その後必要に応じて脱保護反応を行うことで合成することができる。共重合反応は、特に限定されないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については、国際公開第2006/121096号、特開2008-102383号公報、特開2008-304590号公報、特開2004-115630号公報を参考にすることができる。
【0163】
(A)成分の前記高分子化合物は、重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000であることが好ましく、2,000~25,000であることが更に好ましい。Mwが1,000以上であれば、従来知られているように、パターンの頭が丸くなって解像力が低下するとともに、LERが劣化するといった現象が生じるおそれがない。一方、Mwが50,000以下であれば、特にパターン線幅が100nm以下のパターンを形成する場合においてLERが増大するおそれがない。なお、本発明においてMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0164】
(A)成分の前記高分子化合物は、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~2.5、特に1.0~2.2と狭分散であることが好ましい。このように狭分散である場合には、現像後、パターン上に異物が生じたり、パターンの形状が悪化したりすることがない。
【0165】
[(B)酸発生剤]
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、化学増幅型レジスト組成物として機能させるために、(B)酸発生剤、特には光酸発生剤を含んでもよい。光酸発生剤としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であれば、特に限定されない。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシイミド、オキシム-O-スルホネート型酸発生剤等がある。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0166】
光酸発生剤の具体例としては、ノナフルオロブタンスルホネート、特開2012-189977号公報の段落[0247]~[0251]に記載の部分フッ素化スルホネート、特開2013-101271号公報の段落[0261]~[0265]に記載の部分フッ素化スルホネート、特開2008-111103号公報の段落[0122]~[0142]、特開2010-215608号公報の段落[0080]~[0081]に記載されたもの等が挙げられる。前記具体例の中でも、アリールスルホネート型又はアルカンスルホネート型の光酸発生剤が、一般式(A1)で表される繰り返し単位の酸不安定基を脱保護するのに適度な強度の酸を発生させるために好ましい。このような光酸発生剤としては、以下に示す構造のスルホニウムアニオンを有する化合物が好ましい。対をなすカチオンとしては、一般式(A5)~(A7)中のスルホニウムカチオンの具体例として前述したものが挙げられる。
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
(B)酸発生剤、特には光酸発生剤の含有量は、(A)成分の高分子化合物80質量部に対し、1~30質量部が好ましく、2~20質量部がより好ましい。また、好ましいアニオンの酸強度については、pKaが-1.5以上である。なお、pKa値は、Advanced Chemistry Development, Inc.製のソフトウェアACD/Chemsketch ver: 9.04 におけるpKa DBを用いて算出したものである。
【0175】
[(C)塩基性化合物(クエンチャー)]
本発明の化学増幅型レジスト組成物には塩基性化合物を含むことが好ましい。最適な塩基性化合物としては、従来型の塩基性化合物が挙げられる。
【0176】
従来型の塩基性化合物としては、第1級、第2級、第3級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられる。特に、特開2008-111103号公報の段落[0146]~[0164]に記載の第1級、第2級、第3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル結合を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報に記載のカーバメート基を有する化合物等が好ましい。好ましいものとしては、トリス[2-(メトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2-(メトキシメトキシ)エチル]アミン N-オキシド、ジブチルアミノ安息香酸、モルホリン誘導体、イミダゾール誘導体等が挙げられる。このような塩基性化合物を添加することによって、例えば、レジスト膜中での酸の拡散速度を更に抑制したり、形状を補正したりすることができる。
【0177】
また、前記クエンチャーとして、特開2008-158339号公報に記載されたα位がフッ素化されていないカルボン酸の、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。α位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸又はメチド酸は、酸不安定基を脱保護させるのに必要であるが、α位がフッ素化されていないオニウム塩との塩交換によってα位がフッ素化されていないカルボン酸が放出される。α位がフッ素化されていないカルボン酸は脱保護反応を殆ど起こさないために、クエンチャーとして機能する。
【0178】
α位がフッ素化されていないカルボン酸のオニウム塩としては、例えば、下記一般式(H1)で表される化合物が挙げられる。
【0179】
【0180】
一般式(H1)中、R101は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基であるが、スルホ基のα位の炭素原子に結合する水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたものを除く。
【0181】
前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基、アルキルフェニル基(2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基等)、ジアルキルフェニル基(2,4-ジメチルフェニル基等)、トリアルキルフェニル基(2,4,6-トリイソプロピルフェニル基等)、アルキルナフチル基(メチルナフチル基、エチルナフチル基等)、ジアルキルナフチル基(ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等)等のアリール基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0182】
また、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含むヒドロカルビル基としては、チエニル基等のヘテロアリール基;4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-tert-ブトキシフェニル基、3-tert-ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、n-プロポキシナフチル基、n-ブトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基;ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基;2-フェニル-2-オキソエチル基、2-(1-ナフチル)-2-オキソエチル基、2-(2-ナフチル)-2-オキソエチル基等の2-アリール-2-オキソエチル基等のアリールオキソアルキル基等が挙げられる。
【0183】
一般式(H1)中、Mq+は、オニウムカチオンである。前記オニウムカチオンとしては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンが好ましく、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンがより好ましい。好ましくは、上述の一般式(A5)~(A7)中のスルホニウムカチオンの具体例が挙げられる。上記一般式(H1)で表される塩のアニオン構造として、具体例を以下に列挙するが、本発明はこれらに限定されない。
【0184】
【0185】
【0186】
クエンチャーとして、下記一般式(H2)で表されるヨウ素化ベンゼン環含有カルボン酸のスルホニウム塩も好適に使用できる。
【0187】
【0188】
一般式(H2)中、R201は、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、若しくは水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~6の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基若しくは炭素数1~4の飽和ヒドロカルビルスルホニルオキシ基、又は-NR201A-C(=O)-R201B若しくは-NR201A-C(=O)-O-R201Bである。R201Aは、水素原子又は炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基である。R201Bは、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数2~8の不飽和脂肪族ヒドロカルビル基である。
【0189】
一般式(H2)中、xは、1~5の整数である。yは、0~3の整数である。zは、1~3の整数である。L1は、単結合又は炭素数1~20の(z+1)価の連結基であり、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、スルトン環、ラクタム環、カーボネート基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。前記飽和ヒドロカルビル基、飽和ヒドロカルビルオキシ基、飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルスルホニルオキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。y及び/又はzが2以上のとき、各R201は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0190】
一般式(H2)中、R202、R203及びR204は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、オキソ基、シアノ基、ニトロ基、スルトン基、スルホン基又はスルホニウム塩含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、アミド結合、カーボネート基又はスルホン酸エステル結合で置換されていてもよい。また、R202及びR203が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0191】
一般式(H2)で表される化合物の具体例としては、特開2017-219836号公報に記載されたものが挙げられる。これも高吸収で増感効果が高く、酸拡散制御効果も高い。
【0192】
また、前記クエンチャーとして、特開2016-200805号公報に記載の窒素原子含有のカルボン酸塩型化合物を使用することもできる。具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
また、前記クエンチャーとして、弱酸のベタイン型化合物を使用することもできる。その具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0199】
【0200】
前記クエンチャーとしては、更に、特開2008-239918号公報に記載のポリマー型のクエンチャーが挙げられる。これは、レジスト組成物塗布後のレジスト膜表面に配向することによってパターン後のレジストの矩形性を高める。ポリマー型クエンチャーは、液浸露光用の保護膜を適用したときのパターンの膜減りやパターントップのラウンディングを防止する効果もある。
【0201】
本発明の化学増幅型レジスト組成物がクエンチャーを含む場合、その含有量は、ベースポリマー(例えば、(A)高分子化合物)80質量部に対し、0~50質量部が好ましく、0.1~40質量部がより好ましい。また上記クエンチャーは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0202】
[(D)フッ素含有ポリマー]
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、高コントラスト化、高エネルギー線照射における酸のケミカルフレア及び帯電防止膜材料をレジスト上に塗布するプロセスにおける帯電防止膜からの酸のミキシングを遮蔽し、予期しない不要なパターン劣化を抑制する目的で、(D)成分として、下記一般式(D1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位D1ともいう。)、並びに下記一般式(D2)、(D3)、(D4)及び(D5)で表される繰り返し単位(以下、それぞれ繰り返し単位D2、D3、D4及びD5ともいう。)から選ばれる少なくとも1つを含むフッ素含有ポリマーを含んでもよい。前記フッ素含有ポリマーは、界面活性機能も有することから、現像プロセス中に生じうる不溶物の基板への再付着を防止できるため、現像欠陥に対する効果も発揮する。
【0203】
【0204】
式中、RBは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。RCは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R41は、水素原子、又は炭素-炭素結合間にヘテロ原子が介在していてもよい直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~5の1価炭化水素基である。R42は、炭素-炭素結合間にヘテロ原子が介在していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1~5の1価炭化水素基である。R43a、R43b、R45a及びR45bは、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~10のアルキル基である。R44、R46、R47及びR48は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状の、炭素数1~15の1価炭化水素基若しくはフッ素化1価炭化水素基、又は酸不安定基であり、R44、R46、R47及びR48が、1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基の場合、炭素-炭素結合間に、エーテル基又はカルボニル基が介在していてもよい。xは、1~3の整数である。yは、0≦y≦5+2z-xを満たす整数である。zは、0又は1である。mは、1~3の整数である。X1は、単結合、-C(=O)-O-又は-C(=O)-NH-である。X2は、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~20の、(m+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基である。
【0205】
R41、R42、R44、R46、R47、R48の前記1価炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられるが、アルキル基が好ましい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。また、これらの基の炭素-炭素結合間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基が介在していてもよい。
【0206】
一般式(D1)中、-OR41は親水性基であることが好ましい。この場合、R41としては水素原子、炭素-炭素結合間に酸素原子が介在した炭素数1~5のアルキル基等が好ましい。
【0207】
繰り返し単位D1としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RBは、前記と同じである。
【0208】
【0209】
【0210】
繰り返し単位D1において、X1は、-C(=O)-O-又は-C(=O)-NH-であることが好ましい。更に、RBがメチル基であることが好ましい。X1にカルボニル基が存在することにより、帯電防止膜由来の酸のトラップ能が向上する。また、RBがメチル基であると、よりガラス転移温度(Tg)が高い剛直なポリマーとなるため、酸の拡散が抑制される。これにより、レジスト膜の経時安定性が良好なものとなり、解像力やパターン形状も劣化することがない。
【0211】
一般式(D2)及び(D3)中、R43a、R43b、R45a及びR45bで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が挙げられる。これらのうち、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0212】
一般式(D2)~(D5)中、R44、R46、R47及びR48で表される1価炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられるが、アルキル基が好ましい。前記アルキル基としては前述したもののほか、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。また、フッ素化1価炭化水素基としては、前述した1価炭化水素基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0213】
X2の直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~20の、(m+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基としては、前述した1価炭化水素基又はフッ素化1価炭化水素基等から更に水素原子をm個除いた基が挙げられる。
【0214】
繰り返し単位D2~D5の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RCは、前記と同じである。
【0215】
【0216】
【0217】
繰り返し単位D1の含有量は、(D)フッ素含有ポリマーの全繰り返し単位中、5~85モル%が好ましく、15~80モル%がより好ましい。繰り返し単位D2~D5は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよく、(D)フッ素含有ポリマーの全繰り返し単位中、15~95モル%が好ましく、20~85モル%がより好ましい。
【0218】
(D)フッ素含有ポリマーは、前述した繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を含んでもよい。このような繰り返し単位としては、特開2014-177407号公報の段落[0046]~[0078]に記載されているもの等が挙げられる。(D)フッ素含有ポリマーがその他の繰り返し単位を含む場合、その含有率は、全繰り返し単位中50モル%以下が好ましい。
【0219】
(D)フッ素含有ポリマーは、公知の方法によって、必要に応じて保護基で保護した各単量体を共重合させ、その後必要に応じて脱保護反応を行うことで合成することができる。共重合反応は特に限定されないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については、特開2004-115630号公報を参考にすることができる。
【0220】
(D)フッ素含有ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、2,000~50,000であることが好ましく、3,000~20,000であることがより好ましい。Mwが2,000以上であれば、酸の拡散を防ぎ、解像性や経時安定性を十分に保つことができる。Mwが50,000以下であれば、溶剤への溶解度が十分に高く、塗布欠陥になることもない。また、(D)フッ素含有ポリマーは、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~2.2であることが好ましく、1.0~1.7であることがより好ましい。
【0221】
(D)フッ素含有ポリマーの含有量は、ベースポリマー(例えば、(A)高分子化合物)80質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~20質量部がより好ましく、0.5~10質量部が更に好ましい。なお、上記に限らず、例えば特許4466881公報の段落[0027]~[0041]に記載されているフッ素含有ポリマーも同様に用いることができる。
【0222】
[(E)有機溶剤]
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、(E)成分として有機溶剤を含んでもよい。前記有機溶剤としては、組成物に含まれる各成分を溶解可能なものであれば特に限定されない。
【0223】
このような有機溶剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載の、シクロヘキサノン、メチル-2-n-ペンチルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;及びこれらの混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等を加えることもできる。
【0224】
これらの有機溶剤の中でも、1-エトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、及びこれらの混合溶剤が好ましい。
【0225】
(E)有機溶剤の含有量は、ベースポリマー(例えば、(A)高分子化合物)100質量部に対し、200~10,000質量部が好ましく、400~5,000質量部がより好ましい。(E)有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0226】
[(F)架橋剤]
本発明の化学増幅型レジスト組成物がネガ型レジスト組成物の場合において、(A)成分の前記高分子化合物に一般式(A2)で表される繰り返し単位を含まない場合、架橋剤を配合することが好ましい。一方、(A)成分の前記高分子化合物に一般式(A2)で表される繰り返し単位を含む場合は、架橋剤を配合しなくてもよい。
【0227】
本発明で使用可能な架橋剤の具体例を列挙すると、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、及びアルケニルエーテル基等の二重結合を含む化合物等が挙げられる。これらは、添加剤として用いてもよいが、ポリマー側鎖にペンダント基として導入してもよい。また、ヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いることができる。
【0228】
前記架橋剤のうち、エポキシ化合物としては、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0229】
メラミン化合物としては、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミン等の1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミン等の1~6個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0230】
グアナミン化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミン等の1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミン等の1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0231】
グリコールウリル化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリル等の1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルの1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0232】
ウレア化合物としては、テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレア等の1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレアなどが挙げられる。
【0233】
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0234】
アジド化合物としては、1,1’-ビフェニル-4,4’-ビスアジド、4,4’-メチリデンビスアジド、4,4’-オキシビスアジド等が挙げられる。
【0235】
アルケニルエーテル基を含む化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0236】
架橋剤の配合量は、(A)成分の前記高分子化合物80質量部に対し、0.5~50質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましい。前記範囲であれば、パターン間がつながり、解像度が低下するおそれが少ない。架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0237】
[(G)界面活性剤]
本発明の化学増幅型レジスト組成物には、被加工基板への塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を用いる場合、特開2004-115630号公報にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。界面活性剤の含有量は、(A)成分の前記高分子化合物80質量部に対し0~5質量部が好ましいが、(D)成分がレジスト中に含まれる場合、(D)成分が界面活性剤の役割も果たすため、レジスト中に添加しなくても良い。
【0238】
ポジ型レジスト組成物の設計として、レジスト塗布膜のアルカリ現像液に対する溶解速度は10nm/min以下、好ましくは8nm/min以下、更に好ましくは6nm/min以下である。基板への塗布膜が薄膜領域(100nm以下)の場合、アルカリ現像に対するパターン膜減りの影響が大きくなり、ポジ型レジスト組成物のアルカリ溶解速度が10nm/minより大きい場合にはパターンが崩壊してしまい、微細パターンの形成が出来なくなる。特に、欠陥無き事を要求されるフォトマスク作製においては現像プロセスが強い傾向があるため顕著である。なお、本発明においてアルカリ現像液に対する溶解速度は、6inchのシリコンウエハーに本発明のポジ型レジスト組成物をスピンコーティングし、110℃で240秒ベーク後、2.38%のTMAH水溶液で80秒現像した際の膜減り量から算出した値である。
【0239】
また、ネガ型レジスト組成物の設計として、先端世代でのリソグラフィーにおいてはアルカリ現像後の現像残渣を鑑みると、レジスト塗布膜のアルカリ現像液に対する溶解速度は0.5nm/秒以上、好ましくは1nm/秒以上である。ネガ型レジスト組成物のアルカリ溶解速度が0.5nm/秒以上であれば、アルカリ現像後に現像残渣が生じ、欠陥に繋がるおそれがなおいっそう少ない。本発明においてアルカリ現像液に対する溶解速度は、6inchのシリコンウエハーに本発明のネガ型レジスト組成物をスピンコーティングし、110℃で240秒ベーク後、2.38%のTMAH水溶液で60秒現像した際の膜減り量から算出した値である。
【0240】
[高分子化合物の製造方法]
また本発明では、化学増幅型レジスト組成物に用いられる1種もしくは2種以上の繰り返し単位を含む高分子化合物の製造方法であって、2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体を少なくとも1種以上重合させて前記高分子化合物を得る高分子化合物の製造方法を提供する。
【0241】
このとき、前記2~6量体の残存オリゴマーが1000ppm以下の重合性単量体から得られる繰り返し単位のうちの少なくとも一種を、前記一般式(A1)で表される繰り返し単位A1、又は前記一般式(A2)で表される繰り返し単位A2とすることが好ましい。
【0242】
このようにすれば、ポリマーの段階で精製を行うのではなく、重合前単量体の段階でオリゴマー成分の抑制された材料を用いることで、良好な解像性、パターン形状、ラインエッジラフネスを満足しつつ、マスク欠陥の起因となる現像残渣欠陥を抑制することができる化学増幅型レジスト組成物に用いられる高分子化合物を製造することができる。
【0243】
[レジストパターンの形成方法]
また本発明では、(1)上述の化学増幅型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、(2)高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及び(3)アルカリ現像液を用いて前記パターンを照射したレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターンの形成方法を提供する。
【0244】
前記基板としては、例えば、集積回路製造用の基板(Si、SiO、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi2、Si、SiO、SiO2、SiON、SiONC、CoTa、NiTa、TaBN、SnO2等)等を用いることができる。前記基板上に、スピンコーティング等の手法で膜厚が、例えば0.03~2μmとなるように本発明の化学増幅型レジスト組成物を塗布し、これをホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0245】
次いで、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光し、パターンを照射する。前記高エネルギー線としては、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光(KrF、ArF等)、EUV(極端紫外線)、X線、γ線、シンクロトロン放射線、EB等が挙げられる。本発明においては、EUV又はEB(電子線)を用いて露光することが好ましい。
【0246】
前記高エネルギー線として紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光、EUV、X線、γ線又はシンクロトロン放射線を用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~500mJ/cm2、より好ましくは10~400mJ/cm2となるように照射する。EBを用いる場合は、目的のパターンを形成するため直接、露光量が好ましくは1~500μC/cm2、より好ましくは10~400μC/cm2となるように照射する。
【0247】
露光は、通常の露光法のほか、場合によってはマスクとレジストとの間を液浸する液浸法を用いることも可能である。その場合には、水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0248】
次いで、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。
【0249】
その後、0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%のTMAH等のアルカリ水溶液の現像液を用い、好ましくは0.1~3分間、より好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することで、基板上に目的のパターンが形成される。
【0250】
また、前記基板の最表面を、クロム、ケイ素、タンタル、モリブデン、コバルト、ニッケル、タングステン、及びスズの少なくとも一つを含む材料からなるものとすることが好ましい。
【0251】
なお、本発明の化学増幅型レジスト組成物は、特にマスク欠陥になり得る現像欠陥を抑制することができるため、有用である。また、本発明の化学増幅型レジスト組成物は、基板の種類による密着性の違いがあったとしても有効に現像欠陥を低減できる。このような基板として、金属クロムや酸素、窒素及び炭素から選ばれる1以上の軽元素を含むクロム化合物を最表面にスパッタリング成膜した基板、SiO、SiOx、タンタル化合物、モリブデン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、タングステン化合物、スズ化合物を最表層に含む基板等が挙げられる。本発明の化学増幅型レジスト組成物は、特に、基板としてフォトマスクブランクスを用いたパターン形成に有用である。このとき、フォトマスクブランクスとしては、透過型でも反射型でもよい。
【0252】
本発明のレジストパターンの形成方法であれば、最表面が、クロム又はケイ素又はタンタルを含む材料等のレジストパターン形状に影響を与えやすい材料からなる基板(例えば、フォトマスクブランク)を用いた場合であっても、高解像かつ、現像欠陥の影響を抑制したパターンが得られる。
【0253】
[フォトマスクブランク]
そこで本発明では、上記の化学増幅型レジスト組成物が塗布されたものであるフォトマスクブランクを提供する。本発明の化学増幅型レジスト組成物は、特に、基板としてフォトマスクブランクスを用いたパターン形成に有用である。
【実施例】
【0254】
以下、合成例、実施例、比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基を示す。また、共重合組成比はモル比であり、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。またオリゴマーの値は、LC-MS(装置名:Thermo Fisher SCIENTIFIC / Vanquish(LC system)、Q-Exactive(MS))測定による各モノマー換算で得られた濃度算出値である。
【0255】
[1]モノマーの合成
[合成例1]モノマー(1)、モノマー(2)の合成
窒素雰囲気下の3L4つ口フラスコに、マグネシウム42.1gとTHF50mLを入れ、4-クロロスチレン200gをTHF200mLに溶解した溶液を室温で1時間かけて滴下し、80℃に昇温後3時間撹拌し、Grignard試薬を調製した。得られたGrignard試薬を氷浴中で冷却し、そこに、アセトン100.6gをTHF200mLに溶解した溶液を1時間かけて滴下した。一晩撹拌後、15質量%塩化アンモニウム水溶液(1,000g)を滴下して反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work-up)を行った。その後、粗体に4-ターシャリーブチルカテコール0.02gを加えて、バス温90℃、20Paで減圧蒸留により精製し、下記構造の目的のモノマー(1)を145.2g得た(収率62%)。2~6量体オリゴマーは1700ppmであった。
【化83】
【0256】
水系後処理後、4-ターシャリーブチルカテコール0.2gを加えて、バス温70℃、5Paで減圧蒸留により精製すること以外は、上記のモノマー(1)の合成処方と同様の処方で、目的のモノマー(2)を140.5g得た(収率60%)。2~6量体オリゴマーは90ppmであった。
【0257】
[合成例2]モノマー(3)、モノマー(4)の合成
窒素雰囲気下の3L4つ口フラスコに、マグネシウム27.8gとTHF50mLを入れ、1-クロロ-4-[(1-メチルシクロペンチル)オキシ]ベンゼン200gをTHF200mLに溶解した溶液を室温で1時間かけて滴下し、80℃に昇温後3時間撹拌し、Grignard試薬を調製した。得られたGrignard試薬を氷浴中で冷却し、そこに、ジクロロ(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)ニッケル2.5gを加え30分熟成させた後、臭化ビニル151.2gをTHF200mLに溶解した溶液を1時間かけて滴下した。一晩撹拌後、15質量%塩化アンモニウム水溶液(1,000g)を滴下して反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work-up)を行った。その後、粗体に4-ターシャリーブチルカテコール0.02gを加えて、バス温100℃、20Paで減圧蒸留により精製し、下記構造の目的のモノマー(3)を111.3g得た(収率58%)。2~6量体オリゴマーは1600ppmであった。
【化84】
【0258】
水系後処理後、4-ターシャリーブチルカテコール0.2gを加えて、バス温80℃、5Paで減圧蒸留により精製すること以外は、上記のモノマー(3)の合成処方と同様の処方で、目的のモノマー(4)を105.6g得た(収率55%)。2~6量体オリゴマーは110ppmであった。
【0259】
[合成例3]モノマー(5)、モノマー(6)の合成
4-アセトキシスチレン(東京化成工業株式会社製)200gを酢酸エチル800gに溶解させ、そこに氷冷下でナトリウムメトキシド73.5gをメタノール200mLに溶解した溶液を1時間かけて滴下した。その後3時間撹拌した後、水800gを滴下して反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work-up)を行った。その後、粗体に4-ターシャリーブチルカテコール0.02gを加えて、バス温50℃で濃縮し、下記構造の目的のモノマー(5)を121.5g得た(収率82%)。2~6量体オリゴマーは1650ppmであった。
【化85】
【0260】
水系後処理後、4-ターシャリーブチルカテコール0.2gを加えて、バス温35℃で濃縮すること以外は、上記のモノマー(5)の合成処方と同様の処方で、目的のモノマー(6)を118.5g得た(収率80%)。2~6量体オリゴマーは160ppmであった。
【0261】
[合成例4]モノマー(7)、モノマー(8)の合成
トリフェニルスルホニウム 1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホネート49.0g(0.1モル)をジクロロメタン200gに溶解し、トリエチルアミン10.1g(0.10モル)とN,N-ジメチルアミノピリジン2.4g(0.2モル)を加えて、氷冷下撹拌した。メタクリル酸無水物10.0g(0.10モル)を10℃を超えない温度で滴下した。更に15分熟成を行い、希塩酸を加えて分液を行い、更に水200gで3回有機層を洗浄した後、有機層を濃縮し、残渣にジエチルエーテルを加えて結晶化させた。その結晶を濾過し、シリカゲルカラムクロマト(溶出液:ジクロロメタン-メタノール混合溶剤)にて精製した後に再度ジエチルエーテルにて再結晶後、濾過、乾燥することで下記構造のモノマー(7)を得た(収率51%)。2~6量体オリゴマーは1540ppmであった。
【化86】
【0262】
上記の方法で合成したモノマー(7)15gをメタノール30gに溶解させ、水600gに滴下することで結晶化させ、濾過、乾燥することで、目的のモノマー(8)を12.3g得た。2~6量体オリゴマーは130ppmであった。
【0263】
[合成例5]モノマー(9)、モノマー(10)の合成
下記構造の4-クロロスチレン(東京化成工業株式会社製)を使用した(モノマー(9))。2~6量体オリゴマーは1800ppmであった。
【化87】
【0264】
モノマー(9)100gに、4-ターシャリーブチルカテコール0.1gを加えて、バス温50℃、5Paで減圧蒸留により精製し、目的のモノマー(10)を95.0g得た。2~6量体オリゴマーは280ppmであった。
【0265】
[ポリマー合成例1]ポリマー3の合成
窒素雰囲気下、300mLの滴下シリンダーに4-アセトキシスチレン49.3g、アセナフチレン7.1g、モノマー(4)23.6g、ジメチル-2,2’-アゾビス-(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名V601)8.6g、溶媒としてメチルエチルケトンを124g加えた溶液を調製した。更に窒素雰囲気下とした別の500mL重合用フラスコに、メチルエチルケトンを62g加え、80℃に加温した状態で、上記で調製した溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら18時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を1300gのヘキサンに滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体をヘキサン500gで2回洗浄した。得られた共重合体を窒素雰囲気下で、1Lフラスコ中、テトラヒドロフラン144gとメタノール48gとの混合溶剤に溶解し、エタノールアミン22.3gを加え、60℃で3時間攪拌した。この反応溶液を減圧濃縮し、得られた濃縮物を240gの酢酸エチルと水60gとの混合溶剤に溶解させ、得られた溶液を分液ロートに移し、酢酸11.1gを加え、分液操作を行った。下層を留去し、得られた有機層に水60g及びピリジン14.8gを加え、分液操作を行った。下層を留去し、更に得られた有機層に水60gを添加して水洗分液を行った(水洗分液は計5回)。分液後の有機層を濃縮後、アセトン130gに溶解し、得られたアセトン溶液を水1200gに滴下して、得られた晶出沈澱物を濾過、水洗浄を行い、2時間吸引ろ過を行った後、再度得られた濾別体をアセトン130gに溶解し、得られたアセトン溶液を水1200gに滴下して得られた晶出沈澱物を濾過、水洗浄、乾燥を行い、白色重合体を51.0g得た。得られた重合体を
13C-NMR,
1H-NMR、及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。
【化88】
【0266】
[ポリマー合成例2]ポリマー22の合成
窒素雰囲気下、3,000mLの滴下シリンダーに、4-ヒドロキシスチレンの50.0質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液890g、アセナフチレン47.7g、モノマー(2)の54.7質量%PGMEA溶液310g、トリフェニルスルホニウム-1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-メタクリロイルオキシプロパン-1-スルホネート87.0g、ジメチル-2,2’-アゾビス-(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製V-601)96.1g、並びに溶剤としてγ-ブチロラクトン360g及びPGMEA220gを加え、溶液を調製した。更に、窒素雰囲気下とした別の5,000mL重合用フラスコに、γ-ブチロラクトンを580g加え、80℃に加温した状態で、前記調製した溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら18時間攪拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を22.5kgのジイソプロピルエーテルに滴下すると、共重合体が凝集した。デカンテーションによりジイソプロピルエーテルを除去し、共重合体をアセトン2,250gに溶解した。このアセトン溶液を22.5kgのジイソプロピルエーテルに滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体を再度アセトン2,250gに溶解し、このアセトン溶液を22.5kgの水に滴下し、析出した共重合体を濾別した。その後、40℃で40時間乾燥し、白色重合体であるポリマー22を700g得た。得られた重合体を、
13C-NMR、
1H-NMR及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。
【化89】
【0267】
[ポリマー合成例3]ポリマー1~2、4~21、23~32、及び比較ポリマー1~5の合成
各重合性単量体の種類や導入比(モル比)を変えた以外は、ポリマー合成例1又は2と同じ手順により、ポリマー1~2、4~21、23~32、比較ポリマー1~5を合成した。表1-1~1-3にポリマー1~32、及び比較ポリマー1~5の単量体の種類と導入比をまとめて示す。また、ポリマーに導入した繰り返し単位の重合性単量体構造を表2~6に示す。なお、ポリマーのMwは、溶剤としてテトラヒドロフランを用いたGPCによるポリスチレン換算測定値である。ただし、P-1~P-6が含まれるポリマーについては、溶剤としてジメチルホルムアミドを用いたGPCによるポリスチレン換算測定値であり、ポリマー1~32、比較ポリマー1~5のMwは、2500~21000、Mw/Mnは1.4~2.2の間であった。
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
【表2】
(A-1を得るための重合性単量体としては、上記モノマー(5)、(6)を用いた。)
【0272】
【表3】
(B-3を得るための重合性単量体としては、上記モノマー(9)、(10)を用いた。)
【0273】
【表4】
(C-1を得るための重合性単量体としては、上記モノマー(3)、(4)を用いた。)
【0274】
【表5】
(E-1を得るための重合性単量体としては、上記モノマー(1)、(2)を用いた。)
【0275】
【表6】
(P-1を得るための重合性単量体としては、上記モノマー(7)、(8)を用いた。)
【0276】
レジスト組成物の調製
[実施例1-1~1-41、比較例1-1~1-5]
合成例で合成したポリマー(ポリマー1~32、比較ポリマー1~5)、酸発生剤(PAG-A~PAG-F)、酸拡散制御剤(Q-1~Q-4)を表7に示す組成で有機溶剤中に溶解し、得られた各溶液を10nmサイズのナイロンフィルター及び3nmUPEフィルターで濾過することにより、レジスト組成物(R-1~R-41、CR-1~CR-5)をそれぞれ調製した。
【0277】
表7-1~7-3中の実施例1-1~1-41及び比較例1-1~1-5で調製したレジスト組成物の有機溶剤としては、PGMEA1,204質量部、乳酸エチル(EL)1,204質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)1,606質量部の混合溶剤を使用した。また、一部の組成物には、添加剤としてフッ素含有ポリマー(D)(ポリマーD1~D2)、架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル(TMGU)を添加した。また、一部の組成物には界面活性剤としてPF-636(OMNOVA SOLUTIONS社製)を添加した。
【0278】
なお、Q-1~4、PAG-A~PAG-F、及びポリマーD1~D2の構造は、以下のとおりである。
【0279】
【0280】
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
【0285】
<現像残渣評価>
調製したレジスト組成物(R-1~R-41、CR-1~CR-5)をACT-M(東京エレクトロン(株)製)を用いてヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理した152mm角の最表面が酸化ケイ素膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で、110℃で600秒間プリベークして膜厚80nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク基板外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
【0286】
レジスト組成物(R-16~R-41、CR-3~CR-5)は描画をせずにそのまま120℃で600秒間ベークを施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行った後、マスク欠陥検査装置(レーザーテック社製 M9650)で現像残渣の評価を行った。また、レジスト組成物(R-1~R-15、CR-1~CR-2)については、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製EBM-5000plus、加速電圧50keV)を用いて全面描画し、120℃で600秒間PEBを施し、2.38質量%TMAH水溶液で現像を行い、マスク欠陥検査装置(レーザーテック社製 M9650)で現像残渣の評価を行った。現像後の総欠陥個数を表8に示す。
【0287】
【0288】
表8の結果から明らかなように、残存オリゴマーを低減した重合性単量体の重合物であるポリマーを含む本発明の化学増幅型レジスト組成物は、従来のレジスト組成物と比べて現像残渣による欠陥の数を大幅に減少させることができる。
【0289】
また、上記レジスト組成物(R-1~R-41、CR-1~CR-5)を上記同様にACT-M(東京エレクトロン(株)製)を用いてヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理した152mm角の最表面が酸化ケイ素膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で、110℃で600秒間プリベークして膜厚80nmのレジスト膜を作製し、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製EBM-5000plus、加速電圧50kV)を用いて露光し、110℃で600秒間PEBを施し、2.38質量%TMAH水溶液で現像を行い、ネガ及びポジ型のパターンを得た。
【0290】
得られたレジストパターンを次のように評価した。作製したパターン付きマスクブランクスを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、200nmの1:1のラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm2)とし、200nmのLSを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)としたところ、いずれのレジストも1:1ラインアンドスペース(LS)において60nm以下の高解像性能が得られた。
【0291】
本発明の化学増幅型レジスト組成物を用いれば、マスク欠陥になり得る現像後残渣を抑制することができる。また、これを用いたレジストパターン形成方法は半導体素子製造、特にフォトマスクブランクの加工におけるフォトリソグラフィーに有用である。
【0292】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。