(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】映像作成装置、番組制作システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/222 20060101AFI20250402BHJP
H04N 21/21 20110101ALI20250402BHJP
H04N 21/61 20110101ALI20250402BHJP
【FI】
H04N5/222
H04N21/21
H04N21/61
(21)【出願番号】P 2021078044
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2024-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】今村 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】倉掛 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中戸川 剛
(72)【発明者】
【氏名】小山 智史
(72)【発明者】
【氏名】川本 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】河原木 政宏
(72)【発明者】
【氏名】白戸 諒
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-027617(JP,A)
【文献】特開2015-084478(JP,A)
【文献】実開昭49-146828(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222
H04N 21/21
H04N 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置による撮影が行われる中継現場に設けられ、放送用の本線映像における前記撮影装置の撮影映像の使用に関するリターン映像を作成する映像作成装置であって、
前記中継現場とネットワークを介して接続された放送局には、前記撮影装置により撮影され、前記ネットワークを介して前記放送局に伝送された撮影映像を含む、複数の映像を切り替えて前記本線映像を制作するスイッチャーが設けられ、
前記スイッチャーの制御信号を、前記ネットワークを介して取得する通信部と、
前記制御信号に基づき、前記リターン映像を作成する制御部と、を備える映像作成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像作成装置において、
前記通信部は、前記撮影装置の撮影映像と、前記本線映像が前記ネットワークとは異なる伝送路を介して前記中継現場に伝送された送り返し映像とをさらに取得し、
前記制御部は、前記制御信号に基づき、前記本線映像における前記撮影映像と他の映像との切り替えの有無を判定し、前記判定の結果に応じて、前記取得した撮影映像と送り返し映像とを切り替えて、前記リターン映像を作成する、映像作成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の映像作成装置において、
前記通信部は、前記撮影装置の撮影映像と、前記本線映像が圧縮され、前記ネットワークを介して前記中継現場に伝送された送り返し映像とをさらに取得し、
前記制御部は、前記制御信号に基づき、前記本線映像における前記撮影映像と他の映像との切り替えの有無を判定し、前記判定の結果に応じて、前記取得した撮影映像と送り返し映像とを切り替えて、前記リターン映像を作成する、映像作成装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の映像作成装置において、
前記リターン映像として事前に用意された画像および映像を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記制御信号に基づき、前記本線映像が前記撮影装置の撮影画像から他の映像に切り替えられたと判定すると、前記取得した送り返し映像が前記撮影映像から前記他の映像に切り替えられるまでは、前記記憶部に記憶されている事前に用意された画像または映像に基づき前記リターン映像を作成し、前記取得した送り返し映像が前記撮影映像から前記他の映像に切り替えられると、前記取得した送り返し映像に基づき、前記リターン映像を作成する、映像作成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の映像作成装置において、
前記記憶部は、前記本線映像に使用されることが既知の画像および映像を記憶し、
前記制御部は、前記制御信号に基づき、前記本線映像において、前記本線映像に使用されることが既知の画像および映像が使用されていると判定すると、前記記憶部に記憶されている、前記本線映像に使用されることが既知の画像および映像に基づき、前記リターン映像を作成する、映像作成装置。
【請求項6】
撮影装置による撮影が行われる中継現場に設けられ、放送用の本線映像における前記撮影装置の撮影映像の使用に関するリターン映像を作成する映像作成装置と、
前記中継現場とネットワークを介して接続された放送局に設けられ、前記撮影装置により撮影され、前記ネットワークを介して前記放送局に伝送された撮影映像を含む、複数の映像を切り替えて前記本線映像を制作するスイッチャーと、を備え、
前記映像作成装置は、
前記スイッチャーの制御信号を、前記ネットワークを介して取得する通信部と、
前記制御信号に基づき、前記リターン映像を作成する制御部と、を備える、番組制作システム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1から5のいずれか一項に記載の映像作成装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像作成装置、番組制作システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
IP(Internet Protocol)を利用した新しい中継番組制作フローとして、中継現場と放送局とをIPネットワークを介して接続し、中継現場から離れた放送局で番組制作を行うリモートプロダクションが注目されている(例えば、非特許文献1参照。)。リモートプロダクションでは、SDI(Serial Digital Interface)によって構成される従来の番組制作システムと同様に、低遅延で番組制作を実施することが求められる。
【0003】
図12は、リモートプロダクションによる一般的な番組制作システム1aの構成例を示す図である。
【0004】
図12に示すように、中継現場と放送局とがIPネットワーク2を介して接続される。中継現場には、カメラ11と、モニタ12と、IPゲートウェイ13と、ネットワークスイッチ14とが設けられる。放送局には、ネットワークスイッチ21と、IPゲートウェイ22と、スイッチャー23aとが設けられる。
【0005】
カメラ11は、中継現場に1または複数設けられ、撮影者の操作に応じて、被写体を撮影する撮影装置である。カメラ11は、撮影映像の映像信号である、SDI規格に準拠したSDI信号をIPゲートウェイ13に出力する。カメラ11は、IPゲートウェイ13から出力された、後述する送り返し映像を、撮影者が視認可能に表示する機能を備える。
【0006】
IPゲートウェイ13は、カメラ11から出力されたSDI信号を、IP規格に準拠したIP信号に変換・圧縮して、ネットワークスイッチ14に出力する。また、IPゲートウェイ13は、ネットワークスイッチ14から出力されたIP信号を、SDI信号に変換・復号する。後述するように、
図12に示す番組制作システム1aにおいては、放送局で制作され、放送される本線映像と同様の映像が送り返し映像として、放送局から中継現場にIPネットワーク2を介して伝送される。IPゲートウェイ13は、ネットワークスイッチ14から出力されたIP信号(送り返し映像の映像信号)をSDI信号に変換・復号して、カメラ11およびモニタ12に出力する。
【0007】
ネットワークスイッチ14は、IPゲートウェイ13から出力されたIP信号を、IPネットワーク2を介して、放送局側に転送する。また、ネットワークスイッチ14は、放送局側からIPネットワーク2を介して送信されてきたIP信号(送り返し映像の映像信号)を受信し、IPゲートウェイ13に転送する。
【0008】
ネットワークスイッチ21は、中継現場側からIPネットワーク2を介して送信されてきたIP信号(カメラ11の撮影映像の映像信号)を受信し、IPゲートウェイ22に出力する。また、ネットワークスイッチ21は、IPゲートウェイ22から出力されたIP信号を、IPネットワーク2を介して、中継現場側に転送する。
【0009】
IPゲートウェイ22は、ネットワークスイッチ21から出力されたIP信号(カメラ11の撮影映像の映像信号)をSDI信号に変換・復号し、スイッチャー23aに出力する。また、IPゲートウェイ22は、スイッチャー23aから出力されたSDI信号(送り返し映像の映像信号)をIP信号に変換・圧縮して、ネットワークスイッチ21に出力する。
【0010】
スイッチャー23aは、IPゲートウェイ22からSDI信号(カメラ11の撮影映像の映像信号)が入力される。また、スイッチャー23aは、番組制作に用いられるVTRおよびCG(Computer Graphic)などの映像が入力される。また、スイッチャー23aは、番組制作に用いられる字幕スーパーなどの画像が入力される。スイッチャー23aは、制御信号に従い、上述した複数の映像を適宜切り替えて、放送用の本線映像を制作する。また、スイッチャー23aは、制作した本線映像を送り返し映像としてIPゲートウェイ22に出力する。
【0011】
なお、
図12においては、IPゲートウェイ13,22が独立して設けられる例を示しているが、これに限られるものではない。IPゲートウェイ13は、カメラ11、モニタ12あるいはネットワークスイッチ14に内蔵されてもよい。また、IPゲートウェイ22は、ネットワークスイッチ21あるいはスイッチャー23aに内蔵されてもよい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】川本潤一郎、小山智史、河原木政宏、斎藤恭一、倉掛卓也、「リモートプロダクションを実現する軽圧縮8K IP伝送装置の開発」、NHK技研 R&D、No.179、2020年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図12に示す番組制作システム1aでは、放送局から撮影現場にIPネットワーク2を介して伝送された送り返し映像は、カメラ11およびモニタ12で表示され、例えば、カメラ11の撮影者による、カメラ11の操作の判断材料として用いられる。ここで、放送局から伝送される送り返し映像の遅延が大きいと、このような運用の難易度が増してしまう。
【0014】
送り返し映像の遅延量は、
図13に示すように、(1)IPゲートウェイ13における、SDI信号からIP信号への変換・圧縮による遅延、(2)中継現場から放送局へのIP信号の伝送遅延、(3)IPゲートウェイ22における、IP信号からSDI信号への変換・復号による遅延、(4)スイッチャー23aでの処理遅延、(5)IPゲートウェイ22における、SDI信号からIP信号への変換・圧縮による遅延、(6)放送局から中継現場へのIP信号の伝送遅延、(7)IPゲートウェイ13における、IP信号からSDI信号への変換・復号による遅延、および、各装置を繋ぐケーブルでの遅延の合計である。番組制作の円滑な運用のためには、送り返し映像の遅延量は、所定の許容値以下とする必要がある。
【0015】
また、高画質の映像信号を低遅延で、IPネットワーク2を介して伝送する場合、回線コスト用の高騰を招いてしまう。回線コストの高騰は、スタジオ内などローカルなエリア内で映像を伝送する場合は問題とならないが、WAN(Wide Area Network)を経由して映像を伝送する場合に特に問題となる。
【0016】
したがって、中継現場と放送局との間で伝送される信号のデータ量の削減を図ることが求められている。
【0017】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、中継現場と放送局との間で伝送される信号のデータ量の削減を図ることができる、映像作成装置、番組制作システムおよびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明に係る映像作成装置は、撮影装置による撮影が行われる中継現場に設けられ、放送用の本線映像における前記撮影装置の撮影映像の使用に関するリターン映像を作成する映像作成装置であって、前記中継現場とネットワークを介して接続された放送局には、前記撮影装置により撮影され、前記ネットワークを介して前記放送局に伝送された撮影映像を含む、複数の映像を切り替えて前記本線映像を制作するスイッチャーが設けられ、前記スイッチャーの制御信号を、前記ネットワークを介して取得する通信部と、前記制御信号に基づき、前記リターン映像を作成する制御部と、を備える。
【0019】
また、本発明に係る映像作成装置において、前記通信部は、前記撮影装置の撮影映像と、前記本線映像が前記ネットワークとは異なる伝送路を介して前記中継現場に伝送された送り返し映像とをさらに取得し、前記制御部は、前記制御信号に基づき、前記本線映像における前記撮影映像と他の映像との切り替えの有無を判定し、前記判定の結果に応じて、前記取得した撮影映像と送り返し映像とを切り替えて、前記リターン映像を作成することが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る映像作成装置において、前記通信部は、前記撮影装置の撮影映像と、前記本線映像が圧縮され、前記ネットワークを介して前記中継現場に伝送された送り返し映像とをさらに取得し、前記制御部は、前記制御信号に基づき、前記本線映像における前記撮影映像と他の映像との切り替えの有無を判定し、前記判定の結果に応じて、前記取得した撮影映像と送り返し映像とを切り替えて、前記リターン映像を作成することが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る映像作成装置において、前記リターン映像として事前に用意された画像および映像を記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記制御信号に基づき、前記本線映像が前記撮影装置の撮影画像から他の映像に切り替えられたと判定すると、前記取得した送り返し映像が前記撮影映像から前記他の映像に切り替えられるまでは、前記記憶部に記憶されている事前に用意された画像または映像に基づき前記リターン映像を作成し、前記取得した送り返し映像が前記撮影映像から前記他の映像に切り替えられると、前記取得した送り返し映像に基づき、前記リターン映像を作成することが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る映像作成装置において、前記記憶部は、前記本線映像に使用されることが既知の画像および映像を記憶し、前記制御部は、前記制御信号に基づき、前記本線映像において、前記本線映像に使用されることが既知の画像および映像が使用されていると判定すると、前記記憶部に記憶されている、前記本線映像に使用されることが既知の画像および映像に基づき、前記リターン映像を作成することが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る番組制作システムは、撮影装置による撮影が行われる中継現場に設けられ、放送用の本線映像における前記撮影装置の撮影映像の使用に関するリターン映像を作成する映像作成装置と、放送局に設けられ、前記撮影装置により撮影され、ネットワークを介して前記放送局に伝送された撮影映像を含む、複数の映像を切り替えて前記本線映像を制作するスイッチャーと、を備え、前記映像作成装置は、前記スイッチャーの制御信号を、前記ネットワークを介して取得する通信部と、前記制御信号に基づき、前記リターン映像を作成する制御部と、を備える。
【0024】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、上述したいずれかの映像作成装置として機能させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る映像作成装置、番組制作システムおよびプログラムによれば、中継現場と放送局との間で伝送される信号のデータ量の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る番組制作システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1に示す映像作成装置の構成例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る番組制作システムの構成の別の一例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る番組制作システムの構成のさらに別の一例を示す図である。
【
図5】
図1に示すスイッチャーの制御信号について説明するための図である。
【
図6】
図2に示す制御部によるリターン映像の作成の一例を示す図である。
【
図7A】リターン映像として事前に用意される画像または映像の一例を示す図である。
【
図7B】リターン映像として事前に用意される画像または映像の別の一例を示す図である。
【
図7C】リターン映像として事前に用意される画像または映像のさらに別の一例を示す図である。
【
図8】
図2に示す制御部によるリターン映像の作成の別の一例を示す図である。
【
図9A】
図2に示す制御部による、リターン映像におけるスーパーの表示の一例を示す図である。
【
図9B】
図2に示す制御部による、リターン映像におけるスーパーの表示の別の一例を示す図である。
【
図10】
図2に示す制御部による、本線映像がMIXにより切り替えられる場合の、リターン映像の作成について説明するための図である。
【
図11】
図2に示す映像作成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図12】従来の番組制作システムの構成例を示す図である。
【
図13】
図12に示す番組制作システムにおける、送り返し映像の遅延について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る番組制作システム1の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る番組制作システム1は、中継現場から離れた放送局で中継番組の制作を行うリモートプロダクションにより番組制作を行うものである。
図1において、
図12と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る番組制作システム1は、中継現場に設けられた、撮影装置としてのカメラ11と、モニタ12と、IPゲートウェイ13と、ネットワークスイッチ14と、映像作成装置100と、を備える。また、本実施形態に係る番組制作システム1は、放送局に設けられた、ネットワークスイッチ21と、IPゲートウェイ22と、スイッチャー23と、を備える。本実施形態に係る番組制作システム1は、
図12に示す番組制作システム1aと比較して、スイッチャー23aをスイッチャー23に変更した点と、映像作成装置100を追加した点と、が異なる。
【0030】
スイッチャー23は、IPネットワーク2を介して放送局に伝送された、カメラ11の撮影映像を含む、複数の映像(VTR、CGおよびスーパーなど)を切り替えて、放送用の本線映像を制作する。スイッチャー23は、複数の映像の切り替えに関する制御信号に従い、複数の映像を切り替えて本線映像を制作する。本実施形態においては、スイッチャー23は、本線映像を作成するための、複数の映像の切り替えに関する制御信号を、ネットワークスイッチ21に出力する。ネットワークスイッチ21に出力された制御信号は、IPネットワーク2を介して、中継現場側に送信される。中継現場側に送信された制御信号は、ネットワークスイッチ14により受信され、後述する映像作成装置100に出力される。すなわち、スイッチャー23は、複数の映像の切り替えに関する制御信号を、IPネットワーク2を介して、映像作成装置100に送信する。
【0031】
映像作成装置100は、ネットワークスイッチ14からスイッチャー23の制御信号が入力される。また、映像作成装置100は、カメラ11の撮影映像が入力される。中継現場に複数のカメラ11が設けられる場合には、映像作成装置100は、複数のカメラ11それぞれの撮影映像が入力される。映像作成装置100は、本線映像に応じたリターン映像を作成する。リターン映像は、撮影現場において表示され、本線映像におけるカメラ11の撮影映像の使用に関する映像である。リターン映像は、例えば、カメラ11あるいはモニタ12で表示され、カメラ11の撮影者による、カメラ11の操作の判断材料などに使用される映像である。映像作成装置100は、入力された制御信号に基づき、リターン映像を作成する。
【0032】
図2は、映像作成装置100の構成例を示す図である。
【0033】
図2に示すように、映像作成装置100は、通信部101と、記憶部102と、制御部103と、を備える。
【0034】
通信部101は、少なくとも1つの通信用インタフェースを含む。通信用インタフェースは、例えば、LAN(Local Area Network)インタフェースまたはBluetooth(登録商標)インタフェースなどである。通信部101は、通信用インタフェースを介して、中継現場に設けられた各構成(カメラ11、モニタ12、ネットワークスイッチ14および後述する放送チューナー15など)と、有線通信または無線通信が可能である。通信部101は、例えば、カメラ11の撮影映像(SDI信号)を取得するための、SDI入力用のインタフェースを備える。
【0035】
記憶部102は、例えば、半導体メモリ、磁気メモリまたは光メモリであるが、これらに限定されない。記憶部102は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置またはキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部102は、映像作成装置100の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部102は、システムプログラム、アプリケーションプログラムなどを記憶してよい。また、記憶部102は、リターン映像として事前に用意された画像および映像を記憶する。リターン映像として事前に用意された画像および映像には、例えば、本線映像で使用される映像がカメラ11の撮影映像から他の映像に切り替えられたことを示す画像および映像が含まれてよい。また、本線映像に使用されることが既知の画像(スーパーなど)および映像(VTR、CGなど)が含まれてよい。
【0036】
制御部103は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路またはこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)もしくはGPU(Graphics Processing Unit)などの汎用プロセッサまたは特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specification Integrated Circuit)である。制御部103は、映像作成装置100の各部を制御しながら、映像作成装置100の動作に関わる処理を実行する。
【0037】
制御部103は、ネットワークスイッチ14から出力された、スイッチャー23の制御信号に基づき、リターン映像を作成する。制御部103は、例えば、制御信号に基づき、本線映像としてカメラ11の撮影映像が用いられているか否かを判定し、本線映像としてカメラ11の撮影映像が用いられていると判定すると、本線映像が別の映像に切り替えれたと判定するまで、カメラ11の撮影映像をリターン映像として用いる。制御部103は、本線映像がカメラ11の撮影映像から切り替えられたと判定すると、リターン映像をカメラ11の撮影映像から別の映像に切り替える。制御部103は、作成したリターン映像を、通信部101を介してカメラ11およびモニタ12に出力して表示させる。
【0038】
カメラ11の撮影者は、本線映像としてカメラ11の撮影映像が用いられているか否か(すなわち、本線映像として使用されるカメラ11の撮影映像の切り替わりのタイミング)が分かれば、カメラ11を移動させる、カメラ11の撮影を停止する、などのカメラ11の操作を行ってよいか否かを判断することができる。したがって、カメラ11の撮影者は、従来の番組制作システム1aのように、送り返し映像が表示されなくても、制御部103が作成する、本線映像におけるカメラ11の撮影映像の使用に関するリターン映像から、カメラ11の操作を判断することができる。ここで、通常、スイッチャー23の制御信号は、送り返し映像と比べて、データ量が少ない。したがって、本実施形態に係る番組制作システム1によれば、中継現場と放送局との間で伝送される信号のデータ量の削減を図ることができる。
【0039】
映像作成装置100は、放送局側から中継現場側に伝送される送り返し映像に基づき、リターン映像を作成してもよい。ここで、本実施形態においては、送り返し映像は、IPネットワーク2とは別の伝送路を介して、あるいは、従来の番組制作システム1と比較して、IPネットワーク2を介して伝送される信号のデータ量の増加を低減して伝送される。したがって、本実施形態に係る番組制作システム1は、送り返し映像を用いてリターン映像を作成しても、従来の番組制作システム1と比較して、IPネットワーク2を介して伝送される信号のデータ量の削減を図ることができる。
【0040】
中継現場において送り返し映像を取得するための構成としては、例えば、
図1に示すように、中継現場に、本線映像を用いた放送を受信する放送チューナー15を設ける構成がある。この構成では、放送チューナー15が、放送された本線映像を受信し、受信した本線映像(以下、「放送映像」と称する。)を映像作成装置100に入力する。通信部101は、放送映像(IPネットワーク2とは異なる伝送路を介して伝送された本線映像)を送り返し映像として取得する。制御部103は、制御信号に基づき、カメラ11の撮影映像と、放送映像(送り返し映像)とを切り替えて、リターン映像を作成する。例えば、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像におけるカメラ11の撮影映像と他の映像との切り替えの有無を判定し、判定結果に応じて、取得した撮影映像と放送映像(本線映像がIPネットワーク2とは異なる伝送路を介して中継現場に伝送された送り返し映像)とを切り替えて、リターン映像を作成する。なお、通常、カメラ11には2系統以上の映像を入力することができるので、制御部103は、リターン映像に加えて、放送映像をカメラ11に入力してもよい。また、放送チューナー15で受信した放送映像を2系統に分岐し、一方の系統の放送映像を映像作成装置100に入力し、他方の系統の放送映像を直接、カメラ11に入力してもよい。
【0041】
また、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像において、本線映像に使用されることが既知の画像および映像が用いられていると判定すると、記憶部102に予め記憶されている、既知の画像および映像に基づき、リターン映像を作成してもよい。カメラ11で撮影映像が撮影されてから、その撮影映像を含む本線映像が放送され、放送チューナー15で受信されるまでには、例えば、2~3秒程度の遅延が発生する。そのため、放送チューナー15で受信した放送映像を用いてリターン映像を作成すると、リターン映像に遅延が発生してしまう。そこで、本線映像で使用されることが既知の画像および映像を予め記憶部102で記憶しておき、その画像および映像が本線映像で用いられる場合には、記憶されている画像および映像を用いてリターン映像を作成することで、リターン映像の遅延を抑制することができる。
【0042】
図1においては、映像作成装置100は中継現場に設けられた放送チューナー15から本線映像(送り返し映像)を取得する例を説明したが、中継現場において送り返し映像を取得する方法は、この例に限られない。
【0043】
図3は、本実施形態に係る番組制作システム1の構成の別の一例を示す図である。
図3において、
図1と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0044】
図3に示す番組制作システム1は、中継現場に設けられた、カメラ11と、モニタ12と、IPゲートウェイ13と、ネットワークスイッチ14と、映像作成装置100と、送り返し受信装置16と、を備える。また、
図3に示す番組制作システム1は、放送局に設けられた、ネットワークスイッチ21と、IPゲートウェイ22と、スイッチャー23と、送り返し送信装置24と、を備える。
図3に示す番組制作システム1は、
図1に示す番組制作システム1と比較して、送り返し送信装置24および送り返し受信装置16を追加した点が異なる。
【0045】
送り返し送信装置24は、スイッチャー23が作成した本線映像が入力される。送り返し送信装置24は、入力された本線映像の映像信号をIP信号に変換・圧縮し、送り返し映像(圧縮した送り返し映像)として中継現場側に送信する。具体的には、送り返し送信装置24は、本線映像を低画質・低フレームレートに圧縮した映像(圧縮した送り返し映像)を生成し、圧縮した送り返し映像の映像信号をIPパケット化してネットワークスイッチ21に出力する。
【0046】
ネットワークスイッチ21は、スイッチャー23から入力されたスイッチャー23の制御信号を、IPネットワーク2を介して、中継現場側に送信する。また、ネットワークスイッチ21は、送り返し送信装置24から出力された圧縮された送り返し映像の映像信号(IP信号)を、IPネットワーク2を介して、中継現場側に送信する。
【0047】
ネットワークスイッチ14は、放送局側から送信されてきたスイッチャー23の制御信号を受信し、IPゲートウェイ13に出力する。また、ネットワークスイッチ14は、放送局側から送信されてきた、圧縮された送り返し映像を受信し、送り返し受信装置16に出力する。
【0048】
送り返し受信装置16は、ネットワークスイッチ14から出力されたIP信号をSDI信号に変換・復号して圧縮された送り返し映像を取得し、映像作成装置100に出力する。
【0049】
映像作成装置100(制御部103)は、送り返し受信装置16から出力された、圧縮された送り返し映像(圧縮された本線映像)に基づき、リターン映像を作成してもよい。映像作成装置100は、例えば、制御信号に基づき、本線映像におけるカメラ11の撮影映像と他の映像との切り替えの有無を判定し、判定の結果に応じて、取得した撮影映像と圧縮された送り返し映像とを切り替えて、リターン映像を作成してよい。映像作成装置100(制御部103)は、作成したリターン映像を、通信部101を介してカメラ11およびモニタ12に出力して表示させる。また、上述したように、カメラ11には2系統以上の映像を入力することができる。制御部103は、リターン映像に加えて、圧縮された本線映像をカメラ11に入力してもよい。また、送り返し受信装置16で受信した、圧縮された送り返し映像を2系統に分岐し、一方の系統の送り返し映像を映像作成装置100に入力し、他方の系統の送り返し映像を直接、カメラ11に入力してもよい。
【0050】
上述したように、放送された本線映像を放送チューナー15から取得する場合、カメラ11で撮影映像が撮影されてから、その撮影映像を含む本線映像が放送チューナー15で受信されるまでには、2~3秒程度の遅延が発生する。一方、圧縮された送り返し映像を、IPネットワーク2を介して伝送する場合、本線映像の圧縮および復号による遅延(例えば、数百ms)と、IPネットワーク2を伝送する伝送遅延(例えば、数十ms)とを合わせても、本線映像を放送チューナー15から取得する場合と比べて、遅延量が小さい。したがって、本線映像を圧縮した送り返し映像(データ量を低減した送り返し映像)を、IPネットワーク2を介して、放送局から中継現場に送信することで、リターン映像の遅延を抑制することができる。
【0051】
図4は、本実施形態に係る番組制作システム1の構成のさらに別の一例を示す図である。
図4において、
図3と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0052】
図4に示す番組制作システム1は、中継現場に設けられた、カメラ11と、モニタ12と、IPゲートウェイ13と、ネットワークスイッチ14と、映像作成装置100と、送り返し受信装置16Aと、を備える。また、
図4に示す番組制作システム1は、放送局に設けられた、ネットワークスイッチ21と、IPゲートウェイ22と、スイッチャー23と、送り返し送信装置24Aと、を備える。
図4に示す番組制作システム1は、
図3に示す番組制作システム1と比較して、送り返し送信装置24および送り返し受信装置16をそれぞれ、送り返し送信装置24Aおよび送り返し受信装置16Aに変更した点が異なる。
【0053】
送り返し送信装置24Aは、送り返し送信装置24と異なり、圧縮された送り返し映像を、携帯電話網を介して、中継現場側の送り返し受信装置16Aに送信する。送り返し受信装置16Aは、携帯電話網を介して送信されてきた、圧縮された送り返し映像を受信し、映像作成装置100に出力する。
【0054】
映像作成装置100(制御部103)は、制御信号に基づき、カメラ11の撮影映像と、圧縮された送り返し映像(圧縮された本線映像)とを切り替えて、リターン映像を作成する。例えば、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像におけるカメラ11の撮影映像と他の映像との切り替えの有無を判定し、判定結果に応じて、取得した撮影映像と圧縮された送り返し映像とを切り替えて、リターン映像を作成する。映像作成装置100(制御部103)は、作成したリターン映像を、通信部101を介してカメラ11およびモニタ12に出力して表示させる。また、上述したように、カメラ11には2系統以上の映像を入力することができるので、制御部103は、リターン映像に加えて、圧縮された送り返し映像をカメラ11に入力してもよい。また、送り返し受信装置16で受信した、圧縮された送り返し映像を2系統に分岐し、一方の系統の送り返し映像を映像作成装置100に入力し、他方の系統の送り返し映像を直接、カメラ11に入力してもよい。
【0055】
圧縮された送り返し映像を、携帯電話網を介して伝送する場合、本線映像の圧縮および復号による遅延(例えば、数百ms)と、携帯電話網を伝送する伝送遅延(例えば、数百ms)とを合わせても、本線映像を放送チューナー15から取得する場合と比べて、遅延量が小さい。したがって、本線映像を圧縮した送り返し映像(データ量を低減した送り返し映像)を、携帯電話網を介して、放送局から中継現場に送信することで、リターン映像の遅延を抑制することができる。
【0056】
送り返し送信装置24,24Aとしては、本線映像の低画質・低フレームレートの映像に圧縮し、IPネットワーク2あるいは携帯電話網を介して送信する機能を備えていれば、任意の装置を用いることができる。また、送り返し受信装置16,16Aとしては、IPネットワーク2あるいは携帯電話網を介して送信された、圧縮された映像信号を復号する機能を備えていれば、任意の装置を用いることができる。
【0057】
次に、映像作成装置100の動作について、より詳細に説明する。まず、スイッチャー23の制御信号について、
図5を参照して説明する。以下では、スイッチャー23の制御信号として、タリー信号を用いるものとして説明する。タリー信号とは、対応する映像が本線映像として用いられているか否かを示す信号である。
【0058】
図5においては、複数の映像(中継現場に設けられた2つのカメラ11(中継現場カメラ11-1,11-2)の撮影映像、スタジオ(放送局)に設けられたカメラ(スタジオカメラ)の撮影映像、スタジオ再生のVTRおよびCG)が切り替えられて本線映像が制作されるとものする。
【0059】
具体的には、
図5に示すように、時刻t11から、中継現場カメラ11-1の撮影映像が本線映像として用いられ、時刻t12において、本線映像が、中継現場カメラ11-1の撮影映像から、スタジオカメラの撮影映像に切り替えられたとする。このように、本線映像を、ある時刻において一の映像から別の映像に切り替える映像切り替え方法を、以下では「CUT」と称する。次に、時刻t14において、本線映像が、スタジオカメラの撮影映像からスタジオ再生のVTRに、「CUT」により切り替えられたとする。また、時刻t13(t12<t13<t14)から時刻t14までの間、スタジオカメラの撮影映像に、CGが重畳されたとする。次に、時刻t15から時刻t16にかけて、スタジオ再生のVTRが徐々に消え、中継現場カメラ11-2の撮影映像が徐々に表示されるように、本線映像が切り替えられたとする。このように、本線映像を、所定の時間をかけて、一の映像から別の映像に徐々に切り替える映像切り替え方法を、以下では、「MIX」と称する。次に、時刻t17において、本線映像が、中継現場カメラ11-2の撮影映像からスタジオ再生のVTRに、「CUT」により切り替えられたとする。
【0060】
図5に示すような本線映像の切り替えが行われた場合、時刻t12において、中継現場カメラ11-1の撮影映像に対応するタリー信号がONからOFFになり、スタジオカメラの撮影映像に対応するタリー信号がONになる。時刻t13において、CGに対応するタリー信号がONになる。時刻t14において、スタジオ再生のVTRに対応するタリー信号がONとなり、スタジオカメラの撮影映像に対応するタリー信号およびCGに対応するタリー信号がOFFとなる。時刻t15において、中継現場カメラ11-2の撮影映像に対応するタリー信号がONとなる。時刻t15では、スタジオ再生のVTRに対応するタリー信号はONのままである。時刻t16において、スタジオ再生のVTRに対応するタリー信号がOFFとなる。時刻t17において、中継現場カメラ11-2の撮影映像に対応するタリー信号がOFFとなり、スタジオ再生のVTRに対応するタリー信号がONとなる。
【0061】
このように、本線映像に用いられる映像の切り替わりに応じて、各映像に対応するタリー信号がONまたはOFFとなる。制御部103は、各映像に対応するタリー信号に基づき、どの映像が本線映像として用いられているかを判定することができる。したがって、制御部103は、タリー信号に基づき、カメラ11の撮影映像が本線映像として用いられているか否かを判定し、その判定の結果に応じて、撮影映像と本線映像(放送映像あるいは圧縮された送り返し映像)とを切り替えて、リターン映像を作成することができる。
【0062】
次に、制御部103によるリターン映像の作成について、
図6を参照してより詳細に説明する。以下では、
図6に示すように、カメラ11-1の撮影映像、カメラ11-2の撮影映像、VTR、カメラ11-2の撮影映像、カメラ11-1の撮影映像の順に、スイッチャー23によるスイッチング後の映像(本線映像)が切り替えられたとする。また、以下では、
図3および
図4に示すように、放送チューナー15が受信した放送映像、および、IPネットワーク2あるいは携帯電話網を介して伝送された送り返し映像が映像作成装置100に入力されるものとして説明する。
【0063】
上述したように、本線映像(スイッチング後の映像)に対して、放送映像および送り返し映像は所定の遅延量だけ遅延する。以下では、本線映像に対する放送映像の遅延量をTaとし、本線映像に対する送り返し映像の遅延量をTbとする。上述したように、放送映像の遅延量Taは数秒程度であり、圧縮された送り返し映像の遅延量は数百m秒程度である。したがって、
図6に示すように、放送映像の遅延量Ta>送り返し映像の遅延量Tbである。
【0064】
制御部103は、放送局側から送信されてきたスイッチャー23の制御信号に基づき、リターン映像を作成する。スイッチャー23の制御信号を、IPネットワーク2を介して伝送する伝送遅延と、映像作成装置100における処理遅延とを合わせた遅延量が、送り返し映像の遅延量Tbよりも小さければ、本線映像に対するリターン映像の遅延量Tcは、送り返し映像の遅延量Tbよりも小さくなる。スイッチャー23の制御信号のデータ量は送り返し映像と比べてはるかに小さく、IPネットワーク2を介した伝送による伝送遅延は非常に小さい。そのため、
図6に示すように、通常、リターン映像の遅延量Tcは送り返し映像の遅延量Tbよりも小さくなる。
【0065】
制御部103は、制御信号タリー信号)に基づき、本線映像としてカメラ11-1の撮影映像が用いられていると判定すると、カメラ11-1の撮影映像をリターン映像として出力する。次に、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像がカメラ11-1の撮影映像からカメラ11-2の撮影映像に切り替わったと判定すると、カメラ11-2の撮影映像をリターン映像として出力する。
【0066】
次に、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像がカメラ11-2の撮影映像からVTRに切り替わったと判定する。本線映像が、中継現場で得られる映像(カメラ11の撮影映像)から、中継現場で得られない映像に切り替えられた場合の、リターン映像の作成については、いくつかのパターンが考えられる。
【0067】
1つ目のパターン(パターンA)では、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像が、カメラ11-2の撮影映像からVTR(中継現場で得られない映像)に切り替わったと判定すると、カメラ11-2の撮影映像から事前に用意した画像または映像に、リターン映像を切り替える。事前に用意した画像または映像は、記憶部102に予め記憶される。パターンAでは、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像においてVTRがカメラ11-2の撮影映像(中継現場で得られる映像)に切り替えられたと判定するまで、リターン映像として、事前に用意した画像または映像を出力する。
【0068】
2つ目のパターン(パターンB)では、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像が、カメラ11-2の撮影映像からVTRに切り替わったと判定すると、リターン映像を、カメラ11-2の撮影映像から、事前に用意した画像または映像に所定時間だけ切り替える。制御部103は、例えば、
図6に示すように、送り返し映像がカメラ11-2の撮影映像からVTRに切り替わるまでは、事前に用意した画像または映像をリターン映像として出力し、その後は、送り返し映像におけるVTRをリターン映像として出力する。
【0069】
3つ目のパターン(パターンC)では、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像が、カメラ11-2の撮影映像からVTR(中継現場で得られない映像)に切り替わったと判定すると、リターン映像を、カメラ11-2の撮影映像から、事前に用意した画像または映像に所定時間だけ切り替える。制御部103は、例えば、
図6に示すように、放送映像がカメラ11-2の撮影映像からVTRに切り替わるまでは、事前に用意した画像または映像をリターン映像として出力し、その後は、放送映像におけるVTRをリターン映像として出力する。
【0070】
パターンBおよびパターンCでは、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像がカメラ11の撮影画像から他の映像(中継現場で得られない映像)に切り替えられたと判定すると、取得した本線映像(放送映像あるいは圧縮された送り返し映像)がカメラ11の撮影映像から他の映像に切り替えられるまでは、記憶部102に記憶されている事前に用意された画像または映像に基づきリターン映像を作成する。そして、制御部103は、取得した本線映像がカメラ11の撮影映像から他の映像に切り替えられると、取得した本線映像に基づき、リターン映像を作成する。
【0071】
このように、事前に用意した画像または映像をリターン映像として一定時間(以下、「切り替え待機時間」と称する。)だけ出力した後に、放送映像あるいは送り返し映像をリターン映像として出力する代わりに、切り替え待機時間では、カメラ11-2の撮影映像をリターン映像として出力することも考えられる。しかしながら、この場合、リターン映像としてカメラ11-2の同じ撮影映像が繰り返し出力されることになってしまう。一方、パターンBおよびパターンCの切り替え方法では、
図6に示すように、リターン映像として同じ映像が繰り返し出力されることを防ぐことができる。
【0072】
パターンBにおける切り替え待機時間は、送り返し映像の遅延量Tbからリターン映像の遅延量Tcを引いた値である。また、パターンCにおける切り替え待機時間は、放送映像の遅延量Taからリターン映像の遅延量Tcを引いた値である。。放送映像の遅延量Taは、一定である。送り返し映像の遅延量Tbは、IPネットワーク2あるいは携帯電話網の伝送時間のジッタを含むため、変動する。ただし、その変動量は全体の遅延量Tbと比較して小さいため、送り返し映像の遅延量Tbは概ね一定と見なすことができる。リターン映像の遅延量Tcは、スイッチャー23の制御信号の伝送時間のジッタなどで変動するが、その変動量は、送り返し映像の遅延量Tbおよび放送映像の遅延量Taと比べて非常に小さい。そのため、リターン映像の遅延量Tcは一定値とみなすことができる。切り替え待機時間は、例えば、既知の遅延量Ta,Tb,Tcに基づき、映像作成装置100に手動により設定される。また、制御部103が、既知の遅延量Ta,Tb,Tcに基づき、切り替え待機時間を計算して設定してもよい。
【0073】
上述したように、放送映像の遅延量Ta、送り返し映像の遅延量Tbおよびリターン映像の遅延量Tcはそれぞれ一定であり、既知である。したがって、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像がカメラ11-2の撮影映像からVTRに切り替わるタイミングを特定することができれば、送り返し映像および放送映像において、カメラ11-2の撮影映像からVTRに切り替わるタイミングも特定することができる。
【0074】
図6における、事前に用意した画像または映像は、本線映像がカメラ11の撮影映像から切り替わったことが分かれば、任意の画像または映像であってよい。また、本線映像の切り替わり先の映像に合わせて、複数の画像または映像が事前に用意されてもよい。例えば、切り替わり先の映像がVTRであることを示す画像または映像(
図7A)、切り替わり先の映像がリプレイ映像(カメラ11の撮影映像を繰り返す映像)であることを示す画像または映像(
図7B)、切り替わり先の映像がスタジオカメラの撮影映像であることを示す画像または映像(
図7C)などが事前に用意され、記憶部102に記憶されてよい。
【0075】
図8は、制御部103によるリターン映像の作成の別の例を示す図である。
図8においては、リターン映像として事前に用意された画像および映像として、本線映像に使用されることが既知の画像または映像が記憶部102に事前に記憶されているものとする。以下では、
図8に示すように、本線映像が、カメラ11-1の撮影映像、カメラ11-2の撮影映像、VTR1、VTR2、カメラ11-2の撮影映像、リプレイ映像、画像1および画像2の順に切り替えられたとする。ここで、VTR1、VTR2、画像1および画像2は、本線映像で用いられることが既知であり、記憶部102に記憶されているとする。
【0076】
制御部103は、本線映像が、カメラ11-1の撮影映像、カメラ11-2の撮影映像、VTR1、VTR2の順に切り替えられるのに合わせて、リターン映像を、カメラ11-1の撮影映像、カメラ11-2の撮影映像、VTR1、VTR2の順に切り替える。具体的には、制御部103は、本線映像における映像の切り替わりのタイミングから、本線映像に対するリターン映像の遅延量Tcだけ遅延させて、リターン映像における映像を切り替える。ここで、制御部103は、本線映像がカメラ11-2の撮影画像からVTR1に切り替えられると、リターン映像を、カメラ11-2の撮影映像から、記憶部102に記憶されているVTR1に切り替える。また、制御部103は、本線映像がVTR1からVTR2に切り替えられると、リターン映像を、VTR1から、記憶部102に記憶されているVTR2に切り替える。
【0077】
次に、本線映像が、カメラ11-2の撮影映像からリプレイ映像に切り替えられると、制御部103は、リターン映像を、カメラ11-2の撮影映像からリプレイ映像に切り替える。ここで、リプレイ映像は、カメラ11の撮影映像を繰り返す映像であるため、事前に用意することができない。そこで、制御部103は、本線映像がカメラ11-2の撮影映像からリプレイ映像に切り替えられると、リターン映像を、カメラ11-2の撮影映像から、例えば、
図7Bに示すような、事前に用意した画像または映像に切り替える。そして、制御部103は、送り返し映像がカメラ11-2の映像からリプレイ映像に切り替えられると、リターン映像を、事前に用意した画像または映像から、送り返し映像におけるリプレイ映像に切り替える。
【0078】
次に、本線映像が、リプレイ映像から、画像1、画像2の順に切り替えられると、制御部103は、リターン映像を、リプレイ映像から、記憶部102に記憶されている、画像1、画像2に切り替える。
【0079】
このように、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像において、本線映像に使用されることが既知の画像および映像が使用されていると判定すると、記憶部102に記憶されている、本線映像に使用されることが既知の画像および映像に基づき、リターン映像を作成してよい。
【0080】
また、本線映像に使用されることが決まっているスーパーの内容、表示位置、表示の順序などが事前に記憶部102に記憶されていてもよい。この場合、制御部103は、制御信号に基づき、本線映像でスーパーが表示されていると判定すると、記憶部102に記憶されているスーパーを、本線映像におけるスーパーの表示態様に合わせて、リターン映像で表示してもよい。例えば、本線映像として、カメラ11の撮影映像にスーパー1が表示され、カメラ11の撮影映像のズームに合わせて、別のスーパー2が表示されることが事前に決まっているとする。この場合、制御部103は、
図9Aに示すように、リターン映像としてカメラ11の撮影映像を表示するとともに、その撮影映像にスーパー1およびスーパー2を、カメラ11の撮影映像のズームに応じて表示してもよい。こうすることで、制御部103は、放送映像あるいは本線映像の受信を待つことなく、本線映像におけるスーパーと同様のスーパーを、リターン映像で表示することができる。
【0081】
また、スポーツ中継など、本線映像で使用されるスーパーの内容、表示位置、表示の順序などが事前に決まっていない場合がある。この場合、制御部103は、
図9Bに示すように、スーパーに対応するタリー信号がオンになると、リターン映像において、カメラ11の撮影映像に、本線映像で使用されているスーパーとは別の、本線映像においてスーパーが表示されていることを示すスーパー3を表示してもよい。リターン映像として、本線映像においてスーパーが表示されていることを示すスーパー3を表示することで、カメラ11の撮影者は、本線映像においてスーパーが表示されていることを把握することができる。撮影者は、本線映像に表示されるスーパーの詳細(表示位置、内容など)を知りたい場合には、リターン映像に加えて、送り返し映像がカメラ11に入力されていれば、カメラ11のビューファインダーで表示する映像を、リターン映像から送り返し映像に切り替えることで、スーパーの詳細を把握することができる。したがって、映像作成装置100は、本線映像においてスーパーが表示される場合、リターン映像として、送り返し映像を表示することなく、スーパー3を表示したままとする。
【0082】
なお、上述したように、本線映像における映像切り替え方法として、本線映像を、所定の時間をかけて、一の映像から別の映像に徐々に切り替える方法(MIX)がある。以下では、本線映像がMIXにより切り替えられる場合の、制御部103によるリターン映像の作成について、
図10を参照して説明する。
図10においては、時刻t21から、時間Td後の時刻t23にかけて、本線映像が、MIXにより、カメラ11-1の撮影映像からカメラ11-2の撮影映像に徐々に切り替えられたとする。
【0083】
MIXによる映像の切り替えが行われる場合、時刻t21において、カメラ11-1の撮影映像に対応するタリー信号がONのままで、カメラ11-2の撮影映像に対応するタリー信号がONとなる。そして、時刻t23において、カメラ11-1の撮影映像に対応するタリー信号がOFFとなる。
【0084】
制御部103は、スイッチャー23の制御信号(タリー信号)に基づき、MIXによる本線映像の切り替えが行われることを把握することができる。具体的には、制御部103は、カメラ11-1の撮影映像に対応するタリー信号がONのまま、カメラ11-2の撮影映像に対応するタリー信号がONになったことから、カメラ11-1の撮影映像からカメラ11-2の撮影映像にMIXにより切り替えられることを把握することができる。
【0085】
制御部103は、時刻t22(時刻t21<時刻t22<時刻t23)において、本線映像がカメラ11-1の撮影映像からカメラ11-2の撮影映像にMIXにより切り替えられることを把握すると、時刻t22から、予め定められた所定の時間Te後の時刻t24にかけて、リターン映像をカメラ11の撮影映像からカメラ11-2の撮影映像に徐々に切り替える。ここで、MIXにより本線映像において映像が切り替えられる時間Tdは、スイッチャー23の操作によって異なり、一定ではない。また、MIXにより本線映像において映像が切り替えられる時間Tdは、中継現場側で把握することができない。したがって、MIXにより本線映像において映像が切り替えられる時間Tdと、制御部103がMIXによりリターン映像を切り替える時間Teとは必ずしも一致しない。
【0086】
次に、本実施形態に係る映像作成装置100の動作について説明する。
図11は、本実施形態に係る映像作成装置100の動作の一例を示すフローチャートであり、映像作成装置100による映像作成方法を説明するための図である。
【0087】
通信部101は、IPネットワーク2を介して送信されてきた、スイッチャー23の制御信号を取得する(ステップS11)。
【0088】
制御部103は、取得した制御信号に基づき、リターン映像を作成する(ステップS12)。制御部103は、例えば、制御信号に基づき、本線映像に用いられる映像がカメラ11の撮影映像から切り替えられたと判定すると、リターン映像をカメラ11の撮影映像から他の映像に切り替える。
【0089】
このように本実施形態に係る映像作成装置100は、通信部101と、制御部103とを備える。通信部101は、カメラ11により撮影され、IPネットワーク2を介して放送局に伝送された撮影映像を含む、複数の映像を切り替えて本線映像を制作する、放送局に設けられたスイッチャー23の制御信号を、IPネットワーク2を介して取得する。制御部103は、スイッチャー23の制御信号に基づき、本線映像における撮影映像の使用に関するリターン映像を作成する。
【0090】
スイッチャー23の制御信号は、送り返し映像(本線映像)と比較して、データ量がはるかに小さい。そのため、スイッチャー23の制御信号を放送局側から受信し、その制御信号に基づき、リターン映像を作成することで、送り返し映像を送信する場合と比べて、中継現場と放送局との間で伝送される信号のデータ量の削減を図ることができる。
【0091】
中継現場と放送局との間で伝送される信号のデータ量が削減されることで、リターン映像の遅延量を従来のシステムと同等とする場合、IPゲートウェイ13,22での信号の変換・圧縮による遅延量の許容値を上げることができる。また、中継現場と放送局との間で伝送される信号のデータ量が削減されることで、リターン映像の遅延量を従来のシステムと同等とする場合、ネットワークスイッチ14,21での伝送遅延の許容値を上げることができる。また、中継現場と放送局との間で伝送される信号のデータ量が削減されることで、IPネットワーク2の回線費用の低減を図ることができる。
【0092】
なお、実施形態では特に触れていないが、コンピュータを、映像作成装置100として機能させるプログラムが提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。
【0093】
あるいは、映像作成装置100が行う各処理を実行するためのプログラムを記憶するメモリ、および、メモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成され、映像作成装置100に搭載されるチップが提供されてもよい。
【0094】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換が可能であることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形および変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1,1a 映像作成システム
2 IPネットワーク
11 カメラ(撮影装置)
12 モニタ
13,22 IPゲートウェイ
14,21 ネットワークスイッチ
15 放送チューナー
16,16A 送り返し受信装置
23 スイッチャー
24,24A 送り返し送信装置
100 映像作成装置
101 通信部
102 記憶部
103 制御部