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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】作業方法及び作業システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20250402BHJP
   E01H 1/08 20060101ALI20250402BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20250402BHJP
   E01F 11/00 20060101ALN20250402BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G08G1/00 X
E01H1/08 C
G05D1/43
E01F11/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022542828
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2021029096
(87)【国際公開番号】W WO2022034850
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2024-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2020135446
(32)【優先日】2020-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141869(WO,A1)
【文献】特開2019-067353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G05D 1/43
E01H 1/08
E01F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気マーカが敷設された走路を移動しながら前記磁気マーカを検出する装置が、前記走路を構成する付帯物を整備、保守あるいは管理するための作業を実施する作業方法であって、
作業対象の付帯物は、前記磁気マーカとは位置が異なる付帯物である一方、前記磁気マーカに対する当該作業対象の付帯物の相対位置が既知であり、
前記磁気マーカに対する前記装置の相対位置を特定し、
前記磁気マーカに対する前記作業対象の付帯物の相対位置、及び前記磁気マーカに対する前記装置の相対位置に基づき、前記装置が作業する箇所を特定し、
当該特定された箇所において、前記装置は、前記磁気マーカとは異なる位置に付帯物を新たに設ける作業、前記磁気マーカ以外の既設の付帯物を検査する作業、及び前記磁気マーカ以外の既設の付帯物の状態を改善する作業、のうちの少なくともいずれかの作業を実施する作業方法。
【請求項2】
請求項において、前記付帯物は、道路上で車線を区分するレーンマーク、道路の縁石、ガードレール、分離帯、道路に設けられる標識、舗装面のうちの少なくともいずれかである作業方法。
【請求項3】
磁気マーカが敷設された走路を移動しながら前記磁気マーカを検出する装置を含み、前記走路を構成する付帯物を当該装置が整備、保守あるいは管理する作業を実施する作業システムであって、
作業対象の付帯物は、前記磁気マーカとは位置が異なる付帯物である一方、前記磁気マーカに対する当該作業対象の付帯物の相対位置が既知であり、
前記作業システムは、
前記磁気マーカを磁気的に検出する磁気計測ユニットと、
該磁気計測ユニットにより検出された磁気マーカに対する前記装置の相対位置を特定する位置特定部と、
前記磁気マーカに対する前記作業対象の相対位置、及び前記位置特定部により特定された前記磁気マーカに対する前記相対位置に基づき、前記装置が作業する箇所を特定する作業箇所特定部と、を有し、
前記作業箇所特定部が特定した箇所において、前記装置は、前記磁気マーカとは異なる位置に付帯物を新たに設ける作業、前記磁気マーカ以外の既設の付帯物を検査する作業、及び前記磁気マーカ以外の既設の付帯物の状態を改善する作業、のうちの少なくともいずれかの作業を実施するように構成されている作業システム。
【請求項4】
請求項において、前記付帯物は、道路上で車線を区分するレーンマーク、道路の縁石、ガードレール、分離帯、道路に設けられる標識、舗装面のうちの少なくともいずれかである作業システム。
【請求項5】
請求項3または4において、前記装置は、既設の前記付帯物を検査する作業を実施可能であると共に、位置を測位する測位回路と、当該測位回路が取得した位置をひも付けて前記付帯物を検査する作業を実施した結果を記録する回路と、を備えている作業システム。
【請求項6】
磁気マーカが敷設された走路を移動しながら前記磁気マーカを検出する装置が、前記走路を整備、保守あるいは管理するための作業を実施する作業方法であって、
前記磁気マーカを検出したとき、当該磁気マーカに対する前記装置の相対位置を特定し、
該相対位置に基づいて、前記装置が作業する箇所として、検出した磁気マーカの位置を特定し、
当該特定された箇所において、前記装置は、前記磁気マーカにエアを吹き付けると共に、エアを吹き付けている最中の当該磁気マーカを撮像して撮像データを取得し、磁気マーカの一部が剥離したときに起こり得る剥離した部分のバタつきを画像的に検知するための処理を当該撮像データに適用することで、路面からの当該磁気マーカの剥離の有無を判定する作業を実施する作業方法。
【請求項7】
磁気マーカが敷設された走路を移動しながら前記磁気マーカを検出する装置が、前記走路を整備、保守あるいは管理するための作業を実施する作業方法であって、
前記磁気マーカを検出したとき、当該磁気マーカに対する前記装置の相対位置を特定し、
該相対位置に基づいて、前記装置が作業する箇所として、検出した磁気マーカの位置を特定し、
当該特定された箇所において、前記装置は、前記磁気マーカにエアを吹き付けると共に、エアを吹き付けている最中に当該磁気マーカから生じる音を集めて音データを取得し、磁気マーカの剥離した部分がエアの作用によってバタつく際に発生し得るバタつき音を検知するための処理を当該音データに適用することにより、路面からの当該磁気マーカの剥離の有無を判定する作業を実施する作業方法。
【請求項8】
磁気マーカが敷設された走路を移動しながら前記磁気マーカを検出する装置を含み、該装置が前記走路を整備、保守あるいは管理する作業を実施する作業システムであって、
前記磁気マーカを磁気的に検出する磁気計測ユニットと、
該磁気計測ユニットにより検出された磁気マーカに対する前記装置の相対位置を特定する位置特定部と、
該相対位置に基づいて前記装置が作業する箇所として、前記磁気計測ユニットによって検出された磁気マーカの敷設位置を特定する作業箇所特定部と、
路面からの当該検出された磁気マーカの剥離の有無を判定する処理部と、を有し、
前記装置は、
前記磁気マーカに対してエアを吹き付けるエアノズルと、
前記磁気マーカを撮像するカメラと、を有し、
前記処理部は、前記磁気マーカに対して前記エアノズルからエアが吹き付けられている最中に前記カメラにより取得された撮像データに対し、磁気マーカの一部が剥離したときに起こり得る剥離した部分のバタつきを画像的に検知するための処理を適用することで、路面からの当該磁気マーカの剥離の有無を判定するように構成されている作業システム。
【請求項9】
磁気マーカが敷設された走路を移動しながら前記磁気マーカを検出する装置を含み、該装置が前記走路を整備、保守あるいは管理する作業を実施する作業システムであって、
前記磁気マーカを磁気的に検出する磁気計測ユニットと、
該磁気計測ユニットにより検出された磁気マーカに対する前記装置の相対位置を特定する位置特定部と、
該相対位置に基づいて前記装置が作業する箇所として、前記磁気計測ユニットによって検出された磁気マーカの敷設位置を特定する作業箇所特定部と、
路面からの当該検出された磁気マーカの剥離の有無を判定する処理部と、を有し、
前記装置は、前記磁気マーカに対してエアを吹き付けるエアノズルと、
前記磁気マーカから生じる音を集めるマイクと、を有し、
前記処理部は、前記磁気マーカに対して前記エアノズルからエアが吹き付けられている最中に前記マイクにより取得された音データに対し、磁気マーカの一部が剥離したときに剥離した部分がエアの作用によってバタついて発生するバタつき音を検知するための処理を適用することで路面からの前記磁気マーカの剥離の有無を判定するように構成されている作業システム。
【請求項10】
磁気マーカが敷設された走路を移動しながら前記磁気マーカを検出する装置を含み、該装置が前記走路を整備、保守あるいは管理する作業を実施する作業システムであって、
前記磁気マーカを磁気的に検出する磁気計測ユニットと、
該磁気計測ユニットにより検出された磁気マーカに対する前記装置の相対位置を特定する位置特定部と、
該相対位置に基づいて前記装置が作業する箇所として、前記磁気計測ユニットによって検出された磁気マーカの敷設位置を特定する作業箇所特定部と、
路面からの当該検出された磁気マーカの剥離の有無を判定する処理部と、を有し、
前記装置は、複数のエア吸入孔が穿孔されたスタンプ状の部材を有し、
前記処理部は、前記複数のエア吸入孔がエア吸入状態であるスタンプ状の部材を前記磁気マーカに押し付けた状態から引き上げたとき、前記複数のエア吸入孔のうちの各エア吸入孔が前記磁気マーカの表面から離れて解放状態となるタイミングが一斉であるか、一部のエア吸入孔が解放状態となるタイミングが遅延するか、を検出することにより前記磁気マーカの剥離の有無を判定するように構成されている作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走路の保守等の作業を実施するための作業方法及び作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が通行する道路などの走路には、車両が走行する車線の脇にガードレールや縁石や植栽などが設けられている。車両が走行する路面には、車線を区画するためのレーンマーク(白線、区画線)などのプリントや道路標識をなすプリントなどが設けられている。また、車両のヘッドライトの光を反射する鋲が路面に打ち込まれた交差点もある。
【0003】
車両が通行する際の安全性を十分に確保するためには、走路を良好な状態に保持する必要がある。そこで、走路を清掃したり、走路の状態を確認したりする作業を定期的に実施する必要があり、補修が必要になったときには、速やかに補修作業を実施する必要がある。そこで、道路を清掃するための道路用清掃装置の提案もある(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-7823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走路の整備、保守あるいは管理など、走路に関する作業の中には、車両の通行制限を要する作業もあり、走路に関する作業を効率良く実施する方法やシステムが求められている。
【0006】
本発明は、磁気マーカが敷設された走路について、走路に関する作業を効率良く実施するための作業方法及び作業システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、磁気マーカが敷設された走路を移動しながら前記磁気マーカを検出する装置が、前記走路を整備、保守あるいは管理するための作業を実施する作業方法であって、
前記磁気マーカに対する前記装置の相対位置を特定し、
該相対位置に基づいて前記装置が作業する箇所を特定し、
当該特定された箇所において、前記装置が作業を実施する作業方法にある。
【0008】
本発明の一態様は、磁気マーカが敷設された走路を移動しながら前記磁気マーカを検出する装置を含み、該装置が前記走路を整備、保守あるいは管理する作業を実行する作業システムであって、
前記磁気マーカに対する前記装置の相対位置を特定する位置特定部と、
該相対位置に基づいて前記装置が作業する箇所を特定する作業箇所特定部と、を有し、
前記装置は、前記作業箇所特定部が特定した箇所で作業を実施するように構成されている作業システムにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、前記磁気マーカに対する前記装置の相対位置に基づき、該装置が作業する箇所を特定する。そして、このように特定された箇所において、前記装置が作業を実施する。
【0010】
前記磁気マーカは走路に固定されており、位置が変動するおそれが少ない。位置の変動が少ない前記磁気マーカを利用すれば、前記作業する箇所を精度高く特定でき、前記装置が作業を効率高く実施できる。
【0011】
このように本発明に係る作業方法及び作業システムは、走路に関する作業を効率良く実施できる方法あるいはシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1における、車線上の作業車両を俯瞰する説明図。
図2】実施例1における、車線上の作業車両を側方から見込む説明図。
図3】実施例1における、作業車両の構成を示すブロック図。
図4】実施例1における、磁気マーカを通過する際の進行方向の磁気計測値の時間的な変化を例示する説明図。
図5】実施例1における、車幅方向に配列された磁気センサCnによる車幅方向の磁気計測値の分布を例示する説明図。
図6】実施例1における、自動走行制御のフロー図。
図7】実施例1における、マーカ検査のフロー図。
図8】実施例1における、磁気マーカが検出されたとき、車幅方向に配列された磁気センサCnによる鉛直方向の磁気計測値の分布を例示する説明図。
図9】実施例1における、磁気マーカの敷設状態の検査(第2の検査)の様子の説明図。
図10】実施例1における、磁気マーカ検出後の作業車両の相対位置の説明図。
図11】実施例2における、車線上の作業車両を俯瞰する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、磁気マーカ10が敷設された道路(走路の一例)1Rにおいて、磁気マーカ10を検査するための作業方法及び作業システム1に関する例である。この内容について、図1図10を参照して説明する。
【0014】
磁気マーカ10は、図1のごとく、路面100Sに敷設される道路用のマーカである。磁気マーカ10は、周囲に磁界を形成するため、磁気的に検出可能である。磁気マーカ10は、左右のレーンマークで区分された車線100の中央に沿って例えば2m間隔で配置されている。磁気マーカ10は、道路を構成する付帯物(道路1Rの付属物)の一例である。
【0015】
磁気マーカ10は、直径100mm、厚さ2mmの扁平な円形状の磁石シートよりなる。磁石シートは、最大エネルギー積(BHmax)が約6.4kJ/立方mの等方性フェライトラバーマグネットである。磁気マーカ10の表面磁束密度Gsは、45mT以下程度である。磁気マーカ10は、例えば、路面100Sへの接着接合が可能である。接着剤としては、例えば、溶融状態あるいは軟化状態のアスファルトを利用することも良い。
【0016】
作業システム1は、装置の一例をなす作業車両11を含んで構成されている。作業車両11(図2)は、操舵輪111と駆動輪118とを備え、操舵輪111の向きである操舵角の制御を含む自動走行制御を実行可能な車両である。作業車両11は、磁気を検出するセンサアレイ2、制御ユニット13、ステアリングアクチュエータ141、スロットルアクチュエータ143、検査ユニット15等を備えている。
【0017】
ステアリングアクチュエータ141は、操舵輪111を操舵するアクチュエータである。ステアリングアクチュエータ141を制御すれば、操舵輪111の操舵に応じて作業車両11の進路を変更できる。スロットルアクチュエータ143は、エンジンスロットルを開閉(制御)するためのアクチュエータである。スロットルアクチュエータ143を制御すれば、エンジン出力を変更でき、作業車両11の速度の調節が可能である。ステアリングアクチュエータ141及びスロットルアクチュエータ143は、制御ユニット13による制御が可能である。
【0018】
センサアレイ2は、図3のごとく、複数の磁気センサCnが一直線上に配列された磁気計測ユニットである。センサアレイ2は、長手方向に沿って0.1m間隔で配列された15個の磁気センサCn(nは1~15の整数)と、磁気計測処理等を実行する検出処理回路212と、を備えている。センサアレイ2は、15個の磁気センサCn(n=1~15)の配列方向が車幅方向に沿うと共に、中央の磁気センサC8が車両の中心線上(車幅方向の中央)に位置するように作業車両11(図1)に取り付けられている。
【0019】
磁気センサCnは、図示しないアモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという公知のMI効果(Magnet Impedance Effect)を利
用して磁気を検出するセンサである。磁気センサCnでは、直交する3軸方向に沿って感磁体が配置され、これら3軸方向に作用する磁気の検出が可能になっている。本例のセンサアレイ2は、作業車両11に取り付けられた状態で、前後方向(進行方向)、車幅方向及び鉛直方向の磁気成分を検出する。
【0020】
検出処理回路212は、磁気マーカ10を検出するための後述のマーカ検出処理等を実行する回路である。この検出処理回路212は、各種の演算を実行するCPU(central processing unit)のほか、ROM(read only memory)やRAM(random access memory)などのメモリ素子等を利用して構成されている。検出処理回路212は、磁気マーカ
10の検出結果に加えて、各磁気センサCnの磁気計測値の分布である1次元磁気分布データを出力する。1次元磁気分布データとしては、前後方向に作用する磁気強度の分布データと、車幅方向に作用する磁気強度の分布データと、鉛直方向に作用する磁気の分布データと、がある。
【0021】
制御ユニット13は、作業車両11の走行制御、及び磁気マーカ10の検査を実施するユニットである。制御ユニット13は、CPUやROM・RAMなどの電子部品が実装された電子基板、HDD(hard disk drive)装置あるいはSSD(solid state drive)装置などの記憶装置等、を含めて構成されている。制御ユニット13は、ROM等から読み出した制御プログラムをCPUで処理することで、予め定められた機能を実現する。
【0022】
制御ユニット13は、ステアリングアクチュエータ141及びスロットルアクチュエータ143を制御し、これにより、作業車両11を自動走行させる。また、制御ユニット13は、検査ユニット15及びセンサアレイ2を用いて磁気マーカ10を検査する。制御ユニット13は、センサアレイ2が出力する上記の3種類の1次元磁気分布データを取得し、過去の所定期間に亘って記憶している。
【0023】
検査ユニット15は、磁気マーカ10の敷設状態を検査するユニットである。検査ユニット15は、路面100Sから磁気マーカ10が剥離しているか否かを表す剥離情報を出力する。検査ユニット15は、作業車両11において、センサアレイ2に対して後方に5m離れて配置されている。
【0024】
検査ユニット15は、圧縮エアを路面100Sに吹き付けるエアノズル151(図9参照。)と、磁気マーカ10を撮影する撮像カメラ(図示略)と、集音マイク(図示略)と、処理部と、を含んで構成されている。エアノズル151は、車幅方向の各位置に圧縮エアを噴射できるよう、車幅方向に複数設けられている。1または複数の撮像カメラおよび集音マイクは、作業車両11の車幅方向のほぼ全域に対応して設けられている。
【0025】
処理部は、磁気マーカ10の剥離の有無(敷設状態の一例)を判定する回路である。処理部は、剥離が生じた磁気マーカ10に対して圧縮エアを吹き付けたときに起こり得る剥離箇所のバタつきを検知することで、剥離を検出する。処理部は、圧縮エアを吹き付けた際の撮影データ(動画)及び音データを処理し、剥離箇所のバタつきや、バタつきによって路面100Sを叩く音を検知する。磁気マーカ10に剥離が生じている場合、圧縮エアの吹き付けに応じて磁気マーカ10の縁部にばたつきを生じ、その最中の撮像カメラによる撮像データでは、磁気マーカ10の縁部に画像的なボケが生じる。処理部は、この画像的なボケを検出することで、磁気マーカ10の剥離の有無を判定する。磁気マーカ10に剥離が生じている場合、圧縮エアの吹き付けに応じて磁気マーカ10の縁部にばたつきを生じ、その最中の集音マイクによる音データには、磁気マーカ10の縁部が路面を叩く音が含まれる。処理部は、磁気マーカ10の縁部が路面を叩く音を検出することで磁気マーカ10の剥離の有無を判定する。音の検出方法としては、磁気マーカ10が路面を叩く周波数成分を検出する方法等がある。
【0026】
以上のように構成された本例の作業システム1では、作業車両11が磁気マーカ10を検出しながら車線100に沿って自動走行し、走行中に各磁気マーカ10の検査を実施する。以下、(A)マーカ検出処理、(B)自動走行制御、(C)マーカ検査、について順番に説明する。
【0027】
(A)マーカ検出処理
マーカ検出処理は、センサアレイ2が実行する処理である。センサアレイ2は、磁気センサCnを用いて3kHzの周波数でマーカ検出処理を実行する。センサアレイ2の検出処理回路212は、15個の磁気センサCnが同時に計測した磁気計測値を取得して、マーカ検出処理を実行する。センサアレイ2は、磁気マーカ10を検出したとき、検出した旨および磁気マーカ10に対する横ずれ量(相対位置)を、マーカ検出処理の結果として制御ユニット13に入力する。横ずれ量は、後述する通り、センサアレイ2の中央に位置する磁気センサC8の磁気マーカ10に対する車幅方向の偏差である。
【0028】
上記のごとく、磁気センサCnは、作業車両11の前後方向及び車幅方向の磁気成分を計測可能である。例えばこの磁気センサCnが、前後方向に移動して磁気マーカ10の真上を通過するとき、前後方向の磁気計測値は、図4のごとく磁気マーカ10の前後で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように時間的に変化する。作業車両11の走行中では、いずれかの磁気センサCnが検出する前後方向の磁気計測値について、その正負が反転するゼロクロスZcが生じたとき、センサアレイ2が磁気マーカ10の真上に位置すると判断できる。検出処理回路212は、このようにセンサアレイ2が磁気マーカ10の真上に位置し前後方向の磁気計測値のゼロクロスが生じたとき、磁気マーカ10を検出したと判断する。
【0029】
また例えば、磁気センサCnと同じ仕様の磁気センサについて、磁気マーカ10の真上を通過する車幅方向の仮想線に沿う移動を想定する。この場合、車幅方向の磁気計測値は、磁気マーカ10を挟んだ両側で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。したがって、15個の磁気センサCnを車幅方向に配列したセンサアレイ2では、磁気マーカ10を介してどちらの側にあるかによって磁気センサCnが検出する車幅方向の磁気計測値の正負が異なってくる。
【0030】
各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値を例示する図5の分布では、車幅方向の磁気計測値の正負が反転するゼロクロスZcが磁気マーカ10に対応して現れる。同図のゼロクロスZcの位置は、磁気マーカ10の車幅方向の位置に一致している。磁気マーカ10の車幅方向の位置は、例えば、ゼロクロスZcを挟んで隣り合う2つの磁気センサCnの中間の位置、あるいは車幅方向の磁気計測値がゼロであって両外側の磁気センサCnの正負が反転している磁気センサCnの直下の位置として特定可能である。
【0031】
検出処理回路212は、磁気マーカ10に対する作業車両11の代表点の車幅方向の偏差を横ずれ量として計測する。本例では、センサアレイ2の中央の磁気センサC8の位置、すなわち車幅方向における作業車両11の中央を、代表点に設定している。例えば図5の場合、磁気マーカ10に対応するゼロクロスZcの位置がC9とC10との中間辺りのC9.5に相当する位置となっている。上記のように磁気センサC9とC10の間隔は10cmであるから、磁気マーカ10に対する作業車両11の代表点(磁気センサC8)の横ずれ量は(9.5-8)×10=15cmとなる。同図の例は、車線100の中で作業車両11が左寄りとなった場合の例である。なお、横ずれ量の正負は、磁気マーカ10に対して作業車両11の代表点が左に寄った場合を正、右に寄った場合を負としている。
【0032】
(B)自動走行制御
制御ユニット13は、図6のごとく、磁気マーカが検出されたとき(S101:YES)、センサアレイ2が出力する横ずれ量(磁気マーカ10に対する相対位置)を取得する(S102)。制御ユニット13は、横ずれ量をゼロ等の所定の値に近づけるように車両制御を実行する(S103)。制御部の一例である制御ユニット13は、このような制御により、車線100(図1)に沿って作業車両11を自動走行させる。
【0033】
制御ユニット13は、図6のステップS103の車両制御において、横ずれ量が正のとき、すなわち、磁気マーカ10に対して作業車両11が左側にずれているとき、操舵輪111が右に操舵されるようにステアリングアクチュエータ141を制御する。また、制御ユニット13は、例えば、操舵量に応じてスロットルアクチュエータ143を制御する。制御ユニット13は、例えば、操舵量が大きいとき、車速が抑制されるようにスロットルアクチュエータ143を制御する。制御ユニット13による以上の制御により、作業車両11は速度を調節しながら車線100に沿って自動走行可能である。
【0034】
(C)マーカ検査
制御ユニット13は、作業の例である3種類の検査を実施する。第1及び第2の検査は、センサアレイ2が検出した磁気マーカ10に関する検査である。第3の検査は、センサアレイ2による検出が予測される磁気マーカ10に関する検査である。制御ユニット13は、第1~第3の検査すべてに合格した磁気マーカ10について良好な状態である旨の判断を行う。制御ユニット13による検査結果は、随時、記憶装置(制御ユニット13)の記憶領域に記録される。なお、装置の一例をなす作業車両11が、位置を測位する測位回路と、測位回路が取得した位置をひも付けて付帯物の一例である磁気マーカ10を検査する作業を実施した結果を記録する回路と、を備えていることも良い。図示しないGPS(Global Positioning System)などの測位手段(測位回路の一例)による測位情報をひも
付けて磁気マーカ10の良否を表す検査結果を、前記回路に記録すると良い。この回路としては、HDD(hard disk drive)装置あるいはSSD(solid state drive)装置などの記憶装置を利用できる。
【0035】
制御ユニット13は、センサアレイ2によって磁気マーカ10が検出されたとき(図7のS201:YES)、装置の一例である作業車両11について、磁気マーカ10に対する相対位置(位置ずれ)を特定する(位置特定部)。そして、制御ユニット13は、検出された磁気マーカ10に対する相対位置を利用して、第1及び第2の検査対象箇所を特定する(S202、作業箇所特定部)。第1の検査対象箇所は、上記の第1及び第2の検査の対象箇所であり、ステップS201で検出された磁気マーカ10が敷設された箇所である。第2の検査対象箇所は、上記の第3の検査の対象箇所である。第2の検査対象箇所は、ステップS201で検出された磁気マーカ10に対して、進行方向前方に隣り合う未検出の磁気マーカ10が敷設された箇所である。以下、図7のフロー図を参照しながら、第1~第3の検査について順番に説明する。
【0036】
(第1の検査)
制御ユニット13は、磁気マーカ10が検出されたとき(S201:YES)、センサアレイ2の中央(磁気センサC8の位置)を作業車両11の代表点として、磁気マーカ10に対する作業車両11の前後方向及び車幅方向の相対位置を特定する(位置特定部)。磁気マーカ10の検出時には、その磁気マーカ10に対する作業車両11の前後方向の位置ずれ(相対位置)がゼロと特定される。また、センサアレイ2から取得した横ずれ量が、磁気マーカ10に対する作業車両11の車幅方向の位置ずれ(相対位置)として特定される。
【0037】
制御ユニット13は、前後方向においてセンサアレイ2の直下であって、かつ、車幅方向において、センサアレイ2の中央から横ずれ量の分だけずれた位置、すなわち検出された磁気マーカ10の敷設箇所を、第1の検査対象箇所と特定し(S202)、第1の検査を実施する(S204)。
【0038】
第1の検査を実施する制御ユニット13は、第1の検査対象箇所である磁気マーカ10の敷設箇所に対面した状態でセンサアレイ2が出力した1次元磁気分布データを記憶領域から読み出す。読み出す1次元磁気分布データは、鉛直方向の磁気強度の分布データが良い。制御ユニット13は、この1次元磁気分布データについて閾値処理を実行する(図8参照)。閾値処理は、1次元磁気分布データのうちの磁気マーカ10の真上に当たる位置(第1の検査対象箇所)の磁気計測値(絶対値)の大きさが、予め定めた磁気強度(閾値Th)を超えているか否かを判断する処理である。制御ユニット13は、磁気マーカ10の真上に当たる位置の磁気計測値(絶対値)の大きさが、閾値Thを超えている場合、磁気マーカ10の磁気的特性を良好と判断する。一方、閾値Thに満たない場合、磁気マーカ10の磁気的特性が良好ではないと判断する。なお、図8に例示の1次元磁気分布は、良好と判断される例である。
【0039】
(第2の検査)
第2の検査は、路面100S(図2参照)からの剥離など、磁気マーカ10の敷設状態の検査である。制御ユニット13は、上記のステップS202(図7)で特定された第1の検査対象箇所(S201で検出された磁気マーカ10の敷設箇所)に、検査ユニット15が到達する時点を予測する(S203)。具体的には、制御ユニット13は、車速及び操舵角に基づいて、第1の検査対象箇所である磁気マーカ10の敷設箇所に検査ユニット15が到達する第1の時点、及びその第1の時点における磁気マーカ10の車幅方向の位置を予測する。
【0040】
本例では、制御ユニット13は、作業車両11の移動距離を利用して、予測した第1の時点に達したことを判断する。具体的には、ステップS201で磁気マーカ10を検出した後の作業車両11の移動距離が、所定量(センサアレイ2と検査ユニット15との間隔である5m)になったとき、ステップS202の第1の検査対象箇所に検査ユニット15が到達する上記第1の時点に達したと判断する(S205:第1の時点)。
【0041】
制御ユニット13は、第1の検査対象箇所(S201で検出された磁気マーカ10の敷設箇所)に検査ユニット15が対面する状態になったとき(S205:第1の時点)、検査ユニット15を動作させるための制御信号を出力する。この制御信号には、上記のごとく予測した車幅方向における磁気マーカ10の位置の情報が含まれている。
【0042】
検査ユニット15は、制御ユニット13による制御信号に応じて第2の検査を実施する(S206)。検査ユニット15は、まず、制御信号が表す磁気マーカ10の車幅方向の位置に対応する1又は2以上のエアノズル151を選択する。そして、選択したエアノズル151から圧縮エアを路面100Sに向けて噴射する。
【0043】
検査ユニット15は、圧縮エアを噴射したときの磁気マーカ10の撮影データ及び音データに処理を施し、磁気マーカ10の剥離の有無を判定する。例えば、検査ユニット15は、剥離した部分のバタつきを画像的に検知したり、バタつき音を検知したりすることで剥離の有無を判断する。磁気マーカ10に剥離が生じていれば、敷設状態が不良である旨の検査結果を出力し、剥離が生じていなければ、敷設状態が良好である旨の検査結果を出力する。
【0044】
(第3の検査)
第3の検査は、磁気マーカ10の配置に関する検査である。上記の通り、第3の検査は、検出済の磁気マーカ10の検査ではなく、将来的な検出が予測される磁気マーカ10について行われる。制御ユニット13は、センサアレイ2によって磁気マーカ10が検出されたとき(図7中のS201:YES)、その磁気マーカ10の前方に隣り合う磁気マーカ10の敷設箇所を第2の検査対象箇所として特定する(S202)。この敷設箇所は、将来的な検出が予測される新たな磁気マーカ10の敷設位置の一例である。上記のごとく本例の構成では、磁気マーカ10が2m毎に配置されている。制御ユニット13は、いずれかの磁気マーカ10が検出されたとき、その磁気マーカ10の真上(相対位置の一例)にセンサアレイ2が位置していると特定し、2m前方の位置を第2の検査対象箇所として特定する。この検査対象箇所は、将来的に作業する箇所の一例である。
【0045】
制御ユニット13は、操舵角及び車速に基づいて、次の磁気マーカ10の敷設箇所(第2の検査対象箇所)にセンサアレイ2が到達する第2の時点を予測する(S203)。具体的には、制御ユニット13は、図7のS201において磁気マーカ10が検出された時点を基準として、操舵角及び車速に基づいて、2m前方の次の磁気マーカ10の敷設箇所(第2の検査対象箇所)にセンサアレイ2が到達する第2の時点を予測する。
【0046】
本例では、制御ユニット13は、上記の第2の検査の場合と同様、作業車両11の移動距離を利用して、予測した第2の時点に達したことを判断する(S205)。具体的には、制御ユニット13は、ステップS201で磁気マーカ10を検出した後の作業車両11の移動距離が、所定量(磁気マーカ10の間隔である2m)になったとき、第2の検査対象箇所にセンサアレイ2が到達する第2の時点に達したと判断する(S205:第2の時点)。
【0047】
制御ユニット13は、第2の時点に達したとき(S205:第2の時点)、第3の検査を実施する(S216)。第3の検査は、センサアレイ2が磁気マーカ10を検出できたか否かの検査である。制御ユニット13は、第2の時点において、センサアレイ2から磁気マーカ10を検出した旨の結果を取得できた場合、磁気マーカ10が所定の間隔で正しく配置されていると判断する。
【0048】
なお、ここで、上記の第1の検査の実施後、第2の検査及び第3の検査を実施するまでの作業車両11の移動距離は、それぞれ、5m、2mである。それ故、ステップS201でいずれかの磁気マーカ10が検出された時点(第1の検査の実施時点)を基準にすると、ステップS206の第2の検査よりもステップS216の第3の検査の方が先に実施される。
【0049】
制御ユニット13は、第3の検査により新たな磁気マーカ10が検出されたとき、その磁気マーカ10に基づき、新たな第1及び第2の検査対象箇所を特定する。つまり、最初にいずれかの磁気マーカ10を検出して第1の検査が実施された後、第2の検査が実施されるまでの間に、第3の検査の実施に応じて新たな第1及び第2の検査対象箇所が特定される。制御ユニット13は、第1及び第2の検査対象箇所や、第1及び第2の時点等のデータを、磁気マーカ10毎に記憶し管理している。
【0050】
制御ユニット13は、一の磁気マーカ10について、図7中のステップS204で実施した第1の検査、ステップS206で実施した第2の検査、ステップS216で実施した第3の検査、すべての検査において良好と判断できたとき、当該一の磁気マーカ10を良好と判断する。
【0051】
以上の通り、本例の作業システム1は、作業車両11が磁気マーカ10を伝うように自動走行し、その自動走行の最中に磁気マーカ10の検査を行うシステムである。この作業システム1による作業方法では、装置の一例である作業車両11が磁気マーカ10を伝って自動走行しながら磁気マーカ10の検査を実施する。
【0052】
なお、本例では、作業の一例である磁気マーカ10の検査として、磁気的特性(第1の検査)、敷設状態(第2の検査)、配置(第3の検査)を例示している。磁気マーカ10の検査として、欠けなど形状的な検査を実施することも良い。磁気マーカ10の形状的な検査は、例えば、磁気マーカ10の撮像画像を処理することで行うことができる。
【0053】
磁気マーカ10の剥離を検査する方法としては、例示した圧縮エアを噴射する方法に代えて、様々な方法が考えられる。例えば、微細なエア吸入孔が複数、穿孔されたスタンプ状の部材を利用して、磁気マーカ10の剥離を調べることも良い。エア吸入状態のスタンプ状の部材を磁気マーカ10に押し付けた状態から引き上げたとき、剥離が生じていなければ、全ての吸入孔がほぼ同時に開放状態となる。一方、磁気マーカ10に剥離が生じていれば、スタンプ状の部材を引き上げる際、剥離箇所が吸着されてめくれ上がる。このとき、剥離箇所に対応する吸入孔は、開放状態となるタイミングが他の吸入孔から遅れる。このような遅延を検出すれば、磁気マーカ10の剥離を検知可能である。
【0054】
なお、本例では、装置の一例として自動走行可能な作業車両11を例示している。装置としては、駆動輪を持たず、人力あるいは他車両により牽引される車両であっても良い。車速は、車輪の回転速度等によって検出可能であり、進路は、左右輪の回転差や操舵輪の操舵角等によって検出可能である。センサアレイ2や検査ユニット15等を備える車両であれば、自走するか否か、自動走行するか否か、等によらず、上記の(A)マーカ検出処理、(C)マーカ検査を実施可能である。
【0055】
装置である作業車両11が実施する作業としては、走路1Rを構成する付帯物の一例である磁気マーカ10を新たに設ける作業であっても良い。例えば、4m間隔で磁気マーカ10を敷設した後、隣り合う磁気マーカ10の中間に磁気マーカ10を敷設することにより、2m間隔で磁気マーカ10が配置された走路を形成することも良い。本例の作業システム1を利用すれば、隣り合う磁気マーカ10の中間に磁気マーカ10を敷設する作業を効率良く実施可能である。
【0056】
本例の第1の検査において磁力が不足すると判断された磁気マーカ10について、着磁する作業を実施し、これにより、付帯物の一例である磁気マーカ10の状態を改善する作業を実施しても良い。この作業を可能とするためには、磁気マーカ10に磁界を作用して着磁する着磁ユニットを作業車両11に設けると良い。また、例えば、第1の検査の際、車両側で検知可能な磁気マーカ10の磁極性を特定し、記憶装置に順次記録することも良い。この場合には、車線100に沿って敷設された磁気マーカ10の磁極性のデータベースを構築できる。
【0057】
本例の第1~3の検査に加えて、あるいは代えて、磁気マーカ10の敷設位置を特定する作業を追加しても良い。例えば、測位装置を備える作業車両11であれば、磁気マーカ10が検出されたときの磁気センサC8の絶対位置を特定可能である。磁気センサC8の絶対位置に基づき、磁気マーカ10が検出されたときの横ずれ量の分だけずれた位置を、磁気マーカ10の絶対位置として特定できる。このようにして特定した磁気マーカ10の絶対位置を記憶装置に順次記録すれば、車線100に沿って敷設された磁気マーカ10の絶対位置のデータベースを構築可能である。
【0058】
作業システム1は、走路をなす道路1Rを整備、保守あるいは管理する作業を実施可能である。例えば、磁気マーカ10を検査する作業は、保守、管理する作業に該当している。また例えば、磁気マーカを敷設する作業は、道路1Rの整備に該当している。磁気マーカに関連して道路を保守する作業としては、例えば、磁力の低下した磁気マーカを着磁する作業などがある。また、道路を管理する作業としては、磁気マーカの磁力を計測する作業や、磁気マーカの敷設位置を測位する作業などがある。
【0059】
道路1Rを整備する作業としては、レーンマークを新たに敷設する作業、縁石を設ける作業、ガードレールを設ける作業、分離帯に植栽を設ける作業、道路1Rに沿って標識を設ける作業、路面を舗装する作業など、道路1Rを形成するための各種作業がある。道路1Rを保守する作業としては、舗装面を補修したり、視認性の低下したレーンマークを塗り直したり、路肩のごみを除去(清掃)したり、植栽を剪定したり等、補修や清掃が必要になったときに適切に処置するための作業等がある。道路1Rを管理する作業としては、舗装面の割れや凹みなどの欠陥の有無を検査したり、レーンマークの視認性を検査したり、道路上の異物の有無を確認したり等、道路が良好な状態にあるか否かを調べる作業等がある。
【0060】
なお、本例では、磁気マーカ10を検出したとき、磁気マーカ10に対する作業車両11の代表点の相対位置として、車幅方向の横ずれ量を計測している。磁気マーカ10を検出したときには、センサアレイ2の直下に磁気マーカ10が位置するので、前後方向の位置ずれ(相対位置)はゼロである。これに代えて、前後方向がゼロではないとき、すなわち、磁気マーカ10を通過後の作業車両11の相対位置を特定することも良い。図10のごとく、磁気マーカ10を通過後の作業車両11の移動ベクトルV1は、経過時間、車速、操舵角等に基づいて特定可能である。磁気マーカ10を通過した後の作業車両11の磁気マーカ10に対する相対位置は、磁気マーカ10を検出したときの横ずれ量に相当するベクトルV2と、移動ベクトルV1と、の合計ベクトルV3として特定可能である。磁気マーカ10に対する相対位置である合計ベクトルV3に基づき、作業する箇所を特定することも良い。
【0061】
(実施例2)
本例は、実施例1の作業システムに基づき、作業内容を変更した例である。実施例1の作業内容は、磁気マーカ10の検査である。これに対して、本例の作業内容は、車線を区画するレーンマーク(白線、区画線)100Lの視認性を向上するための清掃である。この内容について、図11を参照して説明する。
【0062】
実施例1と同様、本例の作業システム1が作業対象とする車線100は、左右のレーンマーク100Lで区分された領域である。磁気マーカ10は、車線100の中央に沿って例えば2m間隔で配置されている。また、実施例1と同様、作業車両11は、磁気マーカ10を検出しながら車線100に沿って自動走行する。
【0063】
本例の作業車両11は、レーンマーク100Lを清掃するための左右一対の回転ブラシ17を備えている。回転ブラシ17は、作業車両11の前側に取り付けられたアーム171の先端に設けられている。アーム171は、路面100Sに沿って回動可能な状態で車体に取り付けられている。アーム171の回動範囲は、図11に示すように、アーム171が前進方向に沿う回動位置と、アーム171が車幅方向(外側)に沿う回動位置と、の間の約90度の範囲である。アーム171が回動することで、作業車両11に相対して、回転ブラシ17の車幅方向の位置を変更できる。これにより、車線100内の作業車両11の車幅方向の位置によらず、回転ブラシ17によってレーンマーク100Lを清掃できる。
【0064】
作業車両11は、実施例1の電気的な構成に加えて、アーム171を回動させるモータ173と、モータ173を制御するモータ制御ユニット170と、を備えている。モータ制御ユニット170は、制御ユニット13から入力された制御情報に応じてモータ173を制御する。制御ユニット13による制御情報には、少なくとも、センサアレイ2が出力する横ずれ量の情報が含まれている。モータ制御ユニット170は、制御ユニット13から入力された横ずれ量等の制御情報に応じて、回転ブラシ17がレーンマーク100Lの真上に位置するよう、アーム171を回動させる。
【0065】
なお、隣り合う磁気マーカ10の中間に作業車両11が位置するとき、図10を参照して説明したごとく、検出済の磁気マーカ10に対する作業車両11の相対位置を特定することも良い。この相対位置に基づいて作業する箇所を特定すれば、磁気マーカ10の間隔が長くなった場合にも作業する箇所を精度高く特定できる。
【0066】
本例では、作業として、レーンマーク100Lの清掃を例示している。作業としては、縁石等の路肩の清掃、ガードレールの清掃、植栽の剪定や水やり等の管理、トンネルの内壁などRC構造物の打音検査など、様々な作業が考えられる。車線100に沿って設けられた道路1Rの付帯物(付属物)に関する作業は、本発明の作業システムに好適である。あるいは、作業対象物が配列されている作業環境であれば、その配列方向に沿うように磁気マーカを配置することも良い。この場合には、作業環境が道路であるか、工場等の施設内であるか、によらず、例示した作業システム1による作業が可能である。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0067】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0068】
1 作業システム
1R 道路(走路)
10 磁気マーカ(付帯物、付属物)
100 車線
100L レーンマーク
100S 路面
11 作業車両(装置)
111 操舵輪
13 制御ユニット(位置特定部、作業箇所特定部、制御部)
15 検査ユニット
17 回転ブラシ
171 アーム
2 センサアレイ(磁気計測ユニット)
212 検出処理回路
Cn 磁気センサ
図1
図2
図3
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図5
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図11