(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】カチオン性ウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20250401BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20250401BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20250401BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
C08G18/08 009
C08G18/32 012
C08G18/32 015
C08G18/38 019
C08G18/44
(21)【出願番号】P 2023547254
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 CN2021098872
(87)【国際公開番号】W WO2022257008
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】内田 秀磨
(72)【発明者】
【氏名】永浜 定
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ジキョウ
(72)【発明者】
【氏名】リ シャオニ
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-084728(JP,A)
【文献】特開昭51-103135(JP,A)
【文献】特開昭59-011378(JP,A)
【文献】特開2006-150931(JP,A)
【文献】特開2007-168164(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105176155(CN,A)
【文献】国際公開第2017/110599(WO,A1)
【文献】特開2012-211284(JP,A)
【文献】特開平08-291212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/08
C08G 18/32
C08G 18/38
C08G 18/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性ウレタン樹脂(A)、及び、水(B)を含有するカチオン性ウレタン樹脂組成物であって、
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)が、下記式(1)で示される構造単位を有するものであり、
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)が、ジグリシジルエーテル(s1)及び2級アミン(s2)の反応物であるアミノ基含有ポリオール(a1-1)を含むポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)との反応物であり、
前記ジグリシジルエーテル(s1)が、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、下記式(3-1)で示される化合物、又は下記式(3-2)で示される化合物を含有するものであることを特徴とするカチオン性ウレタン樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は下記式(2)又は式(3)で示される構造を示し、R
2及びR
3は、互いに独立して脂環構造を含んでいてもよいアルキル基を示し、R
4は水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基を示し、X
-はアニオン性の対イオンを示す。)
【化2】
(式(2)中、2つのベンゼン環及び酸素原子は、それぞれ独立にベンゼン環の2位、3位、4位、5位又は6位で連結しており、R
1及びR
2
は水素原
子を示す。)
【化3】
(式(3)中、シクロ環と連結している2つの置換基は、オルト位
、又は、パラ位に位置する。)
【化4】
【化5】
【請求項2】
前記アミノ基含有ポリオール(a1-1)の使用量が、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)の原料合計質量中0.1~30質量%の範囲である請求項1記載のカチオン性ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオール(a1)が、さらに、ポリカーボネートポリオールを含有するものである請求項1記載のカチオン性ウレタン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性ウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂が水中に分散したウレタン樹脂組成物は、従来の有機溶剤系ウレタン樹脂組成物と比較して、環境への負荷を低減できることから、合成皮革、手袋、カーテンやシーツ等のコーティング剤などを製造する材料として、近年好適に使用され始めている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
前記ウレタン樹脂組成物に対する要求特性としては、水中での分散性や長期保存時の安定性に優れることは勿論のこと、ポリウレタン皮膜の耐久性の更なる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ポリウレタン皮膜の耐久性に優れるカチオン性ウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カチオン性ウレタン樹脂(A)、及び、水(B)を含有するカチオン性ウレタン樹脂組成物であって、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)が、下記式(1)で示される構造単位を有することを特徴とするカチオン性ウレタン樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
【化1】
(式(1)中、R
1は下記式(2)又は式(3)で示される構造を示し、R
2及びR
3は、互いに独立して脂環構造を含んでいてもよいアルキル基を示し、R
4は水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基を示し、X
-はアニオン性の対イオンを示す。)
【0008】
【化2】
(式(2)中、2つのベンゼン環及び酸素原子は、それぞれ独立にベンゼン環の2位、3位、4位、5位又は6位で連結しており、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、又はベンゼン環を示す。)
【0009】
【化3】
(式(3)中、シクロ環と連結している2つの置換基は、オルト位
、又は、パラ位に位置する。)
【発明の効果】
【0010】
本発明のカチオン性ウレタン樹脂組成物は、耐久性に優れるポリウレタン皮膜を付与することができる。また、本発明のカチオン性ウレタン樹脂組成物は、水中での分散性、及び、長期保存時の安定性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のカチオン性ウレタン樹脂組成物は、特定の構造単位を有するカチオン性ウレタン樹脂(A)、及び、水(B)を含有するものである。
【0012】
前記カチオン性ウレタン(A)は、優れた耐久性を得るうえで、下記式(1)で示される構造単位を有することが必須である。
【0013】
【化4】
(式(1)中、R
1は下記式(2)又は式(3)で示される構造を示し、R
2及びR
3は、互いに独立して脂環構造を含んでいてもよいアルキル基を示し、R
4は水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基を示し、X
-はアニオン性の対イオンを示す。)
【0014】
【化5】
(式(2)中、2つのベンゼン環及び酸素原子は、それぞれ独立にベンゼン環の2位、3位、4位、5位又は6位で連結しており、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、又はベンゼン環を示す。)
【0015】
【化3】
(式(3)中、シクロ環と連結している2つの置換基は、オルト位
、又は、パラ位に位置する。)
【0016】
前記式(1)中、R2及びR3は、互いに独立して脂環構造を含んでいてもよいアルキル基を示し、好ましくは、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が好ましく、ブチル基がより好ましい。前記4級化剤の残基としては、好ましくはメチル基又はエチル基である。前記X-は、後述する酸や4級化剤として、酢酸、リン酸、ジブチル酸、ベンジルクロライド等を使用したときに形成されるアニオン性のイオンが好ましい。
【0017】
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)は、前記の硬い化学構造のエポキシ原料を用いることで、特にポリウレタン皮膜の伸長応力が向上でき、更に耐熱性も向上することができる。
【0018】
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)は、例えば、前記式(2)又は式(3)で示される構造を有するジグリシジルエーテル(s1)と2級アミン(s2)との反応物であるアミノ基含有ポリオール(a1-1)を含むポリオール(a1)、及び、ポリイソシアネート(a2)の反応物を用いることができる。
【0019】
前記式(2)で示される構造を有するジグリシジルエーテルとしては、例えば、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールAP型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールB型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールBP型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールE型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールC型ジグリシジルエーテル等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐久性が得られる点から、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテルが好ましい。
【0020】
前記式(3)で示される構造を有するジグリシジルエーテルとしては、例えば、下記式(3-1)で示される化合物、式(3-2)で示される化合物等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐久性が得られる点から、下記式(3-1)で示される化合物が好ましい。
【0021】
【0022】
【0023】
前記2級アミン(s2)としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、ジ-n-ペプチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジイソオクチルアミン、ジノニルアミン、ジイソノニルアミン、ジ-n-デシルアミン、ジ-n-ウンデシルアミン、ジ-n-ドデシルアミン、ジ-n-ペンタデシルアミン、ジ-n-オクタデシルアミン、ジ-n-ノナデシルアミン、ジ-n-エイコシルアミン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐久性、水分散安定性が得られる点から、炭素原子数が2~18の範囲の脂肪族アミンが好ましく、炭素原子数3~8の範囲の脂肪族アミンがより好ましい。
【0024】
前記アミノ基含有ポリオール(a1-1)の製造方法は、例えば、前記ジグリシジルエーテル(s1)と前記2級アミン(s2)とを、エポキシ基1当量に対して、NH基1当量となるように配合し、無触媒で、常温下又は加熱下で開環付加反応させることが挙げられる。前記反応は、必要に応じて有機溶剤の下で行ってもよく、また例えば、60~120℃の範囲で、30分~14時間行うことが挙げられる。
【0025】
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル溶剤;ベンゼン、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド等のアミド溶剤などを用いることができる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記アミノ基含有ポリオール(a1-1)の使用量としては、より一層優れた耐久性が得られる点から、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)の合計質量中0.1~30質量%の範囲が好ましく、1~15質量%の範囲が好ましい。
【0027】
前記ポリオール(a1)は、前記アミノ基含有ポリオール(a1-1)を必須成分として含有するが、必要に応じて、その他のポリオールを含有してもよい。前記ポリオール(a1)中における前記アミノ基含有ポリオール(a1-1)の含有量としては、より一層優れた耐久性が得られる点から、0.2~50質量%の範囲が好ましく、0.5~30質量%の範囲が好ましい。
【0028】
前記その他のポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中での、より一層優れた耐候性が得られる点から、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0029】
前記その他のポリオールの数平均分子量としては、より一層優れた耐久性が得られる点から、500~10,000の範囲が好ましく、700~5,000の範囲がより好ましい。なお、前記その他のポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0030】
前記アミノ基含有ポリオール(a1-1)は、より一層優れた水分散安定性を得るうえで、有する3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和し、又は、4級化剤で4級化することが好ましい。
【0031】
前記酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、アジピン酸等の有機酸;スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸;塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、亜リン酸、フッ酸等の無機酸などを用いることができる。これらの酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記4級化剤としては、例えば、ジメチル隆さん、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸;メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、ベンジルブロマイド、メチルヨーダイド、エチルヨーダイド、ベンジルヨーダイド等のハロゲン化アルキル化合物;メタンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸メチル等のスルホン酸メチル化合物;エチレンオキシド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記酸又は4級化剤の使用量としては、例えば、前記アミノ基含有ポリオール(a1-1)の3級アミノ基1当量に対して、0.1~3当量の範囲が挙げられる。
【0034】
前記ポリイソシアネート(a2)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独でも用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記ポリイソシアネート(a2)の使用量としては、より一層優れた耐久性が得られる点から、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)の合計質量中5~60質量%の範囲が好ましく、10~45質量%の範囲が好ましい。
【0036】
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、前記アミノ基含有ポリオール(a1-1)、その他のポリオール、及び、前記ポリイソシアネート(a2)を一括に容器に仕込み、有機溶剤中又は無溶剤下で反応させてポリウレタン樹脂を得、更に、ポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全部を酸で中和し、及び/又は、前記4級化剤で4級化した後、水(B)を投入して水分散させる方法などが挙げられる。
【0037】
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量としては、より一層優れた耐久性、及び、水分散安定性が得られる点から、4,000~300,000の範囲が好ましく、7,000~200,000の範囲がより好ましい。なお、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0038】
前記水(B)としては、例えば、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。これらの水は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記水(B)の含有率としては、例えば、35~90質量%の範囲である。
【0039】
本発明のカチオン性ウレタン樹脂組成物は、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)と前記水(B)とを含有するものであるが、必要に応じて、その他の添加剤を含有していてもよい。
【0040】
前記その他の添加剤としては、例えば、中和剤、乳化剤、架橋剤、増粘剤、ウレタン化触媒、充填剤、発泡剤、顔料、染料、撥油剤、中空発泡体、難燃剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0041】
以上、本発明のカチオン性ウレタン樹脂組成物は、耐久性に優れるポリウレタン皮膜を付与することができる。また、本発明のカチオン性ウレタン樹脂組成物は、水中での分散性、及び、長期保存時の安定性に優れるものである。よって、本発明のカチオン性ウレタン樹脂組成物は、建材や家電用の鋼板、プラスチックフィルムやプラスチック成型品、インクジェット印刷用被記録材の受理剤、ガラス繊維用集束剤の製造に特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0043】
[合成例1]アミノ基含有ポリオール(a1-1-1)の合成
攪拌機、還流冷却器、温度計、及び、滴下装置を備えた四つ口フラスコに、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル56質量部を仕込んだ後、フラスコ内を窒素置換した。次いで、前記フラスコ内の温度が70℃になるまで加熱した後、滴下装置を使用してジ-n-ブチルアミン44質量部を30分間滴下し、終了後、90℃で10時間反応させることで、アミノ基含有ポリオール(a1-1-1)を得た。
【0044】
[合成例2]アミノ基含有ポリオール(a1-1-2)の合成
ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル56質量部に代え、式(3-1)で示される化合物56質量部を用いた以外は、合成例1と同様にしてアミノ基含有ポリオール(a1-1-2)を得た。
【0045】
[比較合成例1]アミノ基含有ポリオール(aR1)の合成
攪拌機、還流冷却器、温度計、及び、滴下装置を備えた四つ口フラスコに、ポリプロピレンングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量;201g/当量)590質量部を仕込んだ後、フラスコ内を窒素置換した。次いで、前記フラスコ内の温度が70℃になるまで加熱した後、滴下装置を使用してジ-n-ブチルアミン380質量部を30分間滴下し、終了後、90℃で10時間反応させることで、アミノ基含有ポリオール(aR1)を得た。
【0046】
[実施例1]
温度計、攪拌装置、還流冷却管、及び滴下装置を備えた4つ口フラスコに、ポリカーボネートポリオール(日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン980R」)を30.6質量部、MEK18.7質量部を加え、50℃まで冷却しながら攪拌した。攪拌後、4,4‘-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート8.7質量部、オクチル酸第一錫0.01質量部を加え、70℃で2時間反応させた。
その後、合成例1で得られたアミノ基含有ポリオール(a1-1-1)3.1質量部を添加し、4時間反応させた。その後、アミノエチルエタノールアミン0.85質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。
次いで、MEKを10.6質量部、酢酸を0.75質量部添加し、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水85質量部添加し、水分散体を調製した。これを減圧留去し、不揮発分が35質量%のカチオン性ウレタン樹脂組成物(1)を得た。
【0047】
[実施例2]
合成例1で得られたアミノ基含有ポリオール(a1-1-1)3.1質量部を、合成例2で得られたアミノ基含有ポリオール(a1-1-2)3.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、カチオン性ウレタン樹脂組成物(2)を得た。
【0048】
[比較例1]
合成例1で得られたアミノ基含有ポリオール(a1-1-)3.1質量部を、比較合成例1で得られたアミノ基含有ポリオール(aR1)3.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、カチオン性ウレタン樹脂組成物(R1)を得た。
【0049】
[数平均分子量・重量平均分子量の測定方法]
ポリオールの数平均分子量、カチオン性ウレタン樹脂の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。
【0050】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0051】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0052】
[耐久性の評価方法]
(1)伸長応力の評価
離型紙上に乾燥後の膜厚が150μmとなるように、実施例及び比較例で得られたカチオン性ウレタン樹脂組成物を塗工し、23℃湿度65%で1日乾燥後に150℃で5分間乾燥させることで、ポリウレタン皮膜を得た。離型紙から剥離し、5mm幅に裁断したものを試験片とした。この試験片を、株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」を使用して、300mm/minで引張り、100%引張時、200%引張時、300%引張時の伸長応力(MPa)を測定した。なお、伸長応力が高い値であるほど良好な耐久性を示す。
【0053】
(2)耐熱変色性の評価
離型紙上に乾燥後の膜厚が150μmとなるように、実施例及び比較例で得られたカチオン性ウレタン樹脂組成物を塗工し、23℃湿度65%で1日乾燥後に150℃で5分間乾燥させることで、ポリウレタン皮膜を得た。離型紙から剥離した試験片を、200℃で1時間加熱し、加熱前後の色差ΔEをコニカミノルタ株式会社製「CM-5」を使用して測定した。なお、ΔEが低い値であるほど良好な耐久性を示す。
【0054】
【0055】
本発明のカチオン性ウレタン樹脂組成物は、実施例1及び2の通り、耐久性に優れるポリウレタン皮膜が得られることが分かった。
【0056】
一方、比較例1は、本発明で規定する以外のカチオン性ウレタン樹脂組成物を用いた態様であるが、耐久性が不十分であった。