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特許7658368ガラス板の加工方法、及びEUVL用マスクブランクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】ガラス板の加工方法、及びEUVL用マスクブランクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20250401BHJP
   C03C 17/32 20060101ALI20250401BHJP
   G03F 1/24 20120101ALI20250401BHJP
   G03F 1/60 20120101ALI20250401BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
C03C15/00 A
C03C15/00 D
C03C17/32 Z
G03F1/24
G03F1/60
G03F7/20 503
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022522563
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021015047
(87)【国際公開番号】W WO2021229967
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2020084730
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】奈良 拓真
(72)【発明者】
【氏名】田村 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】山名 哲史
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-147629(JP,A)
【文献】特開平2-204345(JP,A)
【文献】特開2005-333124(JP,A)
【文献】特表2016-509263(JP,A)
【文献】国際公開第2011/115131(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/065973(WO,A1)
【文献】特開2009-155170(JP,A)
【文献】特開2010-189228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00
C03C 17/34
G03F 1/24
G03F 1/60
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、前記ガラス板に接触する樹脂層を含む保護層とを有する、保護層付きガラス板を準備することと、
前記保護層に当てたクランプによって前記保護層付きガラス板を保持することと、
前記保護層付きガラス板を前記クランプで保持した状態で、前記ガラス板の第1主面にビーム状のガスクラスタを照射し、前記第1主面をエッチングすることと、を有する加工方法。
【請求項2】
前記保護層は、前記ガラス板の前記第1主面に対して垂直な端面、前記第1主面と前記端面との境界に形成された第1面取面、又は前記第1主面の前記端面から5mm以内の周縁領域に形成される、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記ガラス板は、更に、前記第1主面とは反対向きの第2主面と、前記第2主面と前記端面との境界に形成された第2面取面とを含み、
前記保護層は、更に、前記ガラス板の前記第2主面の前記端面から5mm以内の周縁領域又は前記第2面取面に形成され、前記クランプによってスペーサに押し当てられ、
前記スペーサは、前記ガラス板の前記第2主面に対向配置されるステージと、前記ガラス板の間に隙間を形成する、請求項2に記載の加工方法。
【請求項4】
前記クランプによる前記保護層付きガラス板の保持を解除した後、前記保護層を除去することを更に有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の加工方法。
【請求項5】
前記保護層をスクラブ洗浄で除去する、請求項4に記載の加工方法。
【請求項6】
界面活性剤を含むアルカリ性溶液で、前記保護層を除去する、請求項4又は5に記載の加工方法。
【請求項7】
前記保護層の材料を含む液体を前記ガラス板に塗布し、固化し、前記保護層を形成することを更に有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の加工方法。
【請求項8】
テープ状の前記保護層を、前記ガラス板に貼り付けることを更に有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の加工方法。
【請求項9】
フレーム状の前記保護層を、前記ガラス板に分離可能に被せることを更に有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の加工方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の加工方法を用い、前記ガラス板の前記第1主面を平坦化することと、
前記ガラス板の前記第1主面に、EUV光を反射する反射膜を形成することと、
前記反射膜上に、EUV光を吸収する吸収膜を形成することと、
を有する、EUVL用マスクブランクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス板の加工方法、及びEUVL用マスクブランクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体デバイスの製造には、フォトリソグラフィ技術が用いられている。フォトリソグラフィ技術では、露光装置によって、フォトマスクのパターンに光を照射し、フォトマスクのパターンをレジスト膜に転写する。
【0003】
最近では、微細パターンの転写を可能とするため、短波長の露光光、例えば、ArFエキシマレーザ光、さらにはEUV(Extreme Ultra-Violet)光などの使用が検討されている。
【0004】
ここで、EUV光とは、軟X線および真空紫外光を含み、具体的には波長が0.2nm~100nm程度の光のことである。現時点では、露光光として13.5nm程度の波長のEUV光が主に検討されている。
【0005】
特許文献1には、EUVL(Extreme Ultra-Violet Lithography)用マスクブランクの製造方法が記載されている。EUVL用マスクブランクは、ガラス板と、ガラス板の上に形成される反射膜と、反射膜の上に形成される吸収膜とを含む。
【0006】
EUVL用マスクブランクには、微細パターンの転写精度を向上すべく、高い平坦度が求められる。EUVL用マスクブランクの平坦度は主に基板であるガラス板の平坦度で決まるので、ガラス板には高い平坦度が求められる。
【0007】
特許文献1に記載の製造方法は、予備研磨工程と、測定工程と、修正研磨工程とを有する。予備研磨工程では、ガラス板の両主面を予備研磨する。測定工程では、ガラス板の最大板厚分布及び平坦度を測定する。修正研磨工程では、測定工程の測定結果に基づいてガラス板の主面を局所研磨する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2011/115131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の局所研磨には、ガスクラスタなどが用いられる。ガスクラスタは、熱電子の衝突によってイオン化され、続いて、電界によって加速され、ガラス板の第1主面に向けて照射され、第1主面を局所的にエッチングする。その結果、第1主面を平坦化できる。
【0010】
ガスクラスタの照射は、真空容器の内部で実施される。真空容器の内部では、真空チャックでガラス板を保持できないので、クランプでガラス板を保持する。クランプは、ガラス板を着脱自在に保持する。従って、クランプは、ガラス板に対して接離させられる。
【0011】
真空容器の内部でガラス板がエッチングされ、パーティクルが発生する。パーティクルは、ガスクラスタがガラス板又はガラス板の周辺部材に衝突することにより生じる。パーティクルの材質は、例えば、ガラス、金属、又は樹脂である。発生したパーティクルが、待機中のクランプに付くことがある。その状態で、クランプがガラス板に接近すると、クランプとガラス板の間にパーティクルが噛み込む。その結果、ガラス板に欠陥が発生してしまう。
【0012】
欠陥として、凹状の傷が生じることもあるし、凸状の付着物が生じることもある。これらの欠陥は、パーティクルに起因する。傷はパーティクルの接触跡であり、付着物はパーティクルそのものである。
【0013】
本開示の一態様は、クランプとの接触によるガラス板の欠陥の発生を抑制できる、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一態様に係るガラス板の加工方法は、ガラス板と、前記ガラス板に接触する樹脂層を含む保護層とを有する、保護層付きガラス板を準備することと、前記保護層に当てたクランプによって前記保護層付きガラス板を保持することと、前記保護層付きガラス板を前記クランプで保持した状態で、前記ガラス板の第1主面にビーム状のガスクラスタを照射し、前記第1主面をエッチングすることと、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、クランプとの接触によるガラス板の欠陥の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係るEUVL用マスクブランクの製造方法を示すフローチャートである。
図2図2は、図1のS1に供されるガラス板の一例を示す断面図である。
図3図3は、図2のガラス板の一例を示す平面図である。
図4図4は、一実施形態に係るEUVL用マスクブランクを示す断面図である。
図5図5は、EUVL用フォトマスクの一例を示す断面図である。
図6図6は、一実施形態に係る加工装置を示す断面図である。
図7図7は、図6のガラス板、及びその周辺部品を拡大して示す断面図である。
図8図8は、図7のガスクラスタの照射方向から見た、ガラス板、及びその周辺部品を示す図である。
図9図9は、図7のクランプ及びスペーサを別の方向から見た図である。
図10図10は、図1のS3の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、第1変形例に係るクランプを示す断面図である。
図12図12は、第2変形例に係るクランプを示す断面図である。
図13図13は、第3変形例に係るクランプを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0018】
図1に示すように、EUVL(Extreme Ultra-Violet Lithography)用マスクブランクの製造方法は、S1~S7を有する。マスクブランクの製造にはガラス板が用いられる。ガラス板のガラスは、SiOを90質量%以上含む石英ガラスが好ましい。石英ガラスに占めるSiO含有量の上限値は、100質量%である。石英ガラスは、一般的なソーダライムガラスに比べて、線膨張係数が小さく、温度変化による寸法変化が小さい。石英ガラスは、SiOの他に、TiO含んでよい。石英ガラスは、SiOを90質量%~95質量%、TiOを5質量%~10質量%含んでよい。TiO含有量が5質量%~10質量%であると、室温付近での線膨張係数が略ゼロであり、室温付近での寸法変化がほとんど生じない。石英ガラスは、SiOおよびTiO以外の微量成分を含んでもよいが、微量成分を含まないことが好ましい。
【0019】
ガラス板2は、図2及び図3に示すように、第1主面21と、第2主面22と、4つの端面23と、4つの第1面取面24と、4つの第2面取面25とを含む。第1主面21は、矩形状である。本明細書において、矩形状とは、角に面取加工を施した形状を含む。また、矩形は、正方形を含む。第2主面22は、第1主面21とは反対向きである。第2主面22も、第1主面21と同様に、矩形状である。端面23は、第1主面21及び第2主面22に対して垂直である。第1面取面24は、第1主面21と端面23の境界に形成される。第2面取面25は、第2主面22と端面23の境界に形成される。第1面取面24及び第2面取面25は、本実施形態では、いわゆるC面取面であるが、R面取面であってもよい。
【0020】
ガラス板2の第1主面21は、図3にドット模様で示す品質保証領域26を有する。品質保証領域26は、S1~S4によって所望の平坦度に加工される領域である。品質保証領域26は、第1主面21に直交する方向から見て、例えば端面23からの距離Lが5mm以内の周縁領域27を除く領域である。なお、図示しないが、ガラス板2の第2主面22も、第1主面21と同様に、品質保証領域と周縁領域とを有する。
【0021】
先ず、図1のS1では、ガラス板2の第1主面21及び第2主面22を研磨する。第1主面21及び第2主面22は、両面研磨機で同時に研磨されてもよいし、片面研磨機で順番に研磨されてもよい。S1では、研磨パッドとガラス板2の間に研磨スラリーを供給しながら、ガラス板2を研磨する。研磨スラリーは、研磨剤を含む。研磨剤は、例えば酸化セリウム粒子である。第1主面21及び第2主面22は、異なる材質又は粒度の研磨剤で、複数回研磨されてもよい。
【0022】
なお、S1で用いられる研磨剤は、酸化セリウム粒子には限定されない。例えば、S1で用いられる研磨剤は、酸化シリコン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、ダイヤモンド粒子、又は炭化珪素粒子などであってもよい。
【0023】
次に、図1のS2では、ガラス板2の第1主面21及び第2主面22の表面形状を測定する。表面形状の測定には、例えば、表面が傷付かないように、レーザ干渉式等の非接触式の測定機が用いられる。測定機は、第1主面21の品質保証領域26、及び第2主面22の品質保証領域の表面形状を測定する。
【0024】
次に、図1のS3では、S2の測定結果を参照し、平坦度を向上すべく、ガラス板2の第1主面21及び第2主面22をビーム状のガスクラスタで加工する。第1主面21と第2主面22は、ガスクラスタで順番にエッチングされる。その順番は、どちらが先でもよく、特に限定されない。
【0025】
ガスクラスタは、熱電子の衝突によってイオン化され、続いて、電界によって加速され、更に中性化後に、第1主面21又は第2主面22に向けて照射される。ガスクラスタの衝突によって、第1主面21又は第2主面22が局所的にエッチングされ、平坦化される。S3の詳細は、後述する。
【0026】
次に、図1のS4では、ガラス板2の第1主面21及び第2主面22の仕上げ研磨を行う。第1主面21及び第2主面22は、両面研磨機で同時に研磨されてもよいし、片面研磨機で順番に研磨されてもよい。S4では、研磨パッドとガラス板2の間に研磨スラリーを供給しながら、ガラス板2を研磨する。研磨スラリーは、研磨剤を含む。研磨剤は、例えばコロイダルシリカ粒子である。
【0027】
次に、図1のS5では、ガラス板2の第1主面21の品質保証領域26に、図4に示す反射膜3を形成する。反射膜3は、EUV光を反射する。反射膜3は、例えば高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜であってよい。高屈折率層は例えばシリコン(Si)で形成され、低屈折率層は例えばモリブデン(Mo)で形成される。反射膜3の成膜方法としては、例えばイオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法が用いられる。
【0028】
次に、図1のS6では、S5で形成された反射膜3の上に、図4に示す吸収膜4を形成する。吸収膜4は、EUV光を吸収する。吸収膜4は、例えばタンタル(Ta)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)から選ばれる少なくとも1つの元素を含む単金属、合金、窒化物、酸化物、酸窒化物などで形成される。吸収膜4の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が用いられる。
【0029】
最後に、図1のS7では、ガラス板2の第2主面22の品質保証領域に、図4に示す導電膜5を形成する。導電膜5は、露光装置の静電チャックでフォトマスクを静電吸着するのに用いられる。導電膜5は、例えば窒化クロム(CrN)などで形成される。導電膜5の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が用いられる。なお、S7は、本実施形態ではS5及びS6の後に実施されるが、S5及びS6の前に実施されてもよい。
【0030】
なお、反射膜3と導電膜5の配置は逆でもよい。つまり、導電膜5がガラス板2の第1主面21の品質保証領域26に形成され、反射膜3がガラス板2の第2主面22の品質保証領域に形成されてもよい。吸収膜4は、反射膜3の上に形成される。
【0031】
上記S1~S7により、図4に示すEUVL用マスクブランク1が得られる。EUVL用マスクブランク1は、ガラス板2と、反射膜3と、吸収膜4と、導電膜5とを含む。なお、EUVL用マスクブランク1は、導電膜5を含まなくてもよい。また、EUVL用マスクブランク1は、更に別の膜を含んでもよい。
【0032】
例えば、EUVL用マスクブランク1は、更に、低反射膜を含んでもよい。低反射膜は、吸収膜4上に形成される。低反射膜は、図5に示す吸収膜4の開口パターン41の検査に用いられ、検査光に対して吸収膜4よりも低反射特性を有する。低反射膜は、例えばTaONまたはTaOなどで形成される。低反射膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が用いられる。
【0033】
また、EUVL用マスクブランク1は、更に、保護膜を含んでもよい。保護膜は、反射膜3と吸収膜4との間に形成される。保護膜は、吸収膜4に開口パターン41を形成すべく吸収膜4をエッチングする際に、反射膜3がエッチングされないように、反射膜3を保護する。保護膜は、例えばRu、Si、またはTiOなどで形成される。保護膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が用いられる。
【0034】
図5に示すように、EUVL用フォトマスクは、吸収膜4に開口パターン41を形成して得られる。開口パターン41の形成には、フォトリソグラフィ法およびエッチング法が用いられる。従って、開口パターン41の形成に用いられるレジスト膜が、EUVL用マスクブランク1に含まれてもよい。
【0035】
次に、図6を参照して、図1のS3で用いられる加工装置について説明する。加工装置100は、いわゆるGCIB(Gas Cluster Ion Beam)加工装置である。
【0036】
加工装置100は、真空容器101を含む。真空容器101は、ノズルチャンバ102と、イオン化/加速チャンバ103と、処理チャンバ104とを有する。3つのチャンバ102、103、104は、互いに接続され、ガスクラスタの通路を形成する。3つのチャンバ102、103、104は、3つの真空ポンプ105、106、107によって排気され、所望の真空度に維持される。なお、チャンバの数、及び真空ポンプの数は、特に限定されない。
【0037】
加工装置100は、生成部110を含む。生成部110は、ガスクラスタを生成する。生成部110は、例えば、原料タンク111と、圧力制御器113と、供給管114と、ノズル116とを含む。原料タンク111は、原料ガス(例えばCFガス)を貯蔵する。圧力制御器113は、供給管114を介して原料タンク111からノズル116に供給される原料ガスの供給圧を制御する。ノズル116は、ノズルチャンバ102内に設けられ、真空中に原料ガスを噴射し、超音速のガスジェット118を形成する。
【0038】
原料ガスは、ガスジェット118内にて、断熱膨張によって冷却される。その結果、ガスジェット118の一部は、それぞれが数個から数1000個の原子又は分子の集合体であるガスクラスタに凝縮する。ガスジェット118の流れの中心付近にガスクラスタが多く含まれる。それゆえ、スキーマ119によって、ガスジェット118の流れの中心付近のみを通過させることにより、ガスクラスタを効率的に送り出せる。
【0039】
なお、原料ガスは、CFガスには限定されず、SFガス、Arガス、Oガス、Nガス、NFガス、NOガス、CHFガス、Cガス、Cガス、Cガス、SiFガス、COFガス、SeFガス、TeFガス、又はWFガスなどであってもよい。これらのガスから複数のガスが選ばれてもよく、混合ガスが原料ガスとして用いられてもよい。原料ガスは、大きなサイズのガスクラスタを作れ、且つ高いレートでエッチングできるものが好ましく、具体的にはフッ素を含むものが好ましい。
【0040】
加工装置100は、イオン化部120を含む。イオン化部120は、ガスジェット118内のガスクラスタの少なくとも一部をイオン化する。イオン化部120は、例えば、1以上の熱フィラメント124と、円筒電極126とを含む。熱フィラメント124は、電源125からの電力(電圧V)によって発熱し、熱電子を放出する。円筒電極126は、熱フィラメント124から放出された熱電子を加速し、加速した熱電子をガスクラスタと衝突させる。電子とガスクラスタとの衝突によってガスクラスタの一部から電子が放出され、これらのガスクラスタが正イオン化する。なお、2つ以上の電子が放出され、多価イオン化する場合もある。円筒電極126と熱フィラメント124の間に、電源127からの電圧Vが印加される。この電圧V(電界)によって、熱電子が加速され、ガスクラスタと衝突する。
【0041】
加工装置100は、加速部130を含む。加速部130は、イオン化部120でイオン化したガスクラスタを加速し、GCIB128を形成する。加速部130は、例えば、第1電極132と、第2電極134とを含む。第2電極134は接地され、第1電極132には電源135から正の電圧Vsが印加される。第1電極132および第2電極134は、正イオン化したガスクラスタを加速する電界を形成する。加速されたガスクラスタは、第2電極134の開口からGCIB128として引き出される。電源136は、第1電極132および第2電極134に対してイオン化部120にバイアスをかける加速電圧VAccを供給し、総GCIB加速電位がVAccに等しくなるようにする。VAccは、例えば1kV~200kV、好ましくは1kV~70kVである。
【0042】
加工装置100は、不図示の中性化部を含んでもよい。中性化部は、加速部130で形成されたGCIB128を中性化し、中性のガスクラスタを形成する。中性のガスクラスタをガラス板2に照射するので、ガラス板2の帯電を防止できる。なお、正イオン化されたガスクラスタをガラス板2に照射しても、ガラス板2のエッチングは可能である。
【0043】
加工装置100は、照射部150を含む。照射部150は、ビーム状のガスクラスタ129をガラス板2に照射し、ガラス板2を局所的にエッチングする。ガスクラスタ129のビームの直径は、例えば1mm~15mmである。照射部150は、例えば、ステージ151と、ステージ移動機構152と、アパーチャ153とを含む。ステージ151は、処理チャンバ104内に設置され、ガラス板2を保持する。ステージ移動機構152は、ガラス板2におけるガスクラスタ129の照射点を移動させるべく、ステージ151を2次元的にY軸方向及びZ軸方向に移動させる。移動速度を制御することで、エッチング量を制御でき、ガラス板2を平坦化できる。なお、ステージ移動機構152は、ステージ151をX軸方向にも移動可能である。アパーチャ153は、ガスクラスタ129の通路の途中に設けられ、ガスクラスタ129の強度の均一性を高める。ガスクラスタ129は、アパーチャ153の開口を通り、ガラス板2に照射される。
【0044】
次に、図7図9を参照して、加工装置100の照射部150について説明する。本明細書において、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向及びY軸方向が水平方向、Z軸方向が鉛直方向である。以下の説明において、X軸正方向が前方、X軸負方向が後方である。図7に矢印で示すガスクラスタ129の照射方向は、X軸正方向である。
【0045】
図7に示すように、照射部150は、ビーム状のガスクラスタ129を前方に照射し、照射したガスクラスタ129でガラス板2の第1主面21を局所的にエッチングする。第1主面21は、後方に向けて配置され、且つ斜め上向きに傾斜して配置される。第1主面21が斜め上に向いているので、ステージ151がガラス板2を下方から安定的に保持できる。なお、ガラス板2の向きを逆向きにすれば、ガラス板2の第2主面22の局所的なエッチングも当然に可能である。
【0046】
図9に示すように、ステージ151は、ガラス板2の第2主面22に対向配置される。ステージ151は、ガラス板2の前方に配置される。ステージ151は、例えばスペーサ155を介してガラス板2を保持してもよい。スペーサ155は、ステージ151とガラス板2の間に隙間を形成する。ガラス板2の第2主面22の全体がステージ151に接触する場合に比べて、第2主面22の接触傷の発生を抑制できる。
【0047】
スペーサ155は、先細り状のテーパ面を有してもよい。スペーサ155のテーパ面でガラス板2の第2面取面25を保持すれば、第2主面22に全く接触しないので、第2主面22の接触傷の発生を確実に防止できる。スペーサ155の一部は、図8に示すようにガスクラスタ129の照射方向から見て、ガラス板2の外側に配置される。
【0048】
なお、本実施形態ではガスクラスタ129の照射方向から見て、スペーサ155の一部をガラス板2の外側に配置するが、スペーサ155の全体をガラス板2の内側に配置することも可能である。その場合、スペーサ155は、ガラス板2の第2面取面25ではなく、第2主面22の品質保証領域を除く周縁領域に接触する。
【0049】
また、ステージ151は、クランプ156を介して、ガラス板2を保持してもよい。真空中でガラス板2を安定的に保持できる。クランプ156の全体は、ガスクラスタ129の照射方向から見て、ガラス板2の外側に配置される。クランプ156は、例えばガラス板2の端面23を押さえる。クランプ156は、ガラス板2の周縁に沿って間隔をおいて複数設けられる。
【0050】
なお、クランプ156は、本実施形態ではガラス板2の端面23を押さえるが、ガラス板2の第1主面21の周縁領域27を押さえてもよい。また、クランプ156は、ガラス板2の第1面取面24を押さえてもよい。これらの場合も、クランプ156の一部は、ガスクラスタ129の照射方向から見て、ガラス板2の外側に配置される。
【0051】
ところで、ガスクラスタ129の照射は、真空容器101の内部で実施される。真空容器101の内部では、真空チャックでガラス板2を保持できないので、クランプ156でガラス板2を保持する。クランプ156は、ガラス板2を着脱自在に保持する。従って、クランプ156は、ガラス板2に対して接離させられる。
【0052】
真空容器101の内部でガラス板2がエッチングされ、パーティクルが発生する。パーティクルは、ガスクラスタ129がガラス板2又はガラス板2の周辺部材に衝突することにより生じる。パーティクルの材質は、例えば、ガラス、金属、又は樹脂である。発生したパーティクルが、待機中のクランプ156に付くことがある。その状態で、クランプ156がガラス板2に接近すると、ガラス板2とクランプ156の間にパーティクルが噛み込む。その結果、従来、ガラス板2に欠陥が発生してしまうことがあった。
【0053】
そこで、本実施形態では、保護層付きガラス板7を準備する。保護層付きガラス板7は、ガラス板2と、保護層6とを含む。保護層6は、ガラス板2に接触する樹脂層61を含む。樹脂層61は、単層でもよいし、複数層でもよい。樹脂層61は、少なくともガラス板2との接触面に、フィラー及び粉末を含まない。フィラー及び粉末は、発塵又は傷の原因になるからである。樹脂層61は、ガラス板2との接触面だけではなく、内部にも、フィラー及び粉末を含まないことが好ましい。
【0054】
樹脂層61の樹脂として、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、イソブテン・無水マレイン酸共重合樹脂、アクリル共重合樹脂、スチレン・ブタジエンゴム共重合体、塩化ビニル樹脂、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、EVA樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、POM(Poly Oxy Methylene)、PBT(Poly Butylene Terephthalate)、ポリ塩化ビニリデン、PVA(Poly Vinyl Alcohol)、又はフッ素樹脂が用いられる。また、シールド板161の材質である樹脂として、PPSU(Poly Phenyl Sulfone)、PSU(Poly Sulfone)、PAR(Poly Arylate)、PEI(Poly Ether Imide)、PEEK(Poly Ethel Ethel Keton)、PPS(Poly Phenylene Sulfide)、PES(Poly Ethel Sulfone)、PAI(Poly Amide Imide)、LCP(Liquid Crystal Polymer)、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)、PCTFE(Poly Chroro TriFluoro Ethylene)、又はPVDF(Poly Vinylidene DiFluoride)が用いられる。これらの樹脂は、後述のRCA洗浄、又はスクラブ洗浄で除去可能である。
【0055】
樹脂層61は、ガラス板2よりも柔らかいので、ガラス板2のエッチングによって発生するパーティクルよりも柔らかく、緩衝材としての役割を果たす。即ち、パーティクルがクランプ156とガラス板2の間に噛み込む際に、樹脂層61がパーティクルを吸収するように変形する。それゆえ、ガラス板2の欠陥の発生を抑制できる。
【0056】
樹脂層61の厚みは、特に限定されないが、例えば0.001mm~10mm、好ましくは0.001mm~1mmである。樹脂層61の厚みが0.001mm以上であれば、パーティクルの粒径よりも樹脂層61の厚みが厚いので、緩衝材としての機能が得られる。また、樹脂層61の厚みが10mm以下であれば、クランプ156が樹脂層61を押さえる際に、樹脂層61のせん断変形が小さく、ガラス板2の位置ずれが小さい。樹脂層61の厚みが1mm以下であれば、加工精度に対する影響が少ない。
【0057】
なお、保護層6は、本実施形態では樹脂層61のみを含むが、樹脂層61の他に、金属層又はセラミック層などを含んでもよい。金属層及びセラミック層は、樹脂層61の外側、つまり、樹脂層61を基準としてガラス板2とは反対側に配置される。金属層の金属として、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、チタン、ステンレス、又は真鍮が用いられる。これらの金属は、後述のRCA洗浄で除去可能である。セラミック層のセラミックとして、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、フォルステライト、ステアタイト、コージライト、サイアロン、マシナブルセラミック、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、フェライト、又はムライトが用いられる。
【0058】
保護層6は、例えばガラス板2の端面23に形成される。保護層6は、ガラス板2の周縁に沿って間隔をおいて複数配置される。保護層6をガラス板2の周縁全体に亘って配置する場合よりも、保護層6の除去が容易である。保護層6は、クランプ156の当たる位置に配置されればよい。
【0059】
なお、上記の通り、ガラス板2の向きを逆向きにすれば、ガラス板2の第2主面22の局所的なエッチングも当然に可能である。この場合も、保護層6は、緩衝材としての役割を果たす。即ち、パーティクルがクランプ156とガラス板2の間に噛み込む際に、樹脂層61がパーティクルを吸収するように変形する。それゆえ、ガラス板2の欠陥の発生を抑制できる。
【0060】
次に、図10を参照して、図1のS3の詳細について説明する。図1のS3は、図10に示すS31~S36を含む。
【0061】
先ず、図10のS31では、ガラス板2に保護層6を形成する。例えば、保護層6の材料を含む液体をガラス板2に塗布し、固化し、保護層6を形成する。液体は、流動性を有するので、ガラス板2の表面形状に倣った保護層を形成できる。保護層6の材料は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は紫外線硬化樹脂を含む。
【0062】
なお、保護層6の材料を含む液体をガラス板2に塗布し、固化する代わりに、テープ状の保護層6をガラス板2に貼り付けてもよい。予め固化された保護層6をガラス板2に貼り付けるので、作業時間を短縮できる。テープ状の保護層6の材料は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は紫外線硬化樹脂を含む。
【0063】
また、保護層6の材料を含む液体をガラス板2に塗布し、固化する代わりに、図13に示すフレーム状の保護層6をガラス板2に被せてもよい。フレーム状の保護層6は、例えば、枠状のプレート部65と、プレート部65の周縁全体から突出するリブ部66とを含む。プレート部65は、ガラス板2の第1主面21の品質保証領域26よりも大きな開口65aを有し、周縁領域27に接触する。一方、リブ部66は、ガラス板2の端面23に接触する。フレーム状の保護層6は、そのままの形状でガラス板2から分離でき、別のガラス板2に再び被せることが可能である。
【0064】
なお、図10のS31は、本実施形態では図1のS2の後に実施されるが、図1のS2の前に実施されてもよく、更に図1のS1の前に実施されてもよい。但し、図10のS32は、図1のS2の後に実施される。
【0065】
次に、図10のS32では、保護層付きガラス板7を準備する。具体的には、例えば、S31で得られた保護層付きガラス板7を、図6に示す加工装置100の真空容器101の内部に搬入し、ステージ151に載置する。
【0066】
次に、図10のS33では、図7図9に示すように、保護層6に当てたクランプ156によって保護層付きガラス板7を保持する。保護層6は、緩衝材としての役割を果たす。即ち、パーティクルがクランプ156とガラス板2の間に噛み込む際に、樹脂層61がパーティクルを吸収するように変形する。それゆえ、ガラス板2の欠陥の発生を抑制できる。
【0067】
次に、図10のS34では、ビーム状のガスクラスタ129をガラス板2の第1主面21に照射する。その照射点を移動すべく、ステージ移動機構152がステージ151を2次元的にY軸方向及びZ軸方向に移動させる。移動速度を制御することで、エッチング量を制御でき、第1主面21を平坦化できる。
【0068】
次に、図10のS35では、クランプ156による保護層付きガラス板7の保持を解除する。その後、保護層付きガラス板7は、加工装置100の真空容器101から外部に搬出される。
【0069】
次に、図10のS36では、保護層付きガラス板7を洗浄液で洗浄し、保護層6を除去する。洗浄は、例えばスクラブ洗浄を含む。スクラブ洗浄では、ブラシ又はスポンジなどで保護層付きガラス板7を擦り洗いする。樹脂層61、ひいては保護層6を効率的に除去できる。スクラブ洗浄では、洗浄液として、界面活性剤を含むアルカリ性溶液が用いられてもよい。アルカリの作用で除去効率を向上できる。スクラブ洗浄と、超音波洗浄とを併用してもよい。また、スクラブ洗浄は、後述のRCA洗浄の一部として用いられてもよい。
【0070】
なお、保護層付きガラス板7の洗浄は、RCA洗浄を含んでもよい。RCA洗浄は、例えば、SC-1洗浄と、希フッ酸洗浄と、SC-2洗浄とをこの順で含む。SC-1洗浄では、洗浄液として、水酸化アンモニウム(NHOH)と過酸化水素(H)の混合水溶液が用いられる。希フッ酸洗浄では、洗浄液として、希フッ酸が用いられる。SC-2洗浄では、洗浄液として、塩酸(HCl)と過酸化水素の混合水溶液が用いられる。RCA洗浄は、更に、SPM洗浄を含んでもよい。SPM洗浄では、洗浄液として、硫酸(HSO)と過酸化水素の混合水溶液が用いられる。
【0071】
なお、上記の通り、ガラス板2の向きを逆向きにすれば、ガラス板2の第2主面22の局所的なエッチングも当然に可能である。この場合も、保護層6の樹脂層61は、緩衝材としての役割を果たす。即ち、パーティクルがクランプ156とガラス板2の間に噛み込む際に、樹脂層61がパーティクルを吸収するように変形する。それゆえ、ガラス板2の欠陥の発生を抑制できる。
【0072】
次に、図11を参照して、第1変形例に係るクランプ156について説明する。本変形例のクランプ156は、ガラス板2の第1主面21の周縁領域27を押さえる。その周縁領域27には保護層6が形成される。パーティクルがクランプ156とガラス板2の間に噛み込む際に、樹脂層61がパーティクルを吸収するように変形する。それゆえ、ガラス板2の欠陥の発生を抑制できる。
【0073】
クランプ156は、ガラス板2をスペーサ155に押し付ける。そこで、保護層6は、ガラス板2の第2面取面25に形成され、スペーサ155に押し当てられてもよい。スペーサ155とガラス板2の間にパーティクルが噛み込む際に、樹脂層61がパーティクルを吸収するように変形する。それゆえ、ガラス板2の欠陥の発生を抑制できる。
【0074】
保護層6は、ガラス板2の周縁に沿って間隔をおいて複数配置される。保護層6をガラス板2の周縁全体に亘って配置する場合よりも、保護層6の除去が容易である。保護層6は、スペーサ155又はクランプ156の当たる位置に配置されればよい。
【0075】
なお、上記の通り、スペーサ155は、ガラス板2の第2面取面25の代わりに、第2主面22の周縁領域を押さえてもよい。この場合、保護層6は、ガラス板2の第2主面22の周縁領域に形成され、スペーサ155に押し当てられる。
【0076】
次に、図12を参照して、第2変形例に係るクランプ156について説明する。本変形例のクランプ156は、ガラス板2の第1面取面24を押さえる。その第1面取面24には保護層6が形成される。パーティクルがクランプ156とガラス板2の間に噛み込む際に、樹脂層61がパーティクルを吸収するように変形する。それゆえ、ガラス板2の欠陥の発生を抑制できる。
【0077】
クランプ156は、ガラス板2をスペーサ155に押し付ける。そこで、保護層6は、ガラス板2の第2面取面25に形成され、スペーサ155に押し当てられてもよい。スペーサ155とガラス板2の間にパーティクルが噛み込む際に、樹脂層61がパーティクルを吸収するように変形する。それゆえ、ガラス板2の欠陥の発生を抑制できる。
【0078】
保護層6は、ガラス板2の周縁に沿って間隔をおいて複数配置される。保護層6をガラス板2の周縁全体に亘って配置する場合よりも、保護層6の除去が容易である。保護層6は、スペーサ155又はクランプ156の当たる位置に配置されればよい。
【0079】
なお、上記の通り、スペーサ155は、ガラス板2の第2面取面25の代わりに、第2主面22の周縁領域を押さえてもよい。この場合、保護層6は、ガラス板2の第2主面22の周縁領域に形成され、スペーサ155に押し当てられる。
【実施例
【0080】
以下、実験データについて説明する。下記の例1が実施例であり、下記の例2が比較例である。
【0081】
例1では、図6に示す加工装置100によってガラス板2の第1主面21をビーム状のガスクラスタ129で加工した。加工条件は、下記の通りであった。
ガラス板2の材質:TiOを含有する石英ガラス
原料ガス:CFガス
加速電圧VAcc:60kV
保護層6の配置:図8の配置
保護層6の寸法:15mm×6mm×厚み0.35mm
保護層6の材質:シリコーン樹脂
クランプ156の構造:図9の構造。
【0082】
例1では、クランプ156が保護層6を介してガラス板2の端面23を押したので、保護層6を洗浄液で除去した後に、ガラス板2の端面23のクランプ156で押される部分に、欠陥が目視で確認されなかった。これは、クランプ156とガラス板2の間にパーティクルが噛み込む際に、応力集中が生じないように、保護層6が変形するからである。
【0083】
例2では、保護層6を使用しなかった点を除き、例1と同じ加工条件で、ガラス板2の第1主面21をビーム状のガスクラスタ129で加工した。例2では、クランプ156がガラス板2の端面23を接触させたので、ガラス板2の端面23のクランプ156で押される部分に、欠陥が目視で確認された。
【0084】
例1及び例2の結果から、クランプ156が保護層6を介してガラス板2の端面23を押すことで、クランプ156との接触によるガラス板2の欠陥の発生を抑制できることが分かる。
【0085】
以上、本開示に係るガラス板の加工方法、及びEUVL用マスクブランクの製造方法について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0086】
例えば、本開示の加工方法で加工される、ガラス板の用途は、EUVLには限定されない。ガラス板の用途は、高い平坦度が要求される用途であればよく、例えば医療装置などであってもよい。また、ガラス板のガラス組成は、ガラス板の用途に応じたものであればよい。
【0087】
本出願は、2020年5月13日に日本国特許庁に出願した特願2020-084730号に基づく優先権を主張するものであり、特願2020-084730号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0088】
1 EUVL用マスクブランク
2 ガラス板
21 第1主面
22 第2主面
23 端面
24 第1面取面
25 第2面取面
3 反射膜
4 吸収膜
6 保護層
61 樹脂層
7 保護層付きガラス板
100 加工装置
129 ガスクラスタ
151 ステージ
155 スペーサ
156 クランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13