(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】めっき処理方法およびめっき処理装置
(51)【国際特許分類】
C23C 18/38 20060101AFI20250328BHJP
C23C 16/16 20060101ALI20250328BHJP
C23C 18/40 20060101ALI20250328BHJP
C23C 28/02 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
C23C18/38
C23C16/16
C23C18/40
C23C28/02
(21)【出願番号】P 2022579431
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2022001927
(87)【国際公開番号】W WO2022168614
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2021015670
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 健
(72)【発明者】
【氏名】稲富 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩井 和俊
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-185113(JP,A)
【文献】特開2003-115489(JP,A)
【文献】特開2001-085358(JP,A)
【文献】特開2001-102448(JP,A)
【文献】特開平08-319578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00
C23C 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部にコバルトまたはコバルト合金のシード層が形成された基板を準備する準備工程と、
前記基板に対して銅イオンを含有する第1めっき液を用いて、前記シード層の表層を銅に置換する置換めっき処理を行う第1めっき工程と、
前記第1めっき工程の後に、前記基板に対して銅イオンおよび還元剤を含有する第2めっき液を用いて、前記凹部に還元めっき処理を行う第2めっき工程と、
を含み、
前記第1めっき工程および前記第2めっき工程は、前記基板を回転可能に保持する基板保持部で前記基板を回転させながら、前記第1めっき液または前記第2めっき液を前記基板に供給して行われ、
前記第1めっき工程での前記基板の回転数は
1000(rpm)以下であり、前記第2めっき工程での前記基板の回転数
は100(rpm)以下である
めっき処理方法。
【請求項2】
前記第1めっき液は、還元剤を含まない
請求項
1に記載のめっき処理方法。
【請求項3】
前記第2めっき工程は、前記第1めっき液で濡れた状態の前記基板に対して行われる
請求項1
または2に記載のめっき処理方法。
【請求項4】
前記シード層は、CVD法により形成される
請求項1~
3のいずれか一つに記載のめっき処理方法。
【請求項5】
前記シード層の厚みは、1(nm)以上である
請求項1~
4のいずれか一つに記載のめっき処理方法。
【請求項6】
前記第2めっき液は、前記第1めっき液よりも温度が高い
請求項1~
5のいずれか一つに記載のめっき処理方法。
【請求項7】
基板を回転可能に保持する基板保持部と、
前記基板に薬液を供給する薬液供給部と、
各部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
凹部にコバルトまたはコバルト合金のシード層が形成された前記基板を前記基板保持部で保持し、
前記基板を回転させながら前記基板に対して銅イオンを含有する第1めっき液を供給して、前記シード層の表層を銅に置換する置換めっき処理を行い、
前記置換めっき処理の後に、前記基板を回転させながら前記基板に対して銅イオンおよび還元剤を含有する第2めっき液を供給して、前記凹部に還元めっき処理を行い、
前記置換めっき処理での前記基板の回転数は
1000(rpm)以下であり、前記還元めっき処理での前記基板の回転数
は100(rpm)以下である
めっき処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、めっき処理方法およびめっき処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板である半導体ウェハに多層配線を形成する手法として、ビアの内部に形成された銅のシード層を触媒に無電解めっき処理を行い、ビアの内部を銅配線で埋める手法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ビアの内部を銅配線で良好に埋めることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるめっき処理方法は、準備工程と、第1めっき工程と、第2めっき工程とを含む。準備工程は、凹部にコバルトまたはコバルト合金のシード層が形成された基板を準備する。第1めっき工程は、前記基板に対して銅イオンを含有する第1めっき液を用いて、前記シード層の表層を銅に置換する置換めっき処理を行う。第2めっき工程は、前記第1めっき工程の後に、前記基板に対して銅イオンおよび還元剤を含有する第2めっき液を用いて、前記凹部に還元めっき処理を行う。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ビアの内部を銅配線で良好に埋めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るめっき処理部の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る第1めっき処理前の基板表面の状態を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る第1めっき処理を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る第1めっき処理後の基板表面の状態を示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る第2めっき処理を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る第2めっき処理後の基板表面の状態を示す拡大断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態の変形例に係る第1めっき処理を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態の変形例に係る第2めっき処理を説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施形態の別の変形例に係る第2めっき処理を説明するための図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るめっき処理における処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するめっき処理方法およびめっき処理装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0009】
従来、基板である半導体ウェハに多層配線を形成する手法として、ビアの内部に形成された銅のシード層を触媒に無電解めっき処理を行い、ビアの内部を銅配線で埋める手法が知られている。
【0010】
一方で、銅のシード層はPVD(Physical Vapor Deposition)法でしか成膜できないことから、近年の多層配線の微細化にともなってビアの内径が縮小した場合に、ビアの内部に均質な銅のシード層を形成できない場合がある。
【0011】
そして、ビアの内部に不均質な銅のシード層が形成されることにより、ビアの内部を銅配線で良好に埋めることができない恐れがある。
【0012】
そこで、上述の問題点を克服し、ビアの内部を銅配線で良好に埋めることができる技術の実現が期待されている。
【0013】
<基板処理システムの概要>
最初に、実施形態に係る基板処理装置1の概略構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る基板処理装置1の構成を示す図である。基板処理装置1は、めっき処理装置の一例である。
【0014】
なお、以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0015】
図1に示すように、基板処理装置1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0016】
搬入出ステーション2は、キャリア載置台11と、搬送部12とを備える。キャリア載置台11には、複数枚の基板、実施形態では半導体ウェハ(以下、基板Wとも呼称する。)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0017】
キャリア載置台11には、複数のロードポートが搬送部12に隣接するように並べて配置されており、複数のロードポートのそれぞれにキャリアCが1つずつ載置される。
【0018】
搬送部12は、キャリア載置台11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、基板Wを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間で基板Wの搬送を行う。
【0019】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数のめっき処理部5とを備える。複数のめっき処理部5は、搬送部15の両側に並べて設けられる。めっき処理部5の構成については後述する。
【0020】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、基板Wを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いて受渡部14およびめっき処理部5間で基板Wの搬送を行う。
【0021】
また、基板処理装置1は、制御装置9を備える。制御装置9は、たとえばコンピュータであり、制御部91と記憶部92とを備える。記憶部92には、基板処理装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部91は、記憶部92に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理装置1の動作を制御する。
【0022】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置9の記憶部92にインストールされたものであってもよい。
【0023】
コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0024】
上記のように構成された基板処理装置1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置台11に載置されたキャリアCから基板Wを取り出し、取り出した基板Wを受渡部14に載置する。
【0025】
受渡部14に載置された基板Wは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、めっき処理部5へ搬送され、めっき処理部5によって処理される。
【0026】
たとえば、基板Wの表面には、トレンチやビア120(
図3参照)などの凹部が形成されており、めっき処理部5は、かかる凹部に対して無電解めっき法による金属の埋め込みを行う。
【0027】
めっき処理部5によって処理された基板Wは、基板搬送装置17によってめっき処理部5から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済の基板Wは、基板搬送装置13によってキャリア載置台11のキャリアCへ戻される。
【0028】
<めっき処理部の概要>
次に、めっき処理部5の概略構成について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、実施形態に係るめっき処理部5の構成を示す図である。めっき処理部5は、たとえば、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理ユニットとして構成される。
【0029】
めっき処理部5は、無電解めっき処理を含む液処理を行うように構成されている。めっき処理部5は、チャンバ51と、基板保持部52と、第1めっき液供給部53と、第2めっき液供給部54とを備える。第1めっき液供給部53および第2めっき液供給部54は、薬液供給部の一例である。
【0030】
基板保持部52は、チャンバ51内に配置され、基板Wを水平に保持する。第1めっき液供給部53は、基板保持部52に保持された基板Wの表面(上面)に第1めっき液L1を供給する。第2めっき液供給部54は、基板保持部52に保持された基板Wの表面(上面)に第2めっき液L2を供給する。
【0031】
実施形態において、基板保持部52は、基板Wの下面(裏面)を真空吸着するチャック部材521を有している。このチャック部材521は、いわゆるバキュームチャックタイプとなっている。
【0032】
基板保持部52には、回転シャフト522を介して回転モータ523(回転駆動部)が連結されている。この回転モータ523が駆動されると、基板保持部52は、基板Wとともに回転する。回転モータ523は、チャンバ51に固定されたベース524に支持されている。なお、基板保持部52の内部にはヒータなどの加熱源は設けられていない。
【0033】
第1めっき液供給部53は、基板保持部52に保持された基板Wに第1めっき液L1を吐出(供給)する第1めっき液ノズル531と、かかる第1めっき液ノズル531に第1めっき液L1を供給する第1めっき液供給源532とを有する。
【0034】
このうち、第1めっき液供給源532は、所定の温度に加熱ないし温調された第1めっき液L1を、第1めっき液配管533を介して第1めっき液ノズル531に供給するように構成されている。
【0035】
第1めっき液ノズル531からの第1めっき液L1の吐出時の温度は、たとえば40℃以上70℃以下であり、より好ましくは60℃以上70℃以下である。第1めっき液ノズル531は、ノズルアーム57に保持されて、移動可能に構成されている。
【0036】
第1めっき液L1は、置換型の無電解めっき処理(以下、置換めっき処理とも呼称する。)用のめっき液である。第1めっき液L1は、たとえば、銅(Cu)イオンを含有する。さらに、実施形態に係る第1めっき液L1には、還元剤が所与の割合よりも小さい割合だけ含まれるか、もしくは還元剤が含まれない。
【0037】
第1めっき液L1に含まれ得る還元剤としては、たとえば、次亜リン酸、ジメチルアミンボラン、グリオキシル酸などが挙げられる。
【0038】
第2めっき液供給部54は、基板保持部52に保持された基板Wに第2めっき液L2を吐出(供給)する第2めっき液ノズル541と、かかる第2めっき液ノズル541に第2めっき液L2を供給する第2めっき液供給源542とを有する。
【0039】
このうち、第2めっき液供給源542は、所定の温度に加熱ないし温調された第2めっき液L2を、第2めっき液配管543を介して第2めっき液ノズル541に供給するように構成されている。
【0040】
第2めっき液ノズル541からの第2めっき液L2の吐出時の温度は、たとえば40℃以上70℃以下であり、より好ましくは60℃以上70℃以下である。第2めっき液ノズル541は、ノズルアーム57に保持されて、移動可能に構成されている。
【0041】
第2めっき液L2は、還元型の無電解めっき処理(以下、還元めっき処理とも呼称する。)用のめっき液である。第2めっき液L2は、たとえば銅イオンと、第1めっき液L1よりも割合の大きい還元剤とを含有する。第2めっき液L2に含まれる還元剤は、たとえば、次亜リン酸、ジメチルアミンボラン、グリオキシル酸などである。
【0042】
なお、実施形態に係る第2めっき液L2には、金属イオンおよび還元剤に加えて、錯化剤やpH調整剤などが含まれていてもよい。第2めっき液L2に含まれ得る錯化剤は、銅イオンと錯体を形成しうるものであればよく、オキシカルボン酸またはこの塩、アミノカルボン酸またはこの塩、トリエタノールアミン、グリセリンなどが挙げられる。
【0043】
かかるオキシカルボン酸としては、たとえば、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などが挙げられる。また、かかるアミノカルボン酸としては、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、などが挙げられる。
【0044】
また、第2めっき液L2に含まれ得るpH調整剤としては、たとえば、酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、水酸化カリウム、アンモニアなどが挙げられる。
【0045】
めっき処理部5は、また、基板保持部52に保持された基板Wの表面に洗浄液L3を供給する洗浄液供給部55と、当該基板Wの表面にリンス液L4を供給するリンス液供給部56と、を更に備えている。
【0046】
洗浄液供給部55は、基板保持部52に保持されて回転する基板Wに対して洗浄液L3を供給し、基板Wを前洗浄処理するものである。この洗浄液供給部55は、基板保持部52に保持された基板Wに対して洗浄液L3を吐出する洗浄液ノズル551と、洗浄液ノズル551に洗浄液L3を供給する洗浄液供給源552と、を有している。
【0047】
このうち、洗浄液供給源552は、後述するように所定の温度に加熱ないし温調された洗浄液L3を、洗浄液配管553を介して洗浄液ノズル551に供給するように構成されている。洗浄液ノズル551は、ノズルアーム57に保持されて、第1めっき液ノズル531や第2めっき液ノズル541とともに移動可能になっている。
【0048】
洗浄液L3としては、ジカルボン酸またはトリカルボン酸が用いられる。このうち、ジカルボン酸としては、たとえばリンゴ酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸等の有機酸を用いることができる。また、トリカルボン酸としては、たとえばクエン酸等の有機酸を用いることができる。
【0049】
リンス液供給部56は、基板保持部52に保持された基板Wにリンス液L4を吐出するリンス液ノズル561と、リンス液ノズル561にリンス液L4を供給するリンス液供給源562と、を有している。
【0050】
このうち、リンス液ノズル561は、ノズルアーム57に保持されて、第1めっき液ノズル531、第2めっき液ノズル541および洗浄液ノズル551とともに移動可能になっている。
【0051】
また、リンス液供給源562は、リンス液L4を、リンス液配管563を介してリンス液ノズル561に供給するように構成されている。リンス液L4としては、たとえば、DIW(脱イオン水)などを用いることができる。
【0052】
上述した第1めっき液ノズル531、第2めっき液ノズル541、洗浄液ノズル551およびリンス液ノズル561を保持するノズルアーム57には、図示しないノズル移動機構が連結されている。
【0053】
このノズル移動機構は、ノズルアーム57を水平方向および上下方向に移動させる。より具体的には、ノズル移動機構によって、ノズルアーム57は、基板Wに処理液(第1めっき液L1、第2めっき液L2、洗浄液L3またはリンス液L4)を吐出する吐出位置と、吐出位置から退避した退避位置との間で移動可能になっている。
【0054】
このうち、吐出位置は、基板Wの表面のうちの任意の位置に処理液を供給可能であれば特に限られることはない。たとえば、基板Wの中心に処理液を供給可能な位置とすることが好適である。
【0055】
基板Wに第1めっき液L1を供給する場合と、第2めっき液L2を供給する場合と、洗浄液L3を供給する場合と、リンス液L4を供給する場合とで、ノズルアーム57の吐出位置は異なってもよい。
【0056】
退避位置は、チャンバ51内のうち、上方から見た場合に基板Wに重ならない位置であって、吐出位置から離れた位置である。ノズルアーム57が退避位置に位置づけられている場合、移動する蓋体6がノズルアーム57と干渉することが回避される。
【0057】
基板保持部52の周囲には、カップ581が設けられている。このカップ581は、上方から見た場合にリング状に形成されており、基板Wの回転時に、基板Wから飛散した処理液を受け止めて、ドレンダクト583に案内する。
【0058】
カップ581の外周側には、雰囲気遮断カバー582が設けられており、基板Wの周囲の雰囲気がチャンバ51内に拡散することを抑制している。この雰囲気遮断カバー582は、上下方向に延びるように円筒状に形成されており、上端が開口している。雰囲気遮断カバー582内に、後述する蓋体6が上方から挿入可能になっている。
【0059】
実施形態では、基板保持部52に保持された基板Wは、蓋体6によって覆われる。この蓋体6は、天井部61と、天井部61から下方に延びる側壁部62と、を有している。
【0060】
天井部61は、第1天井板611と、第1天井板611上に設けられた第2天井板612と、を含んでいる。第1天井板611と第2天井板612との間には、ヒータ63が介在されている。
【0061】
第1天井板611および第2天井板612は、ヒータ63を密封し、ヒータ63が第2めっき液L2などの処理液に触れないように構成されている。より具体的には、ヒータ63の外周側にはシールリング613が設けられており、このシールリング613によってヒータ63が密封されている。
【0062】
第1天井板611および第2天井板612は、第2めっき液L2などの処理液に対する耐腐食性を有していることが好適であり、たとえば、アルミニウム合金によって形成されていてもよい。更に耐腐食性を高めるために、第1天井板611、第2天井板612および側壁部62は、テフロン(登録商標)でコーティングされていてもよい。
【0063】
蓋体6には、蓋体アーム71を介して蓋体移動機構7が連結されている。蓋体移動機構7は、蓋体6を水平方向および上下方向に移動させる。より具体的には、蓋体移動機構7は、蓋体6を水平方向に移動させる旋回モータ72と、蓋体6を上下方向に移動させるシリンダ73と、を有している。
【0064】
このうち、旋回モータ72は、シリンダ73に対して上下方向に移動可能に設けられた支持プレート74上に取り付けられている。シリンダ73の代替えとして、モータとボールねじとを含むアクチュエータ(図示せず)を用いてもよい。
【0065】
蓋体移動機構7の旋回モータ72は、蓋体6を、基板保持部52に保持された基板Wの上方に配置された上方位置と、上方位置から退避した退避位置との間で移動させる。このうち上方位置は、基板保持部52に保持された基板Wに対して比較的大きな間隔で対向する位置であって、上方から見た場合に基板Wに重なる位置である。
【0066】
退避位置は、チャンバ51内のうち、上方から見た場合に基板Wに重ならない位置である。蓋体6が退避位置に位置づけられている場合、移動するノズルアーム57が蓋体6と干渉することが回避される。旋回モータ72の回転軸線は、上下方向に延びており、蓋体6は、上方位置と退避位置との間で、水平方向に旋回移動可能になっている。
【0067】
蓋体移動機構7のシリンダ73は、蓋体6を上下方向に移動させて、第2めっき液L2が供給された基板Wと天井部61の第1天井板611との間隔を調節する。より具体的には、シリンダ73は、蓋体6を下方位置(
図2において実線で示す位置)と、上方位置(
図2において二点鎖線で示す位置)とに位置づける。
【0068】
実施形態では、ヒータ63が駆動されて、上述した下方位置に蓋体6が位置づけられた場合に、基板保持部52または基板W上の第2めっき液L2が加熱されるように構成されている。
【0069】
蓋体6の天井部61および側壁部62は、蓋体カバー64により覆われている。この蓋体カバー64は、蓋体6の第2天井板612上に、支持部65を介して載置されている。すなわち、第2天井板612上に、第2天井板612の上面から上方に突出する複数の支持部65が設けられており、この支持部65に蓋体カバー64が載置されている。
【0070】
蓋体カバー64は、蓋体6とともに水平方向および上下方向に移動可能になっている。また、蓋体カバー64は、蓋体6内の熱が周囲に逃げることを抑制するために、天井部61および側壁部62よりも高い断熱性を有していることが好ましい。
【0071】
たとえば、蓋体カバー64は、樹脂材料により形成されていることが好適であり、その樹脂材料が耐熱性を有していることがより一層好適である。
【0072】
このように実施形態では、ヒータ63を具備する蓋体6と蓋体カバー64とが一体的に設けられ、下方位置に配置された場合に基板保持部52または基板Wを覆うカバーユニット10が、これらの蓋体6及び蓋体カバー64によって構成される。
【0073】
チャンバ51の上部には、蓋体6の周囲に清浄な空気を供給するファンフィルターユニット59が設けられている。ファンフィルターユニット59は、チャンバ51内(とりわけ、雰囲気遮断カバー582内)に空気を供給し、供給された空気は、排気管81に向かって流れる。
【0074】
蓋体6の周囲には、この空気が下向きに流れるダウンフローが形成され、第2めっき液L2などの処理液から気化したガスは、このダウンフローによって排気管81に向かって流れる。このようにして、処理液から気化したガスが上昇してチャンバ51内に拡散することを防止している。
【0075】
上述したファンフィルターユニット59から供給された気体は、排気機構8によって排出されるようになっている。
【0076】
<実施形態>
つづいて、実施形態に係るめっき処理の詳細について、
図3~
図7を参照しながら説明する。
図3は、実施形態に係る第1めっき処理前の基板W表面の状態を示す拡大断面図である。
【0077】
なお、
図3に示す基板Wには図示しない素子がすでに形成されている。そして、かかる素子形成後の配線形成工程(いわゆるBEOL(Back End of Line))において、配線100上の絶縁膜110に形成されたビア120を金属配線で埋める各種処理について以下に説明する。
【0078】
図3に示すように、基板Wには金属である配線100が形成されるとともに、かかる配線100上に絶縁膜110が設けられる。実施形態では、たとえば、絶縁膜110の全体が酸化膜で構成される。
【0079】
実施形態に係る配線100は、酸化膜である絶縁膜110の内部を拡散しない元素で構成される。配線100は、たとえば、Co、NiまたはRuを含む導電性の材料で構成される。
【0080】
また、基板Wには、絶縁膜110における所与の位置にビア120が形成される。かかるビア120は、凹部の一例であり、絶縁膜110の上面から配線100まで貫通するように形成される。
【0081】
また、実施形態に係る第1めっき処理に先立って、ビア120の内部を含めた基板Wの表面には、TaやTaNなどで構成されるバリア層131と、コバルト(Co)またはコバルト合金で構成されるシード層132とが順に成膜される。
【0082】
ここで、実施形態では、たとえば、コバルトまたはコバルト合金で構成されるシード層132が、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成される。
【0083】
また、基板Wの絶縁膜110にビア120を形成する方法としては、従来公知の方法から適宜採用することができる。具体的には、たとえば、ドライエッチング技術として、フッ素系または塩素系ガスなどを用いた汎用的技術を適用することができる。
【0084】
特に、アスペクト比(径に対する深さの比率)の大きなビア120を形成する手法として、高速な深掘エッチングが可能なICP-RIE(Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching:誘導結合プラズマ-反応性イオンエッチング)の技術を採用することができる。
【0085】
たとえば、六フッ化硫黄(SF6)を用いたエッチングステップとC4F8などのガスを用いた保護ステップとを繰り返しながら行う、いわゆるボッシュプロセスを好適に採用することができる。
【0086】
図3に示すように、配線100上の絶縁膜110にビア120が形成され、バリア層131およびシード層132が成膜された基板Wは、上述のめっき処理部5に搬入され、所与のめっき処理が行われる。
【0087】
図4は、実施形態に係る第1めっき処理を説明するための図である。
図4に示すように、実施形態に係るめっき処理方法では、まず、制御部91(
図1参照)が、第1めっき液供給部53を制御して、基板Wの表面に第1めっき液ノズル531から第1めっき液L1を吐出する。
【0088】
これにより、制御部91は、かかる第1めっき液L1を用いて、ビア120(
図3参照)に対する置換めっき処理を行う。
【0089】
この置換めっき処理により、
図5に示すように、ビア120の内部に形成されるシード層132のコバルトの表層が銅の薄膜133に置換される。
図5は、実施形態に係る第1めっき処理後の基板W表面の状態を示す拡大断面図である。
【0090】
そして、実施形態に係るめっき処理方法では、
図6に示すように、上述の第1めっき処理につづいて、制御部91(
図1参照)が、第2めっき液供給部54を制御して、基板Wの表面に第2めっき液ノズル541から第2めっき液L2を吐出する。
図6は、実施形態に係る第2めっき処理を説明するための図である。
【0091】
これにより、制御部91は、かかる第2めっき液L2を用いて、ビア120(
図5参照)に対する還元めっき処理を行う。
【0092】
この還元めっき処理により、
図7に示すように、ビア120の内部に露出する銅の薄膜133を触媒にして銅の還元めっき膜134が形成され、ビア120の内部が還元めっき膜134で埋まる。
図7は、実施形態に係る第2めっき処理後の基板W表面の状態を示す拡大断面図である。
【0093】
このように、実施形態では、置換めっき処理で形成された薄膜133を触媒にして還元めっき膜134を形成し、ビア120の内部を還元めっき膜134で埋める。これにより、アスペクト比が大きく銅配線を形成しにくいビア120の内部に、ボイドやシームなどが含まれない良好な銅配線を形成することができる。
【0094】
ここで、実施形態では、コバルトで構成されるシード層132に直接還元めっき処理を行うのではなく、かかるシード層132の表層を銅の薄膜133に置換してから還元めっき処理を行う。これにより、コバルトを触媒にして銅の還元めっき膜134を形成する場合と比べて、ビア120の内部を銅配線で良好に埋めることができる。
【0095】
また、もし仮に、銅で構成されるシード層に還元めっき処理を行おうとした場合、かかる銅のシード層は通常PVD法でしか成膜できない。そのため、特に多層配線の微細化にともなってビア120の内径が縮小した場合に、ビア120の内部に均質なシード層を形成できない恐れがある。
【0096】
そして、ビア120の内部に不均質なシード層が形成されることにより、ビア120の内部を還元めっき膜134(すなわち、銅配線)で良好に埋めることができない恐れがある。
【0097】
しかしながら、実施形態では、PVD法以外の手法でも形成可能なコバルトのシード層132が用いられていることから、銅のシード層を用いる場合と比べて、ビア120の内部に均質なシード層132を形成することができる。したがって、実施形態によれば、銅のシード層を用いる場合と比べて、ビア120の内部を銅配線で良好に埋めることができる。
【0098】
また、実施形態では、コバルトのシード層132がCVD法により形成されるとよい。これにより、ビア120の内部にさらに均質なシード層132を形成することができる。したがって、実施形態によれば、ビア120の内部を銅配線でさらに良好に埋めることができる。
【0099】
また、実施形態では、コバルトのシード層132が、1(nm)以上の厚みであるとよい。これにより、島状ではなく膜状のシード層132をビア120の内部に形成することができることから、ビア120の内部にさらに均質なシード層132を形成することができる。したがって、実施形態によれば、ビア120の内部を銅配線でさらに良好に埋めることができる。
【0100】
また、実施形態では、コバルトのシード層132が、2(nm)~5(nm)の厚みであるとさらによい。これにより、ビア120の内部にさらに均質なシード層132を形成することができるとともに、厚いコバルトのシード層132による電気抵抗の悪化を抑制することができる。
【0101】
つづいて、ここまで説明した第1めっき処理および第2めっき処理の詳細について説明する。第1めっき処理は、たとえば、室温または室温よりも高い温度(たとえば、23(℃)~70(℃))の第1めっき液L1を基板Wに供給して行われる。
【0102】
このように、室温よりも高い温度の第1めっき液L1で置換めっき処理を実施することにより、シード層132の表層を効率よく薄膜133に置換することができる。
【0103】
また、第1めっき処理は、基板Wの回転数を1000(rpm)以下に制御して実施されるとよい。これにより、基板Wの表面で第1めっき液L1が振り切られて液切れすることを抑制することができる。したがって、実施形態によれば、基板Wの表面全面で均等に置換めっき処理を実施することができる。
【0104】
第1めっき処理は、たとえば、基板Wを低回転(たとえば、20(rpm)程度)に制御して、基板Wの表面に第1めっき液L1のパドル(液盛り)を形成しながら実施されるとよい。これにより、第1めっき処理において、第1めっき液L1の使用量を削減することができる。
【0105】
また、第1めっき処理は、たとえば、基板W表面における第1めっき液L1のパドル形成処理と、かかるパドルの振り切り処理とを繰り返して実施してもよい。
【0106】
これにより、実施形態に係る第1めっき処理では、第1めっき液L1の使用量を削減することができるとともに、置換されたコバルトなどの不純物を第1めっき液L1から除くことができるため、良好な状態の薄膜133を形成することができる。
【0107】
また、第1めっき処理は、たとえば、基板Wを比較的高回転(たとえば、250(rpm)程度)に制御して、継続的に供給される第1めっき液L1を基板Wの端部から随時排液しながら実施してもよい。これにより、第1めっき処理において、置換されたコバルトなどの不純物を第1めっき液L1から除くことができるため、良好な状態の薄膜133を形成することができる。
【0108】
また、第1めっき処理は、たとえば、還元剤を含まない第1めっき液L1で行われるとよい。これにより、第1めっき液供給源532(
図2参照)において貯留される第1めっき液L1内で金属イオンと還元剤とが反応することを抑制することができることから、第1めっき処理の処理効率を向上させることができる。
【0109】
実施形態に係る第2めっき処理は、基板Wの回転数を100(rpm)以下に制御して実施されるとよい。これにより、基板Wの表面に第2めっき液L2のパドルを形成しながら還元めっき処理を実施することができるため、第2めっき処理において、第2めっき液L2の使用量を削減することができる。
【0110】
また、第2めっき処理は、たとえば、第2めっき液L2のパドルが形成された基板Wを蓋体6で覆い、かかる第2めっき液L2のパドルを蓋体6のヒータ63で所与の温度(たとえば、40(℃)~70(℃)に昇温しながら実施されるとよい。
【0111】
これにより、室温よりも高い温度の第2めっき液L2で還元めっき処理を実施することができることから、ビア120が微細化されている場合でも、かかるビア120の内部を還元めっき膜134でさらに良好に埋めることができる。
【0112】
また、第2めっき処理における第2めっき液L2の温度は、第1めっき処理における第1めっき液L1の温度よりも高いとよい。これにより、より時間がかかる第2めっき処理を効率よく実施することができることから、基板Wの全体的な処理時間を低減することができる。
【0113】
第2めっき処理は、まず、第2めっき液L2を基板Wの表面に供給して、かかる第2めっき液L2のパドルを基板Wの表面に形成する。
【0114】
次に、第2めっき液L2のパドルが形成された基板Wが蓋体6によって覆われる。この場合、まず、蓋体移動機構7の旋回モータ72が駆動されて、蓋体6が水平方向に旋回移動して、上方位置(
図2における二点鎖線で示す位置)に位置づけられる。
【0115】
そして、蓋体移動機構7のシリンダ73が駆動されて、上方位置に位置づけられた蓋体6が下降して処理位置に位置づけられる。これにより、基板W上の第2めっき液L2と蓋体6の第1天井板611との間隔が所与の間隔になり、蓋体6の側壁部62が、基板Wの外周側に配置される。
【0116】
実施形態では、蓋体6の側壁部62の下端が、基板Wの下面よりも低い位置に位置づけられる。このようにして、基板Wが蓋体6によって覆われて、基板Wの周囲の空間が閉塞化される。
【0117】
次に、ヒータ63がオンされて、基板W上に液盛りされた第2めっき液L2が加熱される。ヒータ63の設定温度は、第2めっき液L2が上述した所与の温度になる目標温度に固定される。かかる目標温度は、たとえば100(℃)~140(℃)である。
【0118】
第2めっき液L2の温度が、成分が析出する温度まで上昇すると、薄膜133の表面に第2めっき液L2の成分が析出し、還元めっき膜134が形成される。
【0119】
そして、ヒータ63による加熱処理が開始されてから、加熱処理の処理時間として予め設定された時間が経過すると、ヒータ63がオフされる。
【0120】
次に、基板Wから蓋体6が退避される。たとえば、蓋体移動機構7が駆動されて蓋体6が退避位置に位置づけられ、さらに蓋体移動機構7の旋回モータ72が駆動されて、上方位置に位置づけられた蓋体6が水平方向に旋回移動して、退避位置に位置づけられる。これにより、第2めっき処理が終了する。
【0121】
なお、第1めっき処理が終了してから第2めっき処理が開始されるまでの間、基板Wの表面は第1めっき液L1で濡れている状態(すなわち、基板Wの表面に第1めっき液L1の液膜が形成された状態)であるとよい。これにより、第1めっき処理で形成された薄膜133が空気によって酸化することを抑制することができる。
【0122】
すなわち、実施形態では、良好な状態の薄膜133を触媒にして第2めっき処理を実施することができることから、ビア120の内部を還元めっき膜134でさらに良好に埋めることができる。
【0123】
<各種変形例>
つづいて、実施形態の各種変形例について、
図8~
図10を参照しながら説明する。
図8は、実施形態の変形例に係る第1めっき処理を説明するための図である。
【0124】
図8に示すように、変形例に係るめっき処理方法では、まず、制御部91(
図1参照)が、第1めっき液供給部53を制御して、基板Wの表面に第1めっき液ノズル531から第1めっき液L1を吐出する。
【0125】
これにより、制御部91は、かかる第1めっき液L1を用いて、ビア120(
図3参照)に対する置換めっき処理を行う。この置換めっき処理により、
図5に示したように、ビア120の内部に形成されるシード層132のコバルトの表層が、銅の薄膜133に置換される。なお、変形例に係る第1めっき処理は、上述の実施形態と同様であることから、詳細な説明は省略する。
【0126】
図9は、実施形態の変形例に係る第2めっき処理を説明するための図である。
図9に示すように、変形例に係るめっき処理方法では、上述の第1めっき処理につづいて、制御部91(
図1参照)が、第1めっき液供給部53を制御して、基板Wの表面に第1めっき液ノズル531から第1めっき液L1を吐出する。
【0127】
さらに、変形例では、制御部91が、第2めっき液供給部54を制御して、基板Wの表面に第2めっき液ノズル541から第3めっき液L2aを吐出する。かかる第3めっき液L2aには、第1めっき液L1よりも割合の大きい還元剤が含まれるとともに、銅イオンが含まれない。
【0128】
変形例では、制御部91が、第2めっき処理において、第1めっき液L1と第3めっき液L2aとを基板Wの表面に吐出して、かかる基板Wの表面で混合し、第2めっき液L2を生成する。そして、制御部91は、生成された第2めっき液L2を用いて、ビア120(
図5参照)に対する還元めっき処理を行う。
【0129】
これにより、かかるビア120内に還元めっき膜134(
図7参照)が形成される。なお、変形例に係る第2めっき処理は、第2めっき液L2ではなく第1めっき液L1と第3めっき液L2aを同時に吐出する点以外は上述の実施形態と同様であることから、詳細な説明は省略する。
【0130】
ここまで説明した変形例では、上述の実施形態と同様に、コバルトで構成されるシード層132の表層を銅の薄膜133に置換してから還元めっき処理を行う。したがって、変形例によれば、上述の実施形態と同様に、ビア120の内部を銅配線で良好に埋めることができる。
【0131】
また、変形例では、第1めっき液L1が還元剤を含まないとともに、第3めっき液L2aが還元剤および不可避的不純物からなるとよい。そして、変形例では、かかる第1めっき液L1と第3めっき液L2aとを基板Wの表面で混合することにより、第2めっき液L2を生成するとよい。
【0132】
これにより、貯留されている第2めっき液L2内で銅イオンと還元剤との反応が待機中にも進んでしまうことを抑制することができる。すなわち、変形例では、還元めっき処理に用いられる第2めっき液L2の劣化を抑制できることから、ビア120の内部を銅配線でさらに良好に埋めることができる。
【0133】
なお、ここまで説明した変形例では、第1めっき液L1と第3めっき液L2aとを基板Wの表面で混合して第2めっき液L2を生成する例について示した。しかしながら、本開示はかかる例に限られず、たとえば、第1めっき液L1と第3めっき液L2aとを基板Wの上方で(すなわち、吐出された第1めっき液L1および第3めっき液L2aが基板Wに到達する前に)混合して第2めっき液L2を生成してもよい。
【0134】
また、上述した変形例では、第2めっき処理において、第1めっき液L1と第3めっき液L2aとを両方吐出する例について示したが、本開示はかかる例に限られない。
図10は、実施形態の別の変形例に係る第2めっき処理を説明するための図である。
【0135】
図10に示すように、制御部91(
図1参照)は、第2めっき処理において、第2めっき液供給部54を制御して、第1めっき液L1の液膜が形成された基板Wの表面に、第2めっき液ノズル541から第3めっき液L2aのみを吐出する。これにより、制御部91は、吐出された第3めっき液L2aと基板W表面の第1めっき液L1の液膜とを混合し、第2めっき液L2を生成する。
【0136】
そして、制御部91は、生成された第2めっき液L2を用いて、ビア120(
図4参照)に対する還元めっき処理を行う。これにより、かかるビア120内に還元めっき膜134(
図6参照)が形成される。
【0137】
ここまで説明した別の変形例では、上述の実施形態と同様に、コバルトで構成されるシード層132の表層を置換めっき処理で銅の薄膜133に置換してから還元めっき処理を行う。したがって、別の変形例によれば、上述の実施形態と同様に、ビア120の内部を銅配線で良好に埋めることができる。
【0138】
また、別の変形例では、上述の変形例と同様に、還元めっき処理に用いられる第2めっき液L2の劣化を抑制できることから、ビア120の内部を銅配線でさらに良好に埋めることができる。
【0139】
なお、ここまで説明した実施形態および各種変形例では、ビア120を銅配線(還元めっき膜134)で埋める例について示したが、本開示はかかる例に限られず、基板Wの表面に形成される各種の凹部(たとえば、トレンチなど)を銅配線で埋めてもよい。
【0140】
実施形態に係るめっき処理装置(基板処理装置1)は、基板Wを回転可能に保持する基板保持部52と、基板Wに薬液を供給する薬液供給部(第1めっき液供給部53、第2めっき液供給部54)と、各部を制御する制御部91と、を備える。また、制御部91は、凹部(ビア120)にコバルトまたはコバルト合金のシード層132が形成された基板Wを基板保持部52で保持する。また、制御部91は、基板Wに対して銅イオンを含有する第1めっき液L1を用いて、シード層132の表層を銅に置換する置換めっき処理を行う。また、制御部91は、置換めっき処理の後に、基板Wに対して銅イオンおよび還元剤を含有する第2めっき液L2を用いて、凹部(ビア120)に還元めっき処理を行う。これにより、ビア120の内部を銅配線で良好に埋めることができる。
【0141】
また、実施形態に係るめっき処理装置(基板処理装置1)において、薬液供給部は、還元剤が所与の割合よりも小さい第1めっき液L1と、第1めっき液L1よりも割合の大きい還元剤を含む第3めっき液L2aとを基板Wに供給可能に構成される。また、制御部91は、基板W上で第1めっき液L1と第3めっき液L2aを混合して生成される第2めっき液L2を用いて還元めっき処理を行う。これにより、ビア120の内部を銅配線でさらに良好に埋めることができる。
【0142】
また、実施形態に係るめっき処理装置(基板処理装置1)において、制御部91は、置換めっき処理の際に、基板Wの回転数を1000(rpm)以下に制御する。これにより、基板Wの表面全面で均等に置換めっき処理を実施することができる。
【0143】
また、実施形態に係るめっき処理装置(基板処理装置1)において、制御部91は、還元めっき処理の際に、基板の回転数を100(rpm)以下に制御する。これにより、第2めっき液L2の使用量を削減することができる。
【0144】
<めっき処理の詳細>
つづいて、
図11を参照しながら、実施形態に係る基板処理装置1が実行するめっき処理の詳細について説明する。
図11は、実施形態に係るめっき処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0145】
最初に、制御部91は、基板搬送装置13、17を制御して、キャリアCからめっき処理部5の内部に基板Wを搬送し、基板保持部52で基板Wを保持することにより、基板Wを準備する(ステップS101)。
【0146】
次に、制御部91は、基板Wに洗浄処理を行う(ステップS102)。この場合、まず、回転モータ523が駆動されて基板Wが所定の回転数で回転する。つづいて、退避位置(
図2における実線で示す位置)に位置づけられていたノズルアーム57が、基板Wの中央上方の吐出位置に移動する。
【0147】
次に、回転する基板Wに、洗浄液ノズル551から洗浄液L3が供給されて、基板Wの表面が洗浄される。これにより、基板Wに付着した付着物等が、基板Wから除去される。基板Wに供給された洗浄液L3は、ドレンダクト583に排出される。
【0148】
次に、制御部91は、基板Wにリンス処理を行う(ステップS103)。この場合、回転する基板Wに、リンス液ノズル561からリンス液L4が供給されて、基板Wの表面がリンス処理される。これにより、基板W上に残存する洗浄液L3が洗い流される。基板Wに供給されたリンス液L4はドレンダクト583に排出される。
【0149】
次に、制御部91は、基板Wに第1めっき処理を行う(ステップS104)。この場合、1000(rpm)以下で回転する基板Wに、第1めっき液ノズル531から第1めっき液L1が供給されて、ビア120の内部に形成されるコバルトのシード層132が置換めっき処理される。
【0150】
これにより、コバルトのシード層132の表層に銅の薄膜133が形成される。基板Wに供給された第1めっき液L1はドレンダクト583に排出される。
【0151】
次に、制御部91は、基板Wに第2めっき処理を行う(ステップS105)。この場合、100(rpm)以下で回転する基板Wに、第2めっき液ノズル541から第2めっき液L2が供給されて、基板Wの表面に第2めっき液L2のパドルが形成される。これにより、第1めっき処理で形成された銅の薄膜133を触媒にして、ビア120の内部に還元めっき膜134が形成される。
【0152】
次に、制御部91は、基板Wを蓋体6で覆い、ヒータ63を動作させることにより、基板Wの表面に形成された第2めっき液L2のパドルを加熱する処理を行う(ステップS106)。これにより、還元めっき膜134の形成が促進される。なお、かかるステップS106の処理の詳細は上述していることから、詳細な説明は省略する。
【0153】
次に、制御部91は、基板Wにリンス処理を行う(ステップS107)。この場合、まず、蓋体6が基板Wの上方から退避する。つづいて、回転モータ523が駆動されて基板Wが所定の回転数で回転する。
【0154】
そして、回転する基板Wに、リンス液ノズル561からリンス液L4が供給されて、基板Wの表面がリンス処理される。これにより、基板W上に残存する第2めっき液L2が洗い流される。基板Wに供給されたリンス液L4はドレンダクト583に排出される。
【0155】
次に、リンス処理された基板Wが乾燥処理される(ステップS108)。この場合、たとえば、基板Wの回転数を、リンス処理(ステップS107)の回転数よりも増加させて、基板Wを高速で回転させる。これにより、基板W上に残存するリンス液L4が振り切られて基板Wが乾燥する。
【0156】
かかる乾燥処理が終了すると、基板Wは、基板搬送装置17によってめっき処理部5から取り出されて受渡部14に搬送される。また、受渡部14に搬送された基板Wは、基板搬送装置13によって受渡部14から取り出されてキャリアCに収容される。これにより、1枚の基板Wに対する一連のめっき処理が終了する。
【0157】
実施形態に係るめっき処理方法は、準備工程(ステップS101)と、第1めっき工程(ステップS104)と、第2めっき工程(ステップS105)とを含む。準備工程(ステップS101)は、凹部(ビア120)にコバルトまたはコバルト合金のシード層132が形成された基板Wを準備する。第1めっき工程(ステップS104)は、基板Wに対して銅イオンを含有する第1めっき液L1を用いて、シード層132の表層を銅に置換する置換めっき処理を行う。第2めっき工程(ステップS105)は、第1めっき工程(ステップS104)の後に、基板Wに対して銅イオンおよび還元剤を含有する第2めっき液L2を用いて、凹部(ビア120)に還元めっき処理を行う。これにより、ビア120の内部を銅配線で良好に埋めることができる。
【0158】
また、実施形態に係るめっき処理方法において、第2めっき工程は、還元剤が所与の割合よりも小さい第1めっき液L1と、第1めっき液L1よりも割合の大きい還元剤を含む第3めっき液L2aとを混合して生成される第2めっき液L2を用いて行われる。これにより、ビア120の内部を銅配線でさらに良好に埋めることができる。
【0159】
また、実施形態に係るめっき処理方法において、第1めっき液L1は、還元剤を含まない。これにより、ビア120の内部を銅配線でさらに良好に埋めることができる。
【0160】
また、実施形態に係るめっき処理方法において、第2めっき工程(ステップS105)は、第1めっき液L1で濡れた状態の基板Wに対して行われる。これにより、ビア120の内部を還元めっき膜134でさらに良好に埋めることができる。
【0161】
また、実施形態に係るめっき処理方法において、シード層132は、CVD法により形成される。これにより、ビア120の内部を銅配線でさらに良好に埋めることができる。
【0162】
また、実施形態に係るめっき処理方法において、シード層132の厚みは、1(nm)以上である。これにより、ビア120の内部を銅配線でさらに良好に埋めることができる。
【0163】
また、実施形態に係るめっき処理方法において、第2めっき液L2は、第1めっき液+1よりも温度が高い。これにより、基板Wの全体的な処理時間を低減することができる。
【0164】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0165】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0166】
1 基板処理装置(めっき処理装置の一例)
5 めっき処理部
52 基板保持部
53 第1めっき液供給部(薬液供給部の一例)
54 第2めっき液供給部(薬液供給部の一例)
91 制御部
120 ビア(凹部の一例)
132 シード層
133 薄膜
134 還元めっき膜
L1 第1めっき液
L2 第2めっき液
L2a 第3めっき液
W 基板