(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】通知装置
(51)【国際特許分類】
B60J 1/00 20060101AFI20250401BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
B60J1/00 G
B60J1/00 P
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2023029330
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2018120164の分割
【原出願日】2018-06-25
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡 信彦
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-006830(JP,A)
【文献】特開2013-152554(JP,A)
【文献】特開平05-201271(JP,A)
【文献】実開平03-120527(JP,U)
【文献】特表2013-517989(JP,A)
【文献】特開2009-166654(JP,A)
【文献】特開2008-123112(JP,A)
【文献】国際公開第2017/103426(WO,A1)
【文献】特開2013-124001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられる窓ガラスと、
光源を含み、前記光源を発光させて前記窓ガラスの周縁部の少なくとも一部を光らせて通知する通知手段と、
前記光源の発光動作を制御する制御手段と、
を有し、
前記窓ガラスは、2枚のガラス板と、前記2枚のガラス板に挟まれた中間膜
と、遮光部材と、前記光源が発した光を前記車両の内側に反射する反射部材と、
を有し、
前記2枚のガラス板の間に、前記遮光部材及び前記反射部材が挟まれ、
前記遮光部材は、前記反射部材よりも前記車両の外側に位置し、
前記制御手段は、前記光源により発光される前記窓ガラスの発光領域の広さを変化させ、
前記発光領域は、
前記車両の内側から見て前記窓ガラスの周縁のうち垂直方向に沿う右縁部に位置する第1の領域と、
前記車両の内側から見て前記窓ガラスの周縁のうち垂直方向に沿う左縁部に位置する第2の領域と、
を有する、車両用の通知装置。
【請求項2】
前記制御手段は、設定されている条件を満足してドライバーに通知するべき状況に応じて前記通知手段の前記光源の発光動作を制御する、請求項1に記載の通知装置。
【請求項3】
前記光源は、前記窓ガラスに対向して配置され
、
前記反射部材は、前記窓ガラスの周縁部の少なくとも一部に配置される、請求項1又は2に記載の通知装置。
【請求項4】
前記
遮光部材は、前記反射部材よりも前記車両の外側で、前記反射部材に重なるように配置され
る、請求項3に記載の通知装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記車両と道路に描かれた区画線との位置関係に基づいて前記光源の動作を制御する、請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の通知装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記車両と前記車両の前方を走行する車両との速度差及び距離に基づいて前記光源の動作を制御する、請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の通知装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記車両と前記車両の側方を走行する車両との速度差及び距離に基づいて前記光源の動作を制御する、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の通知装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記車両の後方移動の際に前記車両の周辺に位置する物体との距離に基づいて前記光源の動作を制御する、請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の通知装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記車両内の電熱装置の稼働状況に基づいて前記光源の動作を制御する、請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の通知装置。
【請求項10】
前記制御手段は、
前記第1の領域よりも前記第2の領域を広く発光させるか、又は、
前記第1の領域よりも前記第2の領域を狭く発光させる、請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の通知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全な運転の実現に向けて、車両に多くのセンシングデバイスが搭載されており、多くの情報を検出している。センシングデバイスの例として、レーダー、可視光カメラ、超音波検出器及びLiDAR(light detection and ranging)が挙げられる。LiDARは、光を利用して車両の周囲の物体までの距離を検出できる。
【0003】
また、車両には、これらセンシングデバイスによる検出結果を運転手に通知する装置として、スピーカ、ヘッドアップディスプレイ(head up display:HUD)等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スピーカを用いた通知では、車内で音楽が掛けられている場合や会話が弾んでいる場合等では、運転手が音声を咄嗟に認識できない可能性がある。また、スピーカが発する音量を大きくし過ぎると、車内が静かな場合には、運転手を驚かせてしまう可能性がある。更に、HUDを用いた通知では、運転手はHUDに表示された内容を読み取る必要があり、咄嗟に対応できない可能性がある。また、運転手は咄嗟にHUDに視線を動かすことになるため、進行方向の安全性が不十分となる可能性もある。
【0006】
本発明の目的は、運転手に認識しやすいように情報を通知することができる通知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の一態様によれば、車両に取り付けられる窓ガラスと、光源を含み、前記光源を発光させて前記窓ガラスの周縁部の少なくとも一部を光らせて通知する通知手段と、前記光源の発光動作を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記光源により発光される前記窓ガラスの発光領域の広さを変化させ、前記発光領域は、前記車両の内側から見て前記窓ガラスの右縁部に位置する第1の領域と、前記車両の内側から見て前記窓ガラスの左縁部に位置する第2の領域と、を有する、車両用の通知装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、運転手に認識しやすいように情報を通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る通知装置を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【
図3】ウィンドシールドにおける通知の第1の例を示す図である。
【
図4】ウィンドシールドにおける通知の第2の例を示す図である。
【
図5】ウィンドシールドにおける通知の第3の例を示す図である。
【
図6】ウィンドシールドにおける通知の第4の例を示す図である。
【
図7】ウィンドシールドにおける通知の第5の例を示す図である。
【
図8】ウィンドシールドにおける通知の第6の例を示す図である。
【
図10】制御装置による処理の内容を示すフローチャートである。
【
図15】第2の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【
図16】第3の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【
図17】第4の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【
図18】第5の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【
図19】第6の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【
図20】第7の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【
図21】第8の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【
図22】第9の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る通知装置を示す図である。
図2は、第1の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【0012】
図1に示すように、第1の実施形態に係る通知装置100は、ウィンドシールド110と、ウィンドシールド110の縁部11を発光させる発光器120と、発光器120の動作を制御する制御装置130と、を有する。発光器120は、発光色が異なる複数種の発光ダイオード(light emitting diode:LED)を含んでおり、点灯するLEDの組み合わせにより複数の色を発光することができる。例えば、ウィンドシールド110は、車両の窓枠に取り付けられ、発光器120は車両内で窓枠の近傍に配置される。ウィンドシールド110は、車両に取り付けられる窓ガラスの一例である。また、発光器120としては、上記以外に公知の発光部材を使用でき、例えば、有機EL(organic electroluminescence light emitting diode:OLED)等が挙げられる。第1の実施形態を含み他の実施形態の説明においても、特に断りが無い限り、発光器120はこれらのいずれも使用できる。
【0013】
縁部11は、ウィンドシールド110の周縁であれば、特に限定されないが、端面から10cm以内の範囲が好ましく、5cm以内の範囲がより好ましい。縁部11は周縁部の一例であり、ウィンドシールド110の一部である。
【0014】
第1の実施形態では、
図2に示すように、発光器120がダッシュボード160上にウィンドシールド110に光121を照射するようにして配置される。例えば、ウィンドシールド110には、内側ガラス板112及び外側ガラス板113と、これらの間に挟まれた中間膜116とを備えた合わせガラスが用いられ、ダッシュボード160側(下側)の下縁部11Bにおいて、内側ガラス板112及び外側ガラス板113の間に遮光フィルム114及び反射フィルム115が挟まれる。遮光フィルム114は反射フィルム115よりも車両外側に位置する。遮光フィルム114としては、例えば黒色フィルム又は黒セラを用いることができる。黒セラは、セラミック印刷により形成することができる。ダッシュボード160上には、発光器120を運転手190の視界から遮る遮光板161が設けられる。
【0015】
発光器120が光121を発すると、この光121の一部は内側ガラス板112により、他の一部は反射フィルム115により反射され、反射光122が車両内へと照射される。反射フィルム115の構成により反射の形態にバリエーションを持たせることができる。また、光121の一部が運転手190に向けて進行しようとしたとしても、遮光板161が設けられているため、運転手190までは到達しない。従って、発光器120が発する光121による運転手190の視覚への影響を抑制することができ、発光器120は強い光を発することができる。
【0016】
運転手190は、車両の運転中はウィンドシールド110を通じて前方を見ており、下縁部11Bが発光したとしても、運転手190の視界から発光している下縁部11Bは外れているため、運転手190視野を妨害するものではなく、運転の妨げとはならない。また、運転手190は、下縁部11Bの発光の色及び態様(点灯したり、点滅したり、など)という直観的な情報を身近に感じることができるので、これらの発光の色や態様に応じて運転手が感知すべき情報及びその程度、具体的には危険度等を直感的に認識できる。例えば、信号機の色に倣って、運転手190は、緑色は安全な状況、黄色は要注意の状況、赤色は危険が迫っている状況を示すことを直感的に認識できる。更に、下縁部11Bでの発光は、ヘッドアップディスプレイ(head up display:HUD)のように文字、記号又は記号を運転手190に読み取らせるものではないため、運転手190は視線を特定の位置に移動させることなく、状況を容易に把握することができる。
【0017】
なお、光121の一部が反射フィルム115を透過しても、その奥に遮光フィルム114が設けられているため、車両外には漏れ出さない。従って、対向車及び周囲の歩行者等に眩しさを感じさせることを抑制することができる。
【0018】
ここで、通知装置100による通知の例について説明する。
図3~
図8は、ウィンドシールド110における通知の例を示す図である。
【0019】
図3に示す第1の例では、道路の路面に描かれた区画線と車両との位置関係が通知される。例えば、下縁部11Bの左側の一部及び右側の一部が白色に発光する。具体的には、車両が車線内の右寄りを走行している場合に、
図3(a)に示すように、右側の発光領域12Rが左側の発光領域12Lよりも狭くなり、車両が車線内の左寄りを走行している場合に、
図3(b)に示すように、右側の発光領域12Rが左側の発光領域12Lよりも広くなる。このような発光が行われることで、運転手190は車両が右寄りなのか左寄りなのかを直感的に認識することができる。
【0020】
車両が極端に右寄りになった場合には、発光領域12Rが赤色に発光し、車両が極端に左寄りになった場合には、発光領域12Lが赤色に発光することが好ましい。車線を越えつつあることを直感的に認識させるためである。
【0021】
図4に示す第2の例では、側方の状況が通知される。例えば、左後方又は右後方を自動車又は自転車等の後続車が走行している場合には、下縁部11Bの、当該後続車が走行している側の発光領域が赤色に発光し、後続車が走行していない側の発光領域が緑色に発光する。例えば、左方に後続車があり、右方に後続車がない場合は、
図4に示すように、左側の発光領域12Lが赤色に発光し、右側の発光領域12Rが緑色に発光する。このような発光が行われることで、運転手190は後続車の接近状況を直感的に認識することができる。
【0022】
赤色の発光については、後続車の接近速度及び後続車との距離に応じて発光領域の広さを異ならせることが好ましい。具体的には、後続車の接近速度が高いほど、また、後続車との距離が短いほど、赤色に発光する発光領域を広くすることが好ましい。また、巻き込みの可能性は低いものの、接近しつつある後続車がある場合には、黄色に発光してもよい。
【0023】
図5に示す第3の例では、前方の状況が通知される。例えば、前方を走行する車両との速度差及び距離に応じて、
図5に示すように、下縁部11Bの全体が発光領域12Fとして赤色に発光する。具体的には、速度差が小さいほど、また、距離が長いほど、長い間隔で赤色に点滅し、速度差が大きく、また、距離が短いほど、短い間隔で赤い色に点滅する。このような発光が行われることで、運転手190は前方の車両への接近状況を直感的に認識することができる。
【0024】
図6に示す第4の例では、エアーコンディショナー、デフロスター、又は融氷若しくは曇り止め等の電熱装置等の稼働状況が通知される。例えば、エアーコンディショナーの稼働状況を通知する場合を例に挙げると、その設定温度と車内温度との差に応じて、
図6に示すように、冷却時であれば青色に、暖房時であれば赤色に、下縁部11Bが発光する。具体的には、下縁部11Bの左端から発光領域12Tが広がり、
図6(a)に示すように、温度差が大きいほど発光領域12Tが狭く、車内温度が設定温度と一致すると、
図6(b)に示すように、発光領域12Tが右端まで達する。このような発光が行われることで、運転手190はエアーコンディショナーの稼働状況を直感的に認識することができる。
【0025】
図7に示す第5の例では、運転アシスト機能を備えた車両において、運転アシスト機能が解除されたことが通知される。例えば、
図7に示すように、下縁部11Bの全体が発光領域12Aとして青色で点滅する。このような発光が行われることで、運転手190は運転アシスト機能が解除されたことを直感的に認識することができる。
【0026】
図8に示す第6の例では、車両の後方移動の際に、側方及び後方に存在する物体との距離が通知される。また、実際の距離を視覚的に表示できる。例えば、物体から離れているほど発光範囲が狭く、物体に近づくほど発光範囲が広くなる。具体的には、右後方に車両や壁等の物体があり、左後方には接触する可能性がある物体がない場合は、
図8(a)に示すように、右側の発光領域12Rが物体からの距離に応じて緑色から黄色を経て赤色に変化するように発光する。また、後方全体にわたって接触する可能性がある物体がある場合には、
図8(b)に示すように、下縁部11Bの全体が発光領域12Bとして物体からの距離に応じて緑色から黄色を経て赤色に変化するように発光する。
【0027】
次に、制御装置130について説明する。制御装置130は、後述の処理により、車両に装備された種々のセンシングデバイスからの信号に応じて、発光器120の動作を制御し、例えば、
図3~
図8に示す例の発光を実現する。センシングデバイスとしては、例えば、LiDAR、レーダー、可視カメラ及び超音波検出器が挙げられる。例えば、制御装置130は半導体チップであり、ダッシュボード160内に収納される。
図9は、制御装置130の構成を示す図である。
【0028】
制御装置130は、CPU(central processing unit)131、ROM(read only memory)132、RAM(random access memory)133及び補助記憶部134を備える。CPU131、ROM132、RAM133及び補助記憶部134は、いわゆるコンピュータを構成する。制御装置130の各部は、バス135を介して相互に接続されている。
【0029】
CPU131は、補助記憶部134に格納された各種プログラム(例えば、発光制御プログラム)を実行する。
【0030】
ROM132は不揮発性の主記憶デバイスである。ROM132は、補助記憶部134に格納された各種プログラムを、CPU131が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する。具体的には、ROM132は、BIOS(basic input/output system)やEFI(extensible firmware interface)等のブートプログラム並びに発光器120の発光パターンを示すデータ等を格納する。
【0031】
RAM133は、DRAM(dynamic random access memory)やSRAM(static random access memory)等の揮発性の主記憶デバイスである。RAM133は、補助記憶部134に格納された各種プログラムがCPU131によって実行される際に展開される作業領域として機能する。
【0032】
補助記憶部134は、CPU131により実行される各種プログラム及び各種プログラムがCPU131によって実行されることで生成される各種データを格納する補助記憶デバイスである。
【0033】
制御装置130は、このようなハードウェア構成を備えており、次のような処理を行う。
図10は、制御装置130による処理の内容を示すフローチャートである。
【0034】
先ず、制御装置130は、センシングデバイスから信号が入力されると(ステップS1)、当該信号がどのセンシングデバイスからのどのような信号であるかを特定する(ステップS2)。次いで、特定した信号に対応する発光パターンを示すデータを読み出し(ステップS3)、当該データに基づいて発光器120を制御する(ステップS4)。例えば、
図3~
図8に示す例のいずれかが実現されるように発光器120を制御する。
【0035】
このような第1の実施形態に係る通知装置100によれば、センシングデバイスによる検出結果に基づく通知が、色の変化及び発光領域の広さの変化等に基づいて行われる。従って、運転手190は、文字や記号等を読み取らずに、通知の内容を直感的に認識することができる。また、この通知にはウィンドシールド110の下縁部11Bが用いられる。運転手190の運転中の視線はウィンドシールド110の前方にあるため、この通知は運転の妨げとはならない範囲で瞬時に運転手190の視界に入り込む。更に、音声であれば騒音等の影響を受ける可能性があるが、光を用いることで、昼間、夜間を問わず、適度な刺激で運転手190に通知を行うことができる。
【0036】
なお、第1の実施形態は、ウィンドシールド110の縁部のうち下縁部11Bのみが発光する構成となっているが、縁部の両側方及び上方が発光してもよい。
【0037】
例えば、第1の例において、右側の右縁部及び左側の左縁部が用いられてもよい。すなわち、車両が車線内の右寄りを走行している場合に、
図11(a)に示すように、右縁部11Rが左縁部11Lよりも狭く発光し、車両が車線内の左寄りを走行している場合に、
図11(b)に示すように、右縁部11Rが左縁部11Lよりも広く発光してもよい。この場合も、車両が極端に右寄りになった場合には、右縁部11Rが赤色に発光し、車両が極端に左寄りになった場合には、発光領域12Lが赤色に発光することが好ましい。
【0038】
また、例えば、第2の例において、右縁部及び左縁部が用いられてもよい。すなわち、左方に後続車があり、右方に後続車がない場合は、
図12に示すように、左縁部11Lが赤色に発光し、右縁部11Rが緑色に発光してもよい。この場合も、後続車の接近速度が高いほど、また、後続車との距離が短いほど、赤色に発光する発光領域を広くすることが好ましい。
【0039】
更に、例えば、第3の例において、右縁部及び左縁部が用いられてもよい。すなわち、
図13に示すように、前方を走行する車両との速度差及び距離に応じて、下縁部11Bだけでなく、右縁部11R及び左縁部11Lが赤色に発光してもよい。
【0040】
また、例えば、第6の例において、車両の後方移動の際に、右縁部及び左縁部が用いられてもよい。すなわち、右後方に物体があり、左後方には接触する可能性がある物体がない場合は、
図14(a)に示すように、右縁部11Rが物体からの距離に応じて緑色から黄色を経て赤色に変化するように発光してもよい。また、後方全体にわたって接触する可能性がある物体がある場合には、
図14(b)に示すように、下縁部11B、右縁部11R及び左縁部11Lの全体が物体からの距離に応じて緑色から黄色を経て赤色に変化するように発光してもよい。後方移動の際には、運転手190はウィンドシールド110の前方ではなく、車両の後方に視線を向けるため、右縁部11R及び左縁部11Lの発光は特に好ましい。また、ウィンドシールド110だけでなく、リアウィンドの縁部において同様の発光を行ってもよい。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図15は、第2の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【0042】
第2の実施形態に係る通知装置200では、
図15に示すように、発光器120がダッシュボード160上にウィンドシールド110に光121を照射するようにして配置される。例えば、ウィンドシールド110には、内側ガラス板112、外側ガラス板113及び中間膜116を含み、遮光フィルム114及び反射フィルム115を含まない合わせガラスが用いられ、下縁部11Bにおいて、内側ガラス板112の表面に遮光フィルム214が設けられる。遮光フィルム214としては、例えば黒色フィルム又は黒セラを用いることができる。また、車両内側への反射を強める成分を含む黒色フィルム又は黒セラを用いてもよい。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0043】
このように構成された通知装置200によっても通知装置100と同様の効果を得ることができる。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図16は、第3の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【0045】
第3の実施形態に係る通知装置300では、
図16に示すように、遮光フィルム214の表面に拡散フィルム315が設けられる。他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0046】
このように構成された通知装置300によっても通知装置200と同様の効果を得ることができる。また、通知装置300によれば、拡散フィルム315が設けられているので、強度の均一性が高い光322が拡散フィルム315から発せられる。従って、運転手190が受ける光刺激を緩和することができる。
【0047】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
図17は、第4の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【0048】
第4の実施形態に係る通知装置400では、
図17に示すように、ウィンドシールド110の下縁部11Bにおいて、内側ガラス板112及び外側ガラス板113の間に遮光フィルム114及び光源である発光器120が挟まれる。遮光フィルム114は発光器120よりも車両外側に位置することが好ましい。また、内側ガラス板112の表面に拡散フィルム315が設けられることが好ましい。第4の実施形態においては、ダッシュボード160上に発光器120及び遮光板161が設けられる必要がない。さらに、他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0049】
このように構成された通知装置400によっても通知装置100と同様の効果を得ることができる。また、通知装置400によれば、ダッシュボード160上の発光器120及び遮光板161を必要としないため、第1の実施形態と比較してダッシュボード160上の構成を簡素にすることができる。また、第3の実施形態と同様に、拡散フィルム315を設けることで、強度の均一性が高い光322を発することができて、運転手190が受ける光刺激を緩和することができる。
【0050】
内側ガラス板112及び外側ガラス板113の間に挟まれる発光器120としては、LED、OLEDが好適に使用できる。
【0051】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
図18は、第5の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【0052】
第5の実施形態に係る通知装置500は、
図18に示すように、反射フィルム115が設けられていないことを除き第1の実施形態と同様の構成を備える。
【0053】
このように構成された通知装置500によっても通知装置100と同様の効果を得ることができる。なお、遮光フィルム114が、外側ガラス板113の車両内側の面ではなく、内側ガラス板112の車両外側の面に設けられていてもよい。また、遮光フィルム114の車両内側に拡散フィルムが設けられていてもよい。
【0054】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。
図19は、第6の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【0055】
第6の実施形態に係る通知装置600では、
図19に示すように、外側ガラス板113の車両内側の面にハーフミラー618が設けられ、内側ガラス板112の車両内側の面にハーフミラー619が設けられる。反射フィルム115は設けられていない。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0056】
このように構成された通知装置600では、ハーフミラー618とハーフミラー619との間で光623の反射が生じ、ハーフミラー619を透過した光622が車両内に照射される。
【0057】
このように構成された通知装置600によっても通知装置100と同様の効果を得ることができる。また、ハーフミラー618及び619が設けられているため、多重反射により距離感を持たせた通知を行うことが可能となる。
【0058】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。
図20は、第7の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【0059】
第7の実施形態に係る通知装置700では、発光器120がウィンドシールド110の周辺に配置される。第7の実施形態においては、発光器120から発せられる光がウィンドシールド110又は拡散部材に直接その側面から入射される場合、及び発光器120から発せられる光が導光部材を介してウィンドシールド110又は拡散材に入射される場合がある。従って、ウィンドシールド110の周辺との意味は、ウィンドシールド110に近い位置を意味しており、ウィンドシールド110に対して垂直方向及び水平方向の両方をさし、発光器120の光を上記した態様で入射できる状態を意味する。つまり、ウィンドシールド110の周辺は、ウィンドシールド110の外部である。
【0060】
図20に示すように、発光器120がダッシュボード160内に配置され、発光器120と拡散フィルム315とを光学的に繋ぐ導光ファイバ720が設けられる。他の構成は第3の実施形態と同様である。
【0061】
第7の実施形態においては、拡散フィルム315を内側ガラス板112の表面に配置しているが、他の態様として、内側ガラス板112の表面に拡散フィルム315と同等の表面性状のコーティングを施してもよく、表面凹凸を形成してもよい。
【0062】
このように構成された通知装置700によっても通知装置300と同様の効果を得ることができる。また、発光器120がダッシュボード160内に配置されるため、第3の実施形態と比較してダッシュボード160上の構成を簡素にすることができる。
【0063】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。
図21は、第8の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【0064】
第8の実施形態に係る通知装置800では、
図21に示すように、波長変換部材としての波長変換フィルム815が設けられる。波長変換フィルム815は発光器120から発せられた光121を吸収すると、別の波長の光822を車両内側に向けて照射する。他の構成は第1の実施形態と同様である。波長変換フィルム815は、
図21で示すように、遮光フィルム114よりも車内面側で、遮光フィルム114に重なるように配置されることが好ましい。これにより、波長変換フィルムに対して発せられた光121が外部に漏れることを防げる。さらに、車外窓ガラスを視認しても、波長変換フィルム815が目立たず、意匠性に優れる。
【0065】
このように構成された通知装置800によっても通知装置100と同様の効果を得ることができる。
【0066】
(第9の実施形態)
次に、第9の実施形態について説明する。
図22は、第9の実施形態に係る通知装置に含まれるウィンドシールド及び発光器の位置関係を示す図である。
【0067】
第9の実施形態に係る通知装置900では、
図22に示すように、発光器120が車両内側に光121を照射するように配置され、光121の運転手190への経路上に、好ましくは発光器120の近傍に、拡散板915が設けられる。他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0068】
このように構成された通知装置900によっても通知装置200と同様の効果を得ることができる。また、拡散板915が設けられるため、強度の均一性が高い光922が拡散板915から発せられ、運転手190が受ける光刺激を緩和することができる。また、拡散板915の構成により見栄えにバリエーションを持たせることができる。拡散板915に代えて導光板を用いてもよい。
【0069】
なお、いずれの実施形態においても、発光器120に含まれるLEDが発する光が単色であっても、運転手190に特定の情報を認識しやすいように通知することができる。また、発光器120の光源はLEDに限定されず、電球等であってもよい。
【0070】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0071】
11 縁部
11B 下縁部
11L 左縁部
11R 右縁部
100、200、300、400、500、600、700、800、900 通知装置
110 ウィンドシールド
114、214 遮光フィルム
115 反射フィルム
120 発光器
130 制御装置
315 拡散フィルム
618、619 ハーフミラー
720 導光ファイバ
815 波長変換フィルム
915 拡散板