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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】加工方法及び加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20250328BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20250328BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20250328BHJP
   B24B 49/03 20060101ALI20250328BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B49/04 Z
B24B49/12
B24B49/03 Z
H01L21/304 631
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024059487
(22)【出願日】2024-04-02
(62)【分割の表示】P 2022501784の分割
【原出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2024091657
(43)【公開日】2024-07-05
【審査請求日】2024-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2020024474
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】坂上 貴志
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/012951(WO,A1)
【文献】特開平07-124857(JP,A)
【文献】特開2005-313297(JP,A)
【文献】特開平09-174394(JP,A)
【文献】特開2001-237202(JP,A)
【文献】特開2015-039739(JP,A)
【文献】特開2015-008247(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124032(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04
B24B 37/00 - 37/34
B24B 49/00 - 49/18
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置における基板の加工方法であって、
第1の研削部において前記基板に第1の研削処理を施すことと、
第2の研削部において前記基板に第2の研削処理を施すことと、
前記第2の研削部において前記基板に再研削処理を施し、最終仕上厚みに仕上研削されることと、
基板の最終仕上厚み分布を測定することを含み、
基板保持部に保持されるn枚目(nは2以上の自然数)の基板に対しては、前記再研削処理を行わず、m枚目(mは1以上、n‐1以下の自然数)の基板において測定された前記最終仕上厚み分布に基づいて、前記第2の研削部における仕上研削処理が施されて最終仕上厚みに仕上研削され、
前記第2の研削処理が施された後の前記基板の厚み分布を測定することと、
測定された前記厚み分布に基づいて、前記基板保持部と前記第2の研削部との相対的な傾きを決定することを含み、
前記第2の研削部は、前記基板が、前記厚み分布に基づいて決定された前記基板保持部と前記第2の研削部との相対的な傾きで保持された状態で前記再研削処理を行う、加工方法。
【請求項2】
前記加工装置においては複数の基板が連続的に処理され、
前記基板保持部に保持される1枚目の基板に対しては、前記再研削処理が行われる、請求項に記載の加工方法。
【請求項3】
前記再研削処理における前記基板の研削量と前記仕上研削処理における前記基板の研削量が同じである、請求項1または2のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項4】
前記第1の研削処理に先立ち、前記基板の厚みを減少させるための粗研削を施すことを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項5】
前記粗研削における前記基板の研削量は、前記第1の研削処理及び前記第2の研削処理における前記基板の研削量よりも多い、請求項4に記載の加工方法。
【請求項6】
基板の研削処理を行う加工装置であって、
前記基板に第1の研削処理を施す第1の研削部と、
前記基板に第2の研削処理を施す第2の研削部と、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記第2の研削処理が施された後の前記基板の厚み分布を測定する厚み分布測定部と、
前記基板の研削処理を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第2の研削部において前記基板に再研削処理を施して、最終仕上厚みに仕上研削するように前記第2の研削部の動作を制御し、
さらに前記制御部は、
基板の最終仕上厚み分布を測定するように前記厚み分布測定部の動作を制御し、
前記基板保持部に保持されるn枚目(nは2以上の自然数)の基板に対しては、前記再研削処理を行わず、m枚目(mは1以上、n‐1以下の自然数)の基板において測定された前記最終仕上厚み分布に基づいて、前記第2の研削部における仕上研削処理を施して、前記基板を最終仕上厚みに仕上研削するように前記第2の研削部の動作を制御し、
前記基板保持部と前記第2の研削部との相対的な傾きを調整する傾き調整部を備え、
前記制御部は、
前記第2の研削処理が施された後の前記基板の厚み分布に基づいて、前記基板を保持する基板保持部と前記第2の研削部との相対的な傾きを決定し、
前記第2の研削部は、前記基板が前記厚み分布に基づいて決定された前記基板保持部と前記第2の研削部との相対的な傾きで保持された状態で前記再研削処理を行うように、前記第2の研削部を制御する、加工装置。
【請求項7】
前記加工装置においては複数の基板が連続的に処理され、
前記制御部は、
前記基板保持部に保持される1枚目の基板に対して前記再研削処理を行うように前記第2の研削部の動作を制御する、請求項に記載の加工装置。
【請求項8】
前記再研削処理における前記基板の研削量と前記仕上研削処理における前記基板の研削量が同じである、請求項6または7のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項9】
粗研削処理部を有し、
前記制御部は、
前記第1の研削処理に先立ち、前記基板の厚みを減少させるための粗研削を施すように前記粗研削処理部を制御する、請求項6~8のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項10】
前記粗研削における前記基板の研削量は、前記第1の研削処理及び前記第2の研削処理における前記基板の研削量よりも多い、請求項に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加工方法及び加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェハの研削手段と、当該研削手段の回転軸の傾きを調整する傾斜調整手段と、ウェハの研削条件を記憶する研削条件記憶手段と、を備えるウェハの研削加工装置が開示されている。特許文献1に記載の研削加工装置によれば、研削条件記憶手段に記憶された情報に基づいて研削手段の回転軸の傾きを調整することにより、ウェハの厚みのばらつきを最小限に抑えることを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国 特開2009-090389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、研削処理後の基板の平坦度を適切に向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、加工装置における基板の加工方法であって、第1の研削部において前記基板に第1の研削処理を施すことと、第2の研削部において前記基板に第2の研削処理を施すことと、前記第2の研削部において前記基板に再研削処理を施し、最終仕上厚みに仕上研削されることと、基板の最終仕上厚み分布を測定することを含み、前記基板保持部に保持されるn枚目(nは2以上の自然数)の基板に対しては、前記再研削処理を行わず、m枚目(mは1以上、n‐1以下の自然数)の基板において測定された前記最終仕上厚み分布に基づいて、前記第2の研削部における仕上研削処理が施されて最終仕上厚みに仕上研削され、前記第2の研削処理が施された後の前記基板の厚み分布を測定することと、測定された前記厚み分布に基づいて、前記基板保持部と前記第2の研削部との相対的な傾きを決定することを含み、前記第2の研削部は、前記基板が、前記厚み分布に基づいて決定された前記基板保持部と前記第2の研削部との相対的な傾きで保持された状態で前記再研削処理を行う
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、研削処理後の基板の平坦度を適切に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】重合ウェハの構成の一例を示す説明図である。
図2】加工装置の構成の一例を模式的に示す平面図である。
図3】各研削ユニットの構成の一例を示す側面図である。
図4】加工処理の主な工程の一例を示す説明図である。
図5】加工処理の主な工程の一例を示すフロー図である。
図6】第1のウェハのTTV悪化の様子を模式的に示す説明図である。
図7】2枚目以降の重合ウェハの加工処理の工程を示すフロー図である。
図8】第1のウェハの研削量と仕上研削後のTTVとの関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
近年、半導体デバイスの製造工程においては、表面に複数の電子回路等のデバイスが形成された半導体基板(以下、「第1の基板」という。)と、第2の基板とが接合された重合基板に対し、第1の基板の裏面を研削して薄化することが行われている。
【0009】
この第1の基板の薄化は、第2の基板の裏面を基板保持部により保持した状態で、第1の基板の裏面に研削砥石を当接させ、研削することにより行われる。しかしながら、このように第1の基板の研削を行う場合、第1の基板の裏面に当接される研削砥石と第2の基板を保持する基板保持面との相対的な傾きにより、研削後の第1の基板の平坦度(TTV:Total Thickness Variation)が悪化するおそれがある。具体的には、例えば第1の基板の研削を行う研削砥石の交換により加工装置が一時的に待機状態となった際や、加工装置における研削条件を変更した際に、かかる加工装置の待機前後、研削条件の変更前後における装置特性や環境特性の変化(例えば装置温度や雰囲気温度の変化、研削砥石の表面状態の変化等)により研削砥石と基板保持面の平行度が変化する。これにより待機状態から復帰した直後の研削処理を、待機前の研削処理と同条件で行った場合、研削砥石と基板保持面の平行度が変化しているため、第1の基板のTTVが悪化するおそれがある。
【0010】
上述した特許文献1に記載の加工方法は、研削砥石(研削手段)の回転軸の傾きを調整することで、第1の基板(ウェーハ)を均一な厚みで研削するための研削加工装置である。しかしながら特許文献1には、上述のような加工装置の待機状態前後における装置特性や環境特性を考慮することについては、一切の記載がない。また、特許文献1に記載の方法では、研削砥石(研削手段)の回転軸の傾きを調整するための基板(例えばダミーウェハ)の研削が必要となり、回転軸の傾き調整に時間を要することに加え、傾き調整に用いられた基板を廃棄する必要があった。このように、従来の基板の研削処理には改善の余地がある。
【0011】
そこで本開示にかかる技術は、研削処理後の基板の平坦度を適切に向上させる。具体的には、特に加工装置の待機状態からの復帰後や研削条件の変更後、基板保持部に保持される1枚目の基板の平坦度を適切に向上させる。以下、本実施形態にかかる加工装置、及び加工方法ついて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
本実施形態にかかる後述の加工装置1では、図1に示すように第1の基板としての第1のウェハWと第2の基板としての第2のウェハSとが接合された重合基板としての重合ウェハTに対して処理を行う。そして加工装置1では、当該第1のウェハWを薄化する。以下、第1のウェハWにおいて、第2のウェハSに接合される側の面を表面Waといい、表面Waと反対側の面を裏面Wbという。同様に、第2のウェハSにおいて、第1のウェハWに接合される側の面を表面Saといい、表面Saと反対側の面を裏面Sbという。
【0013】
第1のウェハWは、例えばシリコン基板等の半導体ウェハであって、表面Waに複数のデバイスを含むデバイス層Dが形成されている。デバイス層Dにはさらに表面膜Fwが形成され、当該表面膜Fwを介して第2のウェハSと接合されている。表面膜Fwとしては、例えば酸化膜(SiO膜、TEOS膜)、SiC膜、SiCN膜又は接着剤などが挙げられる。
【0014】
第2のウェハSは、例えば第1のウェハWを支持するウェハである。第2のウェハSの表面Saには表面膜Fsが形成され、周縁部は面取り加工がされている。表面膜Fsとしては、例えば酸化膜(SiO膜、TEOS膜)、SiC膜、SiCN膜又は接着剤などが挙げられる。また、第2のウェハSは、第1のウェハWのデバイス層Dを保護する保護材(サポートウェハ)として機能する。なお、第2のウェハSはサポートウェハである必要はなく、第1のウェハWと同様にデバイス層が形成されたデバイスウェハであってもよい。かかる場合、第2のウェハSの表面Saには、デバイス層を介して表面膜Fsが形成される。
【0015】
なお、以降の説明で用いられる図面においては、図示の煩雑さを回避するため、デバイス層D及び表面膜Fw、Fsの図示を省略する場合がある。
【0016】
図2に示すように加工装置1は、搬入出ステーション2と処理ステーション3を一体に接続した構成を有している。搬入出ステーション2では、例えば外部との間で複数の重合ウェハTを収容可能なカセットCtが搬入出される。処理ステーション3は、重合ウェハTに対して所望の処理を施す各種処理装置を備えている。
【0017】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10が設けられている。図示の例では、カセット載置台10には、複数、例えば4つのカセットCtをX軸方向に一列に載置自在になっている。なお、カセット載置台10に載置されるカセットCtの個数は、本実施形態に限定されず、任意に決定することができる。
【0018】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10のY軸正方向側において、当該カセット載置台10に隣接してウェハ搬送領域20が設けられている。ウェハ搬送領域20には、X軸方向に延伸する搬送路21上を移動自在に構成されたウェハ搬送装置22が設けられている。
【0019】
ウェハ搬送装置22は、研削処理前後の重合ウェハTを保持して搬送する、搬送フォーク23を有している。搬送フォーク23は、その先端が2本に分岐し、重合ウェハTを吸着保持する。また、搬送フォーク23は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸回りに移動自在に構成されている。なお、ウェハ搬送装置22の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置22は、カセット載置台10のカセットCt、アライメントユニット50及び、第1の洗浄ユニット60に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
【0020】
処理ステーション3では、重合ウェハTに対して研削や洗浄などの加工処理が行われる。処理ステーション3は、重合ウェハTの搬送を行う搬送ユニット30、第1のウェハWの研削処理を行う研削ユニット40、研削処理前の重合ウェハTの水平方向の向きを調節するアライメントユニット50、研削処理後の第1のウェハWをスピン洗浄する第1の洗浄ユニット60、及び、研削処理後の第2のウェハSの裏面Sbを洗浄する第2の洗浄ユニット70を有している。
【0021】
搬送ユニット30は、複数、例えば3つのアーム31を備えた多関節型のロボットである。3つのアーム31は、それぞれが旋回自在に構成されている。先端のアーム31には、重合ウェハTを吸着保持する搬送パッド32が取り付けられている。また、基端のアーム31は、アーム31を鉛直方向に昇降させる昇降機構33に取り付けられている。なお、搬送ユニット30の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、搬送ユニット30は、研削ユニット40の後述の受渡位置A0、アライメントユニット50、第1の洗浄ユニット60、及び第2の洗浄ユニット70に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
【0022】
研削ユニット40には、回転テーブル41が設けられている。回転テーブル41上には、重合ウェハTを吸着保持するチャック42が4つ設けられている。4つのチャック42は、回転テーブル41が回転することにより、受渡位置A0及び加工位置A1~A3に移動可能になっている。また、4つのチャック42はそれぞれ、回転機構(図示せず)によって鉛直軸回りに回転可能に構成されている。
【0023】
受渡位置A0では、搬送ユニット30による重合ウェハTの受け渡しが行われる。加工位置A1には粗研削ユニット80が配置され、第1のウェハWを粗研削する。加工位置A2には中研削ユニット90が配置され、第1のウェハWを中研削する。加工位置A3には仕上研削ユニット100が配置され、第1のウェハWを仕上研削する。
【0024】
チャック42には例えばポーラスチャックが用いられ、重合ウェハTを形成する第2のウェハSの裏面Sbを吸着保持する。チャック42の表面、すなわち重合ウェハTの保持面は、側面視において中央部が端部に比べて突出した凸形状を有している。なお、この中央部の突出は微小であるため、図示においてはチャック42の凸形状を省略している。
【0025】
図3に示すように、チャック42はチャックベース43に保持されている。チャックベース43には、チャック42及びチャックベース43の水平方向からの傾きを調整する傾き調整部44が設けられてる。傾き調整部44は、チャックベース43の下面に設けられた、固定軸45と複数の昇降軸46を有している。各昇降軸46は伸縮自在に構成され、チャックベース43を昇降させる。この傾き調整部44によって、チャックベース43の外周部の一端部(固定軸45に対応する位置)を基点に、他端部を昇降軸46によって鉛直方向に昇降させることで、チャック42及びチャックベース43を傾斜させることができる。そしてこれにより、加工位置A1~A3の各種研削ユニットとチャック42との相対的な傾き、すなわち、各種研削ユニットが備える研削砥石に対する第1のウェハWの裏面Wbの傾きを調整することができる。
【0026】
なお、傾き調整部44の構成はこれに限定されず、研削砥石に対する第1のウェハWの相対的な角度(平行度)を調整することができれば、任意に選択することができる。
【0027】
図3に示すように、粗研削処理部または第1の研削部としての粗研削ユニット80は、下面に環状の粗研削砥石を備える粗研削ホイール81、当該粗研削ホイール81を支持するマウント82、当該マウント82を介して粗研削ホイール81を回転させるスピンドル83、及び、例えばモータ(図示せず)を内蔵する駆動部84を有している。また粗研削ユニット80は、図2に示す支柱85に沿って鉛直方向及び水平方向に移動可能に構成されている。そして、粗研削ユニット80では、チャック42に保持された重合ウェハTの第1のウェハWと環状の粗研削砥石の円弧の一部を当接させた状態で、チャック42と粗研削ホイール81をそれぞれ回転させることによって、第1のウェハWの裏面Wbを粗研削する。
【0028】
図2及び図3に示すように、第1の研削部としての中研削ユニット90は粗研削ユニット80と同様の構成を有している。すなわち中研削ユニット90は、環状の中研削砥石を備える中研削ホイール91、マウント92、スピンドル93、駆動部94、及び支柱95を有している。なお、中研削砥石の砥粒の粒度は、粗研削砥石の砥粒の粒度より小さい。
【0029】
図2及び図3に示すように、第2の研削部としての仕上研削ユニット100は粗研削ユニット80及び中研削ユニット90と同様の構成を有している。すなわち仕上研削ユニット100は、環状の仕上研削砥石を備える仕上研削ホイール101、マウント102、スピンドル103、駆動部104、及び支柱105を有している。なお、仕上研削砥石の砥粒の粒度は、中研削砥石の砥粒の粒度より小さい。
【0030】
また処理ステーション3には、仕上研削ユニット100による研削処理終了後の第1のウェハWの厚みを計測する厚み分布測定部としての厚み測定部110が設けられている。厚み測定部110は、例えば加工位置A3又は受渡位置A0に設けられる。厚み測定部110は、例えば非接触式のセンサ(図示せず)と、演算部(図示せず)を有している。そして厚み測定部110では、センサによる複数点の測定結果(第1のウェハWの厚み)から、第1のウェハWの厚み分布を取得し、第1のウェハWのTTVデータを算出する。
【0031】
図2に示すように以上の加工装置1には、制御部120が設けられている。制御部120は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、加工装置1における重合ウェハTの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理ユニットや搬送装置などの駆動系の動作を制御して、加工装置1における後述の加工処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御部120にインストールされたものであってもよい。
【0032】
次に、以上のように構成された加工装置1を用いて行われる加工方法について説明する。なお、本実施形態では、加工装置1の外部の接合装置(図示せず)において、第1のウェハWと第2のウェハSが接合され、予め重合ウェハTが形成されている。
【0033】
先ず、重合ウェハTを複数収納したカセットCtが、搬入出ステーション2のカセット載置台10に載置される。次に、ウェハ搬送装置22の搬送フォーク23によりカセットCt内から1枚目の重合ウェハTが取り出され、処理ステーション3のアライメントユニット50に搬送される。アライメントユニット50では、第1のウェハWに形成されたノッチ部(図示せず)の位置を調節することで、重合ウェハTの水平方向の向きが調節される(図5のステップP1)。
【0034】
水平方向の向きが調節された重合ウェハTは、次に、搬送ユニット30によりアライメントユニット50から搬送され、図4(a)に示すように受渡位置A0のチャック42に受け渡される。続いて、回転テーブル41を回転させて、チャック42を加工位置A1~A3に順次移動させる。
【0035】
加工位置A1では、粗研削ユニット80によって第1のウェハWの裏面Wbを粗研削する(図5のステップP2)。加工位置A2では、中研削ユニット90によって第1のウェハWの裏面Wbを中研削する(図5のステップP3)。さらに加工位置A3では、仕上研削ユニット100によって第1のウェハWの裏面Wbを仕上研削する(図5のステップP4)。
【0036】
ここで、ステップP4の仕上研削においては、例えば仕上研削砥石の摩耗や研削ユニット40の温度等に起因する装置特性や、加工装置1の雰囲気温度等に起因する環境特性により、仕上研削ユニット100とチャック42との平行度が悪化している場合がある。特に、研削処理が行われる重合ウェハTが、加工装置1が待機状態からの復帰直後や、研削条件の変更直後の1枚目の重合ウェハTであった場合、前述のように加工装置1の待機前の状態から平行度が大きく変化しているおそれがある。そして、このように仕上研削ユニット100とチャック42との平行度が悪化した状態で第1のウェハWを最終仕上厚みまで仕上研削してしまうと、図6に示すように、仕上研削処理終了後の第1のウェハW1の平坦度(TTV)が悪化するおそれがある。
【0037】
そこで本実施形態にかかる加工方法においては、ステップP4における仕上研削ユニット100による1枚目の重合ウェハTの研削処理においては、図4(b)に示すように、第1のウェハWの厚みを最終仕上厚みHまで到達させず、その後、第1のウェハWの再研削を更に行うことにより、第1のウェハWのTTVを向上させる。
【0038】
具体的には、先ず図4(c)に示すように、ステップP4における研削処理後の第1のウェハWの厚みを厚み測定部110により複数点で測定することで第1のウェハWの厚み分布を取得し、当該厚み分布からTTVデータを算出する(図5のステップP5)。算出されたTTVデータは、制御部120に出力される。
【0039】
第1のウェハWのTTVデータを算出すると、続いて、回転テーブル41を回転させて、チャック42を加工位置A2、A3に順次移動させる。
【0040】
加工位置A2では、中研削ユニット90によって第1のウェハWの裏面Wbを再研削(中研削)する(図5のステップP6)。なお、かかる中研削ユニット90における第1のウェハWの再研削は、ステップP3における第1のウェハWの1度目の中研削と同様の条件で行われる。具体的には、中研削ユニット90とチャック42との相対的な傾きを変化させずに、中研削ユニット90による再研削を行う。
【0041】
中研削ユニット90による第1のウェハWの再研削が行われると、次に図4(d)に示すように、ステップP5において算出された第1のウェハWのTTVデータに基づいて、チャック42と仕上研削ユニット100の相対的な傾きが調整される(図5のステップP7)。具体的には、仕上研削ユニット100における再研削後の第1のウェハW1の面内厚みが均一となるように、第1のウェハWの厚み分布において厚みが大きいと判断される位置においては研削量を増やし、厚みが小さいと判断される位置においては研削量を減らすように、相対的な傾きを調整する。すなわち、第1のウェハWの厚み分布に基づいて、チャック42と仕上研削ユニット100の相対的な傾きを調整し、これにより仕上研削ユニット100による第1のウェハWの再研削量を調整する。
【0042】
仕上研削ユニット100とチャック42との相対的な傾きが調整されると、加工位置A3において、図4(e)に示すように仕上研削ユニット100により第1のウェハWの裏面Wbを最終仕上厚みHまで再研削(仕上研削)する(図5のステップP8)。
【0043】
本実施形態においては、このように第1のウェハWが最終仕上厚みに形成される前に当該第1のウェハWの厚み分布を取得し、更にTTVデータを算出する。そして、これに基づいて仕上研削ユニット100とチャック42との相対的な傾きを調整する。そして、このように相対的な傾きを調整した後に第1のウェハWの再研削を行うため、例えば仕上研削ユニット100とチャック42との平行度が悪化していた場合であっても、適切に第1のウェハWのTTVの悪化を抑制することができる。そして、このように研削対象である第1のウェハWの厚み分布に基づいて重合ウェハTのTTVを向上させるため、予め、傾き調整用ウェハ(例えばダミーウェハ)の研削を行う必要がなく、すなわち、従来のように傾き調整用ウェハを廃棄する必要がない。
【0044】
第1のウェハWが再研削(仕上研削)により最終仕上厚みに形成されると、続いて、ステップP8における再研削処理後の第1のウェハWの厚みを厚み測定部110により複数点で測定し、これにより第1のウェハWの最終仕上厚み分布を取得し、当該最終仕上厚み分布からTTVデータを算出する(図5のステップP9)。算出されたTTVデータは、制御部120に出力される。
【0045】
TTVデータが算出された重合ウェハTは、搬送ユニット30により受渡位置A0から第2の洗浄ユニット70に搬送され、搬送パッド32に保持された状態で第2のウェハSの裏面Sbが洗浄、及び、乾燥される(図5のステップP10)。
【0046】
次に重合ウェハTは、搬送ユニット30により第2の洗浄ユニット70から第1の洗浄ユニット60に搬送され、洗浄液ノズル(図示せず)を用いて、第1のウェハWの裏面Wbが仕上洗浄される(図5のステップP11)。
【0047】
その後、すべての処理が施された重合ウェハTは、ウェハ搬送装置22の搬送フォーク23によってカセット載置台10のカセットCtに搬送される。そして、1枚目の重合ウェハTがカセットCtに搬入されると、続けて、カセットCtに収容された2枚目以降の重合ウェハTに対して、加工装置1における処理が行われる。
【0048】
加工装置1における2枚目以降、n枚目(nは2以上の自然数)の重合ウェハTに対する処理は、アライメントユニット50、研削ユニット40、第2の洗浄ユニット70、及び第1の洗浄ユニット60で順次行われる。
【0049】
ここで、研削ユニット40における1枚目の重合ウェハTの研削処理においては、上述のように加工装置1の待機状態前後の平行度の悪化の影響を考慮するため、取得された第1のウェハWの厚み分布に基づいて、再研削処理(図5のステップP5~P8)を行った。しかしながら、加工装置1におけるn枚目の重合ウェハTの研削処理においては、1枚目の重合ウェハTの研削処理により仕上研削ユニット100とチャック42との平行度が調整されているため、第1のウェハWの再研削処理を行う必要がない。
【0050】
そこで、n枚目の重合ウェハTに対する研削処理においては、当該重合ウェハTに対する再研削処理(図5のステップP5~P8)を行わず、図5のステップP9において取得された最終仕上厚み分布に基づいた、フィードバック制御のみを行う。
【0051】
具体的には、カセットCtから搬出されたn枚目の重合ウェハTは、先ず、アライメントユニット50において水平方向の向きが調節される(図7のステップQ1)。
【0052】
水平方向の向きが調節された重合ウェハTは、次に、搬送ユニット30によりアライメントユニット50から受渡位置A0のチャック42に受け渡される。続いて、回転テーブル41を回転させて、チャック42を加工位置A1~A3に順次移動させる。
【0053】
加工位置A1では、粗研削ユニット80によって第1のウェハWの裏面Wbを粗研削する(図7のステップQ2)。加工位置A2では、中研削ユニット90によって第1のウェハWの裏面Wbを中研削する(図7のステップQ3)。
【0054】
重合ウェハTに中研削処理が行われると、次に、図5のステップP9において取得された1枚目の第1のウェハWの厚み分布に基づいて、チャック42と仕上研削ユニット100の相対的な傾きが調整される(図7のステップQ4)。これにより、1枚目の重合ウェハTの仕上研削による装置特性(例えば研削砥石の摩耗や装置温度)や環境特性(例えば雰囲気温度)の変化に起因する仕上研削ユニット100とチャック42の平行度の変化を調整、すなわち、1枚目の重合ウェハTの仕上研削処理の結果をn枚目の重合ウェハTの仕上研削処理にフィードバックする。
【0055】
そして、仕上研削ユニット100とチャック42との相対的な傾きが調整されると、加工位置A3において、第1のウェハWを最終仕上厚みまで仕上研削する(図7のステップQ5)。
【0056】
その後、仕上研削処理が施された重合ウェハTは、厚み測定部110により取得された厚み分布からTTVデータが算出された後(図7のステップQ6)、第2の洗浄ユニット70による洗浄(図7のステップQ7)、第1の洗浄ユニット60による洗浄(図7のステップQ8)が順次行われ、カセットCtへと収容される。そして、カセットCtに収容されたすべての重合ウェハTに対しての処理が終了すると、加工装置1における一連の加工処理が終了する。
【0057】
なお、ステップQ4におけるチャック42と仕上研削ユニット100の相対的な傾きの調整は、上述のような1枚目の重合ウェハTの最終仕上厚み分布に代えて、m枚目の重合ウェハT(mは1以上、n-1以下の自然数)のステップQ6において取得された最終仕上厚み分布に基づいて行われてもよい。すなわち、少なくともn枚目の重合ウェハTよりも前に処理が行われた重合ウェハTの最終仕上厚み分布に基づいて行われればよい。
【0058】
なお以上の実施形態においては、加工装置1において重合ウェハTの加工処理を枚葉に、すなわち、一の重合ウェハTの加工処理が完了した後に他の重合ウェハTの加工処理を開始する場合を例に説明を行ったが、複数の重合ウェハTに対する処理は連続的、すなわち、複数枚の重合ウェハTの処理が同時に行われるようにしてもよい。
【0059】
なお、本実施形態にかかる加工装置1のように、研削ユニット40が複数(本実施形態においては4つ)のチャック42を備える場合、加工装置1の待機状態時においては複数のチャック42がそれぞれ独立して変形し、平行度が悪化する。このため、本実施形態にかかる仕上研削ユニット100とチャック42との相対的な傾きの調整、及び、再研削処理(図5のステップP5~P8)は、加工装置1の待機状態からの復帰後、チャック42のそれぞれにおいて1枚目に保持される重合ウェハTの処理において行われることが望ましい。
【0060】
以上、本実施形態にかかる加工方法によれば、加工装置1の待機状態からの復帰直後にそれぞれのチャック42で保持される1枚目の重合ウェハTの処理において、第1のウェハWが最終仕上厚みに形成される前の厚み分布を取得し、これに基づいてチャック42の傾きを調整する。そして、このようにチャック42の傾きが調整された状態で第1のウェハWの再研削処理が行われるため、加工装置1の待機により仕上研削ユニット100とチャック42との平行度が悪化していた場合であっても、適切に第1のウェハWのTTVを向上させることができる。
【0061】
また、このように研削対象である第1のウェハWの最終仕上厚みに形成される前の厚み分布に基づいて当該第1のウェハWのTTVを向上させるため、予め、傾き調整用ウェハ(例えばダミーウェハ)の研削を行う必要がなく、従来のように傾き調整用ウェハの廃棄が生じるのを適切に抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態における第1のウェハWの再研削処理においては、当該再研削処理を2つの研削ユニット、すなわち中研削ユニット90及び仕上研削ユニット100により行う。ここで、例えば再研削処理が仕上研削ユニット100のみで行われた場合、当該仕上研削ユニット100により行われる1度目の研削処理と2度目の研削処理(再研削処理)の開始時における、第1のウェハWの状態が変化する。具体的には、1度目の研削処理は中研削処理の後に仕上研削ユニット100による研削処理が行われるのに対し、2度目の研削処理においては1度目の仕上研削処理の後に仕上研削ユニット100による研削処理が行われるため、仕上研削ユニット100による2度目の研削処理の開始時における第1のウェハWの表面粒度は、1度目の研削処理の開始時における表面粒度より小さくなる。そして、このように仕上研削ユニット100による研削処理の開始時の第1のウェハWの表面状態が変化した場合、本実施形態のように第1のウェハWの再研削処理を行ったとしても、所望のTTVを得られないおそれがある。
【0063】
この点、本実施形態においては当該再研削処理を中研削ユニット90及び仕上研削ユニット100により行うため、仕上研削ユニット100による再研削処理の開始時において、1度目の研削処理時における第1のウェハWの状態を好適に再現することができ、これにより、更に適切に第1のウェハWのTTVを向上させることができる。
【0064】
また更に、本実施形態においては再研削処理にあたって研削ユニットとチャック42との傾きの調整は仕上研削ユニット100のみで行われ、中研削ユニット90においては行わない。これにより、仕上研削ユニット100による研削処理の開始時における第1のウェハWの状態を更に好適に再現することができ、より適切に第1のウェハWのTTVを向上させることができる。
【0065】
なお、以上の実施形態においては、研削ユニット40が3軸で構成される場合、すなわち、研削ユニット40が3つの研削ユニット(粗研削ユニット80、中研削ユニット90及び仕上研削ユニット100)を備える場合を例に説明を行ったが、研削ユニット40は2軸、すなわち2つの研削ユニット(粗研削ユニット80及び仕上研削ユニット100)を備える構成であってもよい。かかる場合、本実施形態にかかる再研削処理は、1度目の仕上研削後の第1のウェハWの厚み分布に基づいて、粗研削ユニット80、及び、仕上研削ユニット100において行われることが望ましい。
【0066】
なお、以上の実施形態にかかる再研削処理について本発明者らが鋭意検討を行ったところ、研削ユニット40における1回目の研削量、及び、2回目(再研削)の研削量を揃えることにより、より適切に第1のウェハWのTTVを向上できることを知見した。より具体的には、例えば研削ユニット40が3軸で構成される場合、中研削ユニット90における1回目の研削量と2回目の再研削量、及び、仕上研削ユニット100おける1回目の研削量と2回目の再研削量(仕上研削量)をそれぞれ揃えることにより、第1のウェハWのTTVを適切に向上できる。
【0067】
図8に示すように、本発明者らは、厚みが775μmである第1のウェハWに対して、仕上研削後の厚みが100μmとなるように研削処理を施し、仕上研削後の第1のウェハWの面内厚み分布を測定した。また、図8に示すように比較例及び実施例1~3においては、各研削ユニットにおける研削量をそれぞれ変更した。
【0068】
まず本発明者らは、図8(a)の比較例に示すように、研削ユニット40において、1周目の研削処理で、仕上前の研削ユニットにおいて635μmの第1の研削処理を行い、仕上研削ユニット100において20μmの第2の研削処理を行った。更に、2周目の再研削処理で、仕上研削ユニット100において20μmの第2の再研削処理のみを行った。図8(a)に示すように、研削ユニット40において仕上研削ユニット100のみによる再研削処理を行った場合、第1のウェハWの最終仕上厚み分布から算出されるTTVは、従来の再研削処理を行わない場合と比較して適切に改善されなかった。
【0069】
次に本発明者らは、図8(b)の実施例1に示すように、研削ユニット40において、1周目の研削処理で、仕上前の研削ユニットにおいて605μmの第1の研削処理を行い、仕上研削ユニット100において20μmの第2の研削処理を行った。更に、2周目の再研削処理で、第1の研削処理を行った仕上前の研削ユニットにおいて30μmの第1の再研削処理を行い、仕上研削ユニット100において20μmの第2の再研削処理を行った。図8(b)に示すように、仕上研削ユニット100に加え、仕上前の研削ユニットにおいても第1のウェハWの再研削処理を行った場合、図8(a)に示す比較例と比較して、第1のウェハWの最終仕上厚み分布から算出されるTTVが向上した。
【0070】
更に本発明者らは、図8(c)の実施例2に示すように、研削ユニット40において、1周目の研削処理で、仕上前の研削ユニットにおいて317.5μmの第1の研削処理を行い、仕上研削ユニット100において20μmの第2の研削処理を行った。更に、2周目の再研削処理で、第1の研削処理を行った仕上前の研削ユニットにおいて317.5μmの第1の再研削処理を行い、仕上研削ユニット100において20μmの第2の再研削処理を行った。図8(c)に示すように、仕上前の研削ユニット、及び、仕上研削ユニット100における1回目と2回目の研削量をそれぞれ揃えた場合、第1のウェハWの最終仕上厚み分布から算出されるTTVは実施例1よりも向上した。
【0071】
また更に本発明者らは、図8(d)の実施例3に示すように、研削ユニット40において、1周目の研削処理で、粗研削ユニット80において575μmの粗研削、中研削ユニット90において30μmの第1の研削としての中研削、仕上研削ユニット100において20μmの第2の研削としての仕上研削を行った。更に、2周目の再研削処理において、中研削ユニット90において30μmの第1の再研削としての中研削、仕上研削ユニット100において20μmの第2の再研削としての仕上研削を行った。図8(d)に示すように、研削ユニット40における中研削ユニット90、及び、仕上研削ユニット100における1回目と2回目の研削量をそれぞれ揃えることにより、第1のウェハWの最終仕上厚み分布から算出されるTTVは実施例2よりも更に向上した。
【0072】
以上、図8に示したように、研削ユニット40における1回目の研削量、及び、2回目(再研削)の研削量を揃えることにより、より適切に第1のウェハWのTTVを向上させることができる。
【0073】
また、上述のように実施例3における仕上げ研削処理後の第1のウェハWのTTVは、実施例2における仕上げ研削処理後の第1のウェハWのTTVよりも更に向上した。かかる比較から、チャック42上で1枚目に研削処理が施される第1のウェハWの「第1の再研削」及び「第2の再研削」における研削量は、n枚目に研削処理が施される第1のウェハWの仕上前研削処理としての「第1の研削」及び仕上研削処理としての「第2の研削」における研削量と同じであることが好ましい。
【0074】
すなわち、例えば3軸の研削ユニット40により第1のウェハWの研削処理を行う場合、n枚目の第1のウェハWに対しては上述のように再研削処理を行わず、例えば625μmの粗研削、30μmの中研削、20μmの仕上研削が順次行われる。ここでn枚目の第1のウェハWに対する研削においては、かかる中研削及び仕上研削が、それぞれ「第1の研削」及び「第2の研削」に対応する。そして、1枚目の第1のウェハWに対する「第1の再研削」及び「第2の再研削」の研削量を、それぞれこのn枚目の「中研削量」及び「仕上研削量」と一致させることにより、実施例2と実施例3との比較結果に示すように、第1のウェハWのTTVを更に適切に向上させることができる。
【0075】
そして、以上の結果を鑑みると、各研削ユニットによる1枚目の第1のウェハWの研削量は以下の方法により決定されることが望ましい。すなわち、先ず、n枚目の第1のウェハWの実際の研削量に揃えて、1枚目の第1のウェハWの2周目の再研削処理における「第1の再研削」及び「第2の再研削」の研削量を決定する。次に、当該2周目の再研削処理における研削量に揃えて、1周目の研削処理における「第1の研削」及び「第2の研削」の研削量を決定する。そして最後に、研削ユニット40における所望の研削量との差分を、粗研削による研削量として決定する。
【0076】
なお、以上の実施形態においてはチャック42に保持される1枚目の重合ウェハTに対してのみ再研削処理を行ったが、n枚目の重合ウェハTに対しても同様に再研削処理が行われてもよい。このように、n枚目の重合ウェハTに対しても再研削処理を行うことにより、当該n枚目の重合ウェハTのTTVを更に向上できる。ただし、上述のように1枚目の重合ウェハTの処理においてはチャック42の傾きは既に調整されているとともに、重合ウェハTの仕上研削に起因する仕上研削ユニット100とチャック42の平行度の変化は、加工装置1の待機状態時における平行度の変化と比較して十分に小さい。かかる点を鑑みると、n枚目の重合ウェハTの処理に対しては再研削処理を行わず、m枚目の重合ウェハTの仕上研削結果をフィードバックすることのみによって、適切にTTVの悪化を抑制できる。また、全ての重合ウェハTに対して再研削処理を行う場合と比較して、加工装置1における研削処理時間を短くすることができる。
【0077】
なお、以上の実施形態では、傾き調整部44によりチャックベース43を傾斜させることにより、仕上研削ユニット100とチャック42の相対的な傾きを調整したが、例えば仕上研削ユニット100を傾斜させることにより相対的な傾きを調整してもよい。また例えば、第1のウェハWの仕上研削量を調整することができれば、傾き調整部44を用いなくてもよい。
【0078】
また以上の実施形態では、加工装置1において第1のウェハWと第2のウェハSとが接合された重合ウェハTにおいて、第1のウェハWを研削して薄化する場合を例に説明を行ったが、薄化される第1のウェハWは第2のウェハSと接合されていなくてもよい。
【0079】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 加工装置
40 研削ユニット
80 粗研削ユニット
90 中研削ユニット
100 仕上研削ユニット
120 制御部
W 第1のウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8