(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】スピントルク発振素子
(51)【国際特許分類】
H10N 50/20 20230101AFI20250331BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20250331BHJP
H03B 15/00 20060101ALI20250331BHJP
H01F 10/30 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
H10N50/20
H10N50/10 U
H03B15/00
H01F10/30
(21)【出願番号】P 2021129425
(22)【出願日】2021-08-06
【審査請求日】2024-05-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、革新的コンピューティング技術の開拓「ナノオシレータニューラルネットワークの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】常木 澄人
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117884(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0040945(US,A1)
【文献】国際公開第2018/101386(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/023490(WO,A1)
【文献】特開2014-103172(JP,A)
【文献】国際公開第2011/027396(WO,A1)
【文献】特開2004-327880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 50/20
H10F 50/10
H03B 15/00
H01F 10/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブギガヘルツ帯域において発振可能なスピントルク発振素子であって、
第1の電極および第2の電極と、該第1の電極と該第2の電極との間に磁化固定層と、MgOからなるトンネル障壁層と、磁化自由層と、スピン注入層とを積層した積層体を備え、
前記スピン注入層は
、膜面に対して磁化が垂直である垂直磁化膜であり、
Co層およびNi層の多層積層膜であり、
前記スピン注入層の下地層としてCu層が形成されてなり、
前記磁化自由層が渦巻き状の向きの磁化からなる磁化構造を有するFeB層からなり、
前記FeB層と前記Cu層との間にCo層が形成されてなり、
当該スピントルク発振素子は、その膜面に対して垂直方向に印加する磁場がない場合に所定の直流電圧を印加することで発振出力可能な、前記スピントルク発振素子。
【請求項2】
前記磁化自由層は、FeB層であり、厚さが3nm以上10nm以下である、請求項1記載のスピントルク発振素子。
【請求項3】
前記磁化固定層は、CoFeBを含む、請求項1または2記載のスピントルク発振素子。
【請求項4】
当該スピントルク発振素子は、その膜面に対して垂直方向に印加する磁場がない場合に 前記所定の直流電圧を印加することで0.68μW以上の発振出力が得られる、請求項1 ~3のうちいずれか一項記載のスピントルク発振素子。
【請求項5】
当該スピントルク発振素子は、その膜面に対して垂直方向に印加する磁場がない場合に 前記所定の直流電圧を印加することで最大1.67μWの発振出力が得られる、請求項1~4のうちいずれか一項記載のスピントルク発振素子。
【請求項6】
当該スピントルク発振素子は、その膜面に対して垂直方向に印加する磁場が-100mT以上90mT以下の範囲で0.68μW以上の発振出力を有する、請求項1~5のうち いずれか一項記載のスピントルク発振素子。
【請求項7】
サブギガヘルツ帯域において発振可能なスピントルク発振素子であって、
第1の電極および第2の電極と、該第1の電極と該第2の電極との間に磁化固定層と、MgOからなるトンネル障壁層と、磁化自由層と、スピン注入層とを積層した積層体を備え、
前記スピン注入層は膜面に対して磁化が垂直である垂直磁化膜であり、
前記磁化自由層が渦巻き状の向きの磁化からなる磁化構造を有するFeB層からなり、
当該スピントルク発振素子は、その膜面に対して垂直方向に印加する磁場がない場合に所定の直流電圧を印加することで発振出力可能であり、その膜面に対して垂直方向に印加する磁場が-100mT以上90mT以下の範囲で0.68μW以上の発振出力を有する、前記スピントルク発振素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜積層構造を有するスピントルク発振素子に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の脳におけるニューロンやシナプスの活動を模倣する
ことに端を発した人工ニューラルネットワークは、人工知能を実現するために盛んに研究されている。近年、このニューロンやシナプスの機能の一部を人工的なデバイスで置き換えることで、人工ニューラルネットワークを省電力・高速に行える演算器開発が進められている。この中で、非線形発振器を人工ニューロンとして利用した演算器は、並列動作により、高速な演算器になるとして特に注目されている。
【0003】
この演算器は動物の脳と同様に、ニューロン数の増大に伴って複雑な演算が可能となるため、小型な発振器を用いることが演算器の小型化にとって望ましい。また、発振器の電気的な出力を観測し演算結果を確認するため、発振器の出力が小さいと増幅が必要となってしまうため、演算器の小型化や省電力化のためには、発振器の出力は大きい方が望ましい。さらに、演算器の計算速度は発振器の発振周期に比例するため、高い発振周波数を持つ発振器が一見適していると考えられるが高周波の伝送・制御・観測を行う機器は周波数の増大に伴い製造コストが上昇する。また、発振器を含めたそれら機器の消費電力も大きくなる。これらの点から、サブギガヘルツ帯域の発振周波数を持つ発振器が演算器応用には適当である。
【0004】
スピントルク発振素子(Spin-Torque Oscillator (STO))は、そのサイズをサブマイクロメートルサイズまで小型化できる発振素子である。特に、自励発振する磁化自由層が磁気渦構造を持つ磁気渦型STOはサブギガヘルツの発振周波数を持つため、演算器の人工ニューロンとして適している。
【0005】
STOは、素子に印可する磁界や電圧によって発振周波数や発振出力等を制御することができる。従来のSTOでは発振を励起するために、100mT以上の高い磁界を素子に加える必要があり、これらの磁界を素子に安定的に加えるためには、大型の電磁石電源または永久磁石が必要となる。そこで、演算器への搭載等の実用化にあたって、無磁場下で安定して発振するSTOが求められていた。
【0006】
無磁場下で発振するSTOが提案されている(例えば、特許文献1または非特許文献1参照。)。特許文献1では、ミリ波帯域の高周波信号を100mT程度または無磁場下で得られることを開示している。特許文献1では、STOは、ミリ波帯域と非常に高い周波数の発振を実現することを前提とした技術であって、周波数をサブギガヘルツまで低減することは困難である。
【0007】
非特許文献1では、磁化自由層(発振層)に磁気渦膜、固定層に面内磁化膜、加えて垂直スピン注入層を用いた磁気トンネル接合を直径330nmの柱状に微細加工した素子において、180MHzの発振周波数および0.6μWの出力を持つマイクロ波を無磁場化で励起することができるSTOを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】A. Dussaux et. al. “Large amplitude spin torque vortex oscillations at zero external field using a perpendicular spin polarizer”, Applied Physics Letters 105, 022404 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、無磁場下においてサブギガヘルツ帯域において発振が可能であり、かつ従来よりも発振出力を向上したスピントルク発振素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、サブギガヘルツ帯域において発振可能なスピントルク発振素子であって、第1の電極および第2の電極と、上記第1の電極と上記第2の電極との間に磁化固定層と、MgOからなるトンネル障壁層と、磁化自由層と、スピン注入層とを積層した積層体を備え、上記スピン注入層は膜面に対して磁化が垂直である垂直磁化膜であり、上記磁化自由層がFeB層からなり、上記スピントルク発振素子は、その膜面に対して垂直方向に印加する磁場がない場合に所定の直流電圧を印加することで発振出力可能な、上記スピントルク発振素子が提供される。
【0012】
上記態様によれば、磁気渦構造の磁化自由層に、膜面に垂直の成分のスピン偏極電流を供給する垂直磁化膜のスピン注入層を積層し、スピン偏極電流によって磁気渦を自励発振するとともに、磁化自由層をFeB層にすることで磁気抵抗効果を向上して、印加する外部磁場がない場合において、発振出力を向上したスピントルク発振素子を提供できる。なお、本明細書および特許請求の範囲において、用語「サブギガヘルツ帯域」は、10MHz~1000MHzの帯域を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスピントルク発振素子の概略断面図である。
【
図2】実施例のスピントルク発振素子の外部磁場強度に対する発振周波数と発振スペクトルとの関係を示す図である。
【
図3】実施例のスピントルク発振素子の外部磁場強度と発振出力との関係を示す図である。
【
図4】実施例のスピントルク発振素子の外部磁場強度と発振出力との関係を示す他の図である。
【
図5】実施例のスピントルク発振素子の外部磁場が無磁場の場合の入力直流電圧と発振出力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、複数の図面間において共通する要素については同じ符号を付し、その要素の詳細な説明の繰り返しを省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るスピントルク発振素子の概略構成図である。
図1を参照するに、スピントルク発振素子10は、下部電極11と上部電極12との間に、磁化固定層13と、磁化自由層14と、これらの間にトンネル障壁層15と、磁化自由層14の上に非磁性層16およびスピン注入層18とが形成された積層体である。スピントルク発振素子10は、直径が200nm~1500nmの円柱形に形成される。この直径は、250nm~600nmであることが好ましい。スピントルク発振素子10は、円柱形に加えて積層方向に垂直な断面が楕円、正方形または長方形の形状であってもよい。
【0016】
下部電極11および上部電極12は、Cu(銅)、Au(金)、アルミニウム(Al)等の金属からなる。
【0017】
磁化固定層13は、磁化の向きが固定された強磁性層、または積層フェリ(SAF)構造の強磁性層/中間層/強磁性層を有する。SAF構造は2つの強磁性層が反強磁性的に結合し、各々の磁化が反平行に向いている。中間層は薄膜の導電層である。磁化固定層13の磁化の向きはほぼ同じ方向で固定されている。磁化固定層13の強磁性材料として、CoFe、CoFeB、CoPt積層膜等を用いることができる。
【0018】
下部電極11と磁化固定層13との間にバッファ層(不図示)を形成してもよい。バッファ層は、反強磁性層であり、例えばIrMn等である。
【0019】
トンネル障壁層15は、磁化固定層13の上に形成され、絶縁材料のMgOからなる。トンネル障壁層15の厚さは、0.9nm~1.2nmに設定されることが高い磁気抵抗比および高い高出力が得られる点で好ましい。
【0020】
磁化自由層14は、強磁性であるFeB層からなる。FeB層の組成としては、Bが10at(原子)%以上30at%以下の範囲から選択されることが飽和磁束密度がNiFeよりも高い点で好ましい。磁化自由層14にFeB層を用いることで、スピントルク発振素子10の磁気抵抗比を80%以上にできる。スピントルク発振素子10の発振出力は、磁気抵抗比の2乗に比例するので、磁気抵抗比を向上することで、発振出力を向上することができる。磁化自由層14の厚さは、3nm~10nmに設定されることが、磁気渦構造を安定的に実現し、また高い発振出力を得る点で好ましい。
【0021】
磁化自由層14は、トンネル障壁層15の上記の厚さのMgO層の上に形成され、上記の厚さの範囲で形成することで、磁化自由層14の中央を中心としてその周囲に渦巻き状の向きの磁化からなる磁化構造(磁気渦)を有するようになる。このようなスピントルク発振素子を磁気渦型スピントルク発振素子と称する。スピントルク発振素子10に直流電流を流すと、磁化自由層14の磁気渦中心が回転運動(歳差運動)する。この回転運動が生じると磁気抵抗効果によって電気抵抗値が変化して、周波数がサブギガヘルツ帯域の交流電圧が発生する。
【0022】
非磁性層16は、磁化自由層14の上に形成される。非磁性層16は、この上に形成されるスピン注入層18を(111)結晶配向させるための下地層として機能する。非磁性層16は、磁化自由層14とスピン注入層18の磁気的な結合を弱め、磁気渦構造の磁化自由層14と垂直磁化したスピン注入層18を両立する。非磁性層16は、Cu層からなる。Cu層は、磁化自由層14のFeB層の上に(111)結晶配向で成長することが期待できる。Cu層は、その下地であるFeB層がアモルファス構造である場合結晶配向の影響が少なく、Cu層自体の結晶配向が形成され易い点で好ましい。なお、磁化自由層14と非磁性層16との間に、非磁性層16の(111)結晶配向を促進させる厚さ0.2nm~1.0nmの面心立方格子(fcc)構造の薄膜、例えばCo層またはNiFe層を挿入してもよい。
【0023】
スピン注入層18は、非磁性層16の上に形成される。スピン注入層18から膜面に垂直の成分のスピン偏極電流を十分に磁化自由層14に注入することで磁化自由層14の磁気渦の差異運動が励起される。スピン注入層18は、磁化が膜面に垂直である垂直磁化膜であり、例えば、Co/Ni多層膜からなる。Co/Ni多層膜は、Co層とNi層を交互に積層して、積層方向に対して(111)結晶配向を形成したものである。Co層およびNi層の1層あたりの厚さは、それぞれ0.2nm、0.5nmである。Co層とNi層との積層の繰り返し数は、4回~20回であることが垂直磁気異方性を得る点で好ましい。スピン注入層18は、Co/Ni多層膜の他、Co/Pt多層膜、TbFeCo層でもよい。
【0024】
スピン注入層18は、磁化自由層14の磁気渦を自励発振するための、スピン注入層として機能する。磁化自由層14の磁気渦が自励発振する状態を実現するためには、膜面に垂直の成分のスピン偏極電流を磁気渦構造の磁化自由層14に加え、スピントルクによって磁化自由層14のダンピングを打ち消すことが必要である。垂直成分のスピン偏極電流は、垂直磁化膜のスピン注入層18に電流を流すことで得られる。
【0025】
なお、スピン注入層18の上に導電材料からなるキャップ層(不図示)を形成してもよい。キャップ層は、例えば、Ta層/Ru層である。
【0026】
スピントルク発振素子10は、例えばスパッタ法により上記の各層を成膜し、フォトリソグラフィー法および電子線リソグラフィー法により円柱形に加工して形成する。
【0027】
本実施形態によれば、磁気渦構造の磁化自由層14に、膜面に垂直の成分のスピン偏極電流を供給する垂直磁化膜のスピン注入層18を積層し、スピン偏極電流によって磁気渦を自励発振するとともに、磁化自由層14をFeB層にすることで磁気抵抗効果を向上して、印加する外部磁場がない場合において、発振出力を向上したスピントルク発振素子10を提供できる。
【0028】
[実施例]
スピントルク発振素子10の一実施例として、熱酸化シリコン基板上に、スパッタ法により、下部電極11:厚さ5nmのTa層/厚さ30nmのCu層/厚さ10nmのTa層、バッファ層:厚さ5nmのIrMn層、磁化固定層13:SAF構造を有し厚さ2.5nmのCoFe層/厚さ0.9nmのRu層/厚さ2.5nmのCoFeB層、トンネル障壁層15:厚さ1.1nmのMgO層、磁化自由層14:厚さ6nmのFeB層/厚さ0.54nmのCo層、非磁性層16:厚さ5nmのCu層、スピン注入層18:厚さ0.2nmのCo層/厚さ0.5nmのNi層の7回交互積層多層膜、キャップ層:厚さ7nmのRu層、上部電極12:厚さ5nmのCr層/厚さ200nmのAu層を形成し、フォトリソグラフィー法および電子線リソグラフィー法により、直径400nmの円柱形に加工した。
【0029】
実施例のスピントルク発振素子に膜面に垂直に直流の外部磁場を印加しながら下部電極と上部電極との間に直流電圧を印加して直流電流を流し、スピントルク発振素子が発生する交流電圧信号を測定した。外部磁場は-100mT(ミリ テスラ)以上100mT以下の範囲で変化させた。
【0030】
図2は、実施例のスピントルク発振素子の外部磁場強度に対する発振周波数と発振スペクトルとの関係を示す図である。
図2を参照するに、スピントルク発振素子は、外部磁場強度が無磁場(外部磁場強度がゼロ)の場合で発振していることが分かる。さらに、外部磁場強度が-100mT以上60mT以下の範囲で発振したことが分かる。また、パワースペクトル密度が最も高い周波数(図中の濃度が最も高い部分に相当する。)は、外部磁場強度により変化しているが、260MHz~280MHzであることが分かる。
【0031】
図3は、実施例のスピントルク発振素子の外部磁場強度と発振出力との関係を示す図である。スピントルク発振素子の下部電極と上部電極との間に印加する直流電圧を270mVに設定した。発振出力は、スペクトラムアナライザによって得られた発振スペクトルを積分して求めた。
【0032】
図3を参照するに、スピントルク発振素子は、外部磁場強度が無磁場の場合、1.19μWの発振出力が得られた。また、外部磁場強度が-100mT以上70mT以下の範囲では0.85μW以上1.37μW以下の発振出力が得られた。この発振出力は、上述した先行技術文献の非特許文献1の0.6μWをはるかに超えており、無磁場下において従来よりも発振出力を向上したスピントルク発振素子が得られた。
【0033】
図4は、実施例のスピントルク発振素子の外部磁場強度と発振出力との関係を示す他の図である。スピントルク発振素子の下部電極と上部電極との間に印加する直流電圧を240mVに設定した。発振出力は、
図3に示した発振出力と同様にして求めた。
【0034】
図4を参照するに、スピントルク発振素子は、印加電圧240mVでは、外部磁場強度が-100mT以上90mT以下の範囲で発振したことが分かる。スピントルク発振素子は、外部磁場強度が無磁場の場合、0.93μWの発振出力が得られた。また、外部磁場強度が-100mT以上70mT以下の範囲では0.68μW以上1.07μW以下の発振出力が得られた。この発振出力は、上述した先行技術文献の非特許文献1の0.6μWをはるかに超えており、無磁場下において従来よりも発振出力を向上したスピントルク発振素子が得られた。
【0035】
図5は、実施例のスピントルク発振素子の外部磁場が無磁場の場合の印加電圧と発振出力との関係を示す図である。
図5は、実施例のスピントルク発振素子に外部磁場を印加しない状態で、スピントルク発振素子の下部電極と上部電極との間に直流電圧を印加して発振スペクトルを計測した。発振出力は、
図3に示した発振出力と同様にして求めた。
【0036】
図5を参照するに、スピントルク発振素子は、外部磁場下で、印加電圧が210mV以下および320mV以上では発振せず、220mV以上310mV以下の範囲で発振した。発振した印加電圧の範囲において、最小0.68mW(印加電圧230mV)、最大1.67μW(印加電圧310mV)の発振出力が得られた。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 スピントルク発振素子
11 下部電極
12 上部電極
13 磁化固定層
14 磁化自由層
15 トンネル障壁層
16 非磁性層
18 スピン注入層