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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系ゴム
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/02 20060101AFI20250401BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250401BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
C08G81/02
B60C1/00 A
C08K3/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019548128
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2018036454
(87)【国際公開番号】W WO2019073829
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2017199794
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 崇
(72)【発明者】
【氏名】藤井 まな
(72)【発明者】
【氏名】▲はま▼ 久勝
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】岸 智之
【審判官】小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第15/152039号(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/46392(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/47451(WO,A1)
【文献】特開2011-225809号公報(JP,A)
【文献】特開2012-197406号公報(JP,A)
【文献】特開2014-193983号公報(JP,A)
【文献】特開2018-119104号公報(JP,A)
【文献】特開2018-119105号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G81, C08F, C08C19, C08L, C08K, B60C1/00
CA,REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性溶媒中で、重合開始剤および第三級アミンの存在下、共役ジエン化合物と、芳香族ビニル単量体と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とを含む単量体を共重合することで、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程と、
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シロキサン化合物を反応させる工程とを備える変性共役ジエン系ゴムの製造方法であって、
前記シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であり、
前記シロキサン化合物が、下記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンであり、
前記第三級アミンの使用量が、前記重合開始剤1モルに対して、0.01~10モルであり、
前記シロキサン化合物の使用量が、前記重合開始剤1モルに対して、シロキサン化合物に含まれる-Si-O-繰り返し単位換算で、0.5~12.5モルであり、
前記変性共役ジエン系ゴムを構成する重合体鎖中における、前記シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物に由来の単量体単位の含有割合が0.05~1重量%である変性共役ジエン系ゴムの製造方法。
【化9】
(上記一般式(3)中、Xは、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基を表し、X10、X11およびX12は、それぞれ独立して、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)
【化10】
(上記一般式(2)中、R ~R は、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X およびX は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X は、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、X が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。X は、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、X が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは1~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは1以上である。)
【請求項2】
前記重合開始剤として、有機アルカリ金属化合物を第2級アミンと反応させてなる有機アルカリ金属アミド化合物を用いる請求項に記載の変性共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法により変性共役ジエン系ゴムを得た後、得られた変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカとを混合する、ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
架橋剤をさらに混合する、請求項に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法によりゴム組成物を得た後、得られたゴム組成物を架橋する、ゴム架橋物の製造方法。
【請求項6】
請求項に記載の方法によりゴム架橋物を得た後、得られたゴム架橋物を用いてタイヤを製造する、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン系ゴムに関し、より詳しくは、ゴム組成物とした場合におけるロールに対する付着が有効に抑制されており、かつ、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れたゴム架橋物を与えることができる、変性共役ジエン系ゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用のタイヤには、環境問題および資源問題から低燃費性が強く求められる一方で、安全性の面から優れたウエットグリップ性が求められている。ゴムに対し、充填剤としてシリカを配合したゴム組成物の架橋物は、カーボンブラックを配合したゴム組成物の架橋物に比べて、低発熱性に優れるため、タイヤを構成した場合の転がり抵抗が小さくなる。そのため、シリカを配合したゴム組成物からなるゴム架橋物を用いてタイヤを構成することにより、低燃費性に優れたタイヤを得ることができる。
【0003】
このようなゴム組成物を構成するゴムにおいて、ゴムとシリカとの親和性を高めるために、種々の試みが行われている。たとえば、特許文献1には、溶液重合法によりゴム重合体を得る際に、特定の重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物に加えてケイ素含有ビニル化合物を含む単量体成分を重合させることで、これにより、ゴム自体にシリカとの親和性を持たせる技術が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/018424号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、近年の自動車用タイヤに対する要求性能の高まりを鑑みると、今後新しく開発されるタイヤには、特許文献1に記載されたゴムなど従来のゴムを用いた場合と比べ、低発熱性およびウエットグリップ性により一層優れたゴム架橋物を与えることができるものが求められている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ゴム組成物とした場合におけるロールに対する付着が有効に抑制されており、かつ、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れたゴム架橋物を与えることができる、変性共役ジエン系ゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、共役ジエン単量体単位と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単量体単位とを含む重合体鎖の少なくとも一方の末端に、シロキサン化合物による変性構造を導入してなる変性共役ジエン系ゴムにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、共役ジエン単量体単位と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単量体単位とを含む重合体鎖の少なくとも一方の末端に、シロキサン化合物による変性構造を備える変性共役ジエン系ゴムが提供される。
本発明の変性共役ジエン系ゴムにおいて、前記シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単量体単位が、下記一般式(1)で表される単位であることが好ましい。
【化1】
(上記一般式(1)中、Xは、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基を表し、X、XおよびXは、それぞれ独立して、水酸基、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)
本発明の変性共役ジエン系ゴムにおいて、前記シロキサン化合物が、下記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
【化2】
(上記一般式(2)中、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは1~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは1以上である。)
【0009】
本発明によれば、不活性溶媒中で、共役ジエン化合物と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とを含む単量体を重合することで、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程と、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シロキサン化合物を反応させる工程とを備える変性共役ジエン系ゴムの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記いずれかの変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカとを含有するゴム組成物が提供される。
本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明によれば、上記ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物、および該ゴム架橋物を含んでなるタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ゴム組成物とした場合におけるロールに対する付着が有効に抑制されており、かつ、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れたゴム架橋物を与えることができる、変性共役ジエン系ゴムを提供することができる。また、本発明によれば、このような変性共役ジエン系ゴムを製造するための方法、ならびに、このような変性共役ジエン系ゴムを用いたゴム組成物、ゴム架橋物およびタイヤも提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<変性共役ジエン系ゴム>
本発明の変性共役ジエン系ゴムは、共役ジエン単量体単位と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単量体単位とを含む重合体鎖の少なくとも一方の末端に、シロキサン化合物による変性構造を備えるものである。
【0014】
このような本発明の変性共役ジエン系ゴムによれば、ゴム組成物とした場合におけるロールに対する付着が有効に抑制されており、かつ、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れたゴム架橋物を与えることができるものである。
特に、本発明者等が、近年の自動車用タイヤに対する要求性能の高まりを鑑み、低発熱性およびウエットグリップ性をより一層高めることについて鋭意検討を行ったところ、共役ジエン化合物に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物を共重合するとともに、重合体鎖の少なくとも一方の末端に、シロキサン化合物による変性構造を導入することにより、シリカなどの充填剤に対する親和性をより一層高めることができ、これにより、低発熱性およびウエットグリップ性をより一層向上させることができること、さらには、低発熱性およびウエットグリップ性のみならず、操縦安定性にも優れたものとすることができることを見出したものである。特に、操縦安定性は、シリカなどの充填剤による補強性を十分に発揮させることにより高めることができるところ、上記構成を採用することにより、シリカなどの充填剤による補強性を十分に発揮させることができることによると考えられる。
【0015】
さらに、上記に加えて、本発明者等が検討したところ、上記構成を備える本発明の変性共役ジエン系ゴムは、シリカなどの充填剤等を配合してゴム組成物とした際に、該ゴム組成物をロールを用いてシート形状等に加工した場合等において、ロールに対する付着が有効に抑制されたものとすることができるという、低発熱性およびウエットグリップ性の向上とは全く異なる、予想外の効果をも有していることをも見出したものである。特に、ゴム組成物を、ロールを用いてシート形状等に加工する場合において、ロールに対する付着を有効に抑制できることにより、より優れた加工性をも実現できるものである。
【0016】
共役ジエン単量体単位を形成するための共役ジエン化合物としては、特に限定されないが、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエンなどを挙げることができる。これらのなかでも、1,3-ブタジエンおよびイソプレンが好ましい。これらの共役ジエン化合物は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0017】
本発明の変性共役ジエン系ゴムを構成する重合体鎖中における、共役ジエン単量体単位の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは50~99.99重量%、より好ましくは55~94.98重量%、さらに好ましくは60~89.95重量%、特に好ましくは65~84.90重量%である。共役ジエン単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、変性共役ジエン系ゴムの製造が容易になる。
【0018】
シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単量体単位を形成するための、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物としては、シリカに対して相互作用可能な官能基と、ビニル基を含有する化合物であればよく、特に限定されない。ここで、シリカに対して相互作用可能な官能基とは、該官能基とシリカ表面との間で共有結合を形成するか、または、共有結合よりも弱い分子間力(たとえば、イオン-双極子相互作用、双極子-双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等)を形成することが可能な官能基である。このようなシリカに対して相互作用可能な官能基としては、特に限定されないが、窒素原子含有官能基、ケイ素原子含有官能基、酸素原子含有官能基などが挙げられ、これらの中でも、シリカとの相互作用が高いという観点より、ケイ素原子含有官能基が好ましい。すなわち、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物としては、ケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物を用いることが好ましく、ケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物を用いることで、変性共役ジエン系ゴムに、ケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の単量体単位を導入することができる。
【0019】
このように、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単量体単位としては、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物に由来の単量体単位であればよく特に限定されないが、低発熱性およびウエットグリップ性をより高めることができるという点より、ケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の単量体単位であることが好ましく、下記一般式(1)で表される単位であることがさらに好ましい。
【化3】
上記一般式(1)中、Xは、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基を表し、X、XおよびXは、それぞれ独立して、水酸基、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。
【0020】
上記一般式(1)で表される単位は、たとえば、下記一般式(3)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物を用いることで形成することができる。
【化4】
上記一般式(3)中、Xは、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基を表し、X10、X11およびX12は、それぞれ独立して、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。
【0021】
なお、上記一般式(1)で表される単位において、Xは、上記一般式(3)で表される化合物中のXに対応し、上記一般式(1)で表される単位において、X、XおよびXは、上記一般式(3)で表される化合物中のX10、X11およびX12にそれぞれ対応する。そのため、上記一般式(1)で表される単位において、X、X、XおよびXは、上記一般式(3)で表される化合物中のX、X10、X11およびX12と同じとすることができる。また、上記一般式(3)で表される化合物として、X10、X11およびX12のうち少なくとも一つが、置換アミノ基、またはヒドロカルビルオキシ基であるものを用いた場合には、置換アミノ基、またはヒドロカルビルオキシ基が、任意の工程およびタイミングにおいて加水分解されることで、X10、X11およびX12のうち少なくとも一つを、水酸基とすることができる。
【0022】
上記一般式(3)中、Xは、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基であり、好ましくは、化学的な単結合である。ヒドロカルビレン基としては、アルキレン基、アルケンジイル基、アリーレン基、または、アリーレン基とアルキレン基とが結合した基などが挙げられる。
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基などが挙げられる。アルケンジイル基としては、ビニレン基、エチレン-1,1-ジイル基などが挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基などが挙げられる。アリーレン基とアルキレン基とが結合した基としては、フェニレン基とメチレン基とが結合した基、フェニレン基とエチレン基とが結合した基などが挙げられる。Xがヒドロカルビレン基である場合には、Xは、アリーレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。
【0023】
上記一般式(3)中、X10、X11およびX12は、それぞれ独立して、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。X10、X11およびX12のうち、少なくとも1つが置換アミノ基であることが好ましく、X10、X11およびX12のうち、2つが置換アミノ基であることがより好ましい。
【0024】
10、X11およびX12を構成し得る置換アミノ基としては、下記一般式(4)で表される基が好適である。
【化5】
上記一般式(4)中、RおよびR10は、互いに結合していても、あるいは、結合していなくてもよく、RおよびR10が互いに結合していない場合には、RおよびR10は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、または、トリヒドロカルビルシリル基を表し、RとR10とが互いに結合している場合には、RおよびR10は、窒素原子および/または酸素原子を含有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。
【0025】
およびR10を構成し得るヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基などの鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基;フェニル基、ベンジル基、ナフチル基などのアリール基;などが挙げられる。これらの中でも、鎖状アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
およびR10を構成し得るヒドロカルビル基が、置換基を有する場合には、置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビル基などが挙げられ、置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基などのアルコキシアルキル基;フェノキシメチル基などのアリールオキシアルキル基;などが挙げられる。
【0026】
およびR10を構成し得るトリヒドロカルビルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基などが挙げられる。
【0027】
とR10とが互いに結合している場合において、RおよびR10を構成し得るヒドロカルビレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、2,2,4-トリメチルへキサン-1,6-ジイル基などのアルキレン基;ペンタン-2-エン-1,5-ジイル基などのアルケンジイル基;などが挙げられる。また、RおよびR10を構成し得るヒドロカルビレン基が、窒素原子および/または酸素原子を含有する場合には、窒素原子および/または酸素原子を含有するヒドロカルビレン基としては、-CH=N-CH=CH-で表される基、-CH=N-CH-CH-で表される基、-CH-CH-O-CH-CH-で表される基などが挙げられる。
およびR10は、アルキル基であるか、あるいは、RとR10とは互いに結合してアルキレン基となっていることが好ましく、RおよびR10は、アルキル基であることがより好ましく、RおよびR10は、メチル基またはエチル基であることがさらに好ましい。
【0028】
上記一般式(4)中、RおよびR10がヒドロカルビル基である場合における、上記一般式(4)で表される基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ-sec-ブチルアミノ基、ジ-tert-ブチルアミノ基などのジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基などのジアリールアミノ基;などが挙げられる。これらの中でも、ジアルキルアミノ基が好ましく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基がより好ましい。
【0029】
上記一般式(4)中、RおよびR10が、置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビル基である場合における、上記一般式(4)で表される基の具体例としては、ジ(メトキシメチル)アミノ基、ジ(エトキシメチル)アミノ基などのジ(アルコキシアルキル)アミノ基などが挙げられる。
【0030】
上記一般式(4)中、RおよびR10が、トリヒドロカルビルシリル基である場合における、上記一般式(4)で表される基の具体例としては、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アミノ基、N-トリメチルシリル-N-メチルアミノ基などのトリアルキルシリル基含有アミノ基などが挙げられる。
【0031】
上記一般式(4)中、RとR10とが互いに結合して、ヒドロカルビレン基となっている場合における、上記一般式(4)で表される基の具体例としては、1-トリメチレンイミノ基、1-ピロリジノ基、1-ピペリジノ基、1-ヘキサメチレンイミノ基、1-ヘプタメチレンイミノ基、1-オクタメチレンイミノ基、1-デカメチレンイミノ基、1-ドデカメチレンイミノ基などの1-アルキレンイミノ基などが挙げられる。
【0032】
上記一般式(4)中、RとR10とが互いに結合して、窒素原子および/または酸素原子を含有するヒドロカルビレン基となっている場合における、上記一般式(4)で表される基の具体例としては、1-イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1-イミダゾリル基、モルホリノ基などが挙げられる。
【0033】
上記一般式(4)で表される基としては、ジアルキルアミノ基、1-アルキレンイミノ基が好ましく、ジアルキルアミノ基がより好ましく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基がさらに好ましい。
【0034】
上記一般式(3)中、X10、X11およびX12を構成し得るヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;などが挙げられる。
【0035】
上記一般式(3)中、X10、X11およびX12を構成し得るヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などのアルキル基;フェニル基、4-メチル-1-フェニル基、ベンジル基などのアリール基;などが挙げられる。
10、X11およびX12を構成し得るヒドロカルビル基が、置換基を有する場合には、置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビル基などが挙げられ、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基などが挙げられる。
【0036】
上記一般式(3)中、Xが化学的な単結合であり、X10、X11およびX12のうち、1つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(3)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、(ジメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジエチルビニルシランなどの(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルシラン;[ビス(トリメチルシリル)アミノ]ジメチルビニルシラン、[ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノ]ジメチルビニルシラン、[ビス(トリメチルシリル)アミノ]ジエチルビニルシラン、[ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノ]ジエチルビニルシランなどの[ビス(トリアルキルシリル)アミノ]ジアルキルビニルシラン;(ジメチルアミノ)ジ(メトキシメチル)ビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジ(メトキシエチル)ビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジ(エトキシメチル)ビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジ(エトキシエチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(メトキシメチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(メトキシエチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(エトキシメチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(エトキシエチル)ビニルシランなどの(ジアルキルアミノ)ジ(アルコキシアルキル)ビニルシラン;ピロリジノジメチルビニルシラン、ピペリジノジメチルビニルシラン、ヘキサメチレンイミノジメチルビニルシラン、4,5-ジヒドロイミダゾリルジメチルビニルシラン、モルホリノジメチルビニルシランなどの環状アミノジアルキルビニルシラン化合物;などが挙げられる。
【0037】
上記一般式(3)中、Xがヒドロカルビレン基であり、X10、X11およびX12のうち、1つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(3)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、(ジメチルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジメチルアミノ)ジメチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジメチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-ブチルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-ブチルアミノ)ジメチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジエチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジエチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-ブチルアミノ)ジエチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-ブチルアミノ)ジエチル-3-ビニルフェニルシランなどの(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルフェニルシランなどが挙げられる。
【0038】
上記一般式(3)中、Xが化学的な単結合であり、X10、X11およびX12のうち、2つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(3)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)エチルビニルシランなどのビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルシラン;ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]メチルビニルシラン、ビス[ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アミノ]メチルビニルシラン、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]エチルビニルシラン、ビス[ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アミノ]エチルビニルシランなどのビス[ビス(トリアルキルシリル)アミノ]アルキルビニルシラン;ビス(ジメチルアミノ)メトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メトキシエチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシエチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メトキシメチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メトキシエチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシエチルビニルシランなどのビス(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキルシラン;ビス(ピロリジノ)メチルビニルシラン、ビス(ピペリジノ)メチルビニルシラン、ビス(ヘキサメチレンイミノ)メチルビニルシラン、ビス(4,5-ジヒドロイミダゾリル)メチルビニルシラン、ビス(モルホリノ)メチルビニルシランなどのビス(環状アミノ)アルキルビニルシラン化合物;などが挙げられる。
【0039】
上記一般式(3)中、Xがヒドロカルビレン基であり、X10、X11およびX12のうち、2つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(3)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、ビス(ジメチルアミノ)メチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)メチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)メチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)メチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)メチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)エチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)エチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)エチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)エチル-3-ビニルフェニルシランなどのビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルフェニルシランなどが挙げられる。
【0040】
上記一般式(3)中、Xが化学的な単結合であり、X10、X11およびX12のうち、3つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(3)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、トリス(ジメチルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジ-n-プロピルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジ-n-ブチルアミノ)ビニルシランなどのトリス(ジアルキルアミノ)ビニルシランなどが挙げられる。
【0041】
上記一般式(3)中、Xがヒドロカルビレン基であり、X10、X11およびX12のうち、3つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(3)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、トリス(ジメチルアミノ)-4-ビニルフェニルシラン、トリス(ジメチルアミノ)-3-ビニルフェニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)-4-ビニルフェニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)-3-ビニルフェニルシラン、トリス(ジ-n-プロピルアミノ)-4-ビニルフェニルシラン、トリス(ジ-n-プロピルアミノ)-3-ビニルフェニルシラン、トリス(ジ-n-ブチルアミノ)-4-ビニルフェニルシラン、トリス(ジ-n-ブチルアミノ)-3-ビニルフェニルシランなどのトリス(ジアルキルアミノ)ビニルフェニルシランなどが挙げられる。
【0042】
上記一般式(3)中、Xが化学的な単結合であり、X10、X11およびX12のうち、いずれも置換アミノ基でない場合における、上記一般式(3)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリプロポキシビニルシランなどのトリアルコキシビニルシラン;メチルジメトキシビニルシラン、メチルジエトキシビニルシランなどのジアルコキシアルキルビニルシラン;ジ(tert-ペントキシ)フェニルビニルシラン、ジ(tert-ブトキシ)フェニルビニルシランなどのジアルコキシアリールビニルシラン;ジメチルメトキシビニルシランなどのモノアルコキシジアルキルビニルシラン;tert-ブトキシジフェニルビニルシラン、tert-ペントキシジフェニルビニルシランなどのモノアルコキシジアリールビニルシラン;tert-ブトキシメチルフェニルビニルシラン、tert-ブトキシエチルフェニルビニルシランなどのモノアルコキシアルキルアリールビニルシラン;トリス(β-メトキシエトキシ)ビニルシランなどの置換アルコキシビニルシラン化合物;などが挙げられる。
【0043】
上記一般式(3)で表される化合物のなかでも、Xが化学的な単結合であるものが好ましく、Xが化学的な単結合であり、かつ、X10、X11およびX12のうち、2つが置換アミノ基である化合物がより好ましく、Xが化学的な単結合であり、かつ、X10、X11およびX12のうち、2つがジアルキルアミノ基である化合物が特に好ましい。
【0044】
上記一般式(3)で表される化合物の中でも、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)メチルビニルシランが好ましく、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシランが特に好ましい。
【0045】
また、上記一般式(3)で表される化合物以外の、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物としては、4-N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノスチレン、3-N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノスチレンなどのビス(トリアルキルシリル)アミノスチレン;4-ビス(トリメチルシリル)アミノメチルスチレン、3-ビス(トリメチルシリル)アミノメチルスチレン、4-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレン、3-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレンなどのビス(トリアルキルシリル)アミノアルキルスチレン;ピロリジノエチルスチレンなどが挙げられ、なかでも、ピロリジノエチルスチレンが好ましい。なお、ピロリジノエチルスチレンとしては、オルト体、メタ体、パラ体のいずれであってもよいが、メタ体、パラ体が好ましく、メタ体とパラ体との混合物であることがより好ましい。
【0046】
本発明の変性共役ジエン系ゴムを構成する重合体鎖中における、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単量体単位の含有割合は、好ましくは0.01~20重量%、より好ましくは0.02~2重量%、さらに好ましくは0.05~1重量%、特に好ましくは0.1~0.8重量%である。シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単量体単位の含有割合をこのような範囲とすることにより、ロールに対する付着の抑制効果、ならびに低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性の向上効果をより顕著なものとすることできる。
【0047】
また、本発明の変性共役ジエン系ゴムは、ゴム架橋物とした場合における、低発熱性およびウエットグリップ性をさらに高めることができるという観点より、共役ジエン単量体単位、および、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単量体単位に加えて、芳香族ビニル単量体単位をも含有するものであることが好ましい。
【0048】
芳香族ビニル単量体単位を形成するための芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、クロルスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、ジエチルアミノメチルスチレン、ジエチルアミノエチルスチレン、シアノエチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
【0049】
本発明の変性共役ジエン系ゴムを構成する重合体鎖中における、芳香族ビニル単量体単位の含有割合は、好ましくは49.99重量%以下、より好ましくは5~44.98重量%、さらに好ましくは10~39.95重量%、特に好ましくは15~34.90重量%である。芳香族ビニル単量体単位の含有割合をこのような範囲とすることにより、低発熱性およびウエットグリップ性の向上効果をより高めることができる。
【0050】
また、本発明の変性共役ジエン系ゴムは、共役ジエン単量体単位、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単量体単位、および芳香族ビニル単量体単位以外のその他の単量体単位を含有していてもよい。このようなその他の単量体単位を構成するその他の化合物としては、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの鎖状オレフィン化合物;シクロペンテン、2-ノルボルネンなどの環状オレフィン化合物;1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン化合物;などが挙げられる。本発明の変性共役ジエン系ゴムを構成する重合体鎖中における、その他の単量体単位の含有割合は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0051】
本発明の変性共役ジエン系ゴムは、上記した各単量体の単位を含有する重合体鎖の少なくとも一方の末端に、シロキサン化合物による変性構造を導入してなるものである。なお、シロキサン化合物による変性構造は、その他の変性剤による変性構造を介して導入されていてもよい。
【0052】
シロキサン化合物としては、シロキサン構造(-Si-O-)を主鎖として有するものであればよく、特に限定されないが、側鎖に有機基を有するオルガノシロキサンが好ましく、下記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンがより好ましい。
【化6】
上記一般式(2)中、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは1~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは1以上である。
【0053】
上記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、上記一般式(2)中のR~R、XおよびXを構成し得る炭素数1~6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、たとえば、フェニル基およびメチルフェニル基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0054】
また、上記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、XおよびXを構成し得る炭素数1~5のアルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基およびブトキシ基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
【0055】
さらに、上記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、XおよびXを構成し得るエポキシ基を含有する炭素数4~12の基としては、たとえば、下記一般式(5)で表される基が挙げられる。
-Z-Z-E (5)
上記一般式(5)中、Zは、炭素数1~10のアルキレン基、またはアルキルアリーレン基であり、Zはメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2~10の炭化水素基である。
【0056】
上記一般式(5)で表される基としては、Zが酸素原子であるものが好ましく、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Zが炭素数1~3のアルキレン基であり、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
【0057】
また、上記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、XおよびXとしては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基、または、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。また、Xとしては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基が好ましい。さらに、XおよびXが炭素数1~6のアルキル基であり、Xがエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であることがより好ましい。
【0058】
また、上記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、すなわち2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、下記一般式(6)で表される基が好ましい。
【化7】
上記一般式(6)中、tは2~20の整数であり、X13は炭素数2~10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R11は水素原子またはメチル基であり、X14は炭素数1~10のアルコキシ基またはアリールオキシ基である。これらの中でも、tが2~8の整数であり、X13が炭素数3のアルキレン基であり、R11が水素原子であり、かつ、X14がメトキシ基であるものが好ましい。
【0059】
上記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは1~200の整数、好ましくは20~150の整数、より好ましくは30~120の整数である。mが1~200であると、上記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造がより容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いもより容易となる。
【0060】
また、上記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0~200の整数、好ましくは0~150の整数、より好ましくは0~120の整数である。kは0~200の整数、好ましくは0~150の整数、より好ましくは0~130の整数である。m、nおよびkの合計数は1以上であり、1~400であることが好ましく、20~300であることがより好ましく、30~250であることが特に好ましい。m、nおよびkの合計数が1以上であると、上記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンと活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖との反応が進行し易く、更に、m、nおよびkの合計数が400以下であると、上記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造が容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いも容易となる。
【0061】
本発明の変性共役ジエン系ゴムの製造方法は、特に限定されないが、たとえば、不活性溶媒中で、共役ジエン化合物と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とを含む単量体を重合することで、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程と、
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シロキサン化合物を反応させる工程とを経る製造方法が挙げられる。
【0062】
重合に用いる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであり、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。不活性溶媒の具体例としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-へキセン、2-へキセン、n-ヘプタンなどの鎖状または分岐状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物などが挙げられる。これらの不活性溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不活性溶媒の使用量は、特に限定されないが、単量体濃度が、たとえば1~50重量%となる量であり、好ましくは5~40重量%となる量である。
【0063】
重合に用いる重合開始剤としては、共役ジエン化合物と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とを含む単量体を重合させて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、およびランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤を挙げることができる。有機アルカリ金属化合物としては、たとえば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルフェニルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、へキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリス(リチオメチル)ベンゼン、sec-ブチルリチウムとジイソプロペニルベンゼンとの反応物、n-ブチルリチウムと1,3-ブタジエンとジビニルベンゼンとの反応物、n-ブチルリチウムとポリアセチレン化合物との反応物などの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;有機ルビジウム化合物;有機セシウム化合物などが挙げられる。その他にも、リチウム、ナトリウム及びカリウム等のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、アミド等が挙げられる。また、他の有機金属化合物と併用してもよい。さらに、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている公知の有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
【0064】
また、有機アルカリ土類金属化合物としては、たとえば、ジ-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ-t-ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ-t-ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、ジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、たとえば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく用いられ、有機モノリチウム化合物がより好ましく用いられ、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点からn-ブチルリチウムが特に好ましく用いられる。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この有機アルカリ金属アミド化合物としては、特に限定されないが、たとえば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ-2-エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド及びリチウムメチルフェネチルアミドなどが挙げられる。
【0065】
重合開始剤の使用量は、目的とする共役ジエン系重合体鎖の分子量に応じて決定すればよいが、単量体1000g当り、通常1~50ミリモル、好ましくは1.5~20ミリモル、より好ましくは2~15ミリモルの範囲である。
【0066】
重合温度は、通常-80~+150℃、好ましくは0~100℃、より好ましくは30~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などのいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させる場合は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。また、共役ジエン系重合体鎖における各単量体の結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。これらの中でも、ランダム状が好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。
【0067】
また、共役ジエン化合物を含む単量体を重合するにあたり、得られる共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、不活性有機溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、たとえば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパンなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.001~100モル、より好ましくは0.01~10モルである。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0068】
重合により得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、好ましくは1~90重量%、より好ましくは3~85重量%、特に好ましくは5~80重量%である。共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を低発熱性により優れたものとすることができる。
【0069】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、50,000~1,000,000が好ましく、100,000~800,000がより好ましく、150,000~700,000が特に好ましい。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を、ウエットグリップ性と低発熱性とのバランスが良好なものとすることができる。
【0070】
また、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布も、特に限定されないが、好ましくは1.0~3.0であり、より好ましくは1.0~2.5である。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、変性共役ジエン系ゴムの製造が容易となる。
【0071】
次いで、共役ジエン化合物と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とを含む単量体を重合することにより得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シロキサン化合物を反応させることで、共役ジエン系重合体鎖の末端に、シロキサン化合物による変性構造を導入する。
【0072】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物とを反応させる際における、シロキサン化合物の使用量は、重合反応に使用した重合開始剤1モルに対して、シロキサン化合物に含まれる-Si-O-繰り返し単位換算で、好ましくは0.25~25モル、より好ましくは0.5~12.5モルである。シロキサン化合物の使用量が上記範囲内にあると、得られるゴム架橋物の低発熱性をより高めることができる。
【0073】
シロキサン化合物と活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とを反応させる方法は、特に限定されないが、これらを、それぞれが溶解可能な溶媒中で、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した重合反応において用いる不活性溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得るための重合に用いた重合溶液に、シロキサン化合物を添加する方法が簡便であり好ましい。さらに、この際においては、シロキサン化合物は、不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましく、その溶液濃度は、1~50重量%の範囲とすることが好ましい。反応温度は、特に限定されないが、通常0~120℃であり、反応時間も特に限定されないが、通常1分~1時間である。
【0074】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、シロキサン化合物を添加する時期は特に限定されないが、重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が、100ppm以上、より好ましくは300~50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液にシロキサン化合物を添加することが望ましい。シロキサン化合物の添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と重合系中に含まれる不純物などとの副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。なお、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、シロキサン化合物を添加し、混合した後に、さらに、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルフェニルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、へキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物などの有機金属化合物を混合してもよく、これにより、得られるゴム組成物の加工性を高めることができる(コンパウンド・ムーニーを低く抑えることができる。)。
【0075】
このようにして、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シロキサン化合物を反応させることで、少なくとも一部の共役ジエン系重合体鎖の末端に、シロキサン化合物による変性構造を導入することができる。反応後の共役ジエン系重合体鎖は、重合体鎖末端に、シロキサン化合物による変性構造が導入されたものであるが、これ以外にも、シロキサン化合物による変性構造が導入されていない未変性の共役ジエン系重合体鎖を含むものであってもよい。
【0076】
また、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させる前の状態のとき、あるいは、シロキサン化合物を反応させた後において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖が残存している状態のときに、本発明の効果を阻害しない範囲で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端の一部を、従来から通常使用されているカップリング剤やその他の変性剤などを重合系内に添加して、カップリングや変性を行ってもよい。このときに用いるその他の変性剤としては、特に限定されないが、シロキサン化合物以外のケイ素原子を含有する化合物や、窒素原子を含有する化合物などが挙げられる。
【0077】
そして、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させた後は、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルコールまたは水などの、重合停止剤を添加して未反応の活性末端を失活させることが好ましい。
【0078】
共役ジエン系重合体鎖の活性末端を失活させた後、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤、クラム化剤、およびスケール防止剤などを反応溶液に添加し、その後、直接乾燥またはスチームストリッピングなどにより反応溶液から重合溶媒を分離して、変性共役ジエン系ゴムを回収する。なお、反応溶液から重合溶媒を分離する前に、重合溶液に伸展油を混合し、変性共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収してもよい。
【0079】
変性共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収する場合に用いる伸展油としては、たとえば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、変性共役ジエン系ゴム100重量部に対して、好ましくは5~100重量部、より好ましくは10~60重量部、さらに好ましくは20~50重量部である。
【0080】
本発明の変性共役ジエン系ゴムのカップリング率は、特に限定されないが、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、また、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。カップリング率が上記範囲であると、得られるゴム架橋物の機械的強度および耐摩耗性を良好にバランスさせることができる。なお、カップリング率は、シロキサン化合物、ならびに、必要に応じて用いられるカップリング剤やその他の変性剤と反応させる前の活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖のピークトップ分子量の1.8倍以上の分子量を有する重合体分子の、最終的に得られた変性共役ジエン系ゴムの全量に対する重量分率であり、このときの分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めるものとする。
【0081】
また、本発明の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値で、好ましくは50,000~5,000,000、より好ましくは75,000~3,000,000、特に好ましくは100,000~1,000,000である。変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、このような変性共役ジエン系ゴムを含むゴム組成物へのシリカの配合が容易となり、ゴム組成物の加工性をより高めることができ、さらには、得られるゴム架橋物の低発熱性をより高めることができる。
【0082】
本発明の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.1~3.0であることが好ましく、1.2~2.5であることがより好ましく、1.2~2.2であることが特に好ましい。変性共役ジエン系ゴムの分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。
【0083】
また、本発明の変性共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは20~100、より好ましくは30~90、特に好ましくは35~80である。なお、変性共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
【0084】
また、本発明の変性共役ジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、好ましくは20℃~-110℃であり、より好ましくは10℃~-70℃である。本発明の変性共役ジエン系ゴムのガラス転移温度は、たとえば、変性共役ジエン系ゴム中の芳香族ビニル単量体単位含有量、および変性共役ジエン単量体単位部分におけるビニル結合含有量を調節することによって、適宜調節することができる。
【0085】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分に対して、シリカを含有してなる組成物である。
【0086】
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の変性共役ジエン系ゴム以外のその他のゴムを含有してもよい。その他のゴムとしては、たとえば、天然ゴム(エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、グラフト化天然ゴムなどの改質天然ゴムであってもよい。)、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン-ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シス-BR、低シスBRであってもよい。また、1,2-ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい。)、スチレン-イソプレン共重合ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、クロロプレンゴム、ニトリルクロロプレンゴム、およびニトリルイソプレンゴム、などのうち、上述した変性共役ジエン系ゴム以外のものをいう。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、および溶液重合スチレン-ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは、天然ゴムとポリブタジエンゴム、天然ゴムとスチレン-ブタジエン共重合ゴム等、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
本発明のゴム組成物において、本発明の変性共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物中のゴム成分の10~100重量%を占めることが好ましく、50~100重量%を占めることが特に好ましい。このような割合で、本発明の変性共役ジエン系ゴムをゴム成分中に含めることにより、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れたゴム架橋物を得ることができる。
【0088】
本発明で用いるシリカとしては、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037-81に準じBET法で測定される)は、好ましくは20~400m/g、より好ましくは50~220m/g、特に好ましくは80~170m/gである。また、シリカのpHは、5~10であることが好ましい。
【0089】
本発明で用いるシリカとしては、ジブチルフタレート(DBP)吸収値が、好ましくは約100~約400の範囲、特に約150~約300の範囲にあるものが好ましい。
【0090】
本発明で用いるシリカとしては、電子顕微鏡による測定で0.01~0.05μmの範囲の平均極限粒径を有するものが好ましいが、シリカの平均極限粒径はこの範囲に限定されず、さらに小さくても又はさらに大きくてもよい。
【0091】
本発明で用いるシリカとしては、たとえば、様々な市販シリカが使用できる。例えば、PPG Industries社製のHi-Sil、210、Hi-Sil233、Hi-Sil243LD;Rhodia社製のZeosil1115MP、Zeosil1165MP、Zeosil165GR;EVONIK社製のULTRASIL VN2、ULTRASIL VN3;などが挙げられる。
【0092】
本発明のゴム組成物におけるシリカの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは10~250重量部であり、より好ましくは15~150重量部、さらに好ましくは20~130重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性、低発熱性および操縦安定性をより高めることができる。
【0093】
本発明のゴム組成物には、低発熱性をさらに改良するという観点より、さらにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、種々のシランカップリング剤を用いることができるが、本発明においては、スルフィド系、メルカプト系、保護化メルカプト系(例えば、カルボニルチオ基を持つもの)、チオシアネート系、ビニル系、アミノ系、メタクリレート系、グリシドキシ系、ニトロ系、エポキシ系またはクロロ系のシランカップリング剤を好適に用いることができる。シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-[ エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール、3-オクタノイルチオ-1-プロピル-トリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、および3-クロロプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。また、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のNXT-Z100、NXT-Z30、NXT-Z45、NXT-Z60、NXT-Z45、NXT、エボニック・デグッサ社製のSi69、Si75、VP Si363なども用いることができる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの1種または2種以上を予めオリゴマー化させて、オリゴマー化させた状態にて用いてもよい。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部、より好ましくは1~15重量部である。
【0094】
また、本発明のゴム組成物には、さらに、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらのなかでも、ファーネスブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、通常、120重量部以下である。
【0095】
なお、本発明の変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分に、シリカを添加する方法としては特に限定されず、固形のゴム成分に対して添加して混練する方法(乾式混練法)や変性共役ジエン系ゴムを含む溶液に対して添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
【0096】
また、本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有していることが好ましい。架橋剤としては、たとえば、硫黄、ハロゲン化硫黄などの含硫黄化合物、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部、特に好ましくは1~4重量部である。
【0097】
さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、充填剤(上記シリカおよびカーボンブラックを除く)、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0098】
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、たとえば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部、特に好ましくは1~4重量部である。
【0099】
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05~20重量部、特に好ましくは0.5~15重量部である。
【0100】
本発明のゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、たとえば、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分と変性共役ジエン系ゴムとを混練後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合して目的の組成物を得ることができる。熱に不安定な成分を除く成分と変性共役ジエン系ゴムとの混練温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは120~180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒~30分である。また、その混練物と熱に不安定な成分との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
【0101】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~12時間、特に好ましくは3分~6時間である。
【0102】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0103】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0104】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の変性共役ジエン系ゴムを用いて得られるものであるため、ウエットグリップ性、低発熱性および操縦安定性に優れるものである。特に、本発明の変性共役ジエン系ゴムは、共役ジエン化合物に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物を共重合するとともに、重合体鎖の少なくとも一方の末端に、シロキサン化合物による変性構造を導入してなるものであるため、これらの作用により、シリカなどの充填剤に対する親和性が高く、これにより、シリカなどの充填剤を良好に分散させることができ、さらには、シリカなどの充填剤による補強性を十分に発揮させることができるものである。したがって、このような本発明の変性共役ジエン系ゴムを用いて得られる、本発明のゴム架橋物は、ウエットグリップ性、低発熱性および操縦安定性に優れたものとなる。
【0105】
そのため、本発明のゴム架橋物は、その優れたウエットグリップ性、低発熱性および操縦安定性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。とりわけ、本発明のゴム架橋物は、ウエットグリップ性、低発熱性および操縦安定性に優れることから、タイヤの材料、特に低燃費タイヤの材料として好適に用いることができ、トレッド用途に最適である。
【実施例
【0106】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0107】
〔重量平均分子量、分子量分布〕
重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、得られたチャートに基づいて求めた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定機:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC-8220」)
カラム:東ソー社製、商品名「GMH-HR-H」を二本直列に連結した。
検出器:示差屈折計
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
【0108】
〔ミクロ構造〕
スチレン単量体単位含有量、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量、およびビニル結合含有量は、H-NMRにより測定した。
【0109】
〔ゴム組成物のロール付着性〕
得られたゴム組成物を、50℃のオープンロールで成形し、シート状にした。この際に得られたシート状のゴム組成物をオープンロールの表面から剥がす際における状態を下記の基準にしたがって評価した。
◎:ゴム組成物をオープンロールの表面から剥がす際に、ロールへの付着が発生しておらず、容易に剥がすことができた。また、ロールへの付着が発生していないことから、シート状のゴム組成物の表面は、十分に平滑なものであった。
×:ゴム組成物をオープンロールの表面から剥がす際に、ロールへの付着が激しく、剥がし難かった。また、ロールへの付着が激しいことから、シート状のゴム組成物は、その表面の平滑性に劣るものであった。
【0110】
〔ゴム架橋物のウエットグリップ性〕
ウエットグリップ性については、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmのゴム架橋物の試験片を、レオメトリックス社製ARESを用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で0℃におけるtanδの値を測定することにより評価した。このtanδの値については、比較例2の測定値を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、ウエットグリップ性に優れる。
【0111】
〔ゴム架橋物の低発熱性〕
低発熱性については、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmのゴム架橋物の試験片を、レオメトリックス社製ARESを用い、動的歪み2.5%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定することにより評価した。このtanδの値については、実施例1~4、比較例1、3は比較例2の測定値を100とする指数で示し、実施例5、比較例5は比較例4の測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、低発熱性に優れる。
【0112】
〔ゴム架橋物の操縦安定性〕
操縦安定性については、JIS K6301に従って、ゴム架橋物の試験片について、引張試験を行ない、(300%伸張時の応力)/(100%伸長時の応力)の値を測定・計算することにより評価した。この数値が大きいものほど、シリカによる補強性が高く、操縦安定性に優れる。
【0113】
〔実施例1〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン792g、テトラメチルエチレンジアミン1.41mmol、1,3-ブタジエン76.3g、スチレン28.7g、およびビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン(上記一般式(3)において、X=化学的な単結合、X10、X11=ジエチルアミノ基、X12=メチル基である化合物)0.144gを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを0.98mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、下記式(7)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-繰り返し単位の含有量が1.00mmolとなるように添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、変性共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、変性共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例1の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は375,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は59重量%であった。また、得られた実施例1の変性共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.15重量%であった。
【化8】
【0114】
〔実施例2〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン792g、テトラメチルエチレンジアミン1.41mmol、1,3-ブタジエン76.3g、スチレン28.7g、およびビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン(上記一般式(3)において、X=化学的な単結合、X10、X11=ジエチルアミノ基、X12=メチル基である化合物)0.144gを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを0.98mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記一般式(7)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-繰り返し単位の含有量が2.51mmolとなるように添加し、20分間反応させた。次いでn-ブチルリチウム2.35mmolを添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、変性共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、変性共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例2の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は472,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は59重量%であった。また、得られた実施例2の変性共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.15重量%であった。
【0115】
〔実施例3〕
実施例1において、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン0.144gを、m/p-ピロリジノエチルスチレン(m-ピロリジノエチルスチレンとp-ピロリジノエチルスチレンとの混合物)0.135gに変えた点以外は実施例1と同様にして固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例3の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は546,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は58重量%であった。また、得られた実施例3の共役ジエン系ゴム中における、m/p-ピロリジノエチルスチレン単量体単位含有量は0.13重量%であった。
【0116】
〔実施例4〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン792g、テトラメチルエチレンジアミン1.41mmol、ピペリジン0.98mmol、1,3-ブタジエン76.3g、スチレン28.7g、およびビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン(上記一般式(3)において、X=化学的な単結合、X10、X11=ジエチルアミノ基、X12=メチル基である化合物)0.144gを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを0.98mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記一般式(7)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-繰り返し単位の含有量が2.51mmolとなるように添加し、20分間反応させた。次いでn-ブチルリチウム2.35mmolを添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、変性共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、変性共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例4の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は409,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は60重量%であった。また、得られた実施例4の変性共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.15重量%であった。
【0117】
〔比較例1〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン792g、テトラメチルエチレンジアミン1.41mmol、1,3-ブタジエン76.3g、スチレン28.7g、およびビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン0.144gを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを0.98mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例1の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は218,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は59重量%であった。また、得られた比較例1の共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.15重量%であった。
【0118】
〔比較例2〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン792g、テトラメチルエチレンジアミン1.41mmol、1,3-ブタジエン76.3g、およびスチレン28.7gを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを0.98mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記式(7)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-繰り返し単位の含有量が1.00mmolとなるように添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、変性共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、変性共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例2の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は456,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は59重量%であった。
【0119】
〔比較例3〕
比較例1において、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン0.144gを、m/p-ピロリジノエチルスチレン0.135gに変えた点以外は比較例1と同様にして固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例3の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は246,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は59重量%であった。また、得られた比較例3の共役ジエン系ゴム中における、m/p-ピロリジノエチルスチレン単量体単位含有量は0.13重量%であった。
【0120】
〔ゴム組成物およびゴム架橋物の製造と評価〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、実施例1の変性共役ジエン系ゴム100部を30秒素練りし、次いでシリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1115MP」)50部、プロセスオイル(新日本石油社製、商品名「アロマックス T-DAE」)20部、およびシランカップリング剤:ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製、商品名「Si69」)6.0部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1115MP」)25部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部および老化防止剤:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)2部を添加し、更に2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混練終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として2分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物に、硫黄1.40部、架橋促進剤:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーNS-P」、大内新興化学工業社製)1.2部、および1,3-ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.2部を加えてこれらを混練することで、ゴム組成物を得た。
そして、得られたゴム組成物を、50℃のオープンロールでシート状に成形し、この際に、上記方法にしたがって、ゴム組成物のロール付着性の評価を行った。結果を表1に示す。
また、得られたシート状のゴム組成物を160℃で20分間プレス架橋することで、ゴム架橋物の試験片を作製し、この試験片を用いて、ウエットグリップ性、低発熱性、および操縦安定性の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0121】
また、実施例2~4の変性共役ジエン系ゴム、比較例1、3の共役ジエン系ゴム、および比較例2の変性共役ジエン系ゴムについても、それぞれ同様にして、ゴム組成物を作製し、ゴム組成物のロール付着性の評価を行い、また、同様にして、ゴム架橋物の試験片を作製し、ウエットグリップ性、低発熱性、および操縦安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
〔実施例1~4、比較例1~3の評価〕
表1より、共役ジエン単量体単位と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単量体単位とを含む重合体鎖の少なくとも一方の末端に、シロキサン化合物による変性構造を備える変性共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物とした場合における、ロールへの付着が有効に抑制されており、これにより優れた加工性を実現できるものであり、さらには、これを用いて得られるゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れるものであった(実施例1~4)。
重合体鎖の末端に、シロキサン化合物による変性構造を導入していない共役ジエン系ゴムを用いた場合には、得られるゴム組成物は、ロールへの付着が顕著になり、また、得られるゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に劣るものであった(比較例1、3)。
同様に、重合体鎖中に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単量体単位を有しない変性共役ジエン系ゴムを用いた場合においても、得られるゴム組成物は、ロールへの付着が顕著になり、また、得られるゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に劣るものであった(比較例2)。
【0124】
〔実施例5〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン830g、テトラメチルエチレンジアミン1.28mmol、1,3-ブタジエン80.3g、スチレン29.7g、およびビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン0.066gを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを0.80mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド0.30mmolを添加し、15分間反応させた。次いで、上記一般式(7)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-繰り返し単位の含有量が0.33mmolとなるように添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤(商品名「イルガノックス1520L」、BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例5の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は254,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は58重量%であった。また、得られた実施例5の共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.060重量%であった。
【0125】
〔比較例4〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン830g、テトラメチルエチレンジアミン1.28mmol、ピペリジン0.61mmol、1,3-ブタジエン80.3g、スチレン29.7g、およびビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン0.132gを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを0.80mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、N-フェニルピロリドン0.61mmolを添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤(商品名「イルガノックス1520L」、BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例4の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は340,000、スチレン単量体単位含有量は26重量%、ビニル結合含有量は57重量%であった。また、得られた比較例4の共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.12重量%であった。
【0126】
〔比較例5〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン830g、テトラメチルエチレンジアミン1.28mmol、1,3-ブタジエン80.3g、およびスチレン29.7gを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを0.80mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド0.30mmolを添加し、15分間反応させた。次いで、上記一般式(7)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-繰り返し単位の含有量が0.33mmolとなるように添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤(商品名「イルガノックス1520L」、BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例5の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は399,000、スチレン単量体単位含有量は26重量%、ビニル結合含有量は57重量%であった。
【0127】
実施例5の変性共役ジエン系ゴム、比較例4、5の変性共役ジエン系ゴムについても、それぞれ実施例1と同様にして、ゴム架橋物の試験片を作製し、低発熱性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
〔実施例5、比較例4,5の評価〕
表2より、重合体鎖の活性末端に反応させた変性剤として、シロキサン化合物以外の化合物と、シロキサン化合物の2種類の化合物を使用し、順次反応させた場合においても、同様に、このようにして得られる変性共役ジエン系ゴムを用いて得られるゴム架橋物は、低発熱性に優れるものであった(実施例5)。また、実施例5においても、実施例1~4と同様に、ゴム組成物とした場合における、ロールへの付着が有効に抑制されたものであり、加工性に優れたものであるとともに、さらには、これを用いて得られるゴム架橋物は、低発熱性に加えて、ウエットグリップ性および操縦安定性に優れるものであるといえる。
一方、重合体鎖の末端に反応させた変性剤として、シロキサン化合物以外の化合物を用いた場合や、重合体鎖の活性末端に反応させた変性剤として、シロキサン化合物以外の化合物と、シロキサン化合物の2種類の化合物を使用したものの、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物を共重合しなかった場合には、低発熱性に劣るものであった(比較例4、5)。