(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】測定装置および穴位置検出方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20250403BHJP
【FI】
G01B5/00 A
(21)【出願番号】P 2021121665
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2024-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 宏太郎
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012776(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168727(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0138726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 - 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形状の穴が形成された表面を有するワークが載置されるテーブルと、
前記ワークの前記表面に交差する方向に変位可能なスタイラスと、
前記スタイラスを前記テーブルに対して相対移動させる相対移動機構と、
前記スタイラスが前記ワークの前記表面に当接して前記表面を前記穴に向かう方向に走査するように、前記相対移動機構を制御する移動制御部と、
前記スタイラスが前記表面を走査する間、前記スタイラスの変位を検出する変位検出部と、
前記変位検出部により検出された前記スタイラスの前記変位に基づいて、前記表面の形状データを生成する測定部と、
前記形状データから前記穴の縁に対応するエッジ点を検出するエッジ検出部と、
前記テーブルに対する前記エッジ点の座標であるエッジ座標を算出するエッジ座標算出部と、
少なくとも3つの前記エッジ座標を通る仮想円の中心座標を、前記穴の中心座標として算出する中心座標算出部と、を備える、測定装置。
【請求項2】
前記エッジ検出部は、前記形状データが走査開始点から予め設定された所定量だけ変位したときの点を前記エッジ点として検出する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記移動制御部は、前記スタイラスが前記中心座標に位置合わせされた状態で前記穴に挿入されるように、前記相対移動機構をさらに制御する、請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
ワークが載置されるテーブルと、前記ワークの表面に交差する方向に変位可能なスタイラスと、を備える測定装置において、前記ワークの前記表面に形成された穴の位置を検出する穴位置検出方法であって、
前記スタイラスが前記ワークの前記表面に当接して前記表面を前記穴に向かう方向に走査する走査ステップと、
前記走査ステップの間、前記スタイラスの変位を検出する変位検出ステップと、
前記変位検出ステップで検出された前記スタイラスの前記変位に基づいて、前記表面の形状データを生成する測定ステップと、
前記形状データから前記穴の縁に対応するエッジ点を検出するエッジ検出ステップと、
前記テーブルにおける前記エッジ点の座標であるエッジ座標を算出するエッジ座標算出ステップと、
少なくとも3つの前記エッジ座標を通る仮想円の中心座標を、前記穴の中心座標として算出する中心座標算出ステップと、を実施する
ことを特徴とする穴位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置および穴位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真円度測定機、表面粗さ測定機、または輪郭形状測定機などの測定装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このような測定装置は、ワークの表面に当接させたスタイラスの変位を検出することで、ワークの表面性状を測定する。ワークに形成された穴の内面の表面性状を測定する場合には、スタイラスをワークの穴に挿入させて穴の内面に当接させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の測定装置では、ワークの穴の正確な位置が分からない場合、測定者が目視でワークの穴の位置を確認することにより、スタイラスがワークに接触して破損することを防いでいる。
しかし、穴の位置を目視で確認することは、測定の作業性を悪化させる。また、ワークの穴の径が小さくなるほど、穴の位置を目視で確認することが困難になり、スタイラスがワークに接触して破損してしまう恐れが生じる。
【0005】
本発明は、ワークの穴の位置を検出できる測定装置および穴位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測定装置は、円形状の穴が形成された表面を有するワークが載置されるテーブルと、前記ワークの前記表面に交差する方向に変位可能なスタイラスと、前記スタイラスを前記テーブルに対して相対移動させる相対移動機構と、前記スタイラスが前記ワークの前記表面に当接して前記表面を前記穴に向かう方向に走査するように、前記相対移動機構を制御する移動制御部と、前記スタイラスが前記表面を走査する間、前記スタイラスの変位を検出する変位検出部と、前記変位検出部により検出された前記スタイラスの前記変位に基づいて、前記表面の形状データを生成する測定部と、前記形状データから前記穴の縁に対応するエッジ点を検出するエッジ検出部と、前記テーブルに対する前記エッジ点の座標であるエッジ座標を算出するエッジ座標算出部と、少なくとも3つの前記エッジ座標を通る仮想円の中心座標を、前記穴の中心座標として算出する中心座標算出部と、を備える。
【0007】
本発明では、テーブルにおける穴の中心座標を算出することができる。このため、スタイラスを穴の中心座標に位置合わせしてから当該穴に挿入することができ、挿入時にスタイラスがワークに接触することを防止できる。また、目視でワークの穴の位置を確認する必要がないため、測定の作業性を向上できる。
【0008】
本発明の測定装置において、前記エッジ検出部は、前記形状データが走査開始点から予め設定された所定量だけ変位したときの点を前記エッジ点として検出することが好ましい。
本発明では、複雑な演算処理を必要とせずに、エッジ点を簡単に検出できる。また、変位の所定量をワークの表面粗さよりも大きい値に設定することにより、エッジ点の誤検出を抑制することができる。
【0009】
本発明の測定装置において、前記移動制御部は、前記スタイラスが前記中心座標に位置合わせされた状態で前記穴に挿入されるように、前記相対移動機構をさらに制御することが好ましい。
本発明では、スタイラスをワークの穴へ挿入する動作が自動で行われ、測定の作業性をより向上できる。
【0010】
本発明は、ワークが載置されるテーブルと、前記ワークの表面に交差する方向に変位可能なスタイラスと、を備える測定装置において、前記ワークの前記表面に形成された穴の位置を検出する穴位置検出方法であって、前記スタイラスが前記ワークの前記表面に当接して前記表面を前記穴に向かう方向に走査する走査ステップと、前記走査ステップの間、前記スタイラスの変位を検出する変位検出ステップと、前記変位検出ステップで検出された前記スタイラスの前記変位に基づいて、前記表面の形状データを生成する測定ステップと、前記形状データから前記穴の縁に対応するエッジ点を検出するエッジ検出ステップと、前記テーブルにおける前記エッジ点の座標であるエッジ座標を算出するエッジ座標算出ステップと、少なくとも3つの前記エッジ座標を通る仮想円の中心座標を、前記穴の中心座標として算出する中心座標算出ステップと、を実施することを特徴とする。
本発明の穴位置検出方法によれば、前述した本発明の測定装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る測定装置を模式的に示す側面図。
【
図4】前記測定装置における穴位置検出方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】前記測定装置のスタイラスがワークの穴形成面を走査する様子を示す模式図である。
【
図6】ワークの穴を検出する方法を説明するための模式図である。
【
図7】形状データにおけるエッジ点を示す模式図である。
【
図8】ワークの穴形成面、エッジ座標および穴中心座標の各例を示す模式図である。
【
図9】ワークの穴を検出する方法の変形例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔測定装置〕
図1および
図2は、本発明の一実施形態にかかる測定装置1を模式的に示す図である。
本実施形態の測定装置1は、ワーク9(測定対象物)に接触してワーク9の表面性状(例えば形状、真円度および表面粗さなど)を測定する装置であり、ベース10と、ベース10の上面に設置されたテーブル20と、テーブル20に隣接して設置された移動機構30と、移動機構30に支持された検出器40と、各部の動作制御を行う制御部50とを備えている。
【0013】
テーブル20は、ベース10に回転可能に設置された円筒状の本体21と、本体21の上面に水平方向へ移動可能に設置された円盤状の載置板22とを有する。本体21には、モータ駆動されるテーブル回転機構23(
図3参照)が設けられており、この本体21は、テーブル回転機構23によって、回転軸Cr周りに回転可能である。載置板22は、本体21と共に回転可能であり、載置板22の上には測定対象物であるワーク9が載置される。回転軸Crは、上下方向に沿って配置される。
【0014】
テーブル20には、テーブル20の回転軸Crとワーク9の中心軸(例えばワーク9の外周面が成す円の中心軸またはワーク9の穴の中心軸)とを合わせる動作(心出しおよび水平出し)を行うための調整機構24が設置されている。この調整機構24は、本体21に対する載置板22の配置をCX軸方向およびCY軸方向に調整する心出し機構241と、本体21に対する載置板22のCX軸方向の傾きおよびCY軸方向の傾きを調整する水平出し機構242とを有している(
図2参照)。心出し機構241および水平出し機構242は、それぞれ、モータ駆動される。
なお、CX軸方向およびCY軸方向は、回転軸Crに対して直交しかつ相互に直交する方向であり、テーブル20に対して設定される直交座標系(テーブル座標系)を成している。
【0015】
また、テーブル20には、ベース10に対するテーブル20の回転角度θを検出する角度センサ25(
図3参照)が設けられている。角度センサ25は、例えばロータリーエンコーダーであり、基準回転位置に対するテーブル20の回転位置を回転角度θとして検出する。
【0016】
移動機構30は、ベース10に対して検出器40をX軸方向、Y軸方向、および、Z軸方向の各方向へと移動させる。この移動機構30は、テーブル回転機構23と共に、相対移動機構11(
図3参照)を構成するものであり、スタイラス41をテーブル20に対して相対移動させることができる。
なお、本実施形態では、上下方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する平面においてテーブル20に対して接近・離間する方向をX軸方向とし、Z軸方向およびX軸方向にそれぞれ直交する方向をY軸方向とする。これらのX軸方向、Y軸方向、および、Z軸方向は、ベース10に対する3軸直交座標系(ベース座標系)を成している。
【0017】
移動機構30は、具体的には、ベース10に立設されたコラム31と、このコラム31に対してZ軸方向に移動可能に設けられたスライダ32と、スライダ32をZ軸方向へ駆動するZ軸駆動部(図示省略)と、スライダ32に対してX軸方向に移動可能に設けられたアーム33と、アーム33をX軸方向へ駆動するX軸駆動部(図示省略)と、アーム33に対してY軸方向に移動可能に設けられ、かつ、検出器40を支持する検出器支持部34と、検出器支持部34をY軸方向へ駆動するY軸駆動部(図示省略)とを備える。Z軸駆動部、X軸駆動部、および、Y軸駆動部は、それぞれ、モータと、当該モータに連結されたボールねじ機構またはラックアンドピニオン機構などを含んで構成される。
【0018】
また、移動機構30には、ベース座標系における検出器40の位置を検出する位置センサ35(
図3参照)が設けられている。位置センサ35は、例えば、スライダ32のZ軸方向の位置を検出するZスケール、アーム33のX軸方向の位置を検出するXスケール、および、検出器支持部34のY軸方向の位置を検出するYスケールを備える。
【0019】
また、移動機構30には、検出器40の姿勢を変更するための旋回機構(図示省略)が設けられている。この旋回機構は、例えば、アーム33にX軸方向に沿って設けられた旋回軸Cxを中心にして検出器支持部34を回動させることにより、検出器40の姿勢を変更する。
【0020】
検出器40は、スタイラス41および変位検出部42を有する。
スタイラス41は、ワーク9の表面に対してZ軸方向またはX軸方向に接触し、ワーク9の表面に沿って変位可能である。また、測定内容に応じて、変位検出部42に対するスタイラス41の姿勢を変更可能である。
変位検出部42は、スタイラス41を変位可能に支持すると共に、スタイラス41の変位を検出する。
【0021】
制御部50は、コンピューターにより構成されており、メモリおよび演算回路等を備えて構成されている。この制御部50は、演算回路がメモリに記録された各種プログラムを実施することにより、
図3に示すように、移動制御部51、測定部52、および、穴位置検出部53として機能する。
【0022】
移動制御部51は、移動機構30またはテーブル回転機構23を制御することにより、ワーク9に対するスタイラス41の相対位置を制御する。
【0023】
測定部52は、変位検出部42により検出されるスタイラス41の変位に基づいて、ワーク9の表面性状(例えば形状、真円度および表面粗さなど)を測定できる。
例えば、測定部52は、変位検出部42により検出されるスタイラス41の変位と、位置センサ35により検出される検出器40の位置とに基づいて、ワーク9の表面性状を測定できる。また、測定部52は、変位検出部42により検出されるスタイラス41の変位と、角度センサ25により検出されるテーブル20の回転角度θとに基づいて、ワーク9の真円度を測定できる。
【0024】
穴位置検出部53は、ワーク9の表面に穴が形成されている場合において、当該穴の位置を検出する。この穴位置検出部53は、後述にて説明するエッジ検出部531、エッジ座標算出部532および中心座標算出部533を含んでいる。
【0025】
[穴位置検出方法]
本実施形態の測定装置1は、ワーク9の穴の内面を測定する際、当該穴の位置を検出するための穴位置検出方法を実施する。この穴位置検出方法について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
ここで、
図5に示すように、ワーク9の穴91は、ワーク9において平面状の表面である穴形成面92に開口し、ワーク9に対して任意の中心軸Chを中心として当該中心軸Chに沿って形成されている。中心軸Chに交差する穴91の断面は、円形状である。
【0026】
本実施形態の穴位置検出方法を実施する前の準備として、ワーク9は、穴91の中心軸ChがZ軸方向に沿うようにテーブル20上に配置される。穴91の中心軸Chは、回転軸Crの付近に配置されることが好ましいが、回転軸Crに一致していなくてもよい。
また、測定装置1に使用されるスタイラス41の先端部の径は、穴91の断面形状の径よりも小さい。また、検出器40は、旋回機構によって姿勢を調整され、Z軸方向に対して傾斜して配置される。
【0027】
まず、測定装置1は、ワーク9の穴形成面92を一方向に倣い測定する(ステップS1)。
具体的には、
図5に示すように、移動制御部51は、移動機構30を制御し、スタイラス41を穴形成面92の任意の走査開始点Psに所定圧力で接触させる。その後、移動制御部51は、移動機構30を制御することにより、スタイラス41を穴91に向かってX軸方向に沿って移動させ、穴形成面92を走査させる(走査ステップ)。なお、走査開始点Psから穴91へ向かう走査線は、穴91の中心を通らずともよく、ラフな位置決めが可能である。
穴形成面92の走査中、変位検出部42は、スタイラス41のZ軸方向の変位を検出し(変位検出ステップ)、位置センサ35は、ベース座標系における検出器40の位置を検出する。測定部52は、変位検出部42および位置センサ35から入力される各検出値に基づいて、ワーク9の穴形成面92の形状を示す形状データSmを生成する(測定ステップ)。
【0028】
ここで、
図6に示すように、穴形成面92を走査するスタイラス41は、穴形成面92から穴91に落ち込む際、Z軸方向に変位する。スタイラス41が完全に穴91に到達したとき、移動制御部51は、ワーク9からスタイラス41に加わる圧力が所定圧力よりも低下したことを検出し、穴形成面92の走査を終了する。
【0029】
次に、エッジ検出部531は、
図7に示すように、ステップS1で生成される形状データSmから穴91のエッジに対応するエッジ点Pnを検出する(ステップS2;エッジ検出ステップ)。具体的には、エッジ検出部531は、形状データSmが走査開始点Psから所定量Dだけ変位したときのデータ点を、エッジ点Pnとして検出する。ここで、所定量Dは、予め設定される任意の変位量であり、エッジ点Pnを誤検出しないように、穴形成面92の表面粗さが含まれる範囲よりも大きい値に設定されることが好ましい。
【0030】
次に、エッジ座標算出部532は、テーブル座標系におけるエッジ点Pnの座標(エッジ座標)を算出する(ステップS3;エッジ座標算出ステップ)。
例えば、エッジ座標算出部532は、形状データSmからベース座標系のエッジ点Pnの座標を取得し、このベース座標系の座標を、角度センサ25により検出されたテーブル20の回転角度θと、ベース座標系におけるテーブル座標系の原点位置(回転軸Crの位置)とに基づいて、テーブル座標系の座標に変換することにより、エッジ座標を算出できる。
【0031】
次に、制御部50は、3つ以上のエッジ座標が算出されているか否かを判断する(ステップS4)。
エッジ座標の数が3つ未満である場合(ステップS4;Noの場合)、移動制御部51は、テーブル回転機構23を制御し、テーブル20を任意の角度(例えば120度)だけ回転させる。そして、移動制御部51は、移動機構30を制御し、スタイラス41を前回のステップS1の開始時点と同一のベース座標に配置させる。これにより、次回のステップS1における穴形成面92の走査開始点Psは、前回のステップS1における穴形成面92の走査開始点Psから変更される(ステップS5)。すなわち、前回のステップS1から走査方向が変更される。
【0032】
その後、前述のステップS1~S4が再度実施される。このようなフローによれば、
図8に示すように、スタイラス41が、ワーク9の穴形成面92を、穴91に向かう方向であってかつ互いに異なる複数の方向に順次沿って走査する。これにより、複数のエッジ点Pn(
図8ではP1~P3)が検出され、各エッジ点Pnのエッジ座標が算出される。
【0033】
3つ以上の前記エッジ座標が算出された場合(ステップS4;Yesの場合)、中心座標算出部533は、任意の3つのエッジ座標(例えばエッジ点P1~P3の座標)を選択する。そして、中心座標算出部533は、
図8に示すように、3つのエッジ座標(CXp1,CYp1),(CXp2,CYp2),(CXp3,CYp3)を通る仮想円VCの中心座標Ph(CXph,CYph)を算出する(ステップS6;中心座標算出ステップ)。この算出方法は、一般的な円の方程式を利用できるため、詳細を省略する。
ここで算出される仮想円VCの中心座標Ph(CXph,CYph)は、テーブル20におけるワーク9の穴91の中心軸Chの位置(穴91の中心座標)に対応する。よって、中心座標算出部533が仮想円VCの中心座標を算出することにより、穴91の中心座標が求められる。
以上により、本実施形態の穴位置検出方法のフローが終了する。
【0034】
[スタイラスの挿入]
上述した穴位置検出方法の実施後、測定装置1は、スタイラス41を穴91に挿入させ、穴91の内面について任意の測定(形状、真円度、または、表面粗さなど)を行うことができる。
【0035】
以下、スタイラス41の挿入方法について簡単に説明する。
まず、検出器40は、旋回機構によって姿勢を調整され、Z軸方向に沿って配置される。これにより、スタイラス41は、穴91の深さ方向に沿って配置される。
また、移動制御部51は、移動機構30およびテーブル回転機構23を制御し、テーブル20における穴91の中心座標にスタイラス41を位置合わせする。例えば、移動制御部51は、テーブル20が回転基準位置に位置するようにテーブル回転機構23を制御し、テーブル20が回転基準位置のときの穴91の中心座標にスタイラス41が配置されるように移動機構30を制御する。
その後、移動制御部51は、移動機構30を制御してスタイラス41を下降させる。これにより、スタイラス41が穴91に挿入される。
【0036】
スタイラス41が穴91に挿入された後、測定装置1は、穴91の中心軸Chがテーブル20の回転軸Crに一致するように、心出しを行ってもよい。心出しは、従来と同様の方法によって行うことができる。また、穴91の中心座標を利用し、穴91の中心座標がテーブル20の回転軸Crに一致するように、調整機構24を調整してもよい。
【0037】
〔効果〕
本実施形態では、前述したように、テーブル20における穴91の中心座標を検出できる。このため、スタイラス41を穴91の中心座標に位置合わせしてから穴91に挿入することができ、挿入時にスタイラス41がワーク9に接触することを防止できる。また、目視でワーク9の穴91の位置を確認する必要がないため、測定の作業性を向上できる。
【0038】
本実施形態のエッジ検出部531は、形状データSmが走査開始点Psから所定量D変位したときのデータ点をエッジ点Pnとして検出する。このような方法によれば、複雑な演算処理を必要とせずに、穴91の縁に対応するエッジ点Pnを簡単に検出できる。また、変位の所定量Dをワーク9の表面粗さよりも大きい値に設定することにより、エッジ点Pnの誤検出を抑制することができる。
【0039】
本実施形態の移動制御部51は、スタイラス41が穴91の中心座標に位置合わせされた状態で穴91に挿入されるように、移動機構30を制御する。これにより、スタイラス41をワーク9の穴91へ挿入する動作が自動で行われ、測定の作業性をより向上できる。
【0040】
〔変形例〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
【0041】
前記実施形態において、移動制御部51は、スタイラス41が穴91に到達したとき、穴形成面92の走査を終了する。この変形例として、移動制御部51は、
図9に示すように、スタイラス41が穴91に到達しても走査を終了せず、スタイラス41が穴91を横切るように穴形成面92を走査させてもよい。
この場合、形状データSmは、スタイラス41が穴形成面92から穴91に落ち込むタイミングと、穴91から穴形成面92に乗り上げるタイミングとのそれぞれでZ軸方向に変位する。エッジ検出部531は、形状データSmに基づいて、走査開始点Psから所定量Dだけ変位した時点のデータ点と、当該時点の後において走査開始点Psと同じZ軸方向の位置まで所定量Dを変位する開始時点のデータ点とを、それぞれエッジ点Pnとして検出できる。
このような変形例によれば、ワーク9の穴形成面92を任意の2方向に走査することで、計4つのエッジ点Pnを検出できる。
【0042】
前記実施形態では、エッジ検出部531は、形状データSmが走査開始点Psから予め設定された所定量Dだけ変位したときの点をエッジ点Pnとして検出するが、エッジ点Pnの検出方法はこれに限られない。例えば、形状データSmから穴形成面92の位置を算出し、当該位置から所定量だけ変位したときの点をエッジ点Pnとして検出してもよい。
【0043】
前記実施形態では、測定装置1が真円度測定機として機能する。この変形例として、測定装置1は、真円度測定機として機能せずともよく、テーブル20は、ベース10に対してX軸方向またはY軸方向に移動する直動テーブルであってもよい。
この場合、移動制御部51は、ワーク9が載置された直動テーブルの移動機構を制御することにより、スタイラス41をワーク9に対して相対移動させてもよい。すなわち、本発明の相対移動機構は、直動テーブルの移動機構を含んでもよい。
例えば、前述のステップS1において、移動制御部51は、直動テーブルの移動機構を制御することにより、ワーク9の穴形成面92に対してスタイラス41を走査させてもよい。また、前述のステップS5において、移動制御部51は、直動テーブルの移動機構を制御することにより、走査開始点Psを変更してもよい。
このような変形例によっても、前記実施形態と同様、ワーク9の穴91の位置を検出できる。
【0044】
また、前記実施形態では、測定装置1として、ワーク9の表面性状を測定する表面性状測定機を例示しているが、本発明はこれに限られない。本発明の測定装置は、倣い測定可能な三次元測定装置など、スタイラスを有する任意の測定装置であればよい。
【符号の説明】
【0045】
1…測定装置、10…ベース、11…相対移動機構、20…テーブル、21…本体、22…載置板、23…テーブル回転機構、24…調整機構、241…心出し機構、242…水平出し機構、25…角度センサ、30…移動機構、31…コラム、32…スライダ、33…アーム、34…検出器支持部、35…位置センサ、40…検出器、41…スタイラス、42…変位検出部、50…制御部、51…移動制御部、52…測定部、53…穴位置検出部、531…エッジ検出部、532…エッジ座標算出部、533…中心座標算出部、9…ワーク、91…穴、92…穴形成面、Ch…中心軸、Cr…回転軸、D…所定量、P1…エッジ点、P2…エッジ点、P3…エッジ点、Pn…エッジ点、Ps…走査開始点、Sm…形状データ、VC…仮想円、θ…回転角度。