(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】伝送システム
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20250328BHJP
H03M 13/05 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
H04L1/00 B
H03M13/05
(21)【出願番号】P 2021036549
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100171446
【氏名又は名称】高田 尚幸
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100171930
【氏名又は名称】木下 郁一郎
(72)【発明者】
【氏名】倉掛 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中戸川 剛
(72)【発明者】
【氏名】川本 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】小山 智史
(72)【発明者】
【氏名】河原木 政宏
(72)【発明者】
【氏名】白戸 諒
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆裕
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/048520(WO,A1)
【文献】特開昭56-020354(JP,A)
【文献】特開2004-289621(JP,A)
【文献】特表2017-509262(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0182918(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
H03M 13/05
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一のデータ列を、第1出力端および第2出力端からそれぞれ出力する供給元装置と、
前記供給元装置の前記第1出力端から出力された前記データ列を入力し、第1のデータ列から第Nのデータ列(N≧2)までに分割するとともに、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までに基づいて冗長データ列である第(N+1)のデータ列を生成し、前記第1のデータ列から前記第(N+1)のデータ列までのそれぞれを送信する第1送信装置と、
前記供給元装置の前記第2出力端から出力された前記データ列を入力し、第1のデータ列から第Nのデータ列までに分割するとともに、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までに基づいて冗長データ列である第(N+1)のデータ列を生成し、前記第1のデータ列から前記第(N+1)のデータ列までのそれぞれを送信する第2送信装置と、
前記第1送信装置が送信した第iのデータ列(1≦i≦N+1)と前記第2送信装置が送信した第iのデータ列のいずれかを選択してそれぞれ送信する(N+1)個の第iの集約装置と、
前記第iの集約装置(1≦i≦N+1)が送信した第iのデータ列を受信して、前記第iのデータ列を第1の出力端と第2の出力端のそれぞれから出力する(N+1)個の第iのスイッチと、
前記第iのスイッチの第1の出力端から出力された第iのデータ列(1≦i≦N+1)をそれぞれ受信し、受信した第1のデータ列から第(N+1)のデータ列に基づいて、第1のデータ列から第Nのデータ列までを統合して成る出力データ列を出力する第1受信装置と、
前記第iのスイッチの第2の出力端から出力された第iのデータ列(1≦i≦N+1)をそれぞれ受信し、受信した第1のデータ列から第(N+1)のデータ列に基づいて、第1のデータ列から第Nのデータ列までを統合して成る出力データ列を出力する第2受信装置と、
前記第1受信装置が出力した出力データ列を第1入力端から取得し、前記第2受信装置が出力した出力データ列を第2入力端から取得する、供給先装置と、
を含み、
前記第1送信装置および前記第2送信装置のそれぞれは、
第1のデータ列から第Nのデータ列(N≧2)までのすべてのデータ列に基づく冗長データ列を、第(N+1)のデータ列として生成する冗長データ列生成部と、
前記第1のデータ列から前記第(N+1)のデータ列までの各データ列を送信する送信部と、
を備え、
前記冗長データ列は、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までのうちの第iのデータ列(任意のi;1≦i≦N)が欠損したときに、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までの前記第iのデータ列を除く他のデータ列と前記冗長データ列とに基づいて前記第iのデータ列を復元可能とするものであり、
前記第1受信装置および前記第2受信装置のそれぞれは、
第1のデータ列から第(N+1)のデータ列(N≧2)までの各データ列をそれぞれ受信する受信部と、
(a)前記第1のデータ列から第Nのデータ列までのデータ列のすべてを正常に受信できる場合には、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までを出力し、
(b)前記第1のデータ列から第Nのデータ列までのデータ列のうちの第iのデータ列(任意のi;1≦i≦N)が受信できなかった場合には、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までの前記第iのデータ列を除く他のデータ列と、冗長データ列である前記第(N+1)のデータ列と、に基づいて前記第iのデータ列を復元したうえで、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までを出力する、
復元部と、を備える、
伝送システム。
【請求項2】
前記第1送信装置および前記第2送信装置のそれぞれが備える前記冗長データ列生成部は、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までの各ビットまたは各ビットの否定の排他的論理和を演算することによって、前記冗長データ列を生成し、
前記第1受信装置および前記第2受信装置のそれぞれが備える前記復元部は、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までのうちの前記第iのデータ列を除く(N-1)個のデータ列および前記冗長データ列の、各ビットまたは各ビットの否定の排他的論理和を演算することによって、前記第iのデータ列を復元する、
請求項1に記載の伝送システム。
【請求項3】
前記第1送信装置および前記第2送信装置のそれぞれが備える前記送信部は、前記第1のデータ列から第(N+1)のデータ列までのそれぞれを個別の通信回線で送信し、
前記第1受信装置および前記第2受信装置のそれぞれが備える前記受信部は、前記第1のデータ列から第(N+1)のデータ列までのそれぞれを個別の通信回線で受信する、
請求項1または2に記載の伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、伝送システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放送番組の制作等においても、IP(インターネットプロトコル)を用いた信号の伝送が実用化されてきている。番組制作などにおいて高画質且つ低遅延の映像信号をIP回線で伝送する場合、伝送フォーマットとしては、SMPTE ST2022-6、ST2110-20、あるいはST2110-22が利用されることが多い。これらの伝送フォーマットは、いずれもRTP/UDP/IPの形式である。なお、RTPは、「Realtime Transport Protocol」の略である。また、UDPは、「User Datagram Protocol」の略である。
【0003】
RTP/UDP/IPを用いた伝送自体においては、TCP(Transmission Control Protocol)が行うような送達確認は行われない。伝送中の誤りへの対策としては、SMPTE ST2022-7による2系統での伝送が一般的に利用される。つまり、送信側からは、RTPパケットとしては同じものを2系統送信する。受信側では、それらの2系統のRTPパケットを受信して、正しく受信できる側のパケットを利用する。受信側において2系統とも受信できる場合には、そのいずれか一方のパケットを利用する。
【0004】
SMPTE ST2022-7を用いて映像信号の伝送を行った場合、2系統のうちの片方の系統において伝送エラーによってあるRTPパケットが失われても、他方の系統においてそのRTPパケットが受信される。そのため、受信側において映像は乱れない。
【0005】
非特許文献1では、映像・音声信号のIPトランスポート方式について記載されている。非特許文献1は、SMPTE ST2022-7による2重化にも言及している。また、非特許文献2においても、SMPTE ST2022について記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】川本潤一郎,映像・音声信号のIPトランスポート方式,講座 放送業界におけるIP化 IP番組制作とその関連技術の解説 第3回,映像情報メディア学会誌,VOL.73,No.4,pp.680~686,2019年.
【文献】川本潤一郎,SMPTE ST 2022,知っておきたいキーワード第121回,映像情報メディア学会誌,VOL.72,No.2,pp.247~250,2018年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、放送番組の制作などにおいて、高画質且つ低遅延の映像信号を2重化したIP回線で伝送する場合、コストが問題となり得る。特に、WAN(ワイドエリアネットワーク)を経由して遠隔地に向けて映像信号を伝送する場合には、回線コストが問題となり得る。
【0008】
一例として、非圧縮の2K映像(横1920画素×縦1080画素、YCbCr 4:2:2、60フレーム毎秒、プログレッシブ)を伝送する際のデータ量は、約1.3ギガビット毎秒(Gbps)である。なお、ここで、Yは輝度信号、CbおよびCrはそれぞれ青系統および赤系統の色差信号を表す。つまり、この映像信号の1系統分を伝送するためには、1Gbpsの通信回線では不十分であり、10Gbpsの通信回線を必要とする。SMPTE ST2022-7の仕組みで2系統分を伝送するためには、10Gbpsの通信回線2本が必要となり、コストが問題となり得る。なお、イーサネットは、1Gbps、10Gbps、25Gbps、40Gbps、100Gbps、・・・が規格化されており、1つ上の速度を確保するためには大きなコストアップになる場合がある。
【0009】
別の例として、2K映像(横1920画素×縦1080画素、YCbCr 4:2:2、60フレーム毎秒、プログレッシブ)を軽圧縮で1/6程度に圧縮した場合には、1映像当たりのデータ量は約0.22ギガビット毎秒である。つまり、このような圧縮映像4本を、1本の1Gbps通信回線で伝送することは可能である。圧縮映像4本を2系統分伝送するためには、2本の1Gbps通信回線で伝送することが可能である。しかしながら、このような圧縮映像6本を伝送するためには、10Gbpsの通信回線を必要とする。圧縮映像6本を2系統分伝送するためには、2本の10Gbps通信回線、または4本の1Gbps通信回線を必要とする。
【0010】
別の例として、スタジオ間での映像信号の伝送においても、例えば40ギガビットイーサネットを必要とする場合には高コストだが、25ギガビットイーサネットで済めばコストを抑制できる、という場合も考えられる。
【0011】
本発明は、上記のような事情を考量して為されたものであり、伝送エラーに対応可能な冗長性を確保しながら、信号のIP伝送を低コストで実現することのできる通信装置、伝送システム、およびプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]上記の課題を解決するため、本発明の一態様による通信装置は、第1のデータ列から第Nのデータ列(N≧2)までのすべてのデータ列に基づく冗長データ列を、第(N+1)のデータ列として生成する冗長データ列生成部と、前記第1のデータ列から前記第(N+1)のデータ列までの各データ列を送信する送信部と、を備え、前記冗長データ列は、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までのうちの第iのデータ列(任意のi;1≦i≦N)が欠損したときに、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までの前記第iのデータ列を除く他のデータ列と前記冗長データ列とに基づいて前記第iのデータ列を復元可能とするものである、という通信装置である。
【0013】
[2]また、本発明の一態様は、上記の通信装置において、前記冗長データ列生成部は、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までの各ビットまたは各ビットの否定の排他的論理和を演算することによって、前記冗長データ列を生成するものである。
【0014】
[3]また、本発明の一態様は、上記の通信装置において、前記送信部は、前記第1のデータ列から第(N+1)のデータ列までのそれぞれを個別の通信回線で送信するものである。
【0015】
[4]また、本発明の一態様による通信装置は、第1のデータ列から第(N+1)のデータ列(N≧2)までの各データ列をそれぞれ受信する受信部と、(a)前記第1のデータ列から第Nのデータ列までのデータ列のすべてを正常に受信できる場合には、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までを出力し、(b)前記第1のデータ列から第Nのデータ列までのデータ列のうちの第iのデータ列(任意のi;1≦i≦N)が受信できなかった場合には、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までの前記第iのデータ列を除く他のデータ列と、冗長データ列である前記第(N+1)のデータ列と、に基づいて前記第iのデータ列を復元したうえで、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までを出力する、復元部と、を備えるものである。
【0016】
[5]また、本発明の一態様は、上記の通信装置において、前記復元部は、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までのうちの前記第iのデータ列を除く(N-1)個のデータ列および前記冗長データ列の、各ビットまたは各ビットの否定の排他的論理和を演算することによって、前記第iのデータ列を復元するものである。
【0017】
[6]また、本発明の一態様は、上記の通信装置において、前記受信部は、前記第1のデータ列から第(N+1)のデータ列までのそれぞれを個別の通信回線で受信するものである。
【0018】
[7]また、本発明の一態様による伝送システムは、同一のデータ列を、第1出力端および第2出力端からそれぞれ出力する供給元装置と、前記供給元装置の前記第1出力端から出力された前記データ列を入力し、第1のデータ列から第Nのデータ列(N≧2)までに分割するとともに、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までに基づいて冗長データ列である第(N+1)のデータ列を生成し、前記第1のデータ列から前記第(N+1)のデータ列までのそれぞれを送信する第1送信装置と、前記供給元装置の前記第2出力端から出力された前記データ列を入力し、第1のデータ列から第Nのデータ列までに分割するとともに、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までに基づいて冗長データ列である第(N+1)のデータ列を生成し、前記第1のデータ列から前記第(N+1)のデータ列までのそれぞれを送信する第2送信装置と、前記第1送信装置が送信した第iのデータ列(1≦i≦N+1)と前記第2送信装置が送信した第iのデータ列のいずれかを選択してそれぞれ送信する(N+1)個の第iの集約装置と、前記第iの集約装置(1≦i≦N+1)が送信した第iのデータ列を受信して、前記第iのデータ列を第1の出力端と第2の出力端のそれぞれから出力する(N+1)個の第iのスイッチと、前記第iのスイッチの第1の出力端から出力された第iのデータ列(1≦i≦N+1)をそれぞれ受信し、受信した第1のデータ列から第(N+1)のデータ列に基づいて、第1のデータ列から第Nのデータ列までを統合して成る出力データ列を出力する第1受信装置と、前記第iのスイッチの第2の出力端から出力された第iのデータ列(1≦i≦N+1)をそれぞれ受信し、受信した第1のデータ列から第(N+1)のデータ列に基づいて、第1のデータ列から第Nのデータ列までを統合して成る出力データ列を出力する第2受信装置と、前記第1受信装置が出力した出力データ列を第1入力端から取得し、前記第2受信装置が出力した出力データ列を第2入力端から取得する、供給先装置と、を含み、前記第1送信装置および前記第2送信装置のそれぞれは、上記[1]から[3]までのいずれか一項に記載の通信装置であり、前記第1受信装置および前記第2受信装置のそれぞれは、上記[4]から[6]までのいずれか一項に記載の通信装置である、という伝送システムである。
【0019】
[8]また、本発明の一態様は、コンピューターを、上記[1]から[6]までのいずれか一項に記載の通信装置、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、通信装置は、単一通信回線の障害等に耐え得る冗長性を確保しながら、伝送量をより小さくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態による伝送システムが持つ、送信装置および受信装置の概略機能構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態による送信装置内の分配部の処理を示す概略図である。
【
図3】第1実施形態による受信装置内の統合部の処理を示す概略図である。
【
図4】第2実施形態による伝送システムの概略機能構成を示すブロック図である。
【
図5】第2実施形態における、装置間のパケットの伝送の例を示す概略図である。
【
図6】第3実施形態による伝送システムの概略機能構成を示すブロック図である。
【
図7】第3実施形態における、装置間のパケットの伝送の例を示す概略図(1/3)である。
【
図8】第3実施形態における、装置間のパケットの伝送の例を示す概略図(2/3)である。
【
図9】第3実施形態における、装置間のパケットの伝送の例を示す概略図(3/3)である。
【
図10】第4実施形態による伝送システムの概略機能構成を示すブロック図である。
【
図11】第4実施形態における、装置間のパケットの伝送の例を示す概略図(1/3)である。
【
図12】第4実施形態における、装置間のパケットの伝送の例を示す概略図(2/3)である。
【
図13】第4実施形態における、装置間のパケットの伝送の例を示す概略図(3/3)である。
【
図14】第5実施形態による伝送システムの概略機能構成を示すブロック図である。
【
図15】第5実施形態における、装置間のパケットの伝送の例を示す概略図である。
【
図16】各実施形態において用いる各装置(送信装置1、受信装置2)の内部構成の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の複数の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
[第1実施形態]
実施形態において、送信装置は、受信装置に対して、インタネットプロトコル(IP)を用いて信号を伝送する。ここで、信号は、映像信号や音声信号等である。伝送される信号は、映像信号のみであってもよいし、音声信号のみであってもよいし、映像信号と音声信号とを含むものであってもよい。信号が、さらに、映像や音声以外の情報を含むものであってもよい。
【0024】
送信装置は、1つのIPフローを一旦終端して、そのフローをパケット単位でN分割して、複数のIPフローとして送信する。ここで、Nは、2以上の整数である。なお、(N+1)が、送信装置から受信装置へ信号伝送するための通信回線(伝送路)の数である。送信装置は、N個のパケットのペイロード部分を、必要があればパディングにより同じ長さとした後、冗長信号生成関数を用いて新たな冗長パケット(冗長信号)を生成する。冗長信号生成関数の一例は、パケット間の対応するビット同士のXOR演算(排他的論理和演算)を行う関数である。送信装置は、元のN個のIPフローに加えて、(N+1)個目のフローとして上記冗長パケットを送信する。これにより、送信装置から送出される信号は冗長性を持つものとなる。このような送信装置の構成は、カメラや、ゲートウェイ装置(IP-GW)等に内蔵されていてもよい。
【0025】
受信装置は、上記の(N+1)個のフローを受信する。受信装置は、必要があれば上記のパディングを除去した後、パケットを並べなおして1つのIPフローを復元する。受信装置は、(N+1)個のフローのうちのどれか1つが正しく受信できなかった場合にも、信号の冗長性を利用して、受信できなかったフローを復元することができる。すなわち、受信装置は、上記の冗長信号生成関数の逆関数のうちの適切なもの(冗長信号生成逆関数と呼ぶ)を用いて、受信できなかったフローの復元を行うことができる。このような受信装置の構成は、映像モニターや、ゲートウェイ装置(IP-GW)等に内蔵されていてもよい。
【0026】
図1は、本実施形態による伝送システムの概略機能構成を示すブロック図である。図示するように、伝送システム1000は、送信装置1(通信装置とも呼ばれる)と、受信装置2(通信装置とも呼ばれる)とを含んで構成される。
【0027】
送信装置1は、1個のIPフローを、所定の単位で(例えばパケット単位で)、N個のIPフローに分割する。送信装置1は、N個のIPフローに基づいて、第(N+1)個目のIPフローを生成する。送信装置1は、これらの(N+1)個のIPフローのそれぞれを、通信回線経由で送信する。適切な冗長性を有することにより、(N+1)個のIPフローのうちの1個が失われても、元の分割後のN個のIPフローを復元することができる。
【0028】
受信装置2は、送信装置1から送信される(N+1)個のIPフローを受信する。受信装置2は、これら(N+1)個のIPフローのうちの1個が仮に受信できなかった場合にも、信号全体の冗長性を利用して、元のN個のIPフローを復元することができる。受信装置2は、そのN個のIPフローを並べて、1個のIPフローを再構成する。
【0029】
図示するように、送信装置1は、入力部10と、分配部20(冗長データ列生成部とも呼ばれる)と、送信部30とを含んで構成される。受信装置2は、受信部40と、統合部50(復元部とも呼ばれる)と、出力部60とを含んで構成される。送信装置1および受信装置2の各部の機能は、例えば、電子回路を用いて実現される。また、各機能部は、必要に応じて、半導体メモリーや磁気ハードディスク装置などといった記憶手段を内部に備えてよい。また、少なくとも一部の機能を、コンピューターおよびプログラムによって実現するようにしてもよい。送信装置1および受信装置2の各部の機能は、次の通りである。
【0030】
入力部10は、送信するための映像等の信号を外部から取得する。入力部10は、IPフローとして映像等の信号を取得してもよいし、他の形態で映像等の信号を取得してもよい。いずれの場合にも、入力部10は、1本のIPフローとして映像等の信号を分配部20に渡す。
【0031】
分配部20は、入力部10から渡されたIPフローをN本(N≧2)に分割するとともに、これらN本のIPフローのデータを基に、冗長パケットを生成する。具体的には、次の通りである。分配部20は、N個のRTPパケットP1,P2,・・・,PNを基に、冗長パケットPR1を生成する。冗長パケットPR1を生成するに際して、分配部20は、N個のRTPパケットP1,P2,・・・,PNの長さをそろえる。つまり、分配部20は、ビットをパディングすることにより、N個のRTPパケットP1,P2,・・・,PNの長さを、これらN個のパケットのうちの最も長いパケットの長さにそろえる。その上で、冗長信号生成関数を使用して冗長パケットPR1を生成する。
【0032】
つまり、分配部20は、第1のデータ列(パケット)から第Nのデータ列(N≧2)までのすべてのデータ列に基づく冗長データ列を、第(N+1)のデータ列として生成する。なお、前記冗長データ列は、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までのうちの第iのデータ列(任意のi;1≦i≦N)が欠損したときに、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までの前記第iのデータ列を除く他のデータ列と前記冗長データ列とに基づいて前記第iのデータ列を復元可能とするものである。分配部20は、例えば次のように冗長データ列を生成する。即ち、分配部20は、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までの各ビットまたは各ビットの否定の排他的論理和を演算することによって、前記冗長データ列を生成する。ただし、冗長データ列の生成方法は、これに限定されない。
【0033】
パケットP1,P2,・・・,PNと、冗長パケットPR1の、相互に対応するビットを、S1,S2,・・・,SN、およびR1とする。R1は、冗長信号生成関数Fを用いて、次のように求められる。
【0034】
R1=F(S1,S2,・・・,SN)
【0035】
冗長信号生成関数Fは、一例として、次の通りである。なお、ここでのXORは、排他的論理和を算出する論理演算である。
F(S1,S2,・・・,SN)=(S1)XOR(S2)XOR・・・XOR(SN)
【0036】
つまり、上に例示した関数Fによって算出されるR1は、S1からSNまでのすべてのビットの排他的論理和である。ただし、冗長信号生成関数Fは、S1からSNまでのすべてのビットの情報を保存する関数であれば、上に例示したものに限られない。例えば、冗長信号生成関数Fは、S1からSNまでのビットのうちの所定の単数または複数のビットに否定演算子を作用させたうえで、それらのすべてのビットの排他的論理和を求めるものであってもよい。
【0037】
分配部20は、分割結果である第1のパケットから第Nのパケットまでを、それぞれ、送信部30-1から送信部30-Nまでに振り向ける。また、分配部20は、生成した第(N+1)のパケット(冗長パケット)を、送信部30-(N+1)に振り向ける。
【0038】
送信部30は、送信部30-1から送信部30-(N+1)までの総称である。送信部30は、分配部20によって分配されたパケットを、IPにより、相対する受信部40に送信する。つまり、送信部30-i(i=1,2,・・・,N,N+1)は、受信部40-iに対して、パケットを送信する。つまり、送信部30は、第1のデータ列から第(N+1)のデータ列までの各データ列を送信するものである。また、送信部30は、前記第1のデータ列から第(N+1)のデータ列までのそれぞれを個別の通信回線で送信するようにしてよい。この場合、任意の通信回線が通信不能となった場合にも、他の通信回線で伝送されるデータに基づいて、通信不能となった通信回線で伝送しようとしたデータを復元することが可能となる。
【0039】
受信部40は、受信部40-1から受信部40-(N+1)までの総称である。受信部40は、相対する送信部30から、IPにより、パケットを受信する。受信部40-1から受信部40-(N+1)までのそれぞれは、受信したパケットを、統合部50に渡す。なお、受信部40が通信回線断などによってパケットを受信できない事象を検知した場合には、その受信部40は、その事象を統合部50に通知する。これにより、統合部50は、特定の通信回線でパケットを受信できなかったことを把握する。
【0040】
つまり、受信部40は、第1のデータ列から第(N+1)のデータ列(N≧2)までの各データ列をそれぞれ受信するものである。受信部40は、例えば、前記第1のデータ列から第(N+1)のデータ列までのそれぞれを個別の通信回線で受信するようにしてよい。この場合には、単一の通信回線が障害のときに失われるデータ列は、第1のデータ列から第(N+1)のデータ列までのうちの1つだけである。
【0041】
統合部50は、各々の受信部40から、受信したパケットを受け取り、それらのパケットを統合する。統合部50は、第1のパケットから第NのパケットまでのN個のパケットを並べて、元のIPフローを復元する。通信回線断などによってこれらN個のパケットのいずれかが受信できなかった場合には、統合部50は、第(N+1)のパケット(冗長パケット)を用いて、受信できなかったパケットのデータを復元する。具体的には、統合部50は、受信できなかったパケットのデータを復元するために、下の冗長信号生成逆関数を用いる。
【0042】
冗長信号生成逆関数は、G1,G2,・・・,GNのN種類である。関数G1は第1のパケットを復元するための関数、関数G2は第2のパケットを復元するための関数であり、以下、G3,G4,・・・と同様で、関数GNは第Nのパケットを復元するための関数である。関数Gi(1≦i≦N)は、S1,S2,・・・,SNのうちのSi以外のそれぞれのビットと、冗長パケットのビットであるR1とを引数として、Siの値を出力する。つまり、次の通りである。
S1=G1(S2,S3,・・・,SN,R1)
S2=G2(S1,S3,・・・,SN,R1)
以下同様に続き、
SN-1=GN-1(S1,S2,・・・,SN-2,SN,R1)
SN=GN(S1,S2,・・・,SN-2,SN-1,R1)
である。情報の損失のない冗長信号生成関数Fが決まれば、冗長信号生成逆関数G1,G2,・・・,GNのそれぞれは、一意に決まる。
【0043】
一例として、
F(S1,S2,・・・,SN)=(S1)XOR(S2)XOR・・・XOR(SN)
の場合、冗長信号生成逆関数G1,G2,・・・,GNは、次の通りである。
G1(S2,S3,・・・,SN,R1)=(S2)XOR(S3)XOR・・・XOR(SN)XOR(R1)
G2(S1,S3,・・・,SN,R1)=(S1)XOR(S3)XOR・・・XOR(SN)XOR(R1)
以下同様に続き、
GN-1(S1,S2,・・・,SN-2,SN,R1)=(S1)XOR(S2)XOR・・・XOR(SN-2)XOR(SN)XOR(R1)
GN(S1,S2,・・・,SN-2,SN-1,R1)=(S1)XOR(S2)XOR・・・XOR(SN-2)XOR(SN-1)XOR(R1)
【0044】
つまり、統合部50は、必要時には下記のようにデータ列の復元を行うことによって、第1のデータ列から第Nのデータ列までを出力する。即ち、統合部50は、(a)前記第1のデータ列から第Nのデータ列までのデータ列のすべてを正常に受信できる場合には、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までを出力する。また、統合部50は、(b)前記第1のデータ列から第Nのデータ列までのデータ列のうちの第iのデータ列(任意のi;1≦i≦N)が受信できなかった場合には、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までの前記第iのデータ列を除く他のデータ列と、冗長データ列である前記第(N+1)のデータ列と、に基づいて前記第iのデータ列を復元したうえで、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までを出力する。
【0045】
統合部50は、上記の例の通り、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までのうちの前記第iのデータ列を除く(N-1)個のデータ列および前記冗長データ列の、各ビットまたは各ビットの否定の排他的論理和を演算することによって、前記第iのデータ列を復元する。ただし、冗長性を用いて統合部50が欠損したデータを復元するための方法は、これに限定されない。
【0046】
出力部60は、統合部によって復元された1本のIPフローを、外部に出力する。
【0047】
図2は、送信装置1内の分配部20の処理を示す概略図である。図示するように、分配部20は、入力部10側から、パケット1、パケット2、・・・、パケットNを順次受け取る。各パケットはRTPパケットである。分配部20は、これらN個のパケットの長さが異なる場合には、所定のパディングにより、所定の長さ(例えば、N個のうちの最も長いパケットの長さ)にパケット長をそろえる。また、分配部20は、前述の冗長信号生成関数を用いて、パケット1からパケットNまでを基に、パケット(N+1)を生成する。このパケット(N+1)は、冗長パケットである。分配部20は、これら(N+1)個のパケットを、各々の送信部30に振り分ける。言い換えれば、分配部20は、これら(N+1)個のパケットを、(N+1)本の通信回線に分配する。
【0048】
図3は、受信装置2内の統合部50の処理を示す概略図である。図示するように、統合部50は、各々の受信部40から、パケット1、パケット2、・・・、パケットN、パケット(N+1)を受け取る。統合部50は、パケット1、パケット2、・・・、パケットNのうちのいずれかが受け取れなかった場合、即ち、通信回線断などによってN個のうちの1個のパケットが受信されなかった場合には、前述の冗長信号生成逆関数を用いて、受信できたパケットに基づいて、受信されなかったパケットのデータを復元する。そして、必要な復元を済ませた後、統合部50は、パケット1、パケット2、・・・、パケットNを整列させて、1本のIPフローを再構成する。統合部50は、この1本のIPフローを、出力部60に渡す。
【0049】
図2および
図3に示したN個のパケットおよび1個の冗長パケットをひとまとまりとして、送信装置1および受信装置2は、同様の処理を繰り返すことができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、前実施形態において既に説明した事項については以下において説明を省略する場合がある。ここでは、本実施形態に特有の事項を中心に説明する。なお、本実施形態における送信装置は、第1実施形態で説明した送信装置であってよい。また、本実施形態における受信装置は、第1実施形態で説明した受信装置であってよい。
【0051】
図4は、本実施形態による伝送システムの概略機能構成を示すブロック図である。図示するように、伝送システム1001は、カメラ101と、送信装置1と、受信装置2と、映像モニター102とを含んで構成される。この構成において、送信装置1と受信装置2との間では、複数((N+1)本)の通信回線を用いた通信を行う。Nの値は例えば2である。ただし、Nの値は、2以上の整数であればよく、2に限定されない。
【0052】
カメラ101は、映像を撮影し、映像信号を出力(供給)する。
【0053】
送信装置1は、映像信号を、複数の通信回線を用いて送信する。送信装置1は、第1実施形態で説明したように、冗長パケットを生成して、冗長パケットをも送信する。
【0054】
受信装置2は、複数の通信回線を用いて、映像信号を受信する。受信装置2は、第1実施形態で説明したように、冗長パケットを利用して、受信できなかった映像信号を復元することができる。
【0055】
映像モニター102は、受信装置2が出力する映像信号の供給先である。映像モニター102は、受信装置2から受け取る映像信号に基づいて、映像をデコードし、画面等に表示する。
【0056】
本実施形態の伝送システム1001は、カメラ101が出力する非圧縮の2K映像(横1920画素×縦1080画素、YCbCr 4:2:2、60フレーム毎秒、プログレッシブ)を、N=2として伝送するものである。この非圧縮の2K映像のデータレートは、約1.3ギガビット毎秒(Gbps)である。従来技術によって伝送部分の冗長性を確保するには、10ギガビットイーサネット(10GbE)の回線2本が必要である。本実施形態では、N=2としているために、通信回線1本あたりのデータレートは約0.65Gbpsである。つまり、本実施形態では、冗長性を確保しても、1ギガビットイーサネット(1GbE)の回線3本で、非圧縮の2K映像を伝送することができる。仮にこれら3本の通信回線のうちのどれか1本の通信が切断された状態になっても、パケットが冗長化されているために、受信装置2側で元のデータを復元することが可能である。10ギガビットイーサネット1本のコストが1ギガビットイーサネット1本のコストの1.5倍を超える場合には、本実施形態を用いることにより低コスト化を実現することができる。
【0057】
本実施形態において、送信装置1と受信装置2との間は、IPによる通信が行われる。
図4に示す構成において、カメラ101から送信装置1への入力はIPによるデータである。ただし、HD-SDI(High Definition-Serial Digital Interface)の規格による映像を入力するIP-GW(IPゲートウェイ装置)が代わりに送信装置1の機能を持ってもよい。また、カメラ101の内部に送信装置1の機能が内蔵されていてもよい。また、本実施形態の構成において、受信装置2からの映像モニター102への出力はIPによるデータである。ただし、HD-SDIが代わりに受信装置2の機能を持ってもよい。また、映像モニター102の内部に受信装置2の機能が内蔵されていてもよい。
【0058】
本実施形態で示す例は、非圧縮の2K映像(約1.3Gbps)を2分割(N=2)したものである。ただし、映像の種類や、分割数(N)の値は、この例の通りでなくてもよい。例えば、1本のストリームのデータレートがある通信インターフェース(例えば、1Gbps)を超えるが、そのストリームをN本に分割することによって1本あたりのデータレートを1/Nにできて、その分割後のデータレートが当該通信インターフェースに収まる場合にも、本実施形態と同様の構成でデータの伝送を行うことが可能である。
【0059】
非圧縮映像を扱うIP伝送技術であるSMPTE ST2110-20や、軽圧縮映像を扱うST2110-22などは、RTP/UDP/IPの構成のIPパケットを用いた伝送を行う。この場合、1個のIPフローをN個のIPフローに分割する際には、RTPパケットの単位で、RTPのシーケンス番号を用いて、フローの分割や再合成の制御を行うことができる。
【0060】
冗長信号生成関数の演算(例えば、XOR演算)によって新たに生成したパケット(冗長パケット)のIPフローについては、例えばRFC2733のFECヘッダーの仕組みで、元となる映像パケットの関連付けを行うようにすることができる。つまり、冗長信号生成関数で生成した冗長パケットが、元のどの映像パケットに対応した冗長パケットであるかを示すようにする。
【0061】
図5は、第2実施形態における、装置間のパケットの伝送の例を示す概略図である。同図(A)は、カメラ101から送信装置1へのパケットの伝送を示す。同図(B)は、送信装置1から受信装置2へのパケットの伝送を示す。同図(C)は、受信装置2から映像モニター102へのパケットの伝送を示す。
【0062】
図5(A)に示すように、カメラ101から送信装置1へは、パケットP1,P2,P3,P4,P5,P6が、順次渡される。これらの各パケットは、RTPパケットである。
【0063】
図5(B)に示すように、送信装置1から受信装置2へは、3本の通信回線701,702,703を介してパケットが伝送される。送信装置1の分配部20は、パケットP1,P3,P5を、通信回線701での伝送に振り向ける。また、送信装置1の分配部20は、パケットP2,P4,P6を、通信回線702での伝送に振り向ける。また、送信装置1の分配部20は、パケットP-R1,P-R2,P-R3を生成し、通信回線703での伝送に振り向ける。パケットP-R1は、パケットP1とP2を基に分配部20が冗長信号生成関数で生成した冗長パケットである。同様に、パケットP-R2は、パケットP3とP4を基に分配部20が生成したパケットである。同様に、パケットP-R3は、パケットP5とP6を基に分配部20が生成したパケットである。図示する例では、通信回線702の回線断により、パケットP2,P4,P6は、受信装置2には届かない。他の通信回線は正常である。つまり、受信装置2は、パケットP1,P3,P5と、パケットP-R1,P-R2,P-R3とを受信する。受信装置2は、これらの受信できたパケットを利用して、パケットP2,P4,P6のデータを復元することができる。つまり、冗長信号生成逆関数を用いて、受信装置2の統合部50は、パケットP1とパケットP-R1とから、パケットP2のデータを復元する。また、統合部50は、パケットP3とパケットP-R2とから、パケットP4のデータを復元する。また、統合部50は、パケットP5とパケットP-R3とから、パケットP6のデータを復元する。
【0064】
図5(C)に示すように、受信装置2から映像モニター102へは、パケットP1,P2,P3,P4,P5,P6が、順次渡される。これらのパケットのうち、パケットP2,P4,P6は、受信装置2において復元されたデータのパケットである。映像モニター102は、受け取ったパケットに基づく映像を画面に表示することができる。
【0065】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。なお、前実施形態までにおいて既に説明した事項については以下において説明を省略する場合がある。ここでは、本実施形態に特有の事項を中心に説明する。なお、本実施形態における送信装置は、第1実施形態で説明した送信装置であってよい。また、本実施形態における受信装置は、第1実施形態で説明した受信装置であってよい。
【0066】
図6は、本実施形態による伝送システムの概略機能構成を示すブロック図である。図示するように、伝送システム1002は、カメラ201,202,203,・・・,208と、スイッチ221と、送信装置1と、受信装置2と、スイッチ222と、映像モニター211,212,213,・・・,218とを含んで構成される。本実施形態の伝送システム1002は、8台のカメラがそれぞれ出力する映像信号を、8台の映像モニターに伝送する。
【0067】
カメラ201,202,203,・・・,208は、それぞれが独立の映像を撮影し、その映像信号を出力するカメラである。
【0068】
スイッチ221は、入力されるIPパケットの宛先に応じて、所定のネットワークパスに出力するネットワークスイッチである。本構成において、スイッチ221は、カメラ201,202,203,・・・,208のそれぞれからのIPパケットを、送信装置1に届くように、所定のネットワークパスに出力する。なお、スイッチ221と送信装置1との間の通信回線については、後述する。
【0069】
送信装置1は、映像信号を、複数の通信回線を用いて送信する。送信装置1は、第1実施形態で説明したように、冗長パケットを生成して、冗長パケットをも送信する。
【0070】
受信装置2は、複数の通信回線を用いて、映像信号を受信する。受信装置2は、第1実施形態で説明したように、冗長パケットを利用して、受信できなかった映像信号を復元することができる。
【0071】
スイッチ222は、スイッチ221と同様の機能を持つネットワークスイッチである。本構成において、スイッチ222は、受信装置2からのIPパケットを、パケットの宛先に応じて、映像モニター211,212,213,・・・,218のいずれかに届くように、所定のネットワークパスに出力する。なお、受信装置2とスイッチ222との間の通信回線については、後述する。
【0072】
映像モニター211,212,213,・・・,218は、映像信号を受信し、映像を表示する装置である。本実施形態の構成においては、映像モニター211,212,213,・・・,218のそれぞれは、受信装置2からのパケットを、スイッチ222経由で受信し、その映像を表示する。
【0073】
本実施形態において、少なくとも送信装置1と受信装置2との間では、IPによる通信が行われる。
図6に示す構成において、カメラ201から208までの各々は、軽圧縮2Kの映像の信号を出力する。2Kの映像の1/6圧縮の場合には、1ストリームあたりのデータレートは約0.22Gbpsである。カメラ201から208までの各々からスイッチ221までの通信については、例えば、1台のカメラごとに1ギガビットイーサネットを用いるようにすることができる。つまり合計8本の1ギガビットイーサネットが用いられる。スイッチ222から送信装置1までの間のトータルなデータレートは、約1.76Gbps(8×0.22Gbps)である。つまり、スイッチ221から送信装置1までの間の通信については、2本の1ギガビットイーサネット、あるいは1本の10ギガビットイーサネットを用いることができる。送信装置1から受信装置2までの通信では、例えば、3本のギガビットイーサネットが用いられる。本構成においては、N=2である。受信装置2からスイッチ222までの間の通信については、2本の1ギガビットイーサネット、あるいは1本の10ギガビットイーサネットを用いることができる。スイッチ222から映像モニター211から218の各々までの通信については、例えば、1台の映像モニターごとに1ギガビットイーサネットを用いるようにすることができる。つまり合計8本の1ギガビットイーサネットが用いられる。
【0074】
上記の通り、本実施形態においても、送信装置1から受信装置2へのデータの伝送は、N=2として行われる。つまり、送信装置1から受信装置2への伝送は、3本の通信回線を用いて行われる。本実施形態の構成においては、SMPTE ST2110のマルチキャストが利用される。この場合、送信装置1は、カメラ201から208までのそれぞれに対して映像信号をリクエストする。また、受信装置2は、送信装置1に対して信号をリクエストする。また、映像モニター211から218までのそれぞれは、受信装置2に対して映像信号をリクエストする。
【0075】
図7,
図8,
図9は、第3実施形態における、装置間のパケットの伝送の例を示す概略図である。
図7(A)は、カメラ201,202,・・・,208のそれぞれからスイッチ221へのパケットの伝送を示す。
図7(B)は、スイッチ221から送信装置1へのパケットの伝送を示す。
図8(C)は、送信装置1から受信装置2へのパケットの伝送を示す。
図9(D)は、受信装置2からスイッチ222へのパケットの伝送を示す。
図9(E)は、スイッチ222から映像モニター211,212,・・・,218のそれぞれへのパケットの伝送を示す。
【0076】
図7(A)に示すように、カメラ201からスイッチ221へは、パケットP1-1,P1-2,P1-3,P1-4が順次渡される。また、カメラ202からスイッチ221へは、パケットP2-1,P2-2,P2-3,P2-4が順次渡される。以下同様に、カメラ203,204,205,206,207,208のそれぞれも、4個のパケットを、スイッチ221に渡す。この図においては、8台のカメラのそれぞれが4個のパケットをスイッチ221に渡している。これらのパケットは、映像を表すRTPパケットである。つまり、この図に示す範囲で、スイッチ221は、合計32個のパケットを受信している。
【0077】
図7(B)に示すように、スイッチ221は、カメラから受け取るパケットを、順次、送信装置1に転送する。この図においては、個々のパケットの記載を省略している。送信装置1は、パケットの並べ替えと、冗長パケットの生成を行う。
【0078】
図8(C)に示すように、送信装置1から受信装置2へは、3本の通信回線701,702,703を用いた伝送が行われる。送信装置1の分配部20は、
図7(B)で受信したパケットを、通信回線701と702とに振り分ける。送信装置1の送信部30の1つは、通信回線701を用いて、パケットP1-1,P2-1,・・・,P8-1,P1-3,P2-3,・・・,P8-3を、この順で送信する。送信装置1の送信部30の別の1つは、通信回線702を用いて、パケットP1-2,P2-2,・・・,P8-2,P1-4,P2-4,・・・,P8-4を、この順で送信する。
【0079】
また、送信装置1の分配部20は、冗長パケットを生成する。具体的には、分配部20は、パケットP1-1とP1-2とに基づいて、冗長パケットP-R1を生成する。また、分配部20は、パケットP2-1とP2-2とに基づいて、冗長パケットP-R2を生成する。以下同様に、分配部20は、カメラ208からの出力映像まで、冗長パケット(P-R3,P-R4,P-R5,P-R6,P-R7,P-R8)を生成する。さらに、分配部20は、パケットP1-3とP1-4とに基づいて、冗長パケットP-R9を生成する。また、分配部20は、パケットP2-3とP2-4とに基づいて、冗長パケットP-R10を生成する。以下同様に、分配部は、カメラ208からの出力映像まで、冗長パケット(P-R11,P-R12,P-R13,P-R14,P-R15,P-R16)を生成する。分配部20は、前述の冗長信号生成関数を用いて、これらの冗長パケットを生成する。これらの冗長パケットのすべては、通信回線703を用いて伝送される。
【0080】
図示する例では、通信回線701における回線断等の事象により、当該通信回線でのパケットの伝送は失敗する。つまり受信装置2が受信するパケットは、図示する範囲においては、通信回線702のパケットP1-2,P2-2,・・・,P8-2,P1-4,P2-4,・・・,P8-4と、通信回線703のパケットP-R1,P-R2,・・・,P-R8,P-R9,P-R10,・・・,P-R16と、のみである。受信装置2における統合部50は、冗長信号生成逆関数を用いて、受信できたパケットに基づき、受信できなかったパケットのデータを生成する。つまり、統合部50は、受信できたパケットを用いて、パケットP1-1,P2-1,・・・,P8-1,P1-3,P2-3,・・・,P8-3のデータを復元する。
【0081】
図9(D)に示すように、受信装置2は、8台のカメラからの映像のパケットを、スイッチ222に渡す。これらのパケットは、冗長パケットに基づいて受信装置2の統合部50によって復元されたパケットを含む。受信装置2から送信される各パケットは、8台の映像モニター211,212,・・・,218のいずれかのアドレスを宛先としている。この図においては、パケットの記載を省略している。
【0082】
図9(E)に示すように、スイッチ222は、受信装置2から送信されたパケットを、それぞれの宛先の映像モニターに転送する。具体的には、スイッチ222は、映像モニター211に、パケットP1-1,P1-2,P1-3,P1-4を順次送信する。また、スイッチ222は、映像モニター212に、パケットP2-1,P2-2,P2-3,P2-4を順次送信する。以下同様に、スイッチ222は、映像モニター218までの計8台の映像モニターに、それぞれパケットを送信する。つまり、図示する範囲において各映像モニターに、4個ずつのパケットが到達する。
【0083】
なお、
図7,
図8,
図9を参照しながら、カメラ201から208までの各々が4個のパケットを送出し、映像モニター211から218までの各々が4個のパケットを受信するまでの過程を説明した。伝送システム1002は、この過程を繰り返し実行することができる。これにより、任意の長さの映像信号は、カメラ側から、送信装置1と受信装置2との間での伝送を介して、映像モニター側に伝送され得る。
【0084】
この第3実施形態では、3本の1ギガバイトイーサネットを用いて、8本のストリームを伝送することができた。しかも、冗長パケットを生成して伝送したため、3本の通信回線のうちのどれか1本が回線断の状態になっても、失われたパケットのデータを復元することができた。従来技術を用いて冗長化した場合には、伝送には4本の1ギガビットイーサネット、または2本の10ギガビットイーサネットが必要であった。つまり、従来技術を用いる場合と比べて、低コストで、冗長性を確保できている。
【0085】
なお、本実施形態で例示した8本のストリームを伝送する場合に限らず、例えば5本以上且つ7本以下のストリームを伝送する場合にも、本実施形態を利用することにより、より低コストでの信号の伝送を実現することができる。具体的には、次の通りである。軽圧縮2K映像の1本のデータレートを0.22Gbpsとする。ストリームが5本の場合、6本の場合、7本の場合のいずれの場合も、第1の通信回線と第2の通信回線にストリームを分割して伝送を行うことができる。また、第3の通信回線で、冗長パケットの伝送を行える。つまり、これらのいずれの場合にも、3本の1ギガビットイーサネットで、冗長化された信号を伝送することができる。一方、従来技術を用いた場合には、5本、6本、または7本のストリームを伝送するためには、2本の1ギガビットイーサネットと、冗長パケット用の2本の1ギガビットイーサネットの、合計4本の1ギガビットイーサネットが必要となる。あるいは、従来技術を用いる場合には、この4本の1ギガビットイーサネットを用いる代わりに、2本の10ギガビットイーサネットが必要となる。つまり、これらのいずれの場合にも、本実施形態を用いることにより、通信回線のコストをより小さくすることが可能である。
【0086】
また、本実施形態を適用できるのは、軽圧縮2Kの映像の、N=2の場合には限定されない。複数本のストリームのデータレートの合計が、ある通信回線のインターフェース速度を超えるが、それらをN本に分割することによりその通信回線のインターフェース速度に収まる場合には、本実施形態を適用することができる。また、それにより、通信回線のコストをより低くすることが可能である。
【0087】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。なお、前実施形態までにおいて既に説明した事項については以下において説明を省略する場合がある。ここでは、本実施形態に特有の事項を中心に説明する。なお、本実施形態における送信装置は、第1実施形態で説明した送信装置であってよい。また、本実施形態における受信装置は、第1実施形態で説明した受信装置であってよい。
【0088】
第4実施形態の伝送システムは、映像送信側の装置(カメラ等)および映像受信側の装置(映像モニター等)が、元々SMPTE ST2022-7の冗長性に対応している場合のための構成を有する。本実施形態では、送信装置および受信装置を2系統用意しておき、その上で、集約装置でデータの流れを集約した形態の伝送を行う。集約装置は、SMPTE ST2022-7の受信機能を持ち、2系統を集約した上で、受信したパケットをIPとして再度送信する装置である。
【0089】
図10は、本実施形態による伝送システムの概略機能構成を示すブロック図である。図示するように、伝送システム1003は、カメラ103と、送信装置1-1および1-2と、受信装置2-1および2-2と、スイッチ231,232,233,234,235,236,237と、集約装置261,262,263と、映像モニター104とを含んで構成される。
【0090】
カメラ103は、映像を撮影し、撮影した映像の信号を出力する。カメラ103は、SMPTE ST2022-7に対応しており、撮影した非圧縮2Kの映像(約1.3Gbps)を2系統で出力する。つまり、カメラ103は、元々2系統で同一の映像を伝送するように設計されている製品である。図示する構成において、カメラ103は、第1の系統として、スイッチ231を経由して送信装置1-1側に映像信号を出力する。また、カメラ103は、第2の系統として、スイッチ232を経由して送信装置1-2側に映像信号を出力する。
【0091】
送信装置1-1,1-2は、それぞれ、入力された映像信号を、パケット単位で並べ替えて、N本の通信回線(第1の通信回線から第Nの通信回線まで)で送信する機能を持つ装置である。また、送信装置1-1,1-2のそれぞれは、入力された映像信号に基づいて、冗長パケットを生成する。送信装置1-1,1-2のそれぞれは、生成した冗長パケットを第(N+1)の通信回線で送信する。送信装置1-1,1-2のそれぞれは、第1実施形態における送信装置1であってよい。
【0092】
受信装置2-1,2-2は、それぞれ、N本の通信回線(第1の通信回線から第Nの通信回線まで)で受信したパケット(RTPパケット)を並べて、1本のIPフロー(映像信号)として出力する機能を持つ装置である。受信装置2-1,2-2のそれぞれは、また、第(N+1)の通信回線で冗長パケットを受信する。受信装置2-1,2-2のそれぞれは、上記第1の通信回線から第Nの通信回線までのいずれかで信号を受信できない場合には、第(N+1)の通信回線で受信した冗長パケットを利用して、受信できなかった通信回線のパケットのデータを復元することができる。受信装置2-1,2-2のそれぞれは、第1実施形態における受信装置2であってよい。
【0093】
スイッチ231,232,233,234,235,236,237のそれぞれは、ネットワークスイッチである。各スイッチは、入力されるIPパケットを、宛先に応じた所定のネットワークパスに出力する。
【0094】
具体的には、スイッチ231は、カメラ103の第1系統の出力からのパケットを、送信装置1-1に転送する。また、スイッチ231は、送信装置1-1から出力される3本の通信回線それぞれで伝送するためのパケットを、集約装置261,262,263に転送する。スイッチ232は、カメラ103の第2系統の出力からのパケットを、送信装置1-2に転送する。また、スイッチ232は、送信装置1-1から出力される3本の通信回線それぞれで伝送するためのパケットを、集約装置261,262,263に転送する。スイッチ233は、第1の通信回線を通して集約装置261から受信するパケットを、受信装置2-1側(スイッチ236側)と受信装置2-2側(スイッチ237側)の両方に転送する。スイッチ234は、第2の通信回線を通して集約装置261から受信するパケットを、受信装置2-1側(スイッチ236側)と受信装置2-2側(スイッチ237側)の両方に転送する。スイッチ235は、第3の通信回線を通して集約装置261から受信するパケットを、受信装置2-1側(スイッチ236側)と受信装置2-2側(スイッチ237側)の両方に転送する。スイッチ236は、スイッチ233,234,235のそれぞれからのパケット(第1系統側)を、受信装置2-1に転送する。スイッチ237は、スイッチ233,234,235のそれぞれからのパケット(第2系統側)を、受信装置2-2に転送する。
【0095】
集約装置261,262,263は、それぞれ、送信装置1-1からのデータ列と送信装置1-2からのデータ列のいずれかを選択して、それぞれ、スイッチ233,234,235に向けて送信するものである。集約装置261,262,263は、互いに異なるデータを、送信装置側から受信する。集約装置261,262,263のそれぞれが、送信装置1-1および1-2から受信するデータは、エラー等がない限りは、同一のデータであることが想定されているものである。つまり、集約装置261,262,263は、送信装置1-1側の系統と、送信装置1-2側の系統とを集約する。集約装置261,262,263は、それぞれ、WANの通信回線を通して、スイッチ233,234,235に対してパケットを送信する。
【0096】
スイッチ233,234,235は、それぞれが受信したデータを、受信装置2-1および2-2の両方に渡す。
【0097】
映像モニター104は、映像信号を受信し、受信した映像を画面に表示する。映像モニター104は、SMPTE ST2022-7に対応しており、映像信号を2系統で入力する。映像モニター104は、2系統の両方から受信した映像信号のうち、いずれか一方をデコードして画面に表示する。2系統のうちの1系統の選択は、設定に基づいて行ったり、受信した信号の状態を相互に比較した結果に基づいて行ったりしてよい。映像モニター104は、2系統のうちのいずれか一方からしか映像信号を受信できない場合には、受信できている側の系統の映像信号をデコードして画面に表示する。
【0098】
なお、
図10に示す構成において、カメラ103からスイッチ231を経由して送信装置1-1までの伝送路、およびカメラ103からスイッチ232を経由して送信装置1-2までの伝送路としては、10ギガビットイーサネットを使用できる。また、受信装置2-1からスイッチ236を経由して映像モニター104までの伝送路、および受信装置2-2からスイッチ237を経由して映像モニター104までの伝送路としては、10ギガビットイーサネットを使用できる。
図10のその他の伝送路としては、WAN部分も含めて、それぞれ1Gbpsの通信回線を使用できる。
【0099】
図10に示す構成では、送信装置1-1と1-2のそれぞれが、N=2として、第1および第2の通信回線で、カメラ103から渡される映像信号のパケットを送信する。また、送信装置1-1と1-2のそれぞれは、冗長パケットを生成し、第3の通信回線で送信する。ただし、集約装置261,262,263のそれぞれは、送信装置1-1側の系統と送信装置1-2の系統からのパケットを集約し、いずれか一方のパケットを受信装置側(それぞれ、スイッチ233,234,235)に送信する。そして、受信装置側において、スイッチ233,234,235は、それぞれ、集約装置261,262,263から受信したパケットを、受信装置2-1側と受信装置2-2側との両方に振り分ける。なお、受信装置2-1へのパケットは、スイッチ236を経由する。受信装置2-2へのパケットは、スイッチ237を経由する。受信装置2-1,2-2のそれぞれは、受信した映像のパケットを、映像モニター104に渡す。受信装置2-1からのパケットは、映像モニター104の2系統の入力のうちの第1系統側に渡される。また、受信装置2-2からのパケットは、映像モニター104の第2系統側に渡される。
【0100】
つまり、
図10に示す構成では、送信側のエリア内および受信側のエリア内のそれぞれでは、ST2022-7の方式で、2系統での伝送が行われる。送信側のエリア内とは、カメラ103から集約装置261,262,263までの伝送の部分である。受信側のエリア内とは、スイッチ233,234,235から映像モニター104までの伝送の部分である。また、WANによる伝送部分では、冗長性を持つ信号が伝送される。この冗長性は、送信装置1-1,1-2で生成された冗長パケットによって得られるものである。なお、集約装置261,262,263のそれぞれは、2系統(送信装置1-1側および送信装置1-2側)でのRTPパケットのどちらか一方を選択して、スイッチ233,234,235に送信する。
【0101】
図11、
図12、
図13は、第4実施形態における、装置間のパケットの伝送の例を示す概略図である。
図11(A)は、カメラ103から、送信装置1-1,1-2のそれぞれへのパケットの伝送を示す。なお、この伝送において経由するスイッチ231,232の記載をここでは省略している。
図11(B)は、送信装置1-1,1-2のそれぞれから集約装置261,262,263のそれぞれへのパケットの伝送を示す。なお、この伝送において経由するスイッチ231,232の記載をここでは省略している。
図12(C)は、集約装置261からスイッチ233、集約装置262からスイッチ234、そして、集約装置263からスイッチ235へのパケットの伝送を示す。
図13(D)は、集約装置261,262,263のそれぞれから受信装置2-1,2-2のそれぞれへのパケットの伝送を示す。なお、この伝送において経由するスイッチ236,237の記載をここでは省略している。
図13(E)は、受信装置2-1,2-2のそれぞれから映像モニター104へのパケットの伝送を示す。なお、この伝送において経由するスイッチ236,237の記載をここでは省略している。
【0102】
図11(A)に示すように、カメラ103から送信装置1-1と1-2のそれぞれへの系統において、パケットP1,P2,P3,P4が順次渡される。送信装置1-1と1-2とは、それぞれにおいて、冗長パケットP-R1,P-R2を生成する。
【0103】
図11(B)に示すように、送信装置1-1は、集約装置261に対してパケットP1,P3を、集約装置262に対してパケットP2,P4を、そして集約装置263に対してパケットP-R1,P-R2を、それぞれ順次渡す。また、送信装置1-2もまた、集約装置261に対してパケットP1,P3を、集約装置262に対してパケットP2,P4を、そして集約装置263に対してパケットP-R1,P-R2を、それぞれ順次渡す。集約装置261,262,263のそれぞれは、両系統から受信したパケットのうち、どちらかの系統のパケットを、受信側のスイッチ233,234,235に対して送信するために選択する。
【0104】
図12(C)に示すように、集約装置261は、WAN回線を経由して、パケットP1,P3を、順次、スイッチ233に送信する。集約装置262は、WAN回線を経由して、パケットP2,P4を、順次、スイッチ234に送信する。集約装置263は、WAN回線を経由して、パケットP-R1,P-R2を、順次、スイッチ235に送信する。
【0105】
図13(D)に示すように、スイッチ233は、送信装置側から受信したパケットP1,P3を、受信装置2-1と受信装置2-2の両方に渡す。スイッチ234は、送信装置側から受信したパケットP2,P4を、受信装置2-1と受信装置2-2の両方に渡す。スイッチ235は、送信装置側から受信したパケットP―R1,P―R2を、受信装置2-1と受信装置2-2の両方に渡す。なお、受信装置2-1,2-2のそれぞれは、受信したパケットを並べてフローの再構成を行う。なお、受信装置2-1,2-2のそれぞれは、伝送において失われたパケットがある場合には、冗長パケットを用いて、失われたパケットのデータを復元してから、フローの再構成を行う。
【0106】
図13(E)に示すように、受信装置2-1,2-2は、ともに、パケットP1,P2,P3,P4を順次、映像モニター104に送信する。映像モニター104は、これら両系統のパケットの列を受信し、どちらかの系統のパケットに基づいて、映像をデコードし、画面に表示する。
【0107】
つまり、第4実施形態の伝送システム1003は、下記の構成を有する。このような構成により、冗長出力端を有する供給元装置と冗長入力端を有する供給先装置との間での信号の伝送において、必要な通信回線容量を小さくすることができる。ここで、供給元装置や供給先装置は、例えば、SMPTE ST2022-7の規格に対応した製品である。
【0108】
供給元装置(例えばカメラ103)は、同一のデータ列を、第1出力端および第2出力端からそれぞれ出力する(
図10では、送信装置1-1宛と送信装置1-2宛)。第1送信装置(送信装置1-1)は、前記供給元装置の前記第1出力端から出力された前記データ列を入力し、第1のデータ列から第Nのデータ列(N≧2)までに分割するとともに、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までに基づいて冗長データ列である第(N+1)のデータ列を生成し、前記第1のデータ列から前記第(N+1)のデータ列までのそれぞれを送信する(
図10では、集約装置261,262,263のそれぞれ宛)。第2送信装置(送信装置1-2)は、前記供給元装置の前記第2出力端から出力された前記データ列を入力し、第1のデータ列から第Nのデータ列までに分割するとともに、前記第1のデータ列から前記第Nのデータ列までに基づいて冗長データ列である第(N+1)のデータ列を生成し、前記第1のデータ列から前記第(N+1)のデータ列までのそれぞれを送信する(
図10では、集約装置261,262,263のそれぞれ宛)。
【0109】
第iの集約装置(
図10では、集約装置261,262,263のそれぞれ)は、前記第1送信装置が送信した第iのデータ列(1≦i≦N+1)と前記第2送信装置が送信した第iのデータ列のいずれかを選択してそれぞれ送信するものである。第iの集約装置は、第1の集約装置から第(N+1)の集約装置までの(N+1)個の集約装置である。第iのスイッチ(
図10では、スイッチ233,234,235のそれぞれ)は、前記第iの集約装置(1≦i≦N+1)が送信した第iのデータ列を受信して、前記第iのデータ列を第1の出力端と第2の出力端のそれぞれから出力するものである。第iのスイッチは、第1のスイッチから第(N+1)のスイッチまでの(N+1)個のスイッチである。
【0110】
第1受信装置(受信装置2-1)は、前記第iのスイッチの第1の出力端から出力された第iのデータ列(1≦i≦N+1)をそれぞれ受信し、受信した第1のデータ列から第(N+1)のデータ列に基づいて、第1のデータ列から第Nのデータ列までを統合して成る出力データ列を出力する。第2受信装置(受信装置2-2)は、前記第iのスイッチの第2の出力端から出力された第iのデータ列(1≦i≦N+1)をそれぞれ受信し、受信した第1のデータ列から第(N+1)のデータ列に基づいて、第1のデータ列から第Nのデータ列までを統合して成る出力データ列を出力する。供給先装置(例えば映像モニター104)は、前記第1受信装置が出力した出力データ列を第1入力端から取得し、前記第2受信装置が出力した出力データ列を第2入力端から取得する。
【0111】
本実施形態の構成では、送信装置1-1,1-2、集約装置261,262,263、受信装置2-1,2-2、スイッチ231~237の、どの1台が故障しても、映像伝送が途切れないように冗長性が確保されている。また、図示する通信回線701,702,703のどれか1本が回線断の状態になっても、映像伝送が途切れないように冗長性が確保されている。また、本実施形態では、冗長化された信号を1ギガビットイーサネット3本で伝送することが可能である。つまり、従来技術では10ギガビットイーサネット2本の通信回線が必要であるのに対して、本実施形態が有利である(10ギガビットイーサネット2本のコストが、1ギガビットイーサネット3本のコストを超える場合)。
【0112】
本実施形態では、非圧縮の2Kの映像を、N=2として伝送する場合を説明したが、この例には限定されない。1本のストリームとしてはある通信回線のインターフェース速度を超えるが、1/Nにすることにより収まる場合に本実施形態を適用することができる。
【0113】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。なお、前実施形態までにおいて既に説明した事項については以下において説明を省略する場合がある。ここでは、本実施形態に特有の事項を中心に説明する。第5実施形態の伝送システムにおける特徴は、送信装置1と受信装置2との間の通信のための複数の通信回線のビットレートが少なくとも一部異なることである。なお、本実施形態における送信装置は、第1実施形態で説明した送信装置であってよい。また、本実施形態における受信装置は、第1実施形態で説明した受信装置であってよい。
【0114】
図14は、本実施形態による伝送システムの概略機能構成を示すブロック図である。図示するように、伝送システム1004は、送信装置1と受信装置2とを含んで構成される。送信装置1と受信装置2との間には、通信回線701,702,703が設けられている。図示する例では、通信回線701の容量は、1Gbpsである。また、通信回線702および703の容量は、それぞれ、2Gbpsである。このように、送信装置1と受信装置2との間で用いられる通信回線の容量が異なっていてもよい。
【0115】
図15は、第5実施形態における、送信装置1から受信装置2へのパケットの伝送の例を示す概略図である。本実施例では、便宜的にA,B,Cと呼ぶ3本の映像の信号を、送信装置1が受信装置2に対して送信する。
図15は、所定の単位期間において伝送されるパケットの構成を示している。同図において、パケットP-A1およびP-A2のそれぞれは、映像AのRTPパケットである。また、パケットP-B1およびP-B2のそれぞれは、映像BのRTPパケットである。また、パケットP-C1およびP-C2のそれぞれは、映像CのRTPパケットである。映像A,B,Cの映像信号は、それぞれ、一例として0.6Gbpsのレートで伝送されるものである。
【0116】
なお、パケットP-R1,P-R2,P-R3,P-R4は、送信装置1の分配部20が生成する冗長パケットである。ここでは、パケットP-R1は、分配部20が、冗長信号生成関数を用いて、パケットP-A1とP-B1とに基づいて生成したパケットである。同様に、パケットP-R2は、分配部20が、パケットP-A1とP-C1とに基づいて生成したパケットである。また、パケットP-R3は、分配部20が、冗長信号生成関数を用いて、パケットP-A2とP-B2とに基づいて生成したパケットである。また、パケットP-R4は、分配部20が、パケットP-A2とP-C2とに基づいて生成したパケットである。
【0117】
一例として、パケットP-R1は、パケットP-A1とパケットP-B1の対応するビット同士の排他的論理和をとることによって生成される。
【0118】
前述の通り映像A,B,Cの映像信号のレートがそれぞれ0.6Gbpsである場合に、本実施形態の伝送方法を用いると、冗長性を確保したうえで、1本の1Gbpsの通信回線と、2本の2Gbpsの通信回線とで、伝送することが可能である。一方、従来技術を用いる場合には、冗長性を確保してこれら映像A,B,Cを伝送するためには、1本の1Gbpsの通信回線と、2本の2Gbpsの通信回線とでは不十分である。従来技術を用いる場合には、例えば、3本の2Gbpsの通信回線、あるいは6本の1Gbpsの通信回線が必要である。
【0119】
以上説明した第1実施形態から第5実施形態のいずれかを用いることにより、例えば複数回線のうちの1回線が切れても信号の伝送が継続可能であるという冗長性を確保しつつ、より低速な(低コストな)通信回線での伝送を可能にすることができる。言い換えれば、冗長性を確保しながら、トータルの伝送量を削減することができる。
【0120】
図16は、第1実施形態から第5実施形態までにおいて用いる各装置(送信装置1、受信装置2等)の内部構成の例を示すブロック図である。各装置は、コンピューターを用いて実現され得る。図示するように、そのコンピューターは、中央処理装置1901と、RAM1902と、入出力ポート1903と、入出力デバイス1904や1905等と、バス1906と、を含んで構成される。コンピューター自体は、既存技術を用いて実現可能である。中央処理装置1901は、RAM1902等から読み込んだプログラムに含まれる命令を実行する。中央処理装置1901は、各命令にしたがって、RAM1902にデータを書き込んだり、RAM1902からデータを読み出したり、算術演算や論理演算を行ったりする。RAM1902は、データやプログラムを記憶する。RAM1902に含まれる各要素は、アドレスを持ち、アドレスを用いてアクセスされ得るものである。なお、RAMは、「ランダムアクセスメモリー」の略である。入出力ポート1903は、中央処理装置1901が外部の入出力デバイス等とデータのやり取りを行うためのポートである。入出力デバイス1904や1905は、入出力デバイスである。入出力デバイス1904や1905は、入出力ポート1903を介して中央処理装置1901との間でデータをやりとりする。バス1906は、コンピューター内部で使用される共通の通信路である。例えば、中央処理装置1901は、バス1906を介してRAM1902のデータを読んだり書いたりする。また、例えば、中央処理装置1901は、バス1906を介して入出力ポートにアクセスする。
【0121】
なお、上述した実施形態における送信装置や受信装置の少なくとも一部の機能をコンピューターで実現することができる。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピューター読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピューターシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリー等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。つまり、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、非一過性の(non-transitory)コンピューター読み取り可能な記録媒体であってよい。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、一時的に、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0122】
以上、複数の実施形態を説明したが、本発明はさらに次のような変形例でも実施することが可能である。前述の実施形態では、冗長信号生成関数および冗長信号生成逆関数は、排他的論理和演算を主に用いて(適宜、否定演算を組み合わせるなどしてもよい)実現される場合を説明した。しかしながら、冗長信号生成関数は、このような関数には限られない。適切な冗長データ列を生成するための関数としての要件を満たせば、他の形態の関数を用いてもよい。冗長信号生成関数が満たすべき要件は、次の通りである。即ち、冗長データ列は、第1のデータ列から第Nのデータ列までのうちの第iのデータ列(任意のi;1≦i≦N)が欠損したときに、第1のデータ列から第Nのデータ列までの第iのデータ列を除く他のデータ列と、冗長データ列と、に基づいて前記第iのデータ列を復元可能とするものである。また、冗長信号生成逆関数は、その逆関数である。
【0123】
また、前述の実施形態では、送信装置と受信装置との間を3本の通信回線で接続する例を説明したが、送信装置と受信装置との間の通信回線の本数は(N+1)であればよい。ここで、Nは、2以上の整数である。Nは、冗長パケットを除くパケットの伝送路の数である。
【0124】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明を、例えば、信号の伝送に利用することができる。その一例として、本発明を、映像コンテンツや音声コンテンツの伝送に利用することができる。但し、本発明の利用範囲はここに例示したものには限られない。
【符号の説明】
【0126】
1,1-1,1-2 送信装置(通信装置)
2,2-1,2-2 受信装置(通信装置)
10 入力部
20 分配部(冗長データ列生成部)
30 送信部
40 受信部
50 統合部(復元部)
60 出力部
101 カメラ
103 カメラ(供給元装置)
102 映像モニター
104 映像モニター(供給先装置)
201,202,203,・・・,208 カメラ
211,212,213,・・・,218 映像モニター
221,222,231,232,233,234,235,236,237 スイッチ
261,262,263 集約装置
1000,1001,1002,1003,1004 伝送システム
1901 中央処理装置
1902 RAM
1903 入出力ポート
1904,1905 入出力デバイス
1906 バス