(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】保持具、保持方法、及び加工方法
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20250328BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20250328BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20250328BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B24B7/04 A
B23Q3/08 Z
H01L21/304 631
H01L21/304 622J
(21)【出願番号】P 2020145894
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴司
(72)【発明者】
【氏名】下谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 寛
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-303180(JP,A)
【文献】特開2013-041973(JP,A)
【文献】特開2003-324142(JP,A)
【文献】特開2019-075407(JP,A)
【文献】特開2014-170848(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0268223(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B24B 7/04
B23Q 3/08
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面が加工される板状被加工物を保持する保持具であって、
保持する板状被加工物より大きいサイズの硬質プレートと、
該硬質プレート以下且つ該板状被加工物より大きいサイズを有し、該硬質プレート上に密着する非粘着性の基材層のみで構成されたシートと、
該シートの外周縁のみを該硬質プレートに接着するシート接着部材と、
該シート上に配設されて該シートに板状被加工物の表面全体を接着する
樹脂であり、かつ硬化前では液状の樹脂であって紫外線の照射又は加熱により硬化した硬化樹脂と、からなる保持具。
【請求項2】
請求項1に記載の保持具で板状被加工物を保持する保持方法であって、
該シート上に該硬化樹脂を介して板状被加工物
の表面全体を接着す
るステップと、
該
板状被加工物の表面全体を接着するステップを実施した後、板状被加工物が接着された該シートを該硬質プレートに密着させ、該シートの外周縁を該硬質プレートに接着するシート接着ステップと、を備えた保持方法。
【請求項3】
請求項1に記載の保持具で板状被加工物を保持する保持方法であって、
該硬質プレート上に該シートを密着させるシート密着ステップと、
該シート密着ステップを実施した後、該シート上に該硬化樹脂を介して板状被加工物
の表面全体を接着す
るステップと、
該シート密着ステップを実施した後、該
板状被加工物の表面全体を接着するステップを実施する前または後に、該シートの外周縁を該硬質プレートに接着するシート接着ステップと、を備えた保持方法。
【請求項4】
該シート密着ステップでは、該硬質プレート上に液体を介して該シートを密着させ、該シートと該硬質プレート間から該液体を除去する、請求項3に記載の保持方法。
【請求項5】
請求項1に記載の保持具を用いた板状被加工物の加工方法であって、
該シート上に該硬化樹脂を介して板状被加工物を接着するとともに該シートを該硬質プレートに密着させ、該シートの外周縁を該硬質プレートに接着した状態とする保持具装着ステップと、
該保持具装着ステップを実施した後、該硬質プレートを保持テーブルで保持し、板状被加工物を露出させる保持ステップと、
該保持ステップを実施した後、板状被加工物に加工を施す加工ステップと、
該加工ステップを実施した後、該硬質プレートの表面と該シート接着部材との間を切断、又は、該シートの該外周縁及び該シート接着部材を切断して、板状被加工物が接着された該シートから該硬質プレートを取り外す硬質プレート取り外しステップと、
該硬質プレート取り外しステップを実施した後、該シートの一端部を湾曲させた後、該一端部を該シートの他端部に向かって板状被加工物の表面に沿って移動させて、該シート及び該硬化樹脂を該シートの一端部から他端部に向かって順に剥離して、板状被加工物を該シートから取り外す板状被加工物取り外しステップと、を備えた加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状被加工物を保持する保持具、保持方法、及び保持具で保持された板状被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板状被加工物であるウェーハの裏面研削や研磨時には、予めウェーハ表面に保護部材を配設してウェーハ表面を保護している。保護部材としては、基材と基材上に形成された糊層とからなる表面保護テープや、硬質プレート(例えば、特許文献1参照)が広く利用されている。
【0003】
表面保護テープは、一般に糊層が軟らかく、研削や研磨時に工具でウェーハ裏面が押圧されるとウェーハがテープに僅かに沈み込み、加工品質が悪化するおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1に示された硬質プレート上に接着材等でウェーハを固着させて加工する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示された硬質プレートは、接着材でウェーハが固定されるために、加工後の薄化されたウェーハを剥離し難く、剥離する際にウェーハを破損させてしまうおそれがある。特許文献1に示された硬質プレートは、特に、外径が200mmや300mm等の大径のウェーハを固着する場合、剥離の際の加工後のウェーハの破損リスクが高まる。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、板状被加工物の加工品質の低下を抑制しながらも、加工後の板状被加工物の破損を抑制することができる保持具、保持方法、及び加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の保持具は、裏面が加工される板状被加工物を保持する保持具であって、保持する板状被加工物より大きいサイズの硬質プレートと、該硬質プレート以下且つ該板状被加工物より大きいサイズを有し、該硬質プレート上に密着する非粘着性の基材層のみで構成されたシートと、該シートの外周縁のみを該硬質プレートに接着するシート接着部材と、該シート上に配設されて該シートに板状被加工物の表面全体を接着する樹脂であり、かつ硬化前では液状の樹脂であって紫外線の照射又は加熱により硬化した硬化樹脂と、からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の保持方法は、前記保持具で板状被加工物を保持する保持方法であって、該シート上に該硬化樹脂を介して板状被加工物の表面全体を接着するステップと、該板状被加工物の表面全体を接着するステップを実施した後、板状被加工物が接着された該シートを該硬質プレートに密着させ、該シートの外周縁を該硬質プレートに接着するシート接着ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の保持方法は、前記保持具で板状被加工物を保持する保持方法であって、該硬質プレート上に該シートを密着させるシート密着ステップと、該シート密着ステップを実施した後、該シート上に該硬化樹脂を介して板状被加工物の表面全体を接着するステップと、該シート密着ステップを実施した後、該板状被加工物の表面全体を接着するステップを実施する前または後に、該シートの外周縁を該硬質プレートに接着するシート接着ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
前記保持方法において、該シート密着ステップでは、該硬質プレート上に液体を介して該シートを密着させ、該シートと該硬質プレート間から該液体を除去しても良い。
【0012】
本発明の加工方法は、前記保持具を用いた板状被加工物の加工方法であって、該シート上に該硬化樹脂を介して板状被加工物を接着するとともに該シートを該硬質プレートに密着させ、該シートの外周縁を該硬質プレートに接着した状態とする保持具装着ステップと、該保持具装着ステップを実施した後、該硬質プレートを保持テーブルで保持し、板状被加工物を露出させる保持ステップと、該保持ステップを実施した後、板状被加工物に加工を施す加工ステップと、該加工ステップを実施した後、該硬質プレートの表面と該シート接着部材との間を切断、又は、該シートの該外周縁及び該シート接着部材を切断して、板状被加工物が接着された該シートから該硬質プレートを取り外す硬質プレート取り外しステップと、該硬質プレート取り外しステップを実施した後、該シートの一端部を湾曲させた後、該一端部を該シートの他端部に向かって板状被加工物の表面に沿って移動させて、該シート及び該硬化樹脂を該シートの一端部から他端部に向かって順に剥離して、板状被加工物を該シートから取り外す板状被加工物取り外しステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、板状被加工物の加工品質の低下を抑制しながらも、加工後の板状被加工物の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る保持具の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された保持具を分解して示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された保持具により保持される板状被加工物を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2中のIV-IV線に沿う断面を誇張して示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示された保持具の変形例の断面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示された保持具の他の変形例の断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る保持方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図8に示された保持方法の仮接着ステップのシート上に配設された硬化樹脂に板状被加工物を対向させた状態の断面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示された硬化樹脂がシートに板状被加工物を接着した状態の断面図である。
【
図11】
図11は、
図8に示された保持方法のシート接着ステップの硬質プレートに表面に板状被加工物を接着したシートを対向させた状態の斜視図である。
【
図12】
図12は、
図11に示された硬質プレートの表面にシートを載置し、シートの外周縁と硬質プレートの表面にシート接着部材を塗布する状態の斜視図である。
【
図13】
図13は、
図12に示された硬質プレートにシートを接着して保持具で板状被加工物を保持した状態の断面図である。
【
図14】
図14は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、
図14に示された加工方法の硬質プレート取り外しステップの硬質プレートの表面とシート接着部材との間にカッターを切り込ませた状態の断面図である。
【
図18】
図18は、
図17に示されたシートから硬質プレートを取り外した状態の断面図である。
【
図19】
図19は、
図14に示された加工方法の硬質プレート取り外しステップの変形例の断面図である。
【
図20】
図20は、
図14に示された加工方法の板状被加工物取り外しステップを示す断面図である。
【
図21】
図21は、実施形態2に係る保持方法の流れを示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、
図21に示された保持方法のシート密着ステップの硬質プレートの表面上に液体を供給した状態の断面図である。
【
図23】
図23は、
図22に示された硬質プレートの表面にシートを密着した状態の断面図である。
【
図25】
図25は、
図21に示された保持方法の仮接着ステップのシート上に配設された硬化樹脂に板状被加工物を対向させた状態の断面図である。
【
図26】
図26は、
図25に示された硬化樹脂がシートに板状被加工物を接着した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る保持具を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る保持具の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された保持具を分解して示す斜視図である。
図3は、
図1に示された保持具により保持される板状被加工物を示す斜視図である。
図4は、
図2中のIV-IV線に沿う断面を誇張して示す断面図である。
図5は、
図1中のV-V線に沿う断面図である。
図6は、
図5に示された保持具の変形例の断面図である。
図7は、
図5に示された保持具の他の変形例の断面図である。
【0017】
(板状被加工物)
実施形態1に係る
図1及び
図2に示された保持具1は、
図3に示された板状被加工物200を保持するものである。実施形態1に係る保持具1により保持される板状被加工物200は、窒化ガリウムで構成されかつ円板状の基板を有する所謂GaNウェーハである。なお、実施形態1では、板状被加工物200は、GaNウェーハであるが、本発明では、GaNウェーハに限らず、基板がサファイアで構成されたウェーハ、基板がSiC(炭化ケイ素)で構成されたSiCウェーハ、又は基板がInP(リン化インジウム)に構成されたInPウェーハ等の基板が硬質材で構成された円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハであるのが好適である。また、本発明では、板状被加工物200は、基板がシリコン、化合物半導体、LT(タンタル酸リチウム)又はLN(ニオブ酸リチウム)で構成されたウェーハでも良い。
【0018】
また、実施形態1では、板状被加工物200は、基板の表面201にIC(Integrated Circuit)、あるいやLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等のデバイスが形成されていないが、本発明では、基板の表面201にデバイスが形成されても良い。
【0019】
(保持具)
保持具1は、
図1及び
図2に示すように、硬質プレート2と、シート3と、硬化樹脂4(
図2に示す)と、シート接着部材5とを備える。硬質プレート2は、保持する板状被加工物より大きいサイズである。
【0020】
実施形態1では、硬質プレート2は、サイズである外径が板状被加工物200の外径よりも大きくかつ厚みが板状被加工物200の厚みより厚い円盤状に形成されている。また、実施形態1では、硬質プレート2は、透光性を有しかつ硬質材料であるガラスにより構成されているが、本発明では、ガラスに限らず、セラミックス又は金属で構成されても良い。
【0021】
また、実施形態1では、硬質プレート2の表面21は、
図4に示すように、中心の厚みが最も薄くかつ外縁に向かうにしたがって徐々に厚みが厚くなるとともに稜線が形成されることがない曲面で形成されている。即ち、硬質プレート2の表面21は、表面21から凹の曲面に形成されている。硬質プレート2の外径が4インチ(約100mm)である場合、硬質プレート2の中心の厚みと、硬質プレート2の外縁の厚みとの差は、2μm以上でかつ3μm以下である。なお、硬質プレート2の表面21の曲面は、目視では確認することが困難ななだらかな曲面である。
図4は、硬質プレート2の表面21の曲面の曲率を誇張して示し、他の図は、硬質プレート2の表面21の曲面を省略している。なお、実施形態1では、硬質プレート2の表面21は、前述した凹状の曲面で形成されているが、本発明では、硬質プレート2の表面21は、平坦に形成されて、硬質プレート2の厚みが一定であっても良い。
【0022】
なお、硬質プレート2の表面21の曲面は、硬質プレート2の表面21の裏側の裏面22が研磨装置のチャックテーブルに保持され、チャックテーブルとともに軸心回りに回転された硬質プレート2の表面21が軸心回りに回転される研磨パッドにより研磨させて形成される。具体的には、側方からみて硬質プレート2の表面21のほぼ半分に研磨パッドが当接し、チャックテーブルの軸心と研磨パッドの軸心とが間隔をあけて配置され、チャックテーブルの軸心の鉛直方向に対する傾きが調整されて、硬質プレート2の表面21の曲面が形成される。
【0023】
シート3は、硬質プレート2以下且つ板状被加工物200より大きいサイズを有し、硬質プレート2の表面21上に密着するものである。シート3は、サイズである外径が硬質プレート2の外径以下でかつ板状被加工物200の外径よりも大きいとともに、厚みが硬質プレート2の厚みより薄い円板状に形成され、厚みが一定に形成されている。シート3は、粘着層を備えずに非粘着性の基材層のみで構成されている。実施形態1では、シート3の基材層は、PET(ポリエチレンテレフタラート)又はPO(ポリオレフィン)等の可撓性を有する樹脂により構成されている。また、本発明では、シート3の基材層は、硬化樹脂4と同じ材質で構成されて、変形自在な材質により構成されても良い。
【0024】
硬化樹脂4は、シート3上に配設されてシート3に板状被加工物200を仮接着するものである。硬化樹脂4は、液状の樹脂であって、外的刺激により硬化する樹脂により構成されている。硬化樹脂4は、液状の状態でシート3と板状被加工物200との間に配設され、外的刺激が付与されることで硬化し、板状被加工物200をシート3に接着して固定する樹脂で構成されている。実施形態1では、硬化樹脂4は、外的刺激として紫外線108(
図10に示す)が照射されることで、硬化するが、本発明では、紫外線108の照射に限らず、例えば加熱等の他の外的刺激が付与されることで硬化するものでも良い。
【0025】
シート接着部材5は、
図5に示すように、シート3の外周縁31を硬質プレート2の表面21に接着するものである。なお、外周縁31とは、硬化樹脂4によりシート3に板状被加工物200が接着、固定された際に、シート3の板状被加工物200の外縁よりも外周側の部分をいう。シート接着部材5は、液状の状態で、シート3の外周縁31と硬質プレート2の表面21とに亘って、シート3の全周に亘って塗布され、硬化して、シート3の外周縁31を硬質プレート2の表面21に接着、固定する接着剤である。シート接着部材5は、硬化樹脂4と同じ材質で構成されても良い。この場合、シート接着部材5は、シート3の外周縁31と硬質プレート2の表面21とに亘って、シート3の全周に亘って塗布され塗布された後、外的刺激が付与されて硬化する。
【0026】
また、本発明では、シート接着部材5は、前述した接着剤に限定されることなく、例えば、
図6に示す粘着テープ5-1により構成されても良く、
図7に示す両面テープ5-2により構成されても良い。なお、
図6に示す粘着テープ5-1は、非粘着性の樹脂で構成された基材層と、基材層の一方の表面に積層され粘着性の樹脂で構成された粘着層とを備え、粘着層がシート3の外周縁31と硬質プレート2の表面21とに亘って貼着して、シート3の外周縁31を硬質プレート2の表面21に接着、固定する。
【0027】
図7に示す両面テープ5-2は、非粘着性の樹脂で構成された基材層と、基材層の両表面に積層され粘着性の樹脂で構成された粘着層とを備え、シート3の外周縁31と硬質プレート2の表面21との間に挿入され、一方の粘着層がシート3の外周縁31に貼着し、他方の粘着層が硬質プレート2の表面21に貼着して、シート3の外周縁31を硬質プレート2の表面21に接着、固定する。
【0028】
前述した構成の保持具1は、硬化樹脂4によりシート3上に板状被加工物200を接着して、板状被加工物200を保持する。
【0029】
(保持方法)
次に、実施形態1に係る保持方法を図面に基づいて説明する。
図8は、実施形態1に係る保持方法の流れを示すフローチャートである。実施形態1に係る保持方法は、前述した構成の保持具1で板状被加工物200を保持する方法である。実施形態1に係る保持方法は、
図8に示すように、仮接着ステップ1001と、シート接着ステップ1002とを備える。
【0030】
(仮接着ステップ)
図9は、
図8に示された保持方法の仮接着ステップのシート上に配設された硬化樹脂に板状被加工物を対向させた状態の断面図である。
図10は、
図9に示された硬化樹脂がシートに板状被加工物を接着した状態の断面図である。仮接着ステップ1001は、シート3上に硬化樹脂4を介して板状被加工物200を仮接着するステップである。
【0031】
仮接着ステップ1001では、
図9に示すように、仮接着装置100のガラス等の透光性の材料で構成された支持台101の水平方向と平行でかつ平坦な支持面102にシート3を載置し、シート3上に硬化前の硬化樹脂4を供給する。実施形態1では、硬化樹脂4をシート3の中央上に供給する。仮接着ステップ1001では、仮接着装置100が、開閉弁103を開いて吸引源104により保持部材105の水平方向と平行でかつ平坦な保持面106に板状被加工物200の表面201の裏側の裏面202を吸引保持し、板状被加工物200の表面201をシート3上の硬化樹脂4に対向させる。
【0032】
仮接着ステップ1001では、
図10に示すように、仮接着装置100が、保持部材105の保持面106に吸引保持した板状被加工物200をシート3に近づけて、板状被加工物200をシート上の硬化樹脂4に押し付ける。すると、保持部材105に吸引保持された板状被加工物200がシート3上の硬化樹脂4に接触し、板状被加工物200の移動とともに、シート3上の硬化樹脂4がシート3の外周に向かって押し広げられる。そして、仮接着ステップ1001では、硬化樹脂4の厚みが所定の厚みとなる位置までシート3に近づけられると、硬化樹脂4が板状被加工物200の表面201全体を被覆することとなる。
【0033】
実施形態1において、仮接着ステップ1001では、仮接着装置100が、紫外線ランプ107を点灯させて、支持台101越しに硬化樹脂4に紫外線108を照射して、硬化樹脂4を硬化させて、シート3に板状被加工物200の表面201側を接着、固定する。なお、実施形態1では、板状被加工物200をシート3と同軸となる位置に配置する。
【0034】
(シート接着ステップ)
図11は、
図8に示された保持方法のシート接着ステップの硬質プレートに表面に板状被加工物を接着したシートを対向させた状態の斜視図である。
図12は、
図11に示された硬質プレートの表面にシートを載置し、シートの外周縁と硬質プレートの表面にシート接着部材を塗布する状態の斜視図である。
図13は、
図12に示された硬質プレートにシートを接着して保持具で板状被加工物を保持した状態の断面図である。
【0035】
シート接着ステップ1002は、仮接着ステップ1001を実施した後、板状被加工物200が仮接着されたシート3を硬質プレート2に密着させ、シート3の外周縁31を硬質プレート2に接着するステップである。シート接着ステップ1002では、
図11に示すように、板状被加工物200が接着、固定されたシート3を硬質プレート2の表面21に対向させた後、硬質プレート2の表面21にシート3を載置する。シート接着ステップ1002では、板状被加工物200を硬質プレート2に対して押圧することで、シート3と硬質プレート2との間から大気を押し出し、板状被加工物200が仮接着されたシート3を硬質プレート2に密着させる。実施形態1では、硬質プレート2の表面21が前述した凹状の曲面に形成されているために、シート3と硬質プレート2との間の大気が押し出されてシート3が硬質プレート2に密着した後に、シート3が平坦に戻ろうとするため、シート3と硬質プレート2の表面21との間の気圧が非常に低くなり、周りの気圧との違いでシート3が硬質プレート2の表面21に密着し、シート3を介して板状被加工物200が硬質プレート2に押しつけられる。なお、実施形態1では、シート3及び板状被加工物200を硬質プレート2と同軸となる位置に配置する。
【0036】
シート接着ステップ1002では、
図12に示すように、シート3の外周縁31と硬質プレート2の表面21とに亘ってノズル109からシート接着部材5を塗布する。シート接着ステップ1002では、全周に亘ってシート3の外周縁31と硬質プレート2の表面21にシート接着部材5を塗布した後、シート接着部材5を硬化させて、シート3の外周縁31を硬質プレート2の表面21に接着する。こうして、実施形態1に係る保持方法は、
図13に示すように、シート3と硬質プレート2との界面が全周に渡って封止されて、保持具1に板状被加工物200を保持する。
【0037】
(加工方法)
次に、実施形態1に係る加工方法を図面に基づいて説明する。
図14は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。実施形態1に係る加工方法は、前述した構成の保持具1を用いた板状被加工物200の加工方法である。実施形態1に係る加工方法は、
図14に示すように、保持具装着ステップ2001と、保持ステップ2002と、加工ステップ2003と、硬質プレート取り外しステップ2004と、板状被加工物取り外しステップ2005とを備える。
【0038】
(保持具装着ステップ)
保持具装着ステップ2001は、シート3上に硬化樹脂4を介して板状被加工物200を仮接着するとともにシート3を硬質プレート2に密着させ、シート3の外周縁31を硬質プレート2に接着した状態とするステップである。実施形態1では、保持具装着ステップ2001は、前述した保持方法である。
【0039】
(保持ステップ)
図15は、
図14に示された加工方法の保持ステップを示す断面図である。保持ステップ2002は、保持具装着ステップ2001を実施した後、硬質プレート2を加工装置110の保持テーブル111で保持し、板状被加工物200を露出させるステップである。保持ステップ2002では、
図15に示すように、加工装置110が、保持テーブル111の保持面112に硬質プレート2の裏面22側が載置され、開閉弁113を開いて吸引源114により保持面112に硬質プレート2を吸引保持する。
【0040】
なお、実施形態1では、加工装置110は、板状被加工物200を加工である研削加工する研削装置である。本発明では、加工装置110は、研削装置に限定されず、板状被加工物200を加工である化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing)加工又は乾式研磨(ドライポリッシュ)加工等の研磨加工する研磨装置、プラズマエッチング加工するプラズマエッチング装置、又はレーザー加工するレーザー加工装置でも良い。
【0041】
(加工ステップ)
図16は、
図14に示された加工方法の加工ステップを示す断面図である。加工ステップ2003は、保持ステップ2002を実施した後、板状被加工物200に加工を施すステップである。実施形態1において、加工ステップ2003では、板状被加工物200に加工である研削加工を施すが、本発明では、研削加工に限定されず、板状被加工物200に化学機械研磨加工又は乾式研磨加工等の研磨加工、プラズマエッチング加工又はレーザー加工を施しても良い。
【0042】
実施形態1において、加工ステップ2003では、
図16に示すように、加工装置110が保持テーブル111を軸心回りに回転しつつ研削ユニット115の研削ホイール116を軸心回りに回転させて、研削ホイール116の研削砥石117を板状被加工物200の裏面202に接触させて、裏面202を研削する。加工ステップ2003では、加工装置110が所定の厚みになるまで板状被加工物200を研削して薄化する。なお、実施形態1において、加工ステップ2003では、加工装置110が研削時に図示しないノズルから研削砥石117と板状被加工物200とが接触する加工領域に対して研削水を供給する。実施形態1に係る保持具1は、シート3の外周縁31がシート接着部材5で硬質プレート2に接着されるとともに、シート3と硬質プレート2との界面が全周に渡って封止されているので、加工時に液体(研削水)がシート3と硬質プレート2の界面に浸入してシート3が剥がれるのを防止することができる。
【0043】
(硬質プレート取り外しステップ)
図17は、
図14に示された加工方法の硬質プレート取り外しステップの硬質プレートの表面とシート接着部材との間にカッター120を切り込ませた状態の断面図である。
図18は、
図17に示されたシートから硬質プレートを取り外した状態の断面図である。
図19は、
図14に示された加工方法の硬質プレート取り外しステップの変形例の断面図である。
【0044】
硬質プレート取り外しステップ2004は、加工ステップ2003を実施した後、板状被加工物200が仮接着されたシート3から硬質プレート2を取り外すステップである。実施形態1において、硬質プレート取り外しステップ2004では、
図17に示すように、カッター120をシート3の外周側から硬質プレート2の表面21と、シート接着部材5及びシート3との間に切り込ませる。実施形態1において、硬質プレート取り外しステップ2004では、カッター120とシート3とをシート3の周方向に相対的に少なくとも1周移動させて、全周に亘って、硬質プレート2の表面21と、シート接着部材5との間を切断する。硬質プレート取り外しステップ2004では、
図18に示すように、板状被加工物200が接着、固定されたシート3を硬質プレート2の表面21から取り外す。なお、実施形態1では、シート3の外周縁31の全周にシート接着部材5が残存している。
【0045】
なお、本発明において、硬質プレート取り外しステップ2004では、
図19に示すように、カッター120を板状被加工物200側からシート接着部材5及びシート3の外周縁に硬質プレート2に到達するまで切り込ませて、カッター120とシート3とをシート3の周方向に相対的に少なくとも1周移動させて、シートの外周縁31及びシート接着部材5を切断して、シート3を硬質プレート2の表面21から取り外しても良い。
【0046】
(板状被加工物取り外しステップ)
図20は、
図14に示された加工方法の板状被加工物取り外しステップを示す断面図である。板状被加工物取り外しステップ2005は、硬質プレート取り外しステップ2004を実施した後、板状被加工物200をシート3から取り外すステップである。
【0047】
板状被加工物取り外しステップ2005では、剥離装置130が、保持テーブル131の保持面132に板状被加工物200の裏面202側が載置され、開閉弁133を開いて吸引源134により保持面132を吸引して、保持テーブル131の保持面132に板状被加工物200を吸引保持する。板状被加工物取り外しステップ2005では、
図20に示すように、剥離装置130が、シート3の一端部を挟持部135に挟持し、シート3の一端部を湾曲させるように挟持部135を移動させた後、挟持部135をシート3の他端部に向かって板状被加工物200の表面201に沿って移動させて、シート3及び硬化樹脂4をシート3の一端部から他端部に向かって順に剥離する。
【0048】
以上説明した実施形態1に係る保持具1は、板状被加工物200が紫外線108の照射により硬化した硬化樹脂4により接着されたシート3を硬質プレート2に密着させてシート3の外周縁31のみが硬質プレート2に固定される。このために、保持具1は、板状被加工物200を硬質プレート2、硬化した硬化樹脂4及び粘着層を備えずに非粘着性の基材層のみで構成されたシート3により保持することとなり、粘着層を有する表面保護テープ等よりも、板状被加工物200を加工する際の保持具1自体の変形を抑制することができる。
【0049】
また、保持具1は、シート3の外周縁31を硬質プレート2から取り外し、シート3を屈曲させて板状被加工物200から除去できるため、板状被加工物200の破損リスクを低減できる。
【0050】
その結果、保持具1は、板状被加工物200の加工品質の低下を抑制しながらも、加工後の板状被加工物200の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【0051】
また、保持具1は、硬質プレート2の表面21が前述した曲面に形成されているので、硬質プレート2の表面21にシート3を密着させることができる。
【0052】
また、実施形態1に係る保持方法及び加工方法は、前述した保持具1に板状被加工物200を保持するので、板状被加工物200の加工品質の低下を抑制しながらも、加工後の板状被加工物200の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【0053】
〔実施形態2〕
実施形態2に係る保持方法を図面に基づいて説明する。
図21は、実施形態2に係る保持方法の流れを示すフローチャートである。なお、実施形態2の説明では、
図22、
図23、
図24、
図25、
図26の実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明する。実施形態2に係る保持方法は、実施形態1と同様に、前述した構成の保持具1で板状被加工物200を保持する方法である。実施形態2に係る保持方法は、
図21に示すように、シート密着ステップ1003と、シート接着ステップ1002-2と、仮接着ステップ1001-2とを備える。
【0054】
(シート密着ステップ)
図22は、
図21に示された保持方法のシート密着ステップの硬質プレートの表面上に液体を供給した状態の断面図である。
図23は、
図22に示された硬質プレートの表面にシートを密着した状態の断面図である。シート密着ステップ1003は、硬質プレート2の表面21上にシート3を密着させるステップである。
【0055】
シート密着ステップ1003では、
図22に示すように、硬質プレート2の表面21の中央に揮発性の液体6を、この液体6が硬質プレート2の外縁から垂れない程度の量、供給する。なお、実施形態2では、液体6として純水を供給する。シート密着ステップ1003では、密着装置140が、開閉弁141を開いて吸引源142により保持部材143の水平方向と平行でかつ平坦な保持面144にシート3を吸引保持し、シート3を硬質プレート2の表面21上の液体6に対向させる。
【0056】
シート密着ステップ1003では、保持部材143の保持面144に吸引保持したシート3を硬質プレート2に近づけて、シート3を硬質プレート2上の液体6に押し付ける。すると、保持部材143に吸引保持されたシート3が硬質プレート2上の液体6に接触し、シート3の移動とともに、硬質プレート2上の液体6が硬質プレート2の外周に向かって押し広げられ、シート3が硬質プレート2の表面21に近づくのにしたがってシート3と硬質プレート2の表面21との間から液体6が排出される。また、シート3と硬質プレート2との間に残存した僅かな液体6は、シート3の密着後所定時間(例えば、24時間)経過することで、シート3を通じて蒸散する。
【0057】
そして、シート密着ステップ1003では、
図23に示すように、硬質プレート2の表面21にシート3を密着させる。なお、シート密着ステップ1003では、シート3を密着させる前に、硬質プレート2の表面21に液体6を供給しておくので、シート3を硬質プレート2の表面21に密着させることで、シート3と硬質プレート2との間に大気が残存することを抑制できる。こうして、実施形態2では、シート密着ステップ1003では、硬質プレート2の表面21上に液体6を介してシート3を密着させ、シート3と硬質プレート2の表面21との間から液体6を除去することとなる。なお、実施形態2では、シート3を硬質プレート2と同軸となる位置に配置する。
【0058】
(シート接着ステップ)
図24は、
図21に示された保持方法のシート接着ステップを示す断面図である。シート接着ステップ1002-2は、シート密着ステップ1003を実施した後、仮接着ステップ1001-2を実施する前に、シート3の外周縁31を硬質プレート2に接着するステップである。
【0059】
シート接着ステップ1002-2は、実施形態1に係る保持方法のシート接着ステップ1002と同様に、シート接着部材5によりシート3の外周縁31を硬質プレート2に接着する。なお、実施形態2では、シート接着ステップ1002-2は、シート密着ステップ1003を実施した後、仮接着ステップ1001-2を実施する前に実施されるが、本発明では、これに限定されることなく、シート密着ステップ1003と仮接着ステップ1001-2とを実施した後に実施されても良い。
【0060】
(仮接着ステップ)
図25は、
図21に示された保持方法の仮接着ステップのシート上に配設された硬化樹脂に板状被加工物を対向させた状態の断面図である。
図26は、
図25に示された硬化樹脂がシートに板状被加工物を接着した状態の断面図である。仮接着ステップ1001は、シート密着ステップ1003を実施した後、シート3上に硬化樹脂4を介して板状被加工物200を仮接着するステップである。
【0061】
仮接着ステップ1001-2では、
図25に示すように、仮接着装置100のガラス等の透光性の材料で構成された支持台101の支持面102に硬質プレート2を載置し、硬質プレート2の表面21上のシート3上に硬化前の硬化樹脂4を供給する。実施形態2では、硬化樹脂4をシート3の中央上に供給する。仮接着ステップ1001では、仮接着装置100が、開閉弁103を開いて吸引源104により保持部材105の保持面106に板状被加工物200の裏面202を吸引保持し、板状被加工物200の表面201をシート3上の硬化樹脂4に対向させる。
【0062】
仮接着ステップ1001では、
図26に示すように、仮接着装置100が、保持部材105の保持面106に吸引保持した板状被加工物200をシート3に近づけて、板状被加工物200をシート上の硬化樹脂4に押し付ける。すると、保持部材105に吸引保持された板状被加工物200がシート3上の硬化樹脂4に接触し、板状被加工物200の移動とともに、シート3上の硬化樹脂4がシート3の外周に向かって押し広げられる。そして、仮接着ステップ1001では、硬化樹脂4の厚みが所定の厚みとなる位置までシート3に近づけられると、硬化樹脂4が板状被加工物200の表面201全体を被覆することとなる。
【0063】
実施形態2において、仮接着ステップ1001では、
図26に示すように、仮接着装置100が、紫外線ランプ107を点灯させて、支持台101及び硬質プレート2越しに硬化樹脂4に紫外線108を照射して、硬化樹脂4を硬化させて、シート3に板状被加工物200の表面201側を接着、固定する。なお、実施形態2では、板状被加工物200をシート3と同軸となる位置に配置する。こうして、実施形態2に係る保持方法は、保持具1に板状被加工物200を保持する。
【0064】
実施形態2に係る保持方法は、実施形態1と同様に、前述した構成の保持具1に板状被加工物200を保持するので、板状被加工物200の加工品質の低下を抑制しながらも、加工後の板状被加工物200の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 保持具
2 硬質プレート
3 シート
4 硬化樹脂
5 シート接着部材
6 液体
31 外周縁
111 保持テーブル
200 板状被加工物
1001,1001-2 仮接着ステップ
1002,1002-2 シート接着ステップ
1003 シート密着ステップ
2001 保持具装着ステップ
2002 保持ステップ
2003 加工ステップ
2004 硬質プレート取り外しステップ
2005 板状被加工物取り外しステップ