IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特許7658480共重合体、粘着剤組成物、粘着テープ及び共重合体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】共重合体、粘着剤組成物、粘着テープ及び共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20250401BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20250401BHJP
   C09J 131/04 20060101ALI20250401BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20250401BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J133/02
C09J131/04
C09J7/38
C08F220/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024029081
(22)【出願日】2024-02-28
【審査請求日】2024-03-21
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 未来
(72)【発明者】
【氏名】奥原 健太
(72)【発明者】
【氏名】江夏 寛人
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-231325(JP,A)
【文献】特表2009-529089(JP,A)
【文献】国際公開第2021/249660(WO,A1)
【文献】特表2016-524020(JP,A)
【文献】国際公開第2023/148332(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/007325(WO,A1)
【文献】特開2000-119617(JP,A)
【文献】特開2002-105421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化重合によって得られる共重合体と、水性媒体とを含む粘着剤組成物であって、
前記共重合体は、
アルキル(メタ)アクリレートに由来する第1構造単位と、
カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物に由来する第2構造単位と、
ビニルエステル化合物に由来する構造単位と、
を有し、
前記第1構造単位は、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含み、
前記第1構造単位として含まれる構造単位のうち、2-オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は45~70質量%である、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記共重合体は、前記第2構造単位の含有率が1.0~10質量%である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記第1構造単位は、メチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、n-ブチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートに由来する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記共重合体が、前記水性媒体中に粒子として分散し、エマルションを形成している、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記水性媒体中に分散している粒子の平均粒子径は、10~50000nmである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
基材と、該基材の表面に形成された粘着層と、を備え、
前記粘着層が、請求項1に記載の粘着剤組成物を用いて形成されたものである、粘着テープ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物における共重合体を製造する方法であって、
アルキル(メタ)アクリレートと、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物とを含むモノマーを、乳化重合する工程を有し、
前記アルキル(メタ)アクリレートは、2-オクチル(メタ)アクリレートを含む、共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記モノマー中の2-オクチル(メタ)アクリレートの含有率は20~90質量%である、請求項7に記載の共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、共重合体、粘着剤組成物、粘着テープ及び共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤の代表的な用途として粘着テープがある。粘着テープは、通常、基材上に、粘着剤を含む層、すなわち粘着層が形成されている。粘着テープは、例えば、各種物品を修復するために、または、物品同士を固定するために、物品に貼付される。また、基材両面に粘着層が形成された両面型の粘着テープは、自動車等の輸送機器、冷蔵庫等の家電製品、ノートパソコン等のモバイル端末、及び壁紙等の建築用途等幅広い用途で用いられている。これらの工業用途では、非常に接着しづらい被着体への接着、厳しい環境条件下での接着信頼性、及び少ない面積での接着など、より厳しい要求性能を求められる。
【0003】
粘着テープの代表的な製法としては、粘着剤を液媒体中に溶解または分散させた塗工液を基材上に塗布し、乾燥させることにより、基材表面に粘着層を形成する方法が挙げられる。粘着剤としては、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系等が広く使用されており、特に、アクリル系は様々な機能性を付与できるという点に大きな特徴がある。液媒体としては、環境負荷等を考慮して、近年は水を用いることが、多く検討されている。
【0004】
特許文献1には、2-オクチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸コポリマー及び所望により架橋剤を含む感圧性接着剤組成物が記載されている。
【0005】
特許文献2には、アクリル酸1-メチルアルキルエステルの単独重合体または共重合体を含む樹脂組成物が記載されている。
【0006】
特許文献3には、少なくとも一部がヒマシ油由来の2-オクチル(メタ)アクリレートと、反応開始剤と、安定剤と、の反応生成物を含む接着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2011-516690号公報
【文献】特開平10-231325号公報
【文献】特開2014-077141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の接着剤組成物では、重合中に凝固を起こし、エマルションを得られていない。特許文献2のアクリル系共重合体及び特許文献3の接着剤は、いずれも、高温環境下での粘着力に改善の余地があり、さらに、高温環境下での保持力にも改善の余地がある。
【0009】
本開示は、耐熱性に優れ、強い粘着力を発揮する粘着層を形成可能な共重合体、該共重合体を用いた粘着剤組成物及び粘着テープ、並びに該共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1] 乳化重合によって得られる共重合体であって、アルキル(メタ)アクリレートに由来する第1構造単位と、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物に由来する第2構造単位と、を有し、前記第1構造単位は、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含む、共重合体。
[2] 前記第1構造単位として含まれる構造単位のうち、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は20~100質量%である、[1]に記載の共重合体。
[3] 前記第1構造単位として含まれる構造単位のうち、2-オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は20~100質量%である、[2]に記載の共重合体。
[4] 前記第2構造単位の含有率は1.0~10質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の共重合体。
[5] 前記第1構造単位は、メチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、n-ブチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートに由来する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の共重合体。
[6] さらに、ビニルエステル化合物に由来する構造単位を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の共重合体。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の共重合体及び水性媒体を含む、粘着剤組成物。
[8] 前記共重合体が、前記水性媒体中に粒子として分散し、エマルションを形成している、[7]に記載の粘着剤組成物。
[9] 前記水性媒体中に分散している粒子の平均粒子径は、10~50000nmである、[8]に記載の粘着剤組成物。
[10] 基材と、該基材の表面に形成された粘着層と、を備え、前記粘着層が、[7]又は[8]に記載の粘着剤組成物を用いて形成されたものである、粘着テープ。
[11] [1]~[6]のいずれか記載の共重合体を製造する方法であって、アルキル(メタ)アクリレートと、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物とを含むモノマーを、乳化重合する工程を有し、前記アルキル(メタ)アクリレートは、オクチル(メタ)アクリレートを含む、共重合体の製造方法。
[12] 前記アルキル(メタ)アクリレートは、2-オクチル(メタ)アクリレートを含む、[11]に記載の共重合体の製造方法。
[13] 前記モノマー中のオクチル(メタ)アクリレートの含有率は20~90質量%である、[11]又は[12]に記載の共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、耐熱性に優れ、強い粘着力を発揮する粘着層を形成可能な共重合体、該共重合体を用いた粘着剤組成物及び粘着テープ、並びに該共重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明において、特に断りがなければ、表面は「ひょうめん」を意味する。
【0013】
「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
【0014】
「エチレン性不飽和化合物」とは、エチレン性不飽和結合を有する化合物を意味する。「エチレン性不飽和結合」とは、特に断りがない限り、ラジカル重合性を有するエチレン性不飽和結合を指す。
【0015】
エチレン性不飽和化合物の重合体において、あるエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位は、そのエチレン性不飽和化合物のエチレン性不飽和結合以外の部分の化学構造と、重合体におけるその構造単位のエチレン性不飽和結合に対応する部分以外の部分の化学構造とが同じである、という対応関係を有する。例えば、アクリル酸由来の構造単位は、重合体において-CHCH(COOH)-で表される構造を有している。
【0016】
以下の説明において、ある構造単位の由来となる化合物は、その構造単位との間で上記関係にある化合物を言い、実際の製造工程で用いた化合物と一致する必要はない。重合後にエチレン性不飽和結合に対応する鎖以外の部分を化学反応させる等、モノマーの化学構造と重合体の化学構造とで対応しない場合は、重合後の化学構造を基準とする。例えば、酢酸ビニルを重合した後、けん化した場合においては、重合体の化学構造を基準に考えて、重合体の構造単位を、酢酸ビニル由来の構造単位ではなく、ビニルアルコール由来の構造単位とする。
【0017】
カルボキシ基のようなイオン性の官能基を有する構造単位については、特に断りがなければ、その官能基の一部が、イオン交換されていても、またはイオン交換されていなくても、同じイオン性化合物に由来する構造単位とする。例えば、-CHC(CH)(COONa)-で表される構造単位も、特に断りがなければ、メタクリル酸に由来する構造単位とする。
【0018】
「カルボキシ基の塩」とは、カルボキシ基が塩を形成している構造を意味し、例えば、-COONa、-COOK、-COONH等が挙げられる。
【0019】
「分散液」とは、液体に溶解せずに液体中で粒子として分散している固体が存在する固液混合物である。
「スラリー」とは、液体中に粘土、顔料等の固体粒子が懸濁している流動体を意味する。
【0020】
以下の説明において、「粘着力」とは、粘着面を被着体から剥がすために必要な力を意味する。また、以下の説明において、「保持力」とは、粘着テープ等の、粘着面に平行な方向への静荷重に対して前記粘着面を構成する粘着層がズレに耐える力である。
【0021】
<1.共重合体>
本実施形態の共重合体(以下「共重合体(A)」ともいう)は、乳化重合によって得られる。共重合体(A)は、アルキル(メタ)アクリレートに由来する第1構造単位と、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物に由来する第2構造単位と、を有する。共重合体(A)は、第1構造単位及び第2構造単位に加えて、第1構造単位及び第2構造単位のいずれにも該当しないその他の構造を有してもよい。その他の構造の詳細については後述する。
【0022】
(1-1.第1構造単位)
第1構造単位は、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含む。第1構造単位は、n-オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び2-オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくともいずれかを含むことが好ましく、2-オクチルアクリレートに由来する構造単位及び2-オクチルメタクリレートに由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくともいずれかを含むことがより好ましく、2-オクチルアクリレートに由来する構造単位を含むことがさらに好ましい。
【0023】
第1構造単位として含まれる構造単位のうち、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましい。共重合体(A)を含む粘着剤組成物から得られる粘着層の、高温環境下での粘着力が向上するためである。
【0024】
第1構造単位として含まれる構造単位のうち、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、100質量%であってもよいが、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
【0025】
第1構造単位として含まれる構造単位のうち、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、20~100質量%であってもよく、20~90質量%であってもよく、40~80質量%であってもよく、45~70質量%であってもよい。
【0026】
第1構造単位として含まれる構造単位のうち、2-オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましい。共重合体(A)を含む粘着剤組成物から得られる粘着層の、高温環境下での粘着力が向上するためである。
【0027】
第1構造単位として含まれる構造単位のうち、2-オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、100質量%であってもよいが、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
【0028】
第1構造単位として含まれる構造単位のうち、2-オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、20~100質量%であってもよく、20~90質量%であってもよく、40~80質量%であってもよく、45~70質量%であってもよい。
【0029】
第1構造単位は、オクチル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位をさらに含んでもよい。第1構造単位の由来となる、オクチル(メタ)アクリレート以外の化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。第1構造単位の由来となる、オクチル(メタ)アクリレート以外の化合物は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0030】
第1構造単位は、メチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、n-ブチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートに由来する構造単位のうち少なくともいずれかをさらに含むことが好ましく、メチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位をさらに含み、かつn-ブチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートに由来する構造単位のうち少なくともいずれかをさらに含むことがより好ましい。
【0031】
第1構造単位の構造は、共重合体(A)のガラス転移点Tgに応じて設計することが好ましいが、限定はされない。共重合体(A)のガラス転移点Tgの求め方及び好ましい範囲については後述する。第1構造単位に含まれるアルキル基は、直鎖構造を有していてもよく、分岐構造を有していてもよい。ここで、第1構造単位に含まれるアルキル基は、第1構造単位を構成するアルキル(メタ)アクリレートにおける(メタ)アクリロイルオキシ基に結合したアルキル基と同じ構造である。
【0032】
第1構造単位に含まれるアルキル基の炭素数は、1以上であってもよく、2以上であってもよく、4以上であってもよく、6以上であってもよい。また、第1構造単位に含まれるアルキル基の炭素数は、20以下であってもよく、15以下であってもよく、10以下であってもよい。
第1構造単位に含まれるアルキル基の炭素数は、1~20であってもよく、2~15であってもよく、4~10であってもよく、6~10であってもよい。
【0033】
(1-2.第2構造単位)
第2構造単位は、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位である。第2構造単位に含まれるカルボキシ基またはカルボキシ基の塩の数は特に限定されず、1個でもよく、2個以上でもよい。
第2構造単位の由来となる化合物としては、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。第2構造単位の由来となる化合物は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0034】
第2構造単位は、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種と、アクリロイル基とを有する化合物に由来する構造単位を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を含むことがより好ましい。
第2構造単位として含まれる構造単位のうち、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。
【0035】
(1-3.その他の構造)
共重合体(A)が有し得るその他の構造としては、第1構造単位及び第2構造単位のいずれにも該当しないその他の構造単位(以下、単に「その他の構造単位」ともいう);重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端構造;などが挙げられる。
【0036】
〔その他の構造単位〕
その他の構造単位の由来となる化合物としては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル、蟻酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジオレフィン化合物;1,1,1-トリメチルアミンメタクリルイミド等のアミンイミド基含有ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン等のアルコキシシリル基含有ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のエポキシ基含有ビニル化合物;ダイアセトンアクリルアミド、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、エチルビニルケトン、n-プロピルビニルケトン、イソプロピルビニルケトン、n-ブチルビニルケトン、t-ブチルビニルケトン等のカルボニル基を有するエチレン性不飽和化合物;1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート等のラジカル重合性を有する光安定剤;重合性界面活性剤;などが挙げられる。その他の構造単位の由来となる化合物は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0037】
共重合体(A)が、上記その他の構造単位を有する場合、ビニルエステル化合物に由来する構造単位を有することが好ましく、酢酸エチルに由来する構造単位を有することがより好ましい。
【0038】
共重合体(A)が、ビニルエステル化合物に由来する構造単位を有する場合、共重合体(A)中の、ビニルエステル化合物に由来する構造単位の含有率は、1.0質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上であることがより好ましく、4.0質量%以上であることがさらに好ましい。共重合体(A)を含む粘着剤の常温での粘着力が向上するためである。
【0039】
共重合体(A)が、ビニルエステル化合物に由来する構造単位を有する場合、共重合体(A)中の、ビニルエステル化合物に由来する構造単位の含有率は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8.0質量%以下であることがさらに好ましい。共重合体(A)を含む粘着剤の常温での粘着力が向上するためである。
【0040】
共重合体(A)が、ビニルエステル化合物に由来する構造単位を有する場合、共重合体(A)中の、ビニルエステル化合物に由来する構造単位の含有率は、1.0~15質量%であってもよく、2.5~10質量%であってもよく、4.0~8.0質量%であってもよい。
【0041】
その他の構造単位の由来となる重合性界面活性剤は、エチレン性不飽和結合を有し、かつ界面活性剤としても機能する化合物である。重合性界面活性剤は、ノニオン性であってもよく、アニオン性であってもよく、カチオン性であってもよいが、アニオン性であることがより好ましい。アニオン性の重合性界面活性剤としては、エーテルサルフェート型、エーテルサルフェート型アンモニウム塩、リン酸エステル型等が挙げられ、これらの中でも、エーテルサルフェート型アンモニウム塩が好ましい。
【0042】
共重合体(A)が、重合性界面活性剤に由来する構造単位を有する場合、共重合体(A)中の、重合性界面活性剤に由来する構造単位の含有率は、0.10質量%以上であることが好ましく、0.30質量%以上であることがより好ましく、0.60質量%以上であることがさらに好ましい。共重合体(A)の分散安定性をより向上させるためである。
【0043】
共重合体(A)が、重合性界面活性剤に由来する構造単位を有する場合、共重合体(A)中の、重合性界面活性剤に由来する構造単位の含有率は、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがさらに好ましい。共重合体(A)の目的とする機能をより効果的に得るためである。
【0044】
共重合体(A)が、重合性界面活性剤に由来する構造単位を有する場合、共重合体(A)中の、重合性界面活性剤に由来する構造単位の含有率は、0.10~5.0質量%であってもよく、0.30~3.0質量%であってもよく、0.60~1.5質量%であってもよい。
【0045】
共重合体(A)は、さらに上記で例示した構造単位以外の構造単位を有してもよい。
【0046】
〔末端構造〕
共重合体(A)は、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端構造を有していてもよい。
共重合体(A)中に占める末端構造の含有量は、共重合体(A)に含まれる構造単位の合計量100質量部に対して0.50質量部以下であることが好ましい。共重合体(A)中に占める末端構造の含有量が、共重合体(A)に含まれる構造単位の合計量100質量部に対して0.50質量部以下である場合、各構造単位の含有率の算出にあたっては末端構造の存在は無視してもよい。
末端構造の由来となる重合開始剤及び連鎖移動剤の詳細については後述する。
【0047】
(1-4.共重合体(A)中の各構造単位の含有率)
共重合体(A)中の、第1構造単位の含有率は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。共重合体(A)のガラス転移点の上昇を抑制し、粘着層のタック性、濡れ性、更には密着力を向上させることができるためである。
【0048】
共重合体(A)中の、第1構造単位の含有率は、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることがさらに好ましい。共重合体(A)の極性及び粘着層の凝集力を適度に保ち、常温下だけではなく高温下及び低温下において高い粘着性を有する粘着層が得られるためである。
【0049】
共重合体(A)中の、第1構造単位の含有率は、60~99質量%であってもよく、70~98質量%であってもよく、80~97質量%であってもよい。
【0050】
共重合体(A)中の、第2構造単位の含有率は、1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましく、3.0質量%以上であることがさらに好ましい。共重合体(A)を含む粘着層の凝集力を向上させ、高温での保持力を高めることができるためである。
【0051】
共重合体(A)中の、第2構造単位の含有率は、10質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましい。共重合体(A)のガラス転移点の上昇を抑制し、粘着層のタック性、濡れ性、更には密着力を向上させることができるためである。
【0052】
共重合体(A)中の、第2構造単位の含有率は、1.0~10質量%であってもよく、2.0~7.0質量%であってもよく、3.0~5.0質量%であってもよい。
【0053】
共重合体(A)中の、第1構造単位及び第2構造単位の合計含有率は、65質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であってもよい。共重合体(A)のガラス転移点の上昇を抑制し、粘着層のタック性、濡れ性、更には密着力を向上させることができるためである。共重合体(A)中の、第1構造単位及び第2構造単位の合計含有率は、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよく、100質量%以下であってもよい。
【0054】
共重合体(A)中の、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。共重合体(A)を含む粘着剤組成物から得られる粘着層の、高温環境下での粘着力が向上するためである。
【0055】
共重合体(A)中の、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
【0056】
共重合体(A)中の、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、20~90質量%であってもよく、30~80質量%であってもよく、40~70質量%であってもよい。
【0057】
共重合体(A)中の、2-オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。共重合体(A)を含む粘着剤組成物から得られる粘着層の、高温環境下での粘着力が向上するためである。
【0058】
共重合体(A)中の、2-オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
【0059】
共重合体(A)中の、2-オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率は、20~90質量%であってもよく、30~80質量%であってもよく、40~70質量%であってもよい。
【0060】
(1-5.共重合体(A)のガラス転移点)
共重合体(A)のガラス転移点Tgは、共重合体(A)に含まれる各構造単位をホモポリマーとした場合のガラス転移点に基づいてフォックスの式により算出される。共重合体(A)のガラス転移点Tgの具体的な算出方法は、各構造単位Mi(i=1,2,3...,)のホモポリマーのガラス転移点Tgiと、共重合体(A)中の構造単位Miの質量分率Xi(ΣXi(全構造単位)=1)とから、フォックスの式1/Tg=Σ(Xi/Tgi)によって算出される。
【0061】
フォックスの式において、Tg及びTgiは、いずれも絶対温度(K)の値として計算される。ここで、0℃=273.15Kとして換算することにより、共重合体(A)のガラス転移点Tgをセルシウス温度として求めることができる。
【0062】
各ホモポリマーのガラス転移点Tgは、文献「Polymer Handbook(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)」に記載の数値である。当該文献に記載されていないホモポリマーのガラス転移点Tgは、示差走査熱量(DSC;Differential Scanning Calorimetry)装置(日立ハイテクサイエンス社製 EXSTAR DSC/SS7020)を用いて、昇温速度10℃/分、窒素ガス雰囲気下でDSC測定を行い、DSCの温度微分として得られるDDSCチャートのピークトップ温度である。
【0063】
共重合体(A)のガラス転移点Tgは、-80℃以上であることが好ましく、-65℃以上であることがより好ましく、-55℃以上であることがさらに好ましい。共重合体(A)を用いて形成される粘着剤の凝集力を向上させ、より優れた高温での保持力を粘着層に付与することができるためである。
【0064】
共重合体(A)のガラス転移点Tgは、30℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-20℃以下であることがさらに好ましく、-30℃以下であることがよりさらに好ましい。共重合体(A)を用いて形成される粘着剤組成物の濡れ性を向上させ、粘着層の基材への密着性を向上させることができるためである。また、共重合体(A)を用いて形成される粘着層の柔軟性を高めて、乾燥使用時の粘着層のタック性を向上させることができるためである。
【0065】
共重合体(A)のガラス転移点Tgは、-80~30℃であってもよく、-65~0℃であってもよく、-55~-20℃であってもよく、-55~-30℃であってもよい。
【0066】
<2.共重合体の製造方法>
本実施形態にかかる共重合体(A)の製造方法は、アルキル(メタ)アクリレートと、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物とを含むモノマー(以下、「共重合体(A)の原料モノマー」ともいう)を、乳化重合する工程を有し、前記アルキル(メタ)アクリレートは、オクチル(メタ)アクリレートを含む、共重合体の製造方法である。
【0067】
共重合体(A)を乳化重合で製造することで,高分子量の共重合体(A)を得ることができる。該高分子量の共重合体(A)は、粘着剤の凝集力を向上させ、より優れた高温での保持力を粘着層に付与することができる。また、乳化重合は、後述する通り、水性媒体中で行うことができるため、製造にあたっての環境負荷が少ない。
【0068】
(2-1:モノマー)
共重合体(A)の原料モノマーに含まれるアルキル(メタ)アクリレートと、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物としては、上記した本実施形態の共重合体(A)の第1構造単位の由来となるアルキル(メタ)アクリレート及び第2構造単位の由来となるカルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物と同様に説明され、好適な態様も同じである。
【0069】
(2-2:乳化重合する工程)
本実施形態の製造方法は、アルキル(メタ)アクリレートと、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物とを含むモノマーを、乳化重合する工程を有する。
【0070】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有率は60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。得られる共重合体(A)のガラス転移点の上昇を抑制し、粘着層のタック性、濡れ性、更には密着力を向上させることができるためである。
【0071】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることがさらに好ましい。得られる共重合体(A)の極性及び粘着層の凝集力を適度に保ち、常温下だけではなく高温下及び低温下において高い粘着性を有する粘着層が得られるためである。
【0072】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、60~99質量%であってもよく、70~98質量%であってもよく、80~97質量%であってもよい。
【0073】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中におけるカルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物の含有率は、1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましく、3.0質量%以上であることがさらに好ましい。得られる共重合体(A)を含む粘着層の凝集力を向上させ、高温での保持力を高めることができるためである。
【0074】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中におけるカルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物の含有率は、10質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましい。得られる共重合体(A)のガラス転移点の上昇を抑制し、粘着層のタック性、濡れ性、更には密着力を向上させることができるためである。
【0075】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中におけるカルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物の含有率は1.0~10質量%であってもよく、2.0~7.0質量%であってもよく、3.0~5.0質量%であってもよい。
【0076】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中におけるアルキル(メタ)アクリレートと、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物との合計含有率は、65質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましい。得られる共重合体(A)のガラス転移点の上昇を抑制し、粘着層のタック性、濡れ性、更には密着力をより向上させることができる。
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中におけるアルキル(メタ)アクリレートと、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物との合計含有率は、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよく、100質量%以下であってもよい。
【0077】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中におけるオクチル(メタ)アクリレートの含有率は20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。得られる共重合体(A)を含む粘着剤組成物から得られる粘着層の、高温環境下での粘着力が向上するためである。
【0078】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中におけるオクチル(メタ)アクリレートの含有率は90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
【0079】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中におけるオクチル(メタ)アクリレートの含有率は20~90質量%であってもよく、30~80質量%であってもよく、40~70質量%であってもよい。
【0080】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中における2-オクチル(メタ)アクリレートの含有率は20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。得られる共重合体(A)を含む粘着剤組成物から得られる粘着層の、高温環境下での粘着力が向上するためである。
【0081】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中における2-オクチル(メタ)アクリレートの含有率は90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
【0082】
共重合体(A)の原料モノマーの総量(100質量%)中における2-オクチル(メタ)アクリレートの含有率は20~90質量%であってもよく、30~80質量%であってもよく、40~70質量%であってもよい。
【0083】
乳化重合において、重合反応を促進するための重合開始剤、共重合体(A)の分子量及び分子量分布を適切な範囲に制御するための連鎖移動剤、モノマーを乳化させるための乳化剤等を用いてもよい。
共重合体(A)の原料モノマーは、予め反応器に全量を仕込んでもよく、均一な粒子を得る観点から、連続的または断続的に供給しながら重合してもよい。連続的または断続的に供給する原料モノマーは、共重合体(A)の原料モノマーの一部であってもよいし、全部であってもよい。重合温度は、特に限定されないが、5~100℃であることが好ましく、50~90℃であることがより好ましい。
【0084】
本実施形態の製造方法において、モノマーの乳化重合は、水性媒体中で行うことが好ましい。これにより、共重合体(A)が乳化粒子として水性媒体中に分散する共重合体含有液(共重合体分散液)、すなわち、エマルションが得られる。
水性媒体は、水、親水性の有機溶媒、またはこれらの混合物である。親水性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン等が挙げられる。重合安定性の観点から、水性媒体は水であることが好ましい。なお、重合安定性を損なわない限り、水性媒体として、水と親水性の溶媒との混合溶媒を用いてもよい。
【0085】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤;2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジ塩酸塩等の水溶性アゾ系開始剤;t-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物類;過酸化水素;などが挙げられる。重合開始剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、共重合体(A)の原料モノマーの総量100質量部に対して0.1~2.0質量部であることが好ましい。
【0086】
また、必要に応じて、重合開始剤と共に還元剤を使用できる。このような還元剤としては、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩等の還元性有機化合物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物;などが挙げられる。還元剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0087】
連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、2-メルカプトエタノール、β-メルカプトプロピオン酸、メチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。連鎖移動剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0088】
連鎖移動剤の使用量は、共重合体(A)の原料モノマーの総量100質量部に対して5.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがより好ましく、0.50質量部以下であることがさらに好ましく、0.30質量部以下であることがよりさらに好ましい。粘着剤の凝集力が向上して、粘着層の高温での保持力を向上させることができるためである。
連鎖移動剤の使用量は、モノマーの総量100質量部に対して、0.01質量部以上であってもよく、0.05質量部以上であってもよい。粘着層の粘着力を向上させることができるためである。
【0089】
乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤;セシルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリルピリジニウムクロリド等のカチオン性界面活性剤;ラウリルベダイン等の両性界面活性剤;上述の重合性界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
乳化剤の使用量は、特に限定されないが、モノマーの総量100質量部に対して、0.1~6.0質量部であることが好ましく、1.0~4.0質量部であることがより好ましい。
なお、共重合体(A)の各構造単位の含有率の算出にあたって、重合性界面活性剤は、共重合体(A)のモノマーに分類し、その存在を考慮するものとする。一方、重合性界面活性剤以外の乳化剤は、共重合体(A)のモノマーに分類せず、その存在を無視するものとする。
【0090】
<3.粘着剤組成物>
本実施形態にかかる粘着剤組成物は、本実施形態の共重合体(A)及び水性媒体(以下、「水性媒体(B)」ともいう)を含む。
本実施形態にかかる粘着剤組成物には、その他の添加剤等が含まれていてもよい。
本実施形態の粘着剤組成物の形態は、溶液、分散液(例えば、エマルション)、スラリー等が挙げられるが、これらに限られない。
【0091】
粘着剤組成物において、共重合体(A)は、水性媒体中に粒子として分散し、エマルションを形成していることが好ましい。
【0092】
(3-1.水性媒体(B))
水性媒体(B)は、水、親水性の有機溶媒、またはこれらの混合物である。親水性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、水性媒体(B)は水であることが好ましい。水性媒体(B)は、共重合体(A)の重合に用いた水性媒体と同一の組成でもよく、異なる組成でもよい。水性媒体(B)は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0093】
(3-2.その他の添加剤)
その他の添加剤としては、例えば、pH調整剤、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤、架橋剤等を適宜使用することができる。その他の添加剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0094】
粘着付与剤としては、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5留分/C9留分系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂等が挙げられる。粘着付与剤は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0095】
(3-3.粘着剤組成物の不揮発分濃度等)
粘着剤組成物の不揮発分濃度は、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。少ない粘着剤組成物の塗布量でより多くの粘着層を形成できるためである。また、塗布された粘着剤組成物の乾燥時間が短くなり、生産性がより向上するためである。
なお、粘着剤組成物の「不揮発分」は、直径5cmのアルミ皿に粘着剤組成物を1g秤量し、1気圧(1013hPa)で、乾燥器内で空気を循環させながら105℃で1時間乾燥させた後に残った成分である。また、粘着剤組成物の「不揮発分濃度」とは、乾燥前の粘着剤組成物の質量(1g)に対する、上記条件下で乾燥後の不揮発分の質量割合(質量%)である。
【0096】
粘着剤組成物の不揮発分濃度は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。粘着剤組成物中の共重合体(A)のゲル化をより効果的に抑制することができるためである。
【0097】
粘着剤組成物の不揮発分濃度は、20~90質量%であってもよく、40~80質量%であってもよく、60~75質量%であってもよい。
【0098】
粘着剤組成物の不揮発分中の共重合体(A)の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。共重合体(A)を含む粘着層の粘着力及び保持力、特に高温での保持力が向上するためである。
【0099】
粘着剤組成物の不揮発分中の共重合体(A)の含有率は、99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましい。共重合体(A)を含む粘着層の粘着力及び保持力、特に常温及び高温での粘着力が向上するためである。
【0100】
粘着剤組成物の不揮発分中の共重合体(A)の含有率は、50~99.5質量%であってもよく、60~99質量%であってもよく、70~99質量%であってもよい。
【0101】
〔3-4.粘着剤組成物中の粒子のサイズ〕
粘着剤組成物中の粒子は、水性媒体(B)中に分散している粒子である。粘着剤組成物中の粒子の平均粒子径はNANOTRAC WAVE II(MicrotracBEL社製)によって測定した値である。水性媒体中に分散している水性樹脂組成物の平均粒子径は、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることがさらに好ましく、200nm以上であることがよりさらに好ましい。水性媒体(B)中で粒子がより安定に分散することができるためである。
【0102】
粘着剤組成物中の粒子の平均粒子径は、50000nm以下であることが好ましく、10000nm以下であることがより好ましく、1000nm以下であることがさらに好ましく、500nm以下であることがよりさらに好ましく、350nm以下であることが特に好ましい。粘着剤組成物から得られる粘着層の緻密性を高めて、乾燥使用時の粘着層の耐熱性を向上させることができるためである。
【0103】
粘着剤組成物中の粒子の平均粒子径は、10~50000nmであってもよく、50~10000nmであってもよく、100~1000nmであってもよく、100~500nmであってもよく、200~350nmであってもよい。
【0104】
(3-5.粘着剤組成物の製造方法)
本実施形態の粘着剤組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、共重合体(A)を含む乳化粒子、及び水を含有するエマルションに対して、必要に応じて使用される上記その他の添加剤を添加し、混合する方法が挙げられる。その他の添加剤を添加するタイミングは特に限定されない。
【0105】
<3-6.粘着剤組成物の適用製品>
本実施形態の粘着剤組成物は、特に制限されないが、例えば、粘着テープ、粘着シート、粘着ラベル、ステッカー、液状粘着剤等に用いることができる。
【0106】
<4.粘着層及び粘着テープ>
本実施形態の粘着層は、本実施形態の粘着剤組成物を用いて形成される粘着層である。
本実施形態の粘着層は、例えば、本実施形態の粘着剤組成物を基材に塗布し、乾燥、及び必要に応じて架橋反応させることで、基材上に形成される。
本実施形態の粘着剤組成物を基材に塗布した後の乾燥条件は特に限定されないが、例えば、80~110℃で1~5分間乾燥する条件が好ましい。また、乾燥後、必要に応じて、20~50℃で1日以上静置してもよい。
粘着層の不揮発分濃度は、95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。
粘着層の厚さは、特に限定されないが、5~200μmであってもよく、10~100μmであってもよく、20~50μmであってもよい。
【0107】
本実施形態の粘着テープは、基材と、該基材の表面に形成された粘着層と、を備え、前記粘着層が、本実施形態の粘着剤組成物を用いて形成されたものである。
粘着層は基材の一方の面のみに形成されていてもよく、両方の面に形成されていてもよい。
基材としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルム;織布;不織布;金属箔;などが挙げられる。
粘着テープは、基材及び粘着層以外にも、発明の効果を損なわない範囲で他の層(例えば、中間層、下塗り層等)を備えてもいてもよい。また、粘着テープは、粘着層が、離型紙、離形PET等の公知の剥離ライナーにより保護されていてもよい。
本実施形態の粘着テープは、上記した本実施形態の粘着層の製造方法と同様に説明される。
【0108】
<5.粘着剤組成物、粘着層及び粘着テープの用途>
本実施形態の粘着剤組成物、粘着層及び粘着テープは、各種物品の包装、接合、固定、保護、装飾、搬送等の種々の用途及び分野で利用され得る。さらに、本実施形態の粘着剤組成物、粘着層及び粘着テープを設ける対象物(被着体)の材質も特に制限されず、例えば、プラスチック、金属、ガラス、木材、セラミックス、紙、布等を挙げることができ、広範囲に適用され得る。
【実施例
【0109】
以下、本実施形態の実施例及び比較例について説明する。ただし、本実施形態は本実施例に限定されるものではない。
【0110】
<1.共重合体及び粘着剤組成物の調製>
(実施例1)
水中で乳化重合することによって、具体的には以下のように共重合体(A)を合成した。
【0111】
撹拌機、温度計及び還流凝縮器を備えた重合装置中で、イオン交換水23質量部を、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した。重合装置内のイオン交換水を撹拌しながら80℃に保ち、重合開始剤として5.0質量%過硫酸カリウム水溶液2.0質量部を添加して、重合開始剤を含む混合液を得た。
【0112】
イオン交換水20質量部と、乳化剤として表1における量の「アデカリアソープSR-10」(商品名、株式会社ADEKA製、エーテルサルフェート型アンモニウム塩、重合性界面活性剤)及び「ラテムルE-118B」(商品名、花王株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム)と、表1における種類及び量のモノマー及び連鎖移動剤と、を含むモノマー乳化液を、上記重合装置内の重合開始剤を含む混合液に4時間かけて滴下した。モノマー乳化液の滴下開始と同時に、2.5質量%過硫酸カリウム水溶液20質量部を4時間かけて滴下した。なお、モノマー乳化液を滴下中、重合装置内の混合液を毎分120回転で撹拌し、液温は80℃に維持した。滴下終了後、撹拌を続けたまま80℃で1時間反応させた。
【0113】
その後、重合装置内の混合液を25℃まで冷却した。中和剤としてアンモニア水を添加しpHを7.0に調整して、共重合体(A)を含む乳化粒子、及び水を含有するエマルションを得た。
【0114】
得られたエマルション100質量部に対して、増粘剤として「アデカノールUH-420」(商品名、株式会社ADEKA製、ノニオン系増粘剤)を2.0質量部添加し、粘着剤組成物を得た。
【0115】
(実施例2~4)
モノマー及び連鎖移動剤の配合を、表1に記載の配合としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~4の共重合体及び粘着剤組成物を得た。
【0116】
(比較例1~2)
モノマー及び連鎖移動剤の配合を、表1に記載の配合としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1~2の共重合体及び粘着剤組成物を得た。
【0117】
(比較例3)
比較例3では、共重合体を溶液重合プロセスによってトルエン中で調製した。具体的には、トルエン120質量部と、表1における種類及び量のモノマー及び連鎖移動剤と、を含む混合溶液を、撹拌機、温度計、及び還流凝縮器を備えた重合装置中で、窒素雰囲気下で70℃まで昇温した。重合装置内の混合溶液を撹拌しながら70℃に保ち、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル1.0質量部を添加した。混合溶液を撹拌しながら70℃で5時間反応させた後、重合装置内の混合溶液を25℃まで冷却して、共重合体を得た。なお、上記反応中及び反応後において、モノマー及び生成物である共重合体は溶媒に均一に溶解した状態であった。
その後の工程は実施例1と同様にして比較例3の粘着剤組成物を得た。
【0118】
(比較例4)
比較例4では、共重合体を懸濁重合プロセスによって水中で調製した。具体的には、撹拌機、温度計及び還流凝縮器を備えた重合装置中で、イオン交換水80質量部と、乳化剤として表1における量の「アデカリアソープSR-10」(商品名、株式会社ADEKA製、エーテルサルフェート型アンモニウム塩、重合性界面活性剤)及び「ラテムルE-118B」(商品名、花王株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム)と、表1に記載の配合のモノマー及び連鎖移動剤を合計100質量部と、を含む混合溶液を、毎分350回転で30分間混合して、約50μmのモノマー液滴径を得た。窒素雰囲気下で70℃まで昇温し、重合装置内の混合溶液を撹拌しながら70℃に保ち、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を添加した。重合装置内の混合溶液を撹拌しながら70℃で5時間反応させた後、重合装置内の混合液を25℃まで冷却して、比較例4の共重合体及び粘着剤組成物を得た。
【0119】
(比較例5)
モノマー及び連鎖移動剤の配合を、表1に記載の配合としたこと以外は比較例4と同様にしたところ、反応中に凝集塊が発生して、粘着剤組成物は得られなかった。
【0120】
<2.粘着剤組成物の不揮発分濃度の測定>
直径5cmのアルミ皿に粘着剤組成物を1g秤量し、1気圧(1013hPa)で、乾燥器内で空気を循環させながら105℃で1時間乾燥させた後に残った不揮発分の質量を測定した。乾燥前の粘着剤組成物の質量(1g)に対する、上記条件下で乾燥後の不揮発分の質量割合を粘着剤組成物の不揮発分濃度(質量%)として求めた。
【0121】
<3.粘着テープの作製>
実施例1~4及び比較例1~4で得られた粘着剤組成物をPETフィルム(A4サイズ、厚さ50μm)に塗布した。アプリケーターは塗布幅15cmのドクターブレードを使用した。塗布された粘着剤組成物を100℃で2分間乾燥し、粘着剤組成物から水性媒体を除去して、PETフィルム上に厚さが30μmの粘着層を形成した。PETフィルム上の粘着層の上に離型紙の離型面(シリコーン塗布面)を貼り合わせた後、23℃で1日間養生し、基材と、基材上に形成された粘着層とを備え、粘着層に離型紙が貼り合わされた粘着テープを得た。
【0122】
<4.粘着テープの評価>
各実施例及び比較例において作製した粘着テープについて、以下の評価1~3を行った。
なお、以下の説明において、各実施例及び比較例における操作は特に断りがなければ共通する。
【0123】
〔4-1.評価1:常温下での粘着力(常温粘着力)の測定〕
テープ幅25mm、長さ100mmに切り出した粘着テープの離型紙を長手方向に半分剥がして切り取り、SUS#304板に貼り合わせ、評価用サンプルを作製した。
貼り合わせは、23℃の雰囲気下で2kgローラーを1往復させることにより行った。評価用サンプル作製時における貼り合わせ時の雰囲気温度を以下、貼付温度という。(評価1における貼付温度:23℃)
評価用サンプルにおける、粘着テープとSUS#304板とを貼り合わせた部分は25mm×50mmの長方形とした。粘着テープの貼り合わせ部分の端部はいずれもSUS#304板の端部とは重ならないようにした。すなわち、この状態で、粘着テープの長手方向の一端側の半分はSUS#304板と貼り合わせられており、他端側の半分は離型紙が貼り合わせられている。
【0124】
評価用サンプルを作製後、温度23℃の雰囲気下で30分間静置した。評価用サンプル作製後における静置時の雰囲気温度を以下、静置温度という。(評価1における静置温度:23℃)
その後、以下の手順の測定を、温度23℃の雰囲気下で行った。評価用サンプルの測定温度を以下、測定温度という。(評価1における測定温度:23℃)
【0125】
試験はいわゆる180°剥離試験である。評価用サンプルの粘着テープを、SUS#304板に貼り付けられている部分と貼り付けられていない部分の境を折り返し線として180°折り返した。粘着テープのSUS#304板が貼り付けられていない方(折り返された方)の一端を試験機(テンシロンRTG-1210(エー・アンド・デイ社製))の上側のチャックで掴んだ。折り返し線を挟んで上側のチャックと対向するSUS#304板の一端を下側のチャックで掴んだ。
【0126】
その状態で、SUS#304板から粘着テープを300mm/minの速度で引き剥がし、剥離長さ(mm)-剥離力(N)のグラフを得た。得られたグラフにおいて剥離長さ25~50mmにおける剥離力の平均値(N)(剥離長さ25~50mmにおけるグラフの面積を剥離長さで割った値)を算出し、この数値を常温粘着力(N/25mm)とした。
【0127】
〔4-2.評価2:高温環境下での粘着力(高温粘着力)の測定〕
静置温度を70℃、測定温度を70℃とした以外は、前記「評価1」と同様の手順で、高温環境下での粘着力(N/25mm)を測定した。
【0128】
〔4-3.評価3:高温保持力の測定〕
テープ幅25mm、長さ100mmに切り出した粘着テープの離型紙を長手方向の一端から25mm剥がして、離型紙が剥がされた部分をすべてカバーするようにSUS板(SUS#304)を貼り合わせ、評価用サンプルを作製した。すなわち、評価用サンプルにおいて、粘着テープとSUS板とが貼り合わせられている範囲は25mm×25mmの正方形となる。貼り合わせは、23℃の雰囲気下で2kgローラーを1往復させることにより行った。また、この際、粘着テープの、SUS板に貼り合わせられている一端の延長上の、粘着テープが貼り合わせられていないSUS板のみの部分をSUS板側チャック部として設けた。
【0129】
評価用サンプルを、80℃の恒温槽に30分間静置した。その後、80℃の恒温槽内で、評価用サンプルのSUS板側チャック部をチャックで掴み、粘着テープのSUS板が貼り合わせられていない方の長手方向の一端に1kgのウエイトを吊り下げ、該ウエイトが落下するまでにかかった時間(h)を測定した。試験は24時間後まで行い、24時間経過時点でウエイトが落下していないものは、表1中「24<」と記載した。
【0130】
<5.評価結果>
評価1~3の評価結果は表1に示すとおりである。
表1における粘着剤組成物中の粒子の平均粒子径はNANOTRAC WAVE II(MicrotracBEL社製)によって測定した値である。
【0131】
【表1】
【0132】
表1に示される通り、本実施形態のオクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含む共重合体(A)を用いた実施例1~4にかかる粘着テープでは、常温下だけではなく高温下においても強い粘着力を発揮し、更に高温下における高い保持力をも有する粘着層が形成されていることがわかる。
【0133】
一方、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含んでいない共重合体を用いた粘着剤組成物から作製された比較例1及び比較例2にかかる粘着テープでは、各粘着力及び高温保持力のうち少なくともいずれかが十分ではない。
【0134】
これらのことから、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含んでいない共重合体においては、本実施形態の目的は達成できないことがわかる。
【0135】
また、溶液重合で製造された共重合体を用いた粘着剤組成物を用いて作製された比較例3にかかる粘着テープでは、高温粘着力が十分ではない。
また、懸濁重合で製造された共重合体を用いた粘着剤組成物を用いて作製された比較例4にかかる粘着テープでは、各粘着力及び高温保持力が十分ではない。
【0136】
これらのことから、共重合体を乳化重合以外の方法で製造した構成においては、本実施形態の目的は達成できないことがわかる。
【0137】
以上の通り、本実施形態によれば、常温下だけではなく高温下においても強い粘着力を発揮し、更に高温下における高い保持力をも有する粘着層が形成可能な共重合体及び粘着剤組成物を提供することができる。
さらに、本実施形態によれば、常温下だけではなく高温下においても強い粘着力を発揮し、更に高温下における高い保持力をも有する粘着層及び該粘着層を備える粘着テープを提供することができる。
【要約】
【課題】耐熱性に優れ、強い粘着力を発揮する粘着層を形成可能な共重合体、該共重合体を用いた粘着剤組成物及び粘着テープ、並びに該共重合体の製造方法の提供。
【解決手段】乳化重合によって得られる共重合体であって、アルキル(メタ)アクリレートに由来する第1構造単位と、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するエチレン性不飽和化合物に由来する第2構造単位と、を有し、前記第1構造単位は、オクチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含む、共重合体。
【選択図】なし